弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人池田純亮の上告趣意第一点は事実誤認の主張、同第二点は量刑不当の主張、
同弁護人の補足上告趣意第二点は事実誤認の主張であつて、いずれも刑訴四〇五条
の上告理由に当らない。同補足趣意第一点は判例違反を主張し、原判決が事実認定
の証拠として挙示する「押収した覚せい剤注射液(証第一七号)は、被告人方より
発見押収されたものではなく、令状なくして隣家のA方が捜索された結果、同所で
発見押収されたものであるから、かかる違法な手続によつて蒐集された証拠は証拠
能力がないというが、この点については原審において主張、判断を経ていないので
あるから、上告審に至り初めてこれを主張することは許されないところであるばか
りでなく、さらに本件記録を調べてみると、被告人方と隣家のA(被告人の叔母)
方とは一軒の家(二階建)を一、二階共に板で仕切つたものであり、しかも本件捜
索差押に当つては、捜索差押をなすべき場所を被告人方と表示したものと、A方と
表示したものとの二通の捜索差押許可状が発布され、それぞれ許可状に基いて捜索
が行われ、その結果、A方二階の部屋において前記注射液が発見押収されたもので
あること明白であるから、所論のように令状なくして捜索差押がなされたものとい
うことはできない。次に所論被告人の検察官に対する供述調書は刑訴三二二条の書
面として検察官が取調を請求し、第一審裁判所も同書面として証拠決定をなし取り
調べたものであることは所論のとおりであるが、右供述調書は被告人の署名拇印が
あり、その供述が被告人に不利益な事実の承認を内容とするものであること(同条
一項本文前段参照)記録上明白であるから、かかる書面については供述の任意性が
認められるかぎりこれを証拠とすることができるのであつて(同条一項但書参照)
「特に信用すべき情況の下にされたものである」(同条一項本文後段参照)ことを
条件とするものではないことは同条の明文に徴し明らかである、されば前記物証で
ある注射液も書証である被告人の検察官に対する供述調書も、証拠能力がないとす
る所論自体前提を欠きこれを肯認することができないのであるから、証拠能力のな
い証拠を他の証拠と不可分的に綜合して事実を認定した事案に関する所論引用の判
例は本件に適切でなく、所論は適法な上告理由とならない。また記録を調べても同
四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとお
り決定する。
  昭和三二年三月二六日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    池   田       克
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奥   野   健   一

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