弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人を懲役四月に処する。
     ただし、この裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する
     第一審の訴訟費用は全部被告人の負担とする。
         理    由
 検察官の事件受理申立理由について。
 刑法二五八条にいわゆる「公務所ノ用ニ供スル文書」とは、その作成者、作成の
目的等にかかわりなく、現に公務所において使用に供せられ、又は使用の目的をも
つて保管されている文書を総称するものと解すべきである。したがつて、現に公務
所において使用又は保管中の文書であるかぎり、それが証明の用に供せられるべき
文書であつても、そうでない文書であつても、この罪の客体となりうる点に変りは
ない。原審の認定した本件毀棄の事実は、昭和三四年二月一四日国鉄労働組合A支
部がa線合理化反対斗争を行ない、同線に列車遅延等の事態が生じたさい、同線b
駅助役らが、管理所長の命により、急告板に白墨を用いて「組合の不法行為により
乗務員がらちされ、各列車が遅延又は運転中止にあつております。当局はできるだ
け努力して列車の運転を確保していますが以上の理由により大変御迷惑をおかけし
ておりますことをお詫び致します」と記載し、これを同駅待合室に掲示しておいた
ところ、被告人は、勝手にこれを取りはずし、同駅通路に持ち出したうえ、黒板拭
をもつてその記載文言を全部抹消したというのであつて、本件毀棄の客体となつた
右文言掲載の急告板は、法律上文書たるに欠けるところなく、まさしく公務所(日
本国有鉄道法三四条、刑法七条参照)において現に使用に供せられている文書に該
当するものというべきである。原判決は、刑法二五八条にいう公用文書は証明の用
に供せられるべき書類であることを要するとし、本件文書は、その内容が旅客に対
する報道ないしは陳謝文である等の点で証明の用に供するものとは認めがたいから、
同条の公用文書に当らないとするのであるが、本件文書が証明文書たる性質を全く
有しないかどうかの点は別として、刑法二五八条の公用文書に右のような制限が存
するとする解釈に誤りがあることは前叙に照らして明白である。したがつて、原判
決が、証拠にもとずき前記毀棄の事実を認定しながら、被告人の所為を刑法二五八
条の公文書毀棄罪に当らないとし、これを同法二六一条の器物毀棄罪に問擬したの
は、法令の適用を誤つたものであり、原判決を破棄しなければ著しく正義に反する
場合といわなければならない。論旨は理由がある。
 弁護人西田公一、同外山佳昌の上告趣意第一は、判例違反、法令違反を主張する
が、右はいずれも前記毀棄の事実につき、これを刑法二六一条の器物毀棄罪に問擬
し、かつこの事実に関する告訴の効力を認めた原判断を非難するに尽きるものであ
るから、右の原判断が前記のとおり擬律の点において破棄されるべきである以上、
この論旨はすべてその前提を欠くにいたるものである。
 同上告趣意第二は、原認定にかかる事実の全部にわたり、事実誤認、単なる訴訟
法違反を主張するものであつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らないのみならず、
原判決が所論の如く証拠の取捨を誤り、事実を誤認した点も認められないので、論
旨は採るをえない。
 以上により、被告人の上告は採るをえないが、検察官の上告は理由があるものと
認め、原判決を破棄し、同四一三条但書により被告事件について更に判決をするも
のとする。
 原判決の認定にかかる、急告板毀棄の事実(原判示中「以て右文書」とある部分
を「もつて公務所の用に供する文書」と訂正する。第一審判示第一の事実)は刑法
二五八条に、公務執行妨害の事実(第一審判示第二の事実)は同法九五条一項に、
脅迫の事実(第一審判示第三の事実)は同法二二二条一項罰金等臨時措置法二条三
条に各該当するので、公務執行妨害及び脅迫の罪につき所定刑中いずれも懲役刑を
選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条、一〇条により最
も重い公文書毀棄罪の刑に法定の加重をし、その刑期の範囲内で被告人を懲役四月
に処し、同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予
し、第一審における訴訟費用は刑訴一八一条一項本文により全部被告人の負担とし、
主文のとおり判決する。
 検察官 中村哲夫公判出席。
  昭和三八年一二月二四日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    横   田   正   俊
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    石   坂   修   一

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛