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平成16年(ワ)第322号交通事故による損害賠償請求事件(A事件)
平成16年(ワ)第419号交通事故による損害賠償請求事件(B事件)
平成17年(ワ)第38号交通事故による損害賠償請求事件(C事件)
主文
1被告D及び被告F工業は,原告Aに対し,連帯して金3512万361
7円及び内金3193万3617円に対する平成14年6月21日から支
払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2被告D及び被告F工業は,原告Bに対し,連帯して金3512万361
7円及び内金3193万3617円に対する平成14年6月21日から支
払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3被告(原告)Cは,原告Aに対し,被告D及び被告F工業と連帯して金
2458万8531円及び内金2235万3531円に対する平成14年
6月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4被告(原告)Cは,原告Bに対し,被告D及び被告F工業と連帯して金
2458万8531円及び内金2235万3531円に対する平成14年
6月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5被告D及び被告F工業は,被告(原告)Cに対し,連帯して金5000
万円及びこれに対する平成14年6月21日から支払済みまで年5分の割
合による金員を支払え。
6原告Aの被告Eに対する請求並びに被告(原告)C,被告D及び被告F
工業に対するその余の請求をいずれも棄却する。
7原告Bの被告Eに対する請求並びに被告(原告)C,被告D及び被告F
工業に対するその余の請求をいずれも棄却する。
8訴訟費用は,A事件,B事件及びC事件を通じて,(1)原告Aに生
じた費用の16分の3を被告(原告)Cの,16分の9を被告D及び被告
F工業の各負担とし,原告Aに生じたその余の費用を原告Aの負担とし,
(2)原告Bに生じた費用の16分の3を被告(原告)Cの,16分の
9を被告D及び被告F工業の各負担とし,原告Bに生じたその余の費用を
原告Bの負担とし,(3)被告(原告)Cに生じた費用の4分の1を原
告A及び原告Bの,2分の1を被告D及び被告F工業の各負担とし,被告
(原告)Cに生じたその余の費用を被告(原告)Cの負担とし,(4)
被告Dに生じた費用の10分の1を原告A及び原告Bの負担とし,被告D
に生じたその余の費用を被告Dの負担とし,(5)被告Eに生じた費用
を原告A及び原告Bの負担とし,(6)被告F工業に生じた費用の10
分の1を原告A及び原告Bの負担とし,被告F工業に生じたその余の費用
を被告F工業の負担とする。
9この判決は,1項ないし5項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求
1A事件及びC事件関係
(1)被告(原告)C,被告D,被告E及び被告F工業は,原告Aに対
し,連帯して金4670万1617円及び内金4245万1617円に
対する平成14年6月21日から支払済みまで年5分の割合による金員
を支払え。
(2)被告(原告)C,被告D,被告E及び被告F工業は,原告Bに対
し,連帯して金4670万1617円及び内金4245万1617円に
対する平成14年6月21日から支払済みまで年5分の割合による金員
を支払え。
2B事件関係
被告D及び被告F工業は,被告(原告)Cに対し,連帯して金5000
万円及びこれに対する平成14年6月21日から支払済みまで年5分の割
合による金員を支払え。
第2事案の概要
1事案の要旨
(1)被告(原告)Cの子であるGは,原告A及び原告B(以下「原告
Aら」という。)の子であるHを後部座席に乗せて普通自動二輪車(以
下「本件自動二輪車」という。)を運転していた際,被告Dの運転する
普通乗用自動車(以下「本件自動車」という。)と衝突し(以下「本件
事故」という。),G及びHは,本件事故によって死亡した。
(2)A事件及びC事件は,Hの父母である原告Aらが,被告(原告)
C,被告D,被告E及び被告F工業に対し,下記の請求権(原告Aら固
有の請求権及び同人らがHから相続した請求権)に基づき,本件自動二
輪車を運転していたGの相続人である被告(原告)C,本件自動車を運
転していた被告D,本件自動車の自動車登録ファイル上の使用者であっ
た被告E及び本件事故当時に被告Dを雇用していた被告F工業に対し,
本件事故によってH及び原告Aらの被った損害の賠償を求めている事案
である(附帯請求は,弁護士費用を除く損害に対する本件事故の日の翌
日からの民法所定年5分の割合による遅延損害金請求である。)。
ア被告(原告)Cに対する関係
不法行為による損害賠償請求権
イ被告Dに対する関係
不法行為による損害賠償請求権
ウ被告Eに対する関係
自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)3条による損害
賠償請求権
エ被告F工業に対する関係
使用者責任による損害賠償請求権及び自賠法3条による損害賠償請
求権(両請求権に基づく請求は,選択的併合の関係にある。)
(3)B事件は,Gの母である被告(原告)Cが,Gから相続した次の
請求権,すなわち,被告Dに対しては不法行為による損害賠償請求権に
基づき,被告F工業に対しては自賠法3条の損害賠償請求権に基づき,
本件事故によってGが被った損害の一部の賠償を求めている事案である
(附帯請求は,本件事故の日の翌日からの民法所定年5分の割合による
遅延損害金請求である。)。
2前提となる事実
(1)当事者等
ア(ア)原告Aは,Hの父であり,原告Bは,Hの母である。
(イ)H(昭和57年8月11日生)は,平成14年7月1日,本件
事故により死亡した。
(ウ)Hの相続人は,父である原告A及び母である原告Bの2名であ
り,それ以外にはいない。
イ(ア)被告(原告)Cは,Gの母である。
(イ)G(昭和58年1月5日生)は,平成14年6月20日,本件
事故により死亡した。
(ウ)Gの相続人は,母である被告(原告)Cのみであり,それ以外
にはいない。
ウ(ア)被告Dは,本件事故当時,本件自動車を運転していた。
(イ)被告Eは,本件事故当時,本件自動車の自動車登録ファイル上
の使用者であった。
(ウ)被告F工業は,本件事故当時,被告Dを雇用していた。
(エ)Lは,本件事故当時,本件自動車に同乗しており,また,被告
F工業の代表取締役を務めていた。
(争いがない。)
(2)本件事故の発生
Gが運転し,Hが同乗していた本件自動二輪車と被告Dが運転し,L
が同乗していた本件自動車との間で,次の交通事故(本件事故)が発生
した。
ア発生日時
平成14年6月20日午前零時14分ころ
(甲25,乙2,証人I)
イ発生場所
甲府市O町(以下省略)
国道20号線O交差点(以下「本件交差点」という。)
(争いがない。)
ウ関係車両
(ア)被告D運転車両(本件自動車)
普通乗用自動車(日産グロリア)
登録番号省略
(イ)G運転車両(本件自動二輪車)
普通自動二輪車(スズキGS400X)
登録番号自動車登録番号標(ナンバープレート)なし
(争いがない。)
(3)H及びGの死亡
アHは,本件事故の後,心肺停止状態となり,救急車で山梨医科大学
医学部附属病院に搬送されたが,平成14年7月1日,同病院におい
て,本件事故によって負った脳挫傷が原因で死亡した。
イGは,平成14年6月20日午前6時ころ,本件事故によって負っ
た傷害が原因で死亡した。
(争いがない。)
(4)本件実況見分調書の記載内容
アJ巡査は,平成14年6月20日午前零時45分から午前2時30
分までの間,被告D及び目撃者と称するKの立会いを得て,本件事故
について実況見分を行い(以下,この実況見分を「本件実況見分」と
いう。),同月27日,実況見分調書(甲5号証はその写しである。
以下「本件実況見分調書」という。)を作成した。
イ本件実況見分調書には,被告Dの指示説明として,次の記載がある
(なお,指示説明に用いられている各記号は,本件実況見分調書中の
交通事故現場見取図に記載のある各記号を指す。以下,この交通事故
現場見取図を「現場見取図」といい,その写しを別紙現場見取図とし
て本判決に添付する。)。
(ア)対面信号の青色を見た地点は①,その時の信号は(信1)
(イ)右折のため停止した地点は②
(ウ)青色矢印信号が出て発進した地点は②,その時の信号は(信1)
(エ)衝突した地点は(×),その時の本件自動車の位置は③,本件自
動二輪車の位置は(×)
(オ)本件自動車が停止した地点は④,本件自動二輪車の位置は(ア),
H及びGの位置は(イ),(ウ)
(カ)(イ)に横たわっていた人(G)を移動させた地点は(イ)'
ウ本件実況見分調書には,Kの指示説明として,次の記載がある(指
示説明に用いられている各記号については,上記イと同じ。)。
(ア)Kが信号待ちしていた地点は(目)
(イ)本件交差点の信号が矢印信号に変わったのを見た地点は(目),
その時の信号は(信2),その時の本件自動車は②
(ウ)本件自動車と対向直進の無灯火のバイク(本件自動二輪車)が
衝突した地点は(×),その時のKは(目),その時の本件自動車の進
行方向の信号は青色矢印信号
(エ)本件自動車が停止した地点は④,バイクが転倒した地点は(ア),
G及びHが転倒した地点は(イ),(ウ)
(甲5,証人K,被告D本人)
(5)本件事故の目撃者
Iは,本件事故の際,トレーラーを運転して本件自動二輪車の後方を
竜王町方面へ向かって走行しており,本件事故の発生現場を目撃したが,
警察官等に対して自己が目撃した本件事故の内容を話すことなく,すな
わち,本件実況見分に協力することなく,本件事故の現場から離脱した。
(甲12,乙2,証人I)
3争点
(1)本件事故の態様は,どのようなものであったか。
ア本件自動車と本件自動二輪車の衝突地点はどこか。
イ本件事故が発生した際,本件自動二輪車が進行する方向の信号機は
青であったか,それとも赤(本件自動車にとっては右折信号青)であ
ったか。
ウ本件事故が発生した際,本件自動二輪車のヘッドライトは点灯して
いたか。
エHは,本件事故が発生した際,ヘルメットを着用していたか。
(2)本件自動車の運行供用者は,被告Eか,それとも被告F工業か。
(3)本件事故によってH及び原告Aらが被った損害の内容及びその額
(4)無償同乗(好意同乗)による減額の可否(原告Aらと被告(原
告)Cとの間の争点)
(5)本件事故によってGが被った損害の内容及びその額(被告(原
告)Cと被告D,被告E及び被告F工業との間の争点)
(6)過失相殺の可否(被告(原告)Cと被告D,被告E及び被告F工
業との間の争点)
4争点に対する当事者の主張
(1)争点(1)(本件事故の態様は,どのようなものであったか。)について
ア原告Aらの主張
本件事故の態様は,次のとおりである。
本件自動二輪車を運転していたGは,本件事故の前,ヘルメットを
着用したHを後部座席に乗せた上,ヘッドライトを点灯させて,国道
20号線の最も左側の車線(別紙現場見取図の最も下方の車線)を竜
王町方面に向かって走行し,青信号に従って本件交差点に進入したと
ころ,本件交差点を一旦停止せずに右折してきた本件自動車と別紙現
場見取図の(ア)地点で衝突した。
イ被告(原告)Cの主張
(ア)上記アの事実は認める。
(イ)本件事故は,本件自動車を運転していた被告Dが本件交差点を
右折する際に左右及び前方の安全確認を怠ったために発生したもの
である。
ウ被告D,被告E及び被告F工業(以下「被告Dら」という。)の主

(ア)上記アの事実は否認する。
(イ)本件事故の態様は,次のとおりである。
被告Dは,本件交差点を右折するため,別紙現場見取図の②の地
点で一旦停止し,右折の時機をうかがっていたが,本件交差点の信
号が右折信号青に変わったので,この信号に従い右折を開始したと
ころ,赤信号を無視し,かつ,無灯火で本件交差点に進入してきた
本件自動二輪車と同見取図(×)の地点で衝突した。また,Hは,本
件事故当時,ヘルメットを着用していなかった。
(ウ)以上のとおり,本件事故は,Gの一方的な過失によって発生し
たものである。
(2)争点(2)(本件自動車の運行供用者は,被告Eか,それとも被
告F工業か。)について
ア原告Aらの主張
(ア)被告Eは,本件事故当時,本件自動車の自動車登録ファイル上
の使用者であった。
(イ)したがって,被告Eは,本件事故当時,本件自動車を自己のた
めに運行の用に供していたというべきである。
イ被告(原告)Cの主張
被告F工業は,本件事故当時,本件自動車を所有し,自己のために
本件自動車を運行の用に供していた。
ウ被告E及び被告F工業の主張
(ア)上記ア(ア)の事実は認める。同(イ)の主張は争う。上記イの事実
は認める。
(イ)被告F工業は,平成12年12月18日まで,本件自動車の自
動車登録ファイル上の所有者であったが,これを被告Eに売却する
こととして,同日,本件自動車の所有者を被告Eとする旨の登録手
続を行った。しかしながら,被告Eがその代金を支払わなかったた
め,被告F工業は,被告Eへ本件自動車を引き渡すことなく,本件
自動車を使用し続けていた。したがって,自己のために本件自動車
を運行の用に供していたのは,被告Eではなく,被告F工業である
というべきである。
(3)争点(3)(本件事故によってH及び原告Aらが被った損害の内
容及びその額)について
ア原告Aらの主張
(ア)Hの損害
①死亡慰謝料
本件事故が被告Dの故意又は重大な過失によって発生したこと,
被告D及び被告F工業の代表者であり,本件事故当時に本件自動
車に同乗していたLが本件事故について何ら謝罪していないこと,
被告D又は被告F工業の関係者が本件事故時にHが着用していた
ヘルメットを隠すなど証拠隠滅工作を行ったことなどにかんがみ
ると,Hが本件事故によって死亡したことに対するHの慰謝料は,
3000万円を下らないというべきである。
②逸失利益
aHは本件事故当時19歳であり,いわゆる若年労働者であっ
たから,Hの逸失利益を算定するに当たっては,男子労働者全
年齢平均の賃金センサスを用いるべきである。
b平成14年賃金センサスによると中卒男子労働者の年収額は,
464万9600円である。
c19歳に対応するライプニッツ係数は,18.077である。
dHの生活費控除率は,50%とするのが相当である。
eそうすると,Hが本件事故によって死亡したことによる逸失
利益は,次のとおり4202万5409円を下らないというべ
きである。
4,649,600×18.077×0.5=42,025,409.6
③葬儀費用
253万6000円
④治療費
Hは,平成14年6月20日から同年7月1日までの間,山梨
医科大学医学部附属病院に入院し,治療費及び文書料として24
万4925円を支払った。
⑤休業損害
aHは,本件事故当時,M堂という看板を作る会社に雇用され,
少なくとも1日当たり8075円の給与の支払を受けていた。
bHは,本件事故によって負傷し,平成14年6月20日から
同年7月1日までの間,山梨医科大学医学部附属病院に入院せ
ざるを得なくなり,その間,稼働することができなかった。
cそうすると,Hは,本件事故によって,休業損害として,少
なくとも9万6900円(=8075円×12日)の損害を被
ったというべきである。
(イ)原告Aらの損害
原告Aらが本件事故によって未成年者である最愛の長男を失った
ことに対する慰謝料は,各500万円を下らないというべきである。
(ウ)弁護士費用
合計950万円(各425万円)
イ被告(原告)Cの主張
上記アの事実は知らない。
ウ被告Dらの主張
上記アの事実は否認する。
(4)争点(4)(無償同乗(好意同乗)による減額の可否)について
ア被告(原告)Cの主張
(ア)Hは,自ら進んで本件自動二輪車の後部座席に同乗し,本件事
故に遭遇した。
(イ)したがって,本件事故によるH及び原告Aらの損害は,いわゆ
る無償同乗(好意同乗)として相当額において減額すべきである。
イ原告Aらの主張
上記ア(ア)の事実は認める。同(イ)の主張は争う。
(5)争点(5)(本件事故によってGが被った損害の内容及びその
額)について
ア被告(原告)Cの主張
Gは,本件事故によって,次のとおりの損害を被った。
①死亡慰謝料
2200万円
②逸失利益
(ア)Gは本件事故当時19歳であり,いわゆる若年労働者であっ
たから,Gの逸失利益を算定するに当たっては,男子労働者全年
齢平均の賃金センサスを用いるべきである。
(イ)平成14年賃金センサスによると中卒男子労働者の年収額は,
464万9600円である。
(ウ)19歳に対応するライプニッツ係数は,18.077である。
(エ)Gの生活費控除率は,50%とするのが相当である。
(オ)そうすると,Gが本件事故によって死亡したことによる逸失
利益は,次のとおり4202万5409円を下らないというべき
である。
4,649,600×18.077×0.5=42,025,409.6
③葬儀費用
150万円
④弁護士費用
500万円
イ被告Dらの主張
上記アの事実は否認する。
(6)争点(6)(過失相殺の可否)について
ア被告Dらの主張
本件事故はGの一方的な過失によって発生したものであるから,仮
に本件事故の発生につき被告Dに過失が認められたとしても,Gの損
害を相当額において過失相殺すべきである。
イ被告(原告)Cの主張
上記アの主張は争う。
第3当裁判所の判断
1争点(1)(本件事故の態様は,どのようなものであったか。)につい

(1)衝突地点について
ア(ア)証拠(甲5,乙2,証人K,証人I,被告D本人,被告F工業
代表者L)及び弁論の全趣旨によると,本件事故によって,本件自
動二輪車の後部座席に乗っていたHは,別紙現場見取図(ウ)の地点
まで投げ出され,また,本件自動二輪車を運転していたGは,同見
取図(イ)の地点まで投げ出され,それぞれ各地点に横たわっていた
ことが認められる。
(イ)このH及びGが上記各地点まで投げ出されていたという事実
(仮に,本件自動二輪車と本件自動車の衝突地点が被告Dらの主張
するように別紙現場見取図(×)の地点であったとしても,(×)の地
点からHが投げ出された(ウ)の地点までは,20.7mもの距離が
あり(別紙現場見取図参照),また,仮に,衝突地点が原告Aらの
主張するように(ア)の地点であったならば,その距離は更に長くな
るから,本件事故当時の本件自動二輪車の速度は,後部座席に同乗
していたHが20m以上も投げ出されるほどの速度ということにな
る。)に証拠(甲5,25,乙2,証人K,証人I)及び弁論の全
趣旨を総合すると,本件自動二輪車は,蛇行して走行していた状態
ではなく,ほぼ直進の状態で本件自動車に衝突し,その際の速度は,
時速60㎞を大幅に超えていたと認められる。
(ウ)そうすると,本件自動車に衝突した本件自動二輪車に乗車して
いたH及びGは,本件自動車のフロントガラスに衝突して若干方向
が変わることはあったとしても,ほぼ進行方向に向かって投げ出さ
れたと推定することができる。この事実に加えて,証拠(甲5)及
び弁論の全趣旨によると,本件自動車と本件自動二輪車は,本件事
故の直後に行われた本件実況見分の際,本件自動車は別紙現場見取
図④の地点で,また,本件自動二輪車は同見取図(ア)の地点で,本
件自動二輪車が本件自動車のエンジンルーム部分に激しく衝突した
状態で停止していたと認められること,また,別紙現場見取図③の
地点から④の地点までの道路表面に本件自動二輪車を引きずったよ
うな顕著なこん跡が存在しなかったと認められることを総合すると,
本件事故の発生地点は,Hが横たわっていた同見取図(ウ)の地点及
びGが横たわっていた同見取図(イ)の地点のほぼ延長線上にある同
見取図(ア)の地点付近であったと推認することができる。
イこの点,被告Dらは,本件事故の発生地点は別紙現場見取図(×)の
地点であると主張し,本件実況見分調書には,被告D及び証人Kが,
本件事故の直後に実施された本件実況見分の際,J巡査に対し,上記
主張に沿う旨を説明したとの記載がある。また,証人K,被告D及び
被告F工業代表者Lは,その証人尋問及び本人尋問において,上記主
張事実に沿う旨を証言及び供述する(証人Kの陳述書である丙4号証
の記載を含む。)。
ウしかしながら,上記ア(イ)で述べた本件事故の発生態様によると,
被告Dらの主張するように別紙現場見取図(×)の地点で本件自動車と
衝突したH及びGが同見取図(ウ)及び(イ)の地点に投げ出されることは
物理的に困難であると解される。すなわち,被告Dらの主張によると,
Gは,同見取図(×)の地点で本件自動車に衝突した後,ほぼ90度左
に投げ出されたことになるが,時速60㎞を大幅に超える速度で本件
自動車に衝突したGが,いかに強烈に本件自動車のフロントガラスに
衝突したとしても,ほぼ90度左に方向を変えるとは考え難い。そう
すると,本件実況見分調書中の本件事故の衝突地点に関する被告D及
びKの指示説明に関する記載及びこの指示説明に沿う旨の証人K,被
告D及び被告F工業代表者Lの証言及び供述(陳述書の記載を含
む。)は,にわかに信用することができない。
エまた,本件実況見分調書には,別紙現場見取図(×)の地点の石和町
側に60㎝の擦過痕(別紙現場見取図のa地点からb地点にかけての
60㎝であり,本件実況見分調書に添付されている№28の写真は,
この擦過痕を撮影したものである。)があった旨の記載があるが,既
に判示したところに加えて,この擦過痕が本件事故によって作出され
たことを裏付ける的確な証拠がないことにかんがみると,この擦過痕
の存在に関する本件実況見分調書の記載によって,上記ア(ウ)の認定
を覆すことはできない。
オ他に,上記ア(ウ)の認定を覆すに足りる証拠はない。
(2)本件交差点の信号について
ア証拠(甲12,乙2,証人I)及び弁論の全趣旨によると,本件交
差点の本件自動二輪車及び本件自動車の進行方向の信号は,本件事故
の発生時,青信号であったと認められる。
イこの点,被告Dらは,本件事故の発生時,本件交差点の信号は赤信
号(右折青信号)の状態であったと主張し,証人K,被告D及び被告
F工業代表者Lは,この主張事実に沿う旨の証言及び供述をする(証
人Kの陳述書である丙4号証,被告Dの陳述書である丙6号証及び被
告F工業代表者Lの陳述書である丙5号証の記載を含む。)。
ウしかしながら,証拠(甲12,25(特に4頁),乙2,証人I)
及び弁論の全趣旨によると,トレーラーを運転して本件自動二輪車の
後方を時速約60㎞で走行していたIは,本件事故の発生を目撃して
急減速したが,本件交差点の停止線までに停止できなかったことが認
められるところ,もし,本件交差点の信号が被告Dらの主張するよう
に赤信号(右折青信号)であったのならば,Iがこのように急減速し,
しかも本件交差点の停止位置までに停止できないとは考え難い(Iは,
信号機が赤信号(右折青信号)に変わる前の黄信号に従って減速した
はずである。)。そうすると,これと矛盾する上記イの供述及び証言
(陳述書の記載を含む。)は,にわかに信用することができないとい
わざるを得ず,他に,上記アの認定を覆すに足りる証拠はない。
(3)ヘッドライト点灯の有無について
ア証拠(甲12,32,乙2,証人I)及び弁論の全趣旨によると,
本件自動二輪車は,本件事故の発生時,二つあるヘッドライトのうち
少なくとも一つは点灯させていたことが認められる。
イこの点,被告Dらは,本件自動二輪車は本件事故の発生時に無灯火
であったと主張し,本件実況見分調書には本件自動二輪車のヘッドラ
イトのスイッチがオフであった旨及びKがJ巡査に対して本件自動二
輪車は無灯火であったと説明した旨の記載があり,また,証人K,被
告D及び被告F工業代表者Lは,この主張事実に沿う旨の証言及び供
述をする(証人Kの陳述書である丙4号証,被告Dの陳述書である丙
6号証及び被告F工業代表者Lの陳述書である丙5号証の記載を含
む。)。
ウ(ア)しかしながら,上記イの証人Kの証言,被告D及び被告F工業
代表者Lの各供述(陳述書の記載を含む。)は,同ア掲記の各証拠,
特に,本件自動二輪車のヘッドライトが本件事故の際に通電状態で
あったとする報告書(甲32)に照らして信用できない。
(イ)また,本件実況見分調書には,本件実況見分の際,本件自動二
輪車のヘッドライトのスイッチがオフであったとの記載があるが,
上記ア掲記の各証拠に加えて,本件事故後の現場の混乱に紛れて何
者かによってスイッチがオフにされた可能性や本件事故の衝撃によ
ってスイッチがオフになった可能性を否定できないことに照らすと,
本件実況見分の際に本件自動二輪車のヘッドライトのスイッチがオ
フであったことをもって,上記アの認定を覆すことはできないとい
うべきである。
(ウ)なお,証人Kは,その証人尋問において,本件自動二輪車は本
件事故時に無灯火であったと明確に証言するので更に検討するに,
上記認定事実に証拠(甲5,証人K)及び弁論の全趣旨を総合する
と,①証人Kは,本件事故の発生直前,別紙現場見取図(目)の地
点で停車して自己の進行方向の信号が青に変わるのを待っていたこ
と,②本件交差点の道路両側には商店,ガソリンスタンド等が連
立しており,同見取図(目)の地点から国道20号線の石和町方面の
見通しは限られていたこと,③本件交差点は,街灯及び近隣のガ
ソリンスタンドの照明によって,100m先まで見通せる程度に明
るかったこと,④本件自動二輪車は,時速60㎞を大幅に上回る
速度で本件交差点に進入してきたことが認められるところ,このよ
うな本件事故の発生時の状況にかんがみると,本件事故時に本件自
動二輪車のヘッドライトが点灯していなかったとする証人Kの証言
等の信用性には,疑問が残るといわざるを得ない。すなわち,既に
認定したとおり,本件自動二輪車は,証人Kの視界に入ってから一
瞬の間に本件自動車に衝突したと認められるが,本件事故の発生を
予期していなかった証人Kが,この一瞬の間に,本件自動二輪車の
ヘッドライトの点灯の有無について明確に認識し得たとは考え難い。
(エ)おって,証人Iが平成14年12月1日付けで作成した「目撃
者証明」と題する書面(甲11)には,証人Iの認識として「オー
トバイのライトが点灯していたかどうかは,店の前が明るく,意識
が右にありましたのでよく覚えていません。」との記載があるが,
証人Iは,その証人尋問において,本件事故直前の記憶が喚起され
た経緯について具体的かつ合理的に証言しており,この「目撃者証
明」と題する書面の記載のみをもって,証人Iのこの点に関する証
言の信用性を否定することはできない。
(4)ヘルメット着用の有無について
ア証拠(甲12,22,31,乙2,証人I,原告B本人)及び弁論
の全趣旨によると,Hは,本件事故の際,ヘルメットを着用していた
と認めることができる。
イこの点,証拠(甲7,9,被告D本人)及び弁論の全趣旨によると,
Hは,本件事故の後,救急車で搬送される際,ヘルメットを着用して
いなかったこと及び本件事故の後,本件現場からHのヘルメットが発
見されなかったことが認められる。
ウしかしながら,証拠(甲12,乙2,証人I)によると,本件事故
によって別紙現場見取図(ウ)の地点まで投げ出されたHの近くに,甲
22号証に写っているHのヘルメットが落ちていた事実が認められる。
そうすると,Hは,本件事故の際,ヘルメットを着用していたものの,
本件事故の衝撃によってヘルメットが脱げ,その後,本件事故後の現
場の混乱に紛れて,Hのヘルメットが行方不明となった可能性も否定
できないから,上記イの事実をもって,上記アの認定を覆すことはで
きず,他に,上記アの認定を覆すに足りる証拠はない。
エなお,Gが本件事故当時にヘルメットを着用していた事実は,当事
者間に争いがない。
(5)まとめ
アそうすると,以下の検討に当たっては,次の事実を前提とすべきこ
①Gは,ヘルメットを着用し,本件自動二輪車の後部座席にヘルメ
ットを着用したHを同乗させ,国道20号線を竜王町方面に向かっ
て走行していた。
②その際,Gは,二つあるヘッドライトのうち少なくとも一つを点
灯させていた。
③Gは,国道20号線の一番左の車線を時速約60㎞を大幅に超え
る速度で走行し,青信号に従って本件交差点に進入し,別紙現場見
取図の(ア)の地点付近で本件自動車と衝突した。
④本件事故によって,Gは別紙現場見取図(イ)の地点まで投げ出さ
れ,また,Hは同見取図(ウ)の地点まで投げ出された。
イまた,上記前提となる事実及び認定事実によると,被告Dは,本件
事故発生の前から,国道20号線を竜王町方面に向かって走行する本
件自動二輪車の存在を認識していたと優に認めることができる。
この点,被告Dは,その本人尋問において,本件事故の発生まで本
件自動二輪車を認識していなかった旨供述し,同人の陳述書である丙
6号証にも同旨の記載があるが,これらの供述及び陳述書の記載は,
全く信用することができない。
ウそうすると,本件事故は,本件自動車を運転していた被告D及び本
件自動二輪車を運転していたGが,互いに相手方が衝突回避の措置を
とるものと軽信して本件交差点に進入し,それぞれ衝突回避の措置を
とることが遅れたことから発生したと認めることができる。
エしたがって,被告D及びGには,本件事故の発生につき,いずれも
過失があるというべきである。
オなお,原告Aらは,被告Dが故意に本件自動車を本件自動二輪車に
衝突させたと主張するが,そのような事実を認めるに足りる証拠は全
くない。また,原告Aらは,被告Dが本件交差点を右折する際に一旦
停止しなかったと主張するが,そのような事実を認めるに足りる的確
な証拠はない。
2争点(2)(本件自動車の運行供用者は,被告Eか,それとも被告F工
業か。)について
(1)本件事故時の本件自動車の運行供用者が被告F工業であったこと
は,被告(原告)Cと被告F工業との間で争いがない。
(2)証拠(丙1ないし3,5,被告F工業代表者L)及び弁論の全趣
旨によると,被告F工業と被告Eは,平成12年12月ころ,本件自動
車を被告Eに売却する旨合意したが,被告Eがその代金を支払わなかっ
たため,被告F工業は,本件自動車を被告Eに引き渡すことなく,本件
自動車を使用し続けていたことが認められる。そうすると,本件事故当
時,本件自動車を所有し,自己のために本件自動車を運行の用に供して
いたのは,被告Eではなく,被告F工業であったというべきである。
(3)以上によると,原告Aらの被告Eに対する各請求は,その余の点
につき検討するまでもなく理由がないから,いずれもこれを棄却すべき
である。
3争点(3)(本件事故によってH及び原告Aらが被った損害の内容及び
その額)について
(1)Hの損害について
①死亡慰謝料
ア既に判示したとおり本件事故の態様がせい惨なものであったこと,
本件事故時にHが19歳と若年であったこと,一方,下記===のと
おり,Hの両親である原告Aらに対しても慰謝料の支払が命じられ
ること,証拠(甲6,31,乙2,証人I,原告B本人)及び弁論
の全趣旨によると,Hが自ら進んでいわゆる暴走行為に参加し,本
件事故に遭遇したと認められることなど,本件にあらわれた一切の
事情を総合考慮すると,本件事故によってHが死亡したことに対す
る慰謝料は,1600万円をもって相当と認める(Hと原告Aらの
慰謝料の合計は2000万円となる。)。
イなお,被告D又はLが,自ら又は第三者をして,Hが着用してい
たヘルメットを隠匿するなど,本件事故に関する証拠を隠滅した事
実を認めるに足りる証拠はない。
②逸失利益
アHは本件事故当時19歳であり,いわゆる若年労働者であったと
いえるから,Hの逸失利益を算定するに当たっては,男子労働者全
年齢平均の賃金センサスを用いるのが相当である。
イそして,証拠(原告B本人)によると,Hは高校を中退して就職
していたと認められるところ,平成14年賃金センサスによると,
中卒男子労働者の年収額は,464万9600円である。
ウ19歳で死亡したHは,67歳までの48年間にわたって労働能
力を喪失したと認めるのが相当であるところ,同期間に対応するラ
イプニッツ係数(小数点4桁四捨五入)は,18.077である。
エHの生活費控除率は,50%とするのが相当である。
オそうすると,Hが本件事故によって死亡したことによる逸失利益
は,次のとおり4202万5409円を下らないというべきである。
4,649,600×18.077×0.5=42,025,409.6
③葬儀費用
本件事故と相当因果関係のある損害として認めるべき葬儀費用は,
150万円をもって相当と認める。
④治療費
証拠(甲4の1ないし5)によると,Hは,平成14年6月20日
から同年7月1日までの間,山梨医科大学医学部附属病院に入院し,
治療費及び文書料として24万4925円を支払ったことを認めるこ
とができる。
⑤休業損害
ア上記前提となる事実,証拠(原告B本人)及び弁論の全趣旨によ
ると,Hは,本件事故当時,少なくとも1日当たり8075円の給
与の支払を受けていたこと,また,Hは,本件事故によって負傷し,
平成14年6月20日から同年7月1日まで山梨医科大学医学部附
属病院に入院せざるを得なくなり,この間,稼働することができな
かったことを認めることができる。
イそうすると,Hは,本件事故によって,休業損害として,少なく
とも9万6900円(=8075円×12日)の損害を被ったとい
える。
⑥まとめ
上記①ないし⑤の損害額を合計すると5986万7234円となる
から,原告Aらは,それぞれ2993万3617円の損害賠償請求権
をHから相続したこととなる。
(2)原告Aらの損害について
原告Aらは,せい惨な本件事故によって不意に長男であるHを失って
おり,甚だしい精神的苦痛を被ったと認められる。この事実に加えて,
上記(1)で述べたとおりHの死亡慰謝料として1600万円の支払が
命じられることなど,本件にあらわれた一切の事情を総合考慮すると,
本件事故によってHが死亡したことにより原告Aらが被った精神的苦痛
は,それぞれ200万円の支払をもって慰謝するのが相当である。
(3)弁護士費用について
本件訴訟の難易の程度や認容額などを考慮すると,原告Aらと被告D
らとの間において本件事故と相当因果関係のある損害として認めるべき
弁護士費用は,合計638万円(各319万円)をもって相当と認める。
(4)まとめ
以上によると,原告Aらの被告D及び被告F工業に対する請求は,被
告Dに対しては各人固有の及びHから相続した不法行為による損害賠償
請求権に基づき,被告F工業に対しては各人固有の及びHから相続した
自賠法3条による損害賠償請求権に基づき,連帯して3512万361
7円及び弁護士費用を除く損害である3193万3617円に対する本
件事故の日の翌日である平成14年6月21日から支払済みまで民法所
定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから,
その限度でいずれもこれを認容し,その余は理由がないから,いずれも
これを棄却すべきである(なお,被告F工業に対する請求について,自
賠法3条に基づく損害賠償請求と選択的併合の関係にある使用者責任に
基づく損害賠償請求が上記認容額以上に認容されることがないことは両
請求相互の関係から明らかであるから,使用者責任による損害賠償請求
については判断しない。)。
4争点(4)(無償同乗(好意同乗)による減額の可否)について
(1)Hが自ら進んで本件自動二輪車の後部座席に同乗し,本件事故に
遭遇した事実は,原告Aらと被告(原告)Cとの間で争いがなく,また,
証拠(甲5,6,12,22,乙2,証人I)及び弁論の全趣旨による
と,HとGは,本件事故の当日,Qという名称のグループによって行わ
れた暴走行為に参加し,本件事故当時は集団から離脱していたものの,
蛇行運転をするなど危険な走行をしていたことが認められる。
(2)そうすると,Hは,本件事故の当日,危険であることを承知して
本件自動二輪車に同乗し,Gとともに暴走行為に及んでいたと認められ
るから,原告Aらと被告(原告)Cの間においては,いわゆる無償同乗
(好意同乗)として,過失相殺の規定を類推適用して,その損害額の3
割を減額するのが相当である(減額後の弁護士費用を除く損害額は,合
計4470万7063円となる。)。
(3)本件訴訟の難易の程度や認容額などを考慮すると,原告Aらと被
告(原告)Cとの間において本件事故と相当因果関係のある損害として
認めるべき弁護士費用は,合計447万円(各223万5000円)を
もって相当と認める。
(4)以上によると,原告Aらの被告(原告)Cに対する請求は,各人
固有の及びHから相続した不法行為による損害賠償請求権に基づき,被
告D及び被告F工業と連帯して2458万8531円及び弁護士費用を
除く損害である2235万3531円に対する本件事故の日の翌日であ
る平成14年6月21日から支払済みまで民法所定年5分の割合による
遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから,この限度でいずれも
これを認容し,その余の請求は理由がないから,いずれもこれを棄却す
べきである。
5争点(5)(本件事故によってGが被った損害の内容及びその額)につ
いて
①死亡慰謝料
既に判示したとおり本件事故の態様がせい惨なものであったこと,本
件事故時にGが19歳と若年であったこと,一方,証拠(甲6,乙2,
証人I)及び弁論の全趣旨によると,Gが自ら進んでいわゆる暴走行為
に参加し,本件事故に遭遇したと認められることなど,本件にあらわれ
た一切の事情を総合考慮すると,本件事故によって死亡したことに対す
るGの慰謝料は,2000万円をもって相当と認める。
②逸失利益
アGは本件事故当時19歳であり,いわゆる若年労働者であったから,
Gの逸失利益を算定するに当たっては,男子労働者全年齢平均の賃金
センサスを用いるべきである。
イ証拠(乙4)及び弁論の全趣旨によると,Gは中学を卒業して就職
したと認められるところ,平成14年賃金センサスによると中卒男子
労働者の年収額は,464万9600円である。
ウ19歳で死亡したGは,67歳までの48年間にわたって労働能力
を喪失したと認めるのが相当であるところ,同期間に対応するライプ
ニッツ係数(小数点4桁四捨五入)は,18.077である。
エGの生活費控除率は,50%とするのが相当である。
オそうすると,Gが本件事故によって死亡したことによる逸失利益は,
次のとおり4202万5409円を下らないというべきである。
4,649,600×18.077×0.5=42,025,409.6
③葬儀費用
本件事故と相当因果関係にある損害として認めるべき葬儀費用は,1
50万円をもって相当と認める。
④弁護士費用
本件事故と相当因果関係のある損害として認めるべき弁護士費用につ
いては,争点(6)(過失相殺の可否)について検討した後に検討する。
6争点(6)(過失相殺の可否)について
(1)上記1で検討した本件事故の発生態様によると,本件事故の発生
については,Gにも過失(落ち度)があったというべきであるところ,
本件事故の発生態様及び本件にあらわれた一切の事情を総合考慮すると,
Gの損害の1割5分を過失相殺するのが相当である(過失相殺後の損害
額は,5399万6597円(1円未満切捨て)となる。)。
(2)本件訴訟の難易の程度や認容額などを考慮すると,本件事故と相
当因果関係のあるGの損害として認めるべき弁護士費用は,被告(原
告)Cの主張する500万円をもって相当と認める。
(3)そうすると,本件事故によってGが被った損害の合計は,合計5
899万6597円となる。
(4)以上によると,被告(原告)Cの被告D及び被告F工業に対する
請求(一部請求)は,すべて理由があるから,いずれもこれを認容すべ
きである。
7結論
よって,訴訟費用の負担につき民事訴訟法64条本文,65条1項及び
61条を,仮執行の宣言につき同法259条1項をそれぞれ適用して,主
文のとおり判決する。
甲府地方裁判所民事部
裁判官岩井一真

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