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裁判例


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主文
1各事件原告の訴えのうち,次回の最高裁判所の裁判官の任命に関す
る国民の審査において在外選挙人名簿に登録されていることに基づい
て投票をすることができる地位にあることの確認請求に係る部分をい
ずれも却下する。
2各事件原告の訴えのうちその余の部分に係る請求をいずれも棄却す
る。
3訴訟費用は各事件原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
1甲事件
(1)甲事件原告が,次回の最高裁判所の裁判官の任命に関する国民の審査(以
下「国民審査」という。)において,在外選挙人名簿に登録されていること
に基づいて投票をすることができる地位にあることを確認する。
(2)被告は,甲事件原告に対し,5000円及びこれに対する平成21年8月
30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2乙事件
(1)乙事件原告が,次回の国民審査において,在外選挙人名簿に登録されてい
ることに基づいて投票をすることができる地位にあることを確認する。
(2)被告は,乙事件原告に対し,5000円及びこれに対する平成21年8月
31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3丙事件
(1)丙事件原告が,次回の国民審査において,在外選挙人名簿に登録されてい
ることに基づいて投票をすることができる地位にあることを確認する。
(2)被告は,丙事件原告に対し,5000円及びこれに対する平成21年8月
31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要等
1事案の要旨
本件は,国外に居住していて国内の市町村の区域内に住所を有していない日
本国民(以下「在外国民」という。)である各事件原告(以下「原告ら」とい
う。)が,最高裁判所裁判官国民審査法(以下「国民審査法」という。)8条
等の規定は,在外選挙人名簿に登録されている在外国民に審査の投票(審査権
の行使)を認めていない点において,憲法15条並びに79条2項及び3項に
違反するものであるなどと主張して,①原告らが「次回の国民審査において在
外選挙人名簿に登録されていることに基づいて投票をすることができる地位」
にあることの確認を求めるとともに,②国会が在外国民にも審査の投票を認め
る旨の立法をすべき義務を怠ったため,原告らは,平成21年8月30日に行
われた国民審査(以下「本件国民審査」という。)において審査の投票をする
ことができず,精神的苦痛を被ったなどとして,被告に対し,国家賠償法1条
1項に基づき各5000円ずつの慰謝料及びこれに対する遅延損害金の支払を
求める事案である(以下,上記①の各確認請求を総称して「本件各確認請求」
といい,上記②の各国家賠償請求を総称して「本件各国賠請求」という。)。
2関係法令の定め
別紙2「関係法令の定め」に記載されているとおりである。
3争いのない事実
(1)原告らは,いずれも,別紙1「当事者目録」記載の原告らそれぞれの肩書
住所地に居住する在外国民である。
(2)ア甲事件原告は,平成17年8月18日,前記(1)の甲事件原告の肩書住
所地に居住する在外国民として,東京都町田市の在外選挙人名簿に登録さ
れた。
イ乙事件原告は,平成21年1月9日,前記(1)の乙事件原告の肩書住所
地に居住する在外国民として,東京都港区の在外選挙人名簿に登録された。
ウ丙事件原告は,平成12年8月4日,前記(1)の丙事件原告の肩書住所
地に居住する在外国民として,東京都目黒区の在外選挙人名簿に登録され
た。
(3)在外国民である原告らは,平成21年8月30日に行われた本件国民審査
において,審査の投票を行うことができなかった。
4当事者の主張の要点
(1)原告らの主張の要点
ア国民審査法8条等の規定の憲法適合性
(ア)a最高裁平成13年(行ツ)第82号,第83号,同年(行ヒ)第
76号,第77号同17年9月14日大法廷判決・民集59巻7号2
087頁(以下「平成17年大法廷判決」という。)は,まず,在外
国民の選挙権の行使を制限することの憲法適合性について,次のとお
り判示している。
「国民の代表者である議員を選挙によって選定する国民の権利は,
国民の国政への参加の機会を保障する基本的権利として,議会制民
主主義の根幹を成すものであり,民主国家においては,一定の年齢
に達した国民のすべてに平等に与えられるべきものである。
憲法は,前文及び1条において,主権が国民に存することを宣言
し,国民は正当に選挙された国会における代表者を通じて行動する
と定めるとともに,43条1項において,国会の両議院は全国民を
代表する選挙された議員でこれを組織すると定め,15条1項にお
いて,公務員を選定し,及びこれを罷免することは,国民固有の権
利であると定めて,国民に対し,主権者として,両議院の議員の選
挙において投票をすることによって国の政治に参加することができ
る権利を保障している。そして,憲法は,同条3項において,公務
員の選挙については,成年者による普通選挙を保障すると定め,さ
らに,44条ただし書において,両議院の議員の選挙人の資格につ
いては,人種,信条,性別,社会的身分,門地,教育,財産又は収
入によって差別してはならないと定めている。以上によれば,憲法
は,国民主権の原理に基づき,両議院の議員の選挙において投票を
することによって国の政治に参加することができる権利を国民に対
して固有の権利として保障しており,その趣旨を確たるものとする
ため,国民に対して投票をする機会を平等に保障しているものと解
するのが相当である。
憲法の以上の趣旨にかんがみれば,自ら選挙の公正を害する行為
をした者等の選挙権について一定の制限をすることは別として,国
民の選挙権又はその行使を制限することは原則として許されず,国
民の選挙権又はその行使を制限するためには,そのような制限をす
ることがやむを得ないと認められる事由がなければならないという
べきである。そして,そのような制限をすることなしには選挙の公
正を確保しつつ選挙権の行使を認めることが事実上不能ないし著し
く困難であると認められる場合でない限り,上記のやむを得ない事
由があるとはいえず,このような事由なしに国民の選挙権の行使を
制限することは,憲法15条1項及び3項,43条1項並びに44
条ただし書に違反するといわざるを得ない。また,このことは,国
が国民の選挙権の行使を可能にするための所要の措置を執らないと
いう不作為によって国民が選挙権を行使することができない場合に
ついても,同様である。
在外国民は,選挙人名簿の登録について国内に居住する国民と同
様の被登録資格を有しないために,そのままでは選挙権を行使する
ことができないが,憲法によって選挙権を保障されていることに変
わりはなく,国には,選挙の公正の確保に留意しつつ,その行使を
現実的に可能にするために所要の措置を執るべき責務があるのであ
って,選挙の公正を確保しつつそのような措置を執ることが事実上
不能ないし著しく困難であると認められる場合に限り,当該措置を
執らないことについて上記のやむを得ない事由があるというべきで
ある。」
bそして,平成17年大法廷判決は,前記aの判示を前提として,平
成10年法律第47号による公職選挙法の改正(以下「平成10年改
正」という。)により新たに設けられた在外国民に国政選挙における
選挙権の行使を認める制度(以下「在外選挙制度」という。),すな
わち,在外国民については,当分の間,衆議院比例代表選出議員の選
挙及び参議院比例代表選出議員の選挙についてだけ投票をすることを
認め,衆議院小選挙区選出議員の選挙及び参議院選挙区選出議員の選
挙については投票をすることを認めないという制度(平成18年法律
第62号による改正〔以下「平成18年改正」という。〕前の公職選
挙法附則8項参照)の憲法適合性につき,次のとおり判示している
(なお,以下の平成17年大法廷判決の判文中の「本件改正」は,平
成10年改正を指す。)。
「この点に関しては,投票日前に選挙公報を在外国民に届けるのは実
際上困難であり,在外国民に候補者個人に関する情報を適正に伝達
するのが困難であるという状況の下で,候補者の氏名を自書させて
投票をさせる必要のある衆議院小選挙区選出議員の選挙又は参議院
選挙区選出議員の選挙について在外国民に投票をすることを認める
ことには検討を要する問題があるという見解もないではなかったこ
となどを考慮すると,初めて在外選挙制度を設けるに当たり,まず
問題の比較的少ない比例代表選出議員の選挙についてだけ在外国民
の投票を認めることとしたことが,全く理由のないものであったと
までいうことはできない。しかしながら,本件改正後に在外選挙が
繰り返し実施されてきていること,通信手段が地球規模で目覚まし
い発達を遂げていることなどによれば,在外国民に候補者個人に関
する情報を適正に伝達することが著しく困難であるとはいえなくな
ったものというべきである。また,参議院比例代表選出議員の選挙
制度を非拘束名簿式に改めることなどを内容とする公職選挙法の一
部を改正する法律(平成12年法律第118号)が平成12年11
月1日に公布され,同月21日に施行されているが,この改正後は,
参議院比例代表選出議員の選挙の投票については,公職選挙法86
条の3第1項の参議院名簿登載者の氏名を自書することが原則とさ
れ,既に平成13年及び同16年に,在外国民についてもこの制度
に基づく選挙権の行使がされていることなども併せて考えると,遅
くとも,本判決言渡し後に初めて行われる衆議院議員の総選挙又は
参議院議員の通常選挙の時点においては,衆議院小選挙区選出議員
の選挙及び参議院選挙区選出議員の選挙について在外国民に投票を
することを認めないことについて,やむを得ない事由があるという
ことはできず,公職選挙法附則8項の規定のうち,在外選挙制度の
対象となる選挙を当分の間両議院の比例代表選出議員の選挙に限定
する部分は,憲法15条1項及び3項,43条1項並びに44条た
だし書に違反するものといわざるを得ない。」
(イ)a憲法15条1項は,公務員選定権(国会議員を選挙する権利もこ
れに含まれる。)と公務員罷免権(最高裁判所の裁判官を罷免する権
利もこれに含まれる。)を,ともに「国民固有の権利」であると定め
ている。そして,前記(ア)のとおり,平成17年大法廷判決は,「国
民の代表者である議員を選挙によって選定する国民の権利は,国民の
国政への参加の機会を保障する基本的権利として,議会制民主主義の
根幹を成すものであり,民主国家においては,一定の年齢に達した国
民のすべてに平等に与えられるべきものである。」と判示していると
ころ,国会議員を選挙する権利と同様に「国民固有の権利」である最
高裁判所の裁判官を罷免する権利も,国民の国政への参加の機会を保
障する基本的権利として,議会制民主主義の根幹を成すものであり,
民主国家においては,一定の年齢に達した国民のすべてに平等に与え
られるべきものである。
b最高裁判所の裁判官を罷免する権利が「国民の国政への参加の機会
を保障する基本的権利として,議会制民主主義の根幹を成す」もので
あることを詳しく説明すると,次のとおりである。
すなわち,議会制民主主義は,一定の年齢に達した国民の多数(こ
こでは過半数を意味する。)が多数の国会議員を選出し,そうして選
出された国会議員が多数決で立法を行い,内閣総理大臣を選出し,内
閣総理大臣が組閣した内閣が最高裁判所裁判官の任命等をする「国の
仕組み」である。そして,憲法の下では,国の立法・行政・司法の三
権を支配・決定する正当性の根拠は,主権者たる国民の多数の意見に
求められる。ところが,現在の公職選挙法は,選挙権の価値,すなわ
ち,1人の国会議員を選出するための影響力に選挙区ごとに差異が生
ずるような選挙区割りを定めており,例えば,平成22年7月11日
施行の参議院議員通常選挙の時点においては,鳥取県民1人の選挙権
の価値を1とすると,東京都民1人のそれは0.23,北海道民1人
のそれは0.21となっていた。このような住所による選挙権の価値
の不平等のため,上記選挙では,実質的には,主権者たる国民の3
3%により議員定数(146名)の過半数(74名)が選出されてい
ることになる。現在の公職選挙法の選挙区割りは,一定の年齢に達し
た国民の少数(過半数未満)が国会議員の多数を選出するという,い
わば「負の代議制」を定めているものであり,代議制を宣言している
憲法(前文,15条,43条,44条,56条,59条,60条,6
1条,67条,68条,79条)に違反している。そして,憲法上,
公職選挙法に基づく選挙権の価値が住所によって差別されている場合
に,これを正し,実質的な「1人1票」を実現するための方法には,
①国会がこのような差別を無くすような立法をすること,②最高裁判
所が違憲立法審査権を行使して,上記のような現行の公職選挙法の選
挙区割りにつき違憲である旨の判決をすること,③国民が,国民審査
において,上記のような選挙区割りにつき違憲であるとの判断をしな
い「国民1人1人の選挙権の価値の平等」否定説を採る最高裁判所の
裁判官に罷免を可とする旨の投票をし,当該裁判官を罷免する権利を
行使する方法の3つがある。このように,国民の国民審査権は,代議
制民主主義の根幹である「選挙権の価値の平等」を実現することを可
能とする国民固有の権利であり,参政権の一つである。
最高裁判所の裁判官は,違憲立法審査権を行使して法律を違憲無効
とする判決を下し得るという究極の国家権力を行使し得る地位にあり
(憲法81条),その1人1人が国政の決定に限りなく深く関与して
いるといえる。このような地位にある最高裁判所の裁判官を国民審査
の有効投票の過半数で罷免する権利(憲法79条2項,3項)は,国
民が,主権者として国政に対して自らの影響力を行使する権利であり,
まさに参政権である。
なお,国民審査法4条は,「衆議院議員の選挙権を有する者は審査
権を有する」と定めており,憲法15条,79条2項及び3項との関
係ではもちろんのこと,国民審査法4条によっても,衆議院議員の選
挙権を有する者は,当然に国民審査権を有すると解される。
(ウ)前記(イ)で述べたところからすれば,平成17年大法廷判決が前記
(ア)のとおり判示するところは,国民審査権にも援用されるというべき
である。よって,遅くとも,本件についての判決の言渡し後に初めて行
われる国民審査の時点においては,在外国民に国民審査の投票をするこ
とについて,それを拒否するやむを得ない事由があるということはでき
ず,在外国民の国民審査権行使を認めていない国民審査法8条及び3条
の規定は,憲法15条,79条2項及び3項に違反しているといわざる
を得ない。
イ本件各確認請求について
(ア)平成17年大法廷判決は,在外国民が次回の衆議院議員の総選挙に
おける小選挙区選出議員の選挙及び参議院議員の通常選挙における選挙
区選出議員の選挙において,在外選挙人名簿に登録されていることに基
づいて投票をすることができる地位にあることの確認請求に係る訴えに
つき,「選挙権は,これを行使することができなければ意味がないもの
といわざるを得ず,侵害を受けた後に争うことによっては権利行使の実
質を回復することができない性質のものであるから,その権利の重要性
にかんがみると,具体的な選挙につき選挙権を行使する権利の有無につ
き争いがある場合にこれを有することの確認を求める訴えについては,
それが有効適切な手段であると認められる限り,確認の利益を肯定すべ
きものである。そして,本件の予備的確認請求に係る訴えは,公法上の
法律関係に関する確認の訴えとして,上記の内容に照らし,確認の利益
を肯定することができるものに当たるというべきである。なお,この訴
えが法律上の争訟に当たることは論をまたない。」と判示して,その適
法性を肯定した。
上記平成17年大法廷判決の判示は,前記アで述べたところに照らし,
国民審査についても同様に当てはまるものというべきであり,本件各確
認請求は憲法に適合するものである。
(イ)a被告は,本件各確認請求に係る訴えが法律上の争訟に当たらない
旨主張するが,前記(ア)の平成17年大法廷判決の判示に照らし,理
由がないというべきである。
被告は,憲法79条4項を挙げて,国民審査の内容が立法に委ねら
れているとした上で,国民審査法が国外における審査を予定せず,在
外選挙人名簿に関する規定も設けていないから,原告らが確認を求め
る「次回の国民審査において,在外選挙人名簿に登録されていること
に基づいて投票をすることができる地位」は,新たな立法により在外
選挙人名簿に基づき投票資格を付与するという制度が採用されない限
り,法律上存在しない地位であると主張する。しかし,国会議員が憲
法尊重擁護義務を負うこと(憲法99条)からすれば,ここでの立法
政策も憲法に拘束されるのであり,最高裁判所が違憲立法審査権を行
使して,国民審査法8条等が憲法に違反する旨の判決をした場合には,
国会議員は,当該判決の規範に従って,必要であれば立法を行う義務
を負うことになる。そして,代議制民主主義を基本とする憲法の下に
おいては,国民審査権は,憲法改正に係る国民投票権と並び,主権者
たる国民がその意思を直接表明する数少ない手段であって,重要な参
政権であるというべきところ,選挙権という間接的な国政参加の権利
について,在外国民にもその権利を認める以上,より直接的な国政参
加の権利である国民審査権についてこれを認めない理由はない。憲法
改正に係る国民投票権については,在外投票が認められているところ
(日本国憲法の改正手続に関する法律62条),主権者である国民の
直接的な主権行使の方法として,憲法改正に係る国民投票権と国民審
査における投票とを区別する理由はない。
b被告は,本件各確認請求に係る訴えが確認の利益を欠くとも主張す
るが,やはり,前記(ア)の平成17年大法廷判決の判示に照らし,理
由がないというべきである。
憲法は,司法が違憲立法審査権を有することを認めた上で,三権分
立の枠組みを定めている。そうである以上,司法は,請求の趣旨記載
の原告主張の憲法上の権利が法律上の争訟として具体性のある権利で
あって,司法審査に適う限り,公法上の権利関係の確認訴訟において,
合憲・違憲の判断をすることを求められており,国会は,司法の憲法
判断を尊重した上で,憲法に違反しない立法を行うよう求められてい
る。本件各確認請求につき原告らが勝訴した場合,国会議員は憲法尊
重擁護義務に基づいて,次回の国民審査において在外国民である原告
らが投票することができるように,国会が適切と判断する具体的な手
続上の立法をすることが求められるのであって,本件各確認請求に係
る訴えは,原告らが憲法の定める国民固有の権利である国民審査権を
行使するための有効適切な手段であるというべきである。上記訴えに
おいて,裁判所は,具体的な手続的立法をするよう国に命ずることを
求められているのではなく,原告らが次回の国民審査において国民審
査権を行使する権利を有するか否かを確認するにすぎないから,裁判
所が請求を認容する判決をしたからといって,立法行為を行うことに
はならない。
ウ本件各国賠請求について
(ア)平成17年大法廷判決は,国会が平成8年10月20日に施行され
た衆議院議員の総選挙までに在外国民の衆議院小選挙区選出議員の選挙
等における投票を可能とするための立法措置を執らなかったことについ
ての国家賠償請求の当否に関して,「立法の内容又は立法不作為が国民
に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白な
場合や,国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために
所要の立法措置を執ることが必要不可欠であり,それが明白であるにも
かかわらず,国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合など
には,例外的に,国会議員の立法行為又は立法不作為は,国家賠償法1
条1項の規定の適用上,違法の評価を受けるものというべきである。」
とした上で,「在外国民であった上告人らも国政選挙において投票をす
る機会を与えられることを憲法上保障されていたのであり,この権利行
使の機会を確保するためには,在外選挙制度を設けるなどの立法措置を
執ることが必要不可欠であったにもかかわらず,前記事実関係によれば,
昭和59年に在外国民の投票を可能にするための法律案が閣議決定され
て国会に提出されたものの,同法律案が廃案となった後本件選挙の実施
に至るまで10年以上の長きにわたって何らの立法措置も執られなかっ
たのであるから,このような著しい不作為は上記の例外的な場合に当た
り,このような場合においては,過失の存在を否定することはできない。
このような立法不作為の結果,上告人らは本件選挙において投票をする
ことができず,これによる精神的苦痛を被ったものというべきである。
したがって,本件においては,上記の違法な立法不作為を理由とする国
家賠償請求はこれを認容すべきである。」と判示して,当該事件の原告
ら各人につき慰謝料5000円ずつを認容すべきものとした。
(イ)平成17年大法廷判決が前記(ア)のとおり判示するところは,これ
まで述べたところに照らし,国民審査についても同様に当てはまるもの
というべきである。すなわち,国民審査権は憲法上保障された国民固有
の権利であるから,昭和21年から現在に至るまで在外国民に国民審査
における投票を認める制度(便宜上,以下「在外審査制度」という。)
が設けられず,在外国民が国民審査権を行使し得ないことは,上記判決
が例外的な場合として例示するところのいずれにも該当する。
日本弁護士連合会は,平成8年5月1日,衆議院議長,参議院議長,
内閣総理大臣,法務大臣,外務大臣及び自治大臣に宛てて,在外国民に
国政選挙での選挙権の行使を保障するため,公職選挙法に所要の改正を
行うことなどを求める旨と併せて,「最高裁判所裁判官の国民審査も,
海外在住の日本国民が行使できるようにすべく,最高裁判所裁判官国民
審査法も所要の改正をするよう求める。」との記載をした要望書(甲6。
以下「日弁連要望書」という。)を提出しており,国会は,これが提出
された時点で,在外審査制度に関する立法の必要性を認識していたので
あるから,遅くとも平成17年大法廷判決の時点では,上記のような立
法を行うべき義務が国会に生じたと考えられる。
以上からすれば,本件各国賠請求は,認容されるべきである。
(ウ)被告は,平成17年大法廷判決は,昭和59年に在外国民の選挙権
行使を可能とするための法律案が,内閣によって国会に提出されながら
廃案となり,しかも,その後10年以上の間,何らの立法措置も講じら
れなかったという経緯を非常に重視して,国家賠償法1条1項の規定上,
違法の評価を受ける例外的な場合に当たると判断したものであるが,在
外国民の国民審査権行使については上記のような事情はなく,本件は上
記判決とは事案を異にする旨主張する。
しかし,既に述べたとおり,在外国民も選挙権と並ぶ国民固有の権利
として国民審査権(最高裁判所の裁判官の罷免権)を有しているにもか
かわらず,昭和21年から現在までの間,この権利を行使できていない。
憲法99条に基づき憲法尊重擁護義務を負う国会議員が,かかる事項に
つき立法不作為をした場合には,平成17年大法廷判決にいう「立法の
内容又は立法不作為が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害す
るものであることが明白な場合」及び「国民に憲法上保障されている権
利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠
であり,それが明白であるにもかかわらず,国会が正当な理由なく長期
にわたってこれを怠る場合」のいずれにも該当するというべきである。
(2)被告の主張の要点
ア本件各確認請求について
(ア)本件各確認請求に係る紛争が法律上の争訟性を欠くこと
a裁判所法3条にいう「法律上の争訟」とは,法令を適用することに
よって解決し得べき具体的な権利関係ないし法律関係の存否に関する
紛争に限られる。すなわち,「法律上の争訟」として裁判所の固有の
権限に基づく審判の対象となるのは,①当事者間の具体的な権利義務
ないし法律関係の存否に関する紛争であり,かつ,②法令の適用によ
り終局的に解決することができ,③事柄の性質上司法審査に適しない
ような事情の存しないものに限られる。
b憲法は,国民審査の内容につき,79条3項において「投票者の多
数が裁判官の罷免を可とするときは,その裁判官は罷免される。」と
規定するのみであり,同条4項において「審査に関する事項は,法律
でこれを定める。」と規定して,国民審査の制度を具体的にどのよう
な内容の制度とするかの決定を広く立法政策に委ねている。そして,
憲法の規定を受けて制定された国民審査法は,その3条,8条,32
条等の規定を総合すれば,我が国の領域主権の及ばない国外における
審査を予定していないものというほかなく,また,同法には,公職選
挙法における在外選挙人名簿に関する規定(同法30条の2ないし3
0条の16)に相当する規定も設けられていない。したがって,原告
らが本件各確認請求において確認を求める「次回の国民審査において,
在外選挙人名簿に登録されていることに基づいて投票をすることがで
きる地位」は,新たな立法によって在外国民に対して在外選挙人名簿
に基づき国民審査の投票資格を付与するという制度が採用されない限
りは,およそ存在し得ないこととなる。
なお,原告らは,国民審査法4条の規定から,衆議院議員の選挙権
者は当然に審査権を有するかのように主張するが,上記のとおり,同
法は,我が国の領域主権の及ばない国外における審査を予定していな
いのであるから,同法の解釈としては,在外国民には審査権が認めら
れていないと解すべきである。
c本件各確認請求に係る紛争は,新たな立法がない現状において,原
告らに上記のような地位があるかどうかをめぐる紛争であるから,①
当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争とは
いえないし,②法令の適用により終局的に解決できるものでもない。
さらに,③本件各確認請求に係る訴えは,法律上の地位の確認という
形式によっているが,その実体は,国会によって立法措置が講じられ
ておらず,自己の主張に沿う制度が実現されていないにもかかわらず,
国会の立法行為をいわば先取りして,裁判所に対して,立法作用に属
する事項である新たな制度(在外審査制度)の創設を求めるに等しい
ものであり,司法審査に適しない事情があるともいえる。したがって,
本件各確認請求に係る訴えは,裁判所法3条の法律上の争訟に当たら
ないことが明らかであり,不適法というべきである。
(イ)本件各確認請求に係る訴えが確認の利益を欠くこと
a確認の利益が認められるには,①原告,被告間の具体的紛争の解決
にとって,確認訴訟という手段が有効かつ適切であること(確認の訴
えによることの適否),②確認の対象として選んだ訴訟物が,原告,
被告間の紛争解決にとって有効かつ適切であること(確認対象の適切
性),③原告の法的地位に危険や不安が現存し,これを解決するため
に当該確認判決を得ることが必要かつ適切であること(即時確定の利
益)の各要件を満たすことが必要である。
b前記(ア)bで述べたとおり,原告らが確認を求めている「次回の国
民審査において,在外選挙人名簿に登録されていることに基づいて投
票をすることができる地位」は,仮に,国民審査法8条が違憲無効で
あったとしても,新たな立法措置がない限り存在し得ない地位である。
したがって,原告らが主張している在外国民の「国民審査権」に関す
る法的紛争の解決にとって,本件各確認請求に係る訴えを提起するこ
とが有効かつ適切とはいえないし,訴訟物が確認の対象として有効か
つ適切ともいえないから,上記訴えには確認の利益がない。
(ウ)本件は平成17年大法廷判決とは事案を異にすること
平成17年大法廷判決の事案を見ると,そこで問題とされた衆議院議
員及び参議院議員の選挙権については,公職選挙法の平成10年改正に
より,比例代表選出議員の選挙を対象とする在外選挙制度が創設され,
在外国民は在外選挙人名簿に登録されることによって投票をすることが
可能となったものの,両議院の選挙区選出議員の選挙については,平成
18年改正前の公職選挙法附則8項により,選挙権を行使することがで
きない状況に置かれていたものである。平成17年大法廷判決は,同項
の規定のうち,「在外選挙制度の対象となる選挙を当分の間両議院の比
例代表選出議員の選挙に限定する部分は,憲法15条1項及び3項,4
3条1項並びに44条ただし書に違反するもので無効であ」るとして,
在外国民である当該事件の原告らが「次回の衆議院議員の総選挙におけ
る小選挙区選出議員の選挙及び参議院議員の通常選挙における選挙区選
出議員の選挙において,…投票をすることができる地位にある」旨判示
しているとおり,上記改正前の公職選挙法附則8項のうち在外選挙制度
の対象となる選挙を当分の間両議院の比例代表選出議員の選挙に限定す
る部分の憲法適合性を判断し,これが違憲無効であれば,新たな立法に
よらずとも,公職選挙法に基づき在外国民に上記のような限定のない選
挙権の行使が認められることになるために請求が認容できるとした趣旨
であることが明らかである。
これに対し,本件において原告らが確認を求める「次回の国民審査に
おいて,在外選挙人名簿に登録されていることに基づいて投票をするこ
とができる地位」は,新たな立法措置がない限り存在し得ない地位であ
るから,本件は,平成17年大法廷判決とは事案を異にするものであっ
て,同判決を踏まえても,本件各確認請求に係る訴えは,法律上の争訟
とはいえず,確認の利益も認められないというべきである。
イ本件各国賠請求について
(ア)国会の立法不作為と国家賠償法上の違法
国会の立法不作為と国家賠償法上の違法につき,①最高裁昭和53年
(オ)第1240号同60年11月21日第一小法廷判決・民集39巻
7号1512頁(以下「昭和60年判決」という。)は,「国会議員は,
立法に関しては,原則として,国民全体に対する関係で政治的責任を負
うにとどまり,個別の国民の権利に対応した関係での法的義務を負うも
のではないというべきであって,国会議員の立法行為は,立法の内容が
憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらず国会があえて当該立
法を行うというごとき,容易に想定し難いような例外的な場合でない限
り,国家賠償法1条1項の規定の適用上,違法の評価を受けない」と判
示しており,②平成17年大法廷判決は,上記①の昭和60年判決の判
示を前提として,「立法の内容又は立法不作為が国民に憲法上保障され
ている権利を違法に侵害するものであることが明白な場合や,国民に憲
法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を
執ることが必要不可欠であり,それが明白であるにもかかわらず,国会
が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合などには,例外的に,
国会議員の立法行為又は立法不作為は,国家賠償法1条1項の規定の適
用上,違法の評価を受けるものというべきである。」と判示している。
(イ)国民審査法につき前記(ア)の各判例にいう「例外的」事情がないこ

a国政選挙における選挙権と国民審査との憲法上の位置付けの相違
平成17年大法廷判決で問題とされた国政選挙における選挙権と本
件で問題とされている国民審査とは,憲法上の位置付けが異なる。
すなわち,選挙権は,国民主権に立脚する我が国において,国民の
国政への参加の機会を保障する基本的権利であり,議会制民主主義の
根幹を成す権利であって,上記判決も,選挙権が上記のような権利と
して位置付けられていることを重視している。実際に,国際的に見て
も,在外投票制度については世界の多数の国家においても実施されて
いる。
他方で,国民審査権は,最高裁判所の裁判官に対する「国民罷免手
続又は国民解職手続」であり,選任ではなく「リコール(国民解
職)」の性質を有するものである(最高裁昭和24年(オ)第332
号同27年2月20日大法廷判決・民集6巻2号122頁等参照)。
公務員の罷免に関し,憲法15条1項は,「公務員を選定し,これを
罷免することは…」と規定しているが,これは,あらゆる公務員の終
局的任命権が国民にあるという国民主権の原理を表明したもので,国
民が全ての公務員を直接に罷免すべきであるとの意味を有するもので
はなく,公務員の罷免手続に関する憲法の個別規定を見ても,内閣総
理大臣(憲法69条),国務大臣(憲法68条2項,69条,70
条),国会議員(憲法58条2項),下級裁判所の裁判官(憲法64
条,78条)については,国民投票を採用していない。そして,国民
審査についても,具体的な規定は憲法79条2項のみであり,選挙権
に関する諸規定(憲法前文,1条,43条1項,44条ただし書参
照)と比較して,規定ぶりが全く異なっており,在外国民を含めた成
人国民の投票資格があることが規定されているものではない。また,
国民主権原理や議会制民主主義を採用している諸外国においても,最
高裁判所や憲法裁判所の裁判官に対する国民審査の制度を採用してい
る国家は少数であることから見ても,議会制民主主義の根幹を成す選
挙権とは位置付けが相当異なる制度であることは明らかである。
b国民審査における在外審査制度に係る技術上の問題
(a)衆議院議員及び参議院議員の選挙については,いずれも自書式投
票(有権者が,投票用紙に候補者の氏名や政党名を自書する投票方
法)が採用されているところ,平成17年大法廷判決の判示は,こ
のような衆議院議員及び参議院議員の選挙に関しては,衆議院小選
挙区選出議員及び参議院選挙区選出議員の選挙についても,在外選
挙制度の対象とすることが技術上可能であることを前提とするもの
である。
(b)これに対し,国民審査は,15名それぞれに任期の異なる最高裁
判所の裁判官を対象とし,衆議院議員総選挙の機をとらえ,記号式
投票(あらかじめ候補者名等が記載された投票用紙に,投票者が所
定の記号〔国民審査については罷免を求める裁判官に×印〕を記す
投票方法)を用いて行うこととされている点で,衆議院議員及び参
議院議員の選挙とは全く異なる技術上の問題がある。
すなわち,中央選挙管理会は,国民審査の期日前12日までに,
審査の期日及び審査に付される裁判官の氏名を官報で告示しなけれ
ばならないが(国民審査法5条),国民審査は衆議院議員総選挙と
同日に行われることから,選挙の公示日を待って裁判官の氏名等の
告示を行っている。この点,衆議院議員総選挙の期日は,少なくと
も期日の12日前に公示しなければならないが(公職選挙法31条
4項),実務上は,期日前12日に公示されるのが通常である。そ
して,憲法79条2項の趣旨にかんがみると,少なくとも審査に付
される裁判官の氏名の告示までに任命された裁判官については,で
きる限り当該審査に付すことが適切であることから,投票用紙は審
査に付される裁判官の告示を待って印刷している。そうすると,在
外国民が国民審査に投票するためには,各裁判官の氏名等の印刷,
裁断及び発送準備,各地の在外公館への配布準備,東京国際郵便局
への送付,在外公館への送付,到着後の各在外公館における整理,
審査,(審査後の)在外公館から外務省への投票用紙の送付,外務
省から各投票所への送付の各過程を経るところ,在外公館と日本国
内の市町村との投票用紙の送付だけでも原則として5~6日,地域
によってはそれ以上の郵送期間を要する状況であり,国民審査の期
日までに作業を完了して開票に間に合わせることは実際上不可能で
ある。
そのため,平成10年改正により国会議員の選挙につき在外選挙
制度が創設された際に,国民審査につき在外国民の投票を認めるか
否か(在外審査制度を設けるか否か)についても政府内で検討され
たが,上記のとおり主として投票用紙の調製,送付等に関する技術
上の困難により十分な投票期間を確保することができないなどの理
由があることなどから,在外審査制度の創設は見送られた。平成1
7年大法廷判決を受け,平成18年法律第62号によって公職選挙
法が一部改正され,在外選挙制度の対象が衆議院小選挙区選出議員
及び参議院選挙区選出議員の選挙に拡大された際も,かかる技術的
な問題が解消されるものではないことから,在外審査制度は創設さ
れなかったものである。
c在外国民に投票を認めるか否かに関する議論の状況の相違
平成17年大法廷判決は,その判示に照らし,昭和59年に在外国
民の選挙権行使を可能とするための法律案が,内閣によって国会に提
出されながら廃案となり,しかも,その後10年以上の間,何らの立
法措置も講じられなかったという経緯を非常に重視して,国家賠償法
1条1項の規定上,違法の評価を受ける例外的な場合に当たると判断
したことは明らかである。
これに対し,国民審査につき在外国民の投票を認めるか否か(在外
審査制度を設けるか否か)については,平成10年改正の際の審議に
おいて,国民審査につき在外国民の投票を認めることとはしない理由
についての質疑が若干されたことはあるが,国民審査につき在外国民
の投票を可能にするための法律案が国会で審議されたことは一度もな
い。また,政府・国会関係以外を見ても,日弁連要望書(甲6)の末
尾において,在外審査制度を設けるべきである旨の指摘がされたこと
などはあるが,在外選挙制度と比べて世論等の動向は明らかに乏しい。
かかる経緯を比較しても,本件は平成17年大法廷判決の事案とは
全く異なっている。
dまとめ
以上検討した点を総合すると,在外審査制度については,平成17
年大法廷判決において問題となった在外選挙制度と異なり,「国民に
憲法上保障されている権利行使の機会を保障するために所要の立法措
置を執ることが必要不可欠であり,それが明白であるにもかかわらず,
国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠」ったという「例外
的」な場合に当たるとするのは困難であって,本件国民審査において
投票できなかったことに係る本件各国賠請求は理由がない。
5争点
前記4のような当事者の主張からすれば,本件における争点は,以下のとお
りである。
(本案前の争点)
(1)本件各確認請求に係る訴えの適法性(争点1)
(本案の争点)
(2)国民審査法8条等の規定の憲法適合性(争点2)
(3)国会が本件国民審査の時点までに在外審査制度を設ける立法をしなかった
ことが原告らとの関係で違法な公権力の行使に当たるか否か(争点3)
第3当裁判所の判断
1在外選挙制度及び在外審査制度に関する立法の状況等
(1)在外選挙制度に関する立法の状況等(甲6,乙2,当裁判所に顕著な事実
及び弁論の全趣旨)
ア公職選挙法9条1項は,日本国民で年齢満20年以上の者は,衆議院議
員及び参議院議員の選挙権を有する旨規定しているところ,平成10年改
正前の公職選挙法42条1項及び2項は,選挙人名簿に登録されていない
者及び選挙人名簿に登録されることができない者は投票をすることができ
ない旨を定めていた。そして,選挙人名簿への登録は,当該市町村の区域
内に住所を有する年齢満20年以上の日本国民で,その者に係る当該市町
村の住民票が作成された日から引き続き3か月以上当該市町村の住民基本
台帳に記録されている者について行うものとされているが(公職選挙法2
1条1項,住民基本台帳法15条1項),在外国民は,我が国のいずれの
市町村においても住民基本台帳に記録されず,選挙人名簿には登録されな
い。そのため,平成10年改正前においては,在外国民は,公職選挙法9
条1項により選挙権を有するとされている者であっても,衆議院議員の選
挙又は参議院議員の選挙において投票をすることができなかった。
イ昭和58年3月24日,衆議院内閣委員会において,前記アのとおり在
外国民が選挙権を行使することができない実情にあったことに対して,
「海外に在留する邦人が選挙権の行使ができるよう,早急に適切な措置を
講ずること」という附帯決議が行われた。これを契機として,内閣は,第
101回国会に対し,昭和59年4月27日,在外選挙制度の創設に係る
「公職選挙法の一部を改正する法律案」を提出した。しかし,同法律案は,
第105回国会まで継続審査とされていたものの実質的な審議は行われず,
昭和61年6月2日に衆議院が解散されたことにより廃案となった。
ウその後は,在外選挙制度の創設に係る立法がされない状況が続いていた
ところ,平成8年5月には,日本弁護士連合会が,衆議院議長,参議院議
長,内閣総理大臣,法務大臣,外務大臣及び自治大臣に宛てて,在外国民
が選挙権を行使することができるようにするために公職選挙法を改正すべ
きであるなどとする日弁連要望書を提出し,また,同年中には,同年10
月20日に施行された衆議院議員の総選挙において投票をすることができ
なかった在外国民らが原告となり,平成17年大法廷判決に係る訴訟を提
起した。
エ内閣は,第140回国会に対し,平成9年6月10日,在外選挙制度の
創設に係る「公職選挙法の一部を改正する法律案」を提出し,同法律案は,
審議の過程で一部修正された後,最終的に平成10年4月24日に第14
2回国会の参議院本会議において可決され,法律として成立した。同法律
は,同年5月6日,平成10年法律第47号として公布され,平成12年
5月1日に施行された。
平成10年改正により,新たに在外選挙人名簿が調製されることとなり
(公職選挙法第4章の2参照),「選挙人名簿に登録されていない者は,
投票をすることができない。」と定めていた平成10年改正前の公職選挙
法42条1項本文は,「選挙人名簿又は在外選挙人名簿に登録されていな
い者は,投票をすることができない。」と改められた。平成10年改正に
より創設された在外選挙制度においては,衆議院議員の選挙及び参議院議
員の選挙がその対象とされたが(公職選挙法30条の2第1項参照),平
成18年改正前の公職選挙法附則8項は,当分の間は在外選挙制度の対象
となる選挙を衆議院比例代表選出議員の選挙及び参議院比例代表選出議員
の選挙に限定する旨などを定めており,上記の間は,衆議院小選挙区選出
議員の選挙及び参議院選挙区選出議員の選挙は在外選挙制度の対象とはな
らないこととされていた。
オ平成17年大法廷判決の言渡しを受けてされた平成18年改正により,
衆議院小選挙区選出議員の選挙及び参議院選挙区選出議員の選挙について
も,在外選挙制度の対象とされた。
(2)国民審査法における在外国民の位置付け
国民審査法4条は,衆議院議員の選挙権を有する者は,審査権を有する
旨を定めているが,その一方で,同法8条は,審査には,公職選挙法に規
定する選挙人名簿で衆議院議員選挙について用いられるものを用いる旨を
定めている。既に述べたように,選挙人名簿への登録は,当該市町村の区
域内に住所を有する年齢満20年以上の日本国民で,その者に係る当該市
町村の住民票が作成された日から引き続き3か月以上当該市町村の住民基
本台帳に記録されている者について行うものとされているところ(公職選
挙法21条1項,住民基本台帳法15条1項),在外国民は,我が国のい
ずれの市町村においても住民基本台帳に記録されず,選挙人名簿には登録
されないため,国民審査において審査の投票を行うことができない状況に
ある。
(3)在外審査制度に関する立法の状況等(甲6,乙2,当裁判所に顕著な事実
及び弁論の全趣旨)
ア前記(1)ウのとおり,日本弁護士連合会は,平成8年5月,衆議院議長,
参議院議長等に宛てて日弁連要望書を提出したところ,その内容は,主と
して,在外国民が選挙権を行使することができるようにするために公職選
挙法を改正すべきである旨を主張するものであるが,同要望書の3項の末
尾には,「なお,これに合わせて最高裁裁判官の国民審査の機会も海外居
住の日本国民に保障すべきである。」との記載が,4項の末尾には,「合
わせて,最高裁判所裁判官の国民審査も,海外在住の日本国民が行使でき
るようにすべく,最高裁判所裁判官国民審査法も所要の改正をするよう求
める。」との記載が,それぞれ付加されていた。
イ在外審査制度に関しては,公職選挙法の平成10年改正に際しての国会
における審議の過程において,同改正において在外審査制度を創設するこ
ととしなかった理由につき若干の質疑がされたことはあったものの(その
際,政府側は,国民審査は記号式投票であるため,審査の告示後に投票用
紙を印刷して国外に送付し,平成10年改正がされた当時の在外選挙制度
〔平成11年法律第160号による改正前の公職選挙法49条の2〕にお
いて在外公館の長の管理する投票を記載する場所での在外投票が選挙の期
日の5日前までの間に行うべきものとされていたのと同様の方法で審査の
投票を行うこととすると,審査のための時間をほとんど確保することがで
きないこととなることから,在外審査制度は,技術的に実施不可能に近い
状況にあるため,現段階においては在外審査制度の創設は見送ることとし
た旨の説明をしていた。平成10年4月23日に開催された第142回国
会参議院地方行政・警察委員会の会議録参照),これまで,その創設に係
る法律案が国会に提出され,審議されたことはない。
2本件各確認請求に係る訴えの適法性(争点1)について
(1)本件各確認請求に係る訴えは,原告らが,各事件(甲事件,乙事件及び丙
事件)における判決が言い渡された後に初めて行われる国民審査において,
「在外選挙人名簿」(公職選挙法30条の2以下参照)に登録されているこ
とに基づいて審査の投票を行うことができる地位にあることの確認を求める
ものであると解されるところ,その訴えの性質は,公法上の法律関係に関す
る確認の訴え(行政事件訴訟法4条)であると解される。
このような公法上の法律関係に関する確認の訴えも,他の行政事件及び民
事事件に係る訴えと同様に,その対象は,「法律上の争訟」に当たるもので
あることを要する(裁判所法3条1項参照)ところ,ここにいう法律上の争
訟とは,①当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する現実
の紛争であって,②それが法令の適用によって終局的に解決できるものをい
うものと解すべきである(最高裁昭和39年(行ツ)第61号同41年2月
8日第三小法廷判決・民集20巻2号196頁,最高裁昭和51年(オ)第
749号同56年4月7日第三小法廷判決・民集35巻3号443頁,最高
裁平成10年(行ツ)第239号同14年7月9日第三小法廷判決・民集5
6巻6号1134頁等参照)。
(2)ア憲法は,6条2項において,天皇は,内閣の指名に基づいて最高裁判所
の長たる裁判官を任命する旨を定め,また,79条1項において,最高裁
判所の長たる裁判官以外の裁判官は,内閣でこれを任命する旨などを定め
ている一方,同条2項において,最高裁判所の裁判官の任命は,その任命
後初めて行われる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し,その後10年
を経過した後初めて行われる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し,その
後も同様とする旨を定めて,最高裁判所の裁判官につき国民審査の制度を
設け,同条3項は,投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは,その
裁判官は罷免されるものとする旨を定めている。
このような憲法の規定に照らせば,国民審査の制度は,最高裁判所の裁
判官の解職の制度であると解される(最高裁昭和24年(オ)第332号
同27年2月20日大法廷判決・民集6巻2号122頁,最高裁昭和39
年(行ツ)第107号同40年9月10日第二小法廷判決・裁判集民事8
0号275頁,最高裁昭和46年(行ツ)第6号同47年7月25日第三
小法廷判決・裁判集民事106号633頁等参照)。
イところで,憲法は,79条4項において,審査に関する事項は法律でこ
れを定める旨を規定している。そして,国民審査法の定めを見ると,同法
4条においては,衆議院議員の選挙権を有する者は,審査権を有するもの
とされているものの,①同法3条は,審査は,全都道府県の区域を通じて
行う旨を定め,②同法8条は,審査には,公職選挙法に規定する選挙人名
簿で衆議院議員総選挙について用いられるものを用いる旨を定め,③同法
32条は,罷免を可とする投票の数が罷免を可としない投票の数より多い
裁判官は,罷免を可とされたものとするが(同条本文),投票の総数が公
職選挙法22条1項又は2項の規定による選挙人名簿の登録が行われた日
のうち審査の日の直前の日現在において国民審査法8条の選挙人名簿に登
録されている者の総数の100分の1に達しないときは,この限りでない
(同法32条ただし書)旨を定めている。さらに,④同法には,在外国民
につき,公職選挙法に定める在外選挙人名簿を用い,あるいは,上記在外
選挙人名簿に相当するものを調製することにより審査権を行使させる旨の
定めその他在外審査制度に関する定めは,全く置かれていない。
ウ前記1(3)イのとおり,公職選挙法の平成10年改正に際しての国会に
おける審議の過程において,同改正において在外審査制度を創設すること
としなかった理由につき質疑がされた際,在外選挙制度の創設に係る法律
案を提出していた政府側からは,在外審査制度の創設については,技術的
に実施不可能に近い状況にあるとの理由により見送ることとした旨の説明
がされていたものである。
(3)ア国民審査に関する憲法の定め(79条2項~4項)からすれば,憲法は,
同条2項及び3項において規定しているもの以外の国民審査に関する事項
については,同条4項により,国民のうち審査権を有するとされる者にど
のような枠組みにおいてこれを行使させるかという点を含めて,国権の最
高機関であって国の唯一の立法機関である国会(41条)の立法政策に委
ねたものと解される。
そして,前記(2)において述べたような国民審査法の内容や,公職選挙
法の平成10年改正の経緯に照らすと,現行の国民審査法の下において,
在外国民につき,公職選挙法に定める在外選挙人名簿を用い,あるいは,
これに相当するものを調製することにより審査権を行使することを認める
との立法政策がとられていないことは明らかであり,他に,選挙人名簿に
登録されない在外国民につき,審査権を行使することを認めるという立法
政策がとられていることをうかがわせる法令の規定は見当たらない。そし
て,憲法79条4項の規定に照らせば,国会においては,在外審査制度を
新たに創設しようとする場合,在外選挙人名簿への登録を基礎とする制度
以外の枠組みを採用することも許容されているのであって,原告らが本件
各確認請求において確認を求める「次回の国民審査において,在外選挙人
名簿に登録されていることに基づいて投票をすることができる地位」は,
国会において,在外国民につき在外選挙人名簿に登録されていることに基
づいて審査の投票を行うことを認める旨の立法を新たに行わなければ,存
在しない法的地位であるというべきである。
そうすると,原告らが本件各確認請求において確認を求める上記地位は,
国民審査法などの現行の法令の規定を適用することによっては導き出すこ
とができない法的地位であるといわざるを得ない。そして,このことは,
仮に,原告らが主張するとおり国民審査法3条及び8条の規定が違憲無効
であるとの前提に立ったとしても,異なるところはないものというべきで
ある(同法4条の規定は,その文言や,同条とは別に同法8条の規定が設
けられていることに照らし,審査権を有する者の範囲につき定めたものに
とどまり,そのような者に審査の投票,すなわち審査権の行使をどのよう
な枠組みにおいて認めるかにつき定めたものではないと解される。したが
って,同法3条及び8条の規定が違憲無効であるとされた場合において,
同法4条の規定を根拠として,在外国民である原告らが「次回の国民審査
において,在外選挙人名簿に登録されていることに基づいて投票をするこ
とができる」ということはできないものというべきである。)。
イ前記アで述べたところからすれば,本件各確認請求に係る紛争は,法令
の適用によって終局的に解決できるものということができないものという
べきであるから,裁判所法3条1項にいう法律上の争訟には当たらないも
のといわざるを得ない。なお,平成17年大法廷判決は,公職選挙法の平
成10年改正により,衆議院議員及び参議院議員の選挙に関し,在外国民
に在外選挙人名簿に登録されることに基づいて投票をすることを認めると
いう内容の在外選挙制度が創設されたが,平成18年改正前の公職選挙法
附則8項において,在外選挙制度の対象となる選挙が当分の間両議院の比
例代表選出議員の選挙に限定されていたために,在外国民が両議院の議員
の他の選挙につき投票をすることができない状況に置かれていたという事
案,すなわち,同項の規定のうち在外選挙制度の対象となる選挙を上記の
ように限定する部分が違憲無効である場合には,そのような限定が及ばな
いものとして公職選挙法の規定を適用することにより,当該事案の原告で
ある在外国民につき,「次回の衆議院議員の総選挙における小選挙区選出
議員の選挙及び参議院議員の通常選挙における選挙区選出議員の選挙にお
いて,在外選挙人名簿に登録されていることに基づいて投票をすることが
できる地位」という法的地位を導き出すことができる事案に関して,当該
事件の原告らによる上記の地位を有することの確認請求に係る訴えを適法
と判断したものである。したがって,平成17年大法廷判決は,在外審査
制度に関する立法が全くされていない本件とは前提となる事情が相違し,
事案を異にするものというべきであって,本件各確認請求に係る訴えの適
法性の判断に当たり参照するものとして適切ではないというべきである。
(4)この点,原告らは,国会議員が憲法尊重擁護義務を負うこと(憲法99
条)からすれば,国民審査に係る国会の立法政策も憲法に拘束されるのであ
り,最高裁判所が違憲立法審査権を行使して,国民審査法8条等が憲法に違
反する旨の判決をした場合には,国会議員は,当該判決の規範に従って,必
要であれば立法を行う義務を負うことになるとした上で,代議制民主主義を
基本とする憲法の下においては,国民審査権は,憲法改正に係る国民投票権
と並び,主権者たる国民がその意思を直接表明する数少ない手段であって,
重要な参政権であるというべきところ,選挙権につき在外選挙制度が設けら
れており,また,憲法改正に係る国民投票権についても在外投票が認められ
ている以上,在外国民の国民審査権の行使を認めない理由はないなどと主張
し,本件各確認請求に係る訴えは適法であるとする。
しかし,在外審査制度に関して国会が現段階までに選択した前記(3)のよ
うな立法政策の憲法適合性という我が国の法制上のいわゆる実体面における
問題と,現行の法令の規定を適用することによって原告らが本件各確認請求
において確認を求めているような法的地位を導き出すことができるか否か,
すなわち,本件各確認請求に係る紛争が裁判所法3条1項にいう法律上の争
訟に当たるか否かという訴訟手続上の問題とは,法的には次元を異にするも
のというべきであって,原告らの上記主張は,当裁判所の前記判断を左右す
るものとはいい難い。既に述べたとおり,在外国民である原告らについては,
在外審査制度の創設に係る立法自体がされていないために国民審査において
審査の投票を行うことができない状況に置かれているものであり,そのよう
な状態の憲法適合性を行政訴訟によって争う手段として,いわゆる無名抗告
訴訟として立法不作為の違憲確認請求に係る訴えを提起する方法を用いる余
地があるか否かは別論として,本件各確認請求に係る訴えを用いることはで
きないものというべきである(なお,訴状記載の請求の趣旨の文言,平成1
7年大法廷判決の判示をほぼそのまま引用した上で本件各確認請求を認容す
べきものとする原告らの主張の内容,本件の審理経過等に照らすと,本件各
確認請求に係る訴えの請求の趣旨中に,上記のような状態の憲法適合性を行
政訴訟によって争う手段として,上記のような立法不作為の違憲確認請求を
するとの旨が含まれているものとは解し難い。)。
(5)以上のとおりであるから,その余の点について判断するまでもなく,本件
各確認請求に係る訴えは不適法であり,却下を免れない。
3国民審査法8条等の規定の憲法適合性(争点2)及び国会が本件国民審査の
時点までに在外審査制度を設ける立法をしなかったことが原告らとの関係で違
法な公権力の行使に当たるか否か(争点3)について
(1)本件各国賠請求において,原告らは,平成21年8月30日に行われた本
件国民審査において審査の投票を行うことができなかったことについて,国
民審査法において在外国民に審査の投票を認めるための在外審査制度に関す
る規定が設けられていないこと,すなわち,国会が在外審査制度を創設する
旨の立法をしていないことという立法不作為の憲法適合性について争ってい
る。
(2)ア憲法は,前文及び1条において,主権が国民に存することを宣言し,1
5条1項において,公務員を選定し,及びこれを罷免することは,国民固
有の権利である旨を定めて,国民主権の原理に基づき,公務員の終局的な
任免権が国民に存することを表明しており,最高裁判所の裁判官について
は,既に述べたとおり,国民による罷免の制度である国民審査の制度を設
けている(79条2項~4項)。そして,憲法が公務員のうち最高裁判所
の裁判官について特に国民による罷免の制度を設けたのは,最高裁判所は,
一切の法律,命令,規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する
権限を有する終審裁判所とされるとともに(81条),訴訟に関する手続,
弁護士,裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について,規則
を定める権限を有するものとされ(77条1項),また,下級裁判所の裁
判官については,最高裁判所の指名した者の名簿によって,内閣でこれを
任命するものとされている(80条1項)ことから,そのような最高裁判
所の地位と権能の重要性にかんがみ,主権者であり,公務員の選定罷免権
を有するとされている国民に対し,最高裁判所の裁判官につき,その任命
から一定の期間を置いて,定期的に,これを罷免する機会を与えることに
よって,最高裁判所の裁判官を国民による民主的統制の下に置こうとした
ものと解される。
このような国民審査の制度の趣旨に照らせば,選挙権に関する憲法の規
定(15条3項及び4項,44条ただし書)及び投票の機会の平等の要請
(憲法14条1項参照)の趣旨は,国民審査における審査権についても及
ぶものというべきであって,憲法は,最高裁判所の裁判官の罷免権である
審査権を国民の固有の権利として保障しており,その趣旨を確たるものと
するため,国民に対して審査の投票を行う機会を平等に保障しているもの
と解するのが相当である。そして,国民審査法4条において,衆議院議員
の選挙権を有する者が審査権を有する旨を定めているのは,国民審査が衆
議院議員の総選挙の際に行われるものとされていること(憲法79条2
項)を踏まえて,上記のような憲法の趣旨を具体化したものと解される。
以上に述べたところと異なる被告の主張は,採用することができない。
イ以上からすれば,国においては,国民の審査権の行使を可能にするため
の所要の立法措置(憲法79条4項参照)等を執らないという不作為によ
って国民が審査権を行使することができないとの事態を生じさせることは,
原則として許されず,これが許容されるには,そのような立法の不作為が
やむを得ないと認められる事由がなければならないというべきであり,国
においてそのような事由がないにもかかわらず上記のような事態を生じさ
せて放置しているような場合には,当該不作為は,憲法に適合しないもの
といわざるを得ないものというべきである。
前記1(2)において述べたとおり,在外国民は,選挙人名簿の登録につ
いて日本国内に居住する国民と同様の被登録資格を有しないために,現行
の国民審査法の下において,そのままでは審査権を行使することができな
いが,憲法によって審査権を保障されていることは,日本国内に居住する
国民と同様である。そうすると,国には,国民審査の公正の確保に留意し
つつ,審査権の行使を現実的に可能にするために所要の措置を執るべき責
務があるのであって,国民審査の公正の確保に留意しつつそのような措置
を執ることが事実上不能ないし著しく困難であると認められる場合に限り,
当該措置を執らないことについて上記のやむを得ない事由があるというべ
きである。
(3)アこの点,被告は,国民審査は,それぞれ任期の異なる最高裁判所の裁判
官を対象とし,衆議院議員総選挙の機をとらえ,記号式投票を用いて行う
こととされている点で,衆議院議員及び参議院議員の選挙とは全く異なる
技術上の問題がある,すなわち,実務上,審査の期日及び審査に付される
裁判官の氏名の官報への告示は,期日前12日にされ(国民審査法5条参
照),投票用紙は審査に付される裁判官の告示を待って印刷するところ,
在外国民が国民審査の投票を行うためには,各裁判官の氏名等の印刷,裁
断及び発送準備,各地の在外公館への配布準備,東京国際郵便局への送付,
在外公館への送付,到着後の各在外公館における整理,審査,審査後の在
外公館から外務省への投票用紙の送付,外務省から各投票所への送付の各
過程を経ることが必要であり,在外公館と日本国内の市町村との投票用紙
の送付だけでも原則として5~6日(地域によりそれ以上)の郵送期間を
要することから,審査の期日までに作業を完了して開票に間に合わせるこ
とは実際上不可能であるとして,国民審査の公正の確保に留意しつつ在外
審査制度に係る立法をすることは,事実上不能ないし著しく困難であると
いう趣旨の主張をする。
イ(ア)確かに,憲法が国民審査の制度を創設した当時の外国との間の交通
事情及び通信事情にかんがみれば,その当時においては,審査の期日及
び審査に付される裁判官の氏名の官報での告示の日から審査の期日まで
の間の限られた期間内に,在外国民に対して国民審査の対象である個々
の最高裁判所の裁判官に関する情報を適正に伝達するなどするとともに,
在外国民による投票の結果を正確に審査の結果として反映させることは,
著しく困難な状況にあったものといわざるを得ず,国会において在外審
査制度の創設に係る立法措置を執らなかったことについては,やむを得
ない事由があったものというべきである。
(イ)しかし,近年においては,通信手段が地球規模で目覚ましい発達を
遂げており,一般論として,在外国民に国民審査の対象である個々の最
高裁判所の裁判官に関する情報を適正に伝達することが著しく困難であ
るとまではいえなくなったものと考えられること,衆議院議員及び参議
院議員の選挙については,公職選挙法の平成10年改正により在外選挙
制度が導入され,平成21年8月30日の本件国民審査までの間に在外
選挙が繰り返し実施されていたこと(このような在外選挙の実施の経験
は,在外審査制度の創設に関しても有用な資料となるものということが
できると思われる。)などに照らせば,少なくとも本件国民審査が行わ
れた時点の社会状況は,憲法が国民審査の制度を創設した当時とは大き
く変化していたものというべきである。
(ウ)そして,現行の国民審査法が採用している都道府県の選挙管理委員
会が調製する投票用紙によるいわゆる記号式投票の方法(国民審査法1
4条,15条1項)及び現行の公職選挙法の下における在外投票の方法
(同法49条の2,同法施行令65条の4等)に準ずる方法を前提とす
る限り,在外審査制度を創設し世界に散在する多数の在外国民に審査権
の行使を認めるに当たり,被告が指摘するような解決されるべき技術上
の問題がなお相応に存することは否定することができないものと考えら
れるが(なお,前記1(3)イ参照),憲法は,審査の投票につきどのよ
うな方法を用いるかについても法律にこれを委ねており(79条4項),
上記のようなもの以外の方法を採用することも許容されているものとい
うべきであるから,前記(イ)で述べたところに照らせば,上記の平成2
1年8月30日の時点において,前記アにおいて被告が主張するところ
のみでは,国民審査の公正の確保に留意しつつ在外審査制度の創設に係
る立法措置を執ることが事実上不能ないし著しく困難であることを基礎
付ける事情としては,直ちに十分なものであるとはいい難いものという
べきである(例えば,国民審査法16条1項は,点字による審査の投票
を行う場合につき,審査人は,投票所において,投票用紙に,罷免を可
とする裁判官があるときはその裁判官の氏名を自ら記載し,罷免を可と
する裁判官がないときは何等の記載をしないで,これを投票箱に入れな
ければならない旨を定めて,いわゆる記名式投票の方法を用いることと
しているのであって,前記アに掲げられている問題に限っていえば,在
外審査制度を創設した場合にこれに類する記名式投票の方法によるなど
のことにより,一定の程度における対処は可能であるように思われ
る。)。
(エ)前記(2)ア及びイのような国民審査の制度の趣旨等並びに前記(イ)及
び(ウ)において述べたところからすれば,少なくとも本件国民審査が行
われた平成21年8月30日の時点では,在外審査制度の創設に係る立
法措置を執らないという不作為によって在外国民が審査権を行使するこ
とができないとの事態を生じさせていたことの憲法適合性については,
重大な疑義があったものといわざるを得ないというべきである。
ウしかし,①選挙権に関する憲法の諸規定と国民審査の制度に関する憲法
の諸規定の規定ぶりの違いや,国民主権原理や議会制民主主義を採用して
いる国であっても,必ずしも最高裁判所等の裁判官の任命に関する国民審
査の制度が採用されているわけではないことに照らせば,選挙権と審査権
とでは,憲法上の位置付け等が異なるとの見方にも,全く根拠がないとま
ではいえない。②また,在外国民において審査の投票を行うことができな
い状況にあることの憲法適合性という問題については,平成8年に衆議院
議長,参議院議長等に提出された日弁連要望書(甲6)において一応言及
されてはいるものの,同要望書の主旨は,在外選挙制度の創設を求めるも
のであって,国民審査の制度に関する記載は,付随的かつごく簡単なもの
にとどまっている。③さらに,本件における当事者の主張・立証の状況等
にかんがみると,在外国民において審査の投票を行うことができない状況
にあることの憲法適合性については,平成10年改正前の公職選挙法にお
いて在外選挙制度が設けられていなかったこと等の憲法適合性等につき最
高裁判所として初めての判断がされた平成17年大法廷判決の言渡しの時
点である同年9月14日よりも前の時点においてはもとより,その後,現
在に至るまで,憲法のいわゆる研究者等の執筆に係る文献中をも含めて,
当事者がその主張において引用し,あるいは,訴訟資料として提出するに
足りるような議論がいまだ十分にされているとはいい難い状況にあること
がうかがわれる。④そして,現行の国民審査法が投票の方法として採用し
ている記号式投票は,我が国において,国民審査の制度の趣旨に合致する
合理的な投票の方法として定着しているものであるが(前掲昭和27年2
月20日大法廷判決,前掲昭和40年9月10日第二小法廷判決,前掲昭
和47年7月25日第三小法廷判決等参照),既に述べたところからすれ
ば,在外審査制度の導入に際しては,上記のような従来の投票の方法を維
持することができるかを含めて,抜本的な議論をすることが必要となる可
能性が高いものと考えられ(例えば,在外審査制度において記名式投票の
方法を用いるべきか否かの議論がされる場合には,現行の国民審査法にお
いて記号式投票が原則的な投票の方法とされていることの当否についても
議論が及ぶことになるものと思われる。この点で,記名式投票という従前
の投票の方法を変更する必要がなかった在外選挙制度の創設とは事情が異
なるというべきである。),在外国民の審査権の行使をいかなる枠組みに
おいて認めるのが国民審査の公正を確保する上で適切なのか等について広
く国民の意見を求める等のことに関しても検討する必要があり得るところ,
平成17年大法廷判決の言渡しの時点から本件国民審査が行われた平成2
1年8月30日までの期間は,4年弱にとどまっていたものである。以上
に述べたところからすれば,本件国民審査が行われた平成21年8月30
日の時点においては,憲法上要請される合理的期間内に前記イ(エ)のよう
な事態の是正がされなかったものとまでは断定することができないから,
上記の時点において国会において在外審査制度を創設する旨の立法措置が
執られていなかったことをもって,憲法に違反するものとまではいえない
ものというべきである。
エまた,国会議員の立法不作為は,当該不作為が国民に憲法上保障されて
いる権利を違法に侵害するものであることが明白な場合や,国民に憲法上
保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執るこ
とが必要不可欠であり,それが明白であるにもかかわらず,国会が正当な
理由なく長期にわたってこれを怠る場合などには,例外的に,国家賠償法
1条1項の規定の適用上,違法の評価を受けるものというべきところ(昭
和60年判決,平成17年大法廷判決参照),前記ウにおいて述べたとこ
ろからすれば,平成21年8月30日の時点において在外審査制度を創設
する旨の立法措置が執られていなかったことをもって,同項の規定の適用
上,違法であるとまではいえないものというべきである。
(4)そうすると,本件各国賠請求は,いずれも理由がないものと言わざるを得
ない。
4結論
以上の次第であって,原告らの訴えのうち本件各確認請求に係る部分は,不
適法であるからいずれも却下し,上記の各訴えのうちその余の部分に係る請求
は,理由がないからいずれも棄却することとし,訴訟費用の負担につき行政事
件訴訟法7条,民事訴訟法61条,65条1項本文を適用して,主文のとおり
判決する。
東京地方裁判所民事第3部
裁判長裁判官八木一洋
裁判官田中一彦
裁判官髙橋信慶は,転補のため,署名押印することができない。
裁判長裁判官八木一洋
(別紙2)
関係法令の定め
1憲法の定め
(1)憲法15条1項は,公務員を選定し,及びこれを罷免することは,国民固
有の権利である旨を定めている。
(2)①憲法79条1項は,最高裁判所は,その長たる裁判官及び法律の定める
員数のその他の裁判官でこれを構成し,その長たる裁判官以外の裁判官は,
内閣でこれを任命する旨を,②同条2項は,最高裁判所の裁判官の任命は,
その任命後初めて行われる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し,その後
10年を経過した後初めて行われる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し,
その後も同様とする旨を,③同条3項は,上記②の場合において,投票者の
多数が裁判官の罷免を可とするときは,その裁判官は罷免される旨を,④同
条4項は,審査に関する事項は,法律でこれを定める旨を,それぞれ定めて
いる。
2国民審査法の定め
(1)①国民審査法2条1項は,審査は,各裁判官につき,その任命後初めて行
われる衆議院議員総選挙の期日に,これを行う旨を定めており,②同条2項
は,各裁判官については,最初の審査の期日から10年を経過した後初めて
行われる衆議院議員総選挙の期日に,更に審査を行い,その後も,また同様
とする旨を定めている。
(2)国民審査法3条は,審査は,全都道府県の区域を通じて,これを行う旨を
定めている。
(3)国民審査法4条は,衆議院議員の選挙権を有する者は,審査権を有する旨
を定めている。
(4)国民審査法5条は,中央選挙管理会は,審査の期日前12日までに,審査
の期日及び審査に付される裁判官の氏名を官報で告示しなければならない旨
を定めている。
(5)国民審査法6条1項は,審査は,投票によりこれを行う旨を定めている。
(6)国民審査法8条は,審査には,公職選挙法に規定する選挙人名簿で衆議院
議員選挙について用いられるものを用いる旨を定めている。
(7)①国民審査法14条1項は,投票用紙には,審査に付される裁判官の氏名
を,中央選挙管理会がくじで定めた順序により,印刷しなければならない旨
を定めており,②同条2項は,投票用紙には,審査に付される各裁判官に対
する×の記号を記載する欄を設けなければならない旨を定めており,③同条
3項は,投票用紙は,別記様式に準じて都道府県の選挙管理委員会がこれを
調製しなければならない旨を定めている。
(8)国民審査法15条1項は,審査人は,投票所において,罷免を可とする裁
判官については,投票用紙の当該裁判官に対する記載欄に自ら×の記号を記
載し,罷免を可としない裁判官については,投票用紙の当該裁判官に対する
記載欄に何等の記載をしないで,これを投票箱に入れなければならない旨を
定めている。
(9)国民審査法32条は,罷免を可とする投票の数が罷免を可としない投票の
数より多い裁判官は,罷免を可とされたものとするが(同条本文),投票の
総数が公職選挙法22条1項又は2項の規定による選挙人名簿の登録が行わ
れた日のうち審査の日の直前の日現在において国民審査法8条の選挙人名簿
に登録されている者の総数の100分の1に達しないときは,この限りでな
い(同法32条ただし書)旨を定めている。
3公職選挙法等の定め
(1)公職選挙法2条は,同法は,衆議院議員,参議院議員並びに地方公共団体
の議会の議員及び長の選挙について適用する旨を定めている。
(2)公職選挙法9条1項は,日本国民で年齢満20年以上の者は,衆議院議員
及び参議院議員の選挙権を有する旨を定めている。
(3)ア①公職選挙法19条1項は,選挙人名簿は,各選挙を通じて一の名簿と
する旨などを,②同条2項は,市町村の選挙管理委員会は,選挙人名簿の
調製及び保管の任に当たる旨などを定めている。
イ公職選挙法21条1項は,選挙人名簿の登録は,当該市町村の区域内に
住所を有する年齢満20年以上の日本国民(同法11条1項若しくは25
2条又は政治資金規正法28条の規定により選挙権を有しない者を除
く。)で,その者に係る登録市町村等(当該市町村及びその区域の全部又
は一部が廃置分合により当該市町村の区域の全部又は一部となった市町村
であって,当該廃置分合により消滅した市町村をいう。)の住民票が作成
された日(他の市町村から登録市町村等の区域内に住所を移した者で住民
基本台帳法22条の規定により届出をしたものについては,当該届出をし
た日)から引き続き3か月以上登録市町村等の住民基本台帳に記録されて
いる者について行う旨を,それぞれ定めている。
ウ公職選挙法22条1項は,市町村の選挙管理委員会は,①登録月の1日
現在により,当該市町村の選挙人名簿に登録される資格を有する者を当該
登録月の2日に選挙人名簿に登録しなければならないが,②登録月の1日
から7日までの間に選挙の期日がある選挙を行う場合その他特別の事情が
ある場合には,政令で定めるところにより,登録の日を変更することがで
きる旨を定めている。
エ公職選挙法22条2項は,市町村の選挙管理委員会は,選挙を行う場合
においては,当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会(衆議院比
例代表選出議員又は参議院比例代表選出議員の選挙については,中央選挙
管理会)が定めるところにより,当該市町村の選挙人名簿に登録される資
格を有する者を選挙人名簿に登録しなければならない旨を定めている。
(4)ア①公職選挙法30条の2第1項は,市町村の選挙管理委員会は,選挙人
名簿のほか,在外選挙人名簿の調製及び保管を行う旨を,②同条2項は,
在外選挙人名簿は,衆議院議員及び参議院議員の選挙を通じて一の名簿と
する旨などを,③同条3項は,市町村の選挙管理委員会は,同法30条の
5第1項の規定による申請に基づき,在外選挙人名簿の登録を行うものと
する旨を,それぞれ定めている。
イ公職選挙法30条の4は,在外選挙人名簿の登録は,在外選挙人名簿に
登録されていない年齢満20年以上の日本国民(同法11条1項若しくは
252条又は政治資金規正法28条の規定により選挙権を有しない者を除
く。)で,在外選挙人名簿の登録の申請に関しその者の住所を管轄する領
事官(領事官の職務を行う大使館若しくは公使館の長又はその事務を代理
する者を含む。以下同じ。)の管轄区域内に引き続き3か月以上住所を有
するものについて行う旨を定めている。
ウ公職選挙法30条の5第1項は,在外選挙人名簿に登録されていない年
齢満20年以上の日本国民で,在外選挙人名簿の登録の申請に関しその者
の住所を管轄する領事官の管轄区域内に住所を有するものは,政令で定め
るところにより,文書で,最終住所の所在地の市町村の選挙管理委員会
(その者が,いずれの市町村の住民基本台帳にも記録されたことがない者
である場合には,申請の時におけるその者の本籍地の市町村の選挙管理委
員会)に在外選挙人名簿の登録の申請をすることができる。
(5)公職選挙法31条4項は,衆議院議員の総選挙の期日は,少なくとも12
日前に公示しなければならない旨を定めている。
(6)公職選挙法42条1項本文は,選挙人名簿又は在外選挙人名簿に登録され
ていない者は,投票をすることができない旨を定めている。
(7)公職選挙法49条の2第1項は,在外選挙人名簿に登録されている選挙人
(当該選挙人のうち選挙人名簿に登録されているもので政令で定めるものを
除く。以下同条において同じ。)で,衆議院議員又は参議院議員の選挙にお
いて投票をしようとするものの投票については,同法48条の2第1項(期
日前投票)及び同法49条1項(不在者投票)の規定によるほか,政令で定
めるところにより,後記ア及びイに掲げるいずれかの方法により行わせるこ
とができる旨を定めている。
ア1号
衆議院議員の総選挙又は参議院議員の通常選挙にあっては後記(ア)に掲
げる期間,衆議院議員又は参議院議員の再選挙又は補欠選挙にあっては後
記(イ)に掲げる日に,自ら在外公館の長(各選挙ごとに総務大臣が外務大
臣と協議して指定する在外公館の長を除く。以下1号において同じ。)の
管理する投票を記載する場所に行き,在外選挙人証及び旅券その他の政令
で定める文書を提示して,投票用紙に投票の記載をし,これを封筒に入れ
て在外公館の長に提出する方法
(ア)当該選挙の期日の公示の日の翌日から選挙の期日前6日(投票の送
致に日数を要する地の在外公館であることその他特別の事情があると認
められる場合には,あらかじめ総務大臣が外務大臣と協議して指定する
日)までの間(あらかじめ総務大臣が外務大臣と協議して指定する日を
除く。)
(イ)当該選挙の期日の告示の日の翌日から選挙の期日前6日までの間で,
あらかじめ総務大臣が外務大臣と協議して指定する日
イ2号
当該選挙人の現在する場所において投票用紙に投票の記載をし,これを
郵便等により送付する方法
(8)ア公職選挙法施行令65条の11第1項は,選挙人は,公職選挙法49条
の2第1項2号の規定により投票をしようとする場合においては,選挙の
期日前4日までに,その登録されている在外選挙人名簿の属する市町村の
選挙管理委員会の委員長に対して,当該選挙人が署名をした文書により,
直接に,又は郵便等をもって,かつ,在外選挙人証を提示して,投票用紙
及び投票用封筒の交付を請求することができる旨を定めている。
イ公職選挙法施行令65条の12第1項は,投票用紙及び投票用封筒の交
付を受けた選挙人は,選挙の期日の公示又は告示があった日の翌日以後,
その現在する場所において,投票用紙に自ら当該選挙の公職の候補者1人
の氏名(衆議院比例代表選出議員の選挙にあっては一の衆議院名簿届出政
党等の公職選挙法86条の2第1項の規定による届出に係る名称又は略称,
参議院比例代表選出議員の選挙にあっては公職の候補者たる参議院名簿登
載者1人の氏名又は一の参議院名簿届出政党等の同法86条の3第1項の
規定による届出に係る名称若しくは略称)を記載し,これを投票用封筒に
入れて封をし,投票用封筒の表面に投票の記載の年月日及び場所を記載し,
並びに投票用封筒の表面に署名をし,更にこれを他の適当な封筒に入れて
封をし,その表面に投票が在中する旨を明記して,当該選挙人が登録され
ている在外選挙人名簿の属する市町村の選挙管理委員会の委員長に対し,
当該選挙人が属する指定在外選挙投票区の投票所を閉じる時刻までに同令
65条の12第2項の規定による投票の送致ができるように,郵便等をも
って送付しなければならない旨を定めている。
4住民基本台帳法の定め
住民基本台帳法15条1項は,選挙人名簿の登録は,住民基本台帳に記録さ
れている者で選挙権を有するものについて行なうものとする旨を定めている。
以上

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