弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
一 被告は、原告に対し、金四二、〇五二円及び(1)内金五、四一五円に対して
は昭和四七年一月二六日から、(2)内金八三七円に対しては同年二月二六日か
ら、(3)内金一九、八四〇円に対しては同年四月二六日から、(4)内金一〇、
八五〇円に対しては同年五月二六日から、(5)内金五、一一〇円に対しては同年
六月二六日から、各支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
二 訴訟費用は被告の負担とする。
三 この判決は仮に執行することができる。
       事   実
(双方の求める裁判)
一 原告
1 主文第一、二項同旨
2 仮執行の宣言
二 被告
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
(双方の主張)
第一 原告
一 請求の原因
1 被告は、肩書地に本社及び川崎製油所、堺市<以下略>に堺製油所を置く石油
精製会社であり、原告は、昭和四〇年被告会社の従業員をもつて組織された労働組
合であり、その組織として本部並びに各製油所に対応してそれぞれ川崎支部及び堺
支部を設けている。
2 原告は、昭利四五年一月二六日被告との間で、組合費を毎月の給与から控除す
ることについて、左記の協定を締結した。
 記
(一) 控除額(円単位を切上げて一〇円単位とする)
(1) 組合費
(イ) 各人本給の一・五パーセントに二〇〇円を加えた額
(ロ) 各人昇給差額支給額に一・五パーセントを乗じた額
(2) 組合資金
 各人期末手当支給額に一・○パーセントを乗じた額
(二) 控除の時期及び対象者
(1) 組合費
(イ) 前記(1)の(イ)については、毎月一日現在の組合員を対象として毎月
控除する。
(ロ) 前記(1)の(ロ)については、昇給差額支給時現在の組合員を対象とし
て支給時に控除する。
(2) 組合資金
 期末手当支給時現在の組合員を対象として支給時に控除する。
(三) 交付期日 毎月二五日
(四) 控除額の変更
 年一回を限度とし、原告が変更を希望する場合は、一か月前に被告に申出る。
3 原告は、昭和四六年九月九日被告に対し、前記協定の(四)に基づいて、次の
(一)(二)のとおり控除額の変更を申入れ、同年九月分から、控除額がそのとお
り変更された。
(一) 前記協定の(一)の(1)の(イ)について。
各人本給の二・五パーセントに五〇〇円を加えた額
(二) 前記協定の(一)の(2)について。
(1) 毎月一人一、○○○円
(2) 各人期末手当支給額に二・〇パーセントを乗じた額
4 被告は、前記協定に基づいて、原告に対し毎月二五日に組合費控除額を支払う
べき義務を負つているものであるが、それぞれ、次の表の日時欄記載の日に原告に
支払うべき同表支払金額欄記載の名組合費を控除したが、そのうち同表未払金額欄
記載の各金員を支払わない。
5 よつて、原告は、被告に対し、右未払金額欄記載の各金員及びこれに対する各
支払日である右日時欄記載の日の翌日から支払済に至るまで民法所定の年五分の割
合による遅延損害金の支払を求める。
二 抗弁に対する認否
1 被告が原告に対し、被告主張の不法行為に基づく損害賠償請求権を有すること
は否認する。
 抗弁1の(一)の(1)のうち、原告組合員が、堺製油所において昭和四六年四
月二三日から同四七年四月二七日までの間延三九回にわたり、本社・川崎製油所に
おいて昭和四六年七月一四日から同年八月二七日まで(同月二八日の貼付行為は否
認する。)延七回にわたり、被告会社の社屋にビラを貼付したことは認めるが、そ
の枚数は否認する。被告主張の昭和四六年四月二三日の貼付行為のうち、「A組合
員」は否認する、貼付場所に「全面」とあるのは否認するが、その余は認める、ビ
ラの記載内容は認める。貼付の態様のうち、「なすりつけ」「全面糊付というよ
り、殊更必要以上の糊をつけて窓ガラスを汚くする意図に出た」「五〇〇枚」「一
〇枚前後」「五枚前後」「窓の採光は著しく妨げられることになつた」との点は否
認し、その余は認める。
 同(一)の(2)は否認する。
 同(二)の(1)は不知。(2)は否認する。仮に原告組合員がしたビラ貼り行
為が不法行為となるとしても、右不法行為によつて生じた損害とは、建造物等被告
の所有物件に生じた財産的価値の減少であり、被告がビラの撤去に要した費用のご
ときは、右損害とはならない。又右にいう価値の減少とは、物件それ自体について
客観的に定められるものであつて、被告の主張する作業代金は、被告と下請業者と
の間で自由な価格決定に基づいて支払われたものであり、右代金の額は被告の主観
的意思によつて決められるものであるから、ここにいう損害とはなしえない。
2 同2のうち、被告主張の日時にその主張の各相殺の意思表示があつたことは認
めるが、その効果は争う。
3 被告がした相殺は、次の理由により、法律上許されない。
(一) 労働基準法(以下、労基法という。)二四条違反
 賃金とは、「労働の対価として使用者が労働者に対して支払うすべてのものをい
う」(労基法一一条)のであつて、金銭・物・その他の利益が含まれる。ここに利
益とは、労働者が使用者又は第三者に対し支払義務を負つている場合に、右出費を
免れることを意味する。労基法上、かかる利益も賃金としての保護を受ける。原告
組合の組合員たる労働者は、その賃金のうち組合費として控除された分について
は、自己の金銭から当該組合費を支払う義務を免れる利益を有する。労働者がかか
る利益を有する間、即ち組合費が現実に支払われるまでは、右利益は、労働者対会
社の関係において賃金性を有している。
 労基法二四条一項本文は、賃金の全額払の原則を定め、同項但書は、例外的に賃
金の一部の控除を認めている。この控除は、控除額に相当する労働者の賃金(利
益)が完全に全うされ、自身で支払つたと同様の効果が確実に期待されるから認め
られるのであり、そこに控除者の恣意ないし裁量の入る余地はないのである。組合
費の控除も、右控除の一場合であるが、組合費が控除された場合に、被告主張のよ
うな相殺を認めることは、利益をも賃金として保護する労基法の趣旨に反するもの
であるから、右相殺は許されない。
(二) 民法五〇五条一項但書の適用
 元来、チエツクオフ協定は、団結承認的意義と組合保障的機能を有している。組
合費滞納による脱落の防止、組合財政の確立がその基本的な機能である。本件原被
告間に締結されているチエツクオフ協定も、当然のことながら、右のような組合活
動保障として締結されたものである。したがつて、本件チエツクオフ協定によつて
被告が負担する債務も右の趣旨に照して解釈されるべきである。原被告間の合意の
内容は、原告は、団結権の維持強化という前提に立つて、組合員の賃金から所定組
合費を控除してこれを原告に引渡すことを被告に委任(準委任)し、被告が、組合
保障という前提に立つて、組合費を控除し、控除した組合費を一括して原告に引渡
す義務を負うというものである。被告の義務は、組合保障という制約を本来的に負
つているのである。被告の義務は、一般民事法上の金銭支払義務とは性格を異にす
るもので、控除した金額は、そのまま原告に引渡すべきものである(むしろ原告
が、被告保管中の一定の金銭について所有権権利を有しているといいうるであろ
う。)。かような見地からすれば、取引上の決済方法として規定された「相殺」
は、その適用がたく、又被告が控除した金額を原告に支払うべき義務は、民法五〇
五条一項但書の「但債務ノ性質カ之ヲ許ササルトキハ此限二在ラス」に該当し、被
告主張の相殺は許されないというべきである。
三 再抗弁
 被告主張の相殺は、原告組合の弱体化を意図してなされた不当労働行為意思に基
づくものであり、労働組合法七条三号に該当し、無効である。
 被告は、昭和四五年の春闘時前後から露骨に原告組合を敵視し、組合役員に対す
る解雇を含めた大量処分をなし、同年八月第二組合が結成された後は、就労差別、
不当配転を敢行した。これがため原被告間には、大阪地方労働委員会、神奈川地方
労働委員会に不当労働行為救済中立事件が係属中である。被告は、原告組合の活動
を極度に嫌悪する余り、たまたま組合費が原告とのチエツクオフ協定で被告に保管
されているのを奇貨として組合に圧力をかけようと企て、今後、原告がビラ貼りを
継続すれば、相殺するとして、ビラ貼りを事前に規制し、もつて原告組合の活動に
介入し、若し原告組合がそれでもビラ貼りをすればその度に相殺し、その結果やが
て組合財政が危機に陥り、原告組合が自然崩壊することを期待するという一石二鳥
の効果を狙つて、本件相殺をするに至つたのである。右相殺の不当労働行為性は、
原告が、相殺は違法であるとして明確に反対の意思を表明したのに、被告が敢てこ
れを行つたという経過からも明白である。本件相殺は、裁判所による組合活動の正
当性の客観的な判断をまたずに、被告会社の独断でその違法性を判断し、組合費か
ら迅速確実な賠償を受けるというものであつて、私法上の相殺というほかに、先制
的な使用者の争議対抗行為としての実質をもち、いわゆるロツクアウト以上の効果
を挙げることが可能である。したがつて、本件相殺を単なる私法上の権利行使とい
つた側面ではなく、本件相殺のもつ先制的争議対抗行為の実質を、原被告の労使関
係の中で評価すべきである。
第二 被告
一 答弁
 請求原因の1、2、3は認める、4のうち被告が原告に対し同表未払金額欄記載
の金員を支払う義務があることは否認するが、その余は認める、5は争う。
二 抗弁
1 被告は、原告に対し不法行為に基づく損害賠償請求権を有する。即ち
(一) 原告の不法行為
(1) 原告は、昭和四六年四月から同四七年四月まで、ビラ貼り闘争・ステッカ
ー闘争と称して被告会社の社屋にところ構わず多数のビラないしステツカー(以
下、ビラという。)を貼付する行為を繰返した。これを少しく詳言すれば、昭和四
六年四月二三日午前八時頃原告組合の組合員約六〇名が組合事務所前に集合し、前
日から用意されたと思われる多数のビラ(長さ約三五センチメートル、幅約一五セ
ンチメートル)と糊を持つて堺製油所の本館前へ行進し、A組合員のハンドスピー
カーによる「ビラを貼れ」との指示により全員で、「スト貫徹」「研修室粉砕」
「不当配転粉砕」「春闘勝利」等と記載したビラの貼付を開始したのであるが、貼
付の態様は、ポリバケツ等に入れた糊を素手ないし軍手をつけた手ですくつて、本
館別館の窓ガラス及び南側扉の全面になすりつけ、その上からビラを次々に貼りつ
けてゆくもので、全面糊付というより、殊更必要上の糊をつけて窓ガラスを汚くす
る意図に出たものという外はないものである。貼付したビラは約五〇〇枚に及ん
だ。本館窓ガラスは、上下に分かれており、上が高さ約一・五メートル、幅約八〇
センチメートル、下が高さ約七〇センチメートル、幅約七〇センチメートルである
が、上側窓ガラスには平均して一〇枚前後、下側窓ガラスには五枚前後のビラが貼
られたので、窓の採光は著しく妨げられることになつた。そして原告組合員は、右
のように、堺製油所においては昭和四六年四月二三日から同四七年四月二七日まで
の間延三九回にわたり、本社・川崎製油所において昭和四六年七月一四日から同年
八月二八日までの間延八回にわたり、ビラを一回当り多いときは約一、二〇〇枚、
少いときは約七〇枚、総計約一七、八一〇枚を被告会社の社屋に貼付した。
(2) これらビラ貼付行為は、毎回被告会社の再三の警告と制止を振切つてなさ
れたもので、ビラの枚数及び貼付回数が異常に多いこと、貼付の態様も全面糊付に
よるもので必要以上に建物等を汚損するものであること、建物の外観を殊更損ね室
内の採光を妨げるものであること等いずれの観点から見ても正当な組合活動を著し
く逸脱した違法なものである。
(二) 損害賠償請求権
(1) 被告は、昭和四六年七月頃までは管理職の手でビラの撤去作業を行つてい
たが、回数が多く管理職の本来の業務に支障をきたすに至つたので、やむなく工場
内の清掃に当つている下請会社に依頼して、ビラの撤去並びに糊の洗流し等の原状
回復作業を行わせた。被告がその費用として支払つた金額は、次のとおりである。
即ち
(イ) 五、四一五円 本社・川崎製油所において昭和四六年八月二四、二五日貼
付されたビラの撤去並びに建物等の原状回復作業
(ロ) 八三七円 堺製油所において昭和四六年一一月二四日貼付されたビラにつ
いての右(イ)と同一の作業
(ハ) 一九、八四〇円 堺製油所において昭和四七年二月四日、七日、八日、一
二日、一五日、一九日、二四日、二八日貼付されたビラについての右(イ)と同一
の作業
(ニ) 一〇、八五〇円 堺製油所において昭和四七年三月三日、九日、一八日、
二九日貼付されたビラについての右(イ)と同一の作業
(ホ) 五、一一〇円 堺製油所において昭和四七年四月一一日、二七日貼付され
たビラについての右(イ)と同一の作業
(2) これらビラの撤去及び建物等の原状回復に要した費用は、もとより原告の
不法行為によつて生じた損害である。したがつて、被告は、原告に対し、右(イ)
ないし(ホ)の各損害賠償請求権を有する。
2 そこで被告は、原告に対し、次の表のとおり、右各損害賠償請求権と原告がチ
エツクオフ協定基づいて被告に対して有する控除組合費の支払を求める債権(請求
原因の4の表の支払金額欄)とを対当額で相殺する旨の意思表示をした。よつて、
原告が本訴において支払を求める債権はすべて消滅した。
3 被告のした相殺は有効である。
(一) 賃金としての「利益」とは、労働の対価として使用者から労働者に支給さ
れる通貨ないし物以外の価値であるが、それは通貨の支払に代えて支給されるもの
でなければならないし、又それは「法令若しくは労働協約に別段の定がある場合」
に限る(労基法二四条一項)。本件の場合、原告の主張によると、組合員の賃金
は、一部が通貨で支払われ、その余は通貨に代えて「組合費を自ら支払う義務を免
れる利益」で支払われたということになるのであるが、法令若しくは労働協約にか
かる定めがないことは勿論、会社は賃金を全額通貨で支払つているのである。そし
て、この全額通貨によつて支払う賃金の中から、原告の授権に従い原告に代つて組
合費相当額引き去つたに過ぎず、その後はもはや会社と従業員との間に賃金不払の
問題を生ずる余地はないのである。
 仮に、原告主張のように、賃金の一部が通貨に代えて「組合費を自ら支払う義務
を免れる利益」なるもので支払われたという考え方をとつてみても、被告が原告に
代つて組合費を徴収し終つた段階で、組合員は組合費納入義務を果したもの、即ち
右の利益による賃金支払を受けたものというべきである。けだし、被告が、原告か
らの適法な授権に基づいて、原告のために取立行為を完了したのであるから、組合
員からみて組合費の支払は有効になされたと解するほかはないからである。
(ニ) 原告の、民法五〇五条一項但書の適用に関する主張は、過去に例のない全
く原告独自の見解である。原告主張のように、相殺されると組合財政がおびやかさ
れる虞れがあるというだけでは、相殺許容性がないとはいえない。けだし、組合と
いえども、不法行為によつて他人に損害を与えた場合には、全財産をもつてこれを
償うべきは当然であるからである。
 原告は、チエツクオフ制度は、組合保障の制度であり、会社は、保管中の組合費
について組合保障という制約を負つているとも主張するが、全く独自の見解であつ
て、現行法体系から考えて到底無理な主張といわざるをえない。元来、組合費の徴
収は、組合自ら行うべきものであり、これを使用者が無償で代行するについては、
一定の条件(協定の存在)がととのえば、便宜供与として労基法違反の責任を問わ
れることはないというに過ぎないのである。したがつて、会社がチェックオフ協定
により負担する義務は、同協定により控除し徴収した組合費を原告に引渡すという
準委任契約上の金銭引渡債務にほかならないのであつて、それ以上のものでもな
く、又それ以下のものでもない。
三 再抗弁に対する認否
被告がなした相殺が不当労働行為であるとの主張は否認する。
(証拠関係)(省略)
       理   由
一 請求原因の1ないし3の事実、同4の事実のうち、被告が、協定に基づいて、
それぞれ同表日時欄記載の日に原告に支払うべき同表支払金額欄記載の組合費を控
除したが、そのうち同表未払金額欄記載の金員を原告に支払つてないことは、当事
者間に争いがない。
二 被告の相殺の抗弁について、まず、被告主張の相殺が許されるかどうかについ
て検討する。
 前述のとおり、昭和四五年一月二六日原被告間に締結された協定において、被告
は、毎月従業員に支払うべき給与の中から、組合費として(イ)各人本給の一・五
パーセントに二〇〇円を加えた額及び(ロ)各人昇給差額支給額に一・五パーセン
トを乗じた額を控除し、右控除額を毎月二五日原告に交付すべきものと定められ、
その後昭和四六年九月分から右(イ)の控除額が各人本給の二・五パーセントに五
〇〇円を加えた額と変更されたことは、当事者間に争いがない。そして、前述のと
おり、請求原因の1の事実は、当事者間に争いがなく、この争いがない事実に、証
人B、同Cの各証言及び原告代表者本人尋問の結果を総合すれば、被告会社は、川
崎市に本社及び川崎製油所を、堺市に堺製油所をそれぞれ有し、被告会社の従業員
をもつて組織する原告組合は、その組織として、組合本部のほか、川崎製油所及び
堺製油所に各支部を、本社に分会をそれぞれ有するが、前記組合費の控除及び右控
除額の交付は、まず、被告会社の本社の経理課が本社及び川崎製油所の従業員のう
ち原告組合員である者の賃金について、堺製油所の経理課が同製油所の従業員のう
ち原告組合員である者の賃金について、それぞれ控除を行い、次に、本社経理課が
右控除額を全部集め、これを一括して原告組合の本部に、その預金口座に振込む方
法で、交付することによつてなされていること、組合支部へは本部から交付金とい
う形で引渡されていることが認められ、右認定に反する証拠はない。
 およそ相殺が許されるためには、二当事者間に互に対立し同種の目的を有する債
権が存在することを必要とする(民法五〇五条一項本文)。右にみたところによれ
ば、被告は、前記協定によつて、原告に対し、従業員に支払うべき賃金から所定の
組合費を控除したうえその控除額を一括して原告に交付すべき債務を負つていると
いことができ、原被告間の右法律関係は、準委任の性質を有するものというべきで
ある。即ち、受任者たる被告は、委任事務の処理として、従業員に支給する賃金か
らの組合費の控除及び委任者たる原告への右控除額の交付を行うのであるが、元
来、右控除にかかる金額は、もと従業員に支払うべき賃金の資金として、すでに被
告会社の一般財産から支出されたもの(それの一部)であつて、たとえその後にい
わゆる控除が行われたとしても、そのゆえに右控除額が被告会社の一般財産に復帰
するものとは解せられない。
そして、右控除後の被告の債務は、まさに右のように賃金支払の資金としてすでに
被告会社の一般財産から区別されている金額を原告に交付することがその目的なの
であつて、被告が本訴において自働債権として主張する不法行為に基づく損害賠償
請求権とは、その性質を異にし彼此同様の目的を有する債権ではないというべきで
ある。もし、右の見解と異なり、被告は、毎月算数上自動的に定まる組合費相当額
の金員を原告に支払う義務を負い、これを履行するものと解するならば、被告は、
一たん賃金支払のために支出した資金を、これとは無関係の右組合費相当額の金員
の支払債務の履行に充てる結果となり、賃金全額払の原則に対する例外として賃金
からの控除を認めた協定の趣旨に反することとなる。また、前述のように、被告の
債務は、賃金支払の資金として被告の一般財産から区別された金額を原告に交付す
ることを目的とするものであることを認めながら、被告主張の相殺を許すとすれ
ば、本来相殺は、対立する債権を対当額で消滅させるもので、当事者間の支払資金
の移動及び各当事者における資金額の変動を伴わないものであるのに、本件の場合
には、相殺がなされたあとに、控除額に相当する分だけ被告会社の資金が増加した
と同様の結果を生じ、明らかに不当である。
 右のとおりであるから、被告の相殺の抗弁は、その余の点について判断するまで
もなく、失当であるといわなければならない。
三 そうすると、請求原因の4の表の未払金額欄に記載してある各金員及びこれに
対する同表記載の各支払日の翌日以降民法所定の年五分の割合による遅延損害金の
支払を求める原告の請求は、すべて理由があるから認容し、訴訟費用の負担につい
て民事訴訟法八九条、仮執行の宣言について同法一九六条を適用して、主文のとお
り判決する。

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