弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
1処分行政庁が平成17年3月11日付けで原告に対して行った異議申立て棄
却決定を取り消す。
2処分行政庁が平成16年9月に行ったほ場整備事業(大区画)α地区の換地
計画の決定が無効であることを確認する。
第2事案の概要
本件は,原告が,処分行政庁において千葉県佐倉市のα地区の県営土地改良
事業のため平成16年9月に決定された換地計画は権利者会議の議決を経ずに
決定されたものであるなどと主張して,同換地計画の決定に対する原告の異議
申立てを棄却した決定の取消しを求めるとともに(以下「請求1」という,。)
(「」。)。同換地計画の決定の無効確認を求める以下請求2という事案である
1関係法令等の定め
(1)土地改良法(以下「法」という)。
ア法89条の2第1項は,県知事は,県営土地改良事業について,その事
,,業の性質上必要があるときはその土地改良事業の施行に係る地域につき
換地計画を定めなければならない旨規定している。
イ法89条の2第2項により県営土地改良事業に準用される法52条3項
は,換地計画は,耕作又は養畜の業務を営む者の農用地の集団化その他農
業構造の改善に資するように定めなければならない旨規定している。
同じく準用される同条5項前段は,換地計画を定めるには,その計画に
係る土地につき所有権等の所定の権利を有するすべての者で組織する会議
の議決を経なければならない旨規定し,同じく準用される同条7項は,上
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記会議につき書面又は代理人をもって議決権又は選挙権を行うことができ
る旨を定める法31条2項の規定を準用する。
ウ法89条の2第3項により県営土地改良事業に準用される法53条1項
2号は,換地及び従前の土地について,農林水産省令の定めるところによ
り,それぞれその用途,地積,土性,水利,傾斜,温度その他の自然条件
及び利用条件を総合的に勘案して,当該換地が,従前の土地に照応してい
ることを換地計画の要件として定めている。
同じく準用される法53条の2の2のうち,1項は,換地計画において
は,従前の土地の所有者の申出又は同意があった場合には,その申出又は
同意に係る従前の土地については,地積を特に減じて換地を定めることが
できるとし,2項は,その場合には,金銭による清算をするものとし,当
該換地計画においてその額並びに支払及び徴収の方法及び時期を定めなけ
ればならないとしている。
エ法89条の2第10項により県営土地改良事業に準用される法54条の
3は,県は,換地処分の公告があった場合には,清算金を徴収し,又は支
払わなければならない旨規定している。
(。(2)換地計画実施要領昭和49年7月12日付け49構改B第1232号
各都道府県知事等あてに農林水産省構造改善局長から通知されたもの。以下
「実施要領」という。乙24)
ア実施要領第1の3アは,工事着手前において換地計画に関する基礎調査
及び換地設計基準等の作成を行うほか,できる限り換地計画原案について
関係権利者の合意形成を図ることに留意することにより,ほ場の区画に係
る工事の完了前における換地計画作成作業の推進に努めるものとしてい
る。
イ実施要領第2の3(2)は,換地清算金の算定は,換地選定と一体の関係
にあるので,換地委員会で行うこととするが,事務量等の関係から必要に
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応じて別に設ける土地評価委員会に行わせることも考えられるとしてい
る。
ウ実施要領第2の5(1)は,換地計画を樹立するために,通常換地委員会
を設けるものとし,換地委員の人選に当たっては,換地選定の公正さが保
たれるよう特に留意して行うこととしている。
エ実施要領第2の6(2)アの注2は,換地設計書のうち換地設計総括表に
ついては,権利者会議等の際に各権利者に配付又は通知するのに必要であ
るから,その権利者数に応じて作成することとしている。
オ実施要領の別紙様式第21号の注(2)は,権利者会議では,その開催通
知書に記載した議案以外は議決できないとしている。
(3)換地清算金運用指針(平成14年4月1日付け13農振第3528号。
各地方農政局農村計画部長等あてに農林水産省農村振興局計画部土地改良企
画課長から通知されたもの。同部長から管内都府県に参考送付。以下「運用
指針」という。乙42)
ア運用指針は,第1の冒頭で,同指針では,換地計画において定める清算
金の算定に関し標準的な手法を定めるが,地区の実態に即した清算金の算
定を行うことが必要となる地区にあっては,同指針に基づかずに算定して
も差し支えないとしている。
イ運用指針第3の3(3)では,不換地,特別減歩及び創設換地に係る土地
における評価対象価値は,土地を適正に売買する価値に着目した価値とし
ている。
ウ運用指針第3の11(1)では,不換地,特別減歩地とその充当土地との
間には筆毎の牽連関係がないので,不換地,特別減歩地が現に供用されて
いる用途に着目して評価するとしている。
エ運用指針第3の12(4)では,創設非農用地換地として定める土地は,
非農用地ないし非農用地予定地とみて,近傍類似の転用目的の田畑売買実
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例価格等を参考に評価するとしている。
2前提事実(証拠等の記載のない事実は,当事者間に争いがないか,明らかに
争わない事実である)。
(1)処分行政庁は,平成8年10月18日,α地区(千葉県佐倉市のβ干拓
地及びこれに接続する農地。γ南端,δ川河口付近東側の地区)につき,農
業の大規模経営を可能とする大区画の農地を造営することを内容とするほ場
整備事業(以下「本件事業」という)の計画(以下「本件事業計画」とい。
う)を決定し,本件事業計画は,同年12月2日,確定した。。
(2)本件事業の対象土地の工事は,平成8年12月21日から平成9年5月
20日にかけて実施された。
,,,(3)処分行政庁は平成15年10月31日本件事業計画の変更を決定し
(「」。)同決定に係る本件事業の変更された計画以下本件変更事業計画という
は平成16年3月31日に確定した。
(4)本件変更事業計画の換地計画に関し,平成16年7月12日,権利者会
議(以下「本件権利者会議」という)が開催された。。
(5)処分行政庁は,平成16年9月,本件変更事業計画に係る換地計画(以
下「本件換地計画」という)を決定(以下「本件換地計画決定」という)。。
し,その旨を同月15日から同年10月15日までの間,公告,縦覧に供す
る手続を行った。
(6)原告は,処分行政庁に対し,平成16年10月26日付けで,本件換地
計画決定への異議申立を行ったが,処分行政庁は,平成17年3月11日,
これを棄却する決定(以下「本件棄却決定」という)をした。。
(7)本件換地計画の概要は次のとおりである。
ア構成
換地設計総括表(換地設計基準書及び地区総計表を含む,各筆換地。)
等明細書及び地役権明細書等からなる。
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イ予定地積
農用地48.1ヘクタール及び非農用地25.0ヘクタール
ウ土地の評価
標準地比準方式(従前地の中で農業をするに当たって最も条件の良い土
地を標準地とし,それ以外の土地は,従前地及び換地とも標準地と比較し
て減点又は増点することにより土地評価する方式)を採用した。
標準地(ε×××番地の土地)には1000点が付けられ,1点で1平
方メートル当たり1円と評価するとされているが,他の土地も大半に10
00点が付けられているので,大半の土地の評価価格は1平方メートル当
たり1000円(10アール当たり100万円)とされている。
エ河川用地,都市計画道路用地,佐倉市道用地及びa用地を,従前地の一
部を換地交付の対象から外して金銭で清算する特別減歩等によって創出す
る。上記の特別減歩で創出された各用地のうち,河川用地,都市計画道路
用地及び佐倉市道用地(以下「本件創設非農用地」という)は,γ土地。
改良区が換地として取得する。
オ清算金の徴収又は清算は,γ土地改良区事務所において,換地処分公告
後に被告と同区との間に行われる換地清算完了後3か月以内に一括徴収
し,徴収完了後1か月以内に支払う。
(8)原告は,α地区の4筆2団地の農地で農業を営んできた者で,換地委員
でもあるが,本件換地計画では,上記4筆2団地の農地の大部分と1筆1団
地の農地との換地処分を受けるとともに,上記4筆2団地の農地の残部23
0平方メートルを都市計画道路,佐倉市道路用地及び河川用地として特別減
歩で拠出し,γ土地改良区の事務所で清算金23万円の支払を受け,農地の
増歩による清算金4万5943円を徴収されることになっている(乙58の
2,弁論の全趣旨。)
3争点
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(1)請求1について
ア本件換地計画決定の適法性
(ア)換地委員会等の問題
(イ)本件権利者会議の問題
(ウ)本件換地計画の内容等の問題
イ本件棄却決定自体の適法性
(2)請求2について
ア本件換地計画決定が無効確認訴訟の対象となる行政処分に当たるか
イ本件換地計画決定に重大かつ明白な瑕疵があるか
4争点に関する当事者の主張
(1)請求の1について
ア本件換地計画決定の適法性
(ア)換地委員会等の問題
(原告の主張)
実施要領上,換地計画の樹立に当たっては換地委員会を設け,清算金の
算定は換地委員会ないし同評価委員会(土地評価委員会)ですること等が
要求されているのに,本件換地計画は換地委員会・換地評価委員会により
内容の検討をされておらず,換地委員会の構成も,途中でζ分区の役員が
大幅に増員されて換地委員長とζ分区役員だけで半数以上を占めてしまう
不当な状態であった等の点から,本件換地決定は,実施要領に違反してお
り違法である。
(被告の主張)
換地委員会・同評価委員会は,法令ではなく実施要領に基づき,事業に
係る権利者の利害関係の調整及び円滑な事業の推進を図る観点から設置さ
れるものであるから,本件換地計画の作成に当たり換地委員会の検討が欠
ける等の問題があっても違法とはならない。
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なお,換地計画の原案等の作成には専門的,技術的知識を要し,換地委
,,員だけで一から作成することは困難であるためbの職員が素案を作成し
この素案を換地委員会で検討の上,換地委員会で原案を決定したものであ
るから,最終的に換地委員会で本件換地計画を検討したといえるし,換地
委員の増員に当たっては,ζ分区を6人から12人に,η分区を4人から
8人にしたものであって,分区間の公平は保たれていた。
(イ)権利者会議の問題
(原告の主張)
本件換地計画は,次の①ないし⑥の各点で,権利者会議の議決を経たと
はいえないので,本件換地計画決定は違法である。
①本件権利者会議に当たり,権利者には本件換地計画の内容が示されて
おらず,同計画は議題となっていなかったから,同会議で議決すること
はできない。
②公告された本件換地計画に係る換地設計基準は,本件権利者会議後に
非農用地や経営主体育成方針等に関する部分が作成されたものであり,
権利者会議の議決を経ていない。上記換地設計基準の「平成8年9月1
2日作成」との記載は虚偽であり,この換地設計基準は権利者に諮られ
たものでない。
③本件権利者会議には113名の書面議決者がいたが,この者達は議場
での追加説明を聞かされることもなく,換地計画書を見ることもできな
いので,その賛否を採決に加えたことは違法・不当である。
④本件権利者会議の通知書に添付された議案書には清算金の算定基準が
示されておらず,かかる議案は違法・不当である。
⑤各筆換地等明細書及び原告の指摘した不公平な換地の是正について採
決しなかったことは違法・不当である。
⑥被告は,本件権利者会議を開催するに当たり,換地設計基準・評価基
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準,各筆換地等明細書,地区総計表について権利者に一切説明をするこ
となく説明責任を果たしていないので違法である。
(被告の主張)
本件換地計画は,権利者会議で適正な議決を経ており,原告主張の①な
いし⑥の問題点は次のとおり実体のないものである。
①本件権利者会議に先立ち,各権利者には事前に本件換地計画の地区総
計表の内容等を記載した議案書や各筆換地明細表等を送付していたし,
本件権利者会議場の議場には本件換地計画の全頁と資料等を設置して誰
でも閲覧できる状態にしてあったから,本件換地計画が議題になってい
ないことはない。
,,②本件換地計画の換地設計基準は換地委員会の検討結果等を踏まえて
順次作成補充の上作成され,完成後に権利者会議の議決を経たものであ
る。換地設計基準の日付の記載は,単に,第1回換地委員会が開催され
た日に作成が開始されたことを表示したものにすぎず,最終的に作成さ
れた日を記載しているわけではない。
③書面決議は法52条7項,31条2項により認められている。
④清算金の算定基準は,各権利者に地区総計表の内容等を記載した議案
,。書や各筆換地等明細書等を送付してあったから権利者に示されていた
⑤各筆換地等明細書は本件換地計画を構成するもので,個別の議決は不
要であるし,原告の提案の議決が不要であることは明らかである。
⑥各権利者には地区総計表の内容等を記載した議案書や各筆換地等明細
書等を送付し,本件権利者会議の議場には換地計画書等を設置し,誰で
も閲覧できる状態にしてあったので,説明責任を果たしていないなどと
いうことはない。
(ウ)計画の内容等の問題
(原告の主張)
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本件換地計画は,内容としても次の①ないし⑥のように問題があり,本
件換地計画決定は違法である。
①本件換地計画は,清算金の額及びその支払・徴収の方法・時期の規定
が不十分であり,法89条の2第3項,53条2の2第2項に違反し違
法である。また,河川用地等の買収代金がγ土地改良区への交付金にさ
れ,土地提供者が清算金を得られないことになる点は法89条の2第1
0項,54条の3に違反するし,平成12年11月1日に被告の成田土
地改良事務所長が土地提供者に清算金を支払うとした約束にも違反す
る。
②原告の従前地は肥沃な土地であったのに,換地はガラス片等の不純物
のある土地であるから評価額を減じないのは違法である。
③土地の評価について,河川用地と都市計画道路用地は,千葉県等が1
0アール当たり1070万円などの高額な単価で買収を進めているの
に,10アール当たり100万円とすることは運用指針に反し,違法で
あるし,a用地についても土地の売買価格で評価すべきであるのに農地
と同様に比較している等の違法がある。
④土地の評価は,標準地と比較して増減点評価するものであるから,標
準地を定めずに適正な土地評価はできないのに,本件では標準地が決定
されずに評価されているので違法であるし,ほぼ一律の評価はα地区内
でも一部の農地には暗渠が設置されているから不当である。
⑤工事着手前に本件換地計画の換地設計基準が作成されておらず,実施
要領に違反するし,そのために事業進行上様々な不都合が生じた。
⑥従前地を河川用地へ換地される範囲につき第三者間で不公平がある
し,河川用地の拠出に協力して耕作地を減じた者には,調整地の優先配
分がされないと不公平である。上記の不公平な点により不利益を受けて
いるのは原告ではないがη分区の住民であって,原告にはη分区の分区
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長・換地委員として責任を果たし,自己への信頼を守る利益がある。
⑦法人cの所有地・耕作地が分散しており,法52条3項及び本件換地
計画の経営体育成方針に違反している。補助事業採択要件である法人c
の集積が未達成であると,地権者が補助金を返還しなければならなくな
る。
(被告の主張)
本件換地計画は,内容としても妥当なものであり,原告主張の①ないし
⑥の問題点は次のとおり実体のないものである。
①河川用地等は,平成13年8月2日のα地区役員会で,これを不換地
及び特別減歩で生み出し,γ土地改良区がその一時的な取得者となるこ
とが合意されたものである。今後,特別減歩に応じた権利者は,同区と
,。の間で別途清算できるから清算金が得られなくなるということはない
②本件事業では,基盤整備工事として,整地工事は行っているが外部か
らの土砂の搬入は行っていないから,不純物があるとしたら先立つ盛土
工事の際に混入されたものである。
③従前地及び換地の評価価値については,法令による具体的な規定はな
い。運用指針でも,地区の実態に即して算定できるとし,さらに現に供
用されている用途に着目するともいうので問題ない。
a用地は原告が拠出していないので,その評価は原告の法律上の利益
に無関係である。
④標準地を定めず従前地を一律に評価したのは,換地委員会の評価と先
の盛土事業により全土地が均一であったためであり,妥当であるから,
特に違法とはならない。
⑤実施要領が工事前に換地設計基準を作成するよう求めた趣旨は,一般
に工事後では換地の位置・形状等に不服があっても変更・修正が困難な
ためであるところ,α地区は本件事業以前に地元事業者により残土によ
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る嵩上げ工事がされほぼ均一な農地となっていたため,事前に作成する
必要がなかった。
⑥原告とは別の権利者に関する換地等について不公平であると主張する
ものであって,自己の法律上の利益と無関係である。
⑦集団化は達成されているし,仮に達成されなくても補助金を返還する
のは原告個人ではないから,原告の法律上の利益と無関係である。
イ本件棄却決定自体の適法性
(ア)標準地の決定と比較評価がなかった
(原告の主張)
本件棄却決定が,平成8年9月12日の換地委員会で標準地を定め,従
前地の評価は標準地と比較,採点してしたとされている点は誤りである。
(被告の主張)
平成8年9月12日の換地委員会で標準地を定めていないとしても,本
件換地計画では従前地の評価を一律にすることとしたので,本件換地計画
の換地設計基準作成に当たり標準地を定めておくことは要しないし,標準
地と従前地の比較がされていないとしても,従前地を一律に1平方メート
ル当たり1000円としたのは,換地委員会での検討の結果を踏まえての
ものであり,いずれも本件棄却決定を取り消し得る違法を招来するもので
はない。
(イ)創設非農用地の評価を換地委員会がしていない
(原告の主張)
本件棄却決定で,本件創設非農用地の評価について,換地委員会が評価
した額であるとされている点は誤りである。
(被告の主張)
本件創設非農用地も,地区の実情(本件創設非農用地について,γ土地
改良区が一時取得者となり,後にこれを河川用地等の公共事業用地として
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売却することによって同区が得る差益を本件事業の地元受益者の負担金に
充てることにより地元受益者の負担軽減を図りたいという要望)に照らし
て,換地委員会で検討して,従前地と同じ1平方メートル当たり1000
円と評価したものである。
(2)請求2について
ア本件換地計画決定が無効確認訴訟の対象となる行政処分に当たるか
(被告の主張)
換地計画は,これにより直ちに権利義務の変動が生じるものではなく,
これに基づく換地処分等があって初めて個別具体的な権利変動が生じるも
のであるから,本件換地計画決定は,無効確認訴訟の対象となる行政処分
には当たらない。
(原告の主張)
本件換地計画決定は,無効確認訴訟の対象となる処分に当たる。
イ本件換地計画決定に重大かつ明白な瑕疵があるか
(原告の主張)
,,,本件処分には上記の原告主張に係る違法のほか次の違法な点もあり
重大かつ明白な瑕疵があるといえる。
①本件換地計画の清算金の処理にγ土地改良区を介することとしたの
は,ある関係者の横領的行為を隠蔽するためである。
②法人cの耕作地が連担しておらず,その事業目的が達成されないし,
水田裏作も不可能である。
③換地選定手順として,本件換地計画は集落別団地を決めてから個人別
換地を決めているが,逆にして集団化を図るべきである。
④各集落の位置を従前と同じにしたのでは,同様経営体の連担は不可能
であるから,事業目的が達成されない。
⑤畦畔を設けず境界杭としたのでは,水田の乾田化等ができない。
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(被告の主張)
本件処分は適法であり,重大かつ明白な瑕疵などない。
③は一般的な手法に対して独自の立場から批判するもので,⑤の畦畔が
なくても乾田化は可能である。
第3当裁判所の判断
1前記前提事実,後掲の各証拠及び弁論の全趣旨(各項目の末尾に当該項目の
事実認定に用いた証拠等を掲記した)によれば,以下の事実が認められる。。
(1)本件換地計画の作成過程について
アα地区の農地は,平成2年から4年までの間の盛土工事により,自然排
水が可能な,ほぼ均一な農地として整備されていた(乙4,10,11,
39の1,2。)
イ本件変更事業計画の換地計画を作成するため,平成8年4月15日,α
地区内のζ・η・θ・ιの四つの分区それぞれから合計16名の換地委員
,()。が選任され平成14年2月6日に10名増員された甲5の1及び2
ウ平成8年9月12日に開催された第1回換地委員会で,農林水産省の通
達で示されていた換地設計基準の例などを基に,各項目ごとに検討し,非
農用地も含めて全ての土地の評価は同一とすること等が決定された(乙4
0。)
エ平成9年2月21日に開催された第2回換地委員会で,第1回換地委員
会での検討結果を記載し,標準地に1000点を付け1点で1平方メート
ルあたり1円と評価する旨記載した換地設計基準案が各委員に示された
(甲4の1,甲13,弁論の全趣旨。)
オ平成11年6月29日に開催された換地委員会で,それまでの検討等を
踏まえて,換地設計基準案の修正案が示され,同案の修正点は,畦畔を設
けずに境界杭により換地すること,換地選定手順の項及び経営主体育成方
針の取扱いの項に具体的内容を追加すること,非農用地区域の取扱を規定
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すること,標準地としてε×××番の土地を定めること等であった(甲4
の2,乙52の1。)
カ平成12年11月1日に開催されたα地区換地説明会で,被告の成田土
地改良事務所長から,不換地・特別減歩で土地を提供する者には,施設用
地を取得する法人から換地清算金で土地代金が支払われることがあり得る
との説明があった(甲25。)
キ平成13年8月2日に開催されたα地区役員会で,創設換地である河川
用地,都市計画道路用地,佐倉市道用地については,不換地・特別減歩で
生み出し,一時的にγ土地改良区が取得することが合意された(乙53の
1。)
ク平成14年3月11日に開催された換地委員会・同評価委員会で,a用
地は10アール当たり100万円で法人cが取得することが決議された
(乙54の1。)
ケ平成14年5月31日に開催された換地評価委員会で,調整地配分に先
立って従前地の評価については不整形地のみ下げること等を決定するとと
もに,調整地の配分等について検討された(乙55の1,2。)
(),コ平成14年9月30日に開催された換地評価委員会α地区役員会で
共同減歩的に創設する非農用地である河川拡幅用地,都市計画道路用地,
佐倉市道拡幅用地について権利者から特別減歩の申出書を徴することやγ
土地改良区が上記創設非農用地を一時取得し,これを売却した代金を保管
し,代金の使途についてはα工区役員会に一任する旨の同意書を徴するこ
とで合意された(乙47の1ないし6。)
サ平成15年4月16日に開催された換地評価委員会で,工事前後の評価
等について被告成田土地改良事務所から説明があった(乙56の1ないし
3。)
シ平成16年5月7日,κにおいて開催された会議で,被告担当者らが本
−15−
件換地計画と本件変更事業計画の面積等細部に不整合がないか確認を行
い,最終的に権利者会議に諮る換地計画案の整理を行った(乙57の1,
2,弁論の全趣旨。)
(2)本件権利者会議について
ア本件権利者会議の通知書には「議案ほ場整備事業(大区画)α地区,
の換地計画決定について」と記載がある(乙31の1。)
イ各権利者には,上記通知書とともに,権利者会議議案(従前地及び換地
の評価として1点で1平方メートル当たり1円に相当するとする旨の記
載,地区総計表の内容の記載等からなるもので,従前地及び換地の評価価
格や地積,清算金についての説明資料が添付されており,これは換地計画
案を抜粋したものである)及び権利者ごとの各筆換地等明細書(土地の。
評価等位(点数)及びその評価に基づく特別減歩地の清算金額の記載があ
る)等が送付されていた(乙31の2,乙41,証人d)
ウ本件権利者会議の議場では,議長席の机上に出席者であれば誰でも見ら
れるように本件換地計画の全頁及び同計画に関する図書類が備え付けてあ
り,壁に権利者会議次第と題する書面(議事ほ場整備事業(大区画)「
α地区の換地計画決定について」と大書されたもの)や換地図及び従前地
図が貼られていて,出席者はこれらを確認することが可能であった(乙5
1,58の1,2,証人d。)
エ本件権利者会議は,権利者総数197名の権利者のうち出席40名,欠
席157名であったが,欠席者のうち113名からは本件換地計画への賛
否を示した書面が提出され,15名からは議決を代理人に委任する旨の書
面が提出されていたことから法定の3分の2以上の出席者が存在した乙,(
32ないし34。)
そして,本件換地計画は,出席権利者中,法定の3分の2を超える15
4名(うち出席賛成者35名,賛成書面の提出者111名,代理人による
−16−
賛成者8名)の賛成によって議決された(乙26。)
(3)本件棄却決定について
ア本件棄却決定の決定書の理由第2の2(8)では,平成8年9月12日の
換地委員会で標準地を定め,従前地について標準地と比較,採点し評価し
たとされているが実際には同日時点では標準地が定まっていなかった乙,(
28の2,弁論の全趣旨。)
イ本件棄却決定の決定書の理由第2の2(9)では,河川用地等は,γ土地
改良区を一時取得者とし,換地委員会が評価し知事が適当と認めた評価額
(10アール当たり100万円)により清算処理をすることとしたと記載
されている(乙28の2。)
2換地委員会等の問題について(争点(1)ア(ア))
原告は,換地委員会・同評価委員会による換地計画等の検討が不十分である
ことや換地委員会の構成が不当であること等が実施要領に違反するので,本件
換地計画決定が違法であると主張する。
しかしながら,実施要領上,換地計画の作成に当たり換地委員会・同評価委
員会(土地評価委員会)の関与等が要求されているものの,同要領は,農林水
産省構造改善局長が,各都道府県知事あてに,換地計画の実施の適正かつ円滑
な推進を期するための指導の方針として設けたもので,法的な拘束力を持たな
いから,上記の原告の主張は失当である。
3本件権利者会議の問題について(争点(1)ア(イ))
(1)①の換地計画は議決されていないかという点については,前記1(2)のと
おり,各権利者への通知の記載や議場の掲示物の記載からして,被告側とし
ては本件権利者会議の議案に換地計画案の決議を設定していたことは明らか
であるし,権利者としても事前に本件換地計画の主な内容を記載した資料が
送付されていた上,当日各権利者は議場に備え付けられた本件換地計画の内
容を検討できたのであるから,本件換地計画は本件権利者会議の議案にされ
−17−
ていたと認められ,その議案につき法が要求する権利者の3分の2以上の賛
成があったから,本件換地計画は権利者会議において議決されたといえる。
この点,原告本人尋問の結果には,上記備付けを否定する部分があるが,
前記認定証拠に反し,たやすく信用することはできない。
(2)②の本件換地計画の換地設計基準は議決を経たものかという点について
は,前記1(1),(2)及び証人dの証言によれば,本件換地計画の換地設計基
準は,平成8年9月12日の換地委員会から作成が開始され,改訂を経て本
件権利者会議の前までには完成し,本件権利者会議で本件換地計画の一部と
して議決されたと認められる。
したがって,本件換地計画の換地設計基準は権利者会議の議決を経たもの
である。
(3)③の書面決議に関する点は,法52条7項,31条2項により,書面決
議が認められているから違法はなく,実質的にも本件権利者会議の通知書に
添付されていた資料を検討することにより,各権利者が議案について賛否を
検討することができるように配慮されていたといえるから,この点からも違
法があるとはいえない。
(4)④の議案書に関する点は,前記1(2)イによれば,議案書には従前地の評
価を一律に1点で1平方メートル当たり1円とする旨の記載があり,これと
同時に送付された各筆換地等明細書には土地の評価等位(点数)及びその評
価に基づく特別減歩地の清算金額の記載があるから,各権利者は清算金算定
基準の判断資料の事前配付を受けていたといえるから,特に議案書に違法又
は不当な点はない。
(5)⑤の議決手続の点は,権利者会議で議決することを要するのは換地計画
そのものであって,その一部である各筆換地等明細書や,権利者の提案等を
議決することは法的に要求されているものではないから,議決手続にも違法
又は不当な点はない。
−18−
(6)⑥の被告の説明責任違反の点は,前記1(2)イ,ウによれば,権利者には
換地計画案について理解又は判断が可能な程度の資料が提供されており,権
利者会議の議場においても,権利者であれば誰でも閲覧できるように換地計
,。画書等が置かれていたのであるから特に説明責任違反があるとはいえない
4本件換地計画の内容について(争点(1)ア(ウ))
(1)①の清算金の規定の点については,乙58の2によれば,本件換地計画
(地区総計表№1及び原告の各筆換地等明細書)において,原告の清算金2
3万円が,γ土地改良区事務所で所定の時期に支払われる旨記載されている
ということができ,同計画上は法53条の2の2第1項の要求の応じた定め
がされているといえるので同条項に違反しない。
また,今後実際に支払を受けられるかという点及び被告担当者の説明に係
る点は,本件換地計画の違法事由とは関係がない。
(2)②の照応の原則の観点からは,用途,地積,等位等の農業生産上の諸条
件を総合的に勘案した結果,農業生産力の面において,当該換地が従前地に
ほぼきっ抗しているといえる場合には,各個別の要素について多少の不一致
があったとしても許される。
そして,前記1(1)アのとおり,α地区の農地は先の盛土工事によって,
ほぼ均一であったから,原告の換地の一部分にガラス片等の不純物が含まれ
ているとしても(甲28の各証,なお原告の換地は従前地にほぼきっ抗し)
ているといえ,違法とはならない。
(3)③ないし⑤の点は,いずれも法令に違反するものでなく,実施要領や,
,,運用指針に反するとか事実上不当・不便であるというものにすぎないから
本件換地計画決定の違法事由となるものでなく,主張自体失当である。
(4)⑥の調整地の配分の点は,第三者間の不公平をいうもので,原告の法律
上の利益とは関係のない事由を違法と主張するものであり,行政事件訴訟法
10条1項により,失当である。
−19−
(5)⑦の耕作地の集団化の点は,ここに問題があっても原告個人に法的な不
利益が及ぶとは認められないので,原告の法律上の利益に関係ない事由を違
法と主張するものであり,行政事件訴訟法10条1項により,失当である。
5本件棄却決定自体の適法性(争点(1)イ)
前記1(3)アのとおり,本件棄却決定の決定書の理由の記載には事実に反す
る部分がある。
しかしながら,標準地を定めることは,法令上の要求ではなく,適正に評価
する手段の一つであるところ,前記1(1)アのとおり,α地区は農地がほぼ均
一になっていたという特殊事情があるので,標準地を定めずに換地の評価を開
始しても,前記1(1)ケのように不整形地の評価を下げること等の対応により
適正な評価ができるから,実質的な問題はない。
そうすると,上記の事実に反する記載があるからといって,これを理由に本
件棄却決定を違法と言うことはできない。
また,本件創設非農用地に関する記載は,前記1(1)ウ,エ,キのとおり事
実に適合しているので,これも違法の理由とはならない。
6請求2について(争点(2))
(1)本件換地計画決定が行政処分に当たるか
国営又は都道府県営の土地改良事業につき農林水産大臣又は都道府県知事
が行う事業計画の決定は,法87条6項,7項に同決定が行政不服審査法に
よる異議申立ての対象となる行政処分であることを前提とした規定があり,
同条10項に同決定が本来行政処分として取消訴訟の対象となり得るもので
あることを当然の前提とした規定があることなどを根拠に,行政処分に当た
ると解されるところ(最高裁昭和59年(行ツ)第318号同61年2月1
3日第一小法廷判決・民集40巻1号1頁,国営又は都道府県営の土地改)
良事業につき農林水産大臣又は都道府県知事が行う換地計画の決定も,法8
9条の2第4項が事業計画が行政処分であることを前提とした法87条6
−20−
項,7項,10項を準用しており,換地計画の決定によりその施行地区内の
土地についていかなる換地が行われるかについての具体的内容が確定し,換
地計画に定められた内容に即した換地処分を行うことが可能になるのである
から,同様に行政処分に当たると解するのが相当である。
したがって,本件換地計画決定は,無効確認訴訟の対象となる行政処分に
当たる。
(2)重大かつ明白な瑕疵
原告主張の無効事由①ないし⑤はこれを認めるに足りる証拠がなく,仮に
認められても本件換地計画決定の重大かつ明白な瑕疵といえるものではない
し,その他の点でも前記2ないし4のとおり本件換地計画決定に違法はない
から,本件換地計画決定には重大かつ明白な瑕疵はなく,無効ということは
できない。
7その他にも,原告は本件換地計画に係る問題点を縷々主張するが,本件換地
計画を違法とするような主張はない。
第4結論
よって,原告の請求にはいずれも理由がないからこれを棄却することとし,
主文のとおり判決する。
千葉地方裁判所民事第3部
裁判長裁判官堀内明
裁判官阪本勝
裁判官中村有希

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