弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中上告人敗訴部分を破棄する。
     前項の部分につき被上告人の控訴を棄却する。
     控訴費用及び上告費用は、被上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人増渕實の上告理由について
一 原審は、(一) 被上告人は、昭和五五年三月二〇日、上告人から本件建物の所
有権及び本件借地権(本件建物敷地の賃借権)を買い受け、代金六五〇万円を支払
った、(二) 本性土地は、南側が幅員六メートルの公道に接し、北側は高さ約四・
四メートルの崖に臨む地形となっていた、(三) 本件土地北側の崖は、基部が高さ
二メートル弱のコンクリート擁壁で、その上に高さ約二・四メートルの大谷石の擁
壁が積み上げられたいわゆる二段腰の構造となっていた、(四) 昭和五六年一〇月
二二日、台風に伴う大雨により、右擁壁(以下「本件擁壁」という。)に傾斜、亀
裂を生じ、崖上の本件土地の一部に沈下及び傾斜が生じ、構造耐力上及び保安上著
しく危険な状態となったため、同年一一月四日、東京都北区長は、本件土地所有者
らに対して、本件擁壁の新規築造又は十分な改修補強等、安全上必要な措置を早急
に採るよう文書をもって勧告した、(五) そのころ、被上告人も本件土地所有者ら
に対して同様の申入れをしたが、本件土地所有者らが何らの措置も採らなかったの
で、被上告人は、本件建物の倒壊の危険を避けるため、やむなく、これを取り壊し
た、(六) 被上告人は、上告人に対して、昭和五七年七月三一日到達の書面により、
民法五七〇条、五六六条一項の規定に基づき本件売買契約を解除する旨の意思表示
をした、(七) 本件擁壁がこのような状態となったのは、擁壁に通常設けられるべ
き水抜き穴が設けられていなかったため、土中に含まれた雨水の圧力が加わり、大
谷石の擁壁がこれに耐えきれなかったことによるが、被上告人が本件借地権と本件
建物を買い受けた際、本件擁壁の右横造的欠陥について何の説明も受けず、水抜き
穴の欠如がこのような重大な結果をもたらすことに全く想到し得なかったことは、
通常人として無理からぬことであった、との各事実を適法に確定した上、右事実関
係の下において、借地権付建物の買主が当該売買契約当時知らなかった事情により
その土地に建物を維持することが物理的に困難であるということが事後に判明した
ときは、その借地権には契約上当然に予定された性能を有しない隠れた瑕疵があっ
たものといわざるを得ず、これにより建物所有という所期の目的を達し得ない以上、
借地権付建物の買主は、民法五七〇条、五六六条一項により売買契約を解除するこ
とができるとして、上告人は被上告人に対して、本件売買代金六五〇万円、本件売
買に伴い支出した登記費用及び建物火災保険料の金額の合計額並びにこれに対する
昭和五七年一〇月一六日から完済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を
支払うよう命じた。
二 しかし、原審の右判断は、これを是認することができない。その理由は、次の
とおりである。
 すなわち、建物とその敷地の賃借権とが売買の目的とされた場合において、右敷
地についてその賃貸人において修繕義務を負担すべき欠陥が右売買契約当時に存し
たことがその後に判明したとしても、右売買の目的物に隠れた瑕疵があるというこ
とはできない。けだし、右の場合において、建物と共に売買の目的とされたものは、
建物の敷地そのものではなく、その賃借権であるところ、敷地の面積の不足、敷地
に関する法的規制又は賃貸借契約における使用方法の制限等の客観的事由によって
賃借権が制約を受けて売買の目的を達することができないときは、建物と共に売買
の目的とされた賃借権に瑕疵があると解する余地があるとしても、賃貸人の修繕義
務の履行により補完されるべき敷地の欠陥については、賃貸人に対してその修繕を
請求すべきものであって、右敷地の欠陥をもって賃貸人に対する債権としての賃借
権の欠陥ということはできないから、買主が、売買によって取得した賃借人たる地
位に基づいて、賃貸人に対して、右修繕義務の履行を請求し、あるいは賃貸借の目
的物に隠れた瑕疵があるとして瑕疵担保責任を追求することは格別、売買の目的物
に瑕疵があるということはできないのである。なお、右の理は、債権の売買におい
て、債務の履行を最終的に担保する債務者の資力の欠如が債権の瑕疵に当たらず、
売主が当然に債務の履行について担保責任を負担するものではないこと(民法五六
九条参照)との対比からしても、明らかである。
 これを本件についてみるのに、前記事実関係によれば、本件土地には、本件擁壁
の構造的欠陥により賃貸借契約上当然に予定された建物敷地としての性能を有しな
いという点において、賃貸借の目的物に隠れた瑕疵があったとすることは格別(民
法五五九条、五七〇条)、売買の目的物に瑕疵があったものということはできない。
三 そうすると、賃貸借の目的物たる土地の瑕疵をもって、建物と共に売買の目的
とされた賃借権の瑕疵であるとして、本件売買に民法五七〇条の規定を適用して、
その契約の解除を認め、上告人に対して原状回復及び損害賠償の支払を命じた原審
の判断には、同条の解釈適用を誤った違法があり、右違法は判決に影響を及ぼすこ
とが明らかであるから、この趣旨をいう論旨は理由があり、原判決は破棄を免れな
い。そして、右説示に徴すれば、被上告人の請求は棄却すべきものであり、これと
同旨に出た第一審判決は正当であり、被上告人の控訴は棄却すべきものである。
 よって、民訴法四〇八条、三九六条、三八四条、九六条、八九条に従い、裁判官
全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    坂   上   壽   夫
            裁判官    貞   家   克   己
            裁判官    園   部   逸   夫
            裁判官    佐   藤   庄 市 郎
            裁判官    可   部   恒   雄

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