弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 被告人全部の弁護人関原勇の上告趣意第一点について。
 所論は違憲をいうが、所論供述か強制によつたものであることを認むべき証拠が
ないから、その前提を欠き刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 同第二点について。
 所論は違憲をいうが、憲法三七条一にいわゆる公平な裁判所の裁判とは、その組
織、構成において偏頗のおそれのない裁判所の裁判を指すものであることは当裁判
所屡次の判例であるから、所論はその前提を欠くものである。(なお、逮捕状を発
し、起訴前の勾留に関する処分に関与した裁判官が第一審の審判をしても憲法三七
条一項の公平な裁判所の裁判でないとはいえない旨の判例集四巻四号五三五頁以下
大法廷判決参照。)
 同第三点乃至第六点について。
 同第三点、第四点は、違憲をいう点もあるが、その実質は、事実誤認並びにこれ
を前提とする違憲、違法の主張に帰し、同第五点は、違憲をいうも、その実質は、
単なる訴訟法違反の主張に帰し(なお、共同被告人を分離して証人として尋問して
も、同証人は自己に不利益な供述を拒みうるものでこれを強要されないものである
から、憲法三八条一項違反の前提を欠くものであるこというまでもない。)、同第
六点は、量刑不当の主張であつて、いずれも、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 被告人尾台湊の上告趣意について。
 所論は違憲をいうが、所論自白が強要されたものであること、所論の差別をし又
は自由をおかした事実を認むべき証拠がなく、また共同被告人を証人として喚問し
ても自己に不利益な供述は拒みうるもので強要されないものであるから、いずれも、
違憲の前提を欠くものであり、その余は、結局事実誤認、これを前提とする違憲又
は違法の主張を出でないものであつて、すべて、刑訴四〇五条の上告理由に当らな
い。
 被告人Aの上告趣意について。
 所論は、違憲をいう点もあるが、所論長期不当拘留の事実並びに所論強制、拷問
等の事実又は宗教、思想、出版、結社の自由を蹂躙した事実を認むべき証拠がなく、
その余は、事実誤認、これを前提とする法令違反又は単なる訴訟法違反の主張を出
でないものであつて、すべて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 被告人Bの上告趣意について。
 所論は違憲をいう点もあるが、所論自白が、不当な長期勾留後のものであること
(所論勾留は昭和二六年一二月六日で、所論自白は同月一〇日乃至一三日であるこ
と記録上明白である。)、並びに、強制、脅迫等によるものであることを認むべき
証拠がなく、また、共同被告人を証人としても自己に不利益な供述を強要されるも
のではなく、その他所論の差別をなし又は思想及び良心の自由を侵した事実が認め
られないから、いずれも、その前提を欠くものであり、その余は、事実誤認、並び
に、これを前提とする法令違反の主張に帰し、すべて、刑訴四〇五条の上告理由に
当らない。
 被告人Cの上告趣意について。
 所論は違憲をいうが、所論強制、拷問の事実並びに所論差別待遇をし又は思想、
良心の自由を侵した事実は、これを認むべき証拠がないから、その前提を欠くもの
であり、その余は、事実誤認、単なる訴訟法違反、並びに、これらを前提とする違
憲、違法の主張であつて、すべて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 被告人Dの上告趣意について。
 所論は違憲をいうが、所論の事由により差別を為し又は思想、良心の自由を侵し
たこと、並びに、所論強制、脅迫の事実はこれを認むべき証拠がないから、その前
提を欠くものであり、その余は、事実誤認を前提とする違憲又は量刑を非難するに
過ぎないものであつて、いずれも、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 よつて、刑訴四一四条、三八六条一項三号に従い、裁判官全員一致の意見で、主
文のとおり決定する。
  昭和二九年六月三日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    岩   松   三   郎
            裁判官    入   江   俊   郎

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