弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 弁護人河俣良介の上告趣意は、末尾に添附した別紙書面記載の通りである。
 弁護人河俣良介上告趣意第一点について。
 しかし所論仮処分命令の効力発生の時期について審理をとげなくとも、挙示の証
拠により判示事実を認め得るのであるから所論のような審理不尽の違法はない。な
お証拠調の限度は原審の自由裁量にまかせられているのであるから原審において所
論Aを証人として喚問する必要はないと認めこれを喚問しなかつたとしても審理不
尽であるとはいえない。論旨は結局独自の見解を立てて原審の手続を攻撃するにす
ぎないから、採用に値しない。
 同第二点について。
 しかし物件の引渡しは該物件所在場所でも実行できるもので必ずしも運搬した上
でなければできないものではないから本件物件が多数多量であつたとしても判示期
間内に引渡しを完了することはできないとはいい得ない。そして原判決は「翌六日
頃から同月九日頃迄の間に数回に亘り右物件の引渡しを受け」と認定しているだけ
であつて運搬して引渡しを受けたことは認定していないし、被告人が判示物件を右
期間内に引渡しを受けた事実は原判決挙示の証拠によつて認め得るものである。論
旨は原判決が証拠として挙示しない証拠を引き独自の見解を立てて原審の採証法則
違背を主張するのであるが証拠の採否は原審の自由裁量に属するところであり所論
Bの他の事件における公判廷の供述を証拠とて事実を認定し、所論の証拠を採用し
ないからとて何等採証法則に反するところはない、論旨は理由がない。
 同第三点について。
 しかし原判決は相被告人C及び原審相被告人Dとが被告会社の業務に関し一般会
計の外特別会計等の秘密会計を設け不正行為により昭和二一年一〇月から同二二年
八月までの間葡萄糖の移出数量の一部を故意に政府に報告せず其数量に相応する物
品税を逋脱したことを認定したものであるが、既に物品税を免かれた事実がある以
上は其不正行為は所論逋脱に該当し物品税法第一八条一項又は第二項を適用して処
断すべきものである。同法第一九条第一項第一号は物品税を不正に免れ又は免れよ
うとした場合でなく、他の目的を以て虚偽の申告を行つたような場合に適用される
一種の秩序罰的な規定と解すべきものであることは同法第一八条は逋脱金額を標準
としているのに反し同法第一九条は一律に十万円以下の罰金とした趣旨からもこれ
を知ることができる。従つて論旨は理由がない。
 よつて旧刑事訴訟法第四四六条により主文の通り判決する。
 以上は裁判官全員一致の意見である。
 検察官 竹原精太郎関与
  昭和二四年一二月一三日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    穂   積   重   遠

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