弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1被告Bの控訴に基づき,原判決のうち被告B敗訴部分を取り消す。
2上記取消部分に係る原告らの被告Bに対する請求をいずれも棄却する。
3被告Cの控訴に基づき,原判決のうち被告C敗訴部分を取り消す。
4上記取消部分に係る原告らの被告Cに対する請求をいずれも棄却する。
5原告らの控訴をいずれも棄却する。
6訴訟費用は第1,2審とも原告らの負担とする。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1原告ら
(1)控訴の趣旨
ア原判決のうち原告らの被告Aら8名に対する請求を棄却した部分を,次
のイの金額の限度で取り消す。
イ被告Aら8名は,連帯して,各原告に対し,別表1「一部控訴に係る請
求額」欄に記載の金員及びこれらに対する平成23年9月10日から支
払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2)被告Dに対する当審での予備的追加請求の趣旨
ア第二次的請求
被告Dは,原告らに対し,別表1「当審での訴えの予備的追加に係る請
求額」欄の「請求合計」欄に記載の金員及びこれらに対する平成20年
7月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
イ第三次的請求
被告Dは,原告らに対し,上記アと同額の金員及びこれらに対する平成
26年5月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2被告Bの控訴の趣旨
主文第1項及び第2項と同旨。
3被告Cの控訴の趣旨
主文第3項及び第4項と同旨。
第2事案の概要
1控訴に至る経過等(略語については,個別に記載したもののほか,原判決別
紙略語目録による。)
(1)本件は,黒毛和種牛の繁殖及び飼養を業とする安愚楽本体と取引した原告
らが,投下資金を回収できずに別表2「原審請求額」欄の「主張損害総額」
欄に記載の損害を被ったとして,安愚楽本体の役員であった3名(被告A,
被告B,被告C),安愚楽本体の関連会社3社(被告エー・アイー・シー外
2社),関連会社の役員であった26名(被告D外25名)の合計32名に
対し,連帯して,別表2「原審請求額」欄の「請求合計」欄に記載の損害賠
償金の支払を求めるとともに,安愚楽本体に対する民事再生手続開始決定日
(平成23年9月6日)の後である平成23年9月10日から支払済みまで
民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めていた事案である。
(2)原告らは,安愚楽本体との取引(後述のオーナー契約)の勧誘が違法であ
り,原審被告ら32名は,安愚楽本体の違法な業務遂行の是正に向けた行動
をとるべき義務を負っていたのに,その義務を果たさず,違法な業務遂行を
援助助長したと主張し,民法719条又は会社法429条1項に基づき上記
賠償を求め,本件訴訟を提起した。
(3)提訴後,原審被告7名との間で,訴訟上の和解,訴えの取下げ,破産債権
確定による訴訟終了があり,最終的には,原告らと原審被告25名との間で
原判決が言い渡された。
(4)原判決は,被告Cと被告Bの会社法429条1項に基づく賠償責任を肯定
し,別表2「原審認容額」欄のとおり,原告らの同被告らに対する請求を認
容し(被告Cとの関係では平成22年6月以降に発生した損害の賠償請求に
限定して認容),原告らの被告Cに対するその余の請求及び同被告ら以外の
被告ら23名に対する請求の全部を棄却した。
(5)被告C及び被告Bは,敗訴部分全部を不服として控訴を提起した。
(6)原告らは,請求全部を棄却するとした原審被告23名に対する原審の判断
のうち,被告Aら8名に対する判断を不服として控訴を提起し,前記第1の
1(1)の控訴の趣旨の限度で不服を申し立てたが,被告Cとの関係での敗訴
部分については控訴を提起しなかった。
(7)原告らは,当審において,被告Dとの間で訴えの追加的予備的な変更を申
し立て,請求を追加した。当審での追加請求は,原告らが安愚楽本体に対し
不法行為債権を有していること及び安愚楽本体が無資力であることを代位の
理由とし,民法423条に基づき,安愚楽本体の被告Dに対する債権を代位
行使するものである。第二次的請求において代位行使する債権は,安愚楽本
体の被告Dに対する貸金債権であり,第三次的請求において代位行使する債
権は,安愚楽本体の被告Dに対する不法行為債権である。
2前提事実
当事者間に争いがないか,掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定で
きる事実は,次のとおりである。
(1)安愚楽本体の会社の概要
安愚楽本体は,昭和56年12月18日に「有限会社安愚楽共済牧場」と
して設立された黒毛和種牛の畜産会社であり(以下,単に「牛」という場合
もすべて黒毛和種牛を指す。),繁殖牛(子牛の懐妊・出産が可能となった牝
牛)を飼養して子牛を産ませ,そのうち肥育牛(肉食用に飼養される牛)を
肉牛として市場に出荷し(通常30か月程度飼養して出荷される。),あるい
は繁殖の役割を終えた繁殖牛を肉牛として市場に出荷し,売上を得ていた
(以下,肉牛を出荷して得られた代金を「出荷売上」という。)。
安愚楽本体は,会社法施行日である平成18年5月1日,特例有限会社と
なり,その後の平成21年4月1日,商号を現在の「株式会社安愚楽牧場」
に変更することにより通常の株式会社に移行した。安愚楽本体の株式(会社
法施行前は持分)は,その全部をJ社長が保有していた。
安愚楽本体の代表取締役は,設立時から平成2年3月16日まではLであ
り,平成2年3月16日以降はずっとJ社長であった。
(2)安愚楽本体の事業の概要
安愚楽本体は,飼養した牛を肉牛として市場に出荷するという通常の牧畜
業務以外に,日本全国の顧客との間で,継続的に,繁殖牛に関する特殊な取
引を行っていた。その取引とは,安愚楽本体がその所有する繁殖牛を顧客に
販売するが,販売と同時に,当該顧客から当該牛の預託を受け,一定期間に
わたりこれを飼養した後,再売買により当該顧客から当該牛を買い戻すとい
う取引である(甲12~20。以下,上記取引に係る契約を「オーナー契
約」,オーナー契約を締結した顧客を「オーナー」,オーナー契約によって
オーナーが保有することになった繁殖牛を「オーナー牛」という。また,
オーナー契約の勧誘,締結及び履行の全体を「オーナー制度」ということが
ある。)。
平成23年3月末時点で,安愚楽本体は,全国40か所の直営牧場におい
て7万3408頭の,全国338か所の預託牧場において7万1818頭の
黒毛和種牛を飼養しており(甲64),そのうち6万5572頭が繁殖牛で
あった(甲55)。
(3)被告らの立場
ア被告Aは,平成7年8月1日から平成11年4月15日まで,安愚楽本
体の取締役であった(甲30の3)。
イ被告Bは,平成13年4月2日から平成15年5月15日まで,安愚楽
本体の取締役であった(甲30の3)。
ウ被告Cは,平成21年9月5日以降,安愚楽本体の監査役(甲30の
1)であった。
エ被告エー・アイ・シーは,平成8年11月28日設立の安愚楽本体の子
会社であり,安愚楽本体が所有又は管理する牛の損害保険,安愚楽本体
及び関連会社の車両保険,火災保険,損害保険等を取り扱う保険代理店
業務を行っていたが,平成26年4月1日に商号を「有限会社ストライ
ブ」に変更した(甲40,甲89の1・2,乙D1)。
オ被告Dは,J社長の息子であり,平成10年6月16日から平成20年
10月10日まで,被告エー・アイ・シーの取締役であり,平成11年
1月12日から平成21年4月30日まで,安愚楽の里の取締役であり,
平成15年9月30日から平成19年1月30日まで,クリエイティブ
フードの監査役であった(甲35,甲88の9・10,甲89の2)。
安愚楽の里は,安愚楽本体の子会社として,昭和62年4月10日に設
立され,ホテルフロラシオン那須を経営していた(甲1,21,35,
甲45の6,甲49,86)。
クリエイティブフードは,安愚楽本体の子会社として,昭和61年1月
11日に設立され,那須でレストランを経営していた(甲1,39,甲
45の6,甲49,甲88の1~甲88の10)。
カ被告Eは,被告Dの妻であり,平成20年10月10日から平成23年
9月1日まで,被告エー・アイ・シーの取締役であり,平成21年9月
17日から平成23年7月29日まで,エー・シー・エフの代表取締役
であった(被告E本人尋問)。
エー・シー・エフは,安愚楽本体の子会社として,平成21年9月17
日に設立され,那須でレストランを経営していた(甲41)。
キ被告Fは,J社長の娘であり,平成19年1月30日から平成21年2
月28日まで,クリエイティブフードの監査役であり,平成20年5月
30日から平成23年7月29日まで,AMフード(平成17年4月1
9日設立の安愚楽本体の子会社)の監査役であった(甲39,43)
ク被告Gは,平成11年11月1日から平成15年7月1日まで,及び平
成17年2月1日以降,安愚楽宮﨑の代表取締役であった(甲31,8
5)。
ケ被告Hは,平成16年2月29日から平成23年7月29日まで,安愚
楽東日本の代表取締役であった(甲83の1・4)。
コ被告Iは,平成11年6月14日以降,バンナの取締役(平成14年2
月28日から平成16年7月6日までは代表取締役)であった(甲34
の1・2)。
(4)オーナー契約の概要
オーナー契約は,平成23年7月にごく一部だけ肥育牛を対象とするもの
があった以外,全て繁殖牛を対象とするものであった(以下においても
「オーナー制度」「オーナー契約」という場合,すべて繁殖牛を対象とする
ものを指す。)。
安愚楽本体は,多種多様な内容のオーナー契約を設定し,これに「安愚楽
1号コース」「安愚楽応援コース」などの名称を付してオーナーを募集して
いた。
契約期間は1年から10年まで様々であり,繁殖牛1頭の価格は200万
円から500万円まで様々であるが,契約期間が短い場合に価格が安く,契
約期間が長い場合に価格が高くなる傾向があった。
また,1頭単位でオーナー契約が募集されていたわけではなく,持分2分
の1とか4分の1を取引する契約も極めて頻繁に締結されており,オーナー
契約締結時に授受される代金(以下「オーナー契約代金」あるいは単に「契
約代金」という。後述するとおり,これは繁殖牛の売買代金と当初1年分の
飼養委託費の合計とされている。)が200万円以下であれば,多くの場合,
繁殖牛の持分が販売されていた(甲12~16,61,98)。
(5)原告らが締結したオーナー契約
原告らは,平成15年6月頃から平成23年7月頃までの間,原判決別表
5の「コース名」欄記載の各契約を締結し,安愚楽本体に対し「購入金額」
欄記載の契約代金を支払った。原告らが締結した契約の個数は175個であ
り,契約代金の総額は4億2980万円である。平均すれば,一契約当たり
の契約代金は245万6000円である(甲12~16,98)。
175個の契約のうち販売対象が繁殖牛の持分であった契約は143個
(約82%)にのぼる。
175個の契約の契約期間は平均すると5年半程度である。
(6)オーナー契約の約定
原告らの契約締結時期におけるオーナー契約の約定は次のとおりであった
(甲12,56,98。なお,甲12は,平成18年8月時点で使用されて
いた「黒毛和種牛売買・飼養委託契約書」であり,以下,同契約書による契
約を「甲12契約」という。)。オーナー契約は,1頭の繁殖牛が契約期間中
毎年必ず1頭の子牛を産むことを前提としていた(以下「1頭1産の前提」
という。)。
アオーナーは,安愚楽本体に対し,繁殖牛の売買代金と1年分(最初の1
年分に相当)の飼養委託費として所定の契約代金を支払い,所定の契約
期間にわたり,オーナー牛の飼養を安愚楽本体に委託する(甲12契約
では,契約代金が300万円,契約期間が6年とされている。以下,契
約期間が満了する時期を「契約満了時」という。)。
イ安愚楽本体は,毎年,オーナー牛が出産した子牛1頭を,予め決められ
た子牛予定売却利益で買い取り,所定の支払日に,オーナーに対し,子
牛予定売却利益からオーナー牛の1年分(子牛を出産した年に相当)の
飼養委託費を控除した金額(以下「配当」という。)を支払う(甲12契
約では,支払日は毎年8月末日,子牛予定売却利益が税込38万500
0円,飼養委託費が税込25万円とされているから,年に1度支払われ
る配当は13万5000円(利回りは年4.5%)となる。)。
ウオーナー牛が1年に2頭以上出産しても,2頭目以降はオーナーが安愚
楽本体に無償譲渡する。
エオーナーは,契約期間満了の際,安愚楽本体に対し,保有するオーナー
牛の現実の引渡しを求めるか,オーナー牛の再売買請求権を行使して再
売買代金の支払を受けるかを選択することができる(以下,この約定を
「選択条項」という。)。ただし,オーナーが何らの意思表示をしない場
合には,再売買請求権を行使したとみなされる。
オ再売買代金額は,原則として契約代金と同額とするが,牛の市場価格が
前年比30%以上下落したとき,又は為替変動等により飼料価格が高騰
した時は,協議して決定する。
カ安愚楽本体の責めに帰すべき事由によりオーナー牛が死んだ場合,安愚
楽本体はオーナーに対しこれにより被った損害を賠償するが,その具体
的方法(代替牛の提供等)は両者が協議して定める。
(7)安愚楽本体の貸借対照表上の資産と負債の額
原告らの175契約が締結された時期(平成15年6月~平成23年7
月)及びその前後における,安愚楽本体の各事業年度末時点での貸借対照表
の資産と負債の額(1万円未満切捨て)は,下記のとおりである(甲10の
21頁,31頁,36頁,46頁)。貸借対照表上,債務超過にはなってい
ない。
なお,安愚楽本体は,オーナー契約により繁殖牛を販売(所有権が移転)
し,再売買により繁殖牛を仕入れるものとして会計処理をしていたため,
オーナー牛は資産の部に計上されていないし,オーナー契約に基づく再売買
代金債務は負債の部に計上されていない。

資産負債
21期(平成14年3月期)313億4004万円301億4579万円
22期(平成15年3月期)318億3362万円305億7059万円
23期(平成16年3月期)413億6602万円400億3602万円
24期(平成17年3月期)384億8575万円370億2908万円
25期(平成18年3月期)470億2275万円452億7757万円
26期(平成19年3月期)571億9059万円551億3931万円
27期(平成20年3月期)621億2860万円596億7656万円
28期(平成21年3月期)688億8771万円662億1353万円
29期(平成22年3月期)729万2910万円699億0467万円
30期(平成23年3月期)655億1155万円619億8705万円
(8)安愚楽本体の倒産(甲48~51,甲52の1~甲52の10)
ア安愚楽本体は,再売買代金の支払原資を新たなオーナー契約代金で賄う
という資金調達を繰り返した結果,巨額の再売買代金債務を負うに至り,
平成23年8月9日,東京地方裁判所に民事再生手続開始を申し立て,
倒産した(甲47)。
イ東京地方裁判所は,同年9月6日に民事再生手続開始決定をしたが,同
年12月9日に破産手続開始決定をしたので(甲47),以後,安愚楽本
体の破産手続(以下「本件破産手続」という。)が進められた。本件破産
手続は平成26年3月12日頃に終了した。
ウ本件破産手続において,オーナー契約に基づいて届出がされた破産債権
の総額は4195億円余りの巨額なものであった(甲47)。普通破産債
権7万0816件(殆どがオーナー契約に基づく破産債権)に214億0
669万1604円の配当がされたが,その配当原資の大半は173億円
余りの消費税還付金であった(甲48,50)。消費税還付金は,破産管
財人が,オーナー契約に基づく再売買が繁殖牛の課税仕入であるとの会計
処理を前提として還付申告を行い,税務署がその会計処理を正当と認めて
還付したものである。
エ原告らは,本件破産手続において,別表3のとおり,破産債権を届け出
て配当を受けた(甲46の1~甲46の10,甲51,甲52の1~甲
52の10)。
(9)安愚楽本体による繁殖牛に関する不実告知
安愚楽本体は,遅くとも平成8年頃既に,飼養する繁殖牛全部がオーナー
牛となっており,新たにオーナーに販売できる繁殖牛がいないのに,オー
ナー契約の勧誘や締結を行うようになった。繁殖牛の実在数がオーナー牛の
総数(以下「契約頭数」という。)より少ないという事態(以下,このような
事態を「繁殖牛不足」という。)が生じていたのである(甲59,60,75,
96)。
J社長及びKは,平成22年9月頃から平成23年7月頃までの間,オー
ナー契約を希望する顧客192名に対し,繁殖牛の実在について不実の事実
を告げたとの特定商品等の預託等取引契約に関する法律(以下「特定商品預
託法」という。)違反罪(不実告知罪)で起訴され,平成26年10月16
日,有罪判決の宣告を受け,J社長は懲役2年6月に,Kは懲役2年に処せ
られた(甲96,107。いずれも実刑判決)。
3当審での訴え変更の許否に関する判断(被告Dに対する訴えの追加が許され
ないことについて)
(1)原告らは,原審において,被告Dが,繁殖牛不足が常態化していたのに安
愚楽本体がオーナー契約の募集を続けていたこと,オーナー制度が事業とし
て成り立っておらず早晩破綻する可能性が高いことを認識していたか,容易
に認識し得る立場にあったと主張し,被告Dに対し,民法719条(安愚楽
本体との共同不法行為)又は会社法429条1項(安愚楽本体の子会社の役
員の職務懈怠)に基づき,オーナー契約によって原告らに生じたとする損害
の賠償を求めていた。
(2)これに対し,原告らが当審で追加した被告Dに対する請求は,安愚楽本体
の被告Dに対する次のア及びイの金銭債権の債権者代位に基づく支払請求で
ある。
ア第二次的請求
安愚楽本体が,平成20年7月29日,土地購入資金として被告Dに2
569万6146円を貸し付けた事実を原因とする貸金債権
イ第三次的請求
被告Dが,安愚楽本体の所有地に抵当権を設定して金銭を借り入れ,安
愚楽本体に損害を被らせた事実を原因とする不法行為債権
(3)上記(1),(2)のとおり,原告らの被告Dに対する原審請求と当審追加請求
とでは請求の基礎が全く異なるから,原告らの当審における訴えの追加的変
更は,民事訴訟法143条1項所定の要件を欠いており,変更は不当である
からこれを許さないこととする。そのため,以下では,当審追加請求に関す
る事実摘示も判断も行わない。
4争点
原告らは,オーナー契約の勧誘が違法であることを前提として,原判決別表
5の取引損の一部の賠償を求めている。本件の争点は,オーナー契約の勧誘の
違法性の有無(争点1)と被告らの責任原因の有無(争点2)である。
5争点1に関する原告らの主張
(1)特定商品預託法に違反すること
安愚楽本体では,遅くとも平成11年以降,繁殖牛の実在数が契約頭数よ
り大幅に少ないという繁殖牛不足が常態化していた。
ところが,安愚楽本体は,原告らを含む顧客に対し,各種広告や営業用の
書面,契約書などにおいて契約頭数に見合う繁殖牛を保有しているという虚
偽の事実を告げてオーナー契約を勧誘していた。このような勧誘は,特定商
品預託法4条1項及び同法施行令3条4号が禁止する不実告知に該当し,違
法である。
(2)出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律(以下「出資法」
という。)に違反すること
オーナー契約の契約条項では,オーナー牛の再売買代金は,牛の市場価格
が前年比30%以上下落したとき,又は為替変動等により飼料価格が高騰し
たときは協議して決定するとされており(甲12契約5条2項。以下「減額
条項」という。),元本の返還を保証する体裁になっていない。
しかし,安愚楽本体は,オーナー契約勧誘用のパンフレット(甲13),
案内書(甲14)及び雑誌広告(甲25,26)により,過去に減額条項が
適用された例はないとか,出荷額が低調となった場合でも別途に基金から差
額が補てんされるなどと強調し,減額条項が有名無実であるとして勧誘を
行っていた。実際にも,減額条項が適用された例はない。
そもそも,安愚楽本体は,平成7年以降,新たにオーナー契約を締結する
繁殖牛が存在しないのに多数のオーナー契約を締結しており,このような架
空取引において減額条項の適用を考える余地はないから,架空取引を常態化
させていた安愚楽本体は,減額条項の適用などおよそ念頭に置かずにオー
ナー契約を締結し,必ず売買代金を返金すると約束してオーナー制度を維持
していたのである。
したがって,オーナー契約代金は,出資法2条1項が禁止する「預り金」
に該当するというべきであり,オーナー制度は,出資法違反の業務遂行であ
る。このことは,安愚楽本体と同様の和牛預託商法を行っていた多数の牧場
が出資法違反で摘発されたことからも明らかである(甲118の1・2,甲
119の1・2,甲120,甲121の1~甲121の4,甲122の1・
2,甲123の1・2,甲124の1~甲124の4,甲125の1・2)。
(3)財産状況に関する説明義務違反があること
特定商品預託法施行令の改正により,平成9年8月4日以降,家畜に対し
ても特定商品預託法が適用されることになり(甲126),同日以降,安愚
楽本体は,オーナー契約勧誘の際,損益計算書や貸借対照表など安愚楽本体
の財産状況を記載した書面をオーナーに交付する義務を負うに至った(特定
商品預託法3条1項2号,特定商品預託法施行規則3条2項)。
オーナー契約に基づく再売買代金債務は,その経済実態に照らせば,契約
締結と同時に確定的に発生する安愚楽本体の債務と解される。契約満了時に
繁殖牛の引渡しを求めるオーナーなど皆無であるし,そもそも,繁殖牛の持
分を取得したオーナーにとって繁殖牛の引渡しを求めること自体が不可能で
あるから,安愚楽本体もオーナーも,契約満了時に再売買代金を授受するの
を当然の前提としてオーナー契約を締結していたのである。
したがって,安愚楽本体は,契約締結年度において,損益計算書に再売買
代金(すなわち契約代金)と同額の「引当金」を損失項目に計上し,かつ,
再売買代金債務の総額を貸借対照表の負債として計上しなければならない
(企業会計原則注解18〔甲117の2〕)。
安愚楽本体がそのような会計処理をしていたならば,平成15年6月の時
点(原告らの契約締結が始まった時期)において既に,安愚楽本体が実に1
853億円もの巨額の債務を抱えており,およそ利益を生む事業経営などし
ておらず,大幅な債務超過の状態にあることが対外的に明らかになっていた
はずである。
ところが,安愚楽本体は,毎年の決算報告において,再売買代金債務を損
益計算書や貸借対照表から除外し(これは,公正妥当な企業会計慣行に従う
ことを義務付けた会社法431条に違反する違法行為である。),対外的には,
黒字経営が続いており,債務超過の状態にないかのように装ってオーナー契
約の勧誘を続けていた。
すなわち,安愚楽本体は,再売買代金債務の総額(同債務の履行可能性を
判断する上で最も重要な事項)を顧客に秘匿してオーナー契約を勧誘してい
た。これは,特定商品預託法又は信義則により義務付けられる説明を果たさ
ない違法な勧誘であった。
6争点1に関する被告Aを除く被告らの反論
(1)特定商品預託法違反について
原告らの主張は争う。なお,原告らの175契約のどれかが架空取引であ
るとの事実は立証されていない。
(2)出資法違反について
出資法2条1項所定の「預り金」というためには,少なくとも,投下元本
の返還が保証されて授受される資金でなければならない。
しかし,オーナー契約には減額条項(甲12契約5条2項)が含まれてお
り,オーナー契約の募集パンフレット(甲13)の「Q&A」でも,配当や
再売買代金について「毎年お支払する子牛予定売却利益金や契約満了時にお
支払する買取代金は制度上あらかじめ保証されたものではありません。契約
書上は,牛の市場価格の前年比30%以上の下落や為替変動等により飼料価
格が高騰した時は,子牛予定売却利益金や契約満了時にお支払する買戻代金
の変更の可能性があると記載しております。」と記載されている。
したがって,オーナー契約代金は,契約の制度上,元本の返還が保証され
て授受された資金ではない。
(3)財産状況に関する説明義務違反について
オーナー契約には選択条項が含まれており,契約満了時に再売買代金債務
が発生するかどうかは,契約締結時に確定しているわけではない。
また,オーナー契約に係る再売買で取得した繁殖牛は,肥育して出荷する
か,他のオーナー契約の対象牛として売却することにより,安愚楽本体の売
上を生み出すのである。新たな売上を生み出すための牛の取得は,商取引と
しての仕入にほかならない。再売買による牛の取得は,法律上も取引実態上
も仕入である。
さらにいえば,安愚楽本体の破産手続において,破産管財人は,オーナー
契約に基づく毎年の子牛の買取り及び契約満了時の繁殖牛の再売買による取
得のいずれもが「課税仕入」(他人からの資産の譲受け)であることを前提
として還付申告を行い,172億円もの消費税還付金の支払を受け,これを
破産財団に組み入れている。この事実も,契約満了時の再売買が仕入である
ことを示している。
したがって,再売買代金債務が契約締結時に債務として発生しているとい
うことはできないから,当該債務を契約締結年度の貸借対照表に負債として
計上しないこと,あるいは損益計算書に引当金を計上しないことは,公正妥
当な会計慣行に違反しているわけではない。原告ら主張のような財産状況に
係る説明義務違反はない。
7争点2に関する原告らの主張
(1)被告A及び被告B
ア被告Aの役員在任中(平成7年8月1日~平成11年4月15日)既に
繁殖牛不足が常態化していた。
被告Aは,契約満了時に返還すべきオーナー契約代金を売上に計上して
いたのでは本当の収支が分からないこと,安愚楽本体が公表する牛の頭
数が不自然であることに気付いていたのであるから(被告Aの本人尋問
調書2頁,4頁.12頁),オーナー制度が出資法に違反すること,繁
殖牛不足が常態化していたことも容易に認識し得たはずである。
イ被告Bは,平成13年4月2日から平成15年5月15日までの約2年
間,安愚楽本体の取締役を務めるとともに,安愚楽本体の総務部長兼広
報室長として,会社案内,オーナー制度のパンフレットの作成に携わっ
ており,繁殖牛不足が常態化していたこと,オーナー制度が事業として
成り立っておらず早晩破綻する可能性が高いことを認識していたか,容
易に認識し得たはずである。
ウしたがって,被告A及び被告Bは,安愚楽本体の取締役として,J社長
の業務執行を監督し,オーナー制度による違法な資金集めを止めさせる
職務上の義務があったのにこれを怠り,漫然とオーナー制度による資金
集めの継続を放置したから,民法719条(安愚楽本体との共同不法行
為)又は旧有限会社法30条の3により準用される旧商法266条の3
第1項(安愚楽本体の役員としての職務懈怠。なお,以下,有限会社の
取締役に関する場合も,準用根拠規定である旧有限会社法30条の3の
摘示を省略する。)に基づき,オーナー制度で損害を被った原告らとの関
係で損害賠償責任を負う。
エなお,原告らの損害賠償債権の消滅時効の起算日は債権発生時(契約代
金支払時)であるから,消滅時効に関する被告Bの主張は失当である。
(2)被告C
被告Cは,平成21年9月5日以降,安愚楽本体の監査役であった。
安愚楽本体は,平成21年4月1日に株式会社になった時点で既に200
億円以上の負債を負っており,会計監査人の選任を要する大会社であったか
ら(会社法2条6号,328条2項),被告Cは,法律上当然に,会計監査
のみならず業務監査を行うべき職務上の義務を負っていた。大会社にあって
は,監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定することができないから
である(会社法389条1項)。
もし適切な業務監査を行っていたなら,被告Cは,安愚楽本体が巨額の負
債を抱えており,近い将来に経営破綻が必至であったことや,繁殖牛不足が
常態化していたこと,安愚楽本体がその事実を秘匿してオーナーを募集して
いることを容易に認識し得た。その場合,被告Cには,取締役に対し,新規
のオーナー契約の勧誘を止めるよう進言する等してこれを止めさせる職務上
の義務が発生したものと解される。ところが,被告Cは,何ら業務監査を行
うこともなく,漫然とオーナー制度による資金集めの継続を放置した。
仮に,被告Cの監査役としての業務が会計監査に限定されるとしても,前
記のとおり,安愚楽本体は,公正妥当な企業会計慣行に従うことなく,再売
買代金債務を簿外処理し,これを貸借対照表上の負債に計上していなかった
のであり,被告Cは,これを是正するよう取締役に進言することさえしな
かった。
したがって,被告Cには,少なくとも重大な過失による職務上の義務懈怠
があり,民法719条(安愚楽本体との共同不法行為)又は会社法429条
1項(安愚楽本体の役員としての職務懈怠)に基づき,オーナー制度で損害
を被った原告らとの関係で損害賠償責任を負う。
なお,被告Cは,安愚楽本体との間で締結した監査役に就任する旨の委任
契約(以下「本件監査役就任契約」という。)が錯誤により無効であると主張
するが,本件監査役就任契約に関し,被告Cの認識に錯誤はない。
(3)被告エー・アイ・シー
被告エー・アイ・シーは,損害保険代理店業や労働者派遣事業を行うこと
を目的として平成8年11月28日に設立された安愚楽本体の子会社である
が,安愚楽本体にKを派遣し,安愚楽本体と共同してグループ会社の指導を
行っており,安愚楽本体から,毎月,Kの派遣料及び経営指導料として13
5万円の支払を受けていた(甲129,130)。
また,被告エー・アイ・シーは,安愚楽本体の牛の保険を取り扱うことに
よりオーナー制度を支えており,その取締役がJ社長の長男夫婦(被告Dと
被告E)であったことからも明らかなとおり,繁殖牛不足が常態化していた
にもかかわらず,安愚楽本体がオーナー契約の募集を続けていたことを熟知
していた。
さらに,被告エー・アイ・シーは,牧場の畜舎,事務所,関連会社のホテ
ル・売店,全国の車両など,安愚楽グループ会社の保険全般を取り扱い,安
愚楽本体が行う違法な和牛預託商法の根幹を支えていた。
したがって,被告エー・アイ・シーは,民法719条(安愚楽本体との共
同不法行為)に基づき,オーナー制度で損害を被った原告らとの関係で損害
賠償責任を負う。
(4)被告D,被告E及び被告F
被告Dは,J社長と同居していた跡継ぎたる長男であり,平成10年6月
16日から平成20年10月10日まで被告エー・アイ・シーの取締役で
あったほか,前記のとおり,安愚楽の里(ホテルフロラシオン那須を経営す
る有限会社)の取締役及びクリエイティブフード(那須でレストランを経営
する株式会社)の監査役にも就任していた。
被告Eは,かつて安愚楽本体のオーナー営業部に勤務しており,J社長の
長男である被告Dと婚姻した後,前記のとおり,被告エー・アイー・シーの
取締役及びエー・シー・エフ(那須でレストランを経営する株式会社)の代
表取締役に就任していた。
被告Fは,J社長の娘(被告Dの妹)であり,前記のとおり,クリエイ
ティブフードの監査役及びAMフードの監査役に就任していた。
上記5社は,いずれも安愚楽本体の子会社であり,J社長は,信頼する身
内である被告D,被告E及び被告Fの3名に安愚楽本体の事業に協力・加担
するよう依頼し,上記3名を子会社の役員に就任させたのであり,上記被告
3名は,いずれも,繁殖牛不足が常態化していたにもかかわらず,安愚楽本
体がオーナー契約の募集を続けていたこと,オーナー制度が事業として成り
立っておらず早晩破綻する可能性が高いことを認識していたか,容易に認識
し得たはずである。
したがって,上記被告3名は,民法719条(安愚楽本体との共同不法行
為)又は旧商法266条の3第1項若しくは会社法429条1項(子会社の
役員としての職務懈怠)に基づき,オーナー制度で損害を被った原告らとの
関係で損害賠償責任を負う。
(5)被告G
被告Gは,前記のとおり,安愚楽宮崎の代表取締役であり,安愚楽本体の
各地(宮崎県,岩手県,北海道)の牧場の場長を務めており,毎年,安愚楽
本体の本社で開催される場長会議にも出席し,安愚楽本体が保有する飼養頭
数を把握していたし,1頭1産の前提がおよそ成り立っていないこと(その
達成率が6割程度であること)も熟知していた。被告Gは,オーナー制度を
続けていても安愚楽本体に利益が出ていないこと,繁殖牛不足が常態化して
いたにもかかわらず,安愚楽本体がオーナー契約の募集を続けていたこと,
オーナー制度が事業として成り立っておらず早晩破綻する可能性が高いこと
を認識していたか,容易に認識し得たはずである。
したがって,被告Gは,安愚楽宮崎が安愚楽本体による違法行為に加担す
ることがないよう,安愚楽宮崎の代表取締役としての業務遂行をすべき義務
があったのにこれを怠ったから,民法719条(安愚楽本体との共同不法行
為)又は旧商法266条の3第1項若しくは会社法429条1項(子会社の
役員としての職務懈怠)に基づき,オーナー制度で損害を被った原告らとの
関係で損害賠償責任を負う。
(6)被告H
被告Hは,前記のとおり,安愚楽東日本の代表取締役であり,牧場の場長
として,毎年,安愚楽本体の本社で開催される場長会議にも他に用事がない
限り出席しており,繁殖牛不足が常態化していたにもかかわらず,安愚楽本
体がオーナー契約の募集を続けていたこと,安愚楽本体が行うオーナー制度
が出資法に違反すること,オーナー制度が事業として成り立っておらず早晩
破綻する可能性が高いことを容易に認識し得たはずである。
したがって,被告Hは,安愚楽東日本の代表取締役として,安愚楽東日本
が安愚楽本体の違法行為に関与しないようにすべき業務上の義務を負ってい
たのにこれを怠ったから,民法719条(安愚楽本体との共同不法行為)又
は会社法429条1項(子会社の役員としての職務懈怠)に基づき,オー
ナー制度で損害を被った原告らとの関係で損害賠償責任を負う。
(7)被告I
被告Iは,前記のとおり,バンナの取締役又は代表取締役であり,牧場の
場長として,毎年,安愚楽本体の本社で開催される場長会議にも出席し,安
愚楽本体が保有する飼養頭数を把握していたし,繁殖牛不足が常態化してい
たこと,1頭1産の前提がおよそ成り立っていないこと(その達成率が6割
程度であること),オーナー契約終了後の繁殖牛の市場での売却価格が15
万円程度であるのに,オーナー契約での繁殖牛の再売買代金が200万円な
いし500万円と設定されており,オーナー制度が事業として成り立ってい
ないこと,安愚楽本体が行うオーナー制度が特定商品預託法及び出資法に違
反することを認識していた。
したがって,被告Iは,バンナが安愚楽本体による違法行為に加担するこ
とがないよう,バンナの代表取締役としての業務遂行をすべき義務があった
のにこれを怠ったから,民法719条(安愚楽本体との共同不法行為)又は
会社法429条1項(子会社の役員としての職務懈怠)に基づき,オーナー
制度で損害を被った原告らとの関係で損害賠償責任を負う。
8争点2に関する被告らの主張
【被告Aの反論】
(1)被告Aの取締役在任中,安愚楽本体では,会社の持分全部を保有していた
J社長がKと相談して業務執行を決定しており,取締役会は開催されていな
かった。
被告Aは,取締役在任中,平成9年春までは場長会議にも出席していたの
で,安愚楽本体が保有する牛の頭数の推移は把握していた。しかし,オー
ナー制度に関することは,会社の持分全部を保有していたJ社長が,Kなど
極く少数の者と相談して決定しており,被告Aは,J社長からオーナー制度
に関与しないよう指示されていたのであり,繁殖牛不足の事実を知ることも
できなかった。
(2)被告Aは,平成7年8月1日に取締役に就任したものの,J社長に命ぜら
れ,平成9年5月以降はバンナに出向となって石垣島の牧場に勤務したが,
バンナ出向を命ぜられたのは,オーナー制度に関してJ社長に進言したから
である。その経緯は,次のとおりある。
被告Aは,オーナー契約代金はオーナーからの借金同様と理解していたの
で,平成9年に入ってから,オーナー制度が経営として成り立つものかどう
かを試算してみた。試算は,①肥育牛出荷額とオーナー契約販売価格をいず
れも1頭85万円,②肥育牛の飼養期間を30か月,③牝牛の妊娠可能月齢
(繁殖牛になる月齢)を14か月,④繁殖牛の年間出産率を90%として
行った。試算の結果,粗利(年15%程度)をもってオーナーへの配当(年
5%)の支払と契約代金の返還をしようとすれば,オーナー契約の契約期間
を10年とする必要があること,もし3年程度で契約代金を返還しようとす
れば必然的に借金(すなわち新たな契約代金の受入れ)を増やすしかないこ
とが分かった。なお,1頭を85万円としたのは,平成8年の国産黒毛和種
牛の相場によったものである。
そこで,被告Aは,J社長に対し,試算結果を示し,安愚楽本体が取り組
むべき課題はオーナー契約のあり方を改善することである旨を進言した。と
ころが,J社長は,進言に立腹し「お前は会社を潰すつもりか」と被告Aを
一喝した。その直後,被告Aは,栃木県那須塩原市の本部から沖縄県石垣島
のバンナへの出向を命ぜられ,バンナ牧場で稼働することになったのである。
【被告Bの反論】
(1)被告Bが取締役に在任したのは平成13年4月2日から平成15年5月1
5日までの間であるところ,原告らのオーナー契約はいずれも被告Bの取締
役退任後に締結されている。したがって,被告Bが,それら契約について,
取締役として注意義務違反を理由に不法行為責任を問われる理由はない。ま
た,被告Bが取締役を退任してから本件訴訟が提起される平成25年12月
25日までに10年が経過しているから,仮に被告Bに旧商法266条の3
の損害賠償義務が発生していたとしても,その義務は消滅時効により消滅し
た。
(2)以下に述べるとおり,被告Bが,繁殖牛不足の事実を知っていたか容易に
知り得た,あるいはオーナー制度が早晩破綻する可能性が高いことを認識し
ていたという事情はなかったから,悪意又は重大な過失により,オーナー制
度による違法な資金集めを止めさせるべき職務上の義務を怠ったということ
もない。
被告Bの取締役在任中,取締役会やその他の会議において繁殖牛の実在数
が契約頭数に満たないことが話題になったことはなかった。また,オーナー
に割り当てる繁殖牛が不足しているのにオーナー契約を締結するという不正
工作は,経営トップ(J社長,K,Lの3名)とオーナー管理部及び畜産部
のごく一部の従業員にしか知られていない秘密であった(そのことは原判決
も事実認定している。)。被告Bは,平成14年2月から同年12月までの間
オーナー営業部を統括していたが,オーナー営業部(東京都)は,Kが情報
を独占するオーナー管理部(栃木県那須塩原市)とは別の部署であり,繁殖
牛不足が被告Bに知らされることはなかった。
原判決は,安愚楽本体が毎年作成する棚卸表(繁殖牛の実在数の記載があ
る)とオーナー向け事業報告書(契約頭数の記載がある)とを比較すれば,
繁殖牛不足の事実は知ることが可能であったというが,平成21年1月に行
われた農水省の査察によってさえ繁殖牛不足の事実が発覚することがなかっ
たことからすれば,被告Bが取締役在任中に繁殖牛不足の実態を容易に知り
得なかったことも明らかである。
(3)仮に,被告Bに何らかの職務上の義務懈怠があったとしても,以下に述べ
るとおり,被告Bが何をしてもオーナー制度による違法な資金集めを止めさ
せることは不可能であったから,被告Bの義務懈怠と原告らの損害の間には
相当因果関係がない。
安愚楽本体は,J社長のワンマン経営であり,取締役が経営方針に関する
意見を言うことなど許されなかった。実際,被告Bは,請われて平成13年
4月に安愚楽本体の常務取締役に就任したにもかかわらず,予算に口を挟ん
だことから,平成14年2月,J社長の一存で平取締役に降格となった(乙
C24の2頁)。被告Aも,オーナー契約に関する意見を述べたところ,取
締役であったにもかかわらず,安愚楽本体からバンナに出向となったのであ
り,ワンマン経営の実情は明白であった。
また,被告Bの取締役在任時期において既にオーナー契約代金が売上の大
半を占めており,オーナー制度を止めることは直ちに安愚楽本体の経営破綻
につながることであったから,J社長が,オーナー制度に関する被告Bの何
らかの進言に耳を貸すはずがないのである。
(4)なお,被告Bは,平成17年7月1日以降,安愚楽本体の「執行役員」と
いう肩書であったが,安愚楽本体は委員会設置会社ではないから,ここでい
う「執行役員」は会社法上の役員(業務に関する意思決定を行う機関の一
員)ではない。会社法上の「執行役員」としての職務の懈怠を理由に,被告
Bが原告らに対する損害賠償責任を負うことはない。
【被告Cの反論】
(1)安愚楽本体は,監査役の監査の範囲を会計監査に限定する旨の定款の定め
を有する特例有限会社であったが,平成21年4月1日の商号変更により株
式会社となった時点で,会社法2条6号ロ所定の大会社(直前事業年度末の
貸借対照表で200億円以上の負債がある会社)で,かつ,非公開会社で
あったから,会計監査人を置くことが義務付けられ,監査役の監査の範囲を
会計監査に限定することができない会社となっていた(会社法328条2項,
389条1項)。
(2)ところが,被告Cは,本件監査役就任契約を締結した際,定款を示され,
監査の範囲が会計監査に限定される旨の説明を受け,会計監査のみを行う監
査役に就任することを承諾した。また,被告Cの監査役在任中(平成21年
9月5日から平成23年10月7日の辞任届提出日まで),会計監査人が置
かれることがなかった。
このような場合,被告Cが本件監査役就任契約で委任された業務(会計監
査)を超えて業務監査を行う前提を欠くものと解される。すなわち,会計監
査人が置かれると監査役の職責が業務監査まで拡大されるのは,会計監査人
が監査対象である取締役から独立して会計監査業務を行うため,監査役に業
務監査の権能まで付与することが不可欠なためである。会計監査人が置かれ
ていない以上,会計監査人の独立性確保の要請は生じないから,監査役に業
務監査を行わせる必然性もないのである。
したがって,被告Cは業務監査を行う義務を負っていなかったと解される
のであり,その義務があることを前提に被告Cの会社法429条1項所定の
損害賠償責任を論じた原判決は誤っている。
(3)仮に,平成21年4月1日の株式会社への移行時点で,安愚楽本体の監査
役が(定款変更手続を経ることなく)法律上当然に業務監査まで行う義務を
負うに至ったという原判決の解釈が正しいとすれば,被告Cの監査役就任契
約に係る意思表示は,業務の範囲という契約の要素に錯誤があるから民法9
5条により無効である。すなわち,被告Cと安愚楽本体との間には無効な本
件監査役就任契約しかなかったのであるから,被告Cが監査役として会社法
429条1項所定の損害賠償責任を負うことはない。
(4)仮に,被告Cが業務監査を行う義務を有していたとしても,被告Cには義
務懈怠はない。
そもそも,監査役が行う業務監査とは,取締役の職務の執行が法令・定款
を遵守して行われているかどうかの監査であるところ,被告Cは,Kに対し
監査役をサポートする機関の設置を依頼し,取締役や経理職員から事業概況
の聴き取り調査をし,公認会計士又は監査法人による監査を受けるよう再三
指摘し,経理規程の導入を提案するなどの業務監査を行っていたのであり,
被告Cには悪意又は重大な過失に基づく業務懈怠はない。
また,被告Cは,安愚楽本体がオーナー制度により資金調達をしていたこ
とやオーナー契約の契約満了時に再売買代金債務を負うことを知らなかった
し,繁殖牛の実在数が契約頭数に不足している事実は社内でもごく一握りの
人間にしか知らされない極秘事項であったから(業務監査をした農林水産省
の担当者でさえ見抜くことができなかったのである。),被告Cとしては,就
任後の最初の決算期(平成22年3月期の決算書類の作成がされる同年5月
頃)において,取締役が株主総会に提出しようとする議案書,貸借対照表,
損益計算書及び事業報告書(並びに附属明細書)を検討しても,オーナー制
度による資金調査が違法なものであること,再売買代金債務が膨大となって
いて早晩経営破綻が避けられないことを見抜くことなど困難であった。
以上のとおり,被告Cには,平成22年6月以降に原告らが締結したオー
ナー契約によって生じた損害について,職務上の悪意又は重大な過失はない。
【被告エー・アイ・シーの反論】
(1)被告エー・アイ・シーは,保険代理店として,安愚楽本体及びその従業員
を相手として損害保険を取り扱っていただけであり,安愚楽本体の経営内容
を知り得る立場になかったし,実際にも知らなかった。
(2)被告エー・アイ・シーは,安愚楽本体の子会社にすぎず,安愚楽本体の経
営に干渉する義務も権限もないのであって,安愚楽本体が自己の資金繰りの
ために行っていたオーナー制度に干渉し,その停止を働きかける義務など負
わないのであって,原告ら主張損害につき民法719条に基づく責任も生じ
ない。
【被告D,被告E及び被告Fの反論】
(1)上記3名は,J社長の近親者であるが,繁殖牛不足という安愚楽本体内部
の事情を知る余地はなかったし,現に知らなかった。
(2)上記3名は,いずれも安愚楽本体の完全子会社(安愚楽の里,被告エー・
アイ・シー,エー・シー・エフ,クリエイティブフード,AMフード等)の
役員にすぎず,安愚楽本体の経営に干渉する義務も権限もなかったのであっ
て,安愚楽本体が自己の資金繰りのために行っていたオーナー制度に干渉し,
その停止を働きかける職務上の注意義務など負うはずがない。したがって,
上記3名が,原告ら主張損害につき民法719条に基づく責任も旧商法26
6条の3第1項又は会社法429条1項に基づく責任も負う理由はない。
【被告G,被告H及び被告Iの反論】
(1)安愚楽宮崎,安愚楽東日本及びバンナは,預託牧場を経営させるために設
立された安愚楽本体の完全子会社にすぎず,上記3名は,それら完全子会社
の役員として,安愚楽本体からの預託牛の飼養業務及び周辺の預託農家の管
理業務に従事していただけで,オーナー契約の勧誘に関し共同不法行為を構
成するような業務に従事した事実はなく,原告ら主張損害につき民法719
条に基づく責任を負う理由はない。
(2)上記完全子会社の役員にすぎなかった上記3名は,安愚楽本体の経営に干
渉する義務も権限もないのであって,安愚楽本体が自己の資金繰りのために
行っていたオーナー制度に干渉し,その停止を働きかける職務上の注意義務
など負うはずがなく,原告ら主張損害につき旧商法266条の3第1項又は
会社法429条1項に基づく責任を負う理由はない。
第3当裁判所の判断
1認定事実
証拠(後掲の書証,被告A,被告B,被告C,被告H,被告G,被告Iの各
原審本人尋問の結果)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
(1)安愚楽本体の経営体制等
ア安愚楽本体は,その本部機能(社長室,総務部,経理部,オーナー管理
部等)を栃木県那須塩原市埼玉2番地37に置き,畜産部を栃木県那須郡
那須町大字高久丙1796番地(商業登記上の本社所在地)に置き,オー
ナー営業部・まきば営業部を東京都中央区日本橋3丁目5番13号三義ビ
ル3階に置いていた(甲102~104)。
オーナー営業部・まきば営業部は,オーナー契約を募集する部署であり,
様々な広告媒体にオーナー制度を掲載し,チラシやパンフレットを送付
するなどして契約締結までの業務を行うが,オーナー契約全体を管理す
るのは本部に置かれたオーナー管理部である。
イ安愚楽本体の経営の実権を握っていたのは,J社長(昭和19年6月1
7日生),K(昭和14年6月10日生)及びJ社長の実弟のL(昭和2
9年4月8日生)の3人であった(以下,その3名を「経営陣3名」とい
う。)。経営陣3名以外の者が,安愚楽本体の経営に口を挟むことはなかっ
た。経営陣3名の中でも,安愚楽本体の持分全部を保有するJ社長の発言
力が非常に大きく,J社長は,平成2年3月16日に代表取締役に就任し
た後,基本的に,経営に関する最終判断を一人で行っていた。
ウKは,平成8年6月1日以降,取締役在任中(同日から平成10年1月
5日まで及び平成15年6月5日から平成20年3月31日まで)もそう
でない時期も,安愚楽本体の会計部門やオーナー管理部を統括する「ナン
バー2」の地位を占めていた(甲56,59)。
エLは,平成2年3月に代表取締役を退いた後も専務取締役として安愚楽
本体に残り,畜産部の責任者の地位にあった(甲104,被告I本人尋問
の結果)。畜産部は,安愚楽本体の全従業員約700人のうち約600人
を擁する最大の事業部門であり,全国の直営牧場(平成23年3月末時点
で全国40か所)に従業員を配置し,預託牧場(同日末時点で全国338
か所)の管理業務も行い,飼養牛を管理していた。
オ平成23年3月末での飼養牛の頭数は,直営牧場分7万3408頭,預
託牧場分7万1818頭(合計14万5226頭)であった(甲64)。
カ安愚楽本体は,牧場の経営規模を拡大したいが,牛や牧場を担保として
金融機関から多額の融資を受けることができなかったため,まとまった資
金を得る手段として,昭和56年の創業当時から,オーナー契約を行って
いた(甲13,乙C31)。
(2)安愚楽本体の顧客に対する交付書面
ア安愚楽本体は,オーナー契約を締結しようとする場合,特定商品預託法
3条1項所定の書面(以下「契約締結前交付書面」という。)を顧客に交付
し,契約締結後は同法3条2項所定の書面(以下「契約締結後交付書面」
という。)を交付していた。これら書面の記載は,一部(契約締結後交付書
面のクーリングオフに関する記載)不正確な部分があった以外,特定商品
預託法及び同法施行規則に従ったものであり(甲94の資料1),契約締
結後交付書面には,直近3事業年度の売上の内訳及び金額(特定商品預託
法施行規則3条所定の様式1で業務の概況として開示が義務付けられてい
る事項である。),及び直近事業年度末の貸借対照表(同条所定の様式2所
定のもの)が記載されており,オーナーは,それら記載に基づき,クーリ
ングオフをするかどうかを判断することができた。
イ安愚楽本体は,毎年,決算手続が終了した後の7月初旬頃,オーナー契
約を締結している全顧客に事業報告書を交付していた。事業報告書は,直
近3事業年度の売上の内訳及び金額,貸借対照表の記載のほか,損益計算
書や直近事業年度末の飼養総数(直営牧場と預託牧場の双方で飼養してい
る牛の総数)及びそのうち契約頭数(オーナー牛の頭数),今後の事業の
見通しなども記載されていた。
ウ事業報告書に記載された,売上金額,出荷売上,オーナー契約代金,飼
養総数及び契約頭数は,別表4のとおりである(甲10。末尾に「オ」を
付した牛の頭数がオーナー牛の総数(契約頭数)であり,「総」を付した
牛の頭数は飼養総数である。)。
オーナー契約代金(末尾に「オ」を付した金額)の右側括弧内の数字は,
オーナー契約代金が売上金額に占める割合である。すなわち,売上金額の
実に7割前後がオーナー契約代金であった。
また,各事業年度末におけるオーナー契約残高(再売買未了の契約代金
の総額,当該事業年度においてオーナーに支払った配当の総額は,別表4
の付記のとおりであった(甲28の4頁)。すなわち,平成15年3月末
において,オーナー契約残高は既に約1853億円に達していた。
エ事業報告書に記載された売上金額,出荷売上及びオーナー契約代金は,
顧問税理士が集計し,決算承認された損益計算書の記載と同じであり,
正確なものであった。
事業報告書に記載された契約頭数は,実際の契約頭数とほぼ同じである
が,実際の契約頭数は,平成21年3月末が9万2505頭,22年3月
末が10万3190頭,平成23年3月末が10万0365頭であるから
(甲64),その3事業年度末の数字が実数より2%程度少なくなってい
る。これは,契約頭数が牝牛総数(繁殖牛と繁殖牛でない牝牛の合計)を
超えないよう操作されたためである。
事業報告書に記載された飼養総数は,棚卸表の記載と同じであり,実在
する飼養牛の正確な頭数である。
(3)繁殖牛不足
ア直営牧場又は預託牧場では,子牛が産まれると,アルファベット2文
字と4桁の数字からなる独自の耳標番号札を子牛の耳に装着し,耳標番
号で牛の個体管理を行っており,毎月1回,棚卸しの結果を安愚楽本体
の畜産部に報告していた。そして,畜産部では,報告を受けたデータを
コンピュータ管理し,毎月1回,全国の飼養牛のデータを集計した棚卸
表を作成していた(甲69)。
イオーナー管理部は,オーナー契約情報(契約者氏名,契約番号,契約
コース,契約頭数等)をコンピュータ管理していた部署であり,オーナー
に牛を割り当てる作業も担当していた。
オーナー管理部のオーナー契約管理システムと畜産部の飼養牛管理シス
テムは,統合されていなかった(甲56)。
ウ別表4「牛の頭数」欄の頭数(事業報告書に記載された頭数)を比較す
れば,飼養総数に占める契約頭数の割合は,最も少ない年でも約65%
(平成21年3月末),最も大きい年だと約86%(平成15年3月末)
にも達する。
しかし,契約頭数全部が繁殖牛だとすると(本来そのはずである。),
上記割合は,かなり不自然である。なぜなら,平成22年3月末でみると,
安愚楽本体の飼養総数15万1160頭のうち,牝牛は10万1464頭
(総数の約67%)いるが,そのうち繁殖牛は6万9970頭(総数の約
46%)にすぎないからである(甲55)。繁殖牛の割合が年によって大
きく変動することも考えにくく,飼養総数の3分の2又はそれ以上が繁殖
牛であるという事態は,ありそうになく,かなり不自然なのである。
エ実際に,遅くとも平成8年頃(15期又は16期)には,オーナーに販
売できる繁殖牛が不足しており,販売できる繁殖牛がいないのに,安愚楽
本体は,繁殖牛以外の牛の耳標番号をオーナー契約に割り当て,オーナー
契約を締結していた。すなわち,実在しない繁殖牛が実在するかのように
装ってオーナーに繁殖牛を「空売り」していたのである。
安愚楽本体は,もともと,経営拡大資金を調達するためオーナー契約を
始めたが,遅くとも平成8年頃には,巨額の再売買代金を調達するため新
たなオーナー契約で更なる巨額の資金集めをしなければならない状態(い
わば自転車操業の状態)となっていた。この状態でオーナー契約の募集を
止めると直ちに倒産に直面するため,安愚楽本体は,繁殖牛不足となって
もオーナー契約を止めることができず,そのため,安愚楽本体は,繁殖牛
不足が常態化しても,対外的には繁殖牛が足りていると装って新たなオー
ナー契約を勧誘していた。
すなわち,平成9年4月に発行した「安愚楽牧場だより」というパンフ
レットでは「いつでも自分の牛を見ていただけます」「万が一,牛が病気
や事故で死亡しても安愚楽保有の代わりの牛が提供されます」などと説明
し,安愚楽本体は,契約頭数を超える頭数の繁殖牛が実在するかのように
装っていた(甲24の2・3)。また,平成19年4月以降に安愚楽本体
が作成したオーナー制度に関するパンフレット(甲13)でも,「安心し
てご契約いただくために」と題して「Q&A」形式でオーナー制度の説明
がされ,その中で「Q,『私の牛』は本当にいるのですか?」「A.いま
す」と断言している。
オ26期以降の繁殖牛の実在数,飼養総数に占める繁殖牛の割合及び契約
頭数のうち繁殖牛が実在する割合は,下記のとおりであった(甲70,9
6。なお,契約頭数は,事業報告書の記載による。)。

繁殖牛の実在数契約頭数実在率
26期(平成19年3月期)5万1428頭9万2023頭55.9%
(飼養総数の40.0%)
27期(平成20年3月期)6万0760頭9万7249頭62.5%
(飼養総数の43.8%)
28期(平成21年3月期)6万3380頭9万1249頭69.5%
(飼養総数の45.3%)
29期(平成22年3月期)6万9970頭10万0622頭69.5%
(飼養総数の46.3%)
30期(平成23年3月期)6万5572頭9万7986頭66.9%
(飼養総数の45.2%)
カ繁殖牛が空売りされていることは,経営陣3名によって,社内でも秘密
にされ,他の役員や幹部職員が知ることはなかった。安愚楽本体の従業員
で,繁殖牛の実在数が契約頭数に満たない事実を知っていたのは,畜産部
のM(オーナー管理部との間の牛のデータ送信に関与),オーナー管理部
のN及びその後任者であるO(畜産部との牛のデータの遣り取りに関与)
のみであった(甲56~58,78)。被告A,被告B,被告Cは,いず
れも安愚楽本体の役員であったが,繁殖牛の実在数が契約頭数に満たない
事実を知らなかったし,その事実を誰かから教えられることもなかった。
(4)オーナー契約の実際
オーナー契約の約定は,前提事実(6)のとおりであったが,契約満了時に
オーナーが繁殖牛を引き取ることは事実上不可能であるから,選択条項に基
づきオーナー牛を引き取る旨の申出がされる例は一度もなかった。安愚楽本
体もオーナーも,契約満了時に再売買代金を授受するのを当然のこととして
オーナー契約を締結していた。また,オーナー牛は,契約期間中に死ぬこと
もあったし,毎年必ず子牛を産むわけではない。安愚楽本体の牧場において,
1年に産まれる子牛の頭数は繁殖牛の頭数の6割から8割程度であった。
ところが,安愚楽本体は,オーナー牛が実際に生きているかどうか,実際
に子牛を産んだかどうかにかかわりなく,常に,オーナーに対し,契約所定
の配当(年5%前後)と再売買代金(契約代金と同額)の支払をしており,
減額条項の適用がされることはなかった(甲58,68,102)。安愚楽
本体もオーナーも,毎年所定の配当を授受すること及び契約満了時に契約代
金と同額の再売買代金を授受することを当然のこととしてオーナー契約を締
結していた。
(5)農水省の立入検査(甲93,94)
ア特定商品預託法の対象商品に家畜が加えられた平成9年当時,全国の十
数社が,安愚楽本体のオーナー制度と同様,販売した和牛を一定期間預
かった後に買い戻すという契約により資金集めをしていたが,多数の業者
が出資法違反等の罪名により摘発され(甲118~125〔枝番のあるも
のは全ての枝番を含む〕),平成19年当時,同様の資金集めをしていた
のは,安愚楽本体と「ふるさと牧場」だけであった。「ふるさと牧場」に
ついては,平成18年頃から買戻金の支払が遅滞している旨の苦情が多数
寄せられる事態となったことから,所轄官庁である農水省が,平成19年
12月,特定商品預託法10条に基づく立入検査を実施したところ,飼養
牛が全く存在しないという異常事態が発覚した。
イ安愚楽本体のオーナー制度については,苦情が表面化していたわけでは
なかったが,農水省は,「ふるさと牧場」の実態が上記のような異常なも
のであったため,安愚楽本体のオーナー制度についても牛の実在を確かめ
る必要があると判断し,平成21年1月,特定商品預託法に基づき,安愚
楽本体への立入検査を実施した。
ウ安愚楽本体側では,オーナー制度の実態を熟知しているKが,主に,農
水省の立入検査に対応した。
Kは,平成20年11月における契約頭数が9万頭を超え,オーナー契
約残高が3000億円を超えていたにもかかわらず,農水省の担当者に対
しては,同時期の契約頭数が6万7501頭,契約残高が約2315億円
であり,契約頭数のうち直営牧場で飼養する繁殖牛は4万0517頭であ
る旨の虚偽の説明をした。
農水省の担当者は,畜産部の耳標番号に基づいて,直近(平成21年1
月20日)の飼養牛のデータも検査をしたところ,直営牧場で飼養されて
いる繁殖牛とみられる牛の頭数が約3万1000頭にすぎない事実を把握
したので,Kに対し,繁殖牛が不足している理由を尋ねた。これに対し,
Kは,平成20年11月から平成21年1月までの間に,直営牧場から預
託牧場に繁殖牛を移動させたためであるとの虚偽の説明をした。
農水省の担当者は,Kの説明を不審に思ったが,その説明が虚偽である
とはせず,一応これを受け入れた。そして,農水省の担当者は,契約頭数
を大きく超える約13万6000頭の牛が実際に飼養されていたことも分
かったことから,繁殖牛の実在数と契約頭数の関係を詳しく調査すること
まではせず,立入検査を終えた。
エ安愚楽本体は,農水省の要求に応じる形で,平成21年7月14日付け
書面により,同年3月31日時点における財務や飼養牛の状況について報
告したが,その報告書面では,事業報告書と同じ数字(飼養総数が13万
9973頭,契約頭数が9万1249頭)が記載されていた。すなわち,
平成20年11月から平成21年3月までの4か月で契約頭数が2万頭以
上も増えるという不自然な報告となっていた。
農水省の担当者は,契約頭数が不自然であることに気付いたが,それで
も,繁殖牛の実在数と契約頭数の関係を詳しく調査をするということまで
はしなかった。
オ安愚楽本体は,オーナー契約は牛の販売であり,契約代金は売上であり,
契約満了時の再売買は牛の仕入であるとの考え方を採用し,それら売上と
仕入を損益計算書に記載していたものの,貸借対照表には契約頭数を注記
するだけで契約残高(再売買代金債務の総額)を記載していなかった。そ
のため,契約締結前交付書面及び契約締結後交付書面でも契約残高の告知
はされていなかった。
農水省の担当者は,立入検査において,契約締結前交付書面,契約締結
後交付書面,平成10年3月期から平成19年3月期までの10事業年度
分の貸借対照表を入手し,これらを点検したが,契約残高が貸借対照表に
記載されておらず,顧客に告知されていないことが特定商品預託法に違反
する旨の指摘はされなかった。
カその後,平成21年9月に,特定商品預託法の所轄官庁が農水省から消
費者庁に変わった。消費者庁による安愚楽本体に対する立入検査がされる
ことはなかった。
(6)被告Aの就労状況等(乙D1)
ア被告A(昭和17年6月28日生)は,以前は,那須ロイヤルホテルに
長く勤務し,主に労務管理を担当していたが,安愚楽本体が那須でホテル
経営を企画していたことから,平成6年2月(51歳時),安愚楽本体に
入社し,平成7年8月1日,従業員たる身分を有したまま取締役に就任し
た。しかし,取締役に就任した後も,所属する部署,与えられた業務及び
給与面での待遇は何ら変化がなかった。
イ被告Aは,安愚楽本体がオーナー制度で資金調達していること,オー
ナー契約が繁殖牛を販売し,契約満了時に再売買により繁殖牛を買い戻し,
その間オーナーに配当金を支払うことを内容とする契約であること,安愚
楽本体はオーナー契約代金も出荷売上と同様に売上としていたことを知っ
ていた。しかし,被告Aは,オーナー契約代金はオーナーに返すべき金で
あって本当の意味での売上ではないと理解しており,オーナー契約を続け
ていて安愚楽本体の経営に利があるのかどうか疑問に思っていた。
ウ被告Aは,取締役であったが事業報告書を見たことがなかったし,飼養
牛の頭数が契約頭数を上回っていることも知らなかった。
エ被告Aは,妥当と思われる数値を用いて試算をしたところ,繁殖牛1頭
を85万円でオーナーに販売したとしても,契約期間が10年より短けれ
ば安愚楽本体の借金が増えるだけである旨の試算結果が得られたので,J
社長に対し,オーナー契約のあり方について質問したり,自己の見解も交
えて進言したりもした。
これに対し,J社長は,平成9年5月,被告Aに対し,オーナー制度に
関して口出しすることを禁じるとともに,バンナへの転籍及び沖縄県石垣
島のバンナ牧場での勤務を命じた。
オ被告Aは,オーナー制度に口出ししたことが原因で左遷されたと考えた
が,経営再建中のバンナの牧場経営に尽力することにも仕事のやり甲斐を
感じたので,命ぜられたとおり石垣島に転勤した。
カ被告Aは,平成11年3月,那須に呼び戻され,被告エー・アイー・
シーの取締役に就任し(安愚楽本体の取締役は平成11年4月15日に退
任),安愚楽本体やその関連会社の損害保険に関する保険代理店の仕事を
行い,平成14年6月,60歳で定年退職した。
キ被告Aが安愚楽本体の取締役に在任中,安愚楽本体の取締役会が開催さ
れたことはなかった。また,被告Aがバンナや被告エー・アイー・シーで
仕事をしていた際,飼養頭数や繁殖牛の実在数を知る機会はなかった。
(7)被告Bの就労状況等(乙C24)
ア被告B(昭和17年1月1日生)は,以前は,日本板硝子ディーアンド
ジーシステム株式会社の専務取締役であったが,平成13年3月(59歳
時),総務・人事全般を管理する常務取締役として,請われて,安愚楽本
体に入社した。
イ被告Bは,平成13年4月2日から平成15年5月15日まで取締役で
あり,その間合計12回取締役会が開催されたが,取締役会で事業損益や
飼養牛の状況が報告されたり,飼養牛の棚卸表の数字が開示されることな
どなかったし,経営に関する決議がされることもなかった。
被告Bが安愚楽本体の経営状況を知る唯一の手段は,事業報告書を読む
ことであったが,これも幹部社員に自動的に配布されるものではなく,信
用調査会社への説明資料として必要であるとしてKに要求して初めて配布
されるものであった。
ウ被告Bは,繁殖牛の実在数が契約頭数に足りない事実を知らなかった。
エ被告Bは,予算執行に関する口出しをしたところ,それから間もなくの
平成14年2月1日,常務取締役から平取締役に降格となり,総務・人事
全般の担当からオーナー営業部(オーナー管理部ではない。)の売上や人事
を管理する部署に配置換えとなり,同年9月からは東京都のオーナー営業
部に転勤となり,その後,自ら申し出て取締役を退任した。
オ被告Bは,平成15年5月16日から平成17年6月30日まで,安愚
楽の里への出向となり,ホテルフロラシオン那須で仕事をし,平成17年
7月1日以降(平成23年7月31日に退職するまで),執行役員待遇の
総務部長,広報室長兼ホテルフロラシオン那須営業部顧問となり,総務全
般の管理と広報を担当していた。
なお,平成15年6月以降,安愚楽本体には,被告Bのように「執行役
員」との肩書を持つ従業員が置かれたが,安愚楽本体は委員会設置会社で
はなく,会社法所定の執行役員(経営判断を行う役員)が置かれていたわ
けではない。
(8)被告Cの就労状況等(乙C28)
ア被告C(昭和24年2月10日生)は,税務署職員であったが,平成1
5年頃(54歳時)に退職して税理士を開業していたところ,Kから,死
亡した監査役の後任として,非常勤の監査役に就任するよう求められ,平
成21年9月5日(被告C60歳時),安愚楽本体の監査役に就任した。
安愚楽本体の定款は,監査役を置くこと及び監査役の監査の範囲を会計
に限定する旨の定めを置いており,被告Cも,Kから,定款を示され,監
査の範囲が会計監査に限定される監査役(以下「会計限定監査役」という。
また,これとの対比で,監査の範囲に制限のない監査役を「通常監査役」
という。)に就任することを了解し,安愚楽本体との間で本件監査役就任契
約を締結した。
イ被告Cは,監査役に就任した後,安愚楽本体が長年オーナー制度を運営
していること,これが,繁殖牛をオーナーに売却して売上を獲得し,オー
ナーから委託を受けて売却した当該牛を飼養し,契約期間満了時に再売買
によりオーナーから当該牛を再度仕入れるという仕組みであることを知っ
た。
ウところで,安愚楽本体は,平成21年4月1日,商号変更により,会社
法の規定が適用される株式会社となったが,その時点で負債が200億円
以上であったため,会社法2条6号所定の大会社であった。
安愚楽本体は,株式譲渡に取締役会の承認を必要とする非公開会社たる
大会社であったため,公認会計士又は監査法人を会計監査人として選任し,
その者に会計監査をさせなければならなかったが(会社法328条2項,
329条1項),会計監査人を選任していなかった。
エ森田税務会計事務所は,安愚楽本体から決算書類の作成や税務申告を依
頼されており,平成22年5月,監査役の被告Cに対し,29期(平成2
2年3月期)の損益計算書,貸借対照表等を送付し(乙C29),被告C
は,会計監査の観点からそれら書類を点検した。
被告Cは,上記送付を受けた時点で初めて,安愚楽本体は大会社として
会計の外部監査(会計監査人による監査)を導入する必要があることを
知った。その導入のためには,大会社に相応しい経営管理体制を整備し,
会計処理基準を見直し,連結決算の煩雑さを避けるための完全子会社の吸
収合併を検討するなど,計画的な対応が必要となることから,被告Cは,
「2015年3月期を監査報告期間とする会計監査導入スケジュール会
計監査導入に向けた各フェーズのご説明」と題する書類(乙C30)を作
成し,平成22年9月,これを安愚楽本体の取締役会に提出し,平成26
年4月1日(平成27年3月期の期首)までに会計監査人設置会社として
の体制を整えるよう提言した。
オしかし,安愚楽本体の経営陣3名は,特段の対応をしなかった。また,
被告Cも,非常勤の会計限定監査役としての役割以上の役割を果たすこと
はなかった。
(9)被告G,被告H及び被告Iの就労状況等(乙C9,14,21)
ア安愚楽宮崎,安愚楽東日本及びバンナは,いずれも,安愚楽本体が持分
全部を保有する子会社たる牧場経営会社であり,安愚楽本体から預託され
た牛を飼養していた。
イ安愚楽本体は,自己の従業員を,出向という形で子会社の役員又は従業
員に配属していた。また,牧場経営会社たる子会社の場合,子会社の財務
や経理は安愚楽本体が直接管理しており,出向によって配属された者は,
たとえ代表取締役であっても,他の従業員と同様,直営牧場での飼養業務
と周辺の預託牧場の管理業務に専念しており,財務や経理に関する経営判
断を任されるということはなかった。
ウ被告Gは安愚楽宮崎の代表取締役であり,被告Hは安愚楽東日本の代表
取締役であり,被告Iはバンナの代表取締役であったが,いずれも,安愚
楽本体に雇用され,安愚楽本体から賃金の支払を受ける従業員であり,J
社長から代表取締役となるよう命ぜられてこれに応じたというだけであっ
て,子会社の代表取締役となった後も安愚楽本体から従前同様の賃金の支
給を受けており,それとは別に役員報酬を受け取っていたわけではなかっ
た。また,子会社の代表取締役として出向した前後で支給される賃金の額
が変わることもなかった。
エ被告G,被告H及び被告Iは,年2回安愚楽本体で開催される場長会議
(主な直営牧場の牧場長12名が集まる会議)に出席していたが,場長会
議では,安愚楽本体の財務や飼養牛の状況あるいはオーナー契約の動向と
いった経営の根幹に関わることが話題となったり,告知されることはなく,
事業報告書が配布されることもなかった。
2争点1(オーナー契約の勧誘の違法性の有無)について
(1)特定商品預託法違反
前記認定の事実関係に照らせば,安愚楽本体の飼養総数のうち繁殖牛が占
める割合はせいぜい5割程度と考えられるから,平成11年3月期末から平
成23年3月期末までの飼養総数と契約総数の比率は,余りにも不自然であ
る(契約総数が多すぎる。)。そのことに,平成19年3月期末以降の5年
間において契約頭数(全て繁殖牛であることが前提である。)のうち繁殖牛
が実在する割合が7割未満であった事実を併せ考えると,遅くとも平成11
年3月期末以降,繁殖牛不足が常態化しており,契約頭数のうち繁殖牛が実
在する割合は6割ないし7割程度にすぎず,契約頭数の3割ないし4割は空
売りであったと推認するのが相当である。
ところが,安愚楽本体は,平成11年3月期末以降も,繁殖牛不足の事実
を秘匿し,対外的には繁殖牛が足りていると装って新たなオーナー契約を勧
誘していたのであるから,その勧誘は,特定商品預託法施行令3項4号所定
の事実(繁殖牛の保有の状況)につき,故意に事実を告げず,不実のことを
告げてされたということができ,特定商品預託法4条1項の禁止に抵触する
違法なものであったといわなければならない。
(2)出資法違反
ア出資法2条所定の「預り金」とは,不特定かつ多数の者からの預貯金と
同様の経済的性質を有する金銭の受入れであり,具体的には,元本の返還
を約しての不特定かつ多数の者からの金銭の受入れのうち,預け人の便宜
のために当該金銭の受入れがされるものを意味すると解される。
イオーナー契約では,契約代金が繁殖牛やその飼養の対価であり,配当が
産まれた子牛の対価であり,再売買代金が繁殖牛の対価である旨が合意さ
れており,かつ,選択条項(引取りと再売買の選択)及び減額条項(経済
状況に応じた再売買代金の減額)が合意されているのであり,これらの合
意が社会経済実態に即したものであれば,オーナー契約締結時に授受され
る契約代金が出資法2条所定の「預り金」に該当することはあり得ない。
ウしかし,前記認定のとおり,安愚楽本体は,実際に契約対象牛の出産や
生存とは無関係にオーナーに配当や再売買代金を支払っていたのであり,
オーナー契約は実在商品との関連性が希薄な取引であったということがで
きる。
エまた,遅くとも平成11年3月期末以降,繁殖牛が実在しないオーナー
契約の勧誘及び締結が大規模に継続されていたのであるから,同時期以降,
契約代金が繁殖牛やその飼養の対価であるとの社会経済実態も,選択条項
及び減額条項を適用する社会経済実態も失われていたというほかない。
オさらに,オーナー側は,繁殖牛不足の実態を知らなかったとはいえ,繁
殖牛の出産や生存とは無関係に配当や再売買代金の支払がされることを当
然のこととしてオーナー契約を締結していたとの実情がある。
カ上記ウないしオの契約の実情に照らせば,遅くとも平成11年3月期末
以降に授受されたオーナー契約代金は,繁殖牛やその飼養の対価としてで
はなく,かつ,安愚楽本体に対する貸金(安愚楽本体の事業経営の便宜の
ための金銭の提供)や出資金(安愚楽本体との共同事業を行うための金銭
の提供)としてでもなく授受されたものとみなければならない。
そうすると,そのオーナー契約代金は,不特定かつ多数の者からの元本
の返還を約する金銭の受入れであって,当該金銭を預け人の便宜(本件
の場合,オーナーの利殖)のために授受されたものと認めるのが相当で
あるから,同時期以降のオーナー契約の勧誘は,出資法に違反する違法
なものということができる。
(3)説明義務違反について
前提事実(8)ウ(消費税還付の事実)及び認定事実(5)オ(立入検査におけ
る指摘がされなかった事実)に照らせば,たとえ平成11年3月期末以降の
オーナー契約の勧誘が特定商品預託法及び出資法に違反する違法なもので
あったとしても,オーナー契約に基づく再売買が繁殖牛の仕入であるとの会
計処理が違法であると断定することには疑問の余地がある。
再売買が仕入であり,再売買までオーナー牛が安愚楽本体の資産でないと
すれば,オーナー牛を貸借対照表の資産の部に計上せず,契約残高(再売買
代金債務の総額)を貸借対照表の負債の部に計上しなかったことは違法な会
計処理とまではいえないことになり,オーナー契約勧誘の際に契約残高を告
知しなかったことや,契約締結後交付書面で契約残高を告知しなかったこと
を違法ということはできない。
なお,安愚楽本体は,契約締結後交付書面や事業報告書により,オーナー
に対し,各事業年度のオーナー契約代金を開示しているのであり,これによ
り,契約代金の数年分の契約残高があるとの大雑把な推測は可能であったと
いうことができる(例えば,平成15年3月期の契約代金が約404億円で
あれば,安愚楽本体がその4倍ないし5倍程度の再売買代金の支払義務を負
うであろうとの大雑把な推測が可能である。)。
(4)安愚楽本体の不法行為責任
原告らに対するオーナー契約の勧誘は,いずれも平成11年3月期末以降
にされており,上記(1)(2)のとおり違法なものである。
前記認定の事実関係に照らせば,J社長を中心とする経営陣3名は,遅く
とも平成8年頃までに,繁殖牛が足りなくても,倒産を避けるためオーナー
契約の販売促進を継続するとの経営方針を固めた事実,オーナー制度運営の
あり方に関する限り,経営陣3名以外の容喙を一切許さないとの業務管理の
方針を固めた事実を容易に推認することができる。
したがって,原告らに対する違法なオーナー契約の勧誘は,経営陣3名が
決めた経営方針に基づき,繁殖牛不足が常態化していることを知らない安愚
楽本体の従業員によってされたのであり,法人が組織として行った不法行為
と評価するのが相当であるから,安愚楽本体は,民法709条に基づき,
オーナー契約締結により原告らに生じた損害を賠償すべき責任を負う。
そこで,以下,被告らも安愚楽本体とともに賠償責任を負うかどうかにつ
いて検討する。
3争点2のうち被告A及び被告Bの責任について
(1)有限会社には取締役会という機関が存在しないから,有限会社に複数の取
締役がいる場合,定款又は社員総会によりそのうち一人が代表取締役とされ
ている場合であっても,個々の取締役が業務執行権限を有し,取締役の過半
数で業務執行を決するとされている(旧有限会社法26条)。
(2)安愚楽本体では,遅くとも平成8年頃までに繁殖牛不足が生じており,被
告Aの取締役在任中(平成7年8月1日から平成11年4月15日まで),
繁殖牛が不足しているのにオーナー契約の勧誘や締結を続けた結果,遅くと
も平成11年3月末時点では,繁殖牛不足が常態化し,オーナー契約の勧誘
が特定商品預託法及び出資法に抵触する違法なものとなったのである。
また,被告Bの取締役在任中(平成13年4月2日から平成15年5月1
5日まで)も,それ以前からの特定商品預託法及び出資法に抵触する違法な
勧誘が継続されていたのである。
したがって,被告Aや被告Bは,いずれも,有限会社の取締役として,そ
の取締役在任中,安愚楽本体が行っていた法律違反の営業を改めるための行
動をとるべき職務上の義務を負っていたといわなければならない。
(3)しかしながら,前記説示のとおり,経営陣3名は,繁殖牛が足りなくても,
倒産を避けるためオーナー契約の販売促進を継続し,経営陣3名以外の者が
オーナー制度運営のあり方に容喙することを一切許さないとの方針で会社経
営をしていたのであり,実際にも,被告A及び被告Bは,繁殖牛不足の事実
を知らなかったし,誰からも教えられることがなかったのである。
(4)その上,J社長は,安愚楽本体の持分全部を有していて,一人でいつでも
社内最高レベルの意思決定(一人社員総会による意思決定)が可能な絶対的
権限者であり,経営陣3名で決めた上記方針の妨げになりそうな役員や社員
を,いつでも本部から遠ざけることができたのである。
実際にも,被告Aは,オーナー制度による資金調達のあり方を改善するよ
うJ社長に進言したところ,オーナー制度に口出しすることを禁じられ,か
つ,沖縄県石垣島への転勤を命ぜられ,被告Bは,予算執行に関する口出し
をしたところ,それから間もなくの平成14年2月1日,常務取締役から平
取締役に降格となり,かつ,同年9月以降は東京都に転勤となり,二人とも,
経営に関する情報が集まる本部から遠ざけられたのである。
(5)さて,安愚楽本体は,前記認定のとおりの事業報告書を毎年オーナーに配
布していたところ,被告Bはこれを入手したことがあったし,事業報告書が
外部への情報発信文書であったから,被告Aもこれを入手する可能性はあっ
たということができる。そして,事業報告書に記載された契約頭数及び飼養
総数(別表4)を見て,両者の比率が不自然である(契約頭数が多すぎ
る。)ことに着目すれば,事業報告書からオーナー制度の運営が非正常であ
ることを察知できる可能性は否定できない。
しかし,そのように察知した被告Aや被告Bが,法律違反の営業がされな
いようオーナー制度に関する情報を社内で収集しようとしても,同被告らの
地位や上記(3)(4)の経営の実情に照らせば,同被告らにおいて,オーナー契
約の実情,特に繁殖牛不足がいつ頃始まり,どの程度まで深刻化しているの
かを知り,安愚楽本体が法律違反の営業をしないよう会社の業務執行を管理,
統制すべき職務上の義務を果たすことは極めて困難であったといわなければ
ならず,同被告らには,上記職務を行うにつき,悪意はもとより,重大な過
失(容易に上記職務上の義務を果たすことができたのにそれさえもしなかっ
た不作為)があったということはできない。
したがって,旧商法266条の3第1項に基づく原告らの被告A及び被告
Bに対する請求は理由がない。
(6)最後に不法行為責任についてみるに,原告らに対するオーナー契約の勧誘
が法人の不法行為と評価すべき場合,法人の不法行為と併存する当該法人内
部の個人(法人の機関を構成する個人及び従業員)の不法行為というものを
観念することはできなくなるから,民法719条に基づく原告らの被告A及
び被告Bに対する請求も理由がない。また,前述したところを総合すると,
当該法人内部の個人(安愚楽本体の経営陣3名)に不法行為が成立するとし
て,これらとの共同不法行為についても,その成立を認めることは困難であ
る。
4争点2のうち被告Cの責任について
(1)監査役は,取締役の職務の執行を監査する(すなわち取締役の職務の執行
が法令又は定款に違反していないかどうかを調査する)機関であるが,安愚
楽本体のように株式譲渡制限がある株式会社(非公開会社)にあっては,監
査役の監査の範囲を会計に関するものに限定することができる(会社法38
9条1項)。これは,株主と経営者の距離が近い(株主が経営に関与するこ
とも困難ではない)非公開会社にあっては,株主がその権能を駆使して自ら
業務監査を行うことも可能であるため(会社法367条,357条1項,3
75条1項,371条2項),監査役の監査の範囲を会計に限定し,会社の
機関を簡素化することが容認されているためである。
(2)会計限定監査役は,取締役が株主総会に提出しようとする会計に関する議
案,書類,計算関係書類(貸借対照表,損益計算書,事業報告書,附属明細
書)を調査し,その調査の結果を株主総会に報告する職責を負い,その職責
に必要な限度での調査権限を有するが(会社法389条2項~4項),取締
役への報告義務(会社法382条)や取締役会への出席義務(会社法383
条1項)はなく,業務監査に係る職務権限は認められておらず,取締役の違
法・不正な行為を防止・是正することは要請されていないと解される。
(3)ところが,会計限定監査役しか置いていない非公開会社であっても,負債
が200億円以上の大会社となった場合,会社の機関として会計監査人と通
常監査役の両方を置くことが義務付けられ(会社法328条2項),かつ,
会計限定監査役を置くことが許されなくなる(会社法389条1項)。これ
は,非公開会社であっても,負債の規模が大きい会社となると,計算関係も
複雑となり,債権者等の利害関係人も多岐にわたるため,会社法は,会計専
門家による外部監査を通じ,大会社の会計処理の適正さを担保しようとした
ためである。
(4)会計限定監査役しか置いていない非公開会社が大会社になり,会計監査人
を置こうとする場合,代表取締役(株主総会招集権者)及び株主は,次のア
ないしウの手続を履践することが求められる。
ア最初に,株主総会の特別決議に基づいて定款を変更し(会社法466条,
309条2項11号),会計監査人を選任する旨を定める。たとえ,機関
の設置が義務付けられる場合(会社法327条,328条)であっても,
定款で定めなければ当該機関を設置することができないからである(会社
法326条2項)。
イ次に,監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定
め(会社法381条1項により無効となったと解される定め)を廃止し,
会計限定監査役の任期を終了させる(会社法336条4項3号)。
ウ上記定款変更の後,株主総会の決議により,会計監査人と通常監査役を
選任する。この場合,会計監査人は,公認会計士又は監査法人でなければ
ならない(会社法337条1項)。
(5)非公開会社が大会社に該当した場合,代表取締役及び株主は,速やかに上
記手続を履践して会計監査人と通常監査役を選任すべきであり,それがされ
ないのは選任懈怠である。会社法は,過料の制裁により間接的に選任懈怠の
早期解消を促していると解されるが(会社法976条22号),それ以上に,
選任懈怠が生じた場合,会計限定監査役に通常監査役と同様の職責(業務監
査をも行う職責)を負わせていると解釈し,会社法429条1項を適用する
に当たり,通常監査役と同じ基準でその損害賠償責任を議論することは相当
でないと考える。その理由は次のとおりである。
まず,監査役就任契約により監査権限が会計監査に限定されている者が,
業務監査の職責まで負わせられる契約上の根拠がない。
また,業務監査を行うことを予定して選任されたのではない会計限定監査
役に業務監査の職責を負わせることは,会社にとって不足であるばかりでな
く,業務監査の職責を果たさない場合の法的責任(会社法423条及び42
9条)が生じることになるため会計限定監査役にとっても過酷である。上述
したとおり,大会社に該当する場合,会計監査人と監査役を選任した上,そ
れぞれの業務を分業することになるが,これらの選任までの間,会計限定監
査役が,これらの者が行うべき職務をひとりで行うことには,少々無理があ
る。会社法は,その336条4項3号において,通常監査役を置く必要が生
じた場合,会計限定監査役の任期を終わらせることにしており,会計限定監
査役に通常監査役の職責を果たすことを当然のこととして求めているわけで
はないと考える。
(6)以上にみたとおり,被告Cは,安愚楽本体が大会社となった後に監査役に
就任したが,会計限定監査役として就任する旨の本件監査役就任契約に基づ
いて就任したにすぎないから,会計監査の職責を負うものの,当然には業務
監査の職責まで負うわけではない。したがって,本件監査役就任契約が錯誤
により無効であるとの被告Cの主張は理由がない。
そこで,以下,被告Cが前述の限度で監査役としての注意義務を負うとい
うことを前提に,被告Cの会社法429条1項に基づく損害賠償責任につい
て検討する。
(7)被告Cが平成22年5月に提供を受けた計算関係書類(乙C29)に不正
経理があるとか虚偽記載があったというわけではない(そのような事実を認
めるための証拠は見当たらない。)。原告らは,再売買代金債務を簿外処理し,
これを貸借対照表上の負債に計上していなかったことが不正な会計処理であ
ると主張するが,その主張が採用できないことは前記2(3)のとおりである。
したがって,被告Cに,不正経理や計算関係書類の虚偽記載を悪意又は重
大な過失によって見逃したとの職務懈怠があったということはできない。
(8)被告Cが監査役に就任した当時既に,繁殖牛不足が常態化しているのに長
年にわたり違法なオーナー契約の勧誘が継続されていたところ,会計監査
(取締役が株主総会に提出しようとする会計に関する議案,書類,計算関係
書類の調査)を通じて,上記事実を察知することが容易であったとすれば,
たとえ被告Cが会計限定監査役であったとしても,被告Cには,その事実及
び違法な業務を是正する必要がある旨を株主総会に報告し,警鐘を鳴らす義
務が生じたということができる。そして,平成22年5月に提供された計算
関係書類(乙C29)を見れば,オーナー契約代金が出荷売上約170億円
の3倍以上(約603億円)に達していること,オーナーからの子牛及び繁
殖牛の仕入額が,オーナー契約代金を超える約688億円に達していること
が分かり,オーナー制度が経営の重荷になっていることが分かる。
しかし,さらに進んで,計算関係書類から,繁殖牛不足が常態化している
のに長年にわたり違法なオーナー契約の勧誘が継続されていた事実を察知す
ることは容易ではなかったというほかなく,安愚楽本体の違法な業務を看過
したことに関連して,被告Cに,会計監査の過程における悪意又は重大な過
失による職務の懈怠があったということもできず,会社法429条1項に基
づく原告らの被告Cに対する請求は理由がない。
(9)仮に,新たに会計監査人とともに通常監査役が選任されるまでの間,会計
限定監査役である被告Cが通常監査役としての職責を負うとしても,前記3
で述べたとおり,安愚楽本体の経営陣3名は,繁殖牛が足りなくても,倒産
を避けるためオーナー契約の販売促進を継続し,経営陣3名以外の者がオー
ナー制度運営のあり方に容喙することを一切許さないとの方針で会社経営を
していたのである。その他,前記3で検討した事情を併せ考えると,被告C
についても,オーナー契約の実情,特に繁殖牛不足がいつ頃始まり,どの程
度まで深刻化しているのかを知り,安愚楽本体が法律違反の営業をしないよ
う会社の業務執行を管理,統制すべき職務上の義務を果たすことは極めて困
難であったといわなければならず,被告Cに,上記職務を行うにつき,悪意
又は重大な過失があったということはできない。
(10)なお,被告Cに不法行為責任が生じる余地がないことは,被告A及び被
告Bにおいて述べたのと同様であり,民法719条に基づく原告らの被告
Cに対する請求も理由がない。
5争点2のうち被告エー・アイ・シーの責任
上記2に説示の安愚楽本体の原告らに対する不法行為(特定商品預託法及び
出資法に違反して原告らに対してされたオーナー契約の違法な勧誘行為)は,
経営陣3名が決めた経営方針を実行する過程で行われた法人の不法行為である
ところ,被告エー・アイ・シーが,安愚楽本体の上記経営方針の決定に関与し
た事実,安愚楽本体による違法な勧誘を助長するため何らかの関与をした事実,
繁殖牛不足が常態化していたのに契約の勧誘が継続されていたのを知っていた
事実については,これを認めるに足る証拠は見当たらない,
被告エー・アイ・シーが,J社長の長男夫婦(被告Dと被告E)が経営に関
与する会社であること,安愚楽本体にKを派遣していた会社であること,安愚
楽本体や関連会社の損害保険を取り扱っていたことは,共同不法行為責任を肯
定する根拠(安愚楽本体の原告らに対する不法行為との関係での安愚楽本体と
の関連共同性)としては不十分なものというほかない。
したがって,民法719条に基づく原告らの被告エー・アイ・シーに対する
請求は理由がない。
6争点2のうち被告D,被告E及び被告Fの責任について
上記被告3名が,安愚楽本体の上記経営方針の決定に関与した事実,安愚楽
本体による違法な勧誘を助長するため何らかの関与をした事実,繁殖牛不足が
常態化していたのに契約の勧誘が継続されていたのを知っていた事実について
は,これを認めるに足る証拠は見当たらないし,上記被告3名がJ社長の近親
者であることから直ちにこれを推認することも相当ではない。上記被告3名に
ついて,共同不法行為責任を肯定する根拠(安愚楽本体の原告らに対する不法
行為との関係での安愚楽本体との関連共同性)はないというほかない。
また,安愚楽本体の子会社の役員が,親会社である安愚楽本体の経営方針を
監視したり是正したりする職務上の義務を負うとは解されない。
したがって,民法719条又は旧商法266条の3第1項若しくは会社法4
29条1項に基づく,原告らの上記被告3名に対する請求は理由がない。
7争点2のうち被告G,被告H及び被告Iの責任について
上記被告3名が,繁殖牛不足が常態化していたのに契約の勧誘が継続されて
いたのを知っていた事実を認めるに足る証拠は見当たらないし,上記被告3名
が場長会議に出席していたとしても,オーナー制度の運営が非正常であること
を察知できたとも考えにくい。上記被告3名について,共同不法行為責任を肯
定する根拠(安愚楽本体の原告らに対する不法行為との関係での安愚楽本体と
の関連共同性)はないというほかない。
また,安愚楽本体の子会社の役員が,親会社である安愚楽本体の経営方針を
監視したり是正したりする職務上の義務を負うとは解されない。
したがって,民法719条又は旧商法266条の3第1項若しくは会社法4
29条1項に基づく,原告らの上記被告3名に対する請求は理由がない。
8結論
以上の次第で,原告らの被告らに対する請求はいずれも理由がないから棄却
すべきであり,原判決のうち原告らの被告B及び被告Cに対する請求を認容し
た部分は相当ではないから,同被告らの控訴を容れて同部分を取り消し,同部
分に係る原告らの請求を棄却し,原告らの控訴はいずれも理由がないものとし
て棄却することとし,主文のとおり判決する。
大阪高等裁判所第6民事部
裁判長裁判官山田陽三
裁判官橋詰均
裁判官細川二朗

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