弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被上告人の控訴を棄却する。
     控訴費用及び上告費用は被上告人の負担とする。
         理    由
 上告人の上告理由について
 一 原審が適法に確定した事実関係は、次のとおりである。
 1 E高等学校の教諭であったFは、昭和六〇年六月三日、金沢地方裁判所に自
己破産の申立をし、翌四日に退職した。
 2 被上告人は、その組合員であったFに対し、右退職当時、合計六八二万二六
七二円の貸付金債権を有していたので、Fの給与支給機関は、同月一一日、Fの退
職手当四二〇万七二三六円の支給に当たり、地方公務員等共済組合法(以下「地共
法」という。)一一五条二項に基づき、退職手当全額をFに代わって右貸付金債務
の弁済として被上告人に払い込んだ(この払込行為を、以下「本件払込」という。)。
 3 本件払込時において、被上告人はFが破産申立をした事実を知っていた。
 4 金沢地方裁判所は、同年一〇月三日、Fの破産宣告をし、上告人が破産管財
人に選任された。
 二 本件において、上告人は、破産法七二条二号により、退職手当の四分の一に
相当する一〇五万一八〇九円の限度で本件払込による弁済行為を否認し、被上告人
にその支払を求めているのに対し、原審は、次の理由をもって、本件払込は破産法
七二条二号による否認の対象とはならないと判断して、上告人の請求を認容した第
一審判決を取り消し、これを棄却した。
 1 破産者の加功のない純然たる第三者の行為は、それが破産者の財産関係に変
動を与えるものであっても、同号によっては否認できない。
 2 地共法一一五条二項は、組合員の個別的承諾の有無に関係なく適用されるか
ら、同項による給与支給機関の共済組合に対する払込は、当該組合員の意思に基づ
くものというよりは、むしろ右規定の効力によるものというのが適切である。
 3 Fが右債務決済方法を承諾していたとしても、それは本件貸付金の借受時点
においてされたものであるから、右承諾は破産法七二条二号による否認の対象とは
なり得ない。
 4 ほかに、Fが破産申立後に給与支給機関と通謀し又はこれに加功した事実は
認められない。
 三 しかしながら、原審の右判断は是認することはできない。その理由は次のと
おりである。
 D組合(以下「組合」という。)の組合員(組合員であった者を含む。以下同じ。)
の給与支給機関が、給与(退職手当を含む。)を支給する際、地共法一一五条二項
に基づき、その組合員の給与から貸付金の金額に相当する金額を控除して、これを
組合員に代わって組合に払い込んだ行為は、組合員が破産宣告を受けた場合におい
て、破産法七二条二号の否認の対象となるものと解するのが相当である。すなわち、
地共法一一五条二項の規定は、組合員から貸付金等を確実に回収し、もって組合の
財源を確保する目的で設けられたものであり、給与の直接払の原則及び全額払の原
則(地方公務員法二五条二項参照)との関係を考慮して、右の払込方法を法定した
ものと解される。そして、右払込が他の債権に対して優先する旨の規定を欠くこと
と、「組合員に代わって」組合に払い込まなければならないとしている地共法一一
五条二項の文言に照らしてみれば、この払込は、組合に対する組合員の債務の弁済
を代行するものにほかならず、組合において、破産手続上、他の一般破産債権に優
先して組合員に対する貸付金債権の弁済を受け得ることを同項が規定したものと解
することはできないからである。右払込が地共法一一五条二項の規定の効力によっ
てされるものであることも、右解釈を妨げるものではない。
 したがって、これと異なる見解に立って、被上告人に対する本件払込は破産法七
二条二号による否認の対象とはならないとした原審の判断には、法令の解釈適用を
誤った違法があり、右違法が判決の結論に影響を及ぼすことは明らかである。論旨
は理由があり、原判決は破棄されるべきである。そして、前記事実関係によれば、
上告人の否認権行使に基づく本訴請求は理由があり、これを認容した第一審判決は
相当であって、被上告人の控訴は棄却すべきである。
 よって、民訴法四〇八条、三九六条、三八四条、九六条、八九条に従い、裁判官
全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    四 ツ 谷       巖
            裁判官    角   田   禮 次 郎
            裁判官    大   内   恒   夫
            裁判官    大   堀   誠   一
            裁判官    橋   元   四 郎 平

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