弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 被告人上告趣意第一点、第二点について。
 所論は、第一審判決に対し非難を加えているが、上告は原第二審たる福岡高等裁
判所の判決に対してその法令違反を理由としてなすべきものである。論旨は、それ
故に採用することを得ない。
 同第三点について。
 所論において、原判決が公訴請求のない事実を認定して有罪を言渡したのは違法
であると主張している点は、検事が窃盗の事実を起訴したのに対し、原判決は賍物
運搬の事実を認定したものであつて、両者は共に他人の所有にかかる財物に関する
犯罪であつて互に密接の関係を有し、賍物運搬は窃盗の事後においてこれに便益を
確保する犯罪であるから、窃盗罪の公訴事実中には賍物運搬罪の事実を含むものと
解すべく、罪名に変更があつても起訴事実の同一性を害するものではない。また、
原審の事実認定を非難している点は、法令の違反を主張するものでないから、上告
理由として法律上許されない。つぎに、虚偽の証拠を事実認定の資料としたと非難
している点は、原審公判調書によれば、被告人は原審で判示同趣旨の供述をしてい
ることが明らかであるから理由がない。
 同第四点ないし第六点について。
 論旨は、何れも原審の裁量に属する証拠の取捨選択を非難するのであつて法令の
違反を主張するものでないから、法律上上告理由として認めることができない。
 同第七点について。
 原審第三回公判調書によると、裁判長は後藤師郎、陪席判事は青木亮忠、吉田信
孝で当日結審となり、原判決書は前記三名の署名によつて作成され適法である。判
決言渡の際は裁判長島村広治、陪席判事は前記青木、吉田の両名であるが、判決の
宣告は既に出来上つた判決書に基いて言渡をするだけのものであるから、事件の審
判に全く関係のなかつた裁判官が関与しても法律上差支えがないことになつている
(旧刑訴三五四条但書)。論旨は、それ故に理由がない。
 同第八点、第九点について。
 原判決の掲げている証拠を総合して原審が判示事実を認定したことは、当裁判所
でも首肯できるところである。論旨は、結局原判決に対し事実認定及び証拠の取捨
等を非難するに過ぎないから、採用することができない。
 よつて旧刑訴四四六条に従い主文のとおり判決する。
 この判決は裁判官全員の一致した意見である。
 検察官 小幡勇三郎関与
  昭和二四年九月八日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    真   野       毅
            裁判官    沢   田   竹 治 郎
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    岩   松   三   郎

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