弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人小林康寛の上告趣意第一、第三および第五について。
 所論は単なる訴訟法違反、事実誤認の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に
当らない。(なお、所論は、原裁判所は予断偏見を抱いて証拠調をし、重大な事実
誤認をしていると主張するが、記録を調べても、原裁判所が論旨のように予断偏見
を抱いて証拠調をし、事実の認定をしたと認むべき証跡は見出だし得ず、所論はひ
つきよう原裁判所の裁量に属する証拠の取捨、判断および事実の認定を非難するに
帰する。また、上告趣意第五中に、司法警察員作成の昭和三三年一〇月二五日付検
証調書の内容である検証は、宗教的所作を、宗教を伴わないで再現しようとしたも
のであつて、宗教に対する冒涜であるから、かかる検証調書は、証拠能力を有しな
い旨の主張があるが、捜査の必要上、宗教行為としてでなく、宗教的行事の外形を
再現したからといつて、その一事をもつてそれが宗教に対する冒涜であり、その状
況を記載した検証調書が証拠能力を有しないものであるということはできない。の
みならず、右調書を証拠に供することについては、被告人側の同意がなされている
ことが記録上―記録三五五丁―明らかであり、これを不同意の書証であるとの所論
は誤りである。)
 同第二、第四および第六について。
 所論中憲法違反の主張につき考えるに、憲法二〇条一項は信教の自由を何人に対
してもこれを保障することを、同二項は何人も宗教上の行為、祝典、儀式または行
事に参加することを強制されないことを規定しており、信教の自由が基本的人権の
一として極めて重要なものであることはいうまでもない。しかし、およそ基本的人
権は、国民はこれを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれ
を利用する責任を負うべきことは憲法一二条の定めるところであり、また同一三条
は、基本的人権は、公共の福祉に反しない限り立法その他の国政の上で、最大の尊
重を必要とする旨を定めており、これら憲法の規定は、決して所論のような教訓的
規定というべきものではなく、従つて、信教の自由の保障も絶対無制限のものでは
ない。
 これを本件についてみるに、第一審判決およびこれを是認した原判決の認定した
ところによれば、被告人の本件行為は、被害者Aの精神異常平癒を祈願するため、
線香護摩による加持祈祷の行としてなされたものであるが、被告人の右加持祈祷行
為の動機、手段、方法およびそれによつて右被害者の生命を奪うに至つた暴行の程
度等は、医療上一般に承認された精神異常者に対する治療行為とは到底認め得ない
というのである。しからば、被告人の本件行為は、所論のように一種の宗教行為と
してなされたものであつたとしても、それが前記各判決の認定したような他人の生
命、身体等に危害を及ぼす違法な有形力の行使に当るものであり、これにより被害
者を死に致したものである以上、被告人の右行為が著しく反社会的なものであるこ
とは否定し得ないところであつて、憲法二〇条一項の信教の自由の保障の限界を逸
脱したものというほかはなく、これを刑法二〇五条に該当するものとして処罰した
ことは、何ら憲法の右条項に反するものではない。これと同趣旨に出た原判決の判
断は正当であつて、所論違憲の主張は採るを得ない。
 その余の論旨は、単なる法令違反、事実誤認の主張を出でないものであつて、刑
訴四〇五条の上告理由に当らない。(なお、被告人の本件行為が、刑法三五条の正
当な業務行為と認め難いとした原判決の判示は、その確定した事実関係の下におい
ては、当裁判所もこれを正当と認める。)
 記録を調べても、刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて、同四〇八条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
  昭和三八年五月一五日
     最高裁判所大法廷
         裁判長裁判官    横   田   喜 三 郎
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    池   田       克
            裁判官    垂   水   克   己
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    下 飯 坂   潤   夫
            裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    石   坂   修   一
            裁判官    山   田   作 之 助
            裁判官    五 鬼 上   堅   磐
            裁判官    横   田   正   俊
            裁判官    斎   藤   朔   郎
            裁判官    草   鹿   浅 之 介

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