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平成13年(行ケ)第590号 取消決定取消請求事件
口頭弁論終結日 平成14年7月18日
判          決
原      告    松下電器産業株式会社
訴訟代理人弁理士    坂 口 智 康
   同           小 野 康 英
被      告    特許庁長官 及川耕造
指定代理人       松 本   悟
同    酒 井 美知子
同    森 田 ひとみ
同    大 橋 良 三
主           文
1 特許庁が平成11年異議第70192号事件について平成13年11月
7日にした決定中,特許第2780480号の請求項1に係る部分を取り消す。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
1 原告の請求
(1) 主文1項と同旨。
(2) 訴訟費用は被告の負担とする。
2 当事者間に争いのない事実
(1) 特許庁における手続の経緯
原告は,発明の名称を「非水電解液二次電池」とする特許2780480号
の特許(平成2年10月25日出願,平成10年5月15日設定登録,以下「本件
特許」といい,その発明を「本件発明」という。)の特許権者である。
本件特許につき,請求項1ないし5に対し,特許異議の申立てがなされた。
特許庁は,これを平成11年異議第70192号事件として審理し,その結
果,平成13年11月7日,「特許第2780480号の請求項1ないし5に係る
特許を取り消す。」との決定をし,同年12月3日に,その謄本を原告に送達し
た。
(2) 決定の理由
決定の理由は,要するに,本件発明は,請求項1ないし5のいずれも,特許
法29条2項の規定に違反して登録されたものであるから,すべて取り消されるべ
きである,とするものである。
(3) 原告は,本訴係属中の平成14年5月23日,本件特許の出願の願書に添付
された明細書の訂正をすることについて審判を請求した。特許庁は,これを訂正2
002-39127号事件として審理し,その結果,平成14年6月27日に上記
訂正をすることを認める旨の審決(以下「訂正審決」という。)をし,これが確定
した。
(4) 訂正審決による訂正の内容は,次のとおりである。
(ア) 訂正審決による訂正前の本件特許の特許請求の範囲
「【請求項1】リチウムイオンを吸蔵・放出できる炭素材からなる負極と,
非水電解液と,リチウム含有化合物からなる正極とを備え,上記非水電解液は溶媒
に環状カーボネートと鎖状カーボネートを含むことを特徴とする非水電解液二次電
池。
【請求項2】電解液の溶媒成分である環状カーボネートにエチレンカーボネ
ートを含んでいる特許請求の範囲第1項記載の非水電解液二次電池。
【請求項3】電解液の溶媒成分である鎖状カーボネートに,ジメチルカーボ
ネート,ジエチルカーボネート,エチルメチルカーボネートのうち,少なくとも一
つを含む特許請求の範囲第1項記載の非水電解液二次電池。
【請求項4】電解液の溶媒成分中に鎖状カーボネートを体積比率で30%~
90%含む特許請求の範囲第1項記載の非水電解液二次電池。
【請求項5】電解液の溶媒成分中に鎖状カーボネートを体積比率で50%~
90%含む特許請求の範囲第1項記載の非水電解液二次電池。
(イ) 訂正審決による訂正後の特許請求の範囲(下線部が訂正された箇所であ
る。)
「【請求項1】リチウムイオンを吸蔵・放出できる炭素材からなる負極と,
非水電解液と,リチウム含有化合物(Li1+XV3O8(-0.3≦X≦0.3)を除く。)からなる
正極とを備え,上記非水電解液の溶媒はエチレンカーボネートと,ジメチルカーボ
ネート,ジエチルカーボネート及びエチルメチルカーボネートよりなる群から選ば
れた少なくとも1種の鎖状カーボネートとからなり,溶媒成分中の鎖状カーボネー
トの体積比率が50~90体積%であることを特徴とする非水電解液二次電池。」
(請求項2ないし5は削除された。)
3 当裁判所の判断
上記当事者間に争いのない事実によれば,本件特許の訂正前の請求項1につい
ては,特許法29条2項の規定に違反して登録された特許であることを理由に特許
を取り消した決定の取消しを求める訴訟の係属中に,当該特許に係る特許請求の範
囲の減縮を含む訂正の審決が確定したということになり,決定は,結果として,判
断の対象となるべき発明の要旨の認定を誤ったものとなる。この誤りが決定の結論
に影響を及ぼすことは明らかである。したがって,決定は取消しを免れない。
4 以上によれば,本訴請求は理由がある。そこで,これを認容し,訴訟費用の負
担については,原告に負担させるのを相当と認め,行政事件訴訟法7条,民事訴訟
法62条を適用して,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第6民事部
裁判長裁判官     山   下   和   明
裁判官     設   樂   隆   一
裁判官     高   瀬   順   久

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