弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人Aを罰金五千円に、
     被告人B、同C、同Dの三名を各罰金参千円に処する。
     右罰金を完納することができないときは金弐百円を一日に換算した期間
当該被告人を労役場に留置する。
     押収に係る日本刀一振(昭和二五年証第一五四七号の一)大型拳銃一挺
(同証号の三)は何れも没収する。
     訴訟費用は全部被告人四名の連帯負担とする。
         理    由
 本件控訴の趣意は原審検事田中万一作成名義の控訴趣意書のとおりであるから、
これを引用し、次のとおり判断する。
 <要旨>銃砲とは社会通念或は学術上から考察すれば色々に説明され又色々の種類
があるであろうが、銃砲刀剣類等所持取締令第一条及び銃砲等所持禁止令施
行規則第一条に各定めるところによれば、弾丸発射の機能を有する装薬銃砲をいう
のであるところ、右法令制定の趣旨は我国公共の福祉、安寧秩序を確保する為人に
危害を加えるに役立つような同令所定の物件が隠匿保存されることを根絶しようと
するにあるものである(昭和二四年五月二六日最高裁判所第一小法廷判決参照)点
から考えれば、銃砲とは右要件に適合するのみならず、なお人畜に傷害を加えるに
足りる威力を有するものであることも必要であることは所論のとおりである。しか
も同令制定の趣旨に鑑みれば、その威力は必ずしも所謂戦闘の用に供しうるに足る
ものでなければならないものとは解し難い。
 而して原審鑑定人E作成名義の鑑定書並びに同人の原審公判廷における証言及び
当審鑑定人F作成名義の鑑定書並びに同人の当公判廷における証言を綜合すれば、
本件大型拳銃なるものは正に弾丸発射の機能を有する装薬銃砲であつて、人畜に傷
害(場合によつては殺傷)を加えうる威力を有するものであることを認めるに十分
である。
 なお、原審並びに当審証人Gの各公判供述、原審証人Hの公判供述、被告人等四
名の各司法警察員及び検察官に対する各供述調書の記載によつて認めうるように、
本件拳銃は先頃の大戦の末期我国海軍が敵軍の本土上陸に備えて沿岸防備用に、大
量に作成し始めたものであり、且つ被告人等は武器としての拳銃を多量に取引する
目的でその見本として本件拳銃を入手したものである経緯に徴しても本件拳銃は銃
砲等所持禁止令に定める銃砲であると認めるに十分である。
 原審鑑定人I作成名義の鑑定書の結論は本件大型拳銃は普通拳銃とは全く異つた
一つの筒であつて、例えば作業始の合図に用いる信号筒の如き性能しかもたぬもの
であるというのであつて、恰も銃砲等所持禁止令に定める銃砲ではないと認めたか
の如くである。けれども本件拳銃はその外観上の型態も所謂拳銃の型態を備えてお
り、単なる筒とは到底常識上認め難いところであるのみならず、右鑑定の全趣旨も
本件拳銃が弾丸発射の機能を有する装薬銃砲であることは否定せず、寧ろこれを是
認しているのであつて、只戦闘の用に供しうるに足る威力を有する造兵学上の所謂
拳銃には該当しないという趣旨に帰するものと認められる。その他たとえ射撃の有
効距離は十数米であり且つ連続しては数発しか発射できないものである点等を併せ
考察しても右I鑑定人の鑑定書からは本件拳銃が銃砲等所持禁止令に定める銃砲で
はないという結論は引き出し得ないのである。
 又原審証人Gの公判供述によれば、本件大型拳銃は鉄屑の中から拾得して来たも
のであるというのであるけれども、本件右拳銃が当時単なる鉄屑であるとはそれ自
体に徴し到底肯認し得ないところである。
 以上のとおりで、本件右拳銃は銃砲等所持禁止令に定める銃砲に該当するものと
認めるべきものである。
 しからば、これを右銃砲に該当しないと認めた原判決は事実を誤認したか、或は
法令の解釈適用を誤つたかの何れかであつてこの誤が判決に影響を及ぼしているこ
とは言うまでもないところであり、論旨は理由がある。原判決は破棄すべきもので
ある。
 本件は当審において直に判決するに適するものと認めるから、刑事訴訟法第三九
七条、第四〇〇条但書の規定に則り次のとおり更に破棄自判する。
 (罪となるべき事実)
 被告人等は何れも法定の除外事由がないのに、
 第一、 被告人Bは昭和二四年九月頃東京都目黒区a町b番地A方等において、
大型拳銃一挺(昭和二五年証第一五四七号の三)を所持し、
 第二、 被告人Aは、
 (一) 昭和二四年九月頃その自宅である前記場所において大型拳銃一挺(前
向)を所持し、
 (二) 昭和二五年五月二〇日頃その自宅である前同所において日本刀一振(同
号の一)を所持し、
 第三、 被告人Cは、昭和二五年五月初旬頃同都同区c町d番地の自宅等におい
て大型拳銃一挺(同書の三)を所持し、
 第四、 被告人Dは同年五月初旬頃両部中央区e町f丁目g番地料理店「J」こ
とK方等において大型拳銃一挺(前同)を所持していたものである。
 (証拠の標目) (省略)
 (法令の適用)
 被告人等の各所為は昭和二七年法律第一三号によつて法律としての効力を有する
銃砲刀剣類等所持取締令附則3項、銃砲等所持禁止令第一条第一項、第二条、罰金
等臨時措置法第二条に該当するところ、所定刑中何れも罰金刑を選択する。被告人
Aの右各罪は刑法第四五条前段の併合罪であるから、同法第四八条第二項により各
罪に定めた罰金を合算し、その余の被告人三名については所定の金額の各範囲内
で、被告人Aを罰金五千円に、その余の被告人三名を夫々罰金参千円に処すべきも
のとし、右罰金を完納することのできないときは刑法第一八条により金二百円を一
日に換算した期間当該被告人を労役場に留置すべく、押収に係る主文掲記の日本刀
一振と大型拳銃一挺は刑法第一九条第一項第一号、第二項に則り日本刀は被告人A
から、拳銃は被告人Dから夫々没収することとし、訴訟費用は原審当審共全部刑事
訴訟法第一八一条第一項、第一八二条に則り被告人全員の連帯負担たるべきものと
する。なお本件公訴事実中、被告人Bが信号拳銃一挺を所持していたとの点は、同
拳銃はその構造性能の点から見て銃砲等所持禁止令に定める銃砲とは認められない
ところであるから被告人は無罪たるべきものであるが、右事実は前記認定の大型拳
銃一挺の所持と包括一罪として起訴されたものと認められるので、特に主文におい
て無罪の言渡をしないこととし主文のとおり判決する。
 (裁判長判事 山田要治 判事 石井麻佐雄 判事 石井文治)

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