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H14.12.18東京地方裁判所平成14年(ワ)第10400号保証債務請求事

主文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は,原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
  被告は,原告に対し,金76万0362円を支払え。
第2 事案の概要
本件は,東京東和信用組合がAに対して貸し付けた金200万円の貸金債権を譲り
受けた原告が,東京東和信用組合との間で上記貸付けについて保証した被告に対
し,保証契約に基づき,上記貸金の残元本75万2508円,平成13年11月2
0日当時の上記貸金の残元金77万6000円に対する同日から平成14年2月4
日までの約定利息金4092円及び同月5日当時の残元本75万2508円に対す
る同日から75日分の約定利息金3762円の合計金76万0362円の支払を請
求するのに対して,被告が,約定による保証債務の除斥期間を経過しているとして
争っている事案である。
1 争いのない事実等
(1)ア 原告は,特定住宅金融専門会社の債権債務の処理の促進等に関する特別措置
法に基づき設立された,同法第2条第2項に規定された特定住宅金融専門会社から
譲り受けたその貸付債権その他の財産の管理,回収及び処分等を業とする会社であ
る(争いのない事実)。
 イ 被告は,信用保証協会法に基づいて,中小企業等が金融機関から融資を受け
る際に,当該金融機関に対してその債務を保証すること等を業とする法人である
(争いのない事実)。
(2) 東京東和信用組合は,A(以下「A」という。)に対し,平成7年12月7
日,以下の約定で金200万円を貸し付けた(以下「本件消費貸借契約」という。
争いのない事実,甲1)。
ア 弁済期限 平成14年12月7日
イ 弁済方法 平成8年2月7日を初回とし,以後毎月7日限り金2万4000円
を,最終回に金3万2000円をそれぞれ支払う。
ウ 利息   年2.5パーセント(年365日の日割計算)
エ 期限の利益喪失 支払の停止又は破産,和議開始,会社更生手続開始,会社整
理開始若しくは特別清算開始の申立てがあった場合には,通知催告等がなくとも一
切の債務について当然期限の利益を失い,直ちに債務を弁済する(以下この規定を
「本件当然喪失約款」という。)。
(3) 被告は,東京東和信用組合との間で,平成7年12月7日ころ,東京東和信用
組合のAに対する本件消費貸借契約に基づく貸金債権(以下「本件貸金債権」とい
う。)を担保するため,以下の約定で信用保証契約(以下「本件信用保証契約」と
いう。)を締結した(争いのない事実,甲6,弁論の全趣旨)。
ア 被告は,Aが最終履行期限(期限の利益喪失の日を含む。以下同じ。)後60
日を経てなお被保証債務の全部又は一部を履行しなかったときは,東京東和信用組
合の請求により,東京東和信用組合に対し保証債務(以下「本件保証債務」とい
う。)を履行するものとする。ただし,東京東和信用組合は,特別の事情があると
きは,60日を経ずして被告に対し本件保証債務の履行請求を行うことができる。
イ 本件保証債務履行の範囲は,主たる債務に利息及び最終履行期限後60日以内
の延滞利息を加えた額を限度とする。
ウ 延滞利息は,貸付利率と同率とする。
エ 東京東和信用組合は,最終履行期限後2年を経過した後は,被告に対し,本件
保証債務の履行を請求することができない(以下この規定を「本件履行期限約款」
という。)。
(4) Aは,平成8年5月7日,東京地方裁判所に自己破産を申し立て(以下「本件
破産申立て」という。),同裁判所は,同年10月8日,Aに対して破産宣告決定
を行い(以下「本件破産宣告」という。),同年11月13日,Aの破産宣告が同
日付け官報に掲載された(争いのない事実,甲2(枝番を含む。),12,1
8)。
(5) Aは,上記(4)の各事実を東京東和信用組合に通知せず,また,本件破産申立
てに際して届け出た債権者名簿にも同信用組合を記載しなかった(甲3,18)。
(6) Aは,東京東和信用組合に対し,本件貸金債権につき,以下のとおり返済を行
った(甲9,10,18)。
平成8年 4月 8日      2万7829円
     同年 5月 9日      2万8066円
     同年 6月10日      2万8027円
     同年7月 8日      2万7813円
     同年 8月 7日      2万8140円
     同年 9月 9日      2万7467円
     同年10月 7日      2万7787円
     同年11月 7日      2万7857円
     同年12月 9日      2万7448円
   平成9年 1月 7日      2万7635円
     同年 2月 7日      2万7237円
     同年 3月 7日      2万7533円
     同年 4月 7日      2万7369円
     同年 5月 7日      2万7652円
     同年 6月 9日      2万7053円
     同年 7月 7日      2万7329円
     同年 8月 7日      2万7384円
     同年10月 8日      2万7379円
     同年11月 4日      2万7512円
     同年12月 2日      2万7425円
  平成10年 1月 6日      2万7323円
     同年 3月30日      2万8202円
     同年 5月11日      8万2451円
     同年 6月26日      2万7510円
     同年 7月29日      2万7202円
     同年 8月31日      2万7377円
     同年10月 1日      2万7326円
        同月29日      2万7155円
     同年11月30日      2万7378円
  平成11年 1月 4日      2万6942円
        同月29日      2万7099円
     同年 3月 1日      2万7125円
        同月26日      2万6684円
     同年 4月30日      2万6871円
     同年 6月 1日      2万6846円
        同月29日      2万6844円
     同年 8月 5日      2万6795円
     同年 9月29日      2万7250円
(6) 東京東和信用組合は,原告に対し,同年10月25日,本件貸金債権を譲渡し
た(争いのない事実,甲4(枝番を含む。),5)。
(7) 被告と原告は,同日,「保証付貸付債権等の譲渡に係る覚書」(甲5)を締結
し,上記(6)の債権譲渡に伴い原告,被告間に移転した本件信用保証契約について,
上記(3)の各約定を変更しないことを確認した(争いのない事実,甲5,18)。
(8) Aは,原告に対し,本件貸金債権につき,以下のとおり弁済したため,本件貸
金債権の残元本は金75万2508円となった(甲10,18)。
  平成12年 1月31日      2万8022円
     同年 3月 3日      2万8075円
     同年 3月31日      2万8128円
     同年 5月 1日      2万7879円
     同年10月30日      2万9787円
  平成13年 3月 1日      3万0828円
     同年 5月 2日      3万1036円
     同年 6月11日      3万1230円
     同年10月 2日      3万2163円
  平成14年 2月 5日      2万3492円
(9) 原告は,平成13年11月20日,本件破産申立て及び本件破産宣告の事実を
確認し,同日,被告に対し,Aの破産宣告通知を送付した(甲2(枝番を含
む。),甲18)。
(10) 被告は,原告に対し,同月21日,保証債務消滅通知書を送付し,保証債務
の履行を拒んだ(争いのない事実,甲8,18)。
2 争点
 (1) 原告の被告に対する保証債務履行請求権が,本件破産申立てを始期とする除
斥期間経過により消滅したか否か。
 (2) 原告の被告に対する保証債務履行請求権が,本件破産宣告を始期とする除斥
期間経過により消滅したか否か(判断の必要がなかった。)。
3 争点に対する主張
 (1) 争点1(原告の被告に対する保証債務履行請求権が,本件破産申立てを始期
とする除斥期間経過により消滅したか否か。)について
(被告の主張)
ア 本件消費貸借契約においては,本件当然喪失約款によって,債務者の破産申立
てにより当然期限の利益を失うと定められており,Aは,平成8年5月7日の破産
申立てによって,同日に期限の利益を失った。
イ 他方,本件信用保証契約においては,本件履行期限約款によって,期限の利益
喪失の日を含む最終履行期限後2年を経過した後は,東京東和信用組合は,被告に
対し,保証債務の履行を請求することができないと定められており,被告と原告
は,東京東和信用組合から原告に債権譲渡された本件信用保証契約について,本件
信用保証契約の各約定を変更しないことを確認している。したがって,Aが破産申
立てによって期限の利益を失った平成8年5月7日から既に2年を経過しているか
ら,原告は,被告に対し,保証債務の履行を請求することができない。
(原告の主張)
ア 被告は,信用保証をした債権者からの代位弁済請求に先行する必須の要件とし
て,事故報告書の提出及び協議を必要としており,債権者の請求なく当然に期限の
利益が喪失する場合においても,債権者が債務者に対する期限の利益喪失の通知と
催告を行うことをも代位弁済の必須の要件としている。これらの要件は,債権者が
債務者の期限の利益喪失の事由(以下単に「喪失事由」という。)に該当する事実
を知っていることを前提としているのであるから,本件履行期限約款における「最
終履行期限」についても,債権者がその事実を知ったときと解すべきである。
イ 本件消費貸借契約における本件当然喪失約款は,債務者の破産申立てにより期
限の利益が当然に喪失し,本件貸金債権の民法上又は商法上の消滅時効が破産申立
ての時点から開始するという点では債権者に不利であるところ,債権者には,客観
的に破産申立ての事実を知る手段は担保されていない。そこで,債務者が,債権者
に対して,破産申立ての事実を隠ぺいする手段を講じたために,債権者がこれを知
ることができなかった場合などは,債務者が期限の利益の当然喪失を主張すること
は信義則上禁止されると解すべきである。
  本件において,Aは,破産申立て後も平成13年までその事実を東京東和信用
組合及び原告(以下「原告ら」という。)に対して告知せず,本件貸金債権を破産
手続において届け出ることもせず,原告らに対し弁済を続けたため,原告らは,期
限の利益喪失を覚知し得なかったのであるから,Aは,原告に対し,信義則上,本
件破産申立てによる期限の利益喪失を主張できないというべきである。そして,保
証人たる被告も,附従性及び正義衡平の観点から,同様にこれを主張できないと解
すべきである。
 (2) 争点2(原告の被告に対する保証債務履行請求権が,本件破産宣告を始期と
する除斥期間経過により消滅したか否か。)について
(被告の主張)
ア Aは,平成8年10月8日に破産宣告を受けており,破産法第17条により本
件貸金債権について履行期限が到来し,同日から2年後の平成10年10月8日は
経過したので,原告は,保証債務の履行を請求することはできない。
(原告の主張)
ア 破産法第17条の破産宣告による期限到来の効果は,破産手続の迅速な遂行な
いしは破産債権者間の公平平等を図るために認められたものであるから,その効力
は,破産手続の関係する範囲内に限られ,連帯保証人たる被告には及ばない。
イ したがって,本件貸金債権につき,最終履行期限が到来したのは,原告が,A
の破産申立て及び破産宣告の事実を知った平成13年11月20日であり,本件保
証債務の除斥期間は経過していない。
第3 争点に対する判断
1 争点1(原告の被告に対する保証債務履行請求権が,本件破産申立てを始期と
する除斥期間経過により消滅したか否か。)について
  前記第2,1(3)のとおり,原告,被告間の本件信用保証契約においては,本件
履行期限約款によって,期限の利益喪失の日を含む本件貸金債権の最終履行期限後
2年を経過した後は被告に対し保証債務の履行を請求することができないと定めら
れていたが,同約款は,本件保証債務について除斥期間を定めたものと解される。
  他方,前記第2,1(2)のとおり,本件消費貸借契約においては,本件当然喪失
約款が定められており,Aについて破産の申立てがあった場合には,原告らのかか
る事実の覚知の有無にかかわらず,Aは,本件貸金債権につき当然に期限の利益を
失うこととなるとされていた。
  そして,前記第2,1(4)の事実及び弁論の全趣旨によれば,Aは平成8年5月
7日に破産申立てをしていること及び破産申立て後2年間,原告らは被告に対し本
件信用保証契約に基づき何らの請求もしていないことが認められる。
  以上によれば,Aは,平成8年5月7日に本件消費貸借契約における本件当然
喪失約款により期限の利益を失い,これに伴って,本件信用保証契約における本件
履行期限約款により,平成10年5月7日の経過によって,本件保証債務の除斥期
間が経過し,原告の被告に対する保証債務履行請求権は消滅したとも考えられると
ころ,原告は,①本件信用保証契約にいう最終履行期限とは債権者が喪失事由発生
を知った時点である,②被告が本件破産申立てによる期限の利益喪失を主張するこ
とは信義則に違反し許されない,と主張するので,以下これらの主張の当否につい
て検討する。
(1) 最終履行期限とは喪失事由発生を原告らが知った時点であるとする点について
ア 証拠(甲6)によれば,本件履行期限約款が,最終履行期限に期限の利益喪失
日を含む旨を明確に定めている一方で,債権者の期限の利益喪失事由発生の認識に
ついて文言上特に問題にしていないことが認められ,これに,法定の除斥期間にお
いては,権利者の覚知より除斥期間が進行する場合は,その旨を明文で規定するの
が通常であることをも考え併せれば,本件履行期限約款の文言上,最終履行期限に
ついて,当然に期限を喪失する場合に特に原告らがその事由発生の事実を知った時
点としているとは解し難い。
イ また,証拠(甲5,6)及び弁論の全趣旨によれば,そもそも,本件信用保証
契約の各条項は,被告が各金融機関との間で締結し,東京東和信用組合との間では
昭和41年8月1日に締結した約定書(以下「約定書」という。)の規定に従った
ものであり,これらは被告が信用保証協会法第20条第1項第1号に基づく保証を
行う際に定型的に使用されているものであることが認められる。そして,本件履行
期限約款が規定された趣旨は,期限の利益喪失の日を含む最終履行期限後,長期間
当該債権を放置することが信用保証協会の求償権に対する債権保全上からも事務処
理上からも適切ではなく,ひいては中小企業者に対する金融の円滑化を図るという
目的を有する信用保証制度の健全な活用を阻害するものであることから,これらの
弊害を防止すべく,
保証債務履行請求権の存続期間に対して一定の期限を設けることにあると解され
る。このような本件履行期限約款の趣旨及び定型性からは,本件除斥期間につい
て,期限の利益喪失事由についての債権者の認識という,主観的かつ不明確な要件
を加重することは,むしろ,上記弊害防止及び履行期限を定型的に2年と定めた本
件履行期限約款の趣旨を没却することとなる。
  一方,証拠(甲11)によれば,原告の主張するとおり,被告は,原告らを含
む債権者たる金融機関の代位弁済請求に先行する必須の要件として,金融機関から
の事故報告書の提出と協議を必要とし,また,当然喪失条項に該当する事由(以下
「当然喪失事由」という。)による期限の利益の喪失又は期限到来の場合であって
も,金融機関が債務者に対して内容証明郵便による通知を要件としていることが認
められ,かかる要件を充足するためには,債権者が当然喪失事由についてもその発
生を知ることが当然の前提となっているといえ,かかる点との均衡も一応問題とな
り得る。
  しかしながら,かかる要件は,本件信用保証契約によって定められている要件
とは解されず,当然喪失事由による期限の利益の喪失の場合に,金融機関が債務者
に対して内容証明郵便による通知をしなければ,被告に対し,本件信用保証契約に
基づき保証債務の履行を求めることはできないとは到底解されないし,加えて,被
告が,債務者に対する保護や円滑な事務処理上の観点から代位弁済請求に応じるた
めに内部的に上記の要件を定めているとしても,これは,信用保証債務が除斥期間
にかかっていないことを前提として,代位弁済請求に応じるための手続を定めたも
のであるから,被告が上記のような要件を定めていることをもって,本件履行期限
約款における最終履行期限について,当然に期限を喪失する場合にも,原告らがそ
の事由発生の事実を
知った時点としているとは解することはできない。
ウ 以上によれば,本件履行期限約款における最終履行期限が,原告らが喪失事由
発生を知った時点を指すと解することはできず,原告の主張は認められない。
(2) 信義則違反との主張について
ア (1)のとおり,本件当然喪失約款により,当然喪失事由が生ずれば,原告らがか
かる事実を知らなくても,Aは,原則として,本件貸金債権につき当然に期限の利
益を失うこととなる。その場合,原告らとしては,喪失事由の発生の時点から権利
の行使ができるのであるから,原告らが当然喪失事由の発生を知らなくとも,当然
喪失事由発生時から,本件貸金債権につき,民法上又は商法上の消滅時効が進行す
る。
イ しかしながら,債務者が殊更に債権者に対して当然喪失事由の発生を隠ぺいす
るなどの行為に出たために,債権者が当然喪失事由の発生を知り得なかった場合に
は,債権者と当該債務者との間において,かかる行為をした債務者が,期限の利益
の喪失を主張して消滅時効を援用することは,信義則上許されないと解する余地も
十分にあるというべきである。
  本件においては,前記第2,1(5)(6)(8)の各事実によれば,Aは,本件破産申
立ての際に知れたる債権者を届け出るべき(破産法第138条)ところ,これを怠
り,本件破産宣告後も約5年間にわたり,破産申立て及び破産宣告の事実を原告ら
に告知することもせず,原告らに対し本件貸金債権の弁済を続けていたものであ
る。そして,証拠(甲12,17(枝番を含む。),18)及び弁論の全趣旨によ
れば,債権者たる原告らが当該債務者からの告知なしに,債務者の破産申立ての事
実を知ることは困難であり,また,破産宣告決定も,官報に1回掲載して公告され
るだけであって,原告らがこれを知ることは実際上容易ではないことが認められる
ところ,上記のAの行動は,同人が原告らに対し殊更に本件破産申立て及び本件破
産宣告の事実を隠ぺいし
ていたと評価し得る余地もあり,そのような評価をすることができる場合に,Aが
これらの事実による期限の利益喪失を主張して民法上又は商法上の消滅時効を援用
することは信義則に反して許されないとすることも十分あり得るところである。
ウ もっとも,この場合に被告が除斥期間の始期として期限の利益喪失を主張でき
るかは別論である。すなわち,信義則に反するか否かは,当該当事者間の個別具体
的な利益状況に基づいて判断されるべき事柄であって,上記のようなAと原告らと
の関係と,第三者である被告と原告らとの関係を必ずしも同列に論じることはでき
ない。このことは,いわゆる保証債務の附従性により,主債務者Aに生じた事由の
効果が原則として被告に対する本件保証債務に対して及ぶこととは次元を異にする
ものというべきである。
エ そこで,原告らと被告との関係において,被告が除斥期間の始期として本件破
産申立てによる期限の利益喪失を主張することが信義則に反するか否かを検討する
に,前記第2,1(1)イの事実及び弁論の全趣旨によれば,被告は,信用保証協会で
あり,中小企業者に対する金融の円滑化を図ることを目的として,中小企業者のた
めに信用保証を行うものであることが認められ,被告がAとの個人的関係から保証
人となったとか,被告においてAが本件破産申立て等を隠ぺいする行為等を認識
し,又はこれに関与していたであるとか,原告らと比べて,Aの隠ぺい行為等をよ
り容易に認識できる地位にあって,これを阻止できたというような,Aの隠ぺい行
為等に積極的に関与し得る立場にあったとの主張はなく,また,そのような事実
は,本件全証拠によって
も到底認められない。むしろ,本件貸金債権及びAの状況については,第一義的に
は,債権者たる原告らが適切に把握すべきものであって,たまたま原告らにおいて
Aの状況を十分把握できなかったからといって,原告と被告との間でこれによって
生じた不利益を被告が負担すべき理由は全くない。
オ また,上記(1)イにおいて認定したとおり,本件信用保証契約の各条項は,被告
が各金融機関との間で締結し,東京東和信用組合との間では昭和41年8月1日に
締結した約定書の規定に従ったものであり,これらは被告が信用保証協会法第20
条第1項第1号に基づく保証を行う際に定型的に使用されているものである。そし
て,本件履行期限約款が規定された趣旨は,保証債務は,附従性を有するとはい
え,主たる債務とは別個独立の債務であるから,保証債務について主たる債務の消
滅時効期間と別個に,その存続期間について債権者と保証人の間で定めることも許
される(大審院昭和13年4月8日第2民事部判決・民集17巻664頁参照)と
ころ,期限の利益喪失の日を含む最終履行期限後,長期間当該債権を放置すること
が信用保証協会の求償
権に対する債権保全上からも事務処理上からも適切ではなく,ひいては信用保証制
度の健全な活用を阻害するものであることから,これらの弊害を防止すべく,保証
債務履行請求権の存続期間に対して一定の期限を設けることにあると解される。
  上記の弊害及びこれを防止するための制限の必要性は,主債務者について主債
務の消滅時効が完成しているか否か,消滅時効援用が許されるか否かによって異な
るものではなく,本件のように債務者が当然喪失事由の発生をことさら隠ぺいして
いた場合においても,同じく妥当するものである。
カ さらに,上記(1)イに認定したとおり,東京東和信用組合と被告間では,信用保
証契約締結に当たって,昭和41年以来約定書の規定に従うこととされていたので
あるから,本件消費貸借契約当時,東京東和信用組合は,本件貸金債権につき被告
と締結することになる本件信用保証契約に本件履行期限約款が存在することについ
ては,当然認識していたものと認められる。一方,証拠(甲1)及び弁論の全趣旨
によれば,本件当然喪失約款は,東京東和信用組合が作成した契約書に基づき,東
京東和信用組合とAの間で締結されたものであって,東京東和信用組合は,本件消
費貸借契約締結時に本件当然喪失約款を排除することも可能であったと認められる
のに対し,当然のことながら,本件全証拠によっても,被告は,何ら本件消費貸借
契約の内容に関与し
ているとは認められない。
キ 以上の検討によれば,本件当然喪失約款において当然喪失事由とされている破
産申立てが,原告らにとって容易に認識できないものであり,また,これに乗じて
Aが原告らに対し信義則上許容されない行為に出たために原告らが不利益を被った
としても,Aとの関係はともかく,被告との関係においては,その不利益は,本
来,本件貸金債権の保全に必要な注意を行うべき地位にあり(約定書第9条第1
項),本件当然喪失約款を作成して締結した東京東和信用組合ないし同信用組合か
ら債権を譲り受けた原告が負うべきものであって,被告が,その不利益を転嫁され
るべき事情は全くなく,かえって,かかる主張を認めることは,信用保証制度の健
全な活用のために保証債務履行請求について除斥期間を設けた当事者間の合理的意
思を没却するものといわ
ざるをえない。
したがって,被告が本件破産申立てによる期限の利益喪失を主張することは信義則
に違反するものではなく,原告の主張は認められない。
(3) 以上によれば,本件保証債務の除斥期間の始期は,Aが本件破産申立てを行っ
た平成8年5月7日であって,原告の本件保証債務履行請求権は平成10年5月7
日経過時に,除斥期間の経過によって,既に消滅している。
2 よって,原告の被告に対する本訴請求は,その余の点について判断するまでも
なく,理由がないからこれを棄却し,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第34部
裁判長裁判官   前田順司
   裁判官   池町知佐子
   裁判官   増尾 崇

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ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
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