弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人岡崎耕三の上告趣意書第一点は「原判決は法律違反である。按ずるに原審
裁判所の認定する事実は、昭和二十二年九月十日に為された窃盗事実であることは、
記録上明白である。而して右被告人は現行犯として逮捕せられたる上、同年同月十
六日に広島地方裁判所福山支部に於て第一審裁判を受け即日懲役一年の判決を受け
たことも亦記録上明白である。然るにこの第一審裁判に於ては弁護人が附されてい
ない。これは当時被告人は極力弁護人を附することを希願して居たことは其の後に
於ける第二審竝びに当審に於ける被告の心境よりして充分推察するに難くない。而
して右は当時竝びに現在に於ても、被告人の住所は岡山県児島郡a町大字b村c番
地に存し、被告人の逮捕裁判せられたる福山市とは全く人の交通も少く且頗る遠距
離にあるのであつて、其の為めに弁護人の選任も遅延した次第である。右の九月十
日より同月十六日までの短期を以て公判期日を指定、裁判したる第一審は刑事訴訟
法第四百十条第十一号の「不法ニ弁護権ヲ制限シタルトキ」に該当し違法なること
を免れない。上告が(第二審判決を対象とする)第一審判決の不法を攻撃すること
は、上告論旨として不適法であるとする判例は既存するけれども、国民は厳として
三審制の裁判を受くる権利を有するのであつて、その第一審に於ては、前述の距離
の点、其の他当時の通信情況の不良等を深く洞察してその公平なる措置として公判
期日を延長し、被告人をして弁護人を選任し得る丈けの時間的予猶を与ふべきであ
つたのに、これを与へず、徒に審理の迅速のみを事としたのであつて、斯る事情の
下に行われた第一審裁判は不適法にして、従てこれを三審裁判の第一審裁判として
認めることは不法であり、而してこの意味に於て原審は適法な意味に於て第二審で
はない。それを原審は第二審として、裁判したものであるから原審裁判は違法であ
る。」と云うのである。
 被告人又は身体の拘束を受けた被疑者は、その利益を防禦する為めに、弁護人を
選任することができるのであつて、裁判所はこれらの者に対し、弁護人の選任その
他弁護権の行使に支障がないように十分な機会を与えなければならないことは所論
のとおりであるが、今、本件において、記録についてみれば、被告人は岡山県児島
郡a町に居住するものであつて、昭和二十二年九月十日本件窃盗罪の嫌疑によつて
その旅行先の広島県福山警察署構内で逮捕ぜられたが、同月十三日広島地方裁判所
福山支部判事の被告人に対する勾留訊問の際、判事は本件については直ちに弁護人
を選任することができる旨を告げたに対し、被告人は弁護人を選任したい旨の意思
を表明した形跡もないし、つゞいて同月十六日同裁判所において、公判の開かれた
際にも、被告人は同様弁護人選任の意思を表明することもなく、また、弁護人選任
の準備に支障がある等の理由によつて、同日の公判開廷に対して異議を述べた事蹟
も全くない。かような事情関係においては、被告人が身体の拘束を受けてから、短
時日の後に公判が開かれ、弁護人を付することなくして、公判の審理を受け終つた
からといつて、所論のように、裁判所が不法に被告人の弁護権を制限したものとい
うことはできない。そればかりでなく、かりに所論のような違法があつたとしても、
それは第一審訴訟手続上の暇疵であつて、すでに、第一審判決に対する控訴の申立
があり、これに対して、第二審判決が言渡された以上、右のような瑕疵をもつて第
二審判決に対する上告の理由とすることはできない。右の瑕疵があるから、第一審
の判決は全然なかつたにひとしいという論旨は、とうてい、肯認することができな
い。論旨はすべて理由がない。
 同第二点は「原判決は憲法第三十七条一項に違反する。按ずるに「すべて刑事々
件においては、被告人は、公平な裁判所の……裁判を受ける権利を有する。」(憲
法第三十七条第一項)然るに原審判決について見るに、被告人は前科なく、又未だ
嘗て司直の下に赴いたこともなく、偶々本件は記録に徴するも明白なる如く商用に
て未知の福山市に到り、商談不成立の為め意外に金銭を費消し困却中、友人より勧
誘せられて、その犯行に及びたるものであつて、その動機に於ても誠に宥恕すべき
ものがある。而してその犯行たるや、本件一回のみにして、その賍物も大部は被害
者に近還せられ、且被害者よりもその罪の軽からんことを嘆願して居ることは、記
録によつて明白である。而も被告人は前非を悔い、只管更生を誓い居り、近く出生
するであろう愛児を憶い、日夜懊悩して居る次第で、斯様な事情の下に於て、原審
がこれに対し懲役八月の実刑を科したのは、前記憲法所定の「公平な……裁判を受
ける権利」を侵害した不法のものである。」と云うのである。
 論旨は、原判決が被告人に対して刑の執行を猶予しなかつたのは不公平であると
主張し、刑の量定不当を憲法第三十七条第一項によつて、上告理由とするものであ
るが、しかし同項にいわゆる「公平な裁判所の判例」とは偏頗や不公平のおそれの
ない組織と構成とをもつた裁判所による裁判を意味するものであつて、被告人から
見て、刑の量定を不当なりとして憲法の右条項によつて、上告の理由とすることが
できないことは、すでに当裁判所の判例(昭和二十三年(れ)第一六三号強盗予備
窃盗被告事件同年五月二十六日大法廷言渡)とするところである。
 右の理由により、刑事訴訟法第四百四十六条に則つて、主文のとおり判決する。
 この判決は、裁判官の全員一致の意見によるものである。
 検事 柳川真文関与
  昭和二十三年七月十七日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    塚   崎   直   義
            裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎

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