弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原判決中被告両名敗訴の部分を取消す。
     原告の請求を棄却する。
     原告の附帯控訴を棄却する。
     訴訟費用は、第一審並びに第二審の控訴及び附帯控訴を通じ原告の負担
とする。
         事    実
 本件控訴の部分につき、被告両名訴訟代理人は「原判法中被告両名敗訴の部分を
取消す。原告の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審共原告の負担とする」との
判決を、原告訴訟代理人は「控訴を棄却する。控訴費用は被告両名の負担とする」
との判決を各求め、又、附帯控訴の部分につき、原告訴訟代理人は、「原判決中原
告勝訴の部分を除きその余を取消す被告両名は原告に対し、連帯して金一〇万八七
〇〇円及びこれに対する昭和二四年一二月一六日より完済に至るまで年六分の割合
による金員を支払うべし。訴訟費用は被告両名の連帯負担とする」旨の判決を、被
告両名訴訟代理人は「附帯控訴を棄却する。附帯控訴費用は原告の負担とする」と
の判決を各求めた外、原告訴訟代理人は、保証を条件とする仮執行の宣言を求め
た。
 当事者双方事実上の陳述は、原告訴訟代理人が左記のとおり主張した外、原判決
摘示のとおりであるから、茲にこれを引用する。
 原告訴訟代理人の陳述
 一、 原告と被告等との本件取引は商行為であるから、商法第五〇三条、第五一
一条により、被告等は連帯して本件債務を、商事法定損害金を附加して弁済すべき
義務を負担するものというべきであるのみならず、被告等自ら両名連帯して弁済す
べき旨約したものである。
 二、 仮に、本件取引が被告等主張の如くなたねの買付を委託したものであり、
経済統制に違反するものであつたとするも、右契約が解除されて、被告等が前渡資
金中現品の送荷をしなかつた不足分に相当する金額の返還を特約し、これにつき甲
第一号証の如き借用証書を作成し、茲に右返還債務を目的とする準消費貸借が成立
するに至つた以上、その履行を求める本訴請求は、民法第七〇八条にいわゆる不法
原因給付の返還を請求する場合に該当するものではない。
 証拠関係は、原告訴訟代理人が当審における原告本人尋問の結果を援用し、被告
両名訴訟代理人が当審における証人Aの証言及び被告両名各本人尋問の結果を援用
した外、原判決摘示のとおりであるから、茲にこれを引用する。
         理    由
 成立に争がない甲第一号証、乙第一号証、原審における原告本人の供述の一部及
び被告B本人尋問の結果、当審における被告両名各本人尋問の結果並びに弁論の全
趣旨を綜合すれば、原告は昭和二四年八月頃被告等に対しなたねの買付を委託し、
その前渡資金として、その頃前後二回に亘り合計金二〇万円を交付したこと、而し
て、当事者双方は現品の送荷をなした数量に応じ後日精算の上代金の決済方約した
ところ、その後被告等は代金約九万円相当の現品を送荷したのみに止まりそれ以外
の分は違反物資として警察署員に差押えられる等の事由により容易にこれを原告の
許に送荷することができなかつたので、原告が被告等に対し右履行を督促した結
果、同年一二月二日被告等は右前渡資金中金一万円につき小切手を振出してその返
還をなした上、不足分は同月一五日までにその現品の追加送荷を完了すべく努力を
続けることとし、若し右送荷をすることができないときは、前渡資金中右不足分に
相当する金額を金一一万五七〇〇円と定め、右期限までにヒれを返還することを約
したことが認められる。この点につき原告は、買付を委託したのはなたねではなく
津田蕪菁の種子であつたと主張し原審における証人Cの証言及び原告本人の供述並
びに当審における原告本人の供述のうちにはこれに符合する部分があるけれどもこ
の部分は、これを措信することができない。他に本件取引の目的物が津田蕪菁種子
であつたことを認めるに足る証左がないから原告の右主張は到底これを採用し得
ず、前叙認定を左右することはできない。而して原告は仮に、本件取引が被告等主
張の如くなたねの買付を委託したものであつたとするも、右契約は解除されて、被
告等が前渡資金中現品の送荷をしなかつた不足分に相当する金額の返還を特約し、
茲に右返還債務を目的とする準消費貸借が成立した旨主張し、前顕甲第一号証の記
載は、恰も右原告の主張に符合するが如くみられるけれども、一面前顕乙第一号証
に記載された文言と対照し<要旨>且、その他の前顕各証拠と綜合して考察すると
き、甲第一号証の借用証書作成に当り、原告と被告等が本件なたね買付委託
の契約を合意によつて解除し、当事者間に原告主張の如き単純なる準消費貸借が成
立したものとは考えられない。即ち、当事者としては、一応右取引関係はこれをそ
の儘存続せしめ置き、唯被告等が不足分の現品の追加送荷をすることができなくな
つたとき、これを条件として前渡資金中右不足分に相当する金額の返還方を約した
に過ぎないものと解するのが極めて実情に即したものと考えられる。本件取引が行
われた当時なたねの出荷、買付、輸送等が旧臨時物資需給調整法に基く油糧需給調
整規則によつて統制されていたことは公知の事実であり、又、本件において当事者
双方共右取引を適法に行うにつき、法定の資格、条件を具備していなかつたこと
は、前掲各証拠によつて窺われるから、本件取引契約は正に公の秩序に反する事項
を目的とするものであることは極めて明らかである。然らば、右取引に際し原告が
被告等に交付した前渡資金は、民法第七〇八条にいわゆる不法原因給付に該当する
ものといわなければならない。而して、当事者間に成立した不足分の追加送荷或い
は前渡資金返還に関する特約が、仮に原告主張の如き前渡資金返還の特約のみに関
する単純なる準消費貸借を約したものであつたとすれば、それが民法第七〇八条に
いわゆる不法原因給付の返還に該当しない場合があり得ることは、原告主張のとお
りであるけれども、右特約が前叙認定の如き趣旨のものであつて、一応当初の取引
関係はこれをその儘存続せしめ置くことを前提とするものである以上、右特約はこ
れ亦公の秩序に反する事項を目的とするものとして無効であるものといわなければ
ならない。されば、原告の本訴請求が、前渡資金そのものの返還を求める場合は勿
論、右前渡資金返還に関する特約に基く請求である場合においても、爾余の争点に
対する判断をするまでもなく失当であることは明らかである。然るに、原審におい
ては事茲に出です、原告の本訴請求の一部を認容したのは極めて不当であるから、
原判決中被告両名敗訴の部分を取消した上、原告の請求を棄却しなければならな
い。被告等の本件控訴はその理由あり、而して、叙上の説示により、原告の本件附
帯控訴が全くその理由なきことは極めて明らかであるから、これ亦その棄却を免れ
ない。
 よつて、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法第八九条、第九六条を適用し、主文
のとお判決する。
 (裁判長裁判官 平井林 裁判官 藤間忠顕 裁判官 組原政男)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛