弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件抗告を却下する。
     抗告費用は抗告人の負担とする。
         理    由
 本件抗告の要旨は、民法八六二条では旧民法九二五条但書を削除し後見人が被後
見人の近親者であつても後見人の報酬を与え得ることとなつたのに、原審判は未成
年者Aとその後見人である抗告人とが実の親子であることを本件申立却下理由の一
とした。また原審判は抗告人が右A方に同居して銭湯営業にたづさわり、その収入
によつて共に生計を維持しているためん報酬を与えるだけの事情ありとは認め難い
としたけれども、右営業の経営および労務はすべて抗告人が担当しているので、そ
れだけ雇人給料が節約されているがその反面これに相当する必要経費が控除され
ず、抗告人夫婦は右Aの扶養家族としての控除を受けるだけで不当に課税されてい
るので、かくては抗告人は後見人としてその任務を完うすることができない、よつ
て原審判を取り消し相当額の報酬額付与の決定を求めるというのである。
 家事審判法一四条に「審判に対しては、最高裁判所の定めるところにより、即時
抗告のみをすることができる」とあり、家事審判規則等には即時抗告の許される審
判および即時抗告権者につき事件毎にこれを規定している点からすれば、即時抗告
は一切の家事審判に対して許されるものではなく、右規則に定めであり事件につい
てのみこれをなし得るものというべきであるところ、これら規則には後見人に対す
る報酬の付与に関する審判に対し即時抗告を許した規定がないから、右審判に対す
る不服申立方法として即時抗告によりえないことは明白である。それでは通常の抗
告は許されるかどうか。現に本件も抗告状と題し、抗告する旨の記載があるので、
抗告の許否について検討する。
 <要旨>家事審判法七条には、特別の定がある場合を除き審判にはその性質に反し
ない限り非訟事件手続法第一編の規定を準用するとあり、非訟事件手続法二
〇条では広く利害関係人からの抗告を認めているので、審判に対しても抗告が許さ
れるようにみえるけれども、前記の如く家事審判法一四条に即時抗告のみをするこ
とがてきると規定し、家事審判規則等に事件毎に即時抗告のできることおよび即時
抗告権者を定めていることから考えれば、これらの規定は右家事審判法七条所定の
特別の定に該当するものであつて、換言すれば審判については非訟事件手続法二〇
条の準用なく、したがつて抗告はできないものと解するのを相当とする。本件の場
合でも、法律は無報酬で後見人にその職務を行うことを強要してはおらず、これを
辞任することもできるのであつて(民法八四四条参照)、原審判により抗告人の権
利は害されることはないものといわねばならぬ。
 よつて本件抗告は不適法としてこれを却下すべきものとし主文のとおり決定す
る。
 (裁判長裁判官 三宅芳郎 裁判官 藤田哲夫 裁判官 竹島義郎)

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