弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原決定を取消す。
     本件を神戸地方裁判所に差戻す。
         理    由
 本件抗告理由の要旨は、
 幼児の引渡の如きは債務の性質上直接強制を為し得ないものであつて、かかる場
合は民訴法第七三四条の規定によつてのみ強制執行を為し得るものである。加之民
訴法第七三四条の申立があつた以上、同法第七三五条但書により第一審の受訴裁判
所において口頭弁論を開かない場合は債務者を審訊すべきものであるに拘らず、原
裁判所は幼児の引渡は直接強制を為し得るものとし、債務者の審訊をも為さずに、
直ちに申立を却下したのは失当であるから本抗告に及んだ。
 と謂うに在る。
 思うに、親権に基ずく子の引渡請求についての強制執行は、直接強制によるべき
か、或は間接強制の方法によるべきかは、特別の規定がない現行法上難解な問題で
あつて、意思能力のない子の引渡については、動産の引渡に準じて民訴法第七三〇
条に定める直接強制の方法によるべしとの説は有力である。しかし意思能力のない
幼児と雖も一個の人格者であるから、これを直ちに動産に準ずるものとし、凡て執
行吏の実力をもつて引渡義務者から取り上げしめて、可なりと断じ去るわけにはい
かない。
 是非善悪、利害得失を識別し、自己の自由意思によつてその居住を決定し得る程
度の能力は、十四五才に達してもなおこれを有しないものと認め得る場合があろう
(本件における子Aは昭和一六年生であるから当年一五才である)が、これ以下の
幼児でも通常好悪親疎の感情によりたとえ一時的にせよ、その居住すべき場所を選
択し、且これを表示する能力を有するものであるから、かかる幼児をも強制執行上
動産に準ずるものとして、直接強制により執行吏の実力支配下に移すことは人権尊
重の見地から是認し難いものがある。
 更に幼児引渡義務者と幼児との間に存する支配関係は、動産に対する人の占有関
係と同一に目することはできない。幼児の養育監護は多くの場合利害の打算を超え
た強い愛情に基ずくものであるから、縦令親権者に対する関係において、自己の養
育監護を主張し得ないにしても、局外者たる執行吏の実力をもつてこの愛情を蹂躙
し去ることは、特段の事由のある場合は格別、一般の道義感情と相容れない。
 又等しく引渡義務といつても、動産の占有を債務者から債権者に移転するのと異
なり、元来子の引渡義務の本質は、親権者の親権行使を妨害せざる義務であつて、
その義務履行の態様として自己の支配内にある幼児を親権者の支配内に移すことを
忍従する意味において、これを引渡と表現しているにすぎない。
 <要旨>以上諸般の特異性から考えるときは、子の引渡請求についての強制執行
は、例えば乳幼児が不法に拉致誘拐せられている場合等の如く直接強制の方
法によることが一般道義感情からも又幼児の人権尊重の観点からも是認せられる場
合においては直接強制の方法によるべきであるが、然らざる場合は民訴法第七三四
条により間接強制をなすべきものと解するのが相当である。
 してみると、子の引渡については法律上間接強制を許し得ざるものとして、本件
申立を却下した原決定は失当であるからこれを取消すべく、而して民訴法第七三五
条によれば、第一審の受訴裁判所は口頭弁論を経ないときは、間接強制の決定前債
務者を審訊することを要し、間接強制のための賠償額算定についての諸事情の外間
接強制に対する障害の有無等を審査すべきものであるから、本件についてはこれを
原審に差戻すのを相当と認め、主文のとおり決定する。
 (裁判長判事 吉村正道 判事 大田外一 判事 金田宇佐夫)

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