弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人両名弁護人高坂安太郎の上告趣意(同補充を含む)について。
 所論は、違憲及び判例違反を主張するけれども、結局事実の認定が経験法則ない
し論理法則に反することを前提とするか、原判決に法令違反のあることを前提とす
るものに外ならない。よつて、原判決にかかる違反があるかどうかを調べてみるに、
所論A、Bの鑑定書、Aの鑑定書及びCの鑑定書並びに証人A、鑑定証人Cの供述
によれば、被告人Dの司法巡査に対する第三回供述調書添附の覚せい剤原薬製造工
程図解及び被告人Eの司法巡査に対する第二回供述調書添附の覚せい剤製造行程一
覧表に示された方法によつて覚せい剤たるフエニルメチルアミノプロパン塩酸塩の
製造が可能であることを認めることができる。そして、原判決の維持した第一審判
決の事実認定は、所論のように右の証拠だけでなされたものではなく、右の証拠の
ほか第一審判決挙示のその他の証拠をも綜合してなされたものであり、これらの証
拠によれば、被告人Dは化学薬品について相当詳しい知識経験と技術とを有したも
のであり、被告人EはF専門学校卒業後G学校、H研究所の助手を経て化学薬品研
究所に技術者として勤務したものであることが窺われるばかりでなく、被告人Dは
被告人Eの製造がうまくできるかどうか四、五回見に行つて必要な技術を指導した
旨述べており、被告人Eも初めは製品の色が悪かつたりしたがだんだんなれてくる
と良い品物ができるようになつた旨及びこの薬を造つているときに手に着いた薬を
知らずに口に持つて行つてこれが口に入つた夜は目がさえて眠れないことがときど
きあつた旨述べているのであるから、原判決がこれらの証拠を綜合して、被告人ら
が製造譲渡した本件の物件が昭和二九年六月一二日法律第一七七号による改正前の
覚せい剤取締法二条所定の覚せい剤であるとの認定を維持したことは不当ではなく、
原判決は事実認定に関する経験法則ないし論理法則に反したものではない。また原
判決にはその他の法令違反も事実誤認も認められない。されば、所論違憲及び判例
違反の主張は、すべて前提を欠き理由がない。
 被告人E弁護人四方田保の上告趣意について。
 所論は、事実誤認の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。のみな
らず、その主張の理由のないことは、被告人両名弁護人高坂安太郎の上告趣意につ
いて説明したところによつて明らかである。
 また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
  昭和三二年二月一二日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    垂   水   克   己

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