弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を仙台高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 上告代理人中村喜一、同逸見惣作の上告理由第一点について。
 所論の点に関し、原判決は、本件金銭消費貸借当時、訴外Dが上告人組合代表理
事と訴外株式会社Eの代表取締役を兼ねているから、中小企業等協同組合法第三八
条の規定の準用があると解すべきであるとしたうえ、(イ)上告人組合創立当初か
ら臨時総会の協議の結果にもとづき組合員一同においてDに対し営業資金の融資方
を一任していたこと、(ロ)従来しばしば同人が株式会社EやF銀行G支店から融
資を受けて上告人組合の資金に充てていたこと、(ハ)当時上告人組合は融資貸付
などに関しては適宜主な役員が参集し役員会(ただし定款所定の正規の理事会でな
い。)を開き協議していたこと、(ニ)本件金五〇万円の消費貸借についても、当
時の上告人組合の役員らから年末仕入資金の借入を頼まれて役員会を開き、当時の
理事の過半数の承認を得て本件金五〇万円を訴外株式会社Eから借り入れたことな
どの諸事情を認定し、右認定の事情のもとにおいては、本件金五〇万円の消費貸借
については、上告人組合の正規の理事会の承認を得なくても、理事がその地位を悪
用して組合に不当な損害を与えることの弊害を防止せんとする中小企業等協同組合
法第三八条の法意に鑑みるときには、右消費貸借は正規の理事会の承認を得た場合
と同視して、これを有効と解するのが相当である旨判示していることが認められる。
 思うに、訴外Dが上告人組合代表理事と訴外株式会社Eの代表取締役を兼ねてい
る以上、その間に成立する本件金五〇万円の消費貸借について、中小企業等協同組
合法第三八条の規定の準用があるとする原判決の判断は、同条の立法趣旨に照らし、
当裁判所もこれを正当と是認しうるところであつて、しかも、同条に違反して成立
する消費貸借は、同条の立法趣旨に照らし、その効力を生じないと解するのが相当
である。
 しかるところ、原判決は、同条所定の理事会の決議がなくても前記記述のような
諸事情のもとでは、同条所定の理事会の承認を得たものと同視してこれを有効と解
しうる旨判示しているが、この点についての原判決の判断は、ただちに是認しがた
い。
 すなわち、上告人組合のような中小企業等協同組合は、中小企業の商業等の事業
を行う者、勤労者その他の者が、相互扶助の精神に基き協同して事業を行いこれら
の者の公正な経済活動の機会を確保し、もつて、その自主的な経済活動を促進し、
その経済的地位の向上を図る(同法一条参照)ために設けられるのであつて、行政
庁による相当広汎な監督を受け(同法一〇四条以下・二七条の二・六三条など参照)、
経済上の利益をも享受しないわけでもなく(同法七条参照)、強度の公益性を有す
ると解され、その役員たる理事の職責は重大であつて(なお、同法三七条参照)、
法が理事会の権限としている事項については、全理事について意見を発表しうるな
どその権限の行使が適切にあづかれるようにしなければならないことは、同法第四
二条において、商法第二五九条から第二五九条の三までの規定を準用していること
からも明らかといわねばならない。
 そして、この理事たる者がその職責を尽くすべく理事会においてその権限を行使
することは、単に組合員に対する誠実義務のみからでなく、前述の中小企業等協同
組合の公益性の点からも強く要請されているというべきであり、したがつて、理事
会の権限として定められている事項については、法に定める理事会の適法な議決が
ないのにみだりにこれありと解するようなことは、理事をして前記職責を果す機会
を奪うことになり、許されないものと解すべきである。
 それゆえ、中小企業等協同組合法第四二条により準用される商法第二五九条から
二五九条の三の規定による理事会の招集手続も(株式会社の取締役会の招集手続に
ついてはしばらくおき。)、前述した理事の職責にかんがみ、厳格に解釈すべきで
あつて、かりに一部の理事に対し招集手続に通知もれなどの違法のあつたときには、
原則として右理事会の決議も無効となると解すべきであり、ただその理事が出席し
ても理事会の決議の結果になんらの影響がないことが証明されたときにかぎり、右
理事会の決議の効力に影響がないと解するのが相当である。
 ところで、本件金五〇万円の消費貸借については、原判決の判示するところによ
ると、原判示のような事情のもとで、ただ単に理事の過半数の承認があつたという
にとどまるのであり(なお、原判示事実のうち前記(イ)ないし(ハ)としてあげ
る事実も単に上告人組合において過去の取扱いがそうであつたというにとどまるの
であるから、各理事の責任の有無の問題としてならば格別、本件金五〇万円の消費
貸借を有効とする事由とは認めがたい。)、中小企業等協同組合法第四二条により
準用される商法第二五九条から第二五九条の三の規定による理事会の招集手続の有
無、その招集手続に対するかしの有無などに関しては、原判決の判文ではかならず
しも明確に判断してあるといいがたいから、これらの点について、さらに原審をし
て審理を尽くさせしめ、事実を確定する必要があるといわねばならない。
 同第二点について。
 しかし、原判決挙示の証拠によれば、所論の点の原判決の認定事実は肯認しえな
いわけではなく、被上告人らの自白は真実に反しかつ錯誤にもとづくとして自白の
撤回を許した原審の判断は是認しうる。
 この点の所論は採用しがたい。
 よつて、上告理由第一点において説示した理由にもとづき、民事訴訟法第四〇七
条第一項の規定を適用し、原判決を破棄して本件を仙台高等裁判所に差し戻すこと
とし、全裁判官一致の意見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    山   田   作 之 助
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    石   田   和   外

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