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平成25年11月14日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成25年(行ケ)第10142号審決取消請求事件
口頭弁論終結日平成25年10月3日
判決
原告X
訴訟代理人弁理士佐藤富徳
被告特許庁長官
指定代理人田中亨子
同守屋友宏
同山田和彦
主文
1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
1特許庁が不服2012-11296号事件について平成25年3月29日に
した審決を取り消す。
2訴訟費用は被告の負担とする。
第2事案の概要
1特許庁における手続の経緯等
(1)原告は,平成24年1月22日,「ECOLIFE」の欧文字を標準文字で
表してなる商標(以下「本願商標」という。)について,指定役務を第36類「エ
ネルギー消費量から炭酸ガス排出量を自動計算して表示することが可能な建物の管
理,エネルギー消費量から炭酸ガス排出量を自動計算して表示することが可能な建
物の貸借の代理又は媒介,エネルギー消費量から炭酸ガス排出量を自動計算して表
示することが可能な建物の貸与,エネルギー消費量から炭酸ガス排出量を自動計算
して表示することが可能な建物の売買,エネルギー消費量から炭酸ガス排出量を自
動計算して表示することが可能な建物の売買の代理又は媒介,エネルギー消費量か
ら炭酸ガス排出量を自動計算して表示することが可能な建物の鑑定評価,エネルギ
ー消費量から炭酸ガス排出量を自動計算して表示することが可能な建物の情報の提
供」(同年2月21日提出の手続補正書により補正されたもの。以下「本件指定役
務」という。)として,商標登録出願(商願2012-3476号。ただし,平成
22年9月30日を出願日とする商願2010-76702号を原出願とする分割
出願。)をしたが,平成24年5月24日付けで拒絶査定を受けたので,同年6月
16日,拒絶査定に対する不服の審判を請求した(甲1,2,乙2)。
(2)これに対し,特許庁は,原告の請求を不服2012-11296号事件とし
て審理し,平成25年3月29日に「本件審判の請求は,成り立たない。」とする
審決(以下「本件審決」という。)をし,同年4月15日,その謄本は原告に送達
された。
(3)原告は,平成25年5月15日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起
した。
2本件審決の理由の要旨
本件審決の理由の要旨は,別紙審決書の写しのとおりである。要するに,本願商
標の「ECOLIFE」の文字は,これに接する者に広く親しまれた「ECO」の
語と「LIFE」の語とを組み合わせたものと容易に認識させるものであり,該文
字及びその読みである「エコライフ」の文字は,「環境にやさしい生活を実施して
いくこと」,「地球環境にやさしい暮らしを心がけるライフスタイルのこと」程度
のことを表すものとして広く使用されているため,かかる意味合いを容易に理解,
認識させるものであり,また,「建物」等との関係においても,かかるエコライフ
の取組みのひとつとして,太陽光発電パネルや断熱性能の高い建築や二酸化炭素(C
O2)排出量の削減等,環境に配慮した建物が建設されていることから,「ECO
LIFE」の文字からなる本願商標を本件指定役務に使用した場合,これに接する
取引者,需要者に,エコライフを目的とする建物に関する役務であることを表した
ものと認識させるにすぎず,本願商標は,需要者が何人かの業務に係る役務である
ことを認識することができないものであるから,商標法3条1項6号に該当し,登
録を受けることができない,というものである。
3取消事由
商標法3条1項6号該当性に係る判断の誤り
第3当事者の主張の要旨
〔原告の主張〕
1本願商標は,「ECOLIFE」の欧文字を標準文字で書してなるところ,全
て大文字のアルファベット,同じ字体,同じ大きさ,同じ間隔で,外観上まとまり
よく一体的に構成され,本願商標から生ずる「エコライフ」の読みも途切れること
なく一気に称呼し得るものであるから,外観,称呼及び,観念において,構成文字
全体を一体不可分のものとして認識し把握されるとみるのが自然である。したがっ
て,本願商標に接する需要者が,その構成中の「ECO」の文字部分と「LIFE」
の文字部分を分離,抽出して,観察し,それぞれの語より生じる意味合いから全体
の意味合いを看取するとみることはできず,むしろ,構成全体をもって一体不可分
の一種の造語を表したと認識するものとみるのが相当である。そして,「ECOL
IFE」の語は,国語辞書である大辞泉にも,ウィキペディアフリー百科事典にも
何ら記載がなく,特定の具体的意味合いが生じるほどには社会一般に知られていな
いとするのが自然である。仮に分離観察が認められるならば,本願商標は,「E」,
「CO」及び「LIFE」の各文字に3分割されることも考えられ,「イー共同生
活」程度の意味合いも生じることとなるから,被告の分離観察の主張のみが正しい
とすることはできない。
2そして,「エコライフ」の意味合いが,仮に「環境に優しい生活を実施し
ていくこと」,「地球環境に優しい暮らしを心がけるライフスタイルのこと」等の
意味合いであって,これを本件指定役務との関係において見た場合,「環境に優し
い生活を実施していくことを目的とする建物に関する役務」,「地球環境に優しい
暮らしを心がけるライフスタイルを目的とする建物に関する役務」を暗示させる場
合があるとしても,多義的,抽象的かつ曖昧で漠然としたものであって,直ちに特
定の役務の質(内容)を直接的かつ具体的に表示するもの,または,役務の宣伝文
句等を表示するものとはいえず,本願商標に接する需要者が,本願商標の構成全体
をもって,一体不可分の特定の意味を有しない一種の造語を表したと認識するもの
とみるのが相当である。
また,「ECOLIFE」の語が,本件指定役務を取り扱う業界において,取引
上現実に使用されている事実を見いだすことはできない。
3そうすると,本願商標を本件指定役務に使用しても,十分に自他役務の識別
標識としての機能を果たし得るものであって,需要者が何人かの業務に係る役務で
あることを認識することができない商標とはいえず,また,本件指定役務中のいず
れの役務について使用しても,役務の質について誤認を生じさせるおそれもないも
のというべきである。
したがって,本願商標が商標法3条1項6号に該当するとした本件審決は取り消
しを免れない。
4被告は,本件訴訟に至って,書証を多数提出している。しかしながら,審決
取消訴訟の審理範囲は,審決において審理及び判断された主張・証拠(審決が争点
として取り上げ,判断した事項)に限られるべきであり,新たな証拠に基づく主張・
立証は,それが審決において審理及び判断された主張・証拠を補強する場合を除い
て許されないから,乙6,7,9~11,17~23,29~38は,新たな証拠
として採用すべきではなく,同証拠に基づく被告の主張は認められない。
〔被告の主張〕
1本願商標は,「ECOLIFE」の欧文字を表してなり,その構成中,「E
CO」の欧文字は,「(エコロジーの略)環境に配慮すること。『生態』『環境』『環
境保護』を意味する接頭語。『―生活』」の意味を有する語であり,例えば,「エ
コバッグ(ecobag)」,「エコカー(ecocar)」などのように「環境に優しい○○」
を表すものとして,組み合わせて使用されている。また,「LIFE」の欧文字は,
「[修飾語句を伴って]…生活」の意味を有する語である。
そうすると,本願商標は,「ECO」と「LIFE」の2つの語が組み合わされ
たものであり,「eco」の語が他の語と組み合わせて使用されている実情からす
れば,「環境に優しい生活」程度の意味合いを認識させるものである。
2「ECOLIFE」の読みである「エコライフ」の語も,前記1の意味合いに
沿うように,「環境に優しい生活」,「環境に優しい生活を実施していくこと」,
「地球環境に優しい暮らしを心がけるライフスタイルのこと」程度を理解させる語
として,広く一般に使用されており,「エコライフ」は,かかる意味合いを表す一
種の成語として認識させるものといえる。
3本件指定役務は「建物」に関連するものであるが,建物業界では,環境に配
慮した(環境に配慮して生活するための)「建物」を重視した建築がされており,
「エコライフ」の語は,建物に関連する分野においても,「環境に優しい生活を実
施していくこと」,「地球環境に優しい暮らしを心がけるライフスタイルのこと」
程度を理解させるものとして使用されていることから,これに接する者に,かかる
意味合いを容易に理解,認識させるものといえる。
したがって,「エコライフ」と容易に読み得る「ECOLIFE」の語は,上記
意味合いを容易に理解,認識させるものである。
4本件指定役務の対象物は「エネルギー消費量から炭酸ガス排出量を自動計算
して表示することが可能な建物」であるが,最近では,建物の管理や売買の分野
において,CO2の排出量などを表示することによって,省エネ等環境に配慮する
建物が見受けられる。そして,本件指定役務の対象物である「エネルギー消費量か
ら炭酸ガス排出量を自動計算して表示することが可能な建物」は,省エネ等を通じ
て,「環境に優しい生活の実施」や「地球環境に優しい暮らしを心がけるライフス
タイル」程度のことを目指すものであり,まさしく「エコライフ(ECOLIFE)」
の意味合いに沿うものである。
そうすると,本願商標を本件指定役務に使用した場合,これに接する取引者,需
要者に,エコライフを目的とする建物に関する役務であることを表したものと認識
させるにすぎず,本願商標は,需要者が何人かの業務に係る役務であることを認
識することができない商標というべきである。
したがって,本願商標は,商標法3条1項6号に該当する。
第4当裁判所の判断
1本願商標について
(1)本願商標は,標準文字により,欧文字「ECOLIFE」を横書きしてなる
ものである。
外観をみるに,7文字が横一列に等間隔に配列されてなるものであるから,「E
COLIFE」と一体のものとして看取することができるほか,後記(2)の意味合い
からすれば,「ECO」と「LIFE」とを組み合わせてなるものとして看取する
こともできるものである。
称呼についてみるに,全体として「エコライフ」とよどみなく一連に称呼するこ
とができるものであって,一体となった印象を与えるものということができる。
(2)そして,広辞苑第六版(乙5)によれば,「エコ【eco】」は,「(エコ
ロジーの略)環境に配慮すること。『生態』『環境』『環境保護』を意味する接頭語。
『―生活』」の意味を有する語であって,例えば,環境に優しい車の総称として「エ
コカー(ecocar)」,地球環境の保護・保全につながる商品やサービスを扱
う企業活動として「エコビジネス(ecobusiness)」,環境に配慮し光
熱費の削減や資源の有効利用を考えた住宅の総称として「エコハウス(ecoho
use)」などのように,「環境に優しい…」程度の意味を表すものとして,普通
名詞の前に置かれ当該普通名詞と組み合わせて使用されていることは,当裁判所に
顕著である。
また,ジーニアス英和辞典第4版(乙8)によれば,「LIFE」は,「[修飾
語句を伴って]…生活」の意味を有する語である。
そうすると,本願商標を構成する「ECOLIFE」の欧文字は,「ECO」と
「LIFE」の2つの語が組み合わされたものであり,「eco」の語が「環境に
優しい…」程度の意味を表すものとして,普通名詞の前に置かれ当該普通名詞と組
み合わせて使用されていることからすれば,「環境に優しい生活」程度の観念を生
じさせるものである。
(3)証拠(乙9~34)によれば,次の事実を認めることができる。
ア「エコライフ」の語は,インターネットや新聞記事等において,「日常生活
をする上で環境にやさしい暮らし方」(乙10),「環境に配慮した生活」(乙1
1),「環境に優しい生活を実施していくこと」(乙16),「地球環境に優しい
暮らしを心がけるライフスタイルのこと」(乙15),「環境への負荷を減らし,
環境保全を心がけた暮らし(ライフスタイル)」(乙9)等の意味合いを有するも
のとして用いられている。
イそして,具体的には,「エアコンの温度調節をこまめにする,自家用車の利
用を差し控えバスや電車などの公共機関を利用する,…,省エネルギーを心がけ二
酸化炭素等の発生を抑制したり,廃棄物の発生を少なくする生活様式。」(乙10),
「日常生活における二酸化炭素の排出を抑制し,足元からの地球温暖化対策を進め
ること」(乙11),「日常生活が自然や環境に影響を及ぼしているということを
認識し,少しずつでもできるところから,環境にやさしい生活を実施していくこと」
(乙16),「環境にやさしい暮らしがどれくらいできているか,簡単に自己診断
できるインターネットのホームページ『エコライフ・チェック』を作った。」(乙
18),「家族みんなでエコライフしよう!」と称して家庭でできる簡単なCO2
削減方法をまとめたホームページ(乙19),「わたしたちの便利な暮らしを支え
ている,電気や水,ガス,ガソリンなどのエネルギー資源。今,これらを消費する
ときに発生する二酸化炭素(CO2)が,地球温暖化を引き起こし地球環境に大きな
影響を与えています。でも,わたしたち一人一人が心掛けてCO2を少しでも減らす
ことで,地球温暖化防止につながるのです。家庭や学校・職場でも気軽にできるエ
コライフ。」(乙21),「地球温暖化の主な原因である二酸化炭素は,工場など
の産業はもちろん私たちの日常生活においても電気や灯油などのエネルギーを消費
することにより,たくさん排出されています。温暖化を少しでもくい止めるために,
私たち一人ひとりの環境に配慮した取り組み(エコライフ)が求められています。」
(乙23)など広く一般的・日常的に使用されている。
ウまた,県や市・区などにおいて,「エコライフ応援サイト」(乙20),「エ
コライフで,地球を守ろう」(乙21),「エコライフのすすめ」(乙22,23)
といったインターネットのサイトが作成されており,平成2年(1990年)以来,
毎年6月の環境月間に,全国各地で展開する様々な行事の中の主たる行事の一つと
して,低炭素社会の構築を始めとした持続可能な社会の実現,循環型社会の実現,
生物多様性の保全など自然共生生活の実現に向けた構築などの環境問題に対して,
人々を理解・意識の段階から実際の行動へと導くきっかけとなる場を提供し,生活
様式及び経済社会活動を環境に優しいものとすることを目指して,環境省(環境庁),
関係地方公共団体,関連法人,業界団体,企業及びNGOが連携して,「エコライ
フ・フェア」(乙12,17)又は「ecoLIFEFAIR」(乙13)の名
称でイベントを実施している(乙25)。
エさらに,本件指定役務と関連の深い建物の建築,管理又は売買等の分野にお
いても,インターネット,ハウスメーカー等のホームページや新聞記事等において,
エコライフの語を使用して,「二酸化炭素を減らしたエコライフを目指す。…太陽
光発電パネルや断熱性能の高い建築様式」(乙26),「地球温暖化や天然資源の
枯渇,海洋汚染や森林破壊など,私たちをとりまくさまざまな環境問題。こうした
時代の中で,私たちは,『エコライフ住宅』という考え方を住まいづくりの基本に
置くことをめざしました。」(乙30),「地球環境にできるだけ負担をかけず,
しかも家族が健やかに安心してくらせる『エコライフ住宅』という発想。」(乙3
1),「いつも今が快適で,家計にやさしく,普通に生活するだけで地球環境に貢
献し,CO2を削減。次世代型の快適・エコライフを提供する,まさに住み継がれる
にふさわしい住まいをかなえています。」(乙32),「ビルやマンションのCO
2削減を目的として専門組織『環境エンジニアリング』を設立し,皆様のマンショ
ン・エコライフのサポートを始めました。」(乙33),「使用したエネルギーを
換算してCO2排出量を表示することができ,エコライフをサポートします。」(乙
34)など,「エコライフ」を具体化しサポートするものとして,太陽光発電パネ
ルや断熱性能の高い建築様式及び二酸化炭素(CO2)の排出削減等,地球環境に配
慮した建物の建築,管理等の取組みが一般的に広く行われている。
オ以上のとおり,「ECOLIFE」の称呼である「エコライフ」の語につい
て,エコ(eco)の語が「環境に優しい…」程度の意味を表すものとして,普通
名詞である「ライフ」の前に置かれ当該普通名詞と組み合わせて使用されている。
2商標法3条1項6号の該当性
(1)前記認定事実によれば,本願商標は,「環境に優しい生活」を表す広く一般
的・日常的に使用される成語として認識される「エコライフ」と称呼される「EC
OLIFE」の欧文字を標準文字で表してなるものであり,「エコライフ」の語は,
本件指定役務と関連の深い建物の建築,管理又は売買等の分野においては,「太陽
光発電パネルや断熱性能の高い建築や二酸化炭素(CO2)排出量の削減等,環境に
配慮した建物」といった特定の意味合いを表すものとして一般的に使用されている
ことが認められるから,本願商標を本件指定役務に使用する場合には,これに接す
る取引者,需要者に,上記意味合いを有する「エコライフ」を目的とする建物の管
理,貸借の代理又は媒介,貸与,売買,売買の代理又は媒介,鑑定評価,情報の提
供に係る役務であることを表したものと認識させるにすぎず,自他役務の識別標識
としての機能を有しないものというべきである。
以上のとおり,本願商標は,これを本件指定役務に使用する場合には,自他役務
の識別力を欠くために,商標としての機能を果たし得ないから,「需要者が何人か
の業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」として,商
標法3条1項6号に該当する。
(2)原告の主張について
ア原告は,本願商標の「ECOLIFE」は,外観,称呼及び,観念において,
構成文字全体を一体不可分のものとして認識し把握されるから,本願商標に接する
需要者が,その構成中の「ECO」の文字部分と「LIFE」の文字部分を分離,
抽出して,観察し,それぞれの語より生じる意味合いから全体の意味合いを看取す
るとみることはできず,むしろ,構成全体をもって一体不可分の一種の造語を表し
たと認識するものとみるべきである旨主張する。
しかし,本願商標の「ECOLIFE」の語は,それ自体としては一体不可分の
一種の造語であるとしても,それを構成する単語である「ECO」及び「LIFE」
の各語義並びに称呼に基づく「エコ」及び「ライフ」の各語義から,前記1(2)の意
味合いを有する複合語として認識されるものであるから,原告の上記主張を採用す
ることはできない。
なお,原告は,仮に分離観察が認められるならば,本願商標は,「E」,「CO」
及び「LIFE」の各文字に3分割されることも考えられ,「イー共同生活」程度
の意味合いも生じることとなり,被告の分離観察の主張のみが正しいとすることは
できない旨主張するが,「ECOLIFE」をいかなる基準によって「E」,「C
O」及び「LIFE」の各文字に3分割するのかの根拠が不明であるばかりか,「イー
共同生活」の意味も全く不明であるから,原告の上記主張は独自の見解であって採
用の限りでない。
イ原告は,「エコライフ」の意味合いが,仮に「環境に優しい生活を実施して
いくこと」,「地球環境に優しい暮らしを心がけるライフスタイルのこと」等の意
味合いであって,これを本件指定役務との関係において見た場合,「環境に優しい
生活を実施していくことを目的とする建物に関する役務」,「地球環境に優しい暮
らしを心がけるライフスタイルを目的とする建物に関する役務」を暗示させる場合
があるとしても,多義的,抽象的かつ曖昧で漠然としたものであって,直ちに特定
の役務の質(内容)を直接的かつ具体的に表示するもの,または,役務の宣伝文句
等を表示するものとはいえず,本願商標に接する需要者が,本願商標の構成全体を
もって,一体不可分の特定の意味を有しない一種の造語を表したと認識するものと
みるべきである旨主張する。
しかし,前記1(3)のとおり,「エコライフ」の語が,「環境に優しい生活を実施
していくこと」,「地球環境に優しい暮らしを心がけるライフスタイルのこと」,
「環境への負荷を減らし,環境保全を心がけた暮らし(ライフスタイル)」等の意
味合いを有する語として広く一般的・日常的に使用され,さらに,本件指定役務と
関連の深い建物の建築,管理又は売買等の分野においても,「エコライフ」の語を
使用して,太陽光発電パネルや断熱性能の高い建築様式及び二酸化炭素(CO2)の
排出削減等,地球環境に配慮した建物の建築,管理等の取組みが一般的に広く行わ
れていることから,本願商標の指定役務の需要者においても,「エコライフ」の語
を上記意味合いを表す語として容易に理解,認識するというべきである。そして,
本願商標の指定役務の対象である「エネルギー消費量から炭酸ガス排出量を自動計
算して表示することが可能な建物」は,「エコライフ」の上記意味合いに沿うも
のであるから,「ECOLIFE」の欧文字からなる本願商標を本件指定役務に
使用した場合,これに接する需要者は,何人かの業務に係る役務であることを認
識することができないものというべきである。
しかして,「エコライフ」の意味合いを本件指定役務との関係において見た場合
に,多義的,抽象的かつ曖昧で漠然としたものであるとの原告主張の点についてい
えば,それは元来「エコライフ」の語が,前記1(3)で述べたとおり,例えば「エア
コンの温度調節をこまめにする,自家用車の利用を差し控えバスや電車などの公共
機関を利用する,…,省エネルギーを心がけ二酸化炭素等の発生を抑制したり,廃
棄物の発生を少なくする」など,考え得る様々な手段・方法によって「環境に優し
い生活を実施していくこと」という程度の抽象的な意味合いを有する語であって,
そのため,本件指定役務の対象たる建物との関係で見た場合も,「エコライフ」を
具体化,サポートする建物としては,太陽光発電パネル,断熱性能の高い建築様式,
二酸化炭素(CO2)の排出削減その他の「環境に優しい生活を実施していく」ため
に考え得る様々な手段・方法を広く包含するものであることに起因するものである
から,これが多義的,抽象的かつ曖昧で漠然とした意味合いのものであるとしても,
本願商標が自他役務の識別力を有しないとの判断を左右する理由となるものではな
い。
なお,原告は,「ECOLIFE」の語が,本件指定役務を取り扱う業界におい
て,取引上現実に使用されている事実を見いだすことはできない旨主張するが,商
標法3条1項6号は,需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識
することができない商標につき,それ故に登録を受けることができないとしたもの
であって,当該商標が取引上現実に使用されている事実は,同号の適用において必
ずしも要求されないものと解すべきであるから,原告の上記主張もまた理由がない。
ウ原告は,審決取消訴訟の審理範囲は,審決において審理及び判断された主張・
証拠(審決が争点として取り上げ,判断した事項)に限られるべきであり,新たな
証拠に基づく主張・立証は,それが審決において審理及び判断された主張・証拠を
補強する場合を除いて許されないから,乙6,7,9~11,17~23,29~
38は,新たな証拠として採用すべきではなく,同証拠に基づく被告の主張は認め
られない旨主張する。
しかし,本件審決における争点は,本願商標の商標法3条1項6号に該当する事
実の存否であって,そのために,「ECOLIFE」又は「エコライフ」の語義や,
本件指定役務と関連の深い建物の建築,管理又は売買等の分野における「エコライ
フ」の語義について証拠に基づく審理がされたものであるところ,本件訴訟におい
て被告から提出された乙6,7,9~11,17~23,29~38は,いずれも
本件審判段階において審理された上記各単語の語義が周知であることの立証を補強
する証拠であって,上記各証拠の提出によって当事者の主張には何らの変更もない
のであるから,これらを提出することは許されるというべきである。原告の上記主
張は失当である。
3結論
以上の次第であるから,本件審決は相当であって,原告主張の取消事由は理由が
なく,原告の本訴請求は棄却されるべきものである。
よって,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官富田善範
裁判官大鷹一郎
裁判官田中芳樹

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