弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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平成19年(む)第37号
主文
本件各請求をいずれも棄却する。
理由
1本件請求の趣旨及び理由は,主任弁護人作成の平成19年1月9日付け裁定請求書(1)(な
お,同請求書第1の①ないし⑤記載の資料を以下「本件資料」という。),同年4月10日付け反
論書(1)に記載のとおりであるから,これらを引用する。
2当裁判所の判断
検察官は,本件資料についての主任弁護人の主張関連証拠開示請求に対し,平成17年10
月17日には被告人に対する追起訴が終了しているから,同月19日にポリグラフ検査を行っ
た事実の有無は公訴提起の効力に何ら関係がない上,同日以降には被告人の供述調書も一
切作成されておらず,供述調書の任意性の判断にも何ら関係がないことからすると,開示
の必要性は全く存在せず,本件資料を開示しない旨回答し(主任弁護人作成の平成18年11
月27日付け主張関連証拠開示請求書第3に対応する検察官作成の同年12月15日付け証拠開
示請求等に対する回答書第2の3),さらに,検察官作成の平成19年3月29日付け意見書にお
いて,公訴棄却,任意捜査の違法性,違法収集証拠の主張いずれについても弁護人の主張
が明示されているとはいえず,刑事訴訟法316条の17の主張明示義務に違反し,同法316
条の20の証拠開示請求の前提を欠くというべきであるし,仮に現段階の弁護人の主張を前
提にしても,開示請求に係る各証拠は,争点とおよそ関係がないから,弁護人の主張予定
事実との関連性もない旨主張している。
そこで,まず,弁護人の主張が明示されているといえるかを検討するに,主任弁護人作
成の平成18年11月27日付け証明予定事実記載書及び平成19年4月23日付け予定主張補充書
面(違法収集証拠関連)における弁護人の公訴棄却,任意捜査の違法性,違法収集証拠,任
意性の欠如に関する各主張は,捜査の違法性や任意性の欠如を基礎づける事実,取調べの
状況等をそれぞれ証拠を挙げながら指摘したものとなっており,弁護人の主張の趣旨は明
らかとなっているから,これが全体としてやや包括的なものではあっても,そのことのみ
によって弁護人の主張が316条の17の主張明示義務に違反する程度に明示性を欠くものと
まではいえない。
次に,弁護人の主張と開示請求に係る本件資料の関連性等について検討する。弁護人は,
全く必要性のない別件のポリグラフ検査を行ったことは,悪質な自白強要手法を用いたり,
予断と偏見に満ちた態度で被告人の取調べに臨んでいた捜査機関の捜査方針や姿勢を示
す間接事実として重要であり,弁護人の上記各主張といずれも具体的関連性を有する旨主
張している。弁護人の証明予定事実は,被告人の供述調書の任意性の欠如に関するものの
ほか,公訴権濫用,任意捜査の違法性,違法収集証拠に関するものといったように,本件
に関する捜査全般に及んでいることに加え,別件のポリグラフ検査を行ったのが被告人に
対する追起訴が終了した直後であることからすると,その関連性の程度はともかく,検察
官指摘の点を踏まえても,弁護人の主張を全体としてみれば,本件資料と弁護人の主張が
全く関連しないとはいえない。
しかしながら,本件で任意性が争われている被告人の供述調書等は,すべて追起訴が終
了する以前に作成されたものである上,本件の追起訴がすべて終了した後に,別件につい
て実施したポリグラフ検査の内容及び結果によって,本件に対する捜査機関の捜査方針が
直ちに明らかになるものとはいえないから,弁護人が主張する事実と本件資料との関連性
は乏しく,これにつれて本件資料の開示を求める必要性も小さいといわざるを得ない。ま
た,本件資料は,別件についてのポリグラフ検査を内容とするものであり,その内容は別
件の捜査の秘密に関わるところが大きく,開示による弊害も大きいといわなければならな
い。
以上を総合すると,本件資料は刑事訴訟法316条の26第1項の「開示をすべき証拠」には該
当しないというべきであり,主任弁護人の本件資料の開示請求には理由がない。
よって主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官・天野登喜治,裁判官・池田信彦,裁判官・赤谷圭介)

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