弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

       主   文
一 本件控訴を棄却する。
二 控訴費用は控訴人の負担とする。
       事実及び理由
第一 当事者の求めた裁判
一 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2(一) 被控訴人は、別紙イ号方法目録記載の方法を使用して自動車用タイヤの
滑止具を製造、販売してはならない。
(二) 被控訴人は、別紙イ号方法目録記載の方法を使用して製造された自動車用
タイヤの滑止具を廃棄せよ。
(三) 被控訴人は、控訴人に対し、金三六〇〇万円とこれに対する昭和六三年六
月三日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
二 控訴の趣旨に対する答弁
 主文と同旨
第二 事案の概要
一 本件は、別紙イ号方法目録記載の製造方法が、控訴人の特許権を侵害するとし
て、右イ号方法を用いて自動車用タイヤの滑止具を製造、販売している被控訴人に
対し、その製造、販売の禁止及び製造された滑止具の廃棄並びに損害賠償として昭
和六二年八月一日から昭和六三年二月末日までの間の実施料相当額金三六〇〇万円
及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた事案である。
二 争いのない事実及び争点
 左記に付加訂正する以外は、原判決の事実及び理由「第二 事案の概要」に記載
のとおりであるから、これを引用する。
1 原判決別紙イ号方法目録を当判決別紙イ号方法目録に改める。
2 原判決三枚目表四行目の「である。)」を「であるが、うち特許請求の範囲中
の『鋼目形成用凹溝』(公報1欄15行)の記載は、明細書のその余の箇所の記載
及び後記訂正審判申立の事実に照らし、前記『網目形成用凹溝』の誤記と解す
る。)」に改める。
3 原判決六枚目裏六行目の「作用効果に」から同七枚目表二行目末尾までを「作
用効果は、後記(三)のとおり、可塑性被覆材を被覆した紐状芯材で網目を形成す
るという本件発明の新規な構成によってもたらされるものであるが、これらの作用
効果のどれもが、特に一本の紐状の被覆芯材をその一本の状態のまま直接プレス型
の凹溝内に張って行く方法を用いることによる作用効果というわけではなく、
被覆芯材をプレス型外で一旦略網目状に形成する方法、即ち、イ号方法のような半
製品製造工程を経る方法によっても何ら変わりなく得られる作用効果であることに
照らして考えると、特許請求の範囲にいう「張り廻らして」とは、張り廻らした状
態にするという意味であって、張り廻らす方法まで具体的に特定して限定している
ものではないというべきである。
 特許請求の範囲の文言が、「張り廻らして」とあり「張り廻して」とされていな
いのは、右趣旨を明らかにした記載というべきである。
 従って、半製品製造工程を経るイ号方法にあっても、プレス型内の凹溝内に被覆
紐状芯材を「張り廻らして」いることには何ら変わりがない。」
4 原判決七枚目表二行目の次に行を変えて次のとおり加える。
「(三) 本件発明の構成のうち、従来技術との対比において新規な構成は、可塑
性被覆材を被覆せしめた紐状芯材をもって、交差した網目状に形成することにあ
る。そして本件発明は右構成をとることにより、可塑性被覆材を被覆する前段階で
芯材を網目状に編むことから出発する従来技術(本件公報1欄24行から33行に
記載の従来技術である。)の欠点を克服したもので、本件発明の前記作用効果は、
右欠点を克服したことにより得られたものにほかならず、すべて右新規な構成より
もたらされるものである。従って、前記(一)の効果中の「従来方法のように芯材
を網目状に編む必要がない」とは、可塑性被覆材を被覆する前段階で芯材を網目状
に編む必要がないことを意味するのであって、可塑性被覆材で被覆された紐状芯材
を使用し、本件発明の構成を全部備えるイ号方法が、(一)のみならず右全部の作
用効果を奏することは明らかであり、イ号方法が半製品製造工程を経るからといっ
て、この点につき何らの異同をきたすものではない。」
5 同七枚目表三行目冒頭の「(三)」を「(四)」に、同裏一〇行目冒頭の
「(四)」を「(五)」に、同八枚目表二行目の「(五)」を「(六)」に、それ
ぞれ改める。
第三 争点等に対する判断
一 当裁判所も、本件発明は、当初は網目を有しない被覆紐状芯材をプレス型(こ
のプレス型とは、
構成要件(三)のプレス成形用のプレス型である。)の凹溝内に張り廻らすことに
より、該プレス型内で初めて網目を形成する方法であり、プレス型凹溝に相当する
目孔をあらかじめプレス型外で形成する半製品製造工程を経てプレス成形する製造
方法であるイ号方法は、本件発明の技術的範囲に属さず、本件特許権を侵害するも
のではないと判断するが、その理由は、次のとおり付加訂正するほかは原判決の事
実及び理由「第三 争点に対する判断」において説示のとおりであるから、これを
引用する。
1 原判決一一枚目裏一二行目の「プレス型A」の次に「の」を、同一二枚目表五
行目の「プレス型」の次に「A」を、それぞれ加える。
2 同一二枚目裏三行目から同一三枚目裏三行目までを次のとおり改める。
「 ところで、控訴人は、本件発明の新規な構成は、可塑性被覆材を被覆せしめた
紐状芯材をもって交差した網目状に形成することにあり、右①、②を含む本件発明
の作用効果は、全部本件発明の右新規な構成よりもたらされるもので、半製品製造
工程を経るイ号方法にあっても右作用効果を奏する旨主張する。
 しかし、被覆紐状芯材を使用して網目を形成する点では共通であるとしても、イ
号方法では、半製品製造工程として、あらかじめプレス型外で被覆紐状芯材を網目
状に編み、その後右により得られた半製品をプレス型にはめ込む必要があることに
照らすと、①の効果はこれを奏しないというべきである。また、成形に関しても、
イ号方法にあっては、半製品の成形とプレス型にはめ込んでの成形との二段階にお
ける成形を行うこととなるから、右②の効果を奏しないものである。控訴人主張の
ように、①の効果中の「従来の如くあらかじめ芯材を網目状に編む必要がない」と
は、可塑性被覆材を被覆する前段階で芯材を網目状に編む必要がないことを意味す
るとしても、これに続く、「網目が正確にできないため型にはめ込み難い欠陥を除
去する」効果は、本件構成要件(二)の「プレス型内で網目を形成する」手段を用
いることによって初めて達せられるのであるから、網目の形成をあらかじめプレス
型の外で行う(半製品工程を置く)イ号方法が、
右①の効果全部を達しえないことは明らかである。
 控訴人は、「仮に被控訴人主張のようにプレス型外で一旦略網状にするとして
も、これはプレス型の凹溝形状どおりの網目にはなっていない。何故なら、被控訴
人のいう半製品は、ゴムが未加硫であり可塑性があるため、変形自在である。いわ
ば、ぐにゃぐにゃなのである。しかも、被覆紐状芯材を曲げた部分はゴムの性質に
より元に戻ろうとするから、半製品は決してプレス型の凹溝にはめ込みやすいもの
ではなく、半製品製造工程において、略網目状の半製品が得られたとしても、結局
プレス型内で特許請求の範囲にいう『網目』を形成するほかなく、イ号方法におい
ても『プレス型内で網目を形成し』ていることは明らかである。」旨主張するが、
右主張は、後記2(一)(二)の認定に照らし到底採用しがたく、イ号方法におい
ても半製品をプレス型に容易にはめ込むためには、如何にしてプレス型の凹溝に合
致する半製品を製造するかの工夫がなされ、それによって前記①後段の効果を挙げ
ていると考えられるから、仮にイ号方法が前記①の効果を達するものであっても、
それは本件特許方法とは別個の手段によるものとみなければならない。
 そうすると、本件発明の作用効果①②は、控訴人が新規な構成と主張する可塑性
被覆材を被覆せしめた紐状芯材をもって交差した網目状に形成するとの構成からの
み生じるものではなく、これに加え、右被覆紐状芯材をプレス型の凹溝内において
初めて網目状に張り廻らすという構成をとることによって初めて合理的に説明し得
る作用効果であるというべきである。」
二 なお、本件特許権について、被控訴人は、進歩性を欠く等主張して特許無効の
審判を請求し(特許庁昭和六三年審判第一〇一二八号)、これに対し、平成元年一
〇月一二日その請求が成り立たない旨の審決がなされたが、右審決取消訴訟(東京
高等裁判所平成元年行ケ第二七二号)の判決においてこれが取り消され、上告を経
て(最高裁判所平成三年行ツ第一三四号 平成三年九月二六日上告棄却判決言渡)
確定したことが認められるところ(乙一四ないし乙一七)、控訴人は、
未だ本件特許権の無効が確定した訳ではなく、かつ、控訴人は平成三年一一月一九
日付で特許法一二六条に基づく訂正審判請求を行っており(特許庁平成三年審判第
二二六三五号)、いずれこの訂正審決により本件特許権の無効審判請求が再び成立
しないものとされること、しかもこの訂正を経ても、被控訴人の実施するイ号方法
が本件特許権の技術的範囲に属することには消長がないから、右訂正審決の結果を
待たず、本件審理を終結して終局判決にまで至るのは訴訟経済にも反し妥当性を欠
く旨主張する(平成四年四月一五日付控訴人の上申書)。
 しかし、右訂正審判の結果の確定までにはなお相当の日時を要すると思料される
うえ、被控訴人の実施するイ号方法が本件特許権を侵害するかどうかについての本
件における争点とこれに対する前記当裁判所の判断は、右訂正審判の帰趨如何によ
って何ら左右されるものではない(即ち、右訂正箇所は、特許請求の範囲中、「鋼
目形成用凹溝」を「網目形成用凹溝」と誤記訂正し、右「凹溝」についてその「幅
方向及び底部に凹凸状を形成」する要件を付加し、「可塑性被覆材を被覆した紐状
芯材」の張り巡らし方について更に限定を加えたものであって、その通り訂正され
ても、イ号方法が「プレス型内で網目を形成する」要件を充足するかどうかの本件
判断には何らの影響もない。)から、その結果を待つ必要はないものである。
第四 結論
 以上によれば、控訴人の請求は、その余について判断するまでもなくいずれも失
当であるから、これを棄却すべきであり、これと同旨の原判決は相当である。
 よって、本件控訴を棄却し、控訴費用の負担について民訴法九五条、八九条を適
用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 潮久郎 山崎杲 上田昭典)
 イ号方法目録
(1) プレス型(別紙図面(一)及び(二)の各第2図に示す。)
プレス型Aの表面に、製品15に合致する形状・模様・寸法の凹溝aを形成する。
(2) 半製品(別紙図面(一)及び(二)の各第1図に示す。)
① プレス型Aの外において、未加硫ゴム2を被覆せしめたナイロン系の紐状芯材
1をもって、
凹溝aに相当する目孔を形成した紐状部10を形成し、
② さらに、右の紐状部10に加えて未加硫ゴム片12、13、14(図面(二)
においては12及び13のみで構成される。)を添付し、半製品11を得る。
(3) プレス成形工程
① 右半製品11を前記プレス型Aの凹溝a内にはめ込んでから、
② ホットプレス装置に搬入し、該プレス型Aを上昇して上型に押圧しつつ加熱
し、半製品11を型内で加硫しつつ一体成形する。
(4) 製品(別紙図面(一)及び(二)の各第3図に示す。)
プレス型Aから加硫成形品を取り出した後、バリを除去することにより製品15を
得る自動車用タイヤの滑止具製造方法。
以上
図面(一)<04637-001>第1図
 第2図
図面(二)<04637-002>第1図
 第2図
 第3図

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛