弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人弁護士神代宗衛の上告理由第一点について。
 原判決が本件無尽講が貸金業等の取締に関する法律による大蔵大臣の指定を受け
たものであることを否認し同講が右取締法の対象とならない旨を判示し、その理由
として同講が右指定を受けたという以上、上告人に立証責任があるのにその立証を
しないからと説示していることは所論のとおりである。けれども、元来上告人の抗
弁は「本件講会は右法律に違反し大蔵大臣の許可なくして組織されたものであるか
ら無効のものである」というにあるので、この点について考えてみるに、右法律中
その一六条によつて非営業無尽に準用せられる規定は単なる行政上の取締規定に過
ぎず、たとえその規定に違反しても、それだけでは無尽講契約が当然無効となるも
のではないと解すべきである。さすれば原判決が上告人の右抗弁を排斥したのは結
局正当であつて所論は理由がない。
 同第二点について。
 所論は、原判決が本件D組合契約は組合契約たる性質を有する無尽講契約であつ
て消費貸借契約ではない旨認定したのは、証拠に基かず若しくは著しく証拠の趣旨
を誤解して事実を認定した違法あるものであるとし、証拠の取捨解釈を非難し、事
実誤認を主張するものであるが、原審における当事者間に争ない事実と原判決挙示
の証拠によれば原判示の右事実を認めることができる。論旨引用の大審院昭和四年
(オ)四三一号同年六月二七日(論旨に二一日とあるは二七日の誤記と認める)第
一民事部判決は無尽加入者が掛戻金を負担する行為が民法一二条の借財に該当する
かどうかに関するもので本件に適切でなく原判決には判例違反はない。論旨は理由
がない。
 同第三点について。
 上告人及び被上告人等が無尽講たる原判示D組合の会員であつて、上告人は昭和
二四年八月一三日の講会において落札により金一一万七、〇〇〇円の講金の給付を
受けその際上告人はこれに対し同年八月三〇日より同二六年七月一三日まで毎月二
回計四六回に亘り一回に金七、〇〇〇円宛合計三二万二、〇〇〇円を講に掛戻し返
済すべきことを約した事実は原判決の認めるところである。この認定によれば掛戻
金債務は落札による受領講金を超えること金二〇万五、〇〇〇円に達すること所論
のとおりであるが、原判決の確定した事実によれば本件D組合契約は組合契約たる
性質を有する無尽講契約であつて消費貸借契約ではなく、右掛戻金債務はかような
無尽契約に基いて発生したものであると解すべきこと原判示の通りである。そして
本件無尽講において落札者たる上告人が原判示の通り講金一一万七、〇〇〇円を受
領するに対し二〇万五、〇〇〇円という相当多額においてこれを超過する掛戻金を
支払う債務を負担すべきことを約して右落札講金を受領する行為乃至その基礎とな
つた本件無尽講契約は、未だそれだけでは所論のように当然公の秩序又は善良の風
俗に反し民法九〇条によつて無効となるのもというに足りない、又、利息制限法そ
の他の法令に触れ当然無効とせらるべき理由はない。原判決には所論のような違法
なく論旨は理由がない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    垂   水   克   己
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    本   村   善 太 郎

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