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平成29年3月27日宣告
平成28163号傷害致死,死体遺棄被告事件
主文
被告人Aを懲役12年に,被告人Bを懲役10年に処する。
被告人らに対し,未決勾留日数中各240日を,それぞれその刑に算入す
る。
理由
(罪となるべき事実)
第1被告人Aは,土木建築業を営み,被告人BやCを現場作業員として使用すると
ともに,前記Cを自宅に住まわせて雑用等をさせていたものであるが,平成28年
1月13日,元請業者から同人が移動中に寝ていたとの苦情を受け,以前から同様
の苦情を受けていたこともあって同人に激怒し,同日午後7時頃,北海道小樽市
(以下略)被告人A方2階居間において,前記C(当時50歳)に対し,その背部
等を手に持った金属製パイプ(平成29年押第7号符号2)で多数回殴るなどの暴
行を加えて致命傷に至らない肩甲部等の筋肉内出血等の傷害を負わせ,被告人Aに
呼び出された被告人Bがその頃同所に到着すると,引き続き,被告人両名は,共謀
の上,同日午後7時30分頃から同日午後9時30分頃までの間,同所において,
前記Cに対し,その背部及び臀部等を手に持った金属製パイプ及び木製の棒(同符
号1)で多数回殴るなどの暴行を加えて前記肩甲部等の筋肉内出血等の傷害を相当
程度重篤化させるとともに,新たに臀部等の筋肉内出血等の傷害を負わせ,よっ
て,その頃,同所において,同人を前記暴行により重篤化した傷害及び新たに負わ
せた傷害に基づく外傷性ショックにより死亡させ,
第2被告人両名は,共謀の上,同日午後11時30分頃,同所において,前記Cの
死体をフレコンバッグに入れて同所から前記被告人A方1階倉庫に運搬し,同月1
4日午前6時40分頃,前記フレコンバッグに入れた同死体を同所から同1階車庫
倉庫に運搬した上,さらに,同月16日午後11時30分頃,同所において,前記
フレコンバッグに入れた同死体をブルーシートで包むなどして隠匿し,もって死体
を遺棄し
たものである。
(法令の適用)
被告人両名の判示第1の所為はいずれも刑法205条に(被告人Bが加功した後の
所為についてはいずれも更に同法60条),判示第2の所為はいずれも同法60条,
190条にそれぞれ該当するが,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法4
7条本文,10条により重い判示第1の罪の刑に同法47条ただし書の制限内で法定
の加重をした刑期の範囲内で,被告人Aを懲役12年に,被告人Bを懲役10年に処
し,同法21条を適用して未決勾留日数中240日をそれぞれその刑に算入すること
とし,訴訟費用は,いずれも刑訴法181条1項ただし書を適用して被告人両名に負
担させないこととする。
(量刑の理由)
1被告人Aは,元請業者から勤務態度を問題視する苦情を受けることがあった被
害者に再び同様の指摘があったことから強い怒りを覚え,感情に任せて第1の犯行に
及んだものと認められる。被害者の勤務態度に問題があったとしても,本件のような
暴力を振るうことは決して正当化されるものではなく,動機に酌量の余地はない。ま
た,被告人Bは,被告人Aに呼び出されて現場に到着すると,被告人Aに同調して自
らもすすんで暴力に及んだものと認められ,やはり酌量の余地はない。第1の犯行
は,計画性はないが,被告人両名が日頃からささいなきっかけで被害者に暴力を振る
っていたことからすると,偶発的なものとも言いがたい。
被告人両名は,時に正座や四つん這いなどの姿勢をさせるなどしながら,無防備な
状態の被害者の肩や背中,臀部などを,一方的に数十回にわたり金属製パイプ(銅
管)や木製の棒(麺棒)を使って繰り返し殴打したものと認められる。これにより被
害者には深刻な皮下出血や筋肉内出血等が生じており,被告人らの暴行は実に激しく
執ようなものであったと認められる。被害者が死亡に至ったという犯行の結果が重大
であることはいうまでもなく,遺族は,被告人らの厳しい処罰を求めている。
また,被告人両名は,その犯行の発覚を免れようと第2の犯行に及んだものであ
り,動機は身勝手というほかない。遺棄の手口は,やや場当たり的なところもみられ
るが,それなりに入念な方法で遺体を隠匿しようとするもので,やはり悪質である。
2次に,被告人両名各々の情状を検討すると,被告人Aは,本件の暴行をまず単
独で開始し,従業員である被告人Bを呼び出して更なる暴行のきっかけを作り出し,
被告人Bの暴行後も更に継続して暴行に及んだものである。また,被告人Aは,金属
製パイプを用いて,それが折れ曲がるほどの強い力で,被害者の肩や背中を中心に多
数回殴打し,重症の筋肉内出血等を負わせており,被告人Bが木製の棒を用いて臀部
を中心に殴打を繰り返し,重症に至らないがそれに近い程度の同様の出血を生じさせ
たことと比較すると,その暴行はより危険性の高いものであったと認められる。以上
によれば,被告人Aの犯情は特に重いというべきである。他方,被告人Bも,被告人
Aに対し服従を余儀なくされるような関係にあったわけではなく,被害者に暴力を振
るうことを明示的に指示・命令されたわけでもないのに,被告人Aの呼出しを受ける
と,木製の棒を手にして現場に現れ,被告人Aに同調してかなり激しい暴行を加え,
被害者の死亡原因の一部となるほどの傷害を負わせている。被告人Bは,被告人A単
独による当初の暴行については責任を負うものではなく,倒れた被害者に心臓マッサ
ージを施したことも認められるものの,その犯情はそれ自体としても重い。
以上によれば,第1の犯行については,被告人Aの方がより重い責任を負うべきで
あるが,被告人Bも相応の責任を免れないというべきである。
そして,第2の犯行では,被告人Bが遺体の隠匿作業の大部分を積極的に実行して
おり,その責任は比較的重いと認められるが,被告人Aも,遺体を隠そうとする意図
を同じくしていくつかの作業に協力しており,その責任も決して軽くはない。
3以上を前提に,知人・友人・勤務先関係の被害者に対し鈍器類を使用した実行
共同正犯の傷害致死の事例等における量刑傾向等をみると,それらの事例の中には,
第1の犯行よりも危険・悪質な類型の事例もそれなりにみられるが,本件傷害致死の
犯行の動機に酌量の余地はなく,その暴行が前記の凶器を用いたかなり激しく執よう
なものであったことからすると,比較的重い部類に属するというべきであり,また,
これに第2の犯行に対する責任も併せ考慮する必要がある。その上で,各犯行につい
ての被告人両名の犯情評価をふまえつつ,被告人Aについては,公判廷で暴行の状況
に関し一部あいまいかつ不合理な供述をするなど反省の態度が十分にはうかがえない
こと,被告人Bについては前科がないことなどをも考慮すると,被告人両名に対して
は,主文の各刑にそれぞれ処するのが相当である。
よって,主文のとおり判決する。
検察官志村康之及び同折原和寛公判出席
(求刑被告人Aについて懲役14年,被告人Bについて懲役11年)
平成29年3月29日
札幌地方裁判所刑事第3部
裁判長裁判官金子大作
裁判官坂田正史
裁判官坂本桃

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