弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破毀する。
     被告人を懲役四月に処する。
         理    由
 被告人A提出の上告趣意について。
 右被告人の主張するところは、結局原審裁判所の認定した事実は真実に反するも
のであつて、自転車は本来被告人の所有のものであるから、犯罪を構成しないと言
うに帰するのである。しかし、かゝる主張は日本国憲法の施行に伴う刑事訴訟法の
応急的措置に関する法律第一三条第二項の規定によつて、上告理由としては不適法
のものであるから、これを採り上げるわけにはゆかない。
 しかるに職権をもつて調査するに、原判決は「被告人は昭和二二年六月一六日岐
阜地方裁判所大垣支部に於て窃盗並に贓物故買罪により懲役一年罰金千円に処せら
れ当時右懲役刑の執行を終つたものである」と判示し、昭和二三年三月九日頃行つ
た本件犯行について累犯加重の処遇をしているのである。しかるに原判文上も、亦
それに採証せられている原審公判廷における被告人の供述並びに被告人に関する前
科調書の記載によつても、右原判示前科の懲役刑が原判決の本件犯行時前にその刑
の執行を終り又はその執行の免除を得たものであることを明らかにすることはでき
ないのであつて、却つて前示前科調書の記載並びに被告人の原審公判廷における供
述によると、前示前科の懲役刑は昭和二二年六月一八日確定し、その後大赦も減刑
も刑の執行の免除を得たものでもなく、したがつて翌二三年六月一七日に至りその
刑期の満了したものであることを推認することができるのである。尤も被告人は原
審公判廷で昭和二二年一二月二五日仮出獄した旨供述しているけれども、仮出獄自
体は減刑でもなく亦刑の執行の免除でもないことは論を俟たないところであり、又
右仮出獄は刑の執行を終つたものでないことも明らかである。しからば原審が判示
前刑の仮出獄の期間中に行つた本件犯行について、累犯加重の処遇をしたことは正
に法令の適用を誤つたものであることは明らかであるから、原判決はこの点におい
て破毀を免がれないものである。しからば、旧刑事訴訟法第四四八条に従い、原判
決の認定した本件犯行に対し当裁判所自ら判決すべきものであるところ、右原審が
確定した事実を法律に照すと、被告人の所為は刑法第二四六条第一項に該当するか
ら、その所定刑期の範囲内において被告人を懲役四月に処するを相当とする。
 仍つて、刑事訴訟法施行法第二条並びに旧刑事訴訟法第四四七条条第四四八条に
従い主文のとおり判決する。
 この判決は裁判官全員一致の意見に依るものである。
 検察官 茂見義勝関与
  昭和二四年一二月二四日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎

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