主文
1被告株式会社P1及び同P2株式会社は,東京都町田市に対し,各自171
6万7000円及びこれに対する被告P2株式会社については平成14年6月
8日から,同株式会社P1については同月11日から,各支払済みまで年5分
の割合による金員を支払え。
2被告株式会社P3は,東京都町田市に対し,1622万2000円及びこれ
に対する平成14年6月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払
え。
3被告P4株式会社,同P5株式会社及び同P6株式会社は,東京都町田市に
対し,各自5958万7000円及びこれに対する平成14年6月8日から支
払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4被告P6株式会社及び同P2株式会社は,東京都町田市に対し,各自174
8万2000円及びこれに対する平成14年6月8日から支払済みまで年5分
の割合による金員を支払え。
5被告P7株式会社及び同P8株式会社は,東京都町田市に対し,各自257
2万5000円及びこれに対する平成14年6月8日から支払済みまで年5分
の割合による金員を支払え。
6被告P9株式会社は,東京都町田市に対し,5666万4000円及びこれ
に対する平成14年6月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払
え。
7被告P8株式会社,同P2株式会社及び同株式会社P1は,東京都町田市に
対し,各自1538万2000円及びこれに対する被告株式会社P1について
は平成14年6月11日から,その余の被告らについては同月8日から,各支
払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
8被告P10株式会社及び同株式会社P1は,東京都町田市に対し,各自23
6万2000円及びこれに対する被告P10株式会社については平成14年6
月8日から,同株式会社P1については同月11日から,各支払済みまで年5
分の割合による金員を支払え。
9被告P2株式会社,同P6株式会社及び同株式会社P1は,東京都町田市に
対し,各自1349万2000円及びこれに対する被告株式会社P1について
は平成14年6月11日から,その余の被告らについては同月8日から,各支
払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
原告らのその余の請求をいずれも棄却する。10
訴訟費用は,これを4分し,その1を被告らの負担とし,その余を原告らの11
負担とする。
事実及び理由
第1請求
被告らは,東京都町田市に対し,各自8億6700万3900円及びこれに
対する各訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払
え。
第2事案の概要
本件は,東京都町田市の住民である原告らが,同市が工事の施工等について
委託した財団法人P11公社により発注された公共下水道に係る各工事(別紙
工事目録記載の各工事)につき,同各工事の入札参加資格を有する建設業者で
ある被告らが,入札手続等において談合して特定の建設業者を受注予定者とす
る受注調整を行った結果,当該建設業者が入札参加者間で公正な競争が確保さ
れた場合に形成されたであろう正常な落札価格と比較して不当に高い価格で落
札し,同市に損害を与えたとして,被告らに対し,平成14年法律第4号によ
る改正前の地方自治法(以下,単に「地方自治法」という。)242条の2第1
,,(,,項4号に基づき同市に代位して上記損害の賠償民法719条715条
709条に基づくもの)を求めるとともに,同損害賠償金に係る民法所定の年
5分の割合による遅延損害金(不法行為の後である訴状送達の日の翌日から支
払済みまで)の支払(不真正連帯)を求めた住民訴訟である。
1前提事実(争いのない事実,顕著な事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨
により容易に認められる事実)
()当事者等1
ア原告らは,いずれも東京都町田市(以下,単に「町田市」という。)の住民
である。
イ被告P5株式会社(以下「被告P5」という,同株式会社P1(以下。)
「被告P1」という。),同株式会社P3(以下「被告P3」という。),同P4
株式会社(なお,平成15年4月1日にP12株式会社に吸収合併される
前の商号はP13株式会社であるが,同合併の前後を問わず,以下「被告
P13」という,同P6株式会社(以下「被告P6」という,同P。)。)
7株式会社(以下「被告P7」という,同P9株式会社(以下「被告。)
P9」という,同P8株式会社(なお,平成14年10月1日及び平。)
,「」,成16年4月1日の各商号変更前の商号はそれぞれP14株式会社
「P15株式会社」であるが,各商号変更の前後を問わず,以下「被告P
8」という,同P10株式会社(以下「被告P10」という)及び同。)。
P2株式会社(以下「被告P2」という)は,いずれも建設業法の規定。
に基づき国土交通大臣の許可を受け,国内の広い地域において総合的に建
(。()。設業を営む者広域総合建設業者いわゆるゼネコンGeneralConstructor
以下「ゼネコン」という)であり,多摩地区において営業所を置くなど。
して事業活動を行っていたものである。
ウ財団法人P11公社(以下「公社」という。)は,昭和36年7月20日,
首都圏整備構想に基づき,新都市の総合的建設と地域開発を促進し,首都
,,,の秩序ある発展を図ることを目的として東京都並びに八王子市町田市
青梅市,日野町(当時,福生町(当時)及び羽村町(当時)の6市町の)
出えんにより設立された財団法人であり,多摩地区所在の市町村から委託
を受けるなどして,公共下水道の建設等の都市基盤整備事業を行っていた
(甲サ60。)
()公社による下水道等の土木工事の発注(甲サ64,436,439)2
ア公社は,原則として,土木工事を指名競争入札の方法により発注してい
たが,工事予定価格が500万円以上である工事の発注に当たっては,公
社が,あらかじめ工事件名,工事概要,工事の格付等級及び申込期限を公
示して,発注対象となる格付等級の入札参加有資格者に入札参加指名につ
いての希望を申し立てさせ,その希望者の中から入札参加者を公社が指名
し,その指名された者により入札を執行する方式(公示希望型指名競争入
札)を採用していた(甲サ436。)
イ公社による工事の格付けは,各工事ごとに工事予定価格及び技術的な難
易度からAからEのランクに分けて行われ,各ランクの工事に応じて,そ
れぞれに適合する格付けを有する建設業者にのみ指名の適格があることと
し,さらに,工事予定価格が2億6000万円以上の工事については,建
設共同企業体(いわゆるジョイント・ベンチャー()。以下「JJointVenture
V」という。)の共同施工方式による工事として,Aランクの建設業者とC
ランクの建設業者とのJV(工事予定価格2億6000万円以上3億円未
満,Aランクの建設業者とBランクの建設業者とのJV(工事予定価格)
3億円以上5億6000万円未満,Aランクの建設業者同士のJV(5)
)。億6000万円以上にのみ指名が与えられる適格があることとしていた
そして,公社は,指名を希望する者の経営状況や技術力を基に建設業者
としての適格性の判断を行い,その結果,適格性があると判断された建設
業者の中から,工事の規模,施工技術の難易度,地域性,経営状況,工事
施工実績,既発注工事の進捗状況等の諸事情を実質的,総合的に考慮して
指名する建設業者を判断していたほか,原則として,指名業者選定委員会
を開催し,その審議を経た上で決していた。公社は,本件請求に係る各入
札の当時,Aランクの工事については必ず10社を指名業者として選定し
ており,仮に指名を希望する者が10社に満たない場合には,公社から入
札参加希望有資格者である建設業者を逆指名することとなっていたが,談
合があったと本訴において原告らが主張する各工事に係る入札当時,逆指
名がされたことはない。
(以上につき,甲サ64,436,439)
ウ入札参加者が指名されると,事業者を指名する工事の場合には,公社に
より指名された建設業者に対する現場説明会が実施され,入札,落札者と
の契約という手続がなされ,他方,JVを指名する工事の場合には,JV
結成についての説明会,入札参加者によるJV結成の届出,JVに対する
現場説明会,入札,落札者との契約の順で手続が進められることになる。
エ公社による入札は,入札日に最低価格を入札した建設業者が落札するの
が原則であったが,平成11年9月までは,公社が入札に当たり設定した
工事予定価格及び最低制限価格(工事予定価格の80パーセントに相当す
る金額)を事前に公表しておらず,入札価格の全部が工事予定価格より高
額となった場合には,その場で2回目の入札を行うこととし,また,最低
制限価格よりも下回る金額で入札した場合には,その者は当該入札から失
格となり,最低制限価格以上の最も低い価格を入札した者が落札者となる
こととしていた(甲サ64)。
オ平成9年10月1日から平成12年9月27日までの期間における公社
発注の特定土木工事72件の工事件名,落札者及び落札率(工事予定価格
に対する落札価格の割合を百分率で表したもの)等は,別紙「P11公社
発注の特定土木工事一覧表」記載のとおりであり,同年10月1日から平
成17年11月1日までの期間における公社発注の特定土木工事139件
の工事名,落札者及び落札率等は,別紙「特定土木工事一覧表」記載のと
おりである(甲サ190,乙A2。)
()町田市と公社との契約関係等3
ア町田市は,公社との間で,平成9年7月1日付けで「町田市公共下水道
事業(事業の一部)に関する業務委託契約書,平成10年4月1日付け」
「()」,で町田市公共下水道事業事業の一部に関する業務委託その2契約書
平成11年6月8日付けで「町田市公共下水道事業(事業の一部)に関す
る業務委託その3契約書」により,町田市の基本計画に基づく公共下水道
事業の建設工事,設計及び監督業務並びに調査業務を公社に委託する旨の
業務委託契約を各締結した(甲11の1∼3。)
町田市は,上記業務委託契約において,公社に対して委託費(工事費,
支障物件処理費及び公社の事務費)を支払う旨定められており,同工事費
とは,公社と工事請負人との間の契約額(契約変更があった場合は変更後
の金額とする)とされている(甲11の1∼3,12,甲サ60。。)
イ町田市は,上記アの契約を受けて,平成9年7月1日付け「町田市公共
下水道事業(事業の一部)に関する業務委託の平成9年度・10年度事業
実施協定書,平成10年4月1日付け「町田市公共下水道事業(事業の」
一部)に関する業務委託の平成10年度事業実施協定書,同年5月21」
日付け「町田市公共下水道事業(事業の一部)に関する業務委託の平成1
0年度・11年度事業実施協定書,平成11年4月1日付け「町田市公」
共下水道事業(事業の一部)に関する業務委託の平成11年度事業実施協
定書,平成12年4月1日付け「町田市公共下水道事業(事業の一部)」
に関する業務委託契約の平成12年度事業実施協定書」により,平成9年
度から平成12年度に公社が施工する業務の内容に係る協定を締結した
(甲13の1∼5。)
()本件請求に係る各工事4
ア別紙工事目録1から9記載の各工事(以下,当該各工事をその見出しに
あるとおり「本件工事1「本件工事2」というようにいい,本件工事」,
1から本件工事9までを併せて「本件各工事」という)は,いずれも,。
前記()イにおける公社と町田市との間で締結された協定で,平成12年3
度に公社が施工する業務に含まれている(甲13の1∼5。)
イ公社は,本件各工事につき,別紙工事目録記載のとおり,本件各工事に
係る指名業者の選定を行い,入札参加業者の指名委員会を開催した上で,
入札参加業者を指名した(以上につき,甲5の1∼5,甲サ369,37
0,376,385,390,401,405,413,421。)
ウ公社は,本件各工事につき,別紙工事目録記載のとおり入札を行い,そ
の結果,次のとおりのJVが各入札価格で落札した(甲サ328。)
(ア)本件工事1については,被告P1と株式会社P16とが結成したJ
Vが3億2700万円(消費税相当額込み)で
(イ)本件工事2については,被告P3とP17株式会社とが結成したJ
Vが3億0900万円(消費税相当額込み)で
(ウ)本件工事3については,被告P13とP18株式会社とが結成した
JVが11億3500万円(消費税相当額込み)で
(エ)本件工事4については,被告P6とP19株式会社とが結成したJ
Vが3億3300万円(消費税相当額込み)で
(オ)本件工事5については,被告P7と株式会社P20とが結成したJ
Vが4億9000万円(消費税相当額込み)で
(カ)本件工事6については,被告P9とP21株式会社とが結成したJ
Vが10億8000万円(消費税相当額込み)で
(キ)本件工事7については,被告P8とP22株式会社とが結成したJ
V(P14・P22JV)が2億9300万円(消費税相当額込み)で
(ク)本件工事8については,被告P10とP23株式会社とが結成した
JVが4500万円(消費税相当額込み)で
(ケ)本件工事9については,被告P2と株式会社P24とが結成したJ
Vが2億5700万円(消費税相当額込み)で
エ(ア)被告P1と株式会社P16とが組んだJVは,平成10年5月25
日,別紙工事目録のとおり,公社から,本件工事1を,契約金額3億4
335万円で請け負った(甲5の3,14の1・2。)
(イ)被告P3とP17株式会社とが組んだJVは,平成10年5月25
日,別紙工事目録のとおり,公社から,本件工事2を,契約金額3億2
445万円で請け負った(甲5の3,14の3・4。)
(ウ)被告P13とP18株式会社とが組んだJVは,平成10年6月2
2日,別紙工事目録のとおり,公社から,本件工事3を,契約金額11
億9175万円で請け負った(甲5の3,14の5・6。)
(エ)被告P6とP19株式会社とが組んだJVは,平成10年9月14
日,別紙工事目録のとおり,公社から,本件工事4を,契約金額3億4
965万円で請け負った(甲5の3.14の7・8。)
(オ)被告P7と株式会社P20とが組んだJVは,平成11年3月23
日,別紙工事目録のとおり,公社から,本件工事5を,契約金額5億1
450万円で請け負った(甲5の3,14の9・10。)
(カ)被告P9とP21株式会社とが組んだJVは,平成11年6月21
日,別紙工事目録のとおり,公社から,本件工事6を,契約金額11億
3400万円で請け負ったが,平成12年3月6日,11億3329万
5450円(消費税相当額込み)に減額された(甲5の4,14の11
・12。)
(キ)被告P8とP22株式会社とが組んだJVは,平成11年7月19
日,別紙工事目録のとおり,公社から,本件工事7を,契約金額3億0
765万円で請け負った(甲5の4,14の13・14。)
(ク)被告P10とP23株式会社とが組んだJVは,平成11年12月
20日,別紙工事目録のとおり,公社から,本件工事8を,契約金額4
725万円で請け負った(甲5の4,14の15・16。)
(ケ)被告P2と株式会社P24とが組んだJVは,平成12年5月15
日,別紙工事目録のとおり,公社から,本件工事9を契約金額2億69
85万円で請け負った(甲5の5,14の17・18。)
オ本件各工事は,別紙工事目録の所定工期を経たころに完成し,公社は,
上記エの各請負人(JV)に対し,別紙工事目録記載の変更後の各契約金
額を支払い,町田市は,公社に対し,本件各工事に係る各委託料を支払っ
た(甲1。)
()公正取引委員会による課徴金の納付命令等5
ア公正取引委員会は,平成12年9月27日,公社発注の土木工事の入札
に係る事件の審査を開始した(甲2)
イ公正取引委員会は,平成13年12月14日,公社発注の土木工事の入
札参加業者のうち,多摩地区において事業活動を行っている別紙「課徴金
納付命令対象事業者一覧」記載の広域総合建設業者(ゼネコン)34社に
対し,平成17年法律第35号による改正前の私的独占の禁止及び公正取
引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)48条の2第1項に基
づき,課徴金の納付命令(納期限平成14年2月15日)をした。課徴金
額の合計は6億9021万円であり,上記34社それぞれの課徴金額は上
記別紙記載のとおりであり対象物件には本件各工事も含まれている以,。(
上につき,甲1,2,4の2)
ウ上記イの課徴金の納付命令を受けた34社のゼネコンは,上記課徴金納
付命令に対し,いずれも審判開始の請求をし,公正取引委員会は,平成1
4年1月28日,上記34社のゼネコンに対し,独占禁止法49条2項に
基づき,審判開始決定をした(甲1,15。なお,本件口頭弁論終結時)
点では審決はされていない。
()住民監査請求等6
ア原告らは,平成14年2月21日付けで,本件各工事につき「(),1
市が1998(平成10)年度から2000(平成12)年度にかけて公
社に委託した公共下水道建設工事の中で,公社が本件工事を発注したゼネ
コン34社に,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(中略)
第3条(不当な取引制限の禁止)に該当する行為(談合行為)があったか
否か。()()の談合行為により,市が損害を被ったか否か。()談合213
行為により市が被った損害を補填するために,町田市長が損害賠償請求権
を行使しないのは,法第242条第1項に規定する,違法若しくは不当に
財産の管理を怠る事実に当たるか否か」を対象として,住民監査請求を。
行った(甲1。)
イ町田市監査委員は,平成14年4月17日,上記アの住民監査請求に対
,,,し談合行為については原告らの提出した資料からは談合を認定できず
町田市における損害の発生についても認定できないとしたほか,町田市と
しては談合があったことを立証する資料を有しておらず,公正取引委員会
の審決又は裁判所の判決を待たなければ,立証できないとして,現段階で
は損害賠償請求権を行使し得ず,その不行使の事実がないとして,地方自
治法242条1項の違法も認められないから,上記住民監査請求を棄却す
る旨の監査結果を出した(甲1。)
ウ原告らは,平成14年5月17日,本件訴えを提起した。
2争点
本件の主要な争点は,次のとおりであり,これに関して摘示すべき当事者の
主張は,後記第3「争点に対する判断」において掲げたとおりである。
()談合の存否1
被告ら全員に対する共同不法行為に基づく請求は,次のアのみが問題とな
り,本件各工事ごとの入札に参加した被告に対する請求は,次のアないしウ
のいずれもが問題となる。
ア談合に関する基本合意の存否
イ監査請求の対象行為と本件各工事に関する個別談合との同一性
ウ本件各工事に関する個別談合の存否
()談合による損害の有無及び程度2
()違法な怠る事実の有無3
第3争点に対する判断
1争点()ア(談合に関する基本合意の存否)について1
()当事者の主張1
ア原告らの主張
被告らを含む別紙業者一覧記載の建設業者80社の間において,公社発
注の特定土木工事について,受注価格の低落防止を図り,予定価格近似の
金額で落札することができるようにするため,遅くとも平成9年10月1
日までに,同日から平成12年9月27日までの間に発注された72件の
特定土木工事につき,①公社から指名を受けた場合には,当該工事や当該
工事の施工場所との関連性が強い者又はJV又は受注を希望する者又()(
はJV)が1社の場合にはその建設業者(又はJV)が,複数の場合には
受注希望者間の話合いにより決定する者(又はJV)が受注予定者(本命
又はチャンピオンと呼ばれることもある)となり,②受注すべき価格を。
受注予定者が決定し,受注予定者以外の指名された建設業者は,受注予定
者が定めた価格により受注することを協力する旨合意(談合に関する基本
合意)していた。
イ被告らの主張
(ア)被告ら共通の主張
a原告らは,基本合意の成立過程については全く主張しておらず,参
加した時期,経緯・態様についても主張されていない。原告らにおい
ては,抽象的な基本合意の存在のみならず,不法行為の成立要件に該
当する具体的事実を主張すべきである。原告らは,当初,基本合意の
参加者が34社であると主張していながら,審理の終盤になり基本合
意の参加者が80社であると主張しており,このような主張の変遷の
経緯からすれば,原告ら自身基本合意の存在について十分な証拠を持
ち合わせていないことを裏付けるものである。
b甲サ30号証は,単なる名簿であり,基本合意の存否やその参加者
とは関係のないものであり,同号証記載の80社が基本合意に存在し
ていたなどという証拠は全く存在しない。
c公社発注の特定土木工事においては,建設業者をその施工能力に応
じてランク分けをしており,Aランクの事業者は154社も存在して
いた。したがって,たとえ80社のみが受注調整行為を行ったとして
も,同じAランクの事業者が存在する以上,その一部の事業者の間に
おける受注調整者の決定は全く無意味であり,受注調整の効果を生じ
ない。競争事業者間の一部において行われる基本合意などは,受注調
整者を決定するための行為としては全く功を奏しないものであり,8
0社がそのような無意味な基本合意を行うはずがない。
d仮に,原告らの主張する基本合意が存在していたとしても,基本合
意に参加した被告らが受注調整が成立したすべての工事について損害
賠償責任を負う根拠はない。すなわち,基本合意は,個別工事が発注
された場合に受注予定者を決定する旨の予備的な段階における合意に
すぎないものであり,予備的合意にすぎない基本合意から損害が発生
することはあり得ないのであって,また,基本合意が存在していたと
しても,個別工事の受注調整が必ずしも基本合意に基づいて行われる
とは限らないのであるから,個別工事の落札と基本合意との間の因果
関係はない。さらに,基本合意の段階においては,いまだ具体的な個
別工事が存在しない以上,具体的な個別工事に関して不法行為を行う
という故意が存在しない。基本合意に参加していたとしても,個別工
事が発注される以前においては,いまだ,どのような業者が入札に参
加するか不明であるから,個別工事の発注前には,当該個別工事に関
する受注調整行為について,入札参加者間で意思の連絡が生じるとい
うことはあり得ず,個別工事に関する受注調整についてまで意思の連
絡があったものとすることはできない。
(イ)被告P5,同P2,同P6の主張
原告らの主張する基本合意の主張が不明確であることは,基本合意が
存在しないことを示すものであるということができ,また,本件の証拠
に照らしても,原告らが主張するような基本合意は到底認められない。
さらに,原告らの基本合意に係る主張を前提としても,当該基本合意
と損害との間には相当因果関係を認めることはできない。すなわち,基
本合意はなくても,個別合意は成立し得るのであり,基本合意と個別入
札の結果との間には条件関係が存在しない。原告らの主張する基本合意
を前提としても,本命業者を決定するのは指名を受けた受注希望者であ
って,指名を受けていない業者は本命業者の決定には関与しない。指名
を受けていない業者は,個別工事に入札している業者名すら認識してい
ないのであるから,そのような業者が個別工事の入札結果に影響を与え
るような関与をしたと評価することはできない。
営業関係者名簿(甲サ30)は,平成10年5月以降に作成されたも
のであり,原告らが基本合意が存在していたと主張する年月日より後の
作成されたものであるから,無関係である。
(ウ)被告P1の主張
原告らの主張は否認する。
(エ)被告P3,同P10の主張
原告らの主張は否認する。
仮に百歩譲って原告らが主張する基本合意があったとしても,それの
みでは不法行為は成立し得ない。独占禁止法上の入札談合は,受注予定
者及び受注予定価格の決定カルテルを指すものであって,談合参加者に
おいて,受注予定者の選定方法等の基本ルールを明示又は黙示に合意し
(基本合意,続いて基本合意を実行するに当たり,具体的な入札案件)
ごとに指名業者間で個別に受注予定者を決め,他の指名業者の入札価格
を調整し(個別合意,受注予定者が落札して,発注者と契約を締結す)
るという本来的に二段階をとるものである。独占禁止法上の違法行為の
認定においては,公正かつ自由な競争状態を回復するという競争政策的
な観点からなされるものであるから,基本合意のみで足りるとされてい
るが,不法行為の認定においては,独占禁止法上の違法行為の認定と同
様に解することはできない。不法行為としての談合の請求原因事実は,
基本合意ではなく,個別の入札に対応した個別の合意とその実行なので
ある。
(オ)被告P7の主張
原告らの主張はいずれも否認する。
被告P7は,受注調整の存在について否認する。仮に,基本合意が存
在していたとしても,入札に参加していない個別工事に関し,当該工事
に関する受注調整によって発生する損害についてまで賠償責任を負担す
る理由はない。基本合意が存在していたとしても,個別工事の受注調整
が必ずしも基本合意に基づいて行われるとは限らない。したがって,基
本合意と個別工事の落札との間には因果関係は存在しない。また,基本
合意の段階においては,将来発生するかもしれない個別工事に関する抽
象的な故意しかなく,そのような抽象的な故意に基づいて不法行為責任
を負う理由はない。さらに,談合を行うためには,入札参加者間で意思
の連絡をする必要があるが,基本合意に参加していただけの者と入札参
加者との間で,意思の連絡が生じることはあり得ない。
(カ)被告P9の主張
原告らの主張する基本合意は存在しない。
営業関係者名簿(甲サ30)は,単なる名簿であり,基本合意とは関
係なく作成されたものであり,基本合意を立証するものではない。
(キ)被告P8の主張
原告らが基本合意の当事者に被告P8が含まれると主張する根拠は,
営業関係者名簿(甲サ30)に記載されているという事実のみである。
しかしながら,営業担当者名簿は,単なる名簿であり,基本合意とは関
係なく作成されたものであって,基本合意の存在や合意参加者を立証す
るものではない。
(ク)被告P13の主張
公社発注の工事について受注予定者の決定ないし談合が行われていた
などという事実は存在しない。
談合を理由に不法行為に基づく損害賠償請求をするためには,談合の
基本合意が成立したというだけでは足りず,個々の工事について個別的
に入札参加業者による話合いが行われ,受注予定者が決定した事実を主
張立証しなければならない。
()公正取引委員会における事情聴取での関係者の供述2
ア被告P5のP25(以下「P25」という)の供述。
証拠(甲サ98,99,110)及び弁論の全趣旨によると,以下の事
実が認められる。
(ア)P25は,昭和58年9月,被告P5のP26営業所に赴任し,平
成3年8月,同営業所の所長に就任し,平成12年2月29日に退社す
るまでの間,同営業所長として稼働していた者である。
(イ)P25は,平成12年11月7日,同月8日及び平成13年6月2
9日に公正取引委員会で行われた同委員会審査官からの事情聴取に対し
て,要旨,次のとおり供述した。
aP25は,昭和58年9月にP26営業所に赴任後,当時の上司で
あったP27の下で,土木工事に関する営業活動を行い,その中で多
摩地区において,受注予定者をあらかじめ話合いなどによって決める
という調整行為を行っていることを知った。
多摩地区において施工される官公庁及び公社発注の土木工事に係る
ゼネコン間における受注調整行為は,昭和58年9月以前より行われ
ており,被告P5は,受注調整行為に同月以前から参加していた。
ただし,上記ゼネコン間における受注調整行為の開始時期及びそれ
以前の経緯等についてはP25は知らなかった。
bP25がP26営業所に赴任した当時,多摩地区には,同地区に営
業所等の出先事務所を置くゼネコンの土木工事関係営業の担当責任者
等が出席する親睦会として,P28があった。
P28は,多摩地区における官公庁及び公社発注の土木工事に係る
受注調整行為を行うことを目的とした団体ではなく,同地区に営業所
等を置くゼネコンの親睦を図る団体であった。しかし,P28の会員
であるゼネコン60社において,多摩地区で施工される官公庁発注の
土木工事につき受注調整行為を行っており,また,P28の会長は,
定められた役割ではないものの,会員間において,受注予定者となる
ゼネコンが話合いで決まらず,当事者から相談を受けた場合には,会
長としての立場から受注調整の上で参考になる助言や意見を述べる慣
習があった。
cP28は,平成4年に廃止されたが,廃止後も会員企業間における
受注調整行為が継続して行われ,受注調整行為の作業は慣行化してお
り,一般的になっていた。
P25は,P28廃止時の会長という立場にあったこともあり,同
会が廃止した平成4年以降もP25が被告P5を退職した平成12年
2月まで,多摩地区における官公庁及び公社発注の土木工事に係る受
注調整行為を担当するゼネコン各社の営業担当者から,受注調整に関
する相談を受ける立場にあり,受注調整行為が円滑に進行するよう,
各担当者に助言などをしていた。
dP29株式会社P30営業所の当時の所長であったP31は,上記
受注調整行為において,P25と同様,受注調整行為において各ゼネ
コンの担当者から相談を受けたり,助言等をする立場にあったが,P
31のそのような立場は,P25の依頼によるものではなく,P31
の個人的な資質により,そのような立場になったものであった。
e上記受注調整行為の対象となる土木工事は,多摩地区31市町村と
公社からゼネコン向けに発注される土木工事であり,建設省(当時)
等国の機関の出先機関,東京都の出先機関及びその他の各種公社や公
団関係から発注される土木工事は,受注調整行為の対象とはなってい
なかった。
公社が発注する土木工事については,P25が受注調整行為にかか
わる以前から受注調整行為の対象となっており,P25が受注調整に
,,かかわった期間において上記受注調整行為の対象となる工事の種類
区分に変化はなかった。
f上記受注調整行為においては,まず,特定のゼネコンが受注を希望
する土木工事の発注情報を得た場合ピーアール紙と称される資料当,(
該土木工事の施工場所を示す地図の写しに,施行場所,発注者名,工
事名又はその仮称,入札予定時期,資料作成日などを記載したもの)
を作成し,これをP25に提出するとともに,当該土木工事について
自社が受注意欲を有することや当該土木工事がどのような条件(受注
予定者となる上で優位とされる事情)を有するのかを説明していた。
上記ピーアール紙は,当該土木工事に対する自社の受注意欲を示す
ための説明資料にとどまるため,その作成が受注調整行為における必
要な手続にはなっておらず,上記方法により受注調整行為をするゼネ
コンは全体の3分の2程度であり,すべてのゼネコンにおいてピーア
ール紙が作成され,P25に提出されるという手順でなされているも
のではなかった。ピーアール紙の提示,提出がなければ,受注予定者
となる資格を得られないとか,最も早くピーアール紙を提出した者が
受注における優先権を持つといったこともなく,ピーアール紙は,P
25に対する説明のほか,ライバルとなるゼネコンの担当者に対して
も提示するなどして,自社の当該土木工事に対する受注意欲をアピー
ルするためにも用いられているものであった。
P25が受注調整行為に参加するゼネコン間において,相談又は助
言をする立場にあったことから,受注を希望するゼネコン担当者が,
P25に対して自社の受注意欲があることをピーアール紙で一定程度
具体的に説明することにより,助言を得られるほか,P25に対する
ピーアール紙の提出は,ライバルとなるゼネコンとの間の話合い自体
が自社に有利に進行することを企図して行っていたものであった。P
25は,ピーアール紙等により受注意欲があることを知ると,担当者
に対し,持っている関連情報を伝えたり,助言をしていた。
g上記受注調整行為において,いかにして受注予定者となるゼネコン
を決するかは,基本的には受注意欲を持つゼネコン同士の話合いによ
り決まるものであった。すなわち,当該土木工事に受注意欲を有する
ゼネコンが一社しかいない場合には,その受注意欲を持つゼネコンが
受注予定者となり,他方,受注意欲を強く持つゼネコンが複数いる場
合には,当該ゼネコン同士でそれぞれ自社が有する条件を提示し合い
ながら話合いをし,いずれかのゼネコンが降りたり,譲ったりするこ
とにより受注予定者となるゼネコンが決まることとなっていた。
受注意欲を持つゼネコン間の話合いにおいて判断要素となる条件と
は,例えば「元施工」と呼ばれる,当該土木工事が以前にそのゼネコ
ンが施工した工事の延長工事であるとか,当該土木工事が改修工事や
道路の拡幅工事であるときに,基礎となる工事を手掛けたこと,当該
土木工事に係る敷地等の買収において,代替土地を斡旋提供していた
など,発注者に対して既に一定の協力をしていることなどがあり,こ
れらの条件は,受注調整行為に参加するゼネコンにおいて非常に強い
条件であるとされ,そのような条件を有するゼネコンが受注を希望す
る場合には,ほとんど例外なくそのゼネコンが受注予定者になってい
た。ただし,いずれの条件を有するゼネコンが優先されるかについて
は,一定の基準によって決せられるものではなく,例えば,上記のよ
うな極めて強い条件を有するゼネコン間で受注調整行為が行われる事
案では,譲るところは譲るという仕方で,時々において話し合い,決
着をつけるということが一般的であった。
上記受注調整行為において強いとされる条件には,当該土木工事に
ついて事前の調査や設計業務に,自社のみならず自社の息の掛かった
ダミーコンサルタント業者(以下「ダミコン」という)も含めて協。
,,力している場合がありその他の条件として挙げられるものとしては
自社の事業場に近いこと,自社の施工中の現場に近いこと,資材置場
等の管理地に近いこと,施工場所の地元である町内会長をよく知って
いることが挙げられるほか,その時々の当事者の話合いにおいて持ち
出される主張条件があるが,いずれの条件を有する者が強いか弱いか
について,定まった基準があるものではなかった。
h受注意欲を強く持つゼネコン同士の話合いが難航し,決着が図れな
い事案においては,対立するゼネコンの担当者同士が,P25に相談
に来ることもあった。P25は,当該担当者に対し「仲良くやって,
はどうですか」とか「もっとよく話し合ってはどうですか」というよ
うに,喧嘩別れとならないように配慮し,一方に有利となるような言
。,,い方は控えるような助言をしていたしかしその助言の結果として
受注意欲を持つゼネコンの一方が,譲るところは譲ろうといった考え
から,受注をあきらめたという事案もあった。
i被告P5が他の建設業者に入札価格の連絡をする場合,1回目から
3回目の入札につき,それぞれ入札して欲しい金額を電話で伝える方
法により行っていた。大手のゼネコンにおいては,見積価格を本社や
東京支社において算出しており,また,入札金額を本社等に報告する
必要があったことから,依頼した金額では入札されない場合もあった
が,協力依頼がある場合には,その受注予定者の落札を邪魔しない金
額で入札していた。
j建設業者同士がJVを結成して入札参加する土木工事における受注
調整行為においても,上記受注調整行為の方法と同様の方法が用いら
れていた。
ただし,地元の建設業者が指名業者として入った入札の事案におけ
る受注調整行為は,地元の建設業者側との接触が必要になり,ゼネコ
ン側において,あらかじめゼネコン側の受注予定者として調整したゼ
ネコンを定め,そのゼネコン(又は当該地元の建設業者に対して仕事
上付き合いのあったゼネコン)が,地元の建設業者と何らかの方法で
,。折衝し当該入札における受注予定者を決めるという方法でなされた
このゼネコンと地元の建設業者との間の折衝も,話合いで行われるの
が一般的であり,ゼネコンと地元の建設業者とが当該物件についての
関連性など種々の条件をお互いに提示し合って,最終的には,受注予
定者として一本化が図られていた。なお,ゼネコンは,地元の建設業
者側が受注意欲を強く有している場合には,地元の建設業者より経費
,,面等の負担が多く入札で有利な金額にすることができないことから
何らかの条件で地元の建設業者に譲ったり,あるいは,受注をあきら
めるのが通常であった。
kゼネコンが地元の建設業者とJVを結成して入札に参加する場合,
JVの結成が必要となる大規模な土木工事においては,ゼネコン側が
主導的な立場にないと施工できないことが多く,受注予定者と定まっ
たゼネコンが,付き合いのある建設業者とJVを結成するというよう
に,ゼネコン側がそのJVにおいて,主導権を有している場合がほと
んどであった。
lP25は,平成12年2月末に,被告P5を退社したが,上記受注
調整行為は,被告P5のP26営業所でのP25の部下であったP3
2(以下「P32」という。)が引き継いで担うこととなった。
イ被告P5のP32の供述
証拠(甲サ201,231,322,323)及び弁論の全趣旨によれ
ば,以下の事実が認められる。
(ア)P32は,平成6年3月に被告P5P26営業所に副課長として赴
任し,土木工事関係の営業業務を担当していた者である。
(イ)P32は,平成12年11月29日,平成13年5月30日,同月
31日及び同年6月22日に公正取引委員会において行われた同委員会
審査官からの事情聴取に対して,要旨,次のとおり供述した。
aP25は,平成12年2月末,被告P5を退職した。被告P5にお
,,いては多摩地区の建設業者間における受注調整行為への応対につき
P26営業所の土木営業担当所長であるP33や同営業所次長のP3
2が引き継ぐことになった。
P32は,平成6年3月に被告P5P26営業所に副課長として赴
任し,土木工事関係の営業業務を担当し,平成10年4月に同営業所
次長(同営業所の土木担当所長の次席の意味)に就き,P25の下で
土木工事関係の営業業務を行っていた。
b多摩地区のゼネコン各社は,土木工事の情報を得た場合,すべての
土木工事についてではないものの,資料(現地を含む地図の写しに,
土木工事の位置や立地条件(延長工事における関連工事の施工実績,
近隣での施工実績,施工場所と自社事業場や資材置場との近接性,当
該土木工事に係る調査・設計業務へダミコンが協力しているか等他の
ゼネコンに比べ自社が当該工事を受注するのに優位とされる事情)な
どを記載したもの)を作成し,被告P5のP26営業所を訪れて,資
料を提示するなどして,立地条件を説明するなどしていた。
上記資料を被告P5のP26営業所に提出する行為は,必ずしも受
注するために必要となる手続ではなく,それ自体が,当該工事を受注
するための有利な事情となるものでもなかったが,他の受注意欲を有
するゼネコンに比べて提出が遅れた場合,消極要素として取り扱われ
ることがあった。
c受注を希望するゼネコンが,他のゼネコンに対して,入札に参加す
るよう依頼する趣旨は,入札に参加する建設業者の多くが自社の落札
に協力してくれるゼネコンであれば,落札に対する期待が高まるから
である。受注意欲を有する建設業者は,他の協力関係にある建設業者
に自社の入札金額より高めの金額を入札してもらうため,入札価格の
連絡を行うという方法を用いる。入札価格の連絡は,入札より1日か
2日前に電話により行う。連絡する金額は,公社における入札は3回
行われる場合があることから,1回目から3回目までの具体的な金額
を伝える場合,2回目と3回目はその前回の入札の最低札価格から引
き下げる価格を伝える方法のほか,他の建設業者が積算した価格を伝
。,「。」えてもらう方法もあるまた単にお宅の積算価格で入札してくれ
と伝え,通常の積算価格による入札を依頼し,自社は,利幅を抑えた
通常の積算価格よりも低い金額で入札するという方法もある。
dP32は,平成12年2月末にP25が退職することになったこと
から,P25の有していた多摩地区のゼネコンから提供された施工実
績等の資料の整理にとりかかり,平成12年2月から3月にかけて,
P25に挨拶をしに訪れた多摩地区のゼネコンの営業担当者などに,
機会を見て,各社の施工実績に係る資料の提出を依頼した。
P32は,約20社から30社に対して資料の提出を依頼し,その
依頼を受けた各ゼネコンのほとんどから,施工実績を示した資料の提
出を受けた。
eP32は,平成12年3月の公正取引委員会の立入検査後,本社か
らの指示もあり,P26営業所に資料を持参したゼネコンの担当者に
対し,今後資料を受け取れなくなった旨回答するようになった。同年
4月ころになると,P32の下に資料を持参するゼネコンの担当者は
いなくなった。P32は,提供された資料を整理する手間が掛かるこ
となどから,当該資料を整理・使用することができなかったが,その
間に公正取引委員会による立入検査が実施されたことなどから,同年
4月ころ,同資料を各社に返還せず,廃棄した。
ウ被告P5のP34(以下「P34」という。)の供述
証拠(甲サ289)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められ
る。
(ア)P34は,昭和42年4月に被告P5に入社し,昭和57年5月以
降営業業務に従事し,平成7年9月以降本社勤務となり,平成10年4
月からは営業部の営業担当部長となったが,平成12年1月20日から
同年3月24日までの間,P26営業所において非常勤的に勤務をして
いた者である。
(イ)P34は,平成12年12月1日に公正取引委員会において行われ
,,。た同委員会審査官からの事情聴取に対して要旨次のとおり供述した
aP34は,被告P5土木営業部の管理部長であったP35から,P
25の平成12年2月の退職までに同人の営業業務を引き継がせるた
め,同年1月にP33をP26営業所の勤務にしたが,同人が多摩地
区における勤務が初めてであったため,うまく行かず,現場で混乱が
生じていたとして,P26営業所に行くよう依頼され,これを引き受
けた。
bP26営業所においては,多摩地区のゼネコンが,ピーアールと称
する地図の写しの中に自社の施工実績を書き表した資料を作成し,P
26営業所において,P25やP32らに見せに来ていた。また,P
32は,同資料を整理してとじ込んだファイルを管理していた。
cP26営業所においては,P25が退職後,P32及びP33が上
記ピーアールに対する応対をするようになったが,同応対には,多摩
地区における経験等が必要であったことから,多摩地区における営業
経験のないP33や,そのような器量を持たないP32では務まるも
のではなく,P32から求められて,ピーアールの応対にP34が同
席することもあった。
エ被告P3のP36(以下「P36」という。)の供述
証拠(甲サ85,173)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認
められる。
,,,(ア)P36は平成10年4月被告P3P37営業所の所長に赴任し
同営業所が廃止された平成13年4月末までの間,同所長として勤務し
ていた者である。
(イ)P36は,平成13年5月22日及び同年9月4日に公正取引委員
会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,要旨,次
のとおり供述した
a多摩地区30市町村及び公社の発注する土木工事ではゼネコン間で
受注予定者を決め,受注予定者による落札に協力するという入札談合
が日常的に繰り返されており,被告P3も,当該談合のメンバーであ
った。
b受注予定者は,受注を希望するゼネコンが1社であれば,その業者
がなり,受注を希望するゼネコンが複数ある場合には,各社がどのよ
うな受注に有利な「条件」を有しているかを比較して「条件」が一,
番強いとされた者がなるものとされていた「条件」には,当該工事。
の関連工事の施工実績,近隣での施工実績,近隣に資材置場や職員住
宅があること,ダミコン設計入札において指名されていることなどが
ある。
cゼネコンにおいては,P25が裁定役であった。P25は,人柄が
良く,多摩地区の施工実績を把握していたことから,公平であると信
。,,頼されていたP36はP25に対して受注意欲があることを示し
P25が「頑張ってみたら」と言えば,自社が受注予定者になれたと
考え,P25が「他に熱心に勉強をしているよ」と言えば,その土木
工事の受注をあきらめていた。
d公社が発注する土木工事においては,受注予定者は,入札において
談合のルールが適用されるゼネコンが指名されるよう,他のゼネコン
に工事希望票の提出を依頼していた。
e受注予定者となったゼネコンは,入札前に相指名業者に入札金額の
連絡をしていた。ほとんどの場合は電話で行っていた。入札金額は,
1回目から3回目までの入札金額を伝える場合や,1回目の具体的金
額を伝え,2回目以降は最低札の金額より幾ら減ずるかという金額を
伝える方法があり,受注予定者が落札できるよう協力し合っていた。
オ被告P13のP38(以下「P38」という。)の供述
証拠(甲サ135,136)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が
認められる。
(ア)P38は,昭和37年4月1日に被告P13の前身であるP39株
式会社に入社し,平成6年7月にP40営業所の副所長になり,平成9
年7月に同営業所の所長となり,上記事情聴取当時まで同職を務めてい
た者である。ただし,土木工事の営業は,平成10年6月末ころまで部
下のP41が担当していた。
(イ)P38は,平成13年3月21日及び同月22日に公正取引委員会
において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,要旨,次の
とおり供述した(甲サ135,136。)
a多摩地区の市町村及び公社が発注する工事については,P38がP
40営業所に赴任した平成6年7月よりもかなり以前から,受注予定
者をあらかじめ話合いなどによって決めるという調整を行ってきたと
聞いていた。被告P13としても,上記受注調整行為が多摩地区の建
築業界において慣行的に行われていたこと,3年に1度工事を受注で
きること,入札においてまともに競争をしていると低価格での受注に
,。より赤字になってしまうことから上記受注調整行為に参加していた
b受注予定者がどのように決まるのかについては,図面等によるピー
アール活動の過程又は話合いにおいて,当該土木工事につき受注希望
する者が一人の場合には,そのものが受注予定者となり,その土木工
事について希望者が複数ある場合には,当事者間の話合いで決めてい
た。受注希望者間の話合いが難航した場合,当事者により調整後,被
告P5のP26営業所長であったP25に相談し,冷静な判断を得て
解決を図るというように聞いていた。
カ被告P10のP42(以下「P42」という。)の供述
証拠(甲サ101,102)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が
認められる。
(ア)P42は,昭和36年4月,被告P10に入社し,昭和59年4月
にP43営業所に赴任して以降,同営業所で営業に従事し,平成4年4
月に同営業所の副所長に,平成6年4月に同営業所の所長に就任した者
である。
(イ)P42は,平成12年11月9日及び平成13年6月11日に公正
取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,
要旨,次のとおり供述した(甲サ101,102。)
aP28は,昭和54年に,被告P5,P44株式会社,株式会社P
45,P46株式会社,P47株式会社,株式会社P48,被告P1
0のゼネコン7社により発会した。昭和62年から平成元年ころ,P
28の会員は48社に増えていた。平成2年から平成4年までP28
の会長がP25であった。平成4年に,公正取引委員会がP49を摘
,,。,発したことから同年P28を解散することになったP49では
会自体が受注調整のためにあると認識されていたが,P28では懇親
が主目的であり,受注調整をする場合,当事者間において,まず,話
合いがされ,話合いがつかない場合に,P28の会長と副会長,場合
によっては同会の役員を交えて受注調整を行っていた。
bP28解散後は,受注を希望するゼネコン営業担当者は,P28の
最後の会長であったP25にピーアール紙を持って行くということが
。,,自然発生的に行われるようになったP28の時と同様基本的には
受注を希望する当事者の話合いによって受注予定者が決まるようにな
っていたが,当事者同士の話合いがつかない場合には,最終的には被
告P5の指示により受注予定者が定まることがあった。ただし,まれ
ではあるが,当事者同士で競争となる「叩き合い」になったこともあ
った。
c上記ゼネコン間における受注調整は,多摩地区の市町村や公社が発
注する土木工事について行われていたものであり,国や東京都の出先
機関又は公団等が発注する工事の営業については,各ゼネコンの東京
支店や本社が担当しているため,受注調整の対象とされておらず,ま
た,建築工事関係については,別の集まりがあったことから,土木工
事とは別の方法による調整がなされていた。
キその他の被告及び被告ら以外のゼネコンの営業担当者による供述調書
証拠(甲サ3から8まで,54,56,58,59,62,63,66
,,,,,,,から84まで86から89まで9293103105106
113,137から146まで,149から156まで,158から17
,,,,,2まで174から185まで187から189まで191192
,,,,,194から196まで202から211まで233237241
244,248,251,292,295,325,349,350,3
54,358,365,366)及び弁論の前趣旨によると,株式会社P
48,P50株式会社,株式会社P51,P52株式会社,P53株式会
,,,,,社株式会社P54P46株式会社株式会社P55P56株式会社
P57株式会社,P58株式会社,株式会社P59,P60株式会社,P
61株式会社,P62株式会社,P63株式会社,P64株式会社,P6
5株式会社,株式会社P66,株式会社P67,被告P7,P68株式会
社,被告P1,P47株式会社,P69株式会社,株式会社P45,P7
0株式会社,P21株式会社,株式会社P71,被告P3,P72株式会
,,,,,社株式会社P73P74株式会社株式会社P75P76株式会社
被告P2,P77株式会社,P78株式会社,P79株式会社,P12株
式会社,P18株式会社,P80株式会社,株式会社P81,株式会社P
82,P83株式会社,株式会社P84,P85株式会社,株式会社P8
6,被告P8,P29株式会社,株式会社P87,P88株式会社,P8
9株式会社,P90株式会社,P91株式会社,P92株式会社,P93
株式会社及びP94株式会社(以上,いずれもゼネコン)における多摩地
区の営業業務に関与していた者が,公正取引委員会において同委員会審査
官からの事情聴取に対し,おおむね,多摩地区において公社が発注した公
共下水道工事に係る入札につき,特定のゼネコン間において,受注費用の
低落を防ぐため,あらかじめ一定の方法により受注調整行為が行われてお
り,その受注調整行為に参加,協力していたことを認める旨供述をしてい
ることが認められる。
また,その受注調整の方法に関する供述についても,供述者により若干
差はあるものの,公社が発注する特定土木工事につき,受注を希望するゼ
ネコン担当者がピーアール紙(ピーアール図又は単にピーアール)と称さ
れる資料を作成し,被告P5P26営業所のP25やP29株式会社P3
0営業所のP31に対して同資料を提示し,自社が当該土木工事を受注す
る上で有利な事情(過去に関連する工事や近隣地において施工実績を有し
ていること等)を有することを説明し,他に受注を希望するゼネコンがあ
る場合には,当該ゼネコンの担当者との話合いにより,あらかじめ受注予
定者を決め,受注予定者となったゼネコンは,ゼネコン各社に対して,自
社の受注をしやすくするため,当該土木工事の工事希望票の提出を依頼し
て指名を受けることを求め,入札前には,当該土木工事について指名され
た入札参加業者に対して自社が受注できるよう,入札価格の連絡や入札予
定価格の聴取を行っていた(このような受注調整が適用されるゼネコンに
ついては,おおむね,P95が発行する営業担当者名簿に掲載されたゼネ
コンであった)とする点でほぼ一致している。。
ク前記アないしキの供述調書の記載の信用性
前記アないしオの供述調書の記載は,いずれも相応に具体性を有し(特
にア及びイ,相互に特段の矛盾はなく,自然な経過の供述とみることが)
,,できこれらを上記キの他の供述調書の記載が裏付けるものとなっており
以上の記載の信用性を左右するに足りる証拠も存在しないことから,前記
アないしキの供述調書の記載はいずれも信用性があるとみることができ
る。
()検討3
ア前記前提事実及び前記()アないしクを総合すると,次の各事実が認め2
られる。
(ア)昭和58年4月当時,多摩地区の31市町村及び公社から発注され
る公共下水道工事等の土木工事につき,同地区のゼネコンの親睦会であ
ったP28の会員であった約60社のゼネコン間において,受注価格の
低落防止のため,あらかじめ1社を受注予定者と決め,その他のゼネコ
ンが受注予定者の受注に協力するという受注調整行為が行われ,P28
の会長が,当該受注調整行為において各会員に対して助言し,場合によ
っては,いずれのゼネコンが受注予定者となるのかについて事実上裁定
をする役割を担っていた。
(イ)平成4年にP28が廃止された後も,受注価格の低落防止のため,
多摩地区におけるP28の会員間で行われていたのと同様の受注調整行
為が行われ,その廃止時にP28の会長であった被告P5のP25が,
ゼネコン間の受注調整行為における助言を行い,場合によっては事実上
裁定を行う役割を担っていた。
(ウ)本件各工事の入札が行われた当時,多摩地区において行われていた
受注調整においては,おおむね,次のルールが定められていた。
a多摩地区の市町村及び公社の発注する土木工事を対象とする。
b受注を希望するゼネコンは,ピーアール紙(ピーアール図)と称さ
れる資料を作成し,これを,被告P5のP26営業所又はP29P3
。,,0営業所に提示する同資料には当該土木工事の地図上に工事場所
過去の関連工事の施工実績や近隣地における施工実績,事業所,自社
の施設の位置等,当該土木工事の工事場所と自社との関連性を示す事
情を記載する。
さらに,必要に応じて,P25(平成12年3月以降はP32。以
下同じ)又はP31に対し,同土木工事の受注意欲を有しているこ。
と,その程度のほか,同工事の設計に自社のダミコンが関与していた
こと,当該土地の買収手続に関与していたこと等,当該土木工事の受
注において,他のゼネコンに比べて自社が当該土木工事と強い関連性
を有しており,受注予定者となるべき事情があることを説明する。
c受注を希望するゼネコンは,他のゼネコンに対して,その担当者を
介して,直接又は電話等の機会において,当該土木工事について自社
が受注意欲を有していること,当該土木工事について自社が場所的関
連性や施工実績等受注予定者となるべき事情があることを説明し,各
ゼネコンが当該土木工事に受注意思を有しているか,また,同じ土木
工事に他に受注意欲を有するゼネコンが存在する場合には,話合いを
し,あらかじめ受注予定者を決める。
受注意欲を有するゼネコン同士における話合いが難航した場合に
は,各ゼネコンの担当者においてP25又はP31に相談をし,その
助言や意見を求める。ただし,P25は,あくまで助言を行うにとど
め,最終的な解決は,各ゼネコンの判断にゆだねる。
d受注予定者となったゼネコンは,受注調整がなされたゼネコンのみ
が入札が行われるようにするため,他のゼネコンに公社への工事希望
票の提出を依頼し,他のゼネコンは,同依頼に応じて工事希望票を提
出し,当該土木工事について入札参加業者として指名されるよう協力
する。
e受注予定者は,公社に指名され,入札に参加する資格を有するゼネ
コンに対し,自社の入札予定金額を伝えたり,又は他の入札に参加す
るゼネコンの入札価格を聞くなどし,自社が落札できるよう協力を求
め,他の入札に参加するゼネコンは,受注予定者の入札予定金額より
高い金額で入札したり,自社の入札予定金額を伝えるなどして,受注
予定者の落札を妨げないよう協力する。
,,,また受注予定者は当該工事がJVのみが入札に参加できる場合
各JVのうち,入札金額の決定等において主導的な立場にある建設業
者(以下,このような立場の建設業者又はゼネコンを「JVの主となる
建設業者」又は「JVの主となるゼネコン」という。)に対し,上記と
同様の方法によって,自社が結成したJVが落札できるよう協力を求
め,他の入札に参加するJVの主となる建設業者は,受注予定者の結
成したJVの入札金額より高い金額で入札したり,自社の入札予定金
額を伝えるなどして,受注予定者の落札を妨げないよう協力する。
(エ)上記(ウ)の受注調整に係る方法は,平成10年4月当時,別紙業者
一覧表記載のとおり約80社平成10年4月版の営業報告者名簿甲,((
サ11から13まで,19から23まで,25,28,30,34から
41まで,45,46,48)のゼネコンにおいて適用されていた。)
(オ)上記受注調整行為は,平成12年3月ころ,多摩地区のゼネコンに
対して,公正取引委員会による立入検査が行われたため,自粛する傾向
となり,その後も続けられたが,明確な形をとらなくなっていった。
イ談合に関する基本合意を巡る事実関係
上記アの認定によると,被告らを含む別紙業者一覧表記載の約80社の
ゼネコン間における公社発注の土木工事に係る受注調整は,昭和58年4
月以前から存在していたものであるが,そのような調整が,いかなるゼネ
コン間で,どのようにして定まったものであるのかまでは確定することが
できないが,上記受注調整方法は,P28の会員間によって行われたもの
であって,同会解散後もゼネコン間の現実的要請から同様の方法により途
切れることなく受注調整行為が継続していたといえる。
また,受注意欲を有するゼネコンが,どのようにして他のゼネコンと連
絡をとり,ゼネコンの間で,受注予定者としての地位を築くかといった方
法のほか,他に受注意欲を有するゼネコンが存在する場合に,当該ゼネコ
ンとの間の調整において,どのようにその希望を調整するか,どのような
事情を有するゼネコンが優先することとするかなどといった具体的な調整
時の基準も定型的であったとはいえず,これらは各ゼネコンの担当者の判
断にゆだねられていたということができ,例えば,定期的に会合が開催さ
れ,その場において,特定の土木工事の受注予定者が定まる方式でなされ
る受注調整行為や,調整役となる者をあらかじめ定め,その者が一定の基
準により受注調整を行い受注予定者を定めるという方法により受注調整が
なされる場合に比べ,受注調整の方法として不定型であったものといわざ
るを得ない。
そうすると,結局のところ,被告らを含む別紙業者一覧表記載の約80
社のゼネコンにおいては,前記アで認定した上記受注調整に参加,協力し
ていたとしても,そのような事実のみでは,いかなる土木工事につき,ど
のゼネコンが受注予定者となるかといった,受注調整の重要な要素につい
ては,何一つ定まっていないものといえる。
なお,P25やP31が,上記調整行為において,参考になる助言や意
見を述べる立場にあったことは認められるものの,その地位は,各ゼネコ
ンの担当者間における受注調整が難航した場合にあくまでも助言や意見を
,,,述べる役割を担っていたにすぎず特にP25やP31の助言や意見が
各ゼネコンに対して相応の影響力を有していたと考えられるものの,その
助言や意見に従うか否かは,当該ゼネコンの自由意思にゆだねられていた
ものといわざるを得ないことからすれば,P25やP31の役割は,受注
調整行為が円滑に進むように各ゼネコンの担当者により行われる調整行為
を補助するものにすぎなかったといわざるを得ない。
したがって,上記アにおいて認定した被告らを含む別紙業者一覧表記載
の約80社のゼネコン間における受注調整に関する定めは,同地区におけ
る事実上の慣行にとどまるものといわざるを得ず(以下,この慣行のこと
を「本件慣行」という。),これを超えて,上記ゼネコン間において,明確に
一定の受注調整に関する方法やその拘束力に係る合意がなされていたもの
とまでは認めることはできない。
このように,本件慣行は,被告らを含む別紙業者一覧表記載の約80社
のゼネコン間における受注調整に関する合意であるとはいえない以上,本
件慣行の対象となる土木工事に係る入札がなされたとしても,別紙業者一
覧表記載の約80社のゼネコン間の本件慣行の存在から,直ちに当該入札
において談合(原告らのいう談合に関する基本合意)がなされたと認める
ことはできない。
よって,上記基本合意に基づく被告ら全員に対する共同不法行為による
請求は,その余の点について判断するまでもなく理由がない。
ウとはいえ,前記前提事実()オのとおり,公社発注の特定土木工事につ2
いて平成9年10月1日から平成12年9月27日(公正取引委員会が公
社発注の土木工事入札に係る事件の審査を開始した日)までの72件(別
紙「P11公社発注の特定土木工事一覧表(甲サ190)と,同年1」)
0月1日から平成17年11月1日までの139件(別紙「特定土木工事
一覧表(乙A2)が各落札されたところ,その平均落札率及び落札率」)
の分布を比較すると,下記「平均落札率及び落札率の分布」のとおり,前
者と後者との間には,平均落札率において有意的な違いを認めることがで
きる。
特に前者における落札率分布が「99%以上」の群に含まれる土木工事
が42件と,全体の土木工事の56パーセントを超えていたことが認めら
れ,分布の傾向としても「99%以上「95%以上99%未満」及び」,
「80%以上81%未満」の各群に集中していたことが認められるのに対
し,後者における落札率分布が「99%以上」の群に含まれる土木工事が
6件と,全体の土木工事の4パーセント程度にまで大きく減少したことが
認められるほか,分布の傾向としても「95%以上99%未満「90」,
」「」,%以上95%未満及び80%以上81%未満の各群に集中しており
本件慣行の存在により公社発注の土木工事の落札率に明らかに有意な影響
を与えているといえる。
記
平均落札率及び落札率の分布
甲サ190乙A2
平均落札率94.54%89.85%
落札率分布(全72件中)(全139件中)
99%以上41件6件
95%以上99%未満11件51件
90%以上95%未満2件30件
85%以上90%未満2件1件
81%以上85%未満1件0件
80%以上81%未満15件50件
エ上記アないしウからすれば,本件慣行が適用されるゼネコン間において
,,は平成12年3月ころ以降は明確な形をとらなくなっていったとはいえ
少なくとも平成12年9月27日までの間(本件各工事の入札はいずれも
この時期に行われている,本件慣行が存在しており,本件慣行のみか。)
ら特定の土木工事について談合が成立したとまではいえないものの,本件
慣行の対象となる土木工事については,本件慣行における一定の定めに従
えば容易に談合を成立させることができ,その結果,公社が定める工事予
定価格に極めて近い金額による受注が可能になったものと認められる。
そして,上記平均落札率及び落札率の分布に照らせば,おおむね落札率
95パーセント以上の場合,その落札率の高さに応じて,当該工事につい
ては,本件慣行を背景とした個別談合によるものとの疑いが強まるものと
いうことができる。
()2争点()イ監査請求の対象行為と本件各工事に関する個別談合との同一性1
について
()被告P3,同P10及び同P8は,原告らの監査請求においては,341
社のゼネコンの基本合意による談合に基づき不法行為が成立するとして,町
田市長が34社のゼネコンに対する損害賠償請求権を適正に行うことを求め
ていたのであり,本件各工事ごとに個別談合を行ったことが不法行為に当た
ることを理由とした損害賠償請求権の行使を求めているものではないことが
明らかであるから,上記監査請求と同一性はないとして,住民監査請求を経
ていない不適法な訴えであるから却下されるべきであると主張する。
()そこで,本件各工事に関する個別談合の成否の判断をする前に検討する2
に,前記前提事実()によれば,原告らは,本件各工事において,被告らを6
含む34社の談合行為があったのか否かを監査の対象として監査請求したこ
とが認められるところ,談合は,さまざまな形態があり得るとしても,いず
れも特定の入札行為に向けた合意による競争制限としてみれば,同一性があ
るとみることができることからすれば,上記原告らの監査請求の対象となっ
た談合行為と本件訴訟において原告らが主張する本件各工事に関する個別談
合とは,対象とする行為の同一性に欠けるところはないということができ,
上記被告ら3社の主張を採用することはできない。
3争点()ウ(本件各工事に関する個別談合の存否)について1
()本件工事11
ア当事者の主張の骨子
(ア)原告らの主張
被告P1は,本件工事1につき,施工実績があることから受注を希望
し,基本合意の適用のあるゼネコン間において,受注予定者となる了承
が得られると,被告P2,P57株式会社,P78株式会社,P77株
式会社,P92株式会社の各担当者に対し,工事希望票の提出を依頼し
た。被告P1は,公社から指名を受けた後,株式会社P16とJVを組
むこととし,同JVが落札できるよう,基本合意がなされていたゼネコ
(,,,,ン6社株式会社P45P57株式会社被告P2P78株式会社
P77株式会社,P92株式会社)及び基本合意に含まれていない指名
業者である,P96株式会社,P97株式会社及びP98株式会社の各
担当者に対して協力依頼をし,上記9社に対して,各建設業者が入札す
る金額を伝える,又は入札予定金額を確認することにより,被告P1に
よるJVが予定価格に近似する金額で落札した。
なお,基本合意が証拠上認定できなくとも,上記個別談合の事実が認
められるならば,不法行為に基づき,被告P1及び同P2に対する損害
賠償請求は認められるというべきである(この点は,以下の本件各工事
のいずれにおいても同様の主張の構造である。。)
(イ)被告P1の主張
原告らの主張事実はすべて否認する(証拠評価の主張については後述
のとおり。)
本件工事1の入札に参加したゼネコン間において,被告P1を受注予
定者として決定した事実はなく,また,同入札には,ゼネコン以外の3
社が存在していたことからすれば,被告P1が落札するという必然性や
蓋然性を認めることはできない。
(ウ)被告P2の主張
被告P2が,被告P1から工事希望票の提出を依頼されたこと,被告
P1が受注を希望していることを認識した上で工事希望票を提出したこ
と,被告P1から入札前に入札してもらう価格の連絡又は入札価格の確
認を受けたこと,入札において自社の入札価格が被告P1の結成したJ
Vの入札価格よりも高い価格になることを認識した上で入札に参加した
ことは否認する。
イ公正取引委員会における事情聴取での関係者の供述
(ア)被告P1のP99(以下「P99」という。)の供述
(),。証拠甲サ72及び弁論の全趣旨によれば次の事実が認められる
aP99は,昭和45年に被告P1に入社し,昭和46年以降営業業
務に従事し,平成10年4月以降平成12年3月末まで,同社P10
0営業所所長として勤務をしていた者である。
bP99は,平成13年9月27日に公正取引委員会において行われ
た同委員会審査官からの事情聴取に対して,要旨,次のとおり供述し
た。
(a)P99が赴任した平成10年4月ころ,被告P1が本件工事1
の受注予定者になることがほとんど決まっていた。被告P1が受注
予定者となるための活動は,P99の前任者(P101)が長期間
行っており,P99は,本件工事1の受注予定者となるための活動
を特別には行わなかった。
(b)P99は,数社のゼネコンに対し,公社に工事希望票の提出を
依頼したほか,相指名業者に対して入札金額の連絡を行った。
(c)P99が数社のゼネコンに対して工事希望票の提出を依頼した
のは,指名業者から地元の建設業者を排除し,ゼネコンの受注を容
易にするという,本件慣行によるものであった。P99は,工事希
望票を依頼するゼネコンの選定を部下であるP102(以下「P10
2」という。)と相談して行い,また,株式会社P45のP103か
,。,,ら依頼先等を教示してもらったP99はこのような経緯から
P103に対しては工事希望票の提出を依頼しなかったが,株式会
社P45において自主的に工事希望票を提出した。P99は,P5
7株式会社のP104(以下「P104」という。),P78株式会社
のP105(以下「P105」という。)に工事希望票の提出を依頼し
たほか,P96株式会社,被告P2,P77株式会社及びP92株
式会社の各担当者に対して工事希望票の提出を依頼した。
(d)P99は,指名業者が公表された後,相指名業者のうち,地元
業者等のP97,P98に対し,被告P1が受注意欲を有している
ことを伝えるとともに,上記2社に被告P1が受注予定者であるこ
とを納得してもらい,同社が組んだJVが受注できるよう協力を得
られる旨の同意を得た。
(e)P99及びP102は,本件工事1の入札に参加するJVの主
となる建設業者である,株式会社P45,P96株式会社,P57
株式会社,P106株式会社,P98株式会社,P92株式会社の
各担当者に対し,電話で,積算を行っていた会社については,その
積算金額が被告P1の積算金額よりも高い金額であることを確認し
た上,当該金額による入札を依頼し,積算をしていない会社につい
ては,具体的な金額を示してその金額による入札を依頼した。
(イ)被告P1のP102の供述
証拠(甲サ162)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められ
る。
aP102は,本件工事1の落札について,P99の部下として同人
と行動を共にしていた者である。なお「町田市公共下水道α汚水枝,
線その3工事」とは,本件工事1のことである。
bP102は,平成13年6月1日に公正取引委員会において行われ
た同委員会審査官からの事情聴取に対して,次のとおり供述した。
「平成10年5月25日入札の財団法人P11公社発注の「町田
市公共下水道α汚水枝線その3工事」について申します。
当社は,平成10年5月25日入札の財団法人P11公社発注の
「町田市公共下水道α汚水枝線その3工事」について落札していま
す。この時の入札は私と当社P100営業所の前所長のP99さん
と2人で行っています」。
「この工事物件については,平成元年8月に当社はこの近隣の町
田市の「β」の付近でP11公社発注の工事を行っていた施工実績
がありましたので,立地条件が他社に比べて有利であり,是非とも
。,受注したいと営業努力をしていた物件でしたこの物件については
P99前P100営業所長のときに受注した物件であり,私がP9
9さんから聞いた話しでは,同クラスのゼネコンさんに対しては,
自社が勉強していることをピーアールして受注の協力をお願いした
物件だということは記憶しているが,いつごろ,どこのゼネコンに
対してピーアールしたかまでは思い出せないということでした。同
業他社のゼネコンからは当社の施工実績などを理解していただいた
ということは,他社のゼネコンは当社の入札価格より高めの概算で
,。」見積りを行いこの価格で入札して当社に協力してくれています
(ウ)P57株式会社のP104の供述
証拠(甲サ144)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められ
る。
aP104は,平成9年4月15日にP57株式会社のP107営業
所が新設されたことに伴い,同営業所長として赴任し,本件工事1の
落札当時,同営業所長として勤務していた者である。
bP104は,平成13年5月24日に公正取引委員会において行わ
れた同委員会審査官からの事情聴取に対して,次のとおり供述した。
「15番の平成10年5月25日入札の「町田市公共下水道α汚水
枝線その3工事」は,当社はP108とのJVで入札に参加し,ゼネ
コンのP1とP16JVが落札しております。これも,P1から受注
意欲をピーアールされたものと思いますが,当社としては受注意欲の
ない工事であり,受注意欲がないということは分かったことと思いま
すが,概算で積算し,入札に臨み,結果的にはP1のJVが受注でき
るように協力したことになります」。
(エ)被告P2のP109(以下「P109」という。)の供述
証拠(甲サ116,145,176,355,357)及び弁論の全
趣旨によれば,次の事実が認められる。
aP109は,昭和45年4月1日に被告P2に入社し,平成9年6
月27日,同社P110支店営業第一部P111営業所に赴任し,同
所長として勤務し,平成10年の組織変更後も,引き続き同営業所長
の職につき,本件各工事の入札当時も同社P111営業所長として勤
務していた者である。
bP109は,平成13年6月8日に公正取引委員会において行われ
た同委員会審査官からの事情聴取に対して,次のとおり供述した。
「,,番号23のβの物件はAランクとBランクのジェイブイ物件で
P1・P16ジェイブイが落札した物件です。この物件の入札が平成
10年5月25日で,当社としては,先ほど説明した当社が受注した
γ第5工事を受注したいと思っていた時期で,この番号23の物件を
受注してしまうとγ駅第5号工事の入札に参加できなくなる可能性が
ありますから,受注意欲のなかった物件で,指名稼ぎに入札参加希望
を出した物件でした。
この物件について,P1から当社に対して,入札参加の希望票を出
して欲しいとか,自社が受注できるように協力して欲しいという話が
あったかどうか,記憶がはっきりしませんが,受注しようとするゼネ
コンが他のゼネコンに協力を求めるということはありましたから,協
力して欲しいという話があれば,断る理由もありませんので,分かり
ましたといって協力していると思います。仮に,当社で積算して入札
したとしても,取れない価格で入札していると思います。γ駅第5号
工事の入札に参加できなくなる可能性があるというのは,P11公社
では,工事を受注して,出来高が50パーセントを超えないと次の指
名には入れないということがあるからです」。
(オ)P78株式会社のP105の供述
証拠(甲サ150)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められ
る。
aP105は,本件工事1の入札当時,P78株式会社営業本部部長
として勤務していた者であり,同社の多摩地区の官公庁発注の土木工
事の営業担当者から報告を受けていた者である。
bP105は,平成12年12月4日に公正取引委員会において行わ
れた同委員会審査官からの事情聴取に対して,次のとおり供述した。
「お示しの入札結果報告書のうち「町田市公共下水道α汚水枝線そ,
の3工事」は,平成10年5月25日に入札が行われたP11公社発
注の物件で,当社は調布市に本社のある地元業者のP112とJVを
組んで入札に参加しております。この物件は,当社には何の条件もな
く,関連性もありませんので,確か,P1がβの施工場所の近くで,
P113等の工事をやっており,その関連性でP1とP16のJVが
本命となり,入札金額の連絡を受け,同JVが受注できるよう協力し
ております」。
ウ検討
前記前提事実及び前記1()エ並びに上記イの供述の内容を踏まえて,3
以下検討することとする。
(ア)被告P1のP99は,本件工事1について,平成10年4月ころに
は,既に被告P1が受注予定者とほぼ決まっており,その後に,被告P
1の受注を容易にするためにゼネコンに対して工事希望票の提出を依頼
し,更に公社による指名後には受注調整関係にあるゼネコンではない建
設業者2社を含む相指名の建設業者に対し,自社が落札できるよう協力
の依頼をし,各社から協力を得られることになり,入札前に,自社が組
んだJVが落札できるよう,他のJVの入札予定金額を確認したり,そ
のJVに入札してもらいたい金額を伝える方法により受注調整をした旨
供述している。そして,前記1()エで述べたことに照らし,本件工事3
1は,被告P1と株式会社P16が組んだJVにおいて,工事予定価格
3億3205万円の98.47パーセントに当たる3億2700万円で
落札していることからすれば,本件慣行を背景として本件工事1につき
個別談合が行われたことが極めて強く疑われる。さらに,本件工事1の
入札に参加したJVの主となる建設業者であったゼネコンの担当者であ
るP105は,被告P1が受注予定者とされ,同社から入札金額の連絡
を受けた旨供述しており,本件工事1の入札に参加したゼネコンの担当
者であるP104及びP109においても,被告P1との間で何らかの
受注調整が行われたことを肯定する供述をしている。
以上を総合すれば,本件工事1については,被告P1の担当者が,平
成10年4月ころまでに,本件慣行に基づいて受注予定者となるべき活
動を行い,同社が受注予定者となることに理解を示したゼネコンに対し
て工事希望票の提出を依頼したほか,公社による指名がなされた後遅く
とも入札の前までに,本件慣行が適用され,かつ,入札に参加するJV
(,,,の主となるゼネコン6社株式会社P45P57株式会社被告P2
P78株式会社,P77株式会社,P92株式会社)に対し,各ゼネコ
ンが結成したJVの入札予定金額を確認したり,入札して欲しい金額を
伝えたりするなどの方法により,被告P1が結成したJVが,工事予定
価格に近似する入札金額により本件工事1を落札できるよう協力する旨
依頼し,上記ゼネコンとの間で,被告P1が結成したJVの上記入札金
額による落札を妨げないこととするとの合意(個別談合)がなされ,さ
らに,本件慣行が適用されない入札に参加するJVの主となる建設業者
3社(P96株式会社,P97株式会社,P98株式会社)の担当者に
対し,被告P1が結成したJVが,工事予定価格に近似した金額により
落札できるよう協力を依頼し,上記合意及び協力に基づいて,被告P1
が結成したJVが,予定どおり本件工事1を落札したと認められる。
(イ)aこの点に関して,被告P1は,上記P99の供述につき,公社に
よる指名がなされるより以前に受注予定者が決まっていること自体あ
り得ないことであるとか,P99の供述において述べられているP1
02の関与について,P102が何ら供述していないことや,P99
が平成12年7月に懲戒解雇された者であり,P99の供述が被告P
1に対する反感,悪感情を背景に同被告を陥れようとして虚偽の供述
をしているなどと主張する。
しかしながら,本件慣行においては,前記1()のとおり,公社に3
よる指名がなされる前に受注予定者となるべくピーアール紙を作成す
る等の活動を行い,その結果受注予定者となった者が,当該入札を受
注調整がなされているゼネコンに参加させることにより,受注予定者
による落札を容易にするため,他のゼネコンに対して工事希望票の提
出を依頼していたことが認められるのであり,被告P1が公社による
指名がされる以前に受注予定者としてほとんど決まっていた旨のP9
9の供述が不自然とはいえない。また,前記イ(イ)bのとおり,被告
P1のP102の供述は,P102自身が受注調整行為に関与したこ
とについては触れられていないものの,本件工事1において何らかの
受注調整行為がなされたことを自体を否定するものではなく,P10
2の供述がP99の供述の信用性を減殺させる関係にあるとはいえ
ず,むしろ,P102は,P99から受注調整行為がなされた旨の話
を聞いた旨供述していることからすれば,P99の上記供述が公正取
引委員会における審査において全く虚偽の事実を被告P1を殊更に陥
らせる目的で作出した内容ではなかったことを裏付けるものといえ
。,,,るさらにP99の供述は本件工事1に係る受注調整行為につき
自らが直接関与した部分と直接関与していない部分とを明確に分けて
供述しているほか,工事提出票を依頼する建設業者の選定,入札金額
の連絡方法などについても具体的に供述しており,この面からも信用
性を肯定できる。
bまた,被告P1は,相指名されたゼネコンの担当者のうち,P10
4及びP109は,明確に被告P1から受注調整行為がされたことを
供述しておらず,被告P1による受注調整行為があったとするP10
5の供述が,同供述において繰り返し同様の表現が用いられたりする
など信用できない旨主張する。
しかしながら,P104及びP109は,いずれも,多摩地区にお
いては受注調整行為があった旨の供述をし(甲サ144,145,)
また,両社において,もともと本件工事1を受注する意欲がなく,自
社において受注調整行為に関与していた工事が複数存在していたこと
を認める旨供述していることからすれば,そのうちの一つの工事であ
る本件工事1において,被告P1から工事希望票の提出や調整行為が
あったか否かについて,明確にその存在を認める供述していなかった
としても,これを受注調整行為がなされていなかったことを意味する
ものとみることはできず,また,受注調整行為があったとする他の者
,。,の供述を裏付けこそすれその信用性を左右するとはいえないなお
P105もゼネコン間における受注調整行為を行う慣行があったこと
を認め,そのような慣行に基づいて複数の公社が発注する土木工事に
おいて,受注調整行為を行っていたことを供述しているのであって,
本件工事1もその中の一つであったとして供述しているとみることが
でき,その供述において,他の工事と同様の表現が用いられているこ
とが,受注調整行為に参加していた旨の同人の供述の信用性を減殺す
るものとはいえない。
()本件工事22
ア当事者の主張の骨子
(ア)原告らの主張
被告P3は,本件工事2につき,調査設計段階に同社のダミコンが入
札参加者として指名されていたことから受注を希望し,本件工事2の公
示日にP25を訪問し,受注意欲がある旨伝え,P25から「分かりま
した」との返答を受け,基本合意における受注予定者となり,公社が。
入札予定を公表した後に合計約15社のゼネコンに対して工事希望票の
提出を依頼し,公社が建設業者を指名した後に,相指名業者のうち,P
17株式会社とJVを組んだ。被告P3は,入札前までに入札に参加す
るJVの主となる建設業者に対し,自社が受注を希望していることを伝
え,入札予定金額を伝え,又は入札予定金額を確認するなどした。被告
P3は,入札に参加するJVの主となる建設業者のうち,基本合意の適
用のある6社(株式会社P48,株式会社P114,株式会社P84,
P91株式会社,P18株式会社,P76株式会社)以外の3社(P1
15株式会社,P116株式会社,P117株式会社)に対し,被告P
3が組んだJVが落札できるよう協力を求め,上記各社において,被告
P3の受注希望に異議を唱えず,入札において,被告P3が組んだJV
の入札金額よりも高い金額となることを認識した上で入札し,同JVに
よる落札ができるよう協力した。
(イ)被告P3の主張
原告らの主張は,何ら具体的な根拠のない憶測を述べているにすぎな
いものである。
被告P3が,P115株式会社,株式会社P116及びP117株式
会社の3社との間で個別に受注調整をしたことを示す証拠はない。
イ公正取引委員会における事情聴取での関係者の供述
(ア)被告P3のP36の供述
証拠(甲サ85,173)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認
められる。
P36は,平成13年5月22日及び同年9月4日に公正取引委員会
において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,要旨,次の
とおり供述した。
a被告P3は,P17株式会社とJVを組み,同JVが,平成10年
5月25日入札の本件工事2を3億0900万円で落札した。本件工
事2は,第1グループがAランクの建設業者,第2グループがBラン
クの建設業者によるJVによる土木工事であった。本件工事2の入札
は,被告P3とP17株式会社とのJVのほか,株式会社P48と株
式会社P118とのJV,株式会社P114とP23株式会社とのJ
V,株式会社P84とP119株式会社とのJV,P91株式会社と
P120株式会社とのJV,P18株式会社とP121株式会社との
JV,P76株式会社とP122株式会社とのJV,P115株式会
社とP123株式会社とのJV,株式会社P116株式会社とP12
4株式会社とのJVの10JVで行われた。
被告P3は,本件工事2につき,施工現場の近隣で過去に水道工事
を施工した実績を有していたほか,自社のダミコンが本調査設計入札
の指名を受けており,会社自体も施工現場に近く,河川工事や造成工
事をその付近で多く施工していたため,強い受注意欲を有していた。
本件工事2は,新設工事であったことから,被告P3以外のゼネコン
においては,受注を有利にするための事情を有しておらず,特に受注
を希望していないようであった。
bP36は,本件工事2の公示日にP25を訪問し,P25に対し,
被告P3が,近隣において施工実績を有しており,受注意欲を有して
,「。」。いることを説明するとP25から分かりましたと回答された
P36は,経験上,P25が検討する場合や受注予定者となれない場
合であればその旨を回答することから,上記P25の回答により,被
告P3が受注予定者としての地位を得られたと考えた。
cP36は,平成10年4月23日,24日ころ,株式会社P48P
125営業所長のP126(以下「P126」という。)又はP127(以
下「P127」という。),株式会社P114P128営業所長のP12
9,株式会社P84P130営業所長のP131(以下「P131」と
いう。),P91株式会社P132営業所のP133,P18株式会社
P134営業所長のP135(以下「P135」という。),P76株式
会社P136営業所長のP137(以下「P137」という)のほ。
か,合計約15社のゼネコンの担当者に電話で工事希望票の提出を依
頼した。具体的には「平成10年4月23日公表の公表番号何番の,
申込みをお願いします」との旨を各ゼネコンに連絡し,各ゼネコンか
ら提出する旨の返事をもらったと記憶している。
dP36は,本件工事2の入札前に,相指名に入ったゼネコンの担当
,,者である株式会社P48P125営業所長のP126又はP127
株式会社P114P128営業所長のP129,株式会社P84P1
,,30営業所長のP131P91株式会社P132営業所のP133
P18株式会社P134営業所長のP135,P76株式会社P13
6営業所長のP137に対し,電話で,1回目から3回目までの入札
にしてほしい金額を伝え,各ゼネコンの担当者から分かった旨の返答
を得た。
eP36は,上記(c)及び(d)の工事希望票の提出依頼や入札金額の
連絡において「P3ですが」と自己の氏名を名乗らずに,会社名を,
告げて連絡していた。
fP36は,本件工事2の相指名業者であったP115株式会社,株
式会社P116,P117株式会社に対し,入札に参加した理由につ
き尋ねるとともに「予想される額より上回る価格で入れてくださ,
い」と伝えることにより,被告P3が組むJVが落札することがで。
きるよう協力を依頼した。P36は,上記3社の担当者から明確な返
事をもらえなかったが,雰囲気から,被告P3の組むJVが落札でき
ると感じた。
(イ)株式会社P48のP126の供述
証拠(甲サ137)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められ
る。
aP126は,株式会社P48に昭和53年1月に入社し,平成8年
6月から同社P138支社P125営業所長になり,本件各工事の入
札当時,同所長として勤務していた者である。
bP126は,平成13年9月18日に公正取引委員会において行わ
れた同委員会審査官からの事情聴取に対して,要旨,次のとおり供述
した。
(a)本件工事2については,受注予定者であった被告P3の落札に
結果として協力した。公社から本件工事2の公示された後,被告P
3のP37営業所から,P126又はP126の部下のP127に
対し,工事希望票を提出して入札に参加し,被告P3の落札に協力
するよう依頼された。そこで,株式会社P48が,工事希望票を提
出し,本件工事2の入札に参加することとなった。
(b)株式会社P48では,受注予定者となったゼネコンに協力する
場合であっても,入札に参加する場合には自社の見積りを行うこと
となっていた。P126は,上記協力依頼があったことから,被告
P3が本件工事2の受注予定者となったものと考え,被告P3に迷
惑の掛からない当社の見積金額を,遅くとも入札前までに,被告P
3のP37営業所の担当者に電話で連絡した。
なお,P126は,電話で見積りを伝えた被告P3のP37営業
所の担当者がP139であったと記憶しているが,当時被告P3の
P37営業所長の交代があったことから,P36に対して伝えたの
かもしれないと考えている。
(ウ)P76株式会社のP137の供述
証拠(甲サ103)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められ
る。
aP137は,昭和56年10月にP76株式会社に入社し,そのこ
ろから同社P136営業所に勤務し,昭和62年以降同営業所長とな
り,本件各工事の入札当時,同所長として勤務していた者である。
bP137は,平成13年3月28日に公正取引委員会において行わ
れた同委員会審査官からの事情聴取に対して,要旨,次のとおり供述
した。
(a)公正取引委員会がP76株式会社から留置したノート(甲サ1
03添付のノート。以下「P76ノート」という。)は,P76株式
会社の女性事務員がつけていた電話連絡メモである。
(b)P76ノートの「4.23(木)16:30P3P139
P11の申込みよろしくお願いします」との記載については,本。
件工事2につき,被告P3が受注予定者となっており,被告P3か
ら,本件工事2の工事の入札を受注調整関係にあるゼネコンで占め
るため,入札に参加するよう依頼を受けたことを示す記載である。
(c)P76ノートの「5.22(金)16:00P3札の連絡
1.3億1800万2.3億600万3.3億230万」と
の記載については,被告P3から,P76株式会社に対し,本件工
事2の入札において,P76株式会社に入札してもらいたい金額を
連絡してきたものである。
P76株式会社は,被告P3が受注できるようにするため,被告
,。P3から連絡を受けたとおりの金額で入札しその受注に協力した
(エ)P63株式会社のP140(以下「P140」という)の供述。
証拠(甲サ56,151)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認
められる。
aP140は,昭和41年4月,P63株式会社に入社し,平成6年
2月から同社P141営業所に営業課長として赴任し,平成8年4月
に同営業所長になり,平成12年5月に同社P142支店営業部次長
に異動するまでの間,同営業所長として勤務していた者である。
bP140は,平成13年9月30日に公正取引委員会において行わ
れた同委員会審査官からの事情聴取に対して,要旨,次のとおり供述
した。
(a)公正取引委員会がP63株式会社から留置したノート(甲サ1
51添付のノート以下「P63ノート」という。)の書き出しは1。,「
2月11日(木」となっており,平成9年12月11日は木曜日)
であることから,P63ノートは,P63株式会社の女性事務員が
平成9年12月11日木曜日から使用していたものであるといえ
る。
(b)P63ノートに「4月23日(木」とある,平成10年4月)
,,23日木曜日のページにはP140に対する報告事項が記載され
午後5時のところの「P3P139様よりP11の申込おねがいし
たい町田市δ幹線その4」という記載は,被告P3P37営業所の
P139所長から本件工事2の工事希望票の提出依頼があったこと
を指している。
P63ノートの翌日,平成10年4月24日の「P11申込書作
成」との記載は,P140の指示により女性事務員が本件工事2の
工事希望票を作成し,公社に提出していることを指している。
,,,(c)しかしながらP63株式会社は本件工事2の入札において
公社から指名されなかった。
(オ)株式会社P84のP131の供述
証拠(甲サ184)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められ
る。
aP131は,平成10年4月に株式会社P84P130営業所長に
なり,本件各工事の入札当時,同営業所長として勤務していた者であ
る。なお「町田市公共下水道δ幹線その4工事」とは,本件工事2,
のことである。
bP131は,平成13年4月25日に公正取引委員会において行わ
れた同委員会審査官からの事情聴取に対し,次のとおり供述した。
「一覧表の5番にある平成10年5月25日入札の「町田市公共下
水道δ幹線その4工事」について申し上げます。P11公社の場合,
発注方法が工事希望型指名競争入札ですので,工事希望表をP11公
社に提出し,指名を受けるというシステムをとっています。私は,落
札業者であるP3からこの物件について工事希望表を提出して欲しい
と依頼の電話連絡を受け依頼されたとおりにP11公社に工事希望表
,。,を提出し入札に参加しましたP11公社は10社を指名しますが
指名メンバーをある程度ゼネコンで固めたいので,P3さんは,十数
社に工事希望表を提出して欲しいことを他のゼネコンに伝えられたと
思います。指名メンバーがゼネコンで固まれば,受注調整しやすくな
るからです。P3さんにこの物件を受注するための強い条件があった
かどうかは,私は存じ上げませんが,入札日の5月25日の前日が休
,。」日でなければ24日にP3さんからの札の連絡があったはずです
(カ)P18株式会社のP135の供述
証拠(甲サ235,349)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が
認められる。
aP135は,平成10年4月から平成11年9月までの間,P18
株式会社のP134営業所長と本社営業本部とを兼任していた者であ
り,当時の同社の土木営業の責任者であった者である。
bP135は,平成13年5月15日に公正取引委員会において行わ
れた同委員会審査官からの事情聴取に対して,次のとおり供述した。
「18ページに記載があるP11公社発注の平成10年5月25日
入札「町田市公共下水道δ幹線その4工事」に当社はP121との,
JVで入札に参加しております。P3とP17JVが落札しておりま
す。当社には特に条件はなかったものと記憶しています。条件がない
ときは簡易な積算をするのが常です。P3のどなたから電話があった
のかちょっと思い出せませんが,私に電話で「どのくらいの見積をや
ってらっしゃいますか」といったお話があったように記憶しておりま
す。P3さんは当社の見積価格を聞いて,当社が狙ってきているので
はないということがわかったものと思います」。
ウ検討
前記前提事実及び前記1()エ並びに上記イの供述の内容を踏まえて,3
以下検討することとする。
被告P3のP36は,本件工事2について,被告P3が受注をする意欲
を強く有しており,他のゼネコンにおいては受注を希望していなかったこ
とから,平成10年4月23日に本件工事2が公示された後,P25を訪
問したときの様子から,被告P3が受注できる旨の心証を抱くと,積極的
に合計約15社のゼネコンに電話で,被告P3が本件工事2の受注をする
ための有利な事情を有しており,受注調整のために工事希望票の提出をす
るよう依頼したほか,公社により本件工事2の入札に参加する建設業者が
指名されると,入札前である同年5月22日ころ,相指名のゼネコンある
株式会社P48,株式会社P114,株式会社P84,P91株式会社,
P18株式会社,P76株式会社の各担当者に入札して欲しい金額を具体
的に連絡し,各社から協力を得られることになったほか,P115株式会
社,株式会社P116,P117株式会社の各担当者に対しても「予想さ
れる額より上回る価格で入れてください」と協力を求めた旨供述してい。
る。
そして,前記1()エで述べたことに照らし,本件工事2は,被告P33
株式会社とP17株式会社とが組んだJVにおいて,工事予定価格3億1
071万4000円の99.44パーセントに当たる3億0900万円で
落札していることからすれば,本件慣行を背景として本件工事2につき個
別談合が行われたことが極めて強く疑われる。さらに,本件工事2の入札
,,に参加したJVの主となる建設業者の担当者であったP137P126
P131及びP135は,依頼をした被告P3の担当者の名前,入札金額
の連絡等において具体的に入札してほしい金額を依頼されたのか,自社の
見積りを聞かれたのかという点については供述が一致しないものの,P3
6の本件工事2についての受注調整行為に関する供述とおおむね一致する
供述をしている。さらに,本件工事2の入札に参加した本件慣行が適用さ
れない建設業者であるP115株式会社,株式会社P116及びP117
株式会社は,本件工事2の入札において,各社が組むJVに3億2000
万円,3億3000万円,3億4000万円といういずれも工事予定価格
を上回る金額で入札をしており,P36の協力要請を了承し,いずれも高
い金額で入札をしたものと認められる。
以上を総合すれば,本件工事2については,被告P3の担当者が,自社
のダミコンが調査設計に関与していたことや施行現場の近隣において施工
実績を有していたことから,受注を強く希望し,平成10年4月23日こ
ろ,本件慣行に従い,P25に対して受注意欲があることをピーアールし
たほか,被告P3が受注予定者であり,工事希望票の提出を依頼し,公社
による指名後遅くとも入札までの間に,相指名業者のうち,工事希望票の
提出を依頼した本件慣行の適用があるゼネコン6社(株式会社P48,株
式会社P114,株式会社P84,P91株式会社,P18株式会社,P
76株式会社)との間で,各ゼネコンが結成したJVに対し,被告P3の
,,結成したJVが落札できるよう協力を依頼し上記ゼネコン6社との間で
同ゼネコンが結成したJVに入札をしてほしい金額を伝え,又は各ゼネコ
ンが結成したJVの見積金額を確認することにより,被告P3の結成した
JVの入札金額による落札を妨げないこととする合意(個別談合)が成立
し,さらに,被告P3の担当者において,本件慣行の適用がない3社の建
設業者(P115株式会社,株式会社P116,P117株式会社)に対
しても,同3社の建設業者が結成したJVに工事予定価格を上回る金額で
入札するよう依頼し,上記3社から同意を得て,上記談合に基づいて,予
定どおり本件工事2を落札したと認められる。
()本件工事33
ア当事者の主張の骨子
(ア)原告らの主張
被告P13は,本件工事3につき,工事現場の近隣に施工実績を有し
ていたこと,にもかかわらず,過去に発注された本件工事3の関連工事
を受注したことがなく,本件工事3が当該関連工事の最後の工事であっ
たこと,本件工事3において使用される工法が被告P13の得意な工法
であったことなどから,同工事の受注を強く希望していた。被告P13
は,基本合意により,本件工事3の受注予定者となると,ゼネコンに対
して工事希望票の提出を依頼し,各ゼネコンにおいても,同依頼に応じ
。,,て工事希望票を提出したさらに公社が指名した建設業者はいずれも
基本合意が成立しているゼネコン(被告P13,P18株式会社,被告
P5,P21株式会社,P143株式会社,株式会社P73,P47株
式会社,P53株式会社,P12株式会社,株式会社P54,P52株
式会社,被告P6,株式会社P66,株式会社P144,株式会社P1
45,P68株式会社,P91株式会社,P61株式会社,P69株式
会社,P88株式会社)であったことから,各ゼネコンに対し,入札を
してもらう金額を連絡するなどして協力を求め,上記各ゼネコンにおい
て,自社が組むJVに被告P13とP18株式会社が組むJVよりも高
い金額になることを認識した上で入札し,被告P13とP18株式会社
が組んだJVが工事予定価格近似の金額で落札できるよう協力した。
(イ)被告P13の主張
原告らが主張する基本合意という事実はなく,原告らが主張する基本
合意を基礎とする個別合意なども認められる余地はない。
(ウ)被告P5の主張
被告P13が被告P5に対し本件工事3の受注を希望している旨伝え
たこと,被告P5が被告P13が結成したJVの入札価格よりも高い価
格となることを認識した上で入札に参加したことは否認する。
イ公正取引委員会における事情聴取での関係者の供述
(ア)被告P13のP38の供述
証拠(甲サ135,136)によれば,P38は,平成13年3月2
1日及び同月22日に公正取引委員会において行われた同委員会審査官
,,。からの事情聴取に対して要旨次のとおり供述したことが認められる
aP38の部下であったP41が作成した本件工事3の受注報告書に
よると,本件工事3は,平成10年6月22日に入札が行われ,被告
P13とP18株式会社とのJVが1回目の入札で11億3500万
円で落札した。
b本件工事3は,被告P13が,本件工事3の工事現場の付近の4箇
所で工事実績を有していたこと「γ幹線その3工事・その4工事」,
を受注することができなかったこと,本件工事3で使用される工法の
特許を有しており,得意な工法であったことからも,町田市や公社に
,。対して営業活動を行うなど何としても受注したい土木工事であった
cP38は,P41と二人で,P25を訪れ「当社が勉強していま,
すので,よろしくお願いします」と,被告P13が受注する意思を。
有していることを伝えるとともに,被告P13がγ幹線に係る土木工
事において,近隣の施工実績を有するのにもかかわらず,1回も受注
したことがないことを説明した。
dP38は,入札までの間に,他のゼネコンに対し,被告P13が受
注に積極的であることを説明し,入札に参加するJVの主となるゼネ
コンに対しては被告P13が受注のための活動をしており,同社が結
成したJVが落札できるよう本件工事3の見積金額を知らせるよう協
,,。力を依頼し各ゼネコンに一定の高めの金額で入札をしてもらった
e被告P13は,平成12年4月,本件工事3に伴う保守管理作業,
同年5月に本件工事3の二次履行工事について,随意契約を行った。
(イ)株式会社P66のP146(以下「P146」という。)の供述
証拠(甲サ62,204)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認
められる。
aP146は,昭和56年4月に株式会社P66に入社し,平成6年
12月に同社P147支店P148営業所長になり,本件各工事の入
札当時,同営業所長として勤務していた者である。なお「町田市公,
共下水道γ幹線その8工事」とは,本件工事3のことである。
bP146は,平成13年10月3日に公正取引委員会において行わ
れた同委員会審査官からの事情聴取に対して,次のとおり供述した。
「表の番号15番「町田市公共下水道γ幹線その8工事」について
は,ゼネコン同士で叩き合いになった物件ではありません。そして,
最初にも話しましたがこの物件も当社として受注意欲がなく,当該物
件について勉強する気はまったくありませんでしたから,通常ゼネコ
ン同士で行われてきたように,本命,この物件の場合はP13とP1
8のJVですが,このJVのスポンサー業者であるP13から工事希
望票の提出依頼があり工事希望票を提出して指名された物件といえま
す。当社はP71とJVを組んでJVのスポンサーとして入札に参加
していますので,やはりゼネコン業界で行われてきたとおりP13か
ら札の連絡もあり,その価格で応札してP13の落札に協力した物件
であると言えます。工事希望票の提出依頼や札の連絡を当社にしてき
たのが誰であったか分かりませんが,通常,多摩地区の土木物件では
東京支店サイドからこのような連絡があることはなく,もっぱら多摩
営業所の所長とか営業マンからありましたので,このときもP13の
P40営業所のかたからであると言えます」。
(ウ)株式会社P73のP149(以下「P149」という。)の供述
証拠(甲サ92,249)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認
められる。
aP149は,昭和52年4月に株式会社P73に入社し,平成6年
4月から,同社P150営業所長に配属になり,本件各工事の入札当
時,同営業所長として勤務していた者である。なお「町田市公共下,
水道γ幹線工事」とは本件工事3のことである。
bP149は,平成13年5月24日に公正取引委員会において行わ
れた同委員会審査官からの事情聴取に対して,次のとおり供述した。
「次に,15番の平成10年6月22日に入札が行われました町田
市公共下水道γ幹線工事についてご説明いたします。
この物件は,P13とP18のJVが落札しておりますが,この物
件に関して当初はゼネコンであるP90さんが勉強しておられ,同社
関西地区で不祥事があったとのことから,この物件を辞退したことに
より,本命がP90さんからP13さんに代わったという記憶があり
ますことから,この物件の申込み依頼は,P90P151営業所長の
P152さんかP13P40営業所長のP38さんのどちらか一方で
した。
,,,私はこの依頼を受けましてお付き合いの物件でありましたから
その協力依頼に応じて入札に参加致しました。当社はP143とJV
を組み,そのJVのサブでありましたことから,その後の手続は,P
143にお任せしております」。
(エ)株式会社P71のP153(以下「P153」という。)の供述
証拠(甲サ84,170,294)及び弁論の全趣旨によれば,次の
事実が認められる。
aP153は,昭和45年4月に株式会社P71に入社し,平成9年
4月からP154出張所における官公庁・民間営業に関与し,同年1
0月からは同社P154出張所長,平成10年4月に同出張所が営業
所に格上げになった後は同営業所長となり,本件各工事の入札当時,
同営業所長として勤務していた者である。
bP153は,平成13年6月12日に公正取引委員会において行わ
れた同委員会審査官からの事情聴取に対して,次のとおり供述した。
「21番の平成10年6月22日入札の「町田市公共下水道γ幹線
その8工事」は,P66と当社とのJVで入札に参加し,P13とP
18,現在のP155のJVが落札しております。この工事も,P1
3から工事希望票を出すように頼まれて申し込んだのではないかと思
います」。
(オ)P52株式会社のP156(以下「P156」という。)の供述
証拠(甲サ163,164,237)及び弁論の全趣旨によれば,次
の事実が認められる。
aP156は,昭和53年にP52株式会社に入社し,平成10年4
,,月に同社P157営業所の所長に異動となり本件各工事の入札当時
同営業所長として勤務していた者である。
bP156は,平成13年6月5日に公正取引委員会において同委員
会審査官からの事情聴取に対して,次のとおり供述した。
「35番の平成10年6月22日入札の「町田市公共下水道γ幹線
その8工事」は,当社とP6とのJVで入札に参加し,P13とP1
8,現在のP155のJVが参加しております。この工事は,JVの
スポンサーとなったP13P40営業所の営業担当者であったP41
さんからであったと思いますが,受注意欲があるということと工事希
望票を出して欲しいということをお願いされ,当社はそれを理解し,
工事希望票を出しました。そして,入札の前日までにはP13から入
札価格の連絡を受け,その価格で入札に臨み,P13のJVが落札で
きるよう協力しました」。
(カ)P18株式会社のP135の供述
証拠(甲サ159,349)によれば,P135は,平成13年5月
15日に公正取引委員会において行われた2回の同委員会審査官からの
事情聴取に対して,要旨,次のとおり供述したことが認められる。
a本件工事3は,被告P13とP18株式会社とで組んだJVが落札
している。本件工事3について,P18株式会社には,受注に有利な
条件を有していなかった。
bP18株式会社は,上記JVの主となる建設業者,すなわちAグル
ープで入札に参加した被告P13のP41又はP38からJVを組む
ように依頼を受け,これに応じてJVを結成して入札に参加すること
となった。被告P13株式会社から,P18株式会社が依頼を受けた
理由は,被告P13株式会社のP41とP135の部下とが親しかっ
たことにある。
(キ)P53株式会社のP158(以下「P158」という。)の供述
証拠(甲サ3,81,140)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実
が認められる。
aP158は,昭和43年4月にP53株式会社に入社し,平成6年
4月に同社P159営業所の副所長となり,同営業所における営業業
務に従事し,平成7年4月にP159営業所長の昇格し,本件各工事
の入札当時,同営業所長として勤務していた者である。
bP158は,平成13年9月26日に公正取引委員会において行わ
れた同委員会審査官からの事情聴取に対して,次のとおり供述した。
「表の番号15番「町田市公共下水道γ幹線その8工事」は,Aラ
ンクとAランクのJV工事でして,当社はランク的に最初からJVの
子になることが分かっていました。しかし,本命の親,つまり,業界
内で本命になっているJVメイン業者に拾ってもらえればもうけもの
くらいの気持ちで申し込んだ物件でした。結局,当社は業界内で本命
になったP13とJVを組むことができず受注には結びつきませんで
した」。
ウ検討
前記前提事実及び前記1()エ並びに上記イの供述の内容を踏まえて以3
下検討することとする。
(ア)被告P13のP38は,本件工事3について,近隣で施工実績を有
するのにもかかわらず,これまでに関連工事を受注したことがなく,ま
た使用される工法が,特許を有しているなど得意としている工法である
ことなどから,被告P13が受注を強く希望し,P25に対して上記各
事情を説明したほか,本件慣行の適用がある他のゼネコンに対しても被
告P13が受注を強く希望していることを説明したこと,さらに,入札
に参加するJVの主となるゼネコン各社に対して被告P13が工事予定
価格に近似する金額で落札できるような金額を見積もるよう依頼し,当
該各ゼネコンから協力を得られ,相当な金額で入札してもらった旨供述
している。
そして,前記1()エで述べたことに照らし,本件工事3は,被告P3
13とP18株式会社が組んだJVにおいて,工事予定価格11億48
11万2000円の98.85パーセントに当たる11億3500万円
で落札していることからすれば,本件慣行を背景として本件工事3につ
き個別談合が行われたことが極めて強く疑われる。さらに,本件工事3
の入札に参加したJVの主となる建設業者の担当者であったP146,
P149及びP156は,本件工事3において,被告P13が受注予定
者になった旨供述しており,そのうち,P146及びP156は,被告
P13から入札してほしい金額の連絡があった旨供述している。また,
P153も,被告P13から工事希望票の提出依頼があったと思われる
旨供述している。さらに,本件工事3の入札に参加したJVの主となる
建設業者の担当者であったP135及びP158は,公社から本件工事
3の入札参加者として指名された後,入札前の時点で,被告P13が受
注予定者であったことを前提とする供述をしている。加えて,本件工事
3の入札に参加したJVの入札金額は,第1回目の入札において,10
JVの入札金額がいずれも工事予定価格を上回ったため,2回目の入札
が行われることになり,その結果,10JVのうち,最低の金額を入札
した被告P13が結成したJVが落札する結果となったが,1回目の入
札も,被告P13が結成したJVが最低の金額であり,各JVの入札金
額の差が極めて少ないことが認められる。
以上を総合すれば,本件工事3については,被告P13の担当者が,
工事現場の近隣において施工実績があることや,関連工事を受注してい
ないこと,工法の特許を有しており,得意な工法であったことから受注
を希望し,被告P13が本件工事3の受注予定者となるのに有利な事情
があるとして,本件慣行に基づき,P25に対して受注を希望している
旨説明するとともに,他のゼネコンの担当者に対し,被告P13が強く
受注を希望しており,受注予定者となるための活動をしている旨伝え,
併せて,入札に参加するよう工事希望票の提出を依頼したほか,公社に
よる指名がなされた後遅くとも入札前までに,入札に参加するJVの主
となる本件慣行が適用されるゼネコン9社(被告P5,P143株式会
社,P47株式会社,P12株式会社,P61株式会社,P52株式会
社,株式会社P66,株式会社P145,P91株式会社)の担当者に
対して,具体的な入札金額を伝えたり,又は見積金額を尋ねて協力を依
頼し,上記ゼネコン9社との間で,被告P13が組むJVが落札できる
よう,各ゼネコンが結成したJVに伝えられた入札金額で入札したり,
見積金額を被告P13に確認することにより,被告P13が結成したJ
()Vの上記入札金額による落札を妨げないこととするとの合意個別談合
がなされ,この談合に基づいて,被告P13が結成したJVが,予定ど
おり本件工事3を落札したものと認められる。
(イ)この点に関して,被告P13は,P38の供述が,自らが体験して
ない内容を供述しているとして信用できない旨主張するが,P38は,
自らP25に対して被告P13が受注希望者となるべく活動をした旨供
述しているのであって,P38が,本件工事3の入札がされた平成10
年6月22日当時,被告P13P40営業所の所長であった者であり,
被告P13が実際に本件工事3の入札業務を行っていたとするP41も
P38の部下であった者であることからすれば,P38の供述は,自ら
体験した事実又はP41から聞いていた業務内容などを,自らの記憶に
従って供述しているものであるということができ,少なくともその供述
された範囲における内容の信用性はあるというべきである。
また,被告P13は,他のゼネコンの担当者の供述が公正取引委員会
審査官の作文にすぎず,信用性がない旨主張するが,いずれの調書にお
いても,読み聞かせて間違いない旨確認した後に署名,押印させた旨の
記載及び各供述者の署名,押印があること,上記各供述は,例えば,P
149の供述は,受注予定者の決定に至る経緯や工事希望票の提出依頼
を受けた経緯についてはある程度具体的であり,また,P156におい
ては,明確にP41から工事希望票の提出依頼があったなど,各供述者
によって,供述の具体性やその経緯において,本件工事3の入札を巡っ
ての関与や関心の度合いに応じた相応の違いがあることからすれば,上
記担当者らの各供述が,いずれも公正取引委員会の審査官による作文で
あるとはいい難い。
()本件工事44
ア当事者の主張の骨子
(ア)原告らの主張
被告P6は,本件工事4につき,工事現場が自社の営業所に近く,周
辺の状況を把握していたことから,受注を希望しており,基本合意によ
り,受注予定者となった。被告P6は,公社が入札予定を公表する前,
P88株式会社に対し,自社が本件工事4の受注を希望していることを
伝え,少なくともP53株式会社,P74株式会社及び株式会社P66
に対し,工事希望票の提出を依頼し,上記各ゼネコンは,被告P6が本
件工事4の受注予定者であると認識した上で工事希望票を提出した。公
社が本件工事4の入札参加業者の指名を行った後,被告P6はP19株
式会社とJVを組み,入札前までに,公社から指名を受けた被告P2,
株式会社P66及びP88に対し,入札してもらいたい金額を連絡し,
,,入札予定金額を確認したり又は自社の入札予定金額を伝えるなどして
被告P6とP19株式会社のJVが落札できるよう,同JVの入札金額
より高い金額による入札をするよう依頼した。上記各ゼネコンは,自社
が組むJVに被告P6が組むJVの入札金額よりも高い価格であること
を認識した上で,入札に参加し,被告P6が組むJVに工事予定価格近
似の金額で落札できるよう協力した。
(イ)被告P6の主張
本件工事4における談合の合意は否認する。
(ウ)被告P2の主張
被告P6が被告P2に入札してもらう価格を連絡し,又は被告P2の
入札価格を確認し,若しくは被告P6の入札価格について確認を受けた
こと,被告P2が被告P6の結成したJVの入札価格よりも高い価格と
なることを認識して入札に参加したことは否認する。
イ公正取引委員会における事情聴取での関係者の供述
(ア)被告P6のP160(以下「P160」という)の供述。
証拠(甲サ100,352,353)及び弁論の全趣旨によれば,次
の事実が認められる。
aP160は,昭和57年4月に被告P6に入社し,平成2年に同社
P161支店P162営業所に配属され,平成7年に同営業所課長,
平成10年に同営業所次長となり,本件各工事の入札当時,同営業所
次長として勤務していた者であり,平成13年4月20日に同営業所
長となった者である。なお「町田市公共下水道ε汚水枝線その2工,
事」とは,本件工事4のことである。
bP160は,平成13年6月19日に公正取引委員会において行わ
れた同委員会審査官からの事情聴取に対し,次のとおり供述した。
「町田市公共下水道ε汚水枝線その2工事」のことなどについて「
申します。
当社とP19のジェイブイが落札したεの物件については,この物
件についても,δの物件ですから,当社の営業所に近い,工事場所の
,,状況も把握している近隣状況も分かっているという物件でしたから
前々から熱心に営業活動をしていた物件でした。当社が是非取りたい
と思っていた物件でしたから,他のゼネコンに対しても折りに触れ当
社が一所懸命営業しているという話はしていると思いますし,当社営
業所の直ぐ側の物件でしたから,他のゼネコンからこの物件について
当社が熱心に営業しているのかを聞いてきたことがあったと記憶して
います。これらの話が,具体的にどこにしたのか,どこからあったの
かは覚えていないのですが,この物件の公表が平成▲年▲月▲日で,
前のP163所長が亡くなった日と同じでして,ばたばたとした時期
でしたから,そういう話は物件公表の前だったと思います。前のP1
63所長がなくなった後は,大変だったという記憶しかなく,仕事の
話になるとほとんど覚えていないような状況です。ただ,この物件に
ついても,是非取りたいということで,実行予算ベースで積算し入札
には臨んでおります」。
cP160は,平成13年10月4日に公正取引委員会において行わ
れた同委員会審査官からの事情聴取に対して次のとおり供述したた,(
,,,だし問答形式の部分については質問の要旨を括弧書きにして示し
回答部分のみを引用する。。)
「平成10年9月14日に入札執行の町田市興業下水道ε汚水枝線
その2工事を,町田市所在のP19株式会社とのジョイントベンチャ
ーによって落札受注しております」。
「お示しのシステム手帳については…(中略)…提示のページの9月
14日の欄に書かれています「P11入札町田市δ10:00−
入札」等の記載につきましては,P11公社が,1998年,すなわ
ち平成10年の9月14日に入札を執行した「町田市公共下水道ε汚
水枝線その2工事」略して「ε工事」に関する記載であることが分か
ります。ε工事に関する入札へは,ジョイントベンチャーとしての参
加でしたが,その「親」として参加したゼネコンは,当社の他,P7
4株式会社,株式会社P66,P56株式会社,P88株式会社,P
89株式会社,P53株式会社,P2株式会社と,さらに私がゼネコ
ンであると理解していますP164株式会社及びP165株式会社で
。,,した入札結果は当社とP19が結成したジョイントベンチャーが
確か1回目の入札で落札したと思います。
お示しの手帳の「9月14日の欄」に書かれています「①
②③100万円以内切」につきましては,¥338,000,000-¥331,500,000-
ε工事の入札に関して書かれたもので,その入札価格に関するもので
。,,あることは理解できますまた入札3回目分について書いたもので
「③100万円以内切」との表し方でもありますから,入札の結果価
格を書いたものではなく,入札の予定価格を書いたものであることが
理解できます」。
(記載を誰かが頼んだものか,それとも決めたものか分かるかとの質
問に対して)
「できません。他の会社の予定した価格ですし,他の会社の人が書
かれたものですから,私には分かりません」。
(被告P6における本件工事4の担当者が誰かとの質問に対して)
「私でした。時期的に前々任の営業所長が死亡し,前任所長のP1
66が赴任する前に営業活動をした物件でしたから,営業所長は営業
活動にタッチしませんでした」。
(被告P6が本件工事4に対して受注を希望していたかという質問に
対して)
「強く受注意欲を持ちました。その事情などは,当社のP162営
業所から工事現場がすぐ近くですし「山がよい」といわれますけれ,
ど,土質がよい所で工事進捗がよさそうでしたから,工事費用が安上
がりになるとみれましたし,地元での工事ならば,工事施工の件で地
元の方達からスムーズに了解が得られるとの見方もありました」。
(他のゼネコンの担当者に対する働き掛けの内容についての質問に対
して)
「機会があってお会いしたり,話をする機会がありましたときに,
私は,工事に関連する当社としての条件を話したり,熱心に営業活動
をしてきていて,強く受注意欲を持っている旨話したと思います」。
(上記働き掛けをした目的につき質問されて)
「世間話的なものであったと思います。その相手方は不特定多数で
,。」あり誰かに具体的に頼んだといったものではなかったと思います
(他のゼネコンが多数であったのかという質問に対して)
「不特定の方との意味です。人数については,3人位だったかも知
れませんし,もっと多かったかもしれませんが,よく覚えておりませ
ん」。
(工事希望票の提出依頼をしたかの質問に対して)
「覚えがありません」。
(公社発注の土木工事の入札において,指名希望票を提出する慣行の
有無の質問に対して)
「慣行とまで言えるかどうかまで分かりませんが,個別的にはある
かも知れません」。
(何らかの言辞をして,工事希望票の提出を依頼したというケースが
あったのではないかとの質問に対して)
「具体的に当社から頼んだことでないなら断定はできませんが,何
らかの言辞が依頼したものと取られて,結果的に入札に参加してもら
れたとのことはあり得ます」。
(,)上記供述が本件工事4には当てはまらないのかとの質問に対して
「分かりません」。
(本件工事4について,複数のゼネコンの担当者が協力依頼を受け
たと供述しているが,本当に分からないのかという質問に対して)
「受注意欲を強く持っている旨の話しをゼネコン他社の方にした記
憶はあります。しかし,結果的に,その社が指名を受けられたかどう
か分かりません」。
(被告P6において,公社の入札において,2回目,3回目の入札金
額について,確定的な金額を決めて入札に参加するかとの質問に対し
て)
「通常2回目まで,ある程度,この位という価格を定めることはあ
ります。確定的な価格までは無理です」。
(被告P2から被告P6に入札価格を尋ねられたことがあったかとい
う質問に対して)
「ありません」。
(ゼネコン数社の担当者が被告P6の担当者から協力依頼されたとい
う供述があるが,そのような依頼をした記憶があるかとの質問に対し
て)
「その覚えはありません」。
(工事予定価格の99.7パーセントの価格を競争して落札したもの
と考えているのかとの質問に対して)
「競争した結果だと思います」。
(イ)被告P2のP167(以下「P167」という。)の供述
証拠(甲サ356)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められ
る。
aP167は,昭和54年4月に被告P2に入社し,平成7年6月か
ら同社P110支店営業第一部P111営業所に係長として赴任し,
平成9年4月に同営業所の課長補佐となり,本件各工事の入札当時,
同営業所の課長補佐として土木及び建築工事に関する営業業務を担当
していた者である。
bP167は,平成13年9月26日に公正取引委員会において行わ
れた同委員会審査官からの事情聴取に対して,要旨,次のとおり供述
した。
(a)P167は,被告P2が出席した公社が発注する工事に関する
入札,説明会のほとんどについて,実際に出席していた。
(b)P167は,出席した入札においては,同営業所の所長である
P109から指示に基づき入札をしていた。P167は,P109
から入札する金額を指示されると,その金額をシステム手帳にメモ
するようにしていた。
(c)上記システム手帳の平成10年9月14日の欄には「①,
②③100万円切」との記載があり,同¥338,000,000¥331,500,000
じ欄内に「P11入札町田市δ10:00」との記載がある。これ
は,公社が発注した本件工事4の入札に関する当社が組んだJVの
入札予定金額である。P167は,本件工事4の入札には,一人で
参加し,上記入札予定金額は,入札日の前週の金曜日ころに,P1
09に指示され,その金額を記載したものである。
指示された金額のうち「③100万円切り」とは,3回目の入,
札分の金額であり,2回目最低札の価格から100万円を限度とし
て引き下げた価格をもって入札するとの意味である。
(d)上記システム手帳の平成11年7月19日の欄には「10:,
00P11町田,公共下水入札(P2・P16JV「①)」,
②③」との記載がある。これら¥305,000,000-293,500,000-292,000,000-
の記載は,平成11年7月19日に入札のあった本件工事7につい
て,当社と株式会社P16とのJVの3回目の入札までの各入札予
定金額である。同入札にもP167のみが出席し,上記システム手
帳に記載した入札予定金額は,入札日の前週の金曜日ころ,P10
9から指示を受けて記載したものである。この件についても,なぜ
事前に3回目の入札分まで入札予定金額を所長が定めたのか,その
経緯などは知らない。
(ウ)被告P2のP109の供述
a証拠(甲サ145)によれば,P109は,平成13年6月8日に
公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対
して,次のとおり供述したことが認められる(なお「町田市δその,
2工事」とは本件工事4のことである。。)
「次に,番号29の町田市δその2工事ですが,この物件はAとB
のジェイブイ物件で,P6・P19ジェイブイが落札した物件です。
この物件の入札日は平成10年9月14日で,まだγ駅第5号工事の
入札が行われていない時期でしたので,前の2件と同様,当社として
は受注意欲のない物件でした。P6のP160さんは,前からP16
8営業所にいて,今年の4月ころに所長になられたようですが,当社
と同じく町田市を中心に活動している会社の人で,私も親しくしてお
ります。また,P160さんの前任の所長だったP166さんも知っ
ております。この物件について,P6から当社に受注したいので協力
して欲しいという話があるとすれば,P166さんかP160さんか
らで,P6はこのδの辺りで工事をしていたという記憶がありますか
ら,何らかの立地条件があって,受注意欲を持っていたのだろうとは
思いますが,実際に協力して欲しいという話があったかどうかは記憶
がはっきりしません。この物件について,協力して欲しいという話が
あれば,当社としては受注意欲のない物件でしたから,分かりました
といって協力していると思います」。
b証拠(甲サ357)によれば,P109は,平成13年10月2日
に公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に
対して,次のとおり供述したことが認められる(ただし,問答形式の
部分については,質問の要旨を括弧書きにして示し,回答部分のみを
引用する。。)
「平成10年9月14日の欄に記載があります「①②¥338,000,000-
③100万円以内切」との記載につきましては,私の指¥331,500,000-
示に基づき入札会で入札するP167が,私が指示した当社として予
定する予定価格を書いたものとみられます。この入札工事物件につき
,「」,ましては同じ欄内にP11入札町田市δと書いておりますが
先程提示の当社の入札参加物件一覧表によれば,P11公社が平成1
0年9月14日に入札執行の「町田市公共下水道ε汚水枝線その2工
事」とみられます。この略して「ε工事」は,当社は町田市所在のP
169株式会社とジョイントベンチャーを結成して入札参加してお
り,入札結果は,ゼネコンであるP6さんとP19が結成したジョイ
ントベンチャーが落札しております。3回目の入札予定価格として書
かれています「100万円以内切り」とは,2回目最低札の価格から
引き下げられている価格です」。
(被告P2における入札金額の決定権者が誰かとの質問に対して)
私が定め,P167に指示した金額です。
()本件工事4の入札金額について他社と調整したかとの質問に対して
当社として私独自の考えで定めたと記憶しており,他の入札参加者
の担当者と連絡を取って相談するといったことを行った記憶はありま
せん。
(2回目の入札金額は「②」という金額が入札金額な,¥331,500,000-
のかとの質問に対して)
違います。これは,2回目においての引き下げ限度価格です。
(2回目の入札において,1回目の最低札価格が引き下げ限度価格以
下であった場合どうするのかとの質問に対して)
「③」として書かれていますが,1回目最低札価格から100万円
の限度で引き下げた価格をもって入札するものです。その趣旨が私か
らの指示です。
(③100万円切」の意味に関する供述を変遷するのかとの質問に「
対して)
そうです。2回目の入札についての価格基準です。
ですから,このケースで札が2回目に進んだ場合には,1回目の最
低札の価格いかんによって,予定した3億3150万円を上回る最低
札価格であったときには,最低札価格より低い3億3150万円以上
の価格をもって入札し,3億3150万円を下回る最低価格だったと
きには,予定した価格をもっては入札できませんから,1回目最低札
の価格から100万円を限度として引き下げた価格をもって入札する
とのことになります。
(3回目の入札金額はどうするのかとの質問に対して)
2回目最低札価格から,2回目入札の場合と同様に,やはり100
万円を限度として引き下げた価格をもって入札することになります。
入札辞退は発注者に対する手前行う訳には参りません。
(被告P2には,受注意欲はないのかとの質問に対して)
是非とも取りたいとの物件ではありませんでした。なお,一般的に
は,積算を行ってみた上での採算ベースがありますし,落札を目指す
姿勢は,必ずしも引き下げる幅で表わせるとのものではありません。
(P109の供述によると,P109が2回目の入札のために指示し
た金額について,本件工事4のように,最低限度価格であったり,本
件工事7のように,2回目の入札において具体的な入札金額であった
りという違いあるが,そのような区別をする理由についての質問に対
して)
,,特にありませんが町田市公共下水道ζ等汚水枝線工事のケースは
P14のP170所長と打合せ済みの価格だったからです。
(P167の供述との入札金額に関する説明の違いについての質問に
対して)
私の説明が正しいものです。定めて指示したのは私ですから。
(エ)P88株式会社のP171(以下「P171」という。)の供述
証拠(甲サ203,241)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が
認められる。
aP171は,昭和54年5月にP88株式会社に入社し,昭和60
年6月に同社P172支店P173営業所長となり,本件各工事の入
札当時,同営業所長として勤務していた者である。
bP171は,平成13年3月15日に公正取引委員会において行わ
れた同委員会審査官からの事情聴取に対して次のとおり供述した甲,(
サ241。)
「平成10年度の物件で当社が入札に参加した物件について申しま
すと平成10年9月14日に入札が行われましたP11公社の町田市
公共下水道ε汚水枝線その2工事をP6・P19JVが参加しており
ますが,この物件もP6P162営業所のP160さんからP6が本
命となるよう協力依頼を受け,P6側からの連絡のあったと思います
が,その入札金額で入札に臨み,P6が受注できるよう協力いたして
おります」。
(オ)株式会社P66のP146の供述
証拠(甲サ62)によれば,P146は,平成13年10月3日に公
正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対し
て,次のとおり供述したことが認められる。
「表の番号19番「町田市公共下水道ε汚水枝線その2工事」は,落
札したP6が本命でした。この物件では,P6P162営業所のかたか
ら工事希望票の提出依頼を受け申し込んだところ指名され,当社は地元
業者P120とJVを組んで当社がJVのスポンサーとして入札に参加
した物件です。そして,入札日前にP6P162営業所のかたから当社
に札の連絡があって,当社は連絡があった札価格で応札してP6の落札
に協力した物件です。工事希望票の提出依頼や札の連絡を当社にしてき
たのは,P6のだれであったかまでは思い出せませんが,いずれにして
もP6P162営業所のかたからだったのは確かです」。
(カ)P74株式会社のP174(以下「P174」という。)の供述
証拠(甲サ93,106,189)及び弁論の全趣旨によれば,次の
事実が認められる。
aP174は,昭和42年4月にP175株式会社に入社し,昭和4
7年8月に同社がP74株式会社に吸収合併された後も勤務を継続
し,平成6年4月に同社P176支店第一営業部長兼P177営業所
長になり,平成9年4月からは,営業部長の兼任がなくなり,本件各
工事の入札当時,同営業所長として勤務していた者である。
bP174は,平成13年4月12日に公正取引委員会において行わ
れた同委員会審査官からの事情聴取に対して次のとおり供述したな,(
お「24番の物件」とは本件工事4のことである。,。)
「24番の物件はP11公社発注「下水道工事」の物件です。工事
の公表直前,P6P162営業所のP160さんから希望して参加し
てほしいと頼まれた物件で,当社はP119とJVを組んで申し込み
ました。P6とP19にどのような本命となり得る条件があったかま
では思い出せませんが,お付き合いで参加した物件ですから,当然,
私は本命のP6とP19JVが落札できるように協力して札入れをし
ています」。
(キ)P53株式会社のP158の供述
証拠(甲サ81)によれば,P158は,平成13年9月26日に公
正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対し
て,次のとおり供述したことが認められる。
「表の番号18番「町田市公共下水道ε汚水枝線その2工事」は,落
札したP6P168営業所のP160さんかP178さんから工事希望
票の提出依頼を受け申し込んだところ,当社が指名された物件だと思い
ます。この物件も当社が受注しようと思って申し込んだ物件ではありま
せんから,高めの積算で応札して,P6JVの落札に協力しておりま
す」。
(ク)P56株式会社のP179(以下「P179」という。)の供述
証拠(甲サ69,142,143)及び弁論の全趣旨によれば,次の
事実が認められる。
aP179は,昭和44年にP56株式会社に入社し,平成4年に同
社営業所長になり,平成11年11月にP180株式会社に出向する
までの間,同職を務めていたものであり,本件工事4の入札当時は,
上記営業所長として勤務していた者である。
bP179は,平成13年5月24日に公正取引委員会において行わ
れた同委員会審査官からの事情聴取に対して次のとおり供述したな,(
,「」,「」。)。お24番は本件工事426番は本件工事5のことである
「…24番,26番,27番は,私がP56P181営業所に在籍
していたときの財団法人P11公社発注の土木物件となります。
いまとなっては,記憶もあいまいで,この中のどの物件が本命から
,,受注協力を依頼され本命からの連絡のあった入札価格で札入れして
本命の落札に協力した物件であるのか,具体的にお話しすることはで
きません。しかし,先程も話しましたようにこの大半は,本命に協力
して本命が落札していると思います。
また,ゼネコン以外が落札している物件であっても,ゼネコン以外
の業者から入札価格の連絡が来たといったことはありませんし,この
場合でもゼネコンの本命から入札価格等の連絡があったものと思いま
す。そして,JVのサブになった場合は,本命業者から希望票を出す
ように依頼されますが,入札価格などの連絡はJVのメイン会社にす
べてを任せることになります」。
ウ被告P2のP167のシステム手帳(甲サ342)関係
証拠(甲サ342,356,357)及び弁論の全趣旨によれば,被告
P2のP111営業所課長補佐であったP167は,本件工事4の入札日
の3日前ころに,同営業所の所長であったP109から,本件工事4にお
いて被告P2とP169株式会社とが組んだJVの入札予定金額を指示さ
れ,P167において,所持していたシステム手帳に「①②¥338,000,000
③100万円切」と記載したことが認められる。そして,上¥331,500,000
記「①「②「③」という記載は,いずれも1回目,2回目,3回目」,」,
の各入札における入札予定金額を示すものであり「③100万円切」と,
は2回目の入札における最低入札金額から100万円を減じた金額をもっ
て入札することを意味するものとして,記載されたものと認められる。
そうであるとすると,P167が,本件工事4の入札日の3日前ころ,
P109から,被告P2が組むJVの同入札における1回目,2回目の具
体的な入札予定金額を指示されるとともに,3回目の入札に至った場合に
は2回目の最低入札金額から100万円の限度で減じた金額をP167に
おいて記載することを指示したという事実が認められる。
エ検討
前記前提事実及び前記1()エ並びに上記イ及びウの認定事実を踏まえ3
て,以下検討することとする。
被告P6のP160は,本件工事4を被告P6とP19株式会社とが組
んだJVが落札し,受注したことにつき,他の入札参加業者として指名さ
れたゼネコン等との間で受注調整行為をしておらず,上記落札は適正な競
争の結果である旨供述する。
しかしながら,前記1()エで述べたことに照らし,本件工事4は,被3
告P6が組んだJVにおいて,工事予定価格3億3394万1000円の
99.71パーセントに当たる3億3300万円で落札していることから
すれば,本件慣行を背景として本件工事4につき個別談合が行われたこと
が極めて強く疑われる。さらに,本件工事4の入札に参加したJVの主と
,,,,なる建設業者のうちP74株式会社株式会社P66P56株式会社
P88株式会社,P89株式会社,P53株式会社及び被告P2は,本件
慣行が適用されるゼネコンであり,各社で営業を担当していたP171,
P146,P174,P158は,本件工事4においても,被告P6が本
件慣行に基づいて受注予定者となり,何らかの受注調整行為がなされ,各
ゼネコンにおいて,被告P6が組むJVが落札できるよう協力したことを
認める供述をし,P179においても,受注調整行為があったことまでも
否定する供述はしていない。さらに,前記ウのとおりの認定事実からすれ
ば,被告P2も,本件工事4を受注しようとする積極的な意図がなく,入
札前には1回目の入札予定金額のみならず,3回目の入札予定金額に至る
まで決められていたのであって,他方,被告P2の上記各入札予定金額が
どのように積算等されたのかを明らかにしていないことからすれば,上記
入札予定金額は,受注予定者となるべきゼネコンから依頼された入札金額
であったと認めるのが相当である。
また,本件工事4の入札においては,本件慣行が適用されないP164
株式会社及びP165株式会社がJVの主となる建設業者として入札に参
加しているところ,P164株式会社とP182株式会社が結成したJV
が3億4900万円,P165株式会社とP123株式会社とが結成した
JVが3億6000万円と,いずれも工事予定価格を上回る金額で入札し
ていることからすれば,上記各建設業者が,入札に当たり,あえて高めの
金額で入札をしたものと推認することができる。
以上を総合すれば,本件工事4については,被告P6の担当者は,施工
場所が自社の営業所から近いことから,受注を希望し,本件慣行が適用さ
れるゼネコンに対し被告P6が受注を強く希望していること等を説明する
とともに,工事希望票の提出を依頼し,公社による指名がなされた後,遅
くとも入札前までに,入札に参加するJVの主となる本件慣行が適用され
るゼネコン7社(P74株式会社,株式会社P66,P56株式会社,P
88株式会社,P89株式会社,P53株式会社及び被告P2)の担当者
に対し,被告P6が結成したJVが落札できるよう協力を要請し,上記ゼ
ネコン7社との間で,各ゼネコンが結成したJVに入札してもらいたい金
額を伝えたり,又は見積金額を尋ねて確認したりするなどし,本件工事4
に係る入札に参加するゼネコンの間において,被告P6が結成したJVの
(),上記入札金額による落札を妨げないこととする合意個別談合がなされ
また,本件慣行が適用されない建設業者2社(P164株式会社及びP1
65株式会社)の担当者に対し,上記ゼネコン7社と同様の方法により,
被告P6が結成したJVが落札できるよう協力を要請し,上記2社の同意
を得,上記談合に基づいて,被告P6が結成したJVが,予定どおり本件
工事4を落札したと認められる。
()本件工事55
ア当事者の主張の骨子
(ア)原告らの主張
被告P7は,本件工事5につき,過去に関連する工事の施工実績を有
していたことから,受注を希望し,P25に受注意欲があることを伝え
て基本合意により受注予定者となった。被告P7は,公社が本件工事5
の入札予定を公示した後,10社程度のゼネコンに対して,被告P7が
受注意欲を有しており,受注予定者となる有利な事情を備えていること
を説明し,工事希望票の提出を依頼し,依頼を受けた各ゼネコンは,工
事希望票を提出した。公社が指名を行った後,被告P7は,株式会社P
20とJVを組み,入札までの間に,被告P7の担当者が,改めて,公
社から指名を受けたゼネコン(P74株式会社,P52株式会社,P5
6株式会社,株式会社P71,P61株式会社,P57株式会社,被告
P8)に対し,被告P7が受注できるよう協力を依頼し,受注予定者で
あることを認めてもらった。また,被告P7は,基本合意に含まれてい
ないP183株式会社及びP117株式会社に対しても,本件工事5の
JV説明会後に被告P7が受注を希望しており,その受注に協力する旨
依頼し,その了承を得た。被告P7は,入札日までの間に本件工事5の
入札に参加する各建設業者うち,数社の担当者から各社の見積価格の連
,,,絡を受けたほか残りの建設業者の担当者に対しては入札直前までに
被告P7の入札予定金額を伝えるなどして,被告P7と株式会社P20
とが組むJVに本件工事5を工事予定価格近似の金額で落札させた。
(イ)被告P7の主張
被告P7は,本件工事5につき,公社から指名を受けた他の建設業者
又はそれらが結成したJVの協力を得て落札したものではない。
(ウ)被告P8の主張
被告P8に関する部分は否認する。
イ公正取引委員会における事情聴取での関係者の供述
(ア)被告P7のP184(以下「P184」という。)の供述
証拠(66,139)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認めら
れる。
aP184は,昭和53年1月,被告P7に入社し,平成8年6月か
ら同社P185営業所長を命ぜられ,本件各工事の入札当時,同営業
所長として,P185営業所の営業統括責任者の地位にあったもので
ある。
bP184は,平成13年5月10日及び同月11日に公正取引委員
会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,要旨,
次のとおり供述した。
(a)本件工事5は,平成7年ころに被告P7と株式会社P20とが
組んだJVが施工した下水道工事に係る下水管に下水管を繋げる工
事であり,被告P7が受注予定者となるのに有利な事情を有してい
た工事であったことから,受注を強く希望していた。
そこで,P184は,平成11年2月ころ,平成7年ころに被告
P7が本件工事5の関連工事を施工した実績が記載された資料を持
参して,P25を訪れ,本件工事5の受注予定者になりたいとの相
談をした。P25は「他にも他社が持ってきているけど,この立,
地があれば良いんじゃない」というような回答をしたことから,。
P184は,被告P7が受注予定者になれるとの心証を得た。
その後,P184は,本件工事5の受注を希望していた他の建設
業者の担当者から「P184さん,よかったね」と言われたこと。
から,この担当者が,P25のもとに相談をしに行った際,P25
から被告P7が受注予定者になるために有利な事情を有しているこ
とを言われ,当該建設業者が受注をあきらめたと考えた。
また,P184は,P25に相談に行った後,念のため,P29
株式会社のP31のもとを訪れ,被告P7が受注予定者となるため
の有利な事情を有していることやP25への相談をした経緯,相談
結果を伝え,P31のもとに本件工事5の受注を希望する他の建設
,。業者が相談をしに来た場合には上記内容を伝えるよう依頼をした
(b)P184は,本件工事5の公示前後,本件工事5の入札に参加
すると考えられるゼネコン約10社に対し,被告P7が受注予定者
となる有利な事情を有していることを説明し,受注予定者となるこ
とを理解してもらい,可能であれば,工事希望票の提出を依頼して
いた。
(c)P184は,公社による指名後,指名されたゼネコンのうち,
工事希望票の提出を依頼していない業者に改めて,被告P7が受注
予定者であり,受注に協力するよう依頼した。
具体的には,P74株式会社については,公社による指名後,同
社P177営業所長のP174に直接会い,協力を依頼し,了承し
てもらった。また,P52については,公社の指名後,P156に
会い,協力を依頼し,了承してもらった。P56株式会社について
は,本件工事5の公示前,P179に対し,電話で協力を求め,工
事希望票の提出を依頼し,了承してもらった。株式会社P71につ
いては,本件工事5の公示後,同社P154営業所長のP153に
会い,協力及び工事希望票の提出を依頼し,了承してもらった。P
61株式会社については,本件工事5の告示後,同社P186支店
のP187(以下「P187」という。)に会い,本件工事5の協力を
求めるとともに,工事希望票の提出を依頼し,了承してもらった。
P57株式会社については,同社P107営業所長のP104又は
,,,P188どちらかに対し訪問し又は電話で理解と協力を依頼し
了承してもらった。
(d)P183株式会社及びP117株式会社は,いずれも横浜に本
社を構えている建設会社であり,被告P7も本社が横浜にあったこ
とから,付き合いがあった。P184は,本件工事5のJV説明会
後,P183株式会社についてはP189支店長に,P117株式
会社についてはP190営業所長に,各協力を依頼し,了承しても
らった。
(e)P184は,本件工事5の入札に参加するJVの主となる建設
業者においては,各社で積算を行い,見積りをすると考え,入札会
場において,各社の入札金額を確認すれば足りると考えていたこと
から,各建設業者に対して入札金額の連絡等はしなかった。P18
4は,入札日の前,数社の建設業者の担当者から,電話で,各社の
見積金額が示され,その金額で入札してよいかと確認されたことか
ら「それでお願いします」と回答した。,。
P184は,入札の約1時間前,入札会場のロビーにおいて,見
積金額の確認をしていない建設業者の担当者に会ったところ,各担
当者から自社の見積りを行っていないことから,被告P7の入札予
定金額を伝えるよう求められたため,各担当者に被告P7の入札金
,,額を伝えたほか自社で見積りをしていた建設業者の担当者からは
当該見積金額による入札の確認を求められたため,その場で同金額
による入札をしてよいことを確認した。
以上の経緯により,被告P7と株式会社P20とが組んだJVが
本件工事5を落札し,受注することができた。
(イ)株式会社P71のP153の供述
証拠(甲サ84)によれば,P153は,平成13年6月12日に公
正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対し
て,次のとおり供述したことが認められる(なお「町田市公共下水道,
η汚水枝線その14工事」とは本件工事5のことである。。)
「31番の平成11年3月23日入札の「町田市公共下水道η汚水枝
線その14工事」は,当社とP191とのJVで入札に参加し,P7と
P20のJVが落札しております。P7のP184所長は,当営業所の
P192前所長と年齢が近いということもあり,その関係で,今でも何
回かは当営業所に出入りされておりまして,そのときにでも,工事希望
票を出すように頼まれて申し込んだのではないかと思います。P7から
入札価格の連絡があったかどうかまでは覚えておりませんが,結果的に
は,P7JVが受注しております」。
(ウ)P61株式会社のP187の供述
証拠(甲サ8,91)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認めら
れる。
aP187は,昭和41年3月15日,P61株式会社に入社し,平
成6年1月1日付けで同社P193本社P186支店営業部長を命ぜ
られ,平成13年1月31日に退職するまで,同支店において営業業
務に従事していた者である。なお「27番の物件」とは,本件工事,
5のことである。
bP187は,平成13年6月18日に公正取引委員会において行わ
れた同委員会審査官からの事情聴取に対して,次のとおり供述した。
「27番の物件は,当社としては条件はありませんでしたので社内
的に受注目標物件として掲げている物件ではありませんでした。この
物件は,叩き合いになった記憶もありませんので,受注したP7から
希望票を出してほしいと依頼された物件かも知れません。といいます
のも,この物件については,指名実績を作る目的や社内的に受注目標
物件として掲げていない物件でして,私や支店長の判断で希望票を提
出した記憶はないからです。したがって,この物件は落札したP7か
ら希望票を出してほしいと依頼されていると思います。P7から依頼
があったとすれば,P7P185営業所のP184所長からではなか
ったかと思います。そして,この物件は当社がP194とJVを組ん
で当社がJVのメイン業者となっています。入札日の前日までにP7
P185営業所のP184所長から札の連絡をもらって,当社はその
価格で応札してP7が落札できるよう協力していると思います」。
(エ)P74株式会社のP174の供述
証拠(甲サ93)によれば,P174は,平成13年4月12日に公
正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対し
て,次のとおり供述したことが認められる(なお「28番の物件」と,
は,本件工事5のことである。。)
「28番の物件は,P11公社発注「下水道工事」の土木物件です。
この物件は,P7とP20がJVを組んで落札した物件ですが,工事の
公表直前,P7のP184P185営業所長から近隣で前もやっている
との条件を提示され,希望して参加してほしいと頼まれた物件で,当初
はP195とJVを組んで申し込みました。当社はお付き合いで参加し
た物件ですから,当然,私は本命のP7とP20JVが落札できるよう
に協力して札入れしています」。
(オ)P57株式会社のP104の供述
証拠(甲サ144)によれば,P104は,平成13年5月24日に
公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対し
て,次のとおり供述したことが認められる。
「21番の平成11年3月23日入札の「町田市公共下水道η汚水枝
線その14工事」は,当社はP108とのJVで入札に参加し,ゼネコ
ンのP7とP20JVが落札しております。これもP7から受注意欲を
ピーアールされたものと思いますが,当社としては受注意欲のない工事
であり,受注意欲がないということは分かったことと思いますが,概算
で積算し,入札に臨み,結果的にはP7のJVが入札できるように協力
したことになります」。
(カ)P52株式会社のP156の供述
証拠(甲サ164)によれば,P156は,平成13年6月5日に公
正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対し
て,次のとおり供述したことが認められる。
「18番の平成11年3月23日入札の「町田市公共下水道η汚水枝
線その14工事」は,当社とP196とのJVで入札に参加し,P7と
P20のJVが落札しております。この工事は,JVのスポンサーとな
ったP7P185営業所のP184所長からであったと思いますが,受
注意欲があるということをお願いされ,当社は,それを理解し,工事希
望票を出しました。そして,入札の前日までにはP7から入札価格の連
絡を受け,その価格で入札に臨み,P7のJVが落札できるよう協力し
ました」。
(キ)被告P8のP170(以下「P170」という。)の供述
証拠(甲サ240,295)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が
認められる。
aP170は,平成13年当時,被告P8P197営業所所長として
勤務していた者であり,本件工事5の入札当時,同営業所において土
木工事の営業に従事していた者である。なお,町田市公共下水道汚水
枝線その14工事とは,本件工事5のことである。
bP170は,平成13年5月10日に公正取引委員会において行わ
れた同委員会審査官からの事情聴取に対して,次のとおり供述した。
「入札一覧表の方で説明しますと,27番の町田市公共下水道汚水
枝線その14工事については,P7のP184P185営業所長から
工事希望票の提出をお願いされたような記憶があります」。
(ク)P56株式会社のP179の供述
証拠(甲サ69)によれば,P179は,平成13年5月24日に公
正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対し
て,前記()イ(ク)のとおり供述し,記憶があいまいではあるが,本件4
工事5についても,受注予定者に協力し,受注予定者となった業者が受
注したと思う旨供述したことが認められる。
ウ検討
前記前提事実及び前記1()エ並びに上記イの供述の内容を踏まえて,3
以下検討することとする。
被告P7のP184は,本件工事5について,関連工事の施工実績を有
していることから,受注を強く希望し,P25やP31に対して受注予定
者となるべく,本件慣行に従った方法により相談をし,さらに,ゼネコン
約10社に対して受注への協力を依頼したほか,工事希望票の提出を依頼
し,公社による指名後には,改めて指名された建設業者に対して被告P7
の組むJVが落札できるよう協力を依頼し,入札前までに,入札に参加す
る各JVの入札予定金額を確認したり,被告P7の入札予定金額を伝える
などの方法により受注調整を行った旨供述しているそして前記1(),。,3
エで述べたことに照らし,本件工事5は,被告P7株式会社と株式会社P
20とが組むJVにおいて,工事予定価格4億9460万円の99.06
パーセントに当たる4億9000万円で落札していることからすれば,本
件慣行を背景として本件工事5につき個別談合が行われたことが強く疑わ
れる。さらに,本件工事5の入札に参加したJVの主となるゼネコンの担
当者であったP153,P187,P174,P104,P156及びP
170は,本件工事5において,各社においては,本件工事5を受注する
意欲がなかったが,被告P7が受注意欲を有するということを説明された
旨供述し,P153,P187,P174,P156及びP170は,工
事希望票の提出を依頼された旨供述し,P187及びP156は入札金額
を伝えられた旨供述している。加えて,本件工事5における入札金額は,
被告P7と株式会社P20とが組んだJV以外の各JVは,いずれも工事
予定価格を上回る金額で入札していた。
以上を総合すれば,本件工事5については,被告P7の担当者が,関連
工事の施工実績を有することから本件慣行における受注予定者となること
を強く希望し,P25やP31に対して説明しその理解を求め,本件慣行
の適用があるゼネコン10社に対して被告P7が受注予定者となることの
理解を求めた上で工事希望票の提出を依頼し,公社による指名後,遅くと
,,も入札前までに被告P7が工事予定価格に近似の金額で落札できるよう
改めて指名された建設業者のうち,本件慣行が適用されるJVの主となる
ゼネコン7社(P74株式会社,P52株式会社,P56株式会社,株式
会社P71,P61株式会社,P57株式会社,被告P8)に対し,各ゼ
ネコンが結成したJVの入札予定金額を確認したり,入札して欲しい金額
を伝えるなどの方法により,被告P7が結成したJVが工事予定価格に近
似する入札金額により本件工事5を落札できるよう協力する旨依頼し,上
記ゼネコンとの間で,被告P7が結成したJVの上記入札金額による落札
を妨げないこととするとの合意(個別談合)がなされ,さらに,本件慣行
が適用されない入札に参加するJVの主となる建設業者2社(P183株
式会社,P117株式会社)各担当者に対し,被告P7が結成したJVが
,,,落札できるよう協力を依頼し上記2社の同意を得上記談合に基づいて
被告P7が結成したJVが,予定どおり本件工事5を落札したものと認め
られる。
()本件工事66
ア当事者の主張の骨子
(ア)原告らの主張
被告P9は,P21株式会社と組んだJVが本件工事6の前年度の下
水管工事と一体とされる立坑工事を落札していたという,受注予定者と
なる有利な事情があり,基本合意が成立しているゼネコンは,本件工事
6について被告P9が受注予定者であると認識していた。被告P9及び
P21株式会社は,公社が本件工事6を公示した後,ゼネコンに対し,
工事希望票の提出を依頼し,依頼を受けた各社は,基本合意に基づき,
被告P9及びP21が受注予定者であるとの認識の下,工事希望票を提
出した。公社は,Aランクの格付けの建設業者20社を指名したが,J
Vで主となる建設業者は,いずれも受注調整の仲間であるゼネコンであ
った。被告P9及びP21株式会社は,入札前までに指名を受けた各ゼ
ネコンに対し,被告P9が受注を希望していることを伝え,入札しても
らう金額を連絡し,又は入札予定金額を確認し,若しくは被告P9とP
21株式会社とが組むJVの入札予定金額の確認を受けることにより,
被告P9以外の上記各ゼネコンにおいて,入札において,被告P9が組
むJVよりも高い金額であることを認識した上で同金額で入札し,被告
P9が組むJVが工事予定価格近似の金額で落札できるよう協力した。
(イ)被告P9の主張
被告P9が受注した本件工事6については,原告らが主張するような
個別談合が行われた事実はなく,その証拠も存しない。また,原告らの
主張を前提としても,P64株式会社,P74株式会社,株式会社P7
3,P143株式会社,株式会社P45,P198株式会社,P90株
,,。式会社は本件工事6において競争関係にあったことは明らかである
イ公正取引委員会における事情聴取での関係者の供述
(ア)被告P9のP199(以下「P199」という。)の供述
証拠(甲サ111)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められ
る。
aP199は,昭和48年4月,被告P9に入社し,平成8年2月に
(),同社P200土木営業所当時の名称は土木本部の営業部長となり
平成11年7月に上記土木本部が土木P201支店に組織変更する
と,同支店P200土木営業所の副所長に昇任し,本件各工事の入札
,。当時被告P9の多摩地区における営業業務に従事していた者である
bP199は,平成13年6月12日に公正取引委員会において行わ
れた同委員会審査官からの事情聴取に対して,要旨,本件工事6は,
被告P9のダミコンが設計段階で参加しており,近隣での施工実績も
有していたことから,受注を希望して,営業活動を行っていた土木工
事であった旨供述した。
(イ)P21株式会社のP202(以下「P202」という。)の供述
証拠(甲サ78,234)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認
められる。
aP202は,平成10年4月から,P21株式会社P203土木支
店P204土木営業所において,多摩地区に所在する自治体などが発
注する土木工事に関する営業に従事していた者で,同年9月1日から
営業所長の役職にあった者である。
bP202は,平成13年6月1日に公正取引委員会において行わ4
れた同委員会審査官からの事情聴取に対して,要旨,次のとおり供述
した。
(a)本件工事6は,被告P9とP21株式会社とがJVを組んで施
工した立坑工事から発進したシールド工事であり,被告P9との間
で,本件工事6が発注され,両社が公社に指名された場合には,再
度JVを組むという合意ができていた工事であった。
(b)「財)P11公社平成11年5月13日」とのファックス(
(甲サ78)は,P21株式会社P204土木営業所から株式会社
P73のP150営業所にファックスしたものである。
P202は,株式会社P73,P69株式会社,P91株式会社
が本件工事6に関心を持っていると感じていたことから,本件工事
6が公表された際に,電話で連絡をするとともに,各社にファック
スで工事の件名等について連絡したものである。
P202は,上記ファックスにより,P21株式会社が本件工事
6の受注を強く希望しており,営業活動を行っていることを理解し
,。てもらいできれば工事希望票を提出してもらいたいと考えていた
P202は,土木工事の公表を伝えることにより,明確に工事希望
票の提出を依頼しなくても,各社において,P21株式会社が工事
希望票の提出を希望しているとの願望を,各社において理解してく
れると思っていた。
(c)本件工事6は,被告P9がJVの主となる建設業者としてJV
を結成し,入札に参加していることから,入札金額の積算について
。,,は被告P9に一任していたP202は本件工事6の入札に行き
被告P9からはP205が来ていた。
(d)公社が発注する土木工事については,ゼネコン間において,以
前行った工事の関連工事であったり,近隣に施工実績があったり,
提携コンサルタントが指名に入ったりしている会社が受注予定者と
なり,受注予定者となった会社が受注できるよう協力するという慣
行があった。
(ウ)株式会社P73のP149の供述
証拠(甲サ92)によれば,P149は,平成13年5月24日に公
正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対し
て,次のとおり供述したことが認められる(なお「町田市公共下水道,
θ幹線その2工事」とは本件工事6のことである。。)
「次に,23番の平成11年6月14日に入札が行われました町田市
公共下水道θ幹線その2工事についてご説明いたします。
この物件は,先ほど21番の物件についてお話しましたが,この物件
は21番の継続工事でありまして,当然,21番の工事を施工した実績
のあるP9とP21に本命となるための強い条件がありましたことか
ら,両者が本命となって受注いたしております。
この物件に関する申込みと協力の依頼は,公示後に,P21P204
土木営業所長のP202さんから私に対してありまして,私はその依頼
。,,に応じて申込みをした物件でありますこの物件も21番の物件同様
JVのサブ業者として参加したため,当社は札価格等の折衝は行ってお
りません」。
(エ)P64株式会社のP206(以下「P206」という。)の供述
証拠(甲サ186,187)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が
認められる。
aP206は,昭和46年4月に,P64株式会社に入社し,平成7
年4月に同社P207支店P208営業所に営業課長として赴任し,
平成13年4月に同営業所長に就任し,本件各工事当時,上記営業所
において,多摩地区の土木工事の営業業務に従事していた者である。
bP206は,平成13年6月15日に公正取引委員会において行わ
れた同委員会審査官からの事情聴取に対して,次のとおり供述した。
「お示しの文書は,この書面にも入札日の記載がございますが,平
成11年6月14日に入札が行われました町田市公共下水道θ幹線そ
の2工事に関する書面でありまして,この物件は,当社も入札に参加
した物件でありまして,入札の結果,P9とP21のJVが落札した
物件でありました。
この文書の左上に黒くマジックで塗りつぶして消してある箇所がご
ざいますが,この文書を透かして見ますと「99年5月14日1,
8時36分,P9㈱P200営業所」と印字がありますので,この物
件発注の公表の翌日である平成11年5月14日に,この物件を落札
したP9P200営業所から当社P208営業所宛てにファックス送
信されたものであることが分かります。
このファックス文書の意味としましては,今まで私がお話してきま
したように,この物件に関し,P9P200営業所の方から当社に対
して,この物件に関して工事希望票を提出して入札に協力してほしい
旨の連絡がなされ,当社はそれに応じて入札に参加し,P9とP21
JVの落札に協力したものであると考えます。
この工事は,先ほどP9と当社のJVが落札した物件でご説明致し
ましたように,下水道の立坑工事の後に発注される下水管シールド工
事であり,この工事の前年度に立坑工事が発注されており,今回の落
札業者と同じP9とP21JVが落札しております。ご説明いたしま
したとおり,立坑工事と下水管本体工事は一体のものと考えておりま
すので,P9とP21に強い立地条件が備わり,平成11年に発注さ
れた下水道本体工事は,P9とP21が本命業者と認められ,落札し
たものでありました」。
(オ)P64株式会社のP209(以下「P209」という。)の供述
証拠(甲サ188)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められ
る。
aP209は,昭和43年3月にP64株式会社に入社し,平成11
年4月1日から同社P207支店P210営業支店P208営業所長
に異動になり,本件工事6の入札当時,同営業所長として勤務してい
た者である。
bP209は,平成13年6月20日に公正取引委員会において行わ
れた同委員会審査官からの事情聴取に対して次のとおり供述した(甲,
サ188。)
「40番に記載のございます平成11年6月14日に入札が行われ
ました町田市公共下水道θ幹線その2工事に関しては,私がP208
営業所長になりまして間がない入札だったものですから,正直申しま
して,ほとんど記憶がないのが現状であります」。
「お示しの文書は,この物件の入札の日程等を記載したものであり
。,ますこの左上に黒マジックで塗りつぶしている個所がございますが
私は目が悪くてちょっと見にくいのですが,ここに審査官がおっしゃ
るには,この物件の公表の翌日の平成11年5月14日にP9P20
0営業所から送信された旨印字があるとのことですので,物件の日程
については,発注者から掲示されますし,建通新聞等でも情報を入手
できますので,あえてこの様な文書をファックス送信して来るという
ことは,入札に参加して協力して欲しいという意味であると考えます
が,実際は,申しましたとおり記憶がないのが現状でございます」。
(カ)株式会社P48のP126の供述
証拠(甲サ137)によれば,P126は,平成13年9月18日に
公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対し
て,次のとおり供述したことが認められる。
「次に,29番のP9・P21JVが落札した平成11年6月入札の
「町田市θ幹線その2工事」につきましては,20番の物件でご説明し
ましたが,20番の立坑物件と一体の工事であり,この29番の下水道
本体工事の物件は,20番で落札したP9・P21JVが本命となった
ものでした。この物件も20番の物件で当社が指名に入ったことから,
お付き合いするという私の判断で入札に参加いたしました。そして,入
札日前にP21P204土木営業所のP202さんからだったと記憶し
ておりますが,入札価格に関する電話が私にありまして,当社の見積り
価格をお伝えいたしました。入札には,お伝えした迷惑のかからない価
格で応札し,P9・P21JVの落札に結果的に協力いたしました」。
(キ)株式会社P48のP127の供述
証拠(甲サ86,112,233)及び弁論の全趣旨によれば次の
事実が認められる。
aP127は,昭和42年3月に株式会社P48に入社し,平成元年
9月に同社P125営業所に配属になり,本件各工事の入札当時,公
社が発注する土木工事の営業業務に従事していた者である。
bP127は,平成13年6月29日に公正取引委員会において行わ
れた同委員会審査官からの事情聴取に対し,次のとおり供述した。
「次に29番のP9とP21のJVが落札した「町田市公共下水道
θ幹線その2工事」についてご説明した,前に同JVがこの物件の立
坑工事を施工しており,この工事は下水管の本体工事でありました。
通常,私の経験では立坑物件を落札したゼネコンが,次に発注される
,,下水管本体の工事を受注するのが当然であると考えられておりまた
採算面においても立坑物件が落札したゼネコンが有利でありますこと
から,当社としては,当社の札入れ価格を高めに設定して入札に参加
しておりました。なお,当社が高めに設定した見積もり上がりをP9
の方にお伝えしたかも知れません」。
(ク)株式会社P71のP153の供述
証拠(甲サ84)によれば,P153は,平成13年6月12日に公
正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対し
て,次のとおり供述したことが認められる。
「33番の平成11年6月14日入札の「町田市公共下水道θ幹線そ
の2工事」は,P48と当社のJVが入札に参加し,P9とP21のJ
Vが落札しております。この工事は,当社としては勉強しておりません
でしたが,あわよくば受注意欲のある業者とひっつければという気持ち
で工事希望票を出したと思います。この工事は,シールド工法の工事で
あり,P9や他の2社くらいは希望している業者,勉強している業者が
いるという話は聞いておりました。P48も勉強しているという話を聞
いておりましたので,当社は指名の後,P48に対してJVを組んでも
らえるようお願いしております」。
(ケ)P74株式会社のP174の供述
証拠(甲サ93)によれば,P174は,平成13年4月12日に公
正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対し
て,次のとおり供述したことが認められる。
「37番の物件は,P11公社発注「下水道工事」の土木物件です。
この物件は,P9とP21がJVを組んで落札した物件ですが,工事の
公表直前,P9のP199P211営業所長から希望して参加してほし
いと頼まれた物件で,当社はP212とJVを組んで申し込みました。
当社は,お付き合いで参加した物件ですから,当然,私は本命のP9と
P21JVが落札できるよう協力して札入れしています」。
(コ)P50株式会社のP213(以下「P213」という。)の供述
証拠(甲サ138,290,325)及び弁論の全趣旨によれば,次
の事実が認められる。
aP213は,昭和44年4月にP50株式会社に入社し,昭和55
年7月に同社P214支店P215営業所に異動になり,平成5年に
同営業所営業課長に,平成8年に同営業所次長に昇格し,本件各工事
の入札当時,同営業所次長として勤務していた者である。
bP213は,平成13年8月30日に公正取引委員会において行わ
れた同委員会審査官からの事情聴取に対して,次のとおり供述した。
「その他には,当社はP9とP21のジョイントベンチャーが落札
した平成11年6月14日に入札執行の町田市公共下水道θ幹線その
2工事略して「θ幹線工事」の入札にもP69とのジョイントベンチ
ャーを組み参加しております。
θ幹線工事は,その立坑工事のいわゆる続きの工事であり,その立
坑工事を手掛けたP9が最も強い立地を持つ者でありましたが,当社
の場合,その工事現地の近くで平成7年ころ終えた東京都水道局発注
のシールド工法による上水道工事を手掛けた経過がありまして,これ
がP9さんに次ぐ立地になると考えられました。工事希望票の提出方
をP9さん等ゼネコンの担当者から依頼はなかったと記憶しており,
当社は,P9さんが事故を起こすなどしたなら,受注を期待できると
の思いでP11公社へ工事希望票を提出したと記憶しております。そ
して,指名を受けられ,そのジェイブイ説明会の折りであったか,そ
の説明会後ジェイブイ申請を行うまでの間であったか,いずれか記憶
がはっきりいたしませんが,P199さんかP205さんのいずれか
ら,私は「立坑を行っておりますので,よろしくお願いします」と。
いうような,θ幹線工事につき挨拶を受けたことを覚えております。
これに対して私は,同社が立坑工事を手掛けたことを承知しておりま
したし異存なかったですから,分かりましたと答えております。その
後,私はP9さんからのその依頼についてP216所長に報告してお
りますが,P216所長も異存なかったと記憶しております。
P9さんらジョイントベンチャーからの入札価格に関する依頼につ
きましては,私は依頼を受けた覚えがありませんから,あったかどう
か分かりません。私はP216所長から指示された価格をもって当社
らジョイントベンチャーとして入札しております」。
「,このθ幹線工事についての開札結果表に記載されていますとおり
当社らジョイントベンチャーとして10億9500万円で1回目を入
札したと思います。これがP9さんらジョイントベンチャー側から依
頼されたものかどうかははっきり申せません。P216から指示され
た価格は1回目分のみであったと記憶しております。ちなみに入札が
2回目に移ったケースでは,1回目分のみ用意してあったときでも,
担当者は大体,前回最低札の価格からどの位まで下げればほぼ落札と
ならないかの見当を金額規模により持っています。このケースならば
500万円くらいかと思います。
各ジョイントベンチャーの入札価格を見ますと,かなり接近してお
り,P9さんらジョイントベンチャーが相指名のジョイントベンチャ
ー側に頼んだものとの可能性はありますものの,そうとは断言できま
せん。
当社はP69さんとのジョイントベンチャーにより入札参加してお
りましたが,同社のこの件を担当された方はP217さんでした。同
社もこの件はP9さんが強いとの事情は承知しており,同じゼネコン
仲間でもありますから,当社らジョイントベンチャーとして,この物
件についてP9さんらジョイントベンチャーの落札に協力したとして
も異存ないはずで,そのあたりはジョイントベンチャーの親会社であ
る当社に任せていたと記憶しております」。
ウ検討
前記前提事実及び前記1()エ並びに上記イの供述の内容を踏まえて,3
以下検討することとする。
被告P9のP199は,被告P9が,本件工事6について,過去に関連
工事の施工実績があり,施行場所の近くに自社の施設を有していたことか
ら,受注を強く希望し,そのための営業活動を行っていたことは供述する
ものの,本件工事6の入札に当たり,何らかの受注調整行為が行われてい
たか否かについては具体的な供述をしていない。他方,P21株式会社の
P202は,本件工事6が発注される以前から本件工事6が発注される可
能性を考慮し,被告P9とJVを組むことについて同意を得ていたほか,
本件工事6が発注されると,受注意欲を有すると考えられるゼネコン3社
(株式会社P73,P69株式会社,P91株式会社)に対し,個別にP
21株式会社と被告P9とが受注を希望していることを示し,かつ,でき
るのであれば工事希望票を提出してもらう意図で,本件工事6に係るファ
ックスを送信した旨供述する。そして,前記1()エで述べたことに照ら3
し,本件工事6は,被告P9とP21株式会社が組むJVにおいて,工事
予定価格10億8681万4000円の99.37パーセントに当たる1
0億8000万円で落札していることからすれば,本件慣行を背景として
。,本件工事6につき個別談合が行われたことが極めて強く疑われるさらに
本件工事6の入札に参加したJVを組む各ゼネコンの担当者らによると,
本件工事6については,被告P9とP21株式会社が受注予定者となるた
めの極めて有利な事情を有していたことを認識していた旨供述している。
また,同担当者であるP149は,上記P202の供述と一致する供述を
しており,入札に参加したゼネコンである株式会社P48のP126は,
P202から工事希望票の提出を依頼された旨供述し,P127も,被告
P9に対して自社の見積金額を伝えた可能性があることを供述する。さら
に,相指名ゼネコンの担当者であるP174も,入札時に,被告P9とP
21株式会社とが組んだJVの落札に協力した旨供述している。加えて,
本件工事6の入札においては,被告P9とP21株式会社とが結成したJ
Vと株式会社P48と株式会社P71とが結成したJV以外の8JVの入
札金額は工事予定価格を上回る金額であり,各入札金額も接近していると
いえる。
以上を総合すれば,本件工事6については,被告P9とP21株式会社
が,本件工事6が公表される以前から,両社が結成するJVに受注させる
よう協力することに同意し,本件工事6が公表された後,上記両社の担当
者において,本件慣行に従って,他の本件慣行の適用のあるゼネコンに対
し,被告P9とP21株式会社が本件工事6の受注を希望していることを
伝え,両者が結成するJVが落札できるよう協力を求めるとともに,工事
希望票の提出を依頼し,公社による指名後入札までの間に,本件工事6に
参加するJVの主となるゼネコン9社(P143株式会社,株式会社P4
5,株式会社P48,P64株式会社,株式会社P114,P50株式会
,,,),社P90株式会社P74株式会社P91株式会社の担当者に対し
被告P9とP21株式会社が組んだJVが落札できるよう協力を要請し,
上記ゼネコン9社との間で,入札金額を伝えたり,又は見積金額を確認す
るなどし,被告P9が結成したJVの上記入札金額による落札を妨げない
こととするとの合意(個別談合)がなされ,この同意に基づいて,予定ど
おり本件工事6を落札したものと認められる。
()本件工事77
ア当事者の主張の骨子
(ア)原告らの主張
被告P8は,本件工事7につき,同工事が特定の工法(アイアンモー
ル工法)を使用していた関係で,設計の手伝いや工法の検討書の作成に
関与していたことから,受注を強く希望し,基本合意により受注予定者
。,,,となった被告P8は各ゼネコンに対し工事希望票の提出を依頼し
上記ゼネコンもこれに応じて工事希望票の提出をした。公社により本件
工事7に係る入札に指名された建設業者のうち,少なくともJVの主と
なる建設業者になる8社は,基本合意が成立したゼネコンであった。公
,,。社による指名がされた後被告P8はP22株式会社とJVを組んだ
被告P8は,入札前までに,指名を受けた各ゼネコンに対し,自社が受
,,注予定者であることを伝えるとともに入札を希望する金額を伝えるか
又は各ゼネコンがJVの主となるゼネコンとなるJVの入札予定金額を
確認し,上記各ゼネコンにおいても,被告P8とP22株式会社が組む
JVの入札金額よりも高額になることを認識した上で,入札に参加し,
上記JVが工事予定価格近似の金額により落札できるよう協力した。ま
た,基本合意関係がない建設業者であるP218株式会社とP219株
式会社のJV,P115株式会社とP220株式会社とのJVは,被告
P8が受注を希望していることを認識し,入札において,自社の組むJ
Vが被告P8の組むJVの入札金額よりも高額になることを認識した上
で,入札に参加し,同JVが工事予定価格近似の金額で落札できるよう
協力した。
(イ)被告P8の主張
被告P8が結成したJVが落札した本件工事7につき,原告が主張す
,。るような談合行為が行われた事実はなくそのような証拠も存在しない
また,原告の主張によっても,他の相指名業者であるP85株式会社,
P77株式会社,P92株式会社,P218株式会社,P115株式会
社を主たる建設業者とするJVが被告P8又はP22株式会社から協力
を求められたという主張,立証はなく,上記5JVとの間では競争行為
が行われていた。
(ウ)被告P2の主張
被告P8が被告P2に入札してもらう価格を連絡し,又は被告P2の
入札価格を確認したこと,被告P2が自社の入札価格が被告P8が結成
したJVの入札価格よりも高い価格となることを認識して入札したこと
については否認する。
(エ)被告P1の主張
被告P1がP121株式会社と結成したJVが入札に参加したことは
認め,その余は否認する。
イ公正取引委員会における事情聴取での関係者の供述
(ア)被告P8のP170の供述
証拠(甲サ240)によれば,P170は,平成13年4月20日に
公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対し
て,要旨,次のとおり供述したことが認められる。
a本件工事7については,P22株式会社の社長から,設計が発注さ
れる前に公社からJVで発注されそうな土木工事があるという情報を
得たのが,その営業活動を始めたきっかけであった。
bP22株式会社は,被告P8の下請会社が加入している会の会員会
社であり,社長が地元で顔も広く,本件工事の実施設計が発注された
という情報を得られた。被告P8は,設計会社から本件工事4におい
てアイアンモール工法を使用すると聞いたことから,設計の手伝いや
工法の検討書の作成に関与した。このような経緯から落札することが
できた。
(イ)被告P2のP109の供述
証拠(甲サ145,176,357)によれば,P109は,平成1
2年12月21日,平成13年6月8日及び同年10月2日に公正取引
,,委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して要旨
次のとおり供述したことが認められる。
a本件工事7は,被告P8とP22株式会社とが組んだJVにより落
札された工事である。
P109は,本件工事7が被告P8のグループ会社が製造している
特殊な機械を使用する工事であることから,被告P8が受注を希望し
ているかどうかを確認するため,親しかったP170に対し「お宅,
でやるの,やらないなら,機械を貸してもらってうちがやるよ」とい
うような質問をして,その応答振りから,被告P8が熱心に営業活動
をしており,受注する意思を有していることを知った。
,,またP170から被告P8が受注を希望している旨の連絡があり
その協力を依頼された。
,,,bP109はP170から1回目から3回目までの入札において
被告P2が組むJVの入札金額を伝えられ,その金額で入札する旨P
167に指示した。P167のシステム手帳の平成11年7月19日
の頁(甲サ176,343)には「10:00P11,町田,公共,
,()」,,「」,「」,「」下水入札P2・P16JVとありさらに①②③
として金額が記載されている。同記載は,本件工事7の入札における
被告P2の結成したJVの入札予定金額であり,P167に対して入
札を指示した際にP167が記載したものであると思われる。
P109は,P170との間で,本件工事7の入札前に被告P2が
結成したJVの入札金額について連絡をとっていた。ただし,その方
法について,P170から被告P2の入札金額が伝えられたものであ
ったか,被告P2が見積りをしてP170に確認してもらった金額で
あったかは,覚えていない。
cP109は,本件工事7の入札後,P170から,電話で被告P8
。()が受注できたことについて礼を述べられた電話連絡帳甲サ176
の「7月19日,16時30分「P14P170「P11の件で」」,
落札させていただき,ありがとうございました」との記載は,その。
ことが記されているものである。
(ウ)被告P2のP167の供述
証拠(甲サ356)によれば,P167は,平成13年9月26日に
公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対し
て,要旨,次のとおり供述したことが認められる。
aP167のシステム手帳の平成11年7月19日の欄の「10:0
¥305,000,000-0P11町田公共下水入札(P2・P16JV①,)」,「
②③」との記載は,本件工事7について,平293,500,000-292,000,000-
成11年7月19日に入札の執行があったこと,同入札における被告
P2と株式会社P16とが組んだJVの1回目から3回目まで各入札
における入札予定金額である。
bP167は,一人で本件工事7の入札に出席しており,上記システ
ム手帳へは,入札執行日の前週の金曜日ころ,P109から指示を受
けた金額を記載したものであり,同入札会においては,P109の指
示に従い被告P2が結成したJVに入札させた。
(エ)P18株式会社のP135の供述
証拠(甲サ349)によれば,P135は,平成13年5月15日に
公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対し
て,次のとおり供述したことが認められる(なお「町田市公共下水道,
ζ,ι汚水枝線工事」とは,本件工事7のことである。。)
「19ページの平成11年7月19日入札のP11公社発注の「町田
市公共下水道ζ,ι汚水枝線工事」に当社はP169とのJVで入札に
参加しております。この物件は,P14・P22がJVで落札していま
す。この物件につきましては落札業者であるJVの親のP14P221
営業所P170さんからピーアールの電話を受けました。この物件でP
14に条件があることを聞き,受注意欲があることを知りました。P1
4のP170所長以外に他のゼネコンさんからピーアールの連絡を受け
た記憶はありません。その後,積算の問い合わせがあり「当社はこの,
くらいの額で積算している」とお答えしています。この物件につきまし
ても簡易な積算をしておりますので当社に受注意欲がないことはP17
0さんには伝わっていることと思います。
当社は狙っていない物件については簡易な積算をおこなっておりまし
,。てお話しました2つの物件については簡易な積算を行っておりました
私は札の連絡を1回目から3回目まで詳細に受けたわけではなく,当社
の簡易積算を本命であるゼネコンに電話で答えておりました」。
(オ)被告P1のP99の供述
証拠(甲サ72)によれば,P99は,平成13年9月27日に公正
取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,
次のとおり供述したことが認められる。
「私が平成10年4月から平成12年7月まで,P100営業所長と
して赴任していた時代に本命の受注に協力した物件について挙げます
と,お示しの「別添入札参加物件一覧表(株式会社P1」と表題のあ)
る一覧表のうち,…(中略)…33番のP14・P22JVが落札した
「町田市公共下水道ζ,ι汚水枝線工事,…(中略)…37番のP1」
0・P23JVが落札した「町田市公共下水道κ雨水幹線立坑築造工
事,39番のP2・P24JVが落札した「町田市公共下水道λ汚水」
枝線その2工事」の以上4件です。全てP1は「お付き合い」で入札に
参加した,つまり,受注意欲のない,希望票の提出を依頼されたことに
より依頼されるままに提出したら指名に入ったという無気力の物件であ
り,積算もしていないと思います。ですから,本命から連絡を受けた札
で入札に参加し落札に協力しました。
ただし,37番のP10・P23JV落札の物件については,P10
のP42さんから希望票の依頼の連絡が来たのではなく,P42さんよ
り営業経験の浅い後輩のP48のP127さんから希望票の提出依頼が
あったような気がします。P42さんは,希望票を依頼する方というよ
りも,後輩に頼んで依頼をお願いさせるという立場の方でした。
なお,4件の物件で相指名として名前が記載されているゼネコンは全
て談合の仲間です。…(中略)…33番のP14・P22JVが落札し
た「町田市公共下水道ζ,ι汚水枝線工事」については,相指名業者と
して記載されているP2,現在のP155である旧P18,P85,P
78,現在のP106である旧P77,P92の6社,37番のP10
・P23JVが落札した「町田市公共下水道κ雨水幹線立坑築造工事」
については,相指名業者として記載されている,P48,P45,P1
2P87P222の5社39番のP2・P24JVが落札した町,,,「
田市公共下水道λ汚水枝線その2工事」については,相指名業者として
記載されているP56,P88,P73,P53,P6,P57,P9
3,P2の8社,以上相指名業者として申し上げたゼネコンは全て入札
談合の仲間であり,自社が受注したい時には,協力に応じてくれる「持
ちつ持たれつ」の関係「ギブ・アンド・テイク」の関係を保ち,受注,
価格の低落防止を図っていました」。
(カ)P78のP105の供述
証拠(甲サ150)によれば,P105は,平成12年12月4日に
公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対し
て,次のとおり供述したことが認められる。
「次にお示しの「町田市公共下水道ζ,ι汚水枝線工事」は,平成1
1年7月19日に入札が行われたP11公社発注の物件で当社はP22
3という町田の地元業者とJVを組んで入札に参加しております。この
物件は,町田市のζには都営住宅とか公団住宅が多く建ち,その中の一
部をP14が施工していると思い,同社は,町田での営業が強い業者で
ありますし,また,同社とJVを組んでいるP22も,本社の施工場所
の近くの業者ではなかったと思いますが,同JVが条件を持っていると
いうことで本命となり,入札金額の連絡を受け,同JVが落札できるよ
う協力しました」。
ウ被告P2のP167のシステム手帳(甲サ343)の記載
証拠(甲サ343,356,357)及び弁論の全趣旨によれば,本件
工事7の入札当時,被告P2のP111営業所課長補佐であったP167
が所持していたシステム手帳には,平成11年7月19日(月曜日)の前
週の金曜日ころ,同営業所の所長であったP109から,本件工事7にお
いて被告P2と株式会社P16とが組むJVの入札予定金額を指示され,
P167において,同システム手帳に「①②③¥305,000,000-293,500,000-
」と記載したことが認められる。292,000,000-
エ検討
前記前提事実及び前記1()エ並びに上記イの供述及び上記ウの文書の3
内容を踏まえて,以下検討することとする。
(ア)被告P8のP170は,公社が発注する土木工事について,多摩地
区におけるゼネコン間で受注調整を行い,被告P8においても,その協
力を行ったことがあったと供述するものの,本件工事7について,具体
的に受注調整が行われたか否かについては明確な供述をしていない。
しかしながら,前記1()エで述べたことに照らし,本件工事7は,3
被告P8とP22工業が組んだJVが,工事予定価格2億9318万6
000円の99.93パーセントに当たる2億9300万円の金額で落
札していることからすれば,本件慣行を背景として本件工事7につき個
別談合が行われたことが極めて強く疑われる。さらに,本件工事7の入
札に参加したJVの主となる建設業者のうち,被告P2,被告P1,P
18株式会社,P85株式会社,P78株式会社,P77株式会社,P
,,92株式会社の7社はいずれも本件慣行が適用されるゼネコンであり
各ゼネコンで営業を担当していたP109,P99,P105,P13
5はいずれも,本件工事7につき,被告P8が受注予定者となり,その
受注の協力を求められ,入札前までに入札を希望する金額を伝えられた
り,自社の見積金額を確認するなどの方法により,被告P8が結成した
JVが落札できるよう協力した旨供述している。さらに,上記ウにおけ
るP167のシステム手帳の記載等からすれば,P167が,本件工事
7の入札日の3日前ころ,P109から,被告P2が組むJVの同入札
における1回目,2回目及び3回目の具体的な入札予定金額を指示され
ていたことが認められ,2回目,3回目の入札価格は,入札が行われ,
その入札における最低入札価格が判明しなければ確定できない性質のも
のであることからすれば,本件工事7の入札においては,入札に参加す
るJVの中で最低入札価格があらかじめ確定していたことを推認するこ
とができる。
また,本件工事7の入札においては,本件慣行が適用されないP21
8株式会社及びP115株式会社が主となり結成したJVが参加してい
るところ,P218株式会社と株式会社P219とが結成したJVが1
回目3億円,2回目2億9380万円で入札し,P115株式会社とP
220株式会社とが結成したJVが1回目が2億9700万円,2回目
が2億9500万円という,いずれも工事予定価格を上回る金額で入札
しており,特に2回目の入札においては,被告P8が1回目に提示した
金額(2億9600万円)から2回目に入札した金額(2億9300万
円)の間の極めて狭い金額の範囲に,他のJVの入札金額が集中してい
ることからすると,P218株式会社とP115株式会社においても,
あえて,被告P8が結成したJVの落札に協力すべく入札を行ったもの
と認められる。
以上を総合すれば,本件工事7については,被告P8の担当者が,使
用される工法が自社のグループ会社が製造した機械を使用することなど
から,受注を強く希望し,公社による指名後遅くとも入札までの間に,
指名されたJVの主となる建設業者のうち,本件慣行が適用されるゼネ
コン7社(被告P2,被告P1,P18株式会社,P85株式会社,P
78株式会社,P77株式会社,P92株式会社)に対し,各ゼネコン
が結成したJVに希望した金額で入札させたり,入札予定金額を確認す
るなどの方法により,被告P8が結成したJVが工事予定価格に近似す
る入札金額により本件工事7を落札できるよう協力する旨依頼し,上記
ゼネコンとの間で,被告P8が結成したJVの上記入札金額による落札
を妨げないこととするとの合意(個別談合)がなされ,さらに,本件慣
行が適用されない入札に参加するJVの主となる建設業者2社(P21
8株式会社及びP115株式会社)の各担当者に対し,被告P8が結成
したJVが落札できるよう協力を依頼し,上記2社の同意を得,上記暗
号に基づいて,被告P8が結成したJVが,予定どおり本件工事7を落
札したものと認められる。
(イ)この点に関し,被告P8は,本件慣行の適用外であるP218株式
会社やP115株式会社については,①P218株式会社の結成したJ
Vの2回目の入札金額(2億9380万円)が被告P8の2回目の入札
金額(2億9300万円)に近く,被告P8に落札に協力するのであれ
ば,不合理な行動であること,②P218株式会社やP115株式会社
のような,多摩地区におけるゼネコン間の受注調整行為に参加していな
い建設業者にとっては,ゼネコンの受注調整に協力する利益はなく,そ
のような受注調整に協力することは営利活動を目的とする企業の性質上
あり得ないとして,受注調整が行われておらず,本件工事7の入札にお
いては競争が行われた旨主張する。
しかしながら,前記イ及びウからすれば,本件工事7においては,被
告P8と被告P2との間で,入札日の3日前ころまでには,被告P2が
被告P8が結成したJVが落札できるよう協力する旨の合意ができてお
り,その合意に従って,入札金額の連絡がなされ,被告P2の1回目か
ら3回目までの入札予定金額が定まり,その金額も1回目が3億050
0万円,2回目が2億9350万円であったと認められるところ,むし
ろ,P218株式会社が結成したJVの入札金額(1回目3億0200
万円,2回目2億9380万円)は,1回目と2回目の入札金額の設定
において上記被告P2の入札金額に近いといえ,被告P8とP218株
式会社との間においても,被告P2との間と同様に受注調整に係る合意
がなされ,入札金額の連絡がなされていたと推定することができるもの
,。であり同金額から受注調整に係る合意がなされていないとはいえない
また,本件慣行が適用されるゼネコンの受注予定者と地元の建設業者の
ような本件慣行が適用されない建設業者との間で個別協議がされ,受注
調整がなされていたことは,P25が「ゼネコン側と地元側の折衝は,
簡単に申せば,話し合いということですが,やはり,双方は当該物件に
ついての関連性など種々条件を提示し合って,結局,例えば,一方が下
請に入るとの条件で決着を図るといった仕方も採られ,最終的には,本
命業者として一本化が図られるパターンです」と供述するとおり(甲。
サ98,多摩地区において一般的に行われていたことと認められ,本)
件慣行が適用されるゼネコンではない建設業者であるとしても,それだ
けで直ちに受注調整行為に応じないなどともいえない。
()本件工事88
ア当事者の主張の骨子
(ア)原告らの主張
被告P10は,本件工事8につき,その用地を借りるP224学園と
20年近く付き合いがあるという事情があることから,受注を希望し,
基本合意により受注予定者となった。被告P10は,基本合意がされた
ゼネコンに対し,工事希望票の提出を依頼し,依頼されたゼネコンは,
基本合意に基づき,被告P10が受注予定者であると認識した上で,工
。,事希望票の提出をした公社が指名したJVの主となる建設業者のうち
被告P10,株式会社P45,P12株式会社,株式会社P87,P6
9株式会社及び被告P1の7社は,基本合意関係のある仲間であった。
,,被告P10は本件工事8の指名がされた平成11年11月30日以降
P23株式会社とJVを組んだ。被告P10は,入札前までに,本件工
事8の入札に参加するJVの主となる建設業者の入札金額を確認し,又
は自社の結成したJVの入札予定金額の確認を受けるなどした。指名を
受けた基本合意関係にあるゼネコンは,被告P10の結成したJVが本
件工事8の受注を希望していることを認識し,入札において,自社の結
成したJVが入札金額が被告P10の結成したJVの入札金額よりも高
いことを認識した上で,入札に参加し,同JVが工事予定価格近似の金
額で落札できるよう協力した。
(イ)被告P10の主張
被告P10は,本件工事8について,指名を受けた相指名業者に対し
,,入札価格を連絡し又は相指名業者の結成したJVの入札価格を確認し
若しくは自社の入札価格の確認を受けた事実は一切ない。
(ウ)被告P1の主張
被告P1が株式会社P225と結成したJVが入札に参加したことは
認め,その余は否認する。
イ公正取引委員会における事情聴取での関係者の供述
(ア)被告P10のP42の供述
証拠(甲サ177)によれば,P42は,平成13年6月11日に公
正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対し
て,要旨,次のとおり供述したことが認められる。
,,,a本件工事8はP224学園の用地を借りて行う工事でありまた
付近の道路が狭いことから,立坑工事を行うには極めて困難であると
いう事情があった。被告P10は,P224学園と20年来の付き合
いがあったことから,本件工事8につき,多摩地区のゼネコン業界に
おいて受注予定者となる可能性が強い事情があった。
bP42は,P25から,電話で「町田市のP224学園近くで工,
事が出るらしいけど,P42ちゃんのところがやってるんでしょ」と
確認されたことから「勉強しているよ」と回答した。多摩地区にお,
ける営業担当者においては,被告P10がβの工事に詳しいことやβ
の立坑工事が難しい工事であることは周知の事実であった。
このため,本件工事8の入札において,相指名となったゼネコンの
うち,株式会社P48,株式会社P45,P12株式会社,株式会社
P87,P69株式会社,被告P1は,被告P10が本件工事8の土
木工事に詳しいことを知っており,相指名になったゼネコン6社の担
当者は,被告P10が受注予定者であったことを「あうんの呼吸」で
分かっていた。
cP42は,人脈を活用して,本件工事8の工事予定価格を調べてお
り,他の相指名となったゼネコンよりは入札における金額で負けない
という自信を有していた。
P42は,相指名された建設業者の中にゼネコンでない建設業者が
,「」入っていたことから株式会社P48のP127からどうするの?
と入札金額について相談を受けた際「自社の見積でお願いします」,
と回答した。P42は,P127が多摩地区で古くから営業活動をし
ていたので,P127に上記のように回答しておけば,他の相指名の
ゼネコンの担当者にも伝わると考えていた。
P42は「自社の見積でお願いします」ということにより,P,。
127らが,P42が本件工事8の工事予定価格を把握しており,被
告P10が落札できる金額で入札してくれたのだろうと思っていた。
dP42は,本件工事8が,積算すると,約6000万円になること
から,ゼネコンでない指名された建設業者が,6000万円から10
00万円を引いた約5000万円で入札してくるだろうと予想してい
た。
,,e本件工事8は被告P10が結成したJVが4500万円で落札し
契約したが,設計変更があったことから,最終的には7835万73
00円で竣工した。
(イ)株式会社P48のP126の供述
証拠(甲サ137)によれば,P126は,平成13年9月18日に
公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対し
て,次のとおり供述したことが認められる(なお「町田市公共下水道,
κ雨水幹線立坑築造工事」とは,本件工事8のことである。。)
「次に,39番のP10・P23JVが落札した平成11年12月入
札の「町田市公共下水道κ雨水幹線立坑築造工事」につきましては,こ
の物件の公表後,P10P43営業所のP42さんからP127に対し
て,工事希望表を提出して協力して欲しい旨の連絡があり,私はP12
7からこの報告を受けてP10の依頼に応じることとし,入札に参加し
た物件でありました。
そして,私からP10のP42さんに対し,遅くとも入札日の前日ま
でに,本命であるP10に迷惑のかからない当社の見積り価格をお伝え
し,入札においてP42さんにお伝えした当社の入札金額で応札し,P
10の落札に結果的に協力いたしました」。
(ウ)株式会社P48のP127の供述
証拠(甲サ86)によればP127は,平成13年6月29日に公正
取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,
次のとおり供述したことが認められる。
「次に39番のP10とP23のJVが落札した「町田市公共下水道
κ雨水幹線立坑築造工事」について説明したいと思いますが,この物件
に関しては,落札したP10のP42さんから何らかの依頼があったと
いう程度の記憶だけですので,詳細には説明することができません」。
(エ)被告P1のP99の供述
証拠(甲サ72)によれば,P99は,平成13年9月27日に公正
取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対し,前
記()イ(オ)のとおり,被告P1は,本件工事8に受注意欲を有してお7
らず,株式会社P48のP127を介して,工事希望票の提出依頼があ
ったことから,入札に参加し,自社で積算もせずに,連絡を受けた金額
で入札に参加したものであった旨供述したことが認められる。
(オ)株式会社P87のP226(以下「P226」という。)の供述
証拠(甲サ80,196)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認
められる。
aP226は,平成10年3月末から平成13年2月までの間,株式
会社P87のP227営業所長として勤務していた者である。
bP226は,平成13年6月19日に公正取引委員会において行わ
れた同委員会審査官からの事情聴取に対して次のとおり供述したな,(
お「39番」とは,本件工事8のことである。,。)
「,,,,当社が入札に参加した一覧表中21番39番49番52番
56番の物件については,落札業者として記載されている業者から工
事希望票を提出して欲しいとの依頼を受けた物件もあると記憶してお
ります。また,本命からの札の価格の連絡につきましても,当社に対
し当社が入れる具体的な入札価格を連絡してきた業者もあったように
記憶しています。本命から具体的な札の価格連絡を受けた場合は,そ
の価格を入れる場合もありますし,価格の連絡を受けたうえで当社の
簡易な積算金額で札を入れる時もありました」。
ウ検討
前記前提事実及び前記1()エ並びに上記イの供述の内容を踏まえて,3
以下検討することとする。
(ア)被告P10のP42は,被告P10が,本件工事8の受注予定者と
なるための事情を有しており,その関係からP25に対してを被告P1
0が受注を希望することを伝えたほか相指名となったゼネコン6社株,(
式会社P48,株式会社P45,P12株式会社,株式会社P87,P
69株式会社,被告P1)が本件工事8が被告P10が受注予定者とな
るのには有利であったことを認識しており,株式会社P48のP127
に対して被告P10が落札できるような金額で入札するよう依頼し,P
127を通じて各ゼネコンにもその旨が通じることとなると考えた旨供
述している。そして,前記1()エで述べたことに照らし,本件工事83
は,被告P10とP23株式会社が組んだJVにおいて,工事予定価格
4546万1000円の98.98パーセントに当たる4500万円で
落札していることからすれば,本件慣行を背景として本件工事8につき
個別談合が行われたことが強く疑われる。さらに,本件工事8の入札に
参加したJVの主となるゼネコンの担当者であったP126は,P12
7を通じて被告P10から落札に協力する旨の依頼があり,入札日の前
日までに,P42に対して自社の見積金額を伝え,同金額で入札した旨
供述し,ゼネコンの担当者であったP99も,P127を介して工事希
望票の提出依頼があったほか,入札においても,指示された金額で入札
した旨供述し,ゼネコンの担当者であったP226も,被告P10から
協力依頼があり,それに応じて入札に参加し,入札金額の連絡がなされ
た旨供述する。加えて,本件工事8の入札においては,被告P10とP
23株式会社とが組んだJV以外のJVは,いずれも工事予定価格を上
回る金額で入札していた。
以上を総合すれば,本件工事8については,被告P10の担当者が,
P224学園と親交のあることから,同社が本件慣行における受注予定
者となることを希望し,P25に対して被告P10が受注予定者になる
ことを希望している旨述べたほか,株式会社P48のP127に対し,
被告P10が本件工事8の受注を希望しており,落札に協力するよう依
頼することにより,株式会社P48に対し,協力を求めるとともに,P
,,127を通じて本件慣行が適用される各ゼネコンに対して協力を求め
公社による指名がされた後入札前までの間に,本件工事8の入札に参加
するJVの主となる建設業者のうち,本件慣行が適用されるゼネコン7
社(株式会社P48,株式会社P45,P12株式会社,株式会社P8
7,P69株式会社,被告P1,P228株式会社)に対し,P127
を通じて,各ゼネコンが結成したJVの入札を被告P10が結成したJ
Vが落札できるような高めの金額にするよう依頼したり,入札予定金額
を確認したりする方法により,被告P10が結成したJVが工事予定価
格に近似する入札金額により本件工事8を落札できるよう協力する旨依
頼し,上記ゼネコンとの間で,被告P10が結成したJVの上記入札金
額による落札を妨げないこととするとの合意(個別談合)がなされ,さ
らに,本件慣行が適用されない入札に参加するJVの主となる建設業者
2社(P229株式会社及び株式会社P118)の各担当者に対し,被
告P10が結成したJVが落札できるよう協力を依頼し,上記2社の同
意を得,上記談合に基づいて,被告P10が結成したJVが,予定どお
り本件工事8を落札したものと認められる。
(イ)この点に関して,被告P10は,P42が「この物件はまともに積
算すれば6,000万円くらいになり,ゼネコンでない相指名業者は,
6,000万円から1,000万円引いた5000万円で入札してくる
だろうということは予想できました」と供述していることから,被告。
P10が,上記ゼネコンではない相指名された建設業者との間で価格競
争を行っていたことが明白であると主張する。
しかしながら,前記前提事実並びに上記P42,P126及びP12
7の供述によれば,株式会社P48が結成したJVの4600万円とい
う入札金額は,株式会社P48において,被告P10が結成したJVが
本件工事8の工事予定価格に近似の金額で入札を検討していることを把
握したことから,あえて工事予定価格よりも高い金額になるよう積算し
た結果であると認められ,本件工事8の実際の工事予定価格(4546
万1000円)を併せ考慮すれば,上記P42の供述は,あくまでも受
注する意思がない建設業者において行う見積りを指しているものという
ことができ,競争関係にある建設業者の見積金額を意図している供述と
。,,みることはできないむしろ本件工事8の入札に参加したJVのうち
被告P10の結成したJVと株式会社P48が結成したJV以外のJV
が,いずれも4600万円以上の金額で入札していることからすれば,
被告P10が結成したJV以外のJVは,いずれも,あえて高い金額を
積算して本件入札に臨んだと推定できる。また,P42が「ゼネコンで
ない相指名業者」と供述する株式会社P118が結成したJVが550
0万円,P229株式会社が結成したJVが5250万円と,いずれも
株式会社P48が結成したJVの入札金額や工事予定価格を大きく上回
る金額で入札していることからすれば,上記認定のとおり,上記2社の
建設業者においても,被告P10が結成したJVに落札させるため,あ
えて高い金額で入札に臨んだと認めるのが相当である。したがって,本
件工事8の入札において価格競争が行われたとする被告P10の主張は
理由がない。
()本件工事99
ア当事者の主張の骨子
(ア)原告らの主張
被告P6は,本件工事9の施工場所が自社の営業所に近く,また,近
隣に施工実績を有することから,本件工事9の受注を希望し,基本合意
により,受注予定者となった。被告P6は,公社が本件工事9の公表を
した後,基本合意関係にあるゼネコンに対して工事希望票の提出を依頼
し,依頼された各ゼネコンは,被告P6が受注予定者であることを認識
した上で工事希望票を提出した。公社により指名されたJVの主となる
建設業者のうち,P165株式会社以外の9社は基本合意関係にあるゼ
ネコンであった。公社により指名がされた後,被告P6は,P19株式
,,,会社とJVを組み入札前までに各ゼネコンに対し入札金額を連絡し
又は自社の入札金額を確認するなどし,被告P2を含む各建設業者は,
被告P6とP19株式会社が工事予定価格近似の金額で落札できるよう
協力したが,被告P2が「見込み違い」により同社が組んだJVが,被
告P6が結成したJVの入札金額よりも低い金額で入札した。
(イ)被告P2の主張
被告P2は,本件工事9を落札しているが,入札では他の入札参加者
と意思の疎通を図るなどの不正行為は一切行っておらず,原告らが主張
する個別談合には関与していない。原告らは,被告P2が他の入札参加
,。業者との間で意思の疎通を図っていたという証拠は全く示せていない
(ウ)被告P6の主張
本件工事9は,被告P2が落札したものであって,被告P6が本命と
して入札に参加していたとしても,結果として他社が落札しているので
ある。被告P6と相指名業者との間に個別談合が成立していれば,本命
である被告P6が落札するはずであり,本件では入札において自由競争
が行われた結果,被告P2が落札したのである。
(エ)被告P1の主張
被告P1が有限会社P230と結成したJVで入札に参加したことは
認め,その余は否認する。
イ公正取引委員会における事情聴取での関係者の供述
(ア)被告P2のP109の供述
a証拠(甲サ145)によれば,P109は,平成13年6月8日に
公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対
して,次のとおり供述したことが認められる(なお「町田市δその,
2工事」とは,本件工事9のことである。。)
「次に,町田市δその2工事ですが,この物件は,当社とP24の
ジョイントベンチャーで受注した物件です。この物件については,
当社としては,特に受注を希望する立地条件はなかった物件で,ど
うしても取りたいという物件ではありませんでした。この町田市δ
の辺りではP14とP6がよく工事していた記憶がありますから,
立地条件としてはその2社の方があったのではないかと思います。
この物件については,当社の本社積算部土木積算課のP231とい
う者が積算しており,その積算価格で入札には望んでおります。昨
日,当社P111営業所のP167に頼んで公取にファックスさせ
たこの物件の積算関係の資料がありますから,提出します」。
b証拠(甲サ355)によれば,P109は,平成13年6月28日
に公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に
対して,次のとおり供述したことが認められる。
報告者の上から5番目が当社とP24のジェイブイが落札した町「「
田市公共下水道λ汚水枝線その2工事」についての記載です。入札が
平成12年5月15日で,指名通知が4月25日ですから,4月の初
めにP11公社から物件の公表があり,工事希望票の提出期限が指名
通知日の1∼2週間前だったと思います。
この物件は,当社としては,特に受注を希望する立地条件もなく,
また,この時期ですと,近々P11公社から町田市μの下水道工事が
出る予定で,そちらの物件に受注意欲を持っていた時期で,この物件
については年度初めの町田の物件であり,指名に入れてもらえばいい
ということで工事希望票を出した物件でした。町田市μの物件は,以
前,当社で,ν駅から2キロほど鉄道工事をやっており,鉄道工事を
やった下を通る下水道工事でしたから,今後の立地条件としても続い
ていくということで,是非取りたいと思っていた物件でした。ですか
ら,このλの物件については,これを取ってしまうと工事高が50パ
,,ーセントに達せずμの物件の指名に入れなくなってしまいますので
当社としては受注意欲のない物件でした。
この物件については,P6が,営業所も近く,近辺での工事をやっ
ていることも承知しておりましたので,P6が強い場所であるという
ことは分かっておりました。
また,この時期は,公取が3月に町田の件で立入検査に入ったすぐ
,,,後で当社にも立入検査がありましたから多摩地区の業界としても
何があったのだろうということで,シラーとした時期で,立入検査が
あった当社に対して他社からも声をかけづらい,当社としても他社と
話をしづらいという時期でした。当社とP6とは,担当者同士で親し
く付き合っておりましたので,それまでの付き合いからすれば,λの
,,物件について当社からP6に一生懸命営業している物件かとかまた
P6の方から自社が営業しているという話があってもおかしくない物
件でしたが,そういう時期でしたから,当社にP6から自社で一所懸
命営業している物件だというような話はなかったと思います。
この物件については,積算はスポンサーである当社が行って入札に
臨んでおります。受注意欲のない物件であれば,積算担当に無駄な作
業をさせるのも悪いですから,概算で積算してもらうように言います
が,この物件については,受注意欲のない物件でしたが,特殊な推進
工事が入った工事でしたので,ある程度詳細な積算を行うよう頼んで
おります。しかし,利益を削ってまで安く受注しようと思っていた物
件ではありませんので,通常より管理費を削った入札金額にしたとい
うつもりもありませんでした。
この物件については,受注意欲がなかったとはいえ,当社とP24
のジェイブイが落札しておりまして,積算を間違えたとはいえません
が,積算に見込み違いがあったということは考えられます。
当社で一所懸命営業活動もやり,受注意欲のある物件でしたら,事
前に下請の手当てなどもしておくのですが,この物件については,そ
ういう手当てもしておりませんでした。
入札が終わって,当社が落札した後に,P6のP160さんから私
に対して,この物件は自社で一所懸命営業してきた物件であり,P2
32を下請で使おうと思っていたので,下請としてP232を使って
欲しいという話がありました。当社としては,すぐに返事をするとい
う訳にもいきませんし,下請については工事部の担当業務になります
から,私が当社の工事部と話をして,当社で下請を手当てしていなか
ったということもありますし,P6で自社が落札した場合にP232
を下請に使おうと思って手当てしていたということで,P232を下
請に使って欲しいと言ってきた事情も理解できますから,P232を
下請として使うことを了承しております。
私としては,P6が一所懸命営業していた物件を取ってしまい,悪
いなという気持ちはありましたし,P6の方でもなんでP2が取って
しまうんだという気持ちがあったかも知れませんが,お互いにそうい
うことは口には出しません。そういうことを言ってしまうと,今後,
気安くお茶を飲みにいこうというような話もできなくなってしまいま
す。
この工事については,現場の監理技術者,これは現場の所長のこと
ですが,監理技術者を当社から出しておりまして,それ以外に当社か
ら何人出しているかは確認しないと分かりませんが,もう一人位出し
。,。ているかもしれませんそれ以外はP232にお任せしております
,,本日当社がP232に対してこの工事を下請に出した際の注文書
注文請書,P232の見積書の写しを持参して参りましたので,提出
します」。
(イ)被告P6のP160の供述
証拠(甲サ352)によれば,P160は,平成13年6月19日に
公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対し
て,次のとおり供述したことが認められる(なお「番号41のλの物,
件」とは本件工事9のことである。。)
「番号41のλの物件は,P2とP24のジェイブイが落札した物件
です。
この物件も,δの物件ですから,当社として一所懸命営業していた物
件で,先ほど説明した番号31の物件と同じように工事場所が当社の営
業所に近い,工事場所の状況も把握している,近隣の状況も分かってい
るという物件でした。ですから,当社で是非取りたい物件でしたし,入
札価格の積算も実行予算レベルで行った物件でした。
当社は,この時のジェイブイは,P19とは以前にもジェイブイを組
んで受注したこともあり,気心の知れた相手で,積算について文句をつ
けてくるようなところでもありませんから,P19と組んでいます。P
,,。19は当社と組んだことで受注できると思っていたかもしれません
当社はこの物件についても,熱心に営業活動をしているということを
他のゼネコンに話していると思いますが,具体的にどこの会社に話しを
。,したかは覚えておりません普段親しく付き合いのあるP88とかP2
P1には話をしているかもしれません。しかし,P2については,話を
したとすれば,所長のP109さんですが,P109さんにそのような
話をしたという記憶がありません。ただ,P2は,普段親しく付き合っ
ている会社ですし,P109さんの営業の仕方を見ても,当社が一所懸
命営業をしていることは知っているはずだとは思います。また,この物
件について,P2が熱心に営業をしているという話は聞いておりません
でした。
この物件について,当社から一所懸命営業をしているという話を聞い
,,て工事の申込みをして欲しいと理解した業者もあるかも知れませんし
また,この物件の相指名業者も,当社が一所懸命営業をしていることを
知れば,指名稼ぎの物件として考え,当社が落札するだろうと考えて入
札に参加したところもあっただろうと思います。入札価格については,
当社では,実行予算ベースでの積算をしておりますが,相指名業者から
概算の金額を聞いてきたということもあったかも知れません。
この物件については,ジェイブイ発注になるのかAランクの単独発注
になるのかぎりぎりの金額ではなかったかと思いますが,A単独になる
と地元業者が優先的に指名されるケースが多く,地元業者と価格競争を
しても取れないこともありますので,あきらめようかと思ったこともあ
りました。
この物件は,結果的にはP2のジェイブイが落札しておりまして,当
社が是非取りたいと思っていた物件でしたし,人や協力会社の準備をし
ていた物件で,手が空いてしまうということがあり,私からP2のP1
09さんに下請として当社の子会社であるP232株式会社を使って欲
しいという話をしております。P2とは,これまでの情報交換していた
という付き合いもあり,これからも付き合っていかなければなりません
し,私の気持ちの中には,当社が熱心に営業していた物件で,P2が熱
心に営業していたという話も聞いていませんでしたから,下請でも当社
に仕事をやらせてくれてもいいのではないかということもありました。
しかし,相指名業者の当社が直接下請をするわけにもいきませんし,当
社がP2の下請になるというのはプライドが許さないということもあ
り,P232がP11公社の工事に不慣れだということもあり,技術者
を当社から派遣する形で,一部を再下請で請け負っております。ですか
ら,この工事については,P2・P24ジェイブイからP232が工事
を請け負い,さらに当社がその一部をP232から請け負ったというこ
とです。この物件について,P232に下請に出したということが建設
業法上の問題になるかどうかについては,P2の方で判断して,問題が
ないということで下請に出したものだと思います」。
(ウ)P53株式会社のP158の供述
証拠(甲サ81)によれば,P158は,平成13年9月26日に公
正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対し
て,次のとおり供述したことが認められる(なお「町田市公共下水道,
λ汚水枝線その2工事」とは本件工事9のことである。。)
「表の番号36番「町田市公共下水道λ汚水枝線その2工事」は,P
6P168営業所のP160さんかP178さんから工事希望票の提出
依頼票を受け申し込んだところ,当社が指名された物件です。この物件
も当社が受注しようと思って申し込んだ物件ではありませんから,高め
の積算で応札して,P6JVの落札に協力しようとした物件でした。し
かし,開札結果は,P2JVが落札して,P6は2番札であったと記憶
しています。業界内では,工事希望票の提出依頼をした業者が本命とな
って落札するのが慣例となっていましたので,この開札結果を聞いてど
うしてP6が落札しなかったのだろうとびっくりした記憶があります。
後になって考えてみると,公正取引委員会が町田市の事件で立入調査
に入った後でしたから,P2がP6の代替,つまり,本命替えで受注し
たのだと思いました」。
(エ)株式会社P73のP149の供述
証拠(甲サ92)によれば,P149は,平成13年5月24日に公
正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対し
て,次のとおり供述したことが認められる(なお「町田市公共下水道,
λ汚水枝線工事」は本件工事9のことである。。)
「次に28番の平成12年5月15日に入札が行われました町田市公
共下水道λ汚水枝線工事に関してご説明いたします。
この物件は,P2とP24のJVが落札いたしておりますが,なぜだ
か分かりませんが,私が申込み依頼と札価格の連絡を受けましたのは,
この物件の相指名ゼネコンであるP6のP162営業所のP160さん
からでありました。
通常であれば,本命ゼネコンから協力依頼があるのですが,この物件
に関しては,P6から協力依頼の連絡を受けましたことから,てっきり
P6が本命であり,当然,P6が落札すると思いこんで,本命ゼネコン
であるP6に協力したつもりでおりましたところ,蓋を開けてみれば,
ゼネコンのP2さんらJVが落札いたしておりましたので,びっくりし
てしまいました。
後々,考えてみますと,この物件の入札日より少し前に,公取委さん
の町田市の建設業者等に対する立ち入り検査が行われておりまして,そ
の頃,多摩地区ゼネコン業界ではばたばたしておりまして,個々の物件
について本命替えが行われたということは私は全く知りませんが,今,
私が考えられることとして挙げますと,この理由以外には思い浮かびま
せん。
この物件に関しては,落札したのはP2さんらのJVでしたが,お付
き合いの物件でしたので,P6に協力するつもりで入札を行っており,
結局,落札業者がP2さんであれ,当社が協力した物件には間違いあり
ません」。
(オ)P57株式会社のP104の供述
証拠(甲サ144)によれば,P104は,平成13年5月24日に
公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対し
て,次のとおり供述したことが認められる。
「26番の平成12年5月15日入札の「町田市公共下水道λ汚水枝
線その2工事」は,当社はP233とのJVで入札に参加し,ゼネコン
のP2とP24JVが落札しております。これも,P2から受注意欲を
ピーアールされたものと思いますが,当社としては受注意欲のない工事
であり,受注意欲がないということは分かったことと思いますが,概算
で積算し,入札に臨み,結果的にはP2のJVが受注できるように協力
したことになります」。
(カ)P56株式会社のP234(以下「P234」という。)の供述
証拠(甲サ83,168,169)及び弁論の全趣旨によれば,次の
事実が認められる。
aP234は,昭和47年2月,P235株式会社に入社し,昭和4
8年に同社がP56株式会社に吸収合併された後も,同社での勤務を
続け,平成11年10月1日に同社P181営業所に赴任し,同年1
1月1日付けで同営業所長となり,同年10月1日以降P181営業
所で営業業務に従事していた者である。
bP234は,平成13年4月10日に公正取引委員会において行わ
れた同委員会審査官からの事情聴取に対して,次のとおり供述した。
「33番のP11公社発注「町田市公共下水道λ汚水枝線その2工
事」の物件,…中略…についても指名実績を稼ぐために申し込んだと
,,いうものでどうしても受注したいと思って申し込んだ物件ではなく
それぞれ関連性とか地域性といった本命になるための条件がなかった
ので,本命になった業者から価格等の連絡があればそれに協力しよう
と思っていました。当然,この2件の工事についても本命となる業者
がいたと思いますが,本命から連絡がなくても本命の受注を邪魔しよ
うとは考えておりませんでした」。
(キ)P88株式会社のP171の供述
証拠(甲サ241)によれば,P171は,平成13年3月15日に
公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対し
て,次のとおり供述したことが認められる。
「平成12年度に行われた当社の入札に参加した物件から申しますと
平成12年5月15日に入札が行われたP11公社発注の町田市公共下
水道λ汚水枝線その2工事をP2とP24JVが落札しておりますが,
指名申込の段階で話があったと思いますが,P2さんのよく覚えており
ませんが,可能性が高いのは同社P111営業所長のP109さんです
が,P2が本命になることの協力をしてほしいと電話であったと思いま
,,。,すがその旨のお話があり私は了承いたしました入札金額の連絡は
P2さんからありまして,P2さんから連絡のあった金額を当社の入札
金額として入れ,P2・P24の受注に協力いたしました」。
(ク)被告P1のP99の供述
証拠(甲サ72)によれば,P99は,平成13年9月27日に公正
取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対し,前
記()イ(オ)のとおり,被告P1は,本件工事9に受注意欲を有してお7
,,,,らず希望票の提出依頼を受けて入札に参加し自社で積算もせずに
連絡を受けた金額で入札に参加したものであった旨供述したことが認め
られる。
ウ被告P2の見積資料
(ア)「FAX送信のご案内」と題する書面(甲サ145。以下「審査時
積算資料」という。)
証拠(甲サ145)によると,次の事実が認められる。
aP167は,平成13年6月7日,公正取引委員会審査官に対し,
本件工事9における被告P2の入札金額に係る積算の資料として,審
査時積算資料をファックス送信した。
b審査時積算資料は,合計6頁の文書であり,1枚目がファックス送
信書となり,2枚目から6枚目にかけて「工事設計書」と題する文書
になっており,2枚目には「工事番号「工事件名「工事場所」」,」,
が記載され,3枚目には「設計の概要」が記載され,空欄となってい
るが「本工事費」を記載する欄があり,その欄は更に「内訳」として
「公示価格」と「消費税等相当額」が記載する欄がある。4枚目から
6枚目が「本工事費内訳書」として「費目「工種「種別「細,」,」,」,
則「単位「数量「金額「概評」の各欄に分けられた欄があ」,」,」,」,
り,当該欄には,本件工事9に必要な工事や費用が記載されていたと
いえるが,各費用の細目については墨消しされているため判読できな
いが手書きで金額の記載がされていたなお管理施設工の種,。,「」「
」,「」,「」,「」,別欄は円形管布設工人孔設置工桝設置及び取付管工
「付帯工」に分けられている。
(イ)平成12年5月11日付け「土木工事見積概要書(乙A3)」
被告P2は,平成18年11月17日の第23回口頭弁論期日におい
て,同社土木本部土木積算部が平成12年5月11日に作成した本件工
事9の見積書として,土木工事見積概要書(乙A3。以下「裁判時見積
書」という)を提出したことは記録上明らかであり,この裁判時見積。
書は,次のような体裁の文書である。すなわち,裁判時見積書は,合計
48頁の文書であって,1枚目には,見積金額を算定するための概要書
であり「直接工事費「共通仮設費「現場経費「工事原価「一,」,」,」,」,
般管理費「合計金額「落札金額」を記載する欄があり,いずれも」,」,
手書きで金額が記載されているほか「工事概要」欄には「管布設工」,,
として「内径管布設工「〃推進工〃「人200mm2,118m170.4」,」,
孔設置工箇所「桝設置及び取付管工〃「付帯工式」の661401」,」,
記載がある。2枚目,3枚目は「本工事内訳書」として,工事の内訳,
とその金額が記載されている「本工事内訳書」においては「直接工。,
事費「共通仮設工事費「現場経費「一般管理費」に分けられ,」,」,」,
「」,「」。その合計である工事価格欄にはが印字されている257,000,000
「直接工事費」は「塗装版切断工「管布設工「人孔設置工「汚,」,」,」,
水桝・取付管工「副管取付工「低耐荷推進工「残土・ガラ処分」,」,」,
工「付帯工「付帯工事」の費目に分けられており,各費目ごとに」,」,
金額が記載されている。4枚目から48枚目までは「工事内訳「共,」,
通仮設費「現場経費」ごとに,費用の費目と金額が記載されている。」,
エ検討
前記前提事実及び前記1()エ並びに上記イの供述及び上記ウの文書の3
内容を踏まえて,以下検討することとする。
(ア)被告P2のP109は,本件工事9につき,他の公社が発注する土
木工事を受注する希望をしていたことから,受注を希望していない工事
であり,被告P2は本件工事9を落札した場合の施工業者の手配等の手
続を行っておらず,また,被告P6が受注を強く希望し,受注予定者と
なる有利な事情を有していたことを認識していたが,本社土木工事部に
「ある程度詳細な積算」を依頼し,同金額で入札したところ「積算に,
」,,見込み違いがあったことなどから被告P2が結成したJVが落札し
落札後に,被告P6から依頼され,本件工事9を被告P6の指定した建
設業者に下請けに出した旨供述する。
しかしながら,前記1()エで述べたことに照らし,本件工事9は,3
被告P2とP24株式会社とが組んだJVにおいて,工事予定価格2億
5922万7000円の99.14パーセントに当たる2億5700万
円で落札していることからすれば,時期的には明確な形がとられなくな
ってきたとはいえ,本件慣行を背景として,本件工事9につき個別談合
が行われたことが極めて強く疑われる。また,本件工事9の入札に参加
したJVの主となるゼネコンであるP53株式会社の担当者であったP
158は,本件工事9において,被告P6から協力を依頼され,工事希
望票を提出したことや,被告P6の結成したJVに落札させるために高
めの金額で積算し,同金額で入札したと供述し,ゼネコンの担当者であ
ったP149も,同様に,被告P6から協力依頼の電話のほか,工事希
望票の提出依頼や入札金額の連絡を受けた旨供述している。また,その
他のゼネコンの担当者であるP104,P171は,被告P2の担当者
から,受注協力の依頼を受けたかのようにも供述するものの,記憶はあ
いまいで,あくまでも本件工事9の入札において,実際に被告P2が落
。,札したことから推察した供述である点においては共通しているさらに
P109及びP160の上記供述及び証拠(甲サ352,355)によ
ると,被告P2は,P160からの依頼に応じて,平成12年7月13
日,被告P6の子会社であるP232株式会社との間で,本件工事9を
2億3530万円(消費税を除く)で下請けする旨の契約を締結し,。
P232株式会社は,被告P6との間で,本件工事9の一部を1億円で
孫請けにする旨の契約を締結したことが各認められる。そして,本件工
事9の入札においては,被告P2の結成したJVが2億5700万円,
被告P6が決したJVが2億5750万円と双方のJVの入札金額は5
0万円しか離れておらず,その他の8JVの入札金額が,2億6600
万円から2億7800万円までの範囲内であり,工事予定価格(2億5
922万7000円)を上回る金額であった。
以上を総合すれば,本件工事9については,被告P6の担当者が,施
工場所の近くに自社営業所があることから,受注を希望し,本件慣行が
適用されるゼネコンに対し,被告P6が本件工事9を受注予定者となる
有利な事情を有し,受注を希望していることを伝えるとともに,工事希
望票の提出を依頼し,公社による指名がされた後入札までの間に,公社
に指名されたJVの主となる建設業者(被告P2を含む)に対し,被。
告P6の入札予定金額の概算を伝えたりするなどの方法により,被告P
6が結成したJVが工事予定価格近似の金額で落札できるよう協力する
旨の合意(個別談合)がなされたが,たまたま被告P2における見積金
額が,被告P6の結成したJVの入札金額よりも50万円低額であった
ことから,被告P2が結成したJVが,工事予定価格の99.14パー
セントの金額で落札したことが認められる。そして,本件工事9の入札
においては,被告P6の担当者によって,他の入札に参加したJVの主
となるゼネコンに対して受注調整の合意がなされ,同合意に基づいて,
被告P2が結成したJV以外のJVが工事予定価格を上回る金額で入札
を行ったものであり,被告P2が結成したJVにおいて,少なくとも予
期しないで,その結成したJVに被告P6が結成したJVよりも全体か
らみればわずかに低い金額で入札したことにより,被告P6と被告P2
を含む本件工事9の入札に参加したJVの主となる建設業者との間の談
合に基づいて発生した状況を利用し,被告P2が結成したJVが工事予
定価格の近似の金額で落札したものと認められるのであるから,上記個
別談合に基づいて,結果として入札における公正な競争を妨げて,不当
に高い価格による落札を実現した点において,上記個別談合上の受注予
定者であった被告P6が結成したJVが落札したことと変わりはないと
いうべきである。
(イ)この点に関し,被告P2は,本件工事9の入札当時,同社において
,,,は受注を希望しない工事であればP109が自ら概算で見積りをし
受注をしていたとし,本件工事9の入札金額は,本社土木本部の積算を
担当する部署において詳細な見積りを行ったのであり,利益を削ってま
で積極的に受注を希望した工事ではないが,上記見積の範囲内では受注
する意思を有して入札に参加したものであり,入札前において,入札に
参加するJVを組む建設業者等から入札金額等の連絡を受けておらず,
入札の結果,本件工事9を落札したのは,正当な競争の結果である旨主
張し,P109もこれにそう供述をし(甲サ116,355,裁判時)
見積書(乙A3)及びその作成者の陳述書(乙A4)を各提出する。
しかしながら,被告P2が裁判時見積書を提出した時期は,本件工事
9に係る公正取引委員会の調査や本件訴訟が開始されてから相当期間経
過した平成18年11月であるところ,被告P2が結成したJVの入札
金額の算定根拠等が,同時期になって初めて詳細な見積書が提出された
という点において不自然であり,同文書の作成時期については疑問を持
たざるを得ない。さらに,裁判時積算書(乙A3)は,1枚目の「土木
工事見積概要書」が,工事名や工事概要及び金額等がすべて手書きで記
載されていることからすれば,作成者において,定型様式の書面に手書
きで必要事項を記載して作成した決裁文書であるとみえ,他方,2枚目
以降の内訳書が工事費目や金額等がすべて印字して作成されたものであ
り,異なる様式,方法を用いて作成されたと認められるところ,P10
9が公正取引委員会における事情聴取時に提出した審査時積算資料にけ
る工事費の内訳と裁判時見積書の2枚目以降の文書に記載された工事費
の内訳との間において,費目に違いがあることからすれば,裁判時積算
書の2枚目以降の詳細な内訳が実際に本件工事9の入札前に作成されて
いたかという疑問をより一層増幅するものであるといわざるを得ない。
また,P109自身,前記イ(ア)のとおり,公社が発注する別の工事
を受注するために,本件工事9を受注する意思がなかった旨供述してい
るのであって,落札後,被告P6の子会社に対して,本件工事9の施工
を落札金額の9割以上の金額で下請けに出したことからすれば,被告P
2において,入札前までに,当該金額によって受注する意思があったと
認めることもできない。
したがって,上記各証拠によって,被告P2の上記主張を裏付けるに
足りず,他に同主張を認めるに足りる証拠はない。
()まとめ10
以上述べたところからすると,本件各工事においては,それぞれの工事に
,(),対応して被告らの各担当者従業員による個別談合があったと認められ
次に述べるとおり,被告らが民法719条,715条,709条に基づく不
法行為責任を負う。
ア本件工事1については,被告P1の従業員と同P2の従業員を含む本件
工事1の入札に参加したJVの主となる建設業者9社の従業員との間で,
個別談合があったと認められるから,これによって生じた損害につき,本
訴においては,被告P1と同P2が上記談合行為による共同不法行為責任
を負う。
イ本件工事2については,被告P3の従業員と入札に参加したJVの主と
なる建設業者9社の従業員との間で個別談合があったと認められるから,
これによって生じた損害につき,本訴においては,被告P3が上記談合行
為による不法行為責任を負う。
ウ本件工事3については,被告P13の従業員と同P5の従業員及び同P
6の従業員を含む本件工事3の入札に参加したJVの主となる建設業者9
社の従業員との間で,個別談合があったと認められるから,これによって
生じた損害につき,本訴においては,被告P13,同P5及び同P6が上
記談合行為による共同不法行為責任を負う。
エ本件工事4については,被告P6の従業員と同P2の従業員を含む本件
工事4の入札に参加したJVの主となる建設業者9社の従業員との間で個
別談合があったと認められるから,これによって生じた損害につき,本訴
においては,被告P6及び同P2が上記談合行為による共同不法行為責任
を負う。
オ本件工事5については,被告P7の従業員と同P8の従業員を含む本件
工事5の入札に参加したJVの主となる建設業者9社の従業員との間で個
別談合があったと認められるから,これによって生じた損害につき,本訴
においては,被告P7及び同P8が上記談合行為による共同不法行為責任
を負う。
カ本件工事6については,被告P9の従業員と本件工事6の入札に参加し
たJVの主となる建設業者9社の従業員との間で個別談合があったと認め
られるから,これによって生じた損害につき,本訴においては,被告P9
が上記談合行為による不法行為責任を負う。
キ本件工事7については,被告P8の従業員と同P2の従業員及び同P1
の従業員を含む本件工事7の入札に参加したJVの主となる建設業者9社
の従業員との間で個別談合があったと認められるから,これによって生じ
た損害につき,本訴においては,被告P8,同P2及び同P1が上記談合
行為による共同不法行為責任を負う。
ク本件工事8については,被告P10の従業員と同P1の従業員を含む本
件工事8の入札に参加したJVの主となる建設業者9社の従業員との間で
個別談合があったと認められるから,これによって生じた損害につき,本
訴においては,被告P10及び同P1が上記談合行為による共同不法行為
責任を負う。
ケ本件工事9については,被告P6の従業員と同P2の従業員及び同P1
の従業員を含む本件工事9の入札に参加したJVの主となる建設業者9社
の従業員との間で個別談合があったと認められるから,これによって生じ
た損害につき,本訴においては,被告P6,同P2及び同P1が上記談合
行為による共同不法行為責任を負う。
4争点()(談合による損害の有無及び程度)2
()町田市における損害の発生1
被告P6は,本件各工事に係る談合によっても,公社が被った損害が町田
市に転嫁されるものではないと主張する。
しかしながら,前記前提事実()及び上記3における事実関係によれば,3
被告らによる談合によって,本件各工事における被告らが結成したJVと公
社との間の請負契約額が不当に高額になったものということができ,談合が
なく公正な競争が確保されていた場合の契約額との差額が,町田市に損害と
して発生すると認められる。
()町田市の損害額2
ア原告らの主張
原告らは,町田市が本件各工事における談合により被った損害につき,
入札参加者に談合がなく競争が成立すれば,入札予定価格レベルにとどま
った蓋然性があり,独占禁止法に基づく課徴金の割合が原則10パーセン
トに引き上げられた背景事情にかんがみれば,本件各工事の落札価格と対
応する公社の定めた各最低制限価格の差額に消費税相当額5パーセントを
加えた金額であると主張する。
イそこで,勘案するに,被告らは,本件各工事における談合により,本来
他の入札参加者との健全な競争関係を前提として決定されるべき入札金額
につき,当該競争関係を意識することなく,自社の利益を最大限得られる
ようにするため,工事予定価格に近接する金額をもって落札しようとした
ものであり,その結果,本件各工事に係る落札率がいずれも98パーセン
トを超える高額なものになっている。そして,本件各工事に係る談合がな
ければ,入札参加者間での健全な競争によって落札業者が決定されていた
であろうから,当該競争が行われた場合に形成されたであろう想定落札価
格に基づいて得られる契約金額と,本件各工事における実際の契約金額と
の差額をもって損害とするのが相当である。
しかしながら,上記想定落札価格は実在していない価格であり,入札の
性質上,仮定的な条件を含んでそのような落札価格を確定することは極め
て困難であるばかりか,本件各工事の落札価格であることから,本件各工
事の具体的な種類・規模・場所・内容,入札当時の経済情勢及び公社又は
ゼネコンの財政状況,さらに地域性など,多種多様な要因が複雑に絡み合
って形成されるものであるといえ,そのような入札価格を算定して差額を
確定することは困難であるといわざるを得ない。
したがって,本件においては,町田市が被った損害については,損害の
性質上その額を立証することが極めて困難であるから,民事訴訟法248
条に基づき,口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき相当な損害額
を認定すべきである。
ウ以上のような観点から,町田市が被った損害額について判断するに,別
紙「特定土木工事一覧表」のとおり,落札率は個別の工事ごとに相当程度
の差異がある上,損害額の算定が困難な中において被告らに対し損害賠償
義務を負わせる以上,当該賠償額の算定に当たっては一定程度控え目な金
額に認定することもやむを得ないと考えられ,前記前提事実並びに前記1
及び2で認定したとおり,本件各工事の規模,難易度,本件各工事の予定
価格,本件慣行の存在,その経緯,前記1()ウのとおり平成9年10月3
1日から同12年9月27日までの期間における公社発注の特定土木工事
72件における平均落札率が94.54パーセントとなっている一方で,
同年10月1日から同17年11月1日までの期間における同工事139
件における平均落札率が89.85パーセントとなっていることなどに照
らすと,町田市が本件各工事に係る談合によって被った損害は,少なくと
も本件各工事の実際の請負契約における各契約金額(消費税相当額を含
む)の5パーセントに相当する金額(1000円未満切り捨て)と考え。
るが相当である。ただし,契約金額が変更されている場合,増額のときは
明らかに追加工事によるものではないと認められない限り当初契約金額に
よるべきであり,減額のときはその金額によるべきである。
これに対し,原告らは,前記アのとおり,談合がなければ,最低制限価
格が落札価格となったはずであるなどと主張するが,公正取引委員会によ
る立入検査が行われた後の平成12年10月1日から同17年11月1日
までの期間における公社発注の特定土木工事139件(別紙「特定土木工
事一覧表」参照)を見ても,そのすべてが最低制限価格で落札されている
わけではなく,また,上記5パーセントを超える損害が確実に発生してい
ることを示していない。また,関係者の審査官からの事情聴取に対する供
述には「入札でまともに競争していると低価格での受注で赤字になって,
しまう(甲サ71,85,113,135,138,155,171,」)
「受注調整が行われないと赤字になるケースが多くなる(甲サ184)」
,,などといった供述も散見されるところでありもちろん個別の工事の種類
規模等によるものの,公社発注の特定土木工事が常に最低制限価格で落札
されるべきものとすれば,落札業者において適正な利益が確保できない可
能性もあるのであって,これらの事情を考慮すると,原告らの上記主張を
直ちに採用することはできない。
なお,被告らは,民事訴訟法248条の適用が肯定される事案において
は,損害賠償を求める者が,その基礎となる事情の主張,立証する責任が
あるところ,原告らが,実際の落札価格のみならず,想定落札価格までも
主張,立証をする責任を負担するとか,少なくとも,民事訴訟法248条
の認定に際して考慮されるべき事情について具体的に主張すべきであるに
もかかわらず,これをしておらず被告らに反論の機会が与えられていない
などと主張する。しかしながら,民事訴訟法248条により相当な損害額
を算定するに際しては,工事の内容,指名された業者の数,各業者の受注
意欲の多寡及び入札当時の経済状況といった事情が認定の基礎となること
については,被告らも自認しているところ,上記事情については,前記3
において個別談合の存否に係る主張において現れている事情であり,かつ
各事情に係る立証もなされてるといえ,他方,被告らが同事情に係る反論
の機会を奪われていたなどということもできない。
エそこで,本件各工事における町田市の損害を算出すると,次のとおりと
なる。なお,5パーセントの基礎となる契約金額は,上記ウに従い,本件
工事6を除く本件各工事は当初契約金額によるべきであり,本件工事6は
減額された変更後契約金額によるべきである(前記前提事実()エ参照。4)
(ア)本件工事11716万7000円
(イ)本件工事21622万2000円
(ウ)本件工事35958万7000円
(エ)本件工事41748万2000円
(オ)本件工事52572万5000円
(カ)本件工事65666万4000円
(キ)本件工事71538万2000円
(ク)本件工事8236万2000円
(ケ)本件工事91349万2000円
()よって,被告らは,町田市に対し,次のとおり支払義務(複数の支払義3
務者がある場合,それぞれの工事につき不真正連帯)があるというべきであ
る。なお,訴状送達の日については,いずれも記録上明らかである。
ア本件工事1につき,被告P1及び同P2は,各自1716万7000円
及びこれに対する不法行為後である訴状送達の日の翌日(被告P2につい
ては平成14年6月8日,被告P1については同月11日)から各支払済
みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金
イ本件工事2につき,被告P3は,1622万2000円及びこれに対す
る不法行為後である訴状送達の日の翌日(平成14年6月8日)から支払
済みまで民法所定の年5分の割合の遅延損害金
ウ本件工事3につき,被告P13,同P5及び同P6は,各自5958万
7000円及びこれに対する不法行為後である訴状送達の日の翌日(平成
14年6月8日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損
害金
エ本件工事4につき,被告P6及び同P2は,各自1748万2000円
()及びこれに対する不法行為後である訴状送達の翌日平成14年6月8日
から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金
オ本件工事5につき,被告P7及び同P8は,各自2572万5000円
()及びこれに対する不法行為後である訴状送達の翌日平成14年6月8日
から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金
カ本件工事6につき,被告P9は,5666万4000円及びこれに対す
る不法行為後である訴状送達の翌日(平成14年6月8日)から支払済み
まで民法所定の年5分の割合による遅延損害金
キ本件工事7につき,被告P8,同P2及び同P1は,各自1538万2
000円及びこれに対する不法行為後である訴状送達の日の翌日(被告P
,)1については平成14年6月11日その余の被告らについては同月8日
から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金
ク本件工事8につき,被告P10及び同P1は,各自236万2000円
及びこれに対する不法行為後である訴状送達の翌日(被告P10について
は平成14年6月8日,同P1については同月11日)から,各支払済み
まで民法所定の年5分の割合による遅延損害金
ケ本件工事9につき,被告P2,同P6及び同P1は,各自1349万2
000円及びこれに対する不法行為後である訴状送達の翌日(被告P1に
ついては平成14年6月11日,その余の被告らについては同月8日)か
ら各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金
5争点()(違法な怠る事実の有無)について3
()被告らは,町田市の執行機関等の財務会計職員が,現時点において,被1
告らに損害賠償請求権を行使等しないことが直ちに法令に違反するものでは
なく,また,その裁量権を逸脱又は濫用するものでもない,町田市は,談合
行為があったことを立証する資料を有しておらず,また,公正取引委員会の
審決若しくは裁判所の判決を待たなければ被告となる業者の違法行為を立証
できないことから,損害賠償請求権の行使等に至っていないのであり,同請
求権をどのように行使するかは,町田市の財務会計職員の裁量にゆだねられ
ているところ,同職員が直ちに行使しなければ違法となるような特段の事情
は認められないとして,地方自治法242条1項に規定する「違法な怠る」
事実は認められないと主張する。
,,,()しかしながら前記2及び3のとおり本件工事における談合によって2
町田市に対して損害を与えており,当該行為は民法709条,719条の不
法行為を構成するものであるところ,町田市長は,現時点まで当該損害賠償
請求権を行使していないことは明らかである。
,,,,そして地方公共団体の長は債権について政令の定めるところにより
その督促,強制執行その他その保全及び取立てに関し必要な措置をとらなけ
ればならない(地方自治法240条2項)のであって,債権を行使するか否
かについての裁量の余地はほとんどなく(最高裁平成16年4月23日第二
小法廷判決・民集58巻4号892頁参照,同法施行令(昭和22年政令)
第16号)171条ないし同条の7に係る徴収停止事由等がないにもかかわ
らず相当期間その債権を行使しない場合には,それを正当かする特段の事情
がない限り財産の管理を怠るものとして違法であるというべきである。しか
るところ,町田市は,少なくとも,上記認定に係る各証拠を入手し得る状況
になって相当期間が経過しているにもかかわらず,上記損害賠償請求権を行
使してはいない。
この点,被告らは,公正取引委員会での判断が出ることを待つ合理性を主
張するが,敗訴の可能性については,本件工事における談合に関して,客観
的に不法行為による損害賠償請求権の立証が可能な状況になっているのは,
既に説示してきたとおりであり,仮に独占禁止法25条に基づく損害賠償請
求権を将来提起し得る可能性があるとしても,それにより,既に発生してい
る民法709条の不法行為に基づく損害賠償請求権を行使しないことを正当
化する理由とはならないから,上記特段の事情は認め難い。
()以上によれば,町田市長が民法709条の不法行為に基づく上記損害賠3
償請求権を行使していないことは違法であるというべきであるから,本件訴
訟における原告らの損害賠償代位請求は前記4()の限度で理由があるとい3
うべきである。
第4結論
よって,原告らの本件各請求のうち,前記第3の4で示した限度で理由があ
るから,これを一部認容し,その余の請求は理由がないからいずれも棄却する
,,,こととして訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条民事訴訟法61条
64条本文,65条1項を適用して,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第2部
大門匡裁判長裁判官
田徹裁判官吉
小島清二裁判官
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