弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中「当審における未決勾留日数中二五〇日を本件に算入する。」
との部分を破棄する。
     その余の部分に対する検察官の上告を棄却する。
     被告人の本件上告を棄却する。
         理    由
 検察官の上告趣意について。
 記録によれば、被告人は本件窃盗被告事件につき起訴前の昭和三四年七月八日勾
留状の執行を受け、爾来第一審並に原審を通じて勾留を継続されているものである
が、これよりさき、被告人は(1)昭和三三年一〇月八日大阪簡易裁判所において
賍物牙保被告事件につき懲役一年(三年間執行猶予)および罰金一、〇〇〇円(一
日二〇〇円換算)に処せられ、同判決は同月二三日確定し、(2)昭和三四年六月
五日同裁判所において窃盗被告事件につき懲役一年に処せられ、同判決は昭和三五
年四月五日確定し、さらに、(3)昭和三五年二月五日同裁判所において業務上過
失傷害被告事件につき略式命令によつて罰金一二、〇〇〇円(一日二〇〇円換算)
に処せられ、右命令は同月二〇日確定し、なお右(1)の執行猶予は昭和三五年六
月二〇日大阪地方裁判所の決定により取消され、同決定は同月二五日確定したため、
被告人は前記の如く本件につき未決勾留中、昭和三五年四月五日から同三六年三月
三〇日までは前記(2)の懲役刑、同月三一日から同年四月四日までは前記(1)
の罰金刑の執行に換わる労役場留置、同月五日から同年六月三日までは前記(3)
の罰金刑の執行に換わる労役場留置、同月四日からは前記(1)の懲役刑の執行を
それぞれ受け、右(1)の刑期は昭和三七年六月三日に終了すべき筋合であるとこ
ろ、被告人は本件第一審の判決に対し昭和三五年七月一三日控訴を申立て、原審は
これに対し、同三六年七月一三日控訴を棄却するとともに原審における未決勾留日
数中二五〇日を本刑に算入する旨の判決を言渡したことが認められる。してみれば、
原審における未決勾留の全期間が前示確定刑の執行と重複執行されていたにも拘ら
ず、原判決は、これを前示の如く本刑に算入したものであることが明らかであり、
このように刑の執行と重複する未決勾留日数を本刑に算入することは、不当に被告
人に利益を与えることとなり違法であるといわねばならない(昭和二九年(あ)第
三八九号同三二年一二月二五日大法廷判決、集一一巻一四号三三七七頁参照)。そ
れ故、原判決は刑法二一条の適用を誤つた違法があり所論判例に反するから、論旨
は理由があり、原判決の前記未決勾留日数を算入した部分は破棄を免れない。
 被告人の上告趣意(二通)について。
 所論は、違憲をいう点もあるが、その実質は、原判決の前記未決勾留日数の算入
が、刑法二一条の解釈適用を誤つた違法があるとの単なる法令違反の主張に帰し、
しかも右は自己に不利益な主張をいうものであるから、上告適法の理由とならない。
 弁護人渡辺豊彦の上告趣意について。
 所論中判例違反をいう点は、被告人の上告趣意と同旨の単なる法令違反を前提と
するものであつて、被告人に不利益な主張をいうものであり、その余の論旨は、量
刑不当の主張であつて、すべて上告適法の理由とならない。
 よつて、刑訴四〇五条二号、四一〇条一項本文、四一三条但書により、原判決中
「当審における未決勾留日数中二五〇日を本刑に算入する。」との部分を破棄し、
その未決勾留日数を算入しないものとし、その余の部分に対する検察官の上告は、
上告趣意として何ら主張がなく、従つてその理由がないことに帰するから、刑訴四
一四条三九六条により主文二項のとおり上告を棄却すべく、被告人の本件上告は同
四一四条三九六条により主文三項のとおりこれを棄却すべきものとし、当審訴訟費
用の免除につき同一八一条一項但書を適用し、主文のとおり判決する。
 この判決は、裁判官全員一致の意見である。
 公判出席検察官 村上朝一
  昭和三七年六月二九日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    池   田       克
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    山   田   作 之 助

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