弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

平成24年10月30日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成21年第2425号損害賠償請求事件
口頭弁論終結日平成24年7月10日
判決
(当事者の表示省略)
主文
1被告横浜市は,原告aに対し,2543万5968円及びこれに対
する平成18年7月27日から支払済みまで年5分の割合による金員
を支払え。
2被告横浜市は,原告bに対し,2543万5968円及びこれに対
する平成18年7月27日から支払済みまで年5分の割合による金員
を支払え。
3原告らの被告横浜市に対するその余の請求及び被告独立行政法人国
立成育医療研究センターに対する請求をいずれも棄却する。
4訴訟費用は,原告らに生じた費用の100分の44と被告横浜市に
生じた費用の100分の40と被告独立行政法人国立成育医療研究セ
ンターに生じた費用のすべてを原告らの負担とし,その余の費用を被
告横浜市の負担とする。
5この判決は,第1項及び第2項に限り,仮に執行することができ
る。
事実及び理由
第1請求
1被告独立行政法人国立成育医療研究センターは,原告aに対し,275万円
及びこれに対する平成18年6月16日から支払済みまで年5分の割合による
金員を支払え。
2被告独立行政法人国立成育医療研究センターは,原告bに対し,275万円
及びこれに対する平成18年6月16日から支払済みまで年5分の割合による
金員を支払え。
3被告横浜市は,原告aに対し,4227万2794円及びこれに対する平成
18年7月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4被告横浜市は,原告bに対し,4227万2794円及びこれに対する平成
18年7月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
1前提事実(当事者間に争いのない事実及び掲記証拠により認められる事実)
原告らは,平成18年7月27日に死亡したc(平成14年10月16日
生。死亡当時3歳。)の父母である。
亡cは,国立成育医療研究センター(以下,後記2の承継に前後を通じて
「被告成育」という。)に入院及び通院して,治療を受けていた。
被告横浜市は,横浜市北部児童相談所(以下「北部児相」という。)及び
横浜市中央児童相談所(現在は西部児童相談所。以下「中央児相」とい
う。)を設置する地方公共団体である。
被告成育は,北部児相に対し,平成18年6月16日,原告らが亡cに対
して適切な栄養を与えることができていなかったため,ビタミンD欠乏性く
る病(四肢骨が湾曲し変形する病気)発症に至ったと考えられ,結果として
不適切な養育が行われていた可能性が高いとして,児童福祉法25条に基づ
く通告をした(以下「本件通告」という。甲3)。
北部児相の長は,平成18年7月3日,児童福祉法33条に基づき,亡c
を一時保護する決定をした(以下「本件一時保護決定」という。甲14の
1)。亡cは,本件一時保護決定に基づき,神奈川県立こども医療センター
で保護された(以下「こども医療センター」という。甲14の2)。
北部児相の長は,同月14日,本件一時保護決定を解除したが,同日,再
び一時保護の決定を行った(以下「本件再一時保護決定」という。甲17,
18)。
亡cは,本件再一時保護決定に基づき,中央児相の一時保護所で保護され
た。
亡cには,卵などの食物アレルギーがあった。
被告横浜市は,被告成育及びこども医療センターからの情報により,亡c
に上記の食物アレルギーがあることを認識しており,そのため,中央児相で
は,亡cに対し,上記のアレルギー反応を示すものを除いて,食事をさせて
いた。
しかし,中央児相の職員は,亡cに対し,平成18年7月27日午前7時
30分ころ,アレルギー源の卵を含む竹輪(以下「本件竹輪」という。)
を,誤って食べさせてしまった。
亡cは,同日午後2時30分ころ,ぐったりした様子で,手足や顔にチア
ノーゼが出ており,直ちに救急搬送されたが,同日,死亡した(甲21の
1,甲22)。
2事案の概要
本件は,本件通告が栄養・医療ネグレクトがあるなど虚偽の事実を通告する
ものであり,本件一時保護決定及び本件再一時保護決定等も違法であるとし
て,被告成育に対しては債務不履行又は不法行為に基づき,被告横浜市に対し
ては国家賠償法(以下「国賠法」という。)1条1項に基づき,それぞれ,損
害賠償と遅延損害金を請求し,また,中央児相の職員が誤ってアレルギー源を
含む食物を食べさせたため,亡cが死亡したとして,被告横浜市に対し,国賠
法1条1項に基づく損害賠償と遅延損害金を請求する事案である。
被告成育は,高度専門医療に関する研究等を行う独立行政法人に関する法律
附則及び同法施行令により,国から本件訴訟を承継した。
3争点
本件通告の違法性等
本件一時保護決定,本件再一時保護決定等の違法性
中央児相の職員の過失及び亡cの死因
損害の存否及び額
4当事者の主張
争点
(原告らの主張)
ア被告成育は,本件通告により,真実は医療ネグレクトや栄養ネグレクト
がなかったにもかかわらず,これがあるとの虚偽の情報を伝え,伝えるべ
き情報を故意に伝えず,積極的に一時保護に加担するなどしていた。した
がって,本件通告等は違法であり,被告成育との間の診療契約上の債務不
履行を構成する。
イ医療ネグレクトの不存在
虐待通告や一時保護決定に値する医療ネグレクトがあるというために
は,①その治療及び検査が必要であり,保護者にその説明がされ,②そ
れにもかかわらず,保護者が児童に必要な治療及び検査を受けさせない
ことが必要である。
本件通告は,原告らが,亡cの全身のレントゲン撮影,CT検査,ア
ルファロールの投薬の増量,血液検査及びステロイドの使用を拒否し,
通院の予約を取り消すなどしたことを医療ネグレクトとしているが,い
ずれも①②の要件を欠いている。
原告らは,足のレントゲン撮影は受けさせていたものの,全身の撮影
が必要という説明を受けておらず,足だけで足りるのであればそれだけ
にして欲しいと述べて,レントゲン撮影に同意している。亡cのくる病
の種類を特定するために全身のレントゲン撮影が必要であったとして
も,25-OHビタミンDの検査や治療の経過により,亡cのくる病
は,ビタミンD欠乏性による栄養性のくる病であると判明しており,平
成18年5月15日ころには,レントゲン撮影の必要はなかった。ま
た,全身のレントゲン撮影の有無によって,くる病の治療方法が変わる
わけではない。したがって,検査の必要性はなく,①の要件がない。
CT検査は,放射線被曝のリスクがあり,医学的にも必要がなかった
から,①の要件を欠く。
原告らは,アルファロールの投薬を拒否していない。アルファロール
の増量の話をされ,様子を見たいと述べたのは,それまで,担当医から
病院食のキノコを食すことでアルファロールに代えてビタミンDを摂取
することができると聞いており,担当医もアルファロールの服用の中止
を検討していた中,突然増量する旨を言われたためである。また,医師
がアルファロールの増量の必要性を説明したことはなかった。したがっ
て,①の要件を欠く。
原告らは,血液検査に何度も同意しており,平成18年3月16日
は,亡cが風邪気味で熱もあったため,血液を採取させなかったにすぎ
ない。その後も原告は,血液検査に同意しており,②の要件を欠く。
原告らは,医師の指示に従い,通院の予約をしており,②の要件を欠
く。
原告らがステロイドの使用を拒否したことはない。ステロイドには副
作用があるから,原告bが,生後7か月の亡cに対してステロイドを塗
ることに抵抗を感じ,即座に同意しなかったこともやむを得ない。その
後は,看護師から塗布を任され,積極的に治療に協力していたのであ
り,拒否する態度はとっていなかった。したがって,②の要件を欠く。
ウ栄養ネグレクト
栄養ネグレクトがあるというためには,①亡cが栄養摂取不足を原因
とするくる病と診断され,②原告らがその診断を知り,③それにもかか
わらず,原告らが亡cに栄養を与えていないことが必要である。
本件通告は,原告らが亡cに対してマクロビオテックによる食事(玄
米,有機野菜を中心とした食事で,肉類や動物性タンパク,脂肪の摂取
が極端に少ない食事)を与え,その結果,亡cがくる病に罹患したこと
などを栄養ネグレクトとしているが,①~③の要件を欠いている。
亡cは,ビタミンD欠乏性くる病と診断されているが,その原因が食
事によるものであるか否かは明らかとなっておらず,成長障害や消化器
系が弱かったことなど,その他の原因も十分考えられ,客観的にその原
因が明らかとなっていない。したがって,①②の要件を欠く。
仮に,食事が原因であるとしても,原告らは,アレルギーに配慮した
食事は与えていたものの,マクロビオテックに基づく食事は与えておら
ず,肉も食べさせていた。また,原告らは,亡cに対し,本件通告がさ
れた亡cの入院時には,病院食を与えており,乳酸菌飲料である「ヤク
ルトジョア」も飲ませようとしていた。マクロビオテックの講師であっ
た原告bの母が亡cの弁当を作ってきたことは,亡cの入院中,1回の
みであり,その影響力もなかった。したがって,③の要件を欠く。
エ伝えるべき情報を故意に伝えてなかったこと
亡cがくる病になった背景には,食物アレルギーによる食材制限を行わ
ざるを得ず,栄養が偏ってしまったという事情があった。また,原告ら
は,本件通告後の試験外泊中,被告成育の栄養指導に従った食事を作って
おり,その結果,ALP(アルカリホスファターゼ)値等の検査数値が下
がり,体重が増加した。被告成育も,このことを認識しており,原告らが
食事に関する指導を継続的に守る可能性があることを認識していた。
しかし,被告成育は,本件通告に際し,これらの情報を故意に伝えなか
った。
オ積極的に一時保護に加担し,監護権等を侵害したこと
被告成育は,本件通告したその日から,虐待告知をする場合は親子の分
離が前提となることを意見し,受入先の病院を探すことや分離の方法まで
話をしており,単なる通告義務の履行を超えた原告らの監護権を積極的に
害する行為をしている。
(被告成育の主張)
アネグレクトとは,「児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食
・・・その他の保護者として監護を著しく怠ること」をいう(児童虐待の防
止等に関する法律2条3号)。
その判断は,児童の利益を中心に考えるべきであり,保護者が児童に愛
情を持っていっていたり,故意とはいえない場合にも,児童に栄養を与え
ない状態となっている場合には,栄養ネグレクトと評価すべきである。
亡cの入通院中の状況に照らし,栄養ネグレクトがあったということが
できる。特に,検査の結果,亡cのカルシウム,ビタミンDの不足は食事
による摂取不足が原因であることが判明しており,栄養不足の原因が原告
らの食事にあることは明らかである。
イ医療ネグレクトとは,医療水準や社会通念に照らし,児童に必要かつ適
切な治療を受けさせないことをいうところ,亡cの入通院中の状況に照ら
し,医療ネグレクトがあったということができる。
ウ児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は,主観的に児童虐待と
考えれば法律上告知義務を負い,その義務に基づいて通告する限り違法行
為にはならない。したがって,本件通告も違法にはならない。
エ以上から,本件通告は適法である。
オ上記原告らのエ(伝えるべき情報を故意に伝えてなかったこと)及びオ
(積極的に一時保護に加担し,監護権等を侵害したこと)の主張は否認な
いし争う。
争点
(原告らの主張)
ア本件一時保護決定について
上記「(原告らの主張)」のとおり,本件一時保護決定は,医療ネグ
レクト及び栄養ネグレクトがまったく存在しないにもかかわらずされたも
のであり,一時保護の必要性を欠く違法なものである。
一時保護は,児童の身柄を相当期間拘束するものであるにもかかわら
ず,裁判所による監督のない,行政の判断のみで行うことができる巨大な
権力の行使であるから,その判断は慎重であるべきである。しかるとこ
ろ,北部児相は,医療ネグレクトに関し,亡cの主治医のd医師に対し
て,d医師が必要であるとする検査について,必要とする理由や目的の聴
取り調査を行っておらず,原告らなどに対しても聴取り調査を行っておら
ず,亡cがビタミンD不足のくる病であると判明した旨のカルテの記載を
確認していない。また,栄養ネグレクトに関し,e医師,栄養士及び原告
らに対して,聴取り調査を行っていない。北部児相がこれらの調査を行っ
ていれば,一時保護決定の必要性がないことを容易に認識することができ
たはずである。以上から,北部児相は,正当な理由なく上記調査を行わな
かったのであり,違法な本件一時保護決定を行ったことについて重大な過
失がある。
イ本件再一時保護決定について
上記アのとおり,原告らには,医療及び栄養ネグレクトは存在しなかっ
た。また,原告aが平成18年7月5日に検査に同意したことにより同月
10日には必要な検査は終了しており,いかなる意味においても,医療ネ
グレクトと称する検査未了状態は完全に解消されていた。さらに,亡cの
栄養状態は,被告成育に入院中,カルシウム値が正常に復して改善されて
いたのであり,このことは,こども医療センターで改めて確認され,同月
11日には退院可能と診断されている。以上からすると,亡cは,本件再
一時保護決定の必要性及び緊急性を基礎付けるような栄養状態にはなかっ
た。
原告らは,本件一時保護決定の前から,約2か月間栄養指導を受け,栄
養士から高い評価も得ていたのであって,栄養指導のために本件再一時保
護決定を行う必要性はなかった。なお,仮に栄養指導が必要であったとし
ても,子どもと親とを分離する必要性や緊急性は全くなかった。
原告らは,本件一時保護決定についての同意書に署名をしているが,そ
れは,亡cを1日も早く取り戻すためにやむなく行ったものであって,本
件一時保護決定及び本件再一時保護決定の違法性を阻却するものではな
い。
以上から,本件再一時保護決定は,その必要性が全くなく,原告らの監
護権を侵害するものであり,違法な決定である。
ウ一時保護機関の不告知について
行政手続にも憲法31条の適正手続の保障は妥当し,一時保護決定がさ
れた場合は,監護権を有する原告らが子どもを連れ去られるという重大な
不利益を受ける以上,その保護機関の名称及び所在地が告知されるべきで
ある。
なお,取戻しの危険が大きい場合などは,例外的に,保護機関の所在地
を告知しないとの見解があり得るとしても,原告らは,本件一時保護決定
の告知を受けた直後に,亡cを連れて行くならこども医療センターにして
欲しい旨を伝えており,実際にこども医療センターが一時保護委託先とさ
れたことなどに照らすと,原告らによる亡cの取戻しの危険は全くなかっ
たといえる。原告らは,被告成育の医師に対して様々な質問をし,医療方
針の決定について十分な説明を求めてきたが,それは,親として当然の務
めであり,取戻しの危険を基礎づける具体的な事実はない。
したがって,本件において,保護機関を告知しない理由はなく,これを
告知しなかった被告横浜市の不作為は違法である。
エ面会拒否について
親子はともに生活する権利があり,やむを得ずに分離される場合でも親
子の交流は保障されなければならない(憲法13条,民法818条1項,
820条,821条)。
原告らには,上記ウのとおり,亡cを取り戻す危険はなく,少なくと
も,北部児相の職員と原告等との面談が行われた平成18年7月5日及び
家庭訪問を受けた同月6日には,上記危険がないことが,北部児相にとっ
ても明らかとなった。仮に,病院内での面会に支障があったとしても,児
童相談所内で一時的に面会することは十分可能であった。
亡cのくる病の悪化を防止し,子どもの福祉を図るという児童福祉法の
目的からしても,原告らと亡cの面会を拒否する必要性はどこにもなかっ
た。むしろ,当時3歳であった亡cにとっては,母親である原告bとの接
触は,精神的な安定のために必須のものといえる。
以上から,面会拒否は,違法である。
(被告横浜市の主張)
ア本件一時保護決定について
北部児相は,被告成育に調査した結果,現状では亡cに対して十分な医
療上の対応ができておらず,必要な検査もされておらず,原告らにより十
分な栄養が与えられていなかった結果,亡cがくる病を発症したと判断し
た。そして,①亡cに対して必要な検査を行い病状を把握するとともに,
栄養状態の悪化を防止し,②栄養状態を改善し,③適切な治療の継続と,
帰宅しても再び栄養不足に陥ることがないよう原告らに栄養指導を行うこ
とを目的として,本件一時保護決定を行った。
上記判断は,北部児相の職員がカルテやレントゲン写真を見て,被告成
育の医師から説明を受け,可能な限りの調査を行った上でのものであり,
合理的な判断ということができる。また,亡cの入院中の状況等に照らす
と,亡cに対する医療ネグレクト及び栄養ネグレクトが行われていたと認
められる。さらに,本件一時保護決定時の状況に照らすと,亡cを被告成
育から退院させ,自宅に戻したならば,亡cが再び栄養不足の状態に陥
り,ビタミン欠乏により脳障害を引き起こす危険性等があると認められ,
亡cの安全確保のためには,本件一時保護決定を行う必要性及び緊急性が
あった。なお,本件一時保護決定に当たり,原告らから事情聴取しなかっ
たことは,被告成育での原告らの対応や亡cの状態等に照らし,なんら不
適切なことではない。
以上から,本件一時保護決定は適法である。
イ本件再一時保護決定について
本件一時保護決定により,上記ア①②は達成されたものの,上記ア③が
達成されておらず,一時保護を継続しておく必要があった。しかし,同③
の目的のためには,亡cを入院させておく必要はなかった。そこで,北部
児相は,亡cの一時保護場所をこども医療センターから中央児相に変更す
るため,本件一時保護決定を解除し,本件再一時保護決定を行ったのであ
る。
以上から,本件再一時保護決定と本件一時保護決定は,一連の一時保護
であり,適法である。
ウ一時保護機関の不告知について
北部児相は,原告らが亡cを取戻す危険が大きく,仮に取戻しに至らな
くても,原告らが再び検査の拒否を行う危険性が否定できないと判断し
て,一時保護機関を原告らに告知しなかったのであり,その判断は適切で
あった。
エ面会拒否について
亡cの精神状態を安定させるため,また,原告らによる取戻しを防ぐた
め,児童相談所運営指針(乙6)に基づき,北部児相が,しばらく見守っ
た後に面会を実施する予定とし,面会を認めなかったことは,何ら不適切
なことではない。
争点
(原告らの主張)
ア中央児相の職員は,卵アレルギーを有する亡cに対して,卵を含む食品
を食べさせてはならない注意義務を負っていたところ,これを怠り,誤っ
て卵入りの本件竹輪を食べさせているから,過失がある。
中央児相の職員は,亡cに卵入りの本件竹輪を食べさせた以上,これに
ついて適切な対応をすべき義務を負っていたが,これを怠り,医師の診察
を受けさせることなく,また,必要な経過観察を行っていないから,過失
がある。
イ亡cの死因は,アレルギー源の卵を含む本件竹輪を食べさせられたこと
によるアナフィラキシーショックにあり,右室心筋症による左心不全では
ない。
ウ以上から,被告横浜市は,亡cの死亡によって生じた損害を賠償する責
任を負う。
(被告成育の主張)
ア亡cの死因は,司法解剖鑑定書(乙5)のとおり,右室心筋症による左
心不全にある。したがって,亡cに本件竹輪を食べさせたことと亡cの死
亡との間には,因果関係がない。
原告らは,アナフィラキシーショックが亡cの死因であると主張する
が,アナフィラキシーショックは,アレルギー物質を摂取して直ちに生じ
るものであり,本件竹輪を食べてから死亡まで数時間も空いている本件で
は,アナフィラキシーショックにより死亡したとはいえない。
イ中央児相の職員は,亡cが死因となった右室心筋症を発症していること
を認識していなかったから,致死的な不整脈が発生し,突然死する可能性
を予見することは不可能であった。
中央児相の職員は,亡cに卵入りの本件竹輪を食べさせてしまった後,
亡cの身体状況等を注意深く観察しており,看護師も異常を感じていない
のであって,十分に経過観察を行っていた。
したがって,過失はない。
争点
(原告らの主張)
ア被告成育の関係
慰謝料各250万円
弁護士費用各25万円
イ被告横浜市の関係
本件一時保護決定,本件再一時保護決定,保護機関を知らされなかっ
たこと及び面会拒否による損害
慰謝料各150万円
亡cの死亡による損害
a逸失利益
基礎収入は,平成18年賃金センサス男性・学歴計・全年齢平均賃
金555万4600円とすべきである。亡c(死亡当時3歳)は,死
亡しなければ,18歳から67歳まで就労可能であった。生活費控除
率は45%とすべきであり,ライプニッツ方式により中間利息を控除
すると,4404万5589円が損害となる。
555万4600円×(1-0.45)×(22.5284-8.
1108)
b亡cの慰謝料2000万円
c原告らは,亡cの死亡により,それぞれ,aとbの合計額の2分の
1である3202万2794円の損害賠償請求権を相続した。
d原告らの慰謝料
亡cは原告らが高齢になってからやっと授かった子どもであり,ア
レルギーにも細心の注意を払って,大切に育ててきた。しかし,亡c
を騙されるように奪い取られた上,粗雑な集団的保育により,突然,
亡cを失うこととなった。その精神的苦痛は到底計り知れず,慰謝料
は各500万円を下回ることはない。
e弁護士費用各375万円
(被告成育の主張)
否認ないし争う。
(被告横浜市の主張)
否認ないし争う。
第3裁判所の判断
1前記前提事実に証拠(甲2,3,6,10~22,25,30,乙1,12
~17,丙1~3,5,10,13~15[以上の証拠につき枝番を含む。
],証人e,証人d,証人f,証人g,証人h,証人i,証人j,原告a本
人)と弁論の全趣旨を総合すると,次の事実が認められる。
亡c(平成14年10月16日出生)は,平成15年5月2日,kクリニ
ックの紹介により,湿疹及び成長障害で,被告成育を受診した。亡cの体重
は,平成14年12月7日時点で5000gだったが受診日には4400g
まで低下しており,その原因として,栄養不足などが考えられた(丙1・1
3頁)。また,顔面及び頭部に湿疹があり,頭皮はびらん状態で,浸出液が
出ていた。さらに,血中の総たんぱくの数値が通常の値の約半分にまで落ち
ており,危険な状態にあった(証人e・36頁)。
被告成育の医師は,原告らに対し,上記体重減少は異常であり,今後の発
達に影響を及ぼす可能性があること,栄養摂取に関しては人工乳の補足が必
要であることを話したが,原告bは,人工乳の使用に抵抗を示した(丙1・
13頁)。
亡cは,同日から被告成育に入院することになった。
1回目の入院
ア被告成育の医師は,原告ら及び原告bの父母に対し,平成15年5月2
日,亡cには低タンパク血症があり,成長障害も伴っていること及び早急
にステロイド外用剤を開始する必要があることを説明したが,原告bの母
が抵抗を示した。その後,原告a及び原告bの父がステロイド外用剤によ
る治療に同意し,翌日から同治療が行われることとなった(丙2・12
頁)。
なお,原告bの母は,マクロビオテックの講師をしている。
イ被告成育の医師は,平成15年5月3日,母乳の量から,亡cの栄養量
が不足していると判断し,原告らに対して,栄養摂取の不良について説明
をした。同説明により,原告らは,人工乳の使用は納得したが,病院で用
意する経口水分(滋養糖等)の使用については抵抗を示した。原告aは,
同日,家族が用意する離乳食を持ち込んで食べさせたい旨を申し出た。被
告成育の医師は,好ましくないが,翌週再度話し合うこととし,週末につ
いては,上記持込みを認めた(丙2・16~17頁)。
ウ被告成育の医師は,原告ら及び原告bの父母に対し,平成15年5月4
日,亡cが低たんぱく血症を発症しており,生命的に危険な状態にあるこ
と,湿疹はアトピー性皮膚炎の可能性が高いこと,いずれにしてもステロ
イド外用剤による治療が必要であることを説明した。原告bの母は,ステ
ロイドの使用を強く拒んだが,原告a及び原告bの父が納得し,ステロイ
ド外用剤による治療が開始されることとなった。(丙2・17~18頁)
エ原告bは,被告成育の看護師に対し,平成15年5月5日には,「ここ
はだいぶよくなったんですが,まだ軟膏(ステロイド)をぬらないと駄目
ですか」「ステロイドはなるべく使いたくないけど」などと言い,同月7
日には,「今後はステロイドの量はどうなるのでしょうか?」「まだ続け
るのですか」などと言って,ステロイドの使用に不安を示した(丙2・1
9~20,23頁)。
オ平成15年5月7日は,大腿骨骨端のレントゲン撮影をする予定であっ
たが,原告bは,レントゲンを撮ることには抵抗があり,子どもを被爆さ
せるのは納得がいかない,異常が見つかったとしても何か治療があるの
か,などと述べた。被告成育の医師は,現段階で成長障害があり,今後の
成長発達を見ていく上でレントゲンでの評価が必要である旨を説明した
が,原告b及びその母は同意せず,その後,原告aに対し,骨年齢の評価
に関してレントゲン撮影を勧めたが,原告らが同意せず,レントゲン撮影
は中止となった(丙2・23~26頁)。
被告成育の医師は,同日,亡cには米のアレルギーもあり,嘔吐の原因
は原告らが持ち込んだ離乳食にあると伝え,アレルギー用の牛乳の使用を
勧めた。原告aは,これに同意したが,原告bは,牛乳は牛を育てるもの
であって,人間が育つのに必要な栄養が入っているかどうか疑問を感じ
る,離乳食を開始してから調子がよくなっている実感があるなどと言っ
て,これを拒んだ。また,同日,血液検査の結果により,亡cのアレルギ
ー体質がかなり強いものであることが判明した。(丙2・26頁)
カ被告成育の医師は,平成15年5月17日,原告らと面談し,人工乳で
の栄養摂取の必要がある旨を説明した。しかし,原告らは,人工乳の使用
により血便が出たこと,離乳食を中止して10日間になること,人工乳は
人工のものであることなどから,人工乳の使用を拒否し,離乳食の再開を
希望した。同医師は,現段階で体重増加不良が明らかであり,離乳食のト
ライアルをしている状況ではなく,人工乳が必要である旨を説明すると,
原告aは,人工乳の使用には同意するが,二つの条件(①最初は少量で始
めること,②できるだけ早い離乳食の再開を望んでいるので,再開に関す
る話合いの場を早急に持つこと)を出すと述べた。
同月19日から人工乳の使用が開始された。(丙2・40~41頁)
キ被告成育の看護師は,原告bに対し,平成15年5月20日,原告bが
まだらに薄くしかステロイドの軟膏を塗っていなかったため,塗り方等に
ついて指導をした。原告bは,「ステロイドが入っていると思うとたっぷ
り塗れないんです」などと言っていた(丙2・47頁)。
ク被告成育の医師らは,平成15年5月21日,原告らと話合いをし,同
医師は,人工乳を飲んで体重を増やし,免疫学的寛容が成立するところま
で,離乳食を食べさせることは延期した方がいい旨を説明したが,原告b
は乗り気ではなく,原告らは,離乳食やステロイドの使用,退院のことな
どを気にしていた。この際,原告らが発達の遅れについて質問することは
なかった。(丙2・49頁)
ケ被告成育の医師は,原告bに対し,平成15年6月4日,MRI検査及
びレントゲン検査を勧めたが,原告bは,電磁波を当てるなんて,将来の
副作用を考えるとできない,検査をして発達の遅れが分かっても,治療法
があるわけではない,検査は無意味である,笑うとか歩き出すとかのアウ
トプットで評価できるはずであるなどと言って,これらの検査を拒否した
(丙2・60頁)。
コ被告成育の医師は,原告aに対し,平成15年6月6日,亡cの体重が
生後6か月で4kgしかない事態は異常であり,その状態で医療機関を受
診せず,ミルクを足したりしなかった原告らの行為には明らかに問題があ
る旨を説明し,今後の対応の検討を促した(丙2・62頁)。
サ被告成育の医師は,原告aに対し,平成15年6月9日,MRI検査及
びレントゲン検査を勧めたが,原告aは,仕事でMRIを取り扱っていた
ことがあり,その知識があるところ,MRI検査はすべきではないとし
て,これらの検査を拒否した。しかし,原告aは,エコーについて,超音
波を使う検査であるにもかかわらず,放射能を使うのかなどと質問するな
ど,正確な知識を有していなかった。(丙2・64頁)
シ亡cの担当医が,原告bの父らの苦情により,変更された(丙2・75
頁)。
ス原告bは,被告成育の医師に対し,平成15年7月14日,マクロビオ
テックについて相談したい旨を告げ,また,ステロイド剤の使用について
不安を訴えた(丙2・131頁)。同医師は,玄米は与えてはならないと
指導したが,マクロビオテックを亡cの食事に取り入れていくこと自体
は,反対ではなかった(丙2・132頁)。
セ亡cは,平成15年7月28日,被告成育を退院した。
被告成育の医師は,亡cの退院時,故意ではないものの,原告らが亡c
に対して適切な医療を受けさせていなかった疑いがあり,亡cの症状が軽
快するにつれ,医療不信は少しずつ解消されていったが,ステロイドに対
する拒絶は完全には解消されていないと考えていた(丙2・158頁)。
通院
ア亡cは,平成15年8月7日,被告成育の退院後初めて診察を受けた
が,同日時点で,顔の湿疹が悪化していた(丙1・15頁)。被告成育の
医師は,同月4日,亡cを診察したが,その際,原告らから,離乳食を1
日3回食べさせているが,魚はまだ食べさせていない旨を告げられた(丙
1・17頁)。
イその後,亡cは,平成15年から平成16年にかけて,ほぼ3か月に1
回の割合で通院して,被告成育の医師の診察を受けた。
ウ被告成育の医師は,平成17年2月24日,亡cを診察したが,体重身
長がともに5パーセンタイル以下で,特に身長がかなり低く,バランスの
とれた食事を摂取できていない可能性があった。そのため,今後の食事内
容を検討する必要があると考えた。(丙1・26頁)
エ被告成育のe医師は,平成17年4月25日,初めて亡cを診察した
が,体重が減っており(当時9045g),危険な状態にあると診断し
た。そこで,原告aに対し,何が食べられているのか確認するため,6大
栄養素に関して聞いたところ,原告aは,怒りを露わにして,医者に分か
らないこともある,e医師がそんなふうに聞くのはおかしいという趣旨の
発言を,相当きつい言い方で述べた。そのため,e医師は,原告らから食
事内容の詳細を聞くことができなかった(証人e・4頁)。
e医師は,平成17年7月28日,亡cを診察したが,原告らは,e医
師がカルテを書くたびに,電子カルテをのぞき込み,不信感を示していた
(証人e・7頁)。
オe医師は,平成17年12月28日,亡cには外反足,下腿の変形,け
い骨の前方への突出があり,くる病の可能性があると診断した(丙1・2
8頁)。しかし,自分がレントゲンや血液検査を勧めても了解を得られる
状況にはないと判断し,くる病を裏付けるため,くる病の可能性があるこ
とは告げず,骨に異常があるからとして,整形外科での診察を勧めた(証
人e・9頁)。
e医師は,かなり重い病状にあると考え,年が明けてすぐの日の予約を
勧め,候補日を複数挙げたが,原告aは都合がつかないとしてこれを断っ
た。次回の診察は3か月後となった(証人e・10頁)。
カ被告成育の整形外科の医師が平成18年3月16日に亡cを診察したと
ころ,亡cの脛骨遠位部が前彎し,内側に反っていることが判明した(丙
1・29頁)。
同医師は,骨系統の疾患の可能性も否定できないため,全身の骨のレン
トゲン撮影をする必要があると診断し,放射線の影響もほとんどないこと
を説明した。しかし,原告bは,下肢だけの撮影にして欲しいとして,こ
れを拒んだため,全身の撮影は行われず,下肢のレントゲン撮影のみが行
われた(丙1・30頁)。同医師は,レントゲンの画像上,亡cの骨にく
る病の症状があることを認めた(丙1・31頁)。
なお,全身のレントゲン撮影は,栄養性のくる病だけであるのか,先天
性の骨の病気もあるのかを適切に鑑別し,また,くる病の種類を判断し,
全身性の変化がどこまで及んでいるのかを判断するためにも必要であり,
d医師も,そのことを原告らに説明していた。仮に骨の病気がある場合に
は,それを踏まえて,治療計画を立てる必要があった(証人d・11
頁)。
被告成育の内分泌代謝科のd医師は,同日,血液検査を勧めたが,被告
bの母が採血を拒否した。d医師は,このままでは診断をすることができ
ないため,原告bの母が来院しないときに来院してもらうこととした。ま
た,同医師は,同日時点で,くる病の原因がビタミンDの欠乏にあると考
えたが,血液検査ができなかったため,正確な診断をすることができなか
った。(丙1・31頁)
キd医師は,平成18年4月19日,亡cの血液検査を行った(丙1・3
3頁)。
ク上記血液検査の結果,血液中のカルシウムの値が低く,ALPの値が異
常に高く,発作を起こす危険があることが判明した。そこで,d医師は,
平成18年4月21日,電話をかけ,原告bにそのことを伝え,至急入院
して精査及び加療が必要であることを説明した。しかし,原告bは,亡c
の症状が良くなっているので,牛乳を与えて様子を見たいとして,これを
拒み,d医師が通院治療で足りる段階ではないことを話したが,入院に同
意しなかった。(丙1・34頁)
ケd医師は,平成18年4月28日,原告bからの電話で,入院ではなく
自宅療養で対処できないかなどの話をされたが,くる病として比較的重症
であったため,自宅療養で足りる状況にはないことを説明し,入院するよ
う説得した。その結果,原告bは,入院を了承し,連休明けから入院する
ことになった(丙1・36頁)。
コその後,原告aが被告成育を訪れ,d医師に対し,入院の必要性につい
て,再び説明を求めた。d医師は,その際,脳内の石灰化があればてんか
んを起こす危険があり,その場合にはフォローの項目も変わってくるた
め,頭部CT検査を行う必要がある旨を説明したが,原告aは,石灰化が
とれないのであればCT検査を行う必要はないとして,これを拒んだ(丙
10・4頁)。
サ原告らは,通院期間中,診療の予約を取り消すことを度々行っていた
(丙1・21,23,27,32頁)。そのため,それらによって通院の
日が当初の予定よりも先の日になったことがよくあった。
2回目の入院(本件通告まで)
ア亡cは,平成18年5月1日,被告成育に,再び入院した(丙3)。
被告成育の医師は,原告らに対し,頭部のCT検査及び手根骨のレント
ゲン検査を受けるよう説得をしたが,原告らは同意しなかった(丙3・1
4頁)。
被告成育の栄養士が原告らから同日に自宅での食事内容について聞き取
りを行ったところ,魚については白身系の魚ならいいのではと言われたた
め,しらすやかれい等を食べさせたことがあったが,肉は時々与えていた
程度であり,大豆製品は好物で食べさせるが,豆腐を食べさせるのは週2
回程度であり,納豆も1パックの4分の1を与える程度であったことが判
明した。同栄養士は,たんぱく質の食材がほとんど用いられず,上記栄養
士は,ご飯中心の食生活であったと感じた(丙3・14~15頁)。
亡cは,同日,25-OHビタミンD検査を受けた。なお,同検査は,
ビタミンDの欠乏状態を確認するための検査であるが,同検査によって
も,骨系統の疾患が併存する可能性は否定されないため,くる病の原因を
確定的に診断することはできない(証人d・29~30頁)。
イ平成18年5月2日,亡cのアレルギーを調べる検査が行われた。同検
査によると,卵及び小麦については強いアレルギーを持っており,そば,
牛乳,いわし,たら,えび及び落花生は軽度の陽性であった(丙3・16
頁)。
被告成育の栄養士が同日に再度自宅での食事内容について聞き取りを行
ったところ,原告らの話により,大豆製品は週2回程度で,魚も週2回程
度で,最近少しずつ取り入れるようにし始めたにとどまり,結局,週21
回の食事のうち約20%しか食事にたんぱく源が入らないことが判明した
(丙3・18頁)。また,同栄養士は,上記聞取りにより,ビタミンDの
摂取量が全くない日が今まで行われていたことが十分考えられると判断し
た(丙3・19頁)。
栄養士の算定では,亡cは,必要栄養量(カルシウム600mg及びビ
タミンD3μg)に対し,自宅ではカルシウムが120~180mg,ビ
タミンDが0.9μgしか摂取することができていなかった(丙3・20
頁)。
ウ被告成育の医師は,平成18年5月9日,亡cを診察したところ,リン
の数値の軽度の低下があり,ビタミンDを補うため,アルファロールの投
与量を増やすべきであると考え,原告aにその旨を伝えた(丙3・24~
25頁)。しかし,原告aは,今後数値が上昇するかもしれないとして,
アルファロールの増量を拒んだ。また,原告bは,同医師に対し,同月1
1日,薬であるアルファロールの増量にはどうしても抵抗があり,魚の食
事を増やしてビタミンDの摂取量が増えるのならば,それで対処して欲し
い旨を伝えた(丙3・27頁)。
同月13日には,原告bは,アルファロールの増量に対し,ある程度態
度が軟化したが,原告aが強固に反対し,きのこ類の料理を増やすことで
対応して欲しい旨を伝えた(丙3・30頁)。しかし,現実には,亡cの
状態は,きのこの増量だけで対応できるようなものではなかった(証人d
・39頁)。
被告成育の医師は,栄養科と協議し,病院食でのきのこ類の料理の提供
について,栄養科が考えていることと原告らの理解の間にはそごがあり,
アルファロールの増量について,再度原告らを説得する必要があると考え
た(丙3・31頁)。
エ平成18年5月15日,上記アの25-OHビタミンD検査の結果が判
明し,亡cのくる病の原因が,ビタミンD抵抗性の点ではなく,ビタミン
D欠乏性による可能性が高いことが明らかとなった(丙3・31頁)。
そこで,被告成育の医師は,原告らに対し,再度,ビタミンDを補うた
め,アルファロールの増量の必要性を説明したが,原告らは,食事でのビ
タミンDの摂取を強く希望し,アルファロールの増量に納得しなかった
(丙3・32頁)。
オ平成18年5月20日までの検査により,亡cのくる病の原因が,カル
シウム及びビタミンの摂取不足にある可能性が高いことが判明した(丙3
・39頁)。
そこで,被告成育の医師は,原告らに対し,上記検査結果を伝えた。
これに対し,原告らは,薬の増量については否定的で,食事で改善した
いという強い希望を持っており,入院食では限界があるため,退院して,
原告らで工夫した食事を与えたい旨を伝えた(丙3・39~40頁)。
カ原告らは,平成18年5月21日,院外への外出を希望し,同日午後5
時まで外出となった(丙3・40頁)。
キ平成18年5月23日,カルシウムの値に上昇がみられたが,まだ正常
値よりは低かった(丙3・44頁)。
被告成育の医師は,原告らに対し,同日,亡cには明らかな低カルシウ
ム血症があり,脳波に異常がないか検査して確認したい旨を申し出た。原
告らは,鎮痛剤を使わず,睡眠時に行うのであれば構わないが,睡眠でき
ない場合には検査は中止するよう述べ,結果,検査は中止となった。(丙
3・18頁)
ク被告成育の整形外科の医師は,原告らに対し,平成18年5月25日,
骨の状態は改善しているが,彎曲の程度が悪化していると伝えた(丙3・
47頁)。
ケ被告成育の医師は,原告らに対し,平成18年5月27日,現在の数値
からはカルシウム及びリンが不足していることを説明し,吸収率を上げる
ためビタミンDの増量が必要であると再度説得し,この時点で初めてアル
ファロールの増量について了承を得られた(丙3・49~50頁)。
コ平成18年5月31日,原告bは,看護師に対し,治療や療養生活に協
力的な言動をしていたほか,処方薬も毎日毎回内服させることができてい
た(丙3・55頁)。
サ亡cは,平成18年6月1日の昼,原告bの母が持参した弁当を食べて
いた。被告成育の医師が原告bに尋ねると,原告bの母には,たんぱく質
などの食事のことについて話しておらず,退院後について,同人から食事
について注文が出る可能性があるかどうかという質問に対しては,大丈夫
であるという趣旨の回答をした。被告成育の医師には,その回答をする原
告bの表情がこわばっているように見えた。(丙3・57頁)
シ被告成育のこころの診療部の医師は,d医師らに対し,平成18年6月
7日,亡cが3歳0か月の発達の程度であり,社会性の幼さも目立ち,脳
波やCT検査も検討する必要があることを示唆した(丙3・68頁)。ま
た,同日,原告bが,亡cについて外泊を求めたので,被告成育の医師
が,乳酸菌飲料の「ヤクルトジョア」も十分摂取できていないなどと説明
したところ,原告bは,「家に帰った方がもっといいものをあげられる気
がするんですよね。」,「できれば無添加なものがいいんですよね。最近
ぶつぶつも多いし。」と述べて,「ヤクルトジョア」の飲用を拒むような
発言をした(丙3・69頁)。
ス被告成育の内分泌代謝科のカンファレンス(平成18年6月9日)にお
いて,原告らが亡cの主治医に対して,外泊時に,帰ってこないかもしれ
ないですと,脅かすような言動があったが,内分泌代謝科の医師は,帰っ
てこないことはないと思うと述べていた(丙3・72頁)。
セ被告成育の医師は,平成18年6月14日,原告bとの間で,食事及び
体重について話し合ったところ,原告bから,ご飯は増やしたいがおかず
は増やしたくない旨の発言があり,説得したものの,原告bの意見は変わ
らなかった(丙3・79頁)。
ソd医師が,平成18年6月15日,原告らと面談したところ,原告a
は,入院の意味を全く理解することができない,食事療法であれば自宅で
可能であり,自宅での食事の方がずっと食べさせられるので,明日退院さ
せて欲しい旨を述べた。また,ビタミンDの副作用について,「Pの数値
が問題なんでしょ。あなた知ってますか?Pの0.7というのは異常か正
常か知っていて治療をしているんですか?」などと言い,ビタミンDとP
(リン)の値とを混同していた。(丙3・82頁)
d医師は,原告らに対し,今後の方針として,①現在の食事と投薬量で
は十分な治療ではなく,カルシウム及びビタミンDが枯渇した状態であっ
たため,きちんとした投薬量での治療が必要であり,アルファロールの増
量の必要があること,不十分な治療は入院長期化の原因であること,②内
服量を増量し,その効果と副作用を確認する必要があり,それには1週間
以上要すること,③その上で,外泊を少なくとも1週間行い,自宅での食
事の様子を見せてほしいこと,④少なくともカルシウムの値の低下がな
く,ALPが2000程度まで下がることを指標に退院及び外来治療とす
ること,⑤外来でデータの悪化がみられたときは,再入院とすることを伝
えた。しかし,原告aは,入院は無駄であり,自宅でも対処が可能である
と述べ,話合いは堂々巡りとなった(丙3・82頁)。
原告aは,d医師と被告成育の看護師に対し,持参した治療に関する資
料を用いて,医師のデータ上の説明について,追求する質問を繰り返し,
医師がその説明をするものの,入院の必要はないと返答し,自分の意見は
明日退院するつもりである,と告げた。また,肉類については,病院での
肉料理は抗生物質などのことを考えると到底受け入れられないので,自宅
で摂取を開始したいことなどを述べた(丙3・83頁)。
d医師は,2時間以上かけて原告らを説得した。その結果,原告らは,
ようやく入院継続に同意し,外泊を繰り返しながら自宅での食事内容を確
認し,検査の数値がある程度よくなるまでは入院を継続することに同意し
た。また,速やかに薬の増量ができれば,入院期間はそれだけ短くできる
ことから,アルファロールの増量に同意した(丙3・82頁,証人d・1
2頁)。
本件通告
ア被告成育には,子どもの虐待を防止するため,医師,看護師,助産師及
びソーシャルワーカーで構成される虐待対策チーム(以下「SCAN」と
いう。)が設置されており,SCANが第三者的な立場から,児童福祉法
に基づく通告をするかどうかの判断をしている。
SCANは,月に1回,定例の会議を行い,それ以外にも必要に応じて
随時話合いを行っていた。これらの会議では,電子カルテの記載などを参
照しながら話合いがされていた。また,SCANの構成員は,担当医らと
直接接して話をして,カルテに記載されない事情についても聴取をしてい
た。
被告成育の職員は,業務の遂行に当たり,子どもの虐待が疑われる場合
には,SCANに通報することとされていた。
イSCANは,亡cの2回目の入院の時点から,具体的に関わって,カル
テ(丙1~3)の記載や,亡cを診た医師らの意見を聴取しており,その
結果,原告らが亡cに必要な栄養を与えておらず,必要かつ適切な医療を
受けさせていないと判断した。
ウSCANは,平成18年6月16日,その前日に原告らから退院請求が
あったことから,このまま退院して自宅に戻るとまた栄養摂取が不良にな
る可能性が高く,緊急性があると考え,同日,本件通告を行うことを決定
した。
被告成育は,北部児相に対し,同日,本件通告を行った。
本件通告後の被告成育での入院時の状況
ア平成18年6月19日から同月23日まで試験外泊をすることになり,
被告成育の医師は,原告bに対し,特別な食事にしないよう注意した(丙
3・88,91頁)。
平成18年6月19日の時点で,アルファロールの増量により,亡cの
ALPの数値が,3000台まで低下した(丙3・91頁)。ただし,入
院時の血液検査で,マグネシウム,亜鉛,セレン,ビタミンA1,ビタミ
ンB1などは基準値の最下限又はそれより低い値であった。そこで,被告
成育の栄養士は,ビタミン等の必要量を摂取するのに適した食事につい
て,指導する必要があると考えていた(丙3・92頁)。
イ平成18年6月21日,一時帰院し,原告らは,被告成育の医師と面談
した(丙3・93頁)。同面談では,栄養科と相談して,同月23日に外
泊中の食事の栄養計算をし,同月26日までにその結果を出すこととし
て,試験外泊期間を同月25日まで延長した。
原告らは,同日,d医師と面談をした。同面談では,今後は,上記ソ
の方針どおり,2泊3日の試験外泊を繰り返し,同月26日の採血結果を
見て,治療効果を判断することになった(丙3・95頁)。
d医師は,同日の時点で,薬の必要性等について,原告bが納得しつつ
あるが,本来健康にすごすための食事であるにもかかわらず,食事によっ
て病気を作り出し,診察を受けなければならない科が増えている実情を受
け入れている段階には至っておらず,受け入れて初めて自主的な食事内容
の修正等があると考えた。また,この時点では,原告aの考えは不明であ
り,場合によっては,反発される可能性もあると考えた。(丙3・95~
96頁)
ウd医師は,平成18年6月22日,現段階の診断としては,ビタミンD
欠乏性のくる病であるが,ビタミンD抵抗性のくる病などその他の疾患が
ある可能性もあり,栄養の問題が改善したところで再評価が必要であると
考えた(丙3・97頁)。
エ被告成育の栄養士は,平成18年6月24日,試験外泊時の食事記録を
確認したところ,主菜(魚,大豆製品,乳製品及び豚肉)を毎食そろえら
れており,カルシウムやビタミンDを含む食品も意識して作られていると
判断した(丙3・100頁)。
ただし,原告bが息切れしないよう考慮する必要があると判断した(丙
3・99~100頁)。
オ被告成育の医師は,検査の結果,ALPの数値が2786となるなど値
が改善し,内分泌代謝科での入院延期の基準を満たしており,同月27
日,原告らに対して,そのことを告げた(丙3・102~103頁)。
カ平成18年6月30日から同年7月2日まで試験外泊をすることにな
り,被告成育の医師は,同月3日には退院できる可能性があると考えた
(丙3・109頁)。
キ亡cは,平成18年7月3日に退院することになった(丙3・112
頁)。
本件通告から本件一時保護決定までの状況
ア北部児相は,平成18年6月16日,本件通告を受け,被告成育を訪問
し調査を実施した。同調査において,病状だけを考えれば通院治療でも可
能であるが,今までの経過等を考慮すると,通院が保障されるとは考えが
たく,原告らが食生活を改めるとは考えにくいことなどの報告を受けた。
イ北部児相は,平成18年6月22日,再度,被告成育を訪問し,医師,
看護師及びソーシャルワーカーらと協議した。その際,亡cのくる病が,
90%の確率で,ビタミンD欠乏性のくる病であると診断できるが,原告
らから必要な検査を拒否されているため,100%確定できる状況には至
っていないこと,今後必要と思われる検査は,CT及び全身骨のレントゲ
ン検査等であり,血液検査は,原告らは同意しているが,原告bの母は同
意しないこと,原告aが,ビタミンDの増量について,薬の使用に抵抗を
示していること,栄養管理については原告bの母が強い影響力を有し,も
し退院後帰宅した場合には,栄養摂取が不十分となる危険性が高いことな
どの報告を受けた。
ウ北部児相は,上記調査のほか,被告成育のソーシャルワーカーへの聴取
り調査などを行い,レントゲン等の画像及びカルテなどを参照した。
なお,原告らへの事情聴取はしていない。
エ北部児相の長は,平成18年7月3日,検査等を行って亡cの病状を把
握すること,必要な治療があればそれを行うこと及び同じことが繰り返さ
れないよう再発防止策をとることを目的として,本件一時保護決定を行っ
た。
本件一時保護決定から本件再一時保護決定までの状況
ア亡cは,こども医療センターで一時保護され,平成18年7月3日から
同月14日までの間,血液検査や全身のレントゲン検査,頭部CT検査及
びMRI検査等を受けた(乙12の2)。
イ北部児相は,上記検査の結果,継続した入院治療の必要がないことが判
明したため,一時保護先を変えることとした。また,再発防止のための栄
養指導については,外泊などを繰り返しながら行うこととした。そこで,
北部児相の長は,平成18年7月14日,本件一時保護決定を解除すると
ともに,一時保護先を中央児相とする本件再一時保護決定を行った。
亡cの死亡
ア亡cは,食物アレルギーを持っており,特に卵については,強いアレル
ギーを持っていた。そこで,中央児相でも,卵を使った食品の摂取はすべ
て禁止され,同食品は除去した食事が与えられることとなっており,その
ことは,職員に周知徹底されていた。
イ亡cは,平成18年7月27日午前7時30分ころ,朝食(ご飯,味噌
汁,納豆,焼き海苔及びもやしのおひたし)を食べた後,おかわりをし
た。中央児相の職員は,その際,卵が含まれる本件竹輪(1本の10分の
1)を誤って与えてしまい,亡cはこれを食べた。
その後は,同日午前11時ころに軟便が出るなどのことはあったもの
の,特に変わった様子はなく,午前11時50分ころから昼食(ご飯,牛
乳,鶏の素揚げ,粉吹き芋,芽キャベツ及びぶどう)を食べ,同日午前1
2時25分ころから昼寝を開始した。
しかし,同日午後2時30分ころの時点で,ぐったりしており,手足に
チアノーゼが出ており,すぐに救急搬送されたが,死亡が確認された(死
亡推定時刻は同日午後2時ころ)。
ウ食事摂取からアナフィラキシーの発症までは,通常は,30分~2時間
以内であることが多いところ,本件竹輪の摂取から昼寝を開始した同日午
前12時25分ころまでの4~5時間の間に,アナフィラキシーショック
を含む食物アレルギーの発症を示す明らかな症状は認められなかった。
エなお,亡cは,平成18年7月31日から同年8月3日まで外泊,同日
家族引取りの予定であり,このことは,原告らにも話がされていた。
2被告成育に対する請求について
栄養ネグレクトについて
前記1の事実関係に照らすと,亡cは,成長障害などで,生後約2か月の
時点よりも体重が減っているという異常な状態で被告成育を最初に受診し
て,即日入院となり,その後退院したが,くる病を発症し,危険な状態とな
って,再度入院していること,上記退院後の通院中に原告らが亡cに与えて
いた食事は,週の21回の食事のうち約20%にしかたんぱく源が含まれ
ず,ビタミンDの摂取量が全くない日が続いていた可能性があること,本件
通告当時,亡cがくる病を発症したのはビタミンDが欠乏したことによるも
のである可能性が高く,その原因は,原告らが亡cに与えていた食事内容に
あったことが認められる。これらの事実に照らすと,原告らは,亡cに対
し,必要な栄養を与えておらず,亡cの正常な発達を妨げていたと認められ
る。
医療ネグレクトについて
前記1の事実関係に照らすと,①原告らは,平成15年5月7日,医師が
亡cの嘔吐の原因は原告らの持ち込んだ離乳食にあり,アレルギー用の牛乳
の使用が必要であるとして,これを勧めたにもかかわらず,離乳食を開始し
てから調子が良くなっている実感があるなどといって,上記牛乳の使用を拒
み,②被告成育のe医師が,平成17年4月25日に,亡cの食事について
聞いたところ,原告aが怒りだしたので,これを聞くことができず,MR
I検査,全身のレントゲン検査,CT検査及び脳波の検査等の検査をする必
要があり,被告成育の医師がその必要性を説明して,何度もこれらの検査を
勧めたにもかかわらず,原告らがこれらの検査を拒んだために,必要な時期
にそれらの検査をすることができず,検査の結果,亡cにはビタミンDが
不足しており,これを補うため,アルファロールの増量が必要で,医師もそ
の旨を説明したにもかかわらず,原告らは,食事でのビタミンDの摂取に固
執し,亡cの足の骨の湾曲が悪化するまで,アルファロールの増量に同意し
なかったことが認められる。これらの事実に照らすと,原告らは,亡cに対
し,適切な時期に,必要な治療等を受けさせていなかったと認められる。
本件通告の合理性
証拠(証人j)によると,現代の日本において,栄養失調又はビタミンD
の欠乏によりくる病を発症する事態はまれであると認められ,前記1ソの
とおり,原告aは本件通告の前日に,入院の必要がないとして,退院する旨
申し出ている。そして,前記1によると,SCANは,以上の事実関係を
カルテや担当医師等からの聞き取りによって把握した上で,本件通告を行う
ことを決定し,被告成育は,同決定に基づき,本件通告を行ったと認められ
る。
以上のことに照らすと,亡cが「要保護児童」に当たるとして,被告成育
が行った本件通告は,必要かつ合理的なものであり,違法であるとか,債務
不履行を構成するとは認められない。
ア原告らは,亡cがくる病を発症した背景には食物アレルギーによる食材
制限により栄養が偏ってしまったという事情があると主張するが,上記の
とおり,くる病を発症するというのは,異常なことであり,週の21回の
食事のうち約20%にしかたんぱく源が含まれず,ビタミンDの摂取量が
全くない日が続いていた可能性があるから,食物アレルギーによる食事制
限のみでくる病になったとは,直ちに認めがたい上,食物アレルギーによ
る食事制限という事情があったとしても,原告らが,亡cに対し,必要な
栄養を与えておらず,亡cの正常な発達を妨げていたことには変わりがな
いから,この点は,上記~の認定を左右するものではない。なお,原
告らは,通院中は,栄養について指導を受けなかったとも主張するが,前
記1の事実によると,被告成育のe医師が,平成17年4月25日に,亡
cの食事について聞いたところ,原告aが怒りだしたので聞くことができ
なかったことなど,原告らには,被告成育の医師に情報を提供して,指導
を受けようとする姿勢が見られず,上記の医療ネグレクトと相まって,被
告成育の医師による指導が妨げられていたから,この点も,上記~の
認定を左右するものではない。
原告らは,検査の拒否については,その必要性について医師の説明がさ
れておらず,必要性もなかったなどと主張する。しかし,証拠(丙10,
証人d)によると,全身のレントゲンは,骨系統の疾患などがあるかを診
て,同疾患等があれば,それを踏まえた治療計画を立てる必要があり,ま
た,頭部CT検査も,これにより脳内の石灰化を診て,石灰化が明らかに
なれば,脳波を取って,投薬治療を開始する必要があったことが認めら
れ,いずれも,医学上必要な検査であったと認められる。骨系統の疾患が
治ることはないとしても,そのことは,検査の必要性を失わせるものでは
ない。また,証拠(丙1・32頁)によると,血液検査を拒否した平成1
8年3月16日の診療録には,亡cについて,咳,発熱があるなどの記載
があるが,前記1の事実によると,それでも医師はその時点で血液検査
が必要であるとして検査を勧めているのであり,血液検査の拒否に合理的
な理由があったとまでは認められない。さらに,前記1の事実によると,
被告成育の医師は,検査の必要性について十分な説明をしていると認めら
れ,これに対し,原告らの検査の拒否の理由が合理的なものとは認めがた
い。
原告らは,アルファロールの増量を拒否していないなどと主張するが,
証拠(丙3)に照らし,採用することができない。また,前記1のとお
り,その必要性についても説明がされている。この点について,原告a
は,アルファロール0.5μgで同意していたのに,当初は,0.1μg
しか与えられず,それを0.5μgに増量するというので拒否したなどと
供述する(甲35,40,原告a)が,前記1のとおり,増量の必要性
については説明されており,増量の拒否に合理的な理由があるということ
はできない。
原告らは,被告成育は原告bの母がマクロビオテックの講師をしていた
という情報だけから,原告らがマクロビオテックによる食事を与えていた
と決めつけ,くる病と結びつけて通告したと主張するが,証拠(丙3)に
よると,亡cの状態や原告らの被告成育における言動に基づいて通告をし
たと認められ,同主張は採用することができない。
その他,原告らが医療ネグレクト及び栄養ネグレクトについて主張する
ことは,前記1の事実関係に照らし,いずれも採用することができない。
イ原告らは,原告らが亡cに対してマクロビオテックによる食事を与えて
いたとの虚偽の事実を通告したと主張する。しかし,前記1の事実に証拠
(証人j)と弁論の全趣旨を総合すると,本件通告に当たって重視された
のは,原告らがマクロビオテックによる食事を与えていたかどうかではな
く,亡cに対して必要な栄養を与えていたかどうかであると認められる。
原告らが虚偽と主張する上記事実は,上記の認定を左右するものではな
く,違法であるとか,債務不履行を構成するということはできない。
原告らは,被告成育がたんぱく摂取を拒否していたなどの虚偽の事実を
通告したという主張するが,上記のとおり,週の21回の食事のうち約2
0%にしかたんぱく源が含まれていない可能性があったから,たんぱく質
摂取を拒否していたといわれてもやむを得ない状態にあったということが
でき,虚偽の事実を通告したとは認められない。
原告らは,カルテの記載(丙3・31頁)を根拠に,本件通告時にすで
にビタミンD欠乏性によるくる病であるとの診断は確定していたにもかか
わらず,確定していないとの通告をしたと主張するが,同記載は,くる病
の原因がビタミンD抵抗性のものというよりはビタミンD欠乏性であるこ
とが考えられるという趣旨の記載にすぎず,前記1ウの事実からして
も,同診断が確定していたということはできない。
その他,原告らは,被告成育は,「栄養指導しているが入っていかな
い」,「通院が中断」,「薬物療法などは一切拒否」,「ジョアを飲用さ
せず」,「ステロイド拒否」,「退院要求が強い」などと虚偽の事実を通
告したと主張するが,証人dは,薬物療法は一切拒否とは言っていないと
証言していることなどからすると,実際に被告成育の医師らが北部児相に
対してどのように述べたかは必ずしも明らかでない上,前記1の事実関係
によると,何らかのそれらに沿う事実はあったものと認められる(前記1
オのとおり原告らが断って診察の日を3か月後にしたことや前記1サ
のとおり原告らが通院期間中診療の予約を取り消すことを度々行ったこと
などは,「通院の中断」と評価でき,その他の点については,前記1の各
事実のとおりである。)から,これらの点も,上記の認定を左右するも
のではなく,違法であるとか,債務不履行を構成するということはできな
い。
ウ原告らは,亡cがくる病を発症した背景には食物アレルギーによる食材
制限により栄養が偏ってしまったという事情があり,d医師もそのことを
認識していたにもかかわらず,そのことを伝えなかったと主張する。しか
し,前記1の事実関係に証拠(証人d)を総合すると,被告成育におい
て,亡cに必要な栄養を摂取させていなかったと判断する上で,食物アレ
ルギーも考慮に入れていたことは明らかであり,ことさらに食物アレルギ
ーを除外して情報を伝えたと認めることはできない。
原告らは,被告成育は本件通告後にされた試験外泊時の良好な結果を故
意に報告しなかったと主張する。しかし,前記1のとおり,試験外泊の期
間は短期間であり,1回目の入院から本件通告までの期間における原告ら
の言動や亡cの状態などに照らすと,当時,試験外泊時の良好な結果がそ
のまま維持される可能性が高かったということはできない。そうすると,
試験外泊時の良好な結果を伝えなかったことが違法であり,また,債務不
履行を構成するということはできない。
原告らは,被告成育は転院前の病院として必要な引継ぎを行っていない
と主張するが,そのことが違法であり,また,債務不履行を構成すると認
めるに足りる十分な証拠はない。
エ原告らは,被告成育が積極的に一時保護に加担していると主張するが,
被告成育が,受け入れ先の病院を探したり,親子の分離の方法を話してい
るとしても,要保護児童を発見した病院の行為として違法な点はなく,そ
のことが債務不履行を構成するということはできない。
以上によると,被告成育に対する請求は,その余の点について判断するま
でもなく,理由がない。
3本件一時保護決定及び本件再一時保護決定等について
本件一時保護決定について
ア児童福祉法33条1項において,児童相談所長は,必要があると認める
ときは,児童に一時保護を加えることができると規定されているところ,
一時的にせよ児童を保護者から強制的に引き離す行為であるから,合理的
な根拠に基づいてされなければならず,その判断に合理的な根拠がない場
合には,一時保護決定は違法となるものと解することができる。
イ前記1の事実関係からすると,原告らが,亡cに対して必要な栄養を与
えていなかった結果,亡cにくる病を発症するなどの事態に至っていたも
のであり,これに対する診察を行うため,被告成育の医師が検査等をしよ
うとしても,原告らがこれに同意せず,必要な時期に必要な治療や検査を
受けさせていなかったことが認められる。以上の事実をもとに判断する
と,亡cを原告らに監護させることは不適当であるとして,本件一時保護
決定を行う必要があるとした北部児相の長の判断には合理的な根拠があ
り,本件一時保護決定が違法であるということはできない。
ウ原告らは,全身のレントゲンやCT等が必要な検査でなかったと主張す
るが,これらが必要な検査であったことは,前記2アのとおりであり,
本件一時保護決定時においても,必要でなかったということはできない。
原告らは,上記検査が必要な検査であったとしても,必要性について十
分な説明を受けていれば,同検査を受けさせていたから,一時保護をして
までこれらの検査を行う必要性はないと主張する。前記1の事実による
と,被告成育の医師は,これらの検査の必要性について十分な説明をして
いる上,原告らの検査の拒否の理由が合理的なものとは認めがたいから,
同主張は採用することができない。
原告らは,亡cの栄養状態は,改善されており,原告bが本件通告後の
試験外泊中に作った食事内容などに照らし,栄養指導を行う必要はなかっ
たと主張する。しかし,試験外泊中の食事内容が十分なものであり,亡c
の栄養状態が改善されていたとしても,前記1エのとおり,被告成育の
栄養士は,原告bが食事を作ることに息切れしないよう考慮する必要があ
ると考えていた事実があるとおり,継続的に必要な栄養を与える習慣が定
着していたとはいえず,栄養指導の必要がなかったということはできな
い。また,前記1のとおり,原告らは,亡cの1回目の入院前及び通院時
の長期間にわたり,亡cに対して十分な栄養を与えていなかった。これら
のことに照らすと,上記主張は採用することができない。
原告らは,北部児相が原告らから聴取りを行っておらず,必要な調査を
行っていなかったと主張する。しかし,保護者から聴取りを行わなければ
ならないとする法的根拠はなく,前記1の事実に照らすと,北部児相
は,十分な調査を行い,本件一時保護決定に際して北部児相が認識した事
実は前記1の事実関係に照らして基本的には正しいものであったと認めら
れる。これらのことに,前記1の原告らの被告成育における言動を考慮す
ると,原告らに対して聴取り調査を行わなかったことが違法であるという
ことはできない。同主張は採用することができない。
本件再一時保護決定について
前記1,によると,北部児相の長が本件一時保護決定を解除し,本件
再一時保護決定をしたのは,一時保護先を変えるためであり,また,再発防
止として原告等に対して栄養指導をするため,一時保護を継続する必要があ
ったと認められる。栄養指導を不要とする状況等の変化があったと認めるに
足りる証拠はない。
以上によると,北部児相の長の判断には合理的な根拠があり,本件再一時
保護決定が違法であるということはできない。
一時保護機関の不告知について
ア前記1~のとおり,原告aが医師から入院継続の必要があるとの説
明を受けているにもかかわらず,本件通告の直前に退院することを申し出
ていることなど,被告成育における原告らの言動に照らすと,北部児相
が,一時保護先を告知すれば,原告らが亡cを取り戻すなどの危険がある
と判断し,これを告知しなかった判断が違法であるということはできな
い。
イ原告らは,原告らが被告成育の医師に対して様々な質問をし,医療方針
の決定について十分な説明を求めてきたが,それは,親として当然の務め
であるなどとして,取戻しの危険を基礎付ける具体的な事実はないと主張
する。しかし,親が医師に対して質問をし,十分な説明を求めることは正
当なことであるとしても,前記1の事実関係及び証拠(原告a)による
と,被告成育の医師らは,原告に対して,時間をかけ,十分な説明を繰り
返し行っていたのであり,これに対し,本件通告の直前に退院を申し出る
などの原告らの被告成育における言動が正当なものであったとは認められ
ない。
面会拒否について
証拠(乙3)によると,一時保護は,保護者と分離してこどもの生命及び
安全の確保と情緒的な安定等を図る目的で行われるものと認められるとこ
ろ,上記~のとおり,本件一時保護決定及び本件再一時保護決定は適法
なものであり,原告らが亡cを取り戻す危険があったことなどに照らすと,
北部児相が面会を拒んだとしても,そのことが違法であるということはでき
ない。
4前記前提事実及び前記1ア,イによると,中央児相の職員は,亡cに対
し,アレルギー源の卵を含む本件竹輪を食べさせてはならない注意義務を負
っていたが,誤って本件竹輪を食べさせたことが認められ,同注意義務を怠
った過失が認められる。
5亡cの死因
ア亡cの死因について,l医師は,アナフィラキシーショックであると診
断しているが(甲30,証人l),m医師は,右室心筋症による左心不全
と診断している(乙5,8,乙10の1,証人m)。
イ証拠(甲28,30,証人l)によると,亡cは,こども医療センター
で一時保護されていた平成18年7月4日にアレルギー検査を受けたとこ
ろ,卵白の特異的IgE抗体価の値が89.0でクラスが5という結果が
出ていること,クラスが3以上の場合にはかなり強い陽性で,5という値
は相当程度強い値であること,上記IgE抗体価の値が62以上の場合
は,本件竹輪のような加熱された卵白を食べたときでも,95%以上の患
者にアレルギー反応が出ることが認められる。また,同証拠によると,亡
cは,十分な監視下で少量投与される経口負荷試験を行うことができない
ほど,卵白に対して強いアレルギーを有しており,卵白を摂取すれば,ア
ナフィラキシーショックを引き起こす危険性が十分にあったことが認めら
れる。そして,前記のとおり,亡cは,卵白を含む本件竹輪を摂取し,
その後,比較的近い時間帯に死亡している。
証拠(証人l)によると,アナフィラキシーショックを引き起こす際に
は,血管の透過性が亢進するため,繊維素を含む血管内の血漿成分,水分
及び血液中のタンパク質が血管外に漏れ出す事態が生じ得ると認められ
る。証拠(甲29,43,乙5,証人m,証人l)によると,亡cは,死
亡時には,肺の末梢の気管支が分泌物によって満たされ,肺水腫が生じて
いたこと,亡cは,こども医療センターで一時保護されていた平成18年
7月12日には,総たんぱくの数値は,基準値内であったが,死亡時に
は,基準値を大きく下回っていたことが認められ,これらは,亡cがアナ
フィラキシーショックを引き起こしたことの所見になると認められる。
本件では,亡cが卵を含む本件竹輪を食べてから約5時間の間には,ア
ナフィラキシーショックの明らかな症状は認められていない。しかし,証
拠(甲30,l証言)によると,アレルギー物質を食べてからアナフィラ
キシーショックを発症するまでの時間は,同物質がどこで吸収されるかに
よっても異なり,生の卵白と違って,亡cが食べたのは加熱処理された練
食品である本件竹輪であるため,口から直ちにその吸収がされるのではな
く,小腸から吸収が始まった可能性があると認められる。吸収の時点が遅
くなれば,その分,アナフィラキシーショックを発症する時点も遅くな
る。また,証拠(甲30,乙5,証人l)によると,死亡時の亡cの胃に
は,朝食に食べたもやし等がまだ残っていたと認められ,このことに照ら
しても,本件竹輪の吸収が相当程度遅れた可能性がある。これらの事実に
よると,卵の入った本件竹輪を食べてから死亡まで数時間かかったとして
も,そのことが,死因がアナフィラキシーショックであることを否定する
ことにはならないと認められる。
証拠(甲30,乙8,証人m)によると,アナフィラキシーショックを
発症した場合でも,必ずしも,好酸球などの細胞浸潤を伴うとは限らない
と認められるから,これらがないことは,直ちにアナフィラキシーショッ
クを否定するものではない。
ウm医師は左心不全が起きたと診断しているが,証拠(甲30,乙10の
1,証人m)によると,同診断の根拠となっている左心室の収縮帯壊死及
び肺水腫は,いずれも,アナフィラキシーショックの場合にも生じ得るも
のと認められ,特に肺水腫については,上記イのとおりである。
証拠(甲30,乙10の3,証人l)によると,右心室の細胞間質の繊
維化という右室心筋症の組織学的所見が認められるものの,現在主に使用
されている右室心筋症の診断基準(ARVCの診断基準)では,上記組織
学的所見は大基準の一つにすぎず,同診断基準によると,大基準が二つ,
大基準が一つと小基準が二つ以上又は小基準が四つ以上満たす場合に初め
て右室心筋症と認められる。しかるところ,証拠(甲16,27,証人
f,証人l)によると,亡cは,こども医療センターで一時保護されてい
た平成18年7月3日から同月14日までの間に,超音波検査や心電図検
査を受けたが,上記基準に該当する事実や右室心筋症を示す所見は全くな
く,心臓に異常は認められなかった。なお,証拠(証人m)によると,小
児の場合には,右室心筋症であっても,同診断基準を満たさない場合があ
り得ると認められるが,同診断基準に該当しないことは,右室心筋症では
ないことを基礎付ける一つの事情ということができる。
証拠(甲30)によると,m医師の診断で右室心筋症により生じたとさ
れる不整脈は,アナフィラキシーショックの場合にも生じる可能性がある
ものと認められる。
証拠(証人m)によると,左心室に右室心筋症が広がる場合には,左心
室にも心筋に繊維化が広がるのが通常であるところ,亡cの左心室には心
筋の繊維化がないことが認められ,右室心筋症から左心不全を起こす典型
的な場合には当たらないことが認められる。
以上のことに照らすと,亡cは,卵に対して強いアレルギーを有してお
り,本件竹輪には,アナフィラキシーショックを引き起こす十分な量の卵白
が含まれ,現に本件竹輪を食べた後,これと近接した時間帯に死亡してお
り,また,アナフィラキシーショックが起きたことを示すいくつかの所見が
存在し,さらに,本件竹輪を食べてから死亡するまでには一定の時間的な間
隔があったが,そのことはアナフィラキシーショックであることを否定する
ものとはいえず,右室心筋症を発症したことまでは認められない。
これらを総合すると,l医師の診断を採用することが相当であり,亡cの
死因は,本件竹輪を食べたことによるアナフィラキシーショックにあると認
められる。
以上から,被告横浜市は,国賠法1条1項に基づき,亡cの死亡によって
生じた損害を賠償する責任を負う。
なお,前記1のとおり,亡cは,本件竹輪を食べた後に,軟便が出るな
どのことはあったものの,特に変わった様子はなく,昼食も食べ,昼寝を開
始したのであるから,この間に医師の診察を受けさせなかったとしても,直
ちに中央児相の職員に過失があったということはできず,その他,同職員が
経過観察を怠ったと認めるに足りる十分な証拠はない。
6損害論
逸失利益
亡cは死亡した平成18年当時3歳であったから,基礎収入は平成18年
賃金センサス男性学歴計全年齢平均賃金の555万4600円とし,就労の
始期は18歳,終期は67歳と認めるのが相当である。生活費控除率は50
%を相当と認める。したがって,次のとおり,2427万1936円とな
る。
555万4600円×(1-0.5)×(19.1191[67-3=6
4年のライプニッツ係数]-10.3797[18-3=15年のライプニ
ッツ係数])=2427万1936円
亡cの慰謝料
亡cは,3歳という幼い年齢で,最後に原告ら両親の顔を見ることができ
ないまま死亡したのであって,その慰謝料は,1800万円を相当と認め
る。
近親者慰謝料
前記5の事実並びに証拠(甲12,35,39,41,乙4)及び弁論の
全趣旨を総合すると,亡cは,結婚14年目に生まれた原告らの一人息子で
あり,子どもの生命の安全を確保することを目的とする一時保護の間に一時
保護先の中央児相の職員の過失により死亡したこと,原告らは亡cの死に目
に立ち会うことができなかったことが認められる。以上の事実に照らすと,
亡cの死亡により原告らが受けた精神的苦痛による慰謝料は各200万円を
相当と認める。
弁護士費用
各230万円を相当と認める。
総合計
原告a2543万5968円
原告b2543万5968円
第4結論
以上から,原告らの請求は,被告横浜市に対し,それぞれ,国賠法1条1項
に基づく損害賠償として,各2543万5968円及びこれに対する平成18
年7月27日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を請求する限度
で理由があり,被告横浜市に対するその余の請求及び被告成育に対する請求は
理由がない。
よって,上記の限度で認容することとして,主文のとおり判決する。
なお,被告横浜市は,担保を条件とする仮執行免脱宣言を申し立てている
が,相当ではないので,認めないこととする。
横浜地方裁判所第6民事部
裁判長裁判官森義之
裁判官古閑裕二
裁判官橋本政和

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛