弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人大月和男の上告趣意について。
 同趣意の第一(第一乃至第三点)は事実誤認及び単なる法令違反の主張であつて、
適法な上告の理由とならない。(第一審判決挙示の証拠によれば、所論交付金は、
投票買収資金と法定選挙費用を一括し、そのいずれの部分が買収資金でいずれの部
分が費用であるかの区別のできない関係において手交せられたものであることが明
らかであるから、その金員の全額につき不法性を帯びるものと解すべきであるとし
た原判決の判断は正当である。)(又原判決が第一審判決判示第一、第二の金員交
付について、公職選挙法第二二一条一項五号の交付罪の成立を認め、しかも第一審
判決破棄の理由とならないと判示した点も正当である。)
 同趣意の第二は、量刑不当の主張であつて、上告適法の理由とならない。
 同趣意の第三は判例違反を主張するけれども、第一審判決挙示の証拠によれば、
本件は、被告人は資金(同判示第一、第二、)を調達して、これらの処分を選挙の
玄人たるAらに一任したと認めちれる場合であつて、所論判例とは、その前提事実
を異にするのであるから、所論の判例は本件に適切でない。
 弁護人海野普吉、同位田亮次の上告趣意第一点は、大月弁護人の所論第一の第二
点と同旨に帰し採用できない。
 同第二点は量刑の非難である。
 弁護人岸達也の上告趣意第一点について。
 被告人はA等と共謀関係のあることを前提として、判例違反を主張するが、大月
弁護人所論第三のような事情であるから採用できない。
 所論第二点について。
 右の中(一)は大月弁護人所論第一の第二点と同旨であり(二)は第一審判決判
示第三事実の事実誤認の主張であり、(三)は所論第一点同様A等との共謀関係の
成立を前提とする法令違反の主張であり、(四)は右(一)と結局同旨に帰着する。
 所論第三点について。
 訴訟法違反の主張であるのみならず、原審で主張、判断のなかつた事項に関する
ものであつて適法な上告の理由とならない。
 所論第四点について。
 自白調書等の任意性の調査については、この取調は、その方法を問わず、また取
調の有無は調書の記載要件でもないから、この取調をしなかつたという非難は当ら
ない。従つて憲法違反の所論はその前提を欠く。
 同第五点は事実誤認の主張であり、同第六点は量刑の非難である。
 同第七点について。
 原審は本件第一審判決判示第一、二の事実を、交付罪であるが判決に影響するこ
とが明らかでないから破棄しないとして控訴を棄却したに止り、原判決を破毀して
自ら法令の適用をしたものでないから、罰条変更に関する刑訴三一二条の規定の準
用の余地はなく、かかる手続を何ら必要としなかつた場合である。挙示の判例はこ
の場合に適切でない。
 弁護人徳岡一男の上告趣意について。
 第一点は事実誤認の主張であり、第二点は、大月弁護人の所論第三のとおり採用
できない。
 第三点は任意牲の調査をしていないとの訴訟法違反の主張であるが、岸弁護人の
第四点と同旨に帰し、採用できない。
 第四点は、第一審判決の理由不備の主張であり、第五点は量刑の非難であつて、
いずれも適法な上告の理由とならない。
 また記録を精査しても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて同四一四条三八六条一項三号、により主文のとおり決定する。
 この決定は、裁判官全員一致の意見である。
  昭和二九年六月一九日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    谷   村   唯 一 郎

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