弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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               主           文
1 被告徳島県知事Aが被告自由民主党・B会に対し金400万円の支払の請求を怠っ
ていることが違法であることを確認する。
2 被告自由民主党・B会は,徳島県に対し,金400万円及びこれに対する平成14年4
月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 原告の被告徳島県知事Aに対するその余の請求並びに被告D及び被告自由民主
党・C会に対する請求をいずれも棄却する。
4 訴訟費用のうち,原告に生じた費用は2分し,その1を原告,その余を被告徳島県知
事A及び被告自由民主党・B会の各負担とし,被告D及び被告自由民主党・C会に生じ
た費用は原告の負担とし,被告自由民主党・B会に生じた費用は同被告の負担とする。
                事 実 及 び 理 由
第1 請 求
1 被告徳島県知事A(以下「被告知事」という。)が被告D及び被告自由民主党・C会
(以下「被告C会」という。)に対し連帯して金600万円の,被告D及び被告自由民主党・
B会(以下「被告B会」という。)に対し連帯して金400万円の各支払の請求を怠っている
ことが違法であることを確認する。
2 被告D及び被告C会は,徳島県に対し,連帯して金600万円及びこれに対する被告
Dは平成14年4月24日(訴状送達の日)から,被告C会は同月22日(同上)から支払済
みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 被告D及び被告B会は,徳島県に対し,連帯して金400万円及びこれに対する被告
Dは平成14年4月24日から,被告B会は同月22日(訴状送達の日)から支払済みまで
年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
 本件は,徳島県の住民である原告が,県政調査研究費の名目で県から被告C会及び
被告B会(いずれも県議会議員で構成されている議会内会派)に交付されてそれぞれ
の所属議員の海外旅行の費用に充てられた公金は,地方自治法の規定に違反して違
法に支出・使用されたものであり,徳島県はその支出手続等に県知事として関与した被
告Dと当該金員の交付を受けて使用した被告C会及び被告B会に対し不法行為に基づ
く損害賠償請求権を有すると主張して,同法242条の2第1項(平成14年法律第4号に
よる改正前のもの)3号及び4号の規定に基づき,①被告知事に対し,当該損害賠償請
求権の行使を怠る事実の違法確認を求めるとともに,②被告D,被告C会及び被告B会
に対し,徳島県に代位してそれぞれ損害賠償を求める事案である。
1 前提となる事実
(1) 原告は,徳島県に居住する住民である。
 被告Dは,徳島県知事の職にあった者である。
 被告C会及び被告B会は,いずれも自由民主党所属の徳島県議会議員で構成さ
れている同議会内会派である。(以上,当事者間に争いなし)
(2) 被告Dは,徳島県知事に在職中,被告C会及び被告B会の申請により,徳島県
議会各会派県政調査研究費交付要綱(以下「本件要綱」という。)に基づく県政調査
研究費として,平成12年4月から平成13年3月までの間に,徳島県の公金の中か
ら,被告C会に5100万円,被告B会に3550万円をそれぞれ交付した(以下,これら
の交付金を「本件交付金」という。)。(乙1号証及び24号証ないし27号証,弁論の
全趣旨)
(3) 被告C会に所属する議員のうち15名は,平成13年2月5日から同月11日まで
の日程でオーストラリア及びシンガポールを旅行し(以下「本件旅行①」という。),こ
れに要した費用957万1846円を被告C会に交付された本件交付金の中から支払
った。(乙7号証及び42号証ないし44号証,証人Eの証言)
(4) 被告B会に所属する議員のうち10名は,平成13年2月5日から同月12日まで
の日程でイタリアを旅行し(以下「本件旅行②」という。),これに要した費用759万4
000円を被告B会に交付された本件交付金の中から支払った。(乙10号証,45号
証及び46号証,証人Fの証言)
(5) 原告は,平成14年1月30日,徳島県監査委員に対し,本件要綱に基づく金員
の交付の違法不当並びに本件交付金を本件旅行①及び本件旅行②に使用したこ
との違法不当を主張して,これにより徳島県が被った損害を被告D,被告C会及び
被告B会に補填させるなどの適切な措置を求める旨の住民監査請求をしたが,同年
3月21日,同監査委員から,これを棄却する旨の監査結果の通知を受けたため,同
年4月4日,本件訴えを提起した。(甲1号証及び2号証,弁論の全趣旨)
2 当事者の主張
(1) 原告の主張
ア 本件要綱に基づく議会内会派への金員の交付は,議員に対する金員の迂
回交付であり,普通地方公共団体はいかなる給与その他の給付も法律又はこれ
に基づく条例に基づかずにはこれを議会の議員に支給することができない旨を
定めた地方自治法204条の2の規定に違反する。
 したがって,本件交付金の支出は違法である。
イ 本件旅行①及び本件旅行②は,いずれもその実質は遊興目的の観光旅行
であり,公益上の必要がないものであることは明らかであるから,これらに対する
補助は,普通地方公共団体は公益上必要がある場合に補助をすることができる
旨を定めた地方自治法232条の2の規定に違反する。
 したがって,本件交付金のうち本件旅行①の費用に係る957万1846円及び
本件旅行②の費用に係る759万4000円の支出及び使用はいずれも違法であ
る。
ウ 以上によれば,被告Dは,徳島県に対し,被告C会との共同不法行為により
少なくとも600万円,被告B会との共同不法行為により少なくとも400万円の各損
害を与えたことになるから,徳島県は,被告D及び被告C会に対し連帯して600
万円,被告D及び被告B会に対し連帯して400万円の各損害賠償請求権を有
する。
(2) 被告らの主張
ア 本件要綱に基づく議会内会派への金員の交付は,地方自治法232条の2の
規定に基づく補助であり,同法204条の2の規定に違反しない。
 したがって,本件交付金の支出は適法である。
イ 本件旅行①及び本件旅行②は,いずれも県政に関する調査研究及び所属
議員の研修のための視察旅行であり,公益上の必要に基づくものである。
 したがって,本件交付金のうちこれらの費用に係る部分の支出及び使用はい
ずれも適法である。
ウ 以上によれば,徳島県は,被告D,被告C会及び被告B会に対し,原告が主
張するような損害賠償請求権を有しない。
第3 当裁判所の判断
1 前記第2の1の事実のほか,証拠(各項末尾に記載のもの)及び弁論の全趣旨によ
れば次の事実が認められる。
(1)ア 徳島県では,県議会における議員の議会活動が会派中心に行われていると
いう実態を勘案し,会派が行う県政に関する調査研究活動を推進することが,議会
審議の充実につながり,ひいては県民の福祉の向上に寄与するものであるとの認識
のもとに,昭和51年11月に本件要綱を制定し,これに基づいて県政調査研究費の
交付を各会派に対して行ってきた。
イ 本件要綱(平成8年12月1日施行のもの)によれば,県政調査研究費は,徳
島県議会内の会派(所属議員が1人の場合を含む。)に対して交付し,議員個人
には交付しないものとされており(2条1項),交付金の使途は,会議費,調査研
究費,研修費,資料作成費,資料購入費,広報費及び事務費に限定され,これ
以外の目的には使用することができないものとされている(2条2項,6条)。また,
交付額は,予算の範囲内において所属議員数に応じて算定した額をもって限度
とされ(4条),具体的な交付手続は,交付を受けようとする会派の代表者が,所
定の申請書に収支予算書と事業計画書を添えて毎年度4月10日までに当該年
度分の交付を申請し(7条),知事の交付決定及び交付指令を受けて(8条),所
定の請求書により毎月20日までに当月分の請求をし(9条1項),速やかにその
交付を受けるものとされている(同条2項)。そして,知事は,次年度の4月末まで
に各会派から提出される収支決算報告書と事業実績報告書に基づいて交付額
の確定手続を行い(11条1項,12条1項),これにより剰余を生じたとき,又は上
記の所定の使途以外に使用されたことが認められるときは,その全部又は一部
の返還を命ずることがあるとされている(同条2項)。そのため,会派は,経理責任
者を定め,収入及び支出を明らかにした帳簿を備え,当該収入及び支出につい
ての証拠書類を整理保管することが義務づけられている(13条,14条)。
ウ なお,徳島県では,平成12年法律第89号による地方自治法の一部改正で
新設された同法100条12項(平成14年法律第4号による改正で同条13項に繰
り下げ)の規定に基づき,徳島県政務調査費の交付に関する条例(平成13年徳
島県条例第26号)が制定・公布され,平成13年4月1日から施行されたことに伴
い,本件要綱に基づく県政調査研究費交付の運用は,本件交付金に係る平成
12年度を最後に廃止された。
(甲2号証,乙1号証ないし3号証及び13号証ないし27号証)
(2)ア 被告C会は,平成12年8月ころから所属議員による本件旅行①の実施につ
いて検討を始め,行き先をシドニー及びシンガポールとし,シドニーでは酪農家とB
SE及び施設に関する問題点について,オリンピック後の施設の利用状況とその維
持管理について,並びに痴呆性高齢者対策に関する施設と介護方策の現状と今後
の問題点について,シンガポールでは港湾の管理と物流基地の現状について,そ
れぞれ調査研究することを目的とすること,旅費の節約等のためシドニーへの往路,
復路ともにシンガポールを経由することとすること,旅行の日を県議会閉会中の平成
13年2月5日から同月11日までの7日間とすることなど,旅行の目的や具体的な日
程を平成12年10月ころまでに決定した。
イ 本件旅行①には被告C会に所属する議員17名のうち15名が参加し,初日
の平成13年2月5日(シンガポール泊)と同月6日をシドニーへの移動日として費
やした後,同月7日には,シドニー郊外の牧場を午前と午後に1か所ずつ訪問し
て現状視察及び経営者との意見交換を行うとともに,在オーストラリア日本大使
館員からオーストラリアの概要についての説明を受け,同月8日には,午前中に
シドニー市職員の案内により市庁舎やオリンピック施設を見学した後,午後から
はシドニー郊外の痴呆性高齢者専門施設を訪問して所長ほか複数の講師から
説明を受け,同月9日朝にはシドニーを発って昼過ぎにシンガポールに到着し,
同日午後と同月10日をシンガポール港湾局及びシンガポール海事港湾庁の訪
問並びにシンガポール港湾施設の見学に充て,同日夜機中泊の後,同月11日
に帰国した。
ウ 本件旅行①の費用957万1846円の内訳は,①旅費及び国内バス代,空港
施設使用料等合計886万2750円(1人当たり旅費56万2000円及び国内バス
代,空港施設使用料等2万8850円),②通訳費用合計14万0772円,③緊急
用海外携帯電話料金合計1万4800円,④添乗員経費等諸雑費合計55万352
4円であり,このうち1人当たりの旅費56万2000円は徳島県の旅費規程に基づ
いて算出された金額である。被告C会では,以上の出費を本件要綱所定の研修
費(所属議員の研修に要する経費)として会計処理した。
(甲4号証,乙7号証ないし9号証,28号証ないし36号証及び42号証,証人Eの
証言)
(3)ア 被告B会は,平成12年9月ころから所属議員による本件旅行②の実施につ
いて検討を始め,市町村の町づくりの取り組みや町並み保存のための施策及び観
光立県をめさず徳島県の観光行政に資するための調査を目的に,町並みが世界遺
産になっていたり観光地としても有名なフィレンツェ,ナポリ及びローマを視察先と定
め,併せて歴史的遺跡の保護や活用などの見聞のためポンペイの遺跡を見学する
こととして,同年11月ころまでに具体的な日程を決定した。当初は,平成13年1月2
9日に出発の予定であったが,その後同年2月4日投票の徳島市長選挙に被告B会
所属の議員が立候補することになったため,旅行の日を投票日後の同月5日から同
月12日までの8日間に変更した。
イ 本件旅行②には被告B会に所属する議員11名のうち10名が参加し,初日
の平成13年2月5日をフィレンツェへの移動に費やした後,同月6日はフィレンツ
ェ市街を視察し,同月7日朝に鉄道でフィレンツェを発って昼ころナポリに着き,
同日午後はバスでポンペイの遺跡を見学し,同日夜はナポリに宿泊し,同月8日
はナポリ市街を視察し,同月9日はバスでローマに移動し,同月10日はローマ
市街を視察し,同月11日朝ローマを発ち,同日夜機中泊の後,同月12日に帰
国した。ただし,参加議員10名のうち被告B会の会長であったG議員と幹事長で
あったF議員の2名は,所用のため同月9日に急遽ローマを発って帰国した。各
地の視察・見学にはイタリアの都市計画と歴史に詳しいイタリア在住の日本人が
通訳兼ガイドとして付き,フィレンツェ市街の視察ではドゥオモ寺院の見学に約4
0分,ウフィッツィ美術館の見学に約1時間を費やしたほかは終日徒歩で町並み
を視察し,ナポリ市街の視察においても同様であった。
ウ 本件旅行②の費用759万4000円の内訳は,①途中帰国した2名分の費用
が合計146万6000円(1人当たり73万3000円),②その余の8名分の費用が
合計612万8000円(1人当たり76万6000円)である。被告B会では,以上の出
費を本件要綱所定の調査研究費(会派において地方制度及び県政に関する調
査研究等を行うために要する経費)及び研修費として会計処理した。
(甲4号証,乙10号証,11号証,45号証及び65号証,証人Fの証言)
2 地方自治法204条の2違反の主張について
(1) 前判示のとおり,本件要綱に基づく交付金は,県議会内会派が行う県政に関す
る調査研究活動に資するために,各議員ではなく各会派に対して交付されるもので
あり,交付金の交付を受けた会派は,経理責任者を定めて収支を明らかにする帳簿
及び証拠書類を整理保管することが義務づけられ,会派として行う一定の活動の費
用にのみ交付金を使用することが許されているのであるから,これを議員個人に対
する給与その他の給付ということはできない。
(2) また,徳島県議会のように,政治的な思想・信条を同じくする議員が議会内で
統一的な行動をとるために会派を結成し,会派を通じて各種の議会活動を行ってい
る場合において,このような会派としての調査研究活動に対し必要な経費を補助す
ることは,会派を通じての議会運営を円滑にし,議会の活動能力を高め,ひいては,
地方行政全般の適切な運営にも資することとなるから,公益性を有するものというこ
とができる。したがって,徳島県が議会内会派に対する県政調査研究費の交付の必
要性を認め,本件要綱に基づいてこれを交付してきたことは,地方自治法232条の
2の規定による補助に当たるというべきであって,これを法律に基づかない支出とい
うことはできない。
(3) 以上によれば,本件交付金の支出が地方自治法204条の2の規定に違反する
との原告の主張は理由がない。
3 地方自治法232条の2違反の主張について
(1) 地方公共団体が行う補助の要件である公益上の必要の有無の判断は,当該地
方公共団体の公益に対して最終的な責任を有する首長や議会の裁量的な判断に
委ねられていると解するのが相当であるが,裁量権の行使が逸脱・濫用にわたる場
合には補助金の交付は違法であり,また,裁量権の行使そのものには逸脱・濫用が
なく補助金として適法に交付されたと評価できる場合であっても,当該補助金がその
趣旨に反し公益性のない用途に使用されたときには,その使用が違法になるという
べきである。
(2) そこで検討すると,まず,本件交付金の支出そのものは,前記2(2)に説示したと
おり,これまで徳島県が本件要綱に基づいて行ってきた交付金交付の一環であり,
裁量権行使の逸脱・濫用にわたらない適法な支出であったと認められる。
(3) 次に,本件交付金を所属議員の海外旅行に使用することの適法性について検
討する。
ア 地方議会の議員は,当該地方公共団体の議決機関の構成員として,地方行
政全般にわたる広範な領域においてその機能を十分に発揮すべく,不断の研
修及び調査研究が期待されており,海外事情を視察するための旅行も,そのよう
な研修及び調査研究活動の手段として,その目的や地方行政との関連性に照
らして合理的な必要性がある限り,公益性を有するものといえる。しかしながら,
旅行の目的が地方行政との関連において合理性を欠き,あるいは旅行計画な
いし旅行内容が旅行目的との関連性を有さず又は手段として不相当である場合
には,そのような旅行は公益性のないものであり,これに本件交付金を使用する
ことは違法であるというべきである。
イ まず,これを本件旅行①についてみると,前記認定事実によれば,本件旅行
①は,酪農,BSE,高齢者福祉及び港湾に関する実情の調査研究をすることを
一応の目的としており,これらの調査事項が地方公共団体の行政において重要
な問題であることに鑑みれば,その目的は地方行政との関連において合理性が
認められ,一概に不必要であるということはできない。
 そして,本件旅行①の旅行内容についても,視察先としてシドニーでは牧場,
高齢者福祉施設等を訪問して関係者から説明を受け,シンガポールでは港湾
局を訪問したり,港湾施設を見学するなど,一応前記目的に沿ったものということ
ができる。また,旅行費用の面でも,明らかに社会通念上相当な範囲を超えて高
額であるとまではいい難い。
 したがって,本件旅行①については,これを公益性のない旅行ということはでき
ず,被告C会が本件交付金をその費用に充てたことは違法とはいえない。
ウ 次に,本件旅行②についてみると,前記認定事実によれば,本件旅行②は,
市町村の町づくりの取り組みや町並み保存のための施策,観光行政等の調査
研究を一応の目的としており,これらの調査項目は,地方公共団体の行政にお
いて重要な問題であるから,その目的自体は地方行政との関連において合理性
が認められ,一概に不必要であるということはできない。
 しかしながら,本件旅行②の行程は,フィレンツエ,ナポリ,ポンペイ,ローマの
市街,遺跡等を視察したものであるが,その間,各都市の地方自治体,その他
都市計画や観光行政に関連する施設を訪れることもなく,通訳を付けて市街
地,遺跡等のいわゆる観光地とされる場所を見物したにとどまるものであり,本件
旅行②の内容は,およそ前記目的に沿ったものとはいい難い。しかも,議員のう
ち2名は途中で所用のため帰国するなど,本件旅行②の必要性についても疑問
がある。
 以上によると,本件旅行②は,実質的には遊興目的ではないかとの疑念を生
じさせかねないものであり,合理的必要性があったとは認められず,公益性を欠
くものといわざるを得ない。したがって,被告B会が本件交付金を本件旅行②の
費用に充てたことは,本件交付金の趣旨に反し,違法である。
4 被告C会の損害賠償責任について
 前記3(3)イのとおり,被告C会が本件交付金を本件旅行①の費用に充てたことは違法
とはいえず,同被告が当該行為について徳島県に対し不法行為に基づく損害賠償責
任を負うことはないから,原告の同被告に対する請求は理由がない。
5 被告B会の損害賠償責任について
 前記3(3)ウのとおり,被告B会が本件交付金を本件旅行②の費用に充てたことは違法
であり,同被告は,本件交付金をその趣旨に従って適正に使用すべき注意義務を怠っ
た過失により,徳島県に本件旅行②の費用相当額759万4000円の損害を与えたもの
であるから,徳島県に対し,不法行為に基づく損害賠償責任として,同額の賠償金を支
払う義務があるというべきである。原告の同被告に対する請求は,上記賠償金の内金4
00万円の支払を求めるものであり,理由がある。
6 被告Dの損害賠償責任について
 前記3(2)のとおり,被告Dが徳島県知事として行った本件交付金の支出そのものは適
法な支出であり,同被告が当該行為について徳島県に対し不法行為に基づく損害賠
償責任を負うことはない。
 また,原告の主張が,同被告が徳島県知事として前記5の被告B会に対する損害賠償
請求権を行使しなかったことの違法をいう趣旨であるとしても,当該損害賠償請求権が
時効により消滅するなどのことがない限り,徳島県は当該損害賠償請求権を行使して損
害の回復を図ることができるから,被告Dがこれを行使しなかったことによる損害はいま
だ徳島県に発生しておらず,同被告にその賠償責任はない。
 したがって,原告の同被告に対する請求は理由がない。
7 被告知事の怠る事実の違法性について
 前記5のとおり,徳島県は,被告B会に対して不法行為に基づく損害賠償請求権を有
するから,被告知事としては,地方自治法240条2項,同法施行令171条,171条の2
第3号の規定に従い,被告B会に対し,訴訟等により損害賠償請求をなすべき義務があ
る。しかるに,被告知事は,何ら合理的理由なく,上記損害賠償請求権の行使を怠って
いるから,その怠る事実は違法というべきである。
第4 結 論
 以上の次第で,原告の被告知事に対する請求は,同被告が被告B会に対し金400万
円の損害賠償請求を怠っていることの違法確認を求める限度で理由があるから認容し,
その余は理由がないから棄却し,被告B会に対する請求は理由があるから認容し,その
余の被告らに対する請求はいずれも理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担
につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,64条本文を適用して,主文のとおり判
決する。
 
徳島地方裁判所第2民事部
 
 
裁判長裁判官  村  岡  泰  行
 
 
 
   裁判官  古  田  孝  夫
 
 
 
   裁判官  井  出  弘  隆

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