弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件控訴を棄却する。
         理    由
 本件控訴の趣意は弁護人柳沼作己作成名義の控訴趣意書記載の通りであるから之
をここに引用し当裁判所は之に対し次の通り判断する。
 第一、二点、について
 原判決挙示の証拠によれば原判示各事実は之を認めるに十分である。右証拠並び
に原審証人A、同B、同C、同D、同E、同F、同G、同Hの原審公判における供
述並びに当審における被告人の供述を総合すれば判示I、J、K、L、M、N、
O、P、Q、Rは何れも芸奴であるがいわゆる自前芸者(自已が置屋を営業すると
共に芸者であるか又は自宅から置屋を通じ又は通じないで営業する者)でなく、看
板借芸者(置屋に籍をおき自宅から通う者)でもなく芸妓置屋に住み込み置屋より
寝具、タンス、鏡台、衣裳等を借り受け或は前借し飲食物の供給を受け、料理屋貸
席等よりの芸妓の注文は常に検番、置屋を通じて行われ所属置屋との話合により宴
席に出向いて芸妓稼をしその対価たる玉代、祝儀等も検番、置屋を通じて支払われ
る等置屋に依存して芸者稼をなし、各芸妓は各置屋に対し置屋組合の申合せにより
定められた定額の食費代、前記諸必要品の使用料、置屋の屋号の下に働くための名
儀料その他芸妓稼のための諸般の便宜を受けることの謝礼等を含めたいわゆる看板
料を毎月支払つている芸者であつて自力では資金がない為独立して芸者稼業ができ
ず置屋の資金、設備、信用、得意先に依存しその置屋の名において置屋を通じての
み稼業を営む者であること、又判示芸妓置屋のAことA、BことB、CことC、S
ことS、EことE、DことD、TことTはいわゆる芸妓置屋営業をしていたもので
あつて、その営業の実体は前記芸妓達をそれぞれ自家に居住せしめて前記の如く寝
具、タンス、鏡台等を貸与し金の前貸もし飲食物を提供し料亭貸席より検番を通じ
芸妓に口がかかる場合は名指以外は自己の裁量により自家の家号の下にその所属の
芸妓を宴席に出向させ各芸妓の玉代なども自家の家号名義で検番を通じて受領しこ
れら芸妓の収入から前記の看板料を徴し、これを営業収益として経営しているもの
であること、及び被告人が本件置屋と芸妓との関係が敍上のようなものであること
を知りながら、原判示のように判示各置屋よりの求人及び各芸妓よりの求職の申込
を受けて、その間に立つて前記関係の成立をあつ旋し、それぞれ芸妓を置<要旨>屋
に住込ませ、その報酬を得たものであることが認められる。而して叙上によつて明
かなように本件芸妓置屋営業の実体は、料理店等芸妓需要者側の注文に応じ
て自家住込の芸妓の労務を遊客に提供し芸妓をしてその対価を獲得させ、そのうち
から一定の金額を看板料または下宿料等の名義で徴収してこれを収益とする営業で
あり、一方本件芸妓は前記のように置屋の有形無形の経済的なカに依存し、これに
よつて注文に応じて客席に侍して諸般の労務に服することによつて置屋の右営業内
容を充足することを職業とするものであるから、(本件置屋と芸妓との関係が単に
下宿屋と下宿人との関係に過ぎないとする原審証人B及び同Dの各供述部分は前記
他の証拠と比照して到底採用することはできない。)このような去妓の職業形態
は、置屋のために労務に服することに外ならないものというべく、置屋と芸妓との
以上のようた関係は、職業安定法第五条に所謂雇用関係に該当するものと認めるの
が相当である。もとより同法に所謂雇用関係は所論のように必しも民法第六百二十
三条にいう雇用契約と同一に解すべきものではなく、また雇用関係における被用者
は隷属的又は従属的労働者もしくは労働基準法に所謂労働者に限定するいはれはな
く、労務が直接使用者に提供され、その対価が相手方自身の計算において支払われ
ることを要するものでもない。
 論旨は芸妓は日常の起居、外出、客の選択等いずれも自由であり、自ら所得税を
納めていることから見ても置屋との間に使用従属の関係はないから、被告人の所為
は職業安定法に所謂雇用関係のあつ旋に該当しない旨主張するのでこの点について
考察するのに、本件芸妓か所謂「丸抱え」または「分け」もしくは「稼ぎ分」と称
する制度の下に置屋に対し隷属的労務に服するものであるとの証拠はなく、また、
芸妓は所論のような自由を持ち、個個の労務に服するや否やの自由が置屋に拘束さ
れることなく、自ら所得税を納めていること(前記証拠によれば芸妓の所得税は置
屋組合において予め差し引いて納入するものであることが認められる)等は前記説
明により明かなように本件置屋との間が雇用関係たることを認める何等の妨げとな
るものではない。原判決が被告人の判示所為を職業安定法第三十二条第一項第六十
四条第一号に該当するものとして処断したことは結局において正当であるといわな
ければならない。もつとも原判決は弁護人の雇用関係否定の主張を排斥するにあた
り、職業安定法第五条第一項に所謂雇用関係とは一般社会通念上使用従属の関係あ
りと認められる場合を包含し、芸妓と置屋との間に従属関係があると見るのを相当
とする旨の説明をしていることは所論の通りである。
 而して、原判決の用いた使用従属が前記のような意義を持つているものと解する
ならば原判決にはその点において事実の誤認及び法令の解釈の誤りがあるというべ
きであるが、たとえ右のような事実の誤認または法令の誤解があつたとしても、原
判決は結局本件芸妓及び芸妓置屋の関係を職業安定法にいう雇用関係に該るものと
して被告人の有料職業紹介の所為に対し、職業安定法の前記各条項を適用処断した
ものであるから、判決に影響を及ぼすものとは認められない。原判決には所論の如
き事実の誤認もなく又法律の解釈をあやまり適用すべからざる法条を適用した違法
はない。論旨は全て理由がない。
 よつて本件控訴は理由がないので刑事訴訟法第三百九十六条を適用し之を棄却す
べく主文の通り判決する。
 (裁判長判事 谷中董 判事 荒川省三 判事 福島昇)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛