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       主   文
一 原判決を取り消す。
二 別紙図面記載の道路中心線から左右(南北)に二メートルずつ、計四メートル
の幅員の土地について、浦和市長の道路位置指定処分が存在する建築基準法四二条
二項の規定に基づく道路であることを確認する。
三 訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。
       事実及び理由
第一 控訴の趣旨(当審における請求の拡張を含む。)
主文と同旨
第二 事案の概要
一 本件は、控訴人が一括指定方式により指定された建築基準法(以下「法」とい
う。)四二条二項に規定するみなし道路であると主張する土地について、被控訴人
が右みなし道路であることを争うので、控訴人が被控訴人に対し、右みなし道路で
あることの確認を求めた事案である。控訴人は、原審で、右みなし道路と主張する
土地の一部について確認請求をしていたところ、当審で、右みなし道路と主張する
土地の全部に請求の拡張をした。
 原審は、控訴人の右確認請求を棄却した。
二 当事者の主張
 次のとおり訂正するほか、原判決事実「第二当事者の主張」記載のとおりである
から、これを引用する。
1 原判決三頁七行目の「中央に」から同九行目の「あり」までを「中央部分に東
西を貫く形で公道(浦和市道)に通じる幅員一・八メートル以上の原判決別紙図面
一記載の私道(ただし、同図面の記載は現況であるので、幅員が一・八メートルは
ない。以下「本件私道」という。)があり」に改め、同末行の「別紙図面二」の次
に「(ただし、八三番一の北側部分が平成九年合筆前は八二番五である。)」を加
え、四頁一行目の「八二番土地は同番一ないし五」を「八二番土地は同番一ないし
六」に改める。
2 五頁五行目の「新たに、同細則」を「新たな浦和市施行細則」に、同七行目の
「その手続」を「右細則の各相当規定に基づいてされた手続」にそれぞれ改める。
3 七頁九行目の「当庁」を「浦和地方裁判所」に改める。
4 八頁四行目の「本件私道」を「本件私道中心線から左右(南北)に二メートル
ずつ、計四メートルの幅員の土地」に改める。
5 八頁七行目の「一・八メートルであること」を「一・八メートル以上あったこ
と」に改める。
第三 当裁判所の判断
一 当事者間に争いのない事実に、証拠(甲一、二の1・2、三の1ないし22、
四の1ないし4、五の1ないし8、六の1ないし10、七の1・2、八ないし一
〇、一一の1ないし8、一三
ないし一五、一七ないし一九、二三ないし二五、乙二ないし四の各1・2、五、
六、八、一〇の1ないし4、一二、一三、証人A)及び弁論の全趣旨を併せると、
以下の事実が認められる。
1 本件私道の平成六年二月ころの現況は、別紙図面(原判決別紙図面一と同じ。
ただし、「〇〇」は「〇〇」の、「〇〇」は「〇〇」のそれぞれ誤記であり、地番
については後記のとおりである。以下の記号はいずれも別紙図面記載のものであ
る。)記載のとおりであり、本件私道の東西は、浦和市道(東側の浦和市道は、二
項道路である。)と接しており、控訴人所有地は、本件私道の北側にあり、その東
側はB所有地に、西側はC所有の八二番六の土地(以下「C所有地」という。)に
それぞれ接し、また、本件私道の南側は、D所有の八二番三の土地(以下「D所有
地」という。)、E所有の八二番四の土地(以下「E所有地」という。)、F所有
地となっている。a、b、c、d、e、fの各点を結ぶ線及びg、h、i、k、m
の各点を結ぶ線が各所有地の建物敷地と本件私道の現況を画する線であり、右各線
上にブロック塀又は石塀が設置(各出入口部分等を除く。)されており、E方の石
塀は瓦屋根付きで、その屋根部分が本件私道側に突き出ているが、通行には格別の
支障がない。また、B方のk点とm点を結ぶ線上のブロック塀の外側からi点とj
点を結ぶ線上までの本件私道の部分には花壇が設置されていた。B所有地のうち、
本件私道(花壇部分を含む。)が存する地番は八二番九であり、その北側に建物敷
地の八二番一がある。F所有地のうち、本件私道が存する地番は八二番八、これに
面する建物敷地の地番は八二番五であり、その南側に八三番一があり、D及びE各
所有地のうち、本件私道が存し、これに面する土地の地番は八二番三及び八二番四
である。
 また、浦和市建築指導課(以下「建築指導課」という。)が平成六年一月五日に
した本件私道にFする現地調査(以下「平成六年現地調査」という。)では、本件
私道の幅員は、g点(C所有地の塀の角部分)とf点(D所有地の塀の角部分)と
の間(以下「gf間」という。)で一・六五五メートル、e点付近の控訴人所有地
の塀とD所有地の塀との間で一・七一〇メートル、d点とi点の中間付近の控訴人
所有地の塀とE所有地の塀の庇(瓦屋根付きの石塀の庇が本件私道側に突き出た部
分)との間で一・三五〇メートル、a点(F所有地の
塀の角部分)とm点(B所有地の塀の角部分。ただし、その本件私道側に一・二メ
ートル幅の花壇がある。)との間で三・八四〇メートルであった。さらに、建築指
導課が平成九年一二月一八日にした本件私道にFする現地調査(以下「平成九年現
地調査」という。)では、本件私道の幅員は、gf間で一・六五五メートル、e点
付近の控訴人所有地の塀とD所有地の塀との間で一・八三メートル、d(e)点付
近の控訴人所有地の塀とE所有地の塀(平成六年時の塀が造り替えられた。)との
間で二・九五メートル、c(b)点付近のE所有地の塀とB所有地の塀(平成六年
時の花壇の淵部分であるi点とj点を結ぶ線上付近に塀が造り替えられた。)との
間で二・九六メートル、B所有地の塀とF所有地の花壇の淵(平成六年時の塀の本
件私道側に浦和市道からの入口部分及び玄関先部分を除き、ブロック積みの花壇が
設置された。)との間で一・七二ないし一・七四メートル、浦和市道に面したB所
有地の塀とF所有地の塀との間で二・七一メートルであった。その間の平成七年一
一月ころにG土地家屋調査士がした測量の結果では、本件私道の幅員は、控訴人所
有地の塀とD所有地のブロック塀との間で一・八三ないし一・八四メートル、控訴
人所有地の塀とE所有地の石塀との間で一・六八ないし一・九〇メートル、E所有
地の塀とB所有地の塀との間で一・九一メートルであり、E所有地の石塀のd点
は、D所有地のブロック塀のe点より一五センチメートル本件私道測に突出してお
り、右石塀の瓦雨落ち線は石塀の淵から三三センチメートル本件私道側に出てい
た。
2 二項道路に関する現地調査については、浦和市においては、従前、鳥取県土木
部長からの照会に対する建設省の回答(昭和三九年一一月二六日付け住指発第一九
二号)において、「(建築)確認は、必ずしも、あらかじめ現場確認を行うことを
義務づけるものではなく、提出された確認申請図面に道路が明示され、これに基づ
いて審査したものであれば、確認は有効である。」とされていたことを踏まえて、
建築主事は、建築確認申請書添付図面に二項道路であると明記され、しかも右記載
が資格ある建築士によってされたものであるなど提出された書類から右申請の不実
過誤が認められず、格別の問題もないと判断される場合には、現地調査をすること
なく、建築確認を行うとの取扱いが一般的であった。その際、浦和市においては、

宅地図に二項道路であるか否かを書き込んだもの(ただし、全地域について記載し
てあるものではない。)を参考にしていた。
 その後、昭和五九年ころからは、浦和市においても、建築確認の審査に際して、
法四二条二項所定のみなし道路の要件を具備しているか否かについて、原則として
現地調査をするようにその取扱いを変更したが、建築確認の申請全件について、現
地調査を行うことは、実際上困難であることから、問題のありそうな事案について
のみ現地調査を行っているのが実情である。
3 浦和市においては、開発行為等に関する協議基準等を策定して、二項道路に接
する敷地に建築物を建築するときは、建築確認申請書を提出する以前に後退用地を
原則として分筆登記(地目は公衆用道路とする。)し、後退線に境界標石を設置し
なければならないとし、右後退用地には建築物、門、塀、生垣等及び敷地を造成す
るための擁壁を建築し又は築造してはならず、既設のものについては原則として建
築確認申請以前に撤去しなければならないとしており、その上で、建築確認申請図
面にも二項道路であることを明記して建築確認申請がされていたもので、これに違
反する場合には、原則として建築確認申請の受理自体がされず、分筆登記等をする
ことを行政指導していた。また、角地の所有者に対しては、建築確認申請の受理
後、隅切りを要求しており、建築確認申請を(代行)する建築業者は、いずれもこ
れらの行政指導に従っていた。
 また、二項道路に該当しない場合にも、通路の奥の土地利用者のために、将来的
に幅員四メートル幅の私道を確保するために、後退用地を敷地に含めず、公衆用道
路として分筆登記手続をすることもあるが、これはあくまで当該土地所有者の任意
の協力によるものであり、このような場合には、建築確認申請図面にも二項道路で
ない旨明記されていた。
4 本件私道が開設された時期は不明であるが、極東駐留米軍が昭和二二年一一月
八日に撮影した航空写真には、既に本件私道が撮影されているところ、その幅員は
不明である。そのころ、本件私道の両側にはおおむね前記1の各所有地ごとに区分
されて建物が建ち並んでおり、右各所有地が昭和二四年ころ、その地上の建物所有
者(居住者)らに払い下げされた。
 そして、控訴人が、昭和三五年一〇月五日、控訴人所有地を購入した当時、本件
私道は、各所有地の植え込み又は板塀で囲まれていた。すなわち、B所
有地及びD所有地と本件私道との間にはそれぞれ植え込みがされ、控訴人所有地、
E所有地、C所有地及びF所有地と本件私道との間にはそれぞれ板塀が設置されて
いた。そして、本件私道の両側の右植え込み及び板塀は、それぞれほぼ一直線にな
っていたもので、控訴人方のほか、C、E及びF方の各出入口は本件私道に面して
設置され、いずれも本件私道から出入りしていた。
 その後、昭和四〇年ころ、B所有地には右植え込みに替えてブロック塀が設置さ
れ、E所有地には右板塀に替えて瓦屋根付きの石塀が設置されたが、B及びEは、
右各塀を従前の塀よりも一五センチメートルくらい本件私道寄りに設置したもの
で、Eの石塀は、壁面から三三センチメートルの庇が突き出た瓦屋根付きのもので
あった。Eは、平成九年に右石塀を取り壊して上部がフェンスのブロック塀を本件
私道中心線から二メートル後退して設置した。また、昭和四四年ころ、D所有地上
の居宅の新築に際し、従前の植え込みに替えてブロック塀が設置された。
 C所有地には、昭和四〇年ころ、従前の板塀に替えてブロック塀が設置された
が、その際右ブロック塀(C方出入口横から控訴人所有地寄り部分)は従前の板塀
の外側に沿って一五センチメートルくらい本件私道寄りに設置され、その後設置さ
れたD所有地のブロック塀との間が約一・六九メートルとなった。さらにその後、
昭和四七年ころC方建物が増築された際、右ブロック塀のC方出入口から西側の浦
和市道寄り部分がブロックの二分の一分(二二センチメートル)だけ本件私道側に
拡げられて設置され、その結果、右ブロック塀とD所有地のブロック塀との間が約
一・六五メートルになった。
5 控訴人は、設計及び建築施工業者を通じて、昭和三七年九月、本件私道を二項
道路(建築基準法施行以前の道路)とし、控訴人所有地をこれに接道する建物敷地
として建築確認申請をし、同月二一日、建築基準法令等に適合している旨の建築確
認を受けるとともに、同月三日付けで申請していた住宅金融公庫融資住宅設計審査
についても合格とされて、住宅金融公庫から借入れをして控訴人所有地上に建物を
新築し、従前の板塀を上部がフェンスのブロック塀に造り替えた。
6 F及びHは、昭和五四年にF所有地に居宅を建築するに際して、建築確認申請
に先立って、同年三月一日、F所有地のうち本件私道を二項道路とした場合の後退
用地(東側の浦和市道と接する隅
切り部分の土地を含む。)について、八二番五から八二番八として分筆し、また、
東側の浦和市道についても同様の後退用地について、八三番一から八三番六として
分筆し、いずれも地目を公衆用道路とする旨の登記手続を了し、同月六日、浦和市
に対し、建築主をHとして、F所有地上に専用住宅を新築する旨の建築計画概要書
等を提出して建築確認申請をしたが、その添付図面に、本件私道の現況幅員一・八
〇〇メートル、本件私道の中心線から申請建物の建築後退線まで二・〇〇〇メート
ル、本件私道が二項道路であり、これが東側の浦和市道に交わる部分について隅切
りをする旨等を記載しており、本件私道を二項道路として建築確認申請をしたもの
であり、浦和市建築主事は、同年四月一七日、申請どおり建築確認をした。
 右居宅の建築の際、F及びHは、従前の塀を撤去して、本件私道の中心線からお
おむね二メートルの位置であるa点とb点結んだ線上に後退させてブロック塀を設
置した。
7 Bは、昭和五四年にB所有地上に専用住宅を新築することとし、同年六月四
日、浦和市に対し、建築計画概要書等を提出して建築確認申請をしたが、その添付
図面に、本件私道の現況幅員一・六〇〇メートル、本件私道及び東側の浦和市道の
中心線から法四二条二項による道路境界線まで二・〇〇〇メートル、両道路が交わ
る部分について二メートルの隅切りをする旨等を記載しているもので、右申請と同
時に、浦和市開発行為等に関する協議基準に従い、後退用地部分の分筆登記及び地
目変更を「昭和年月日」(手書きで「確認時」と付記されている。)までに済ませ
る旨の誓約書を提出して、浦和市建築主事は、同月二五日、本件私道を二項道路と
して、建築確認をした。
 Bは、前年の昭和五三年四月一二日にB所有地である八二番一から東側の浦和市
道を二項道路とする後退用地について八二番七として分筆登記手続をしていたとこ
ろ、昭和五四年六月一四日、同土地について地目を公衆用道路とする旨の登記手続
を了した。
8 B、F、C、D、E及び控訴人は、昭和五四年七月一七日及び同年八月四日、
建築指導課長Iら担当者とともに、浦和市役所会議室に集まり、本件私道の取扱い
について協議したところ、同担当者から本件私道は二項道路であると指導され、B
は、これに従い、同年一一月二二日、八二番一から本件私道を二項道路とする後退
用地について八二番九として分筆し、地目を公衆
用道路とする旨の登記手続を了した。
 そして、Bは、右居宅の建築に際し、本件私道の中心線からおおむね二メートル
の位置であるk点とm点を結んだ線上にブロック塀を設置した。
9 平成五年四月ころ、B所有地の東側にある浦和市道の幅員が四メートルに満た
ないことから、近隣住民から、建築指導課に対し、右浦和市道に接するB所有地上
の塀を後退し、市道を拡幅してほしい旨の要望が出された。
 そこで、建築指導課は、同月二二日、現地調査をし、右浦和市道が二項道路であ
ることが確認されたので、Bに対し、右塀の後退を求めたところ、同人はこれを承
諾した。
 その後、Bは、本件私道について、昭和五四年の建築確認の際、幅員一・六メー
トルとして建築確認を受けているので、二項道路ではないとして、本件私道部分に
ついては、昭和五四年当時の状況に復する等と主張し出したことから、本件私道が
二項道路であるか否かということが争いになり、建築指導課は、平成六年現地調査
を実施した。ただし、右調査は、本件私道の現況の幅員を計測したのみで、過去に
さかのぼって幅員がどうであったかという調査は全くしなかった。その後行われた
平成九年現地調査も同様であり、右各調査の結果を作図した図面も必ずしも正確な
ものでなく、おおよその塀等の位置が記載され、その間の道路幅が数か所記載され
た程度のものにすぎない。
10 平成六年現地調査で本件私道の現況幅員が一・八メートルなかったことか
ら、建築指導課では本件私道が二項道路であるとはしなかったため、Bは、平成六
年一月六日、控訴人に対し、本件私道は二項道路ではないので昭和五四年の新築以
前に存したブロック塀の位置まで戻すと通知し、B所有地上の塀の外側の本件私道
上のi点とj点を結んだ線上部分までコンクリートブロックの花壇等を設置したた
め、控訴人は、右花壇等が控訴人らの通行権を侵害する等として、Bを被告とする
別件訴訟を提起した。Bは、平成六年四月二二日、八二番九から右花壇部分の土地
として八二番一〇を分筆し、地目を宅地とする変更登記手続をした。別件訴訟にお
ける裁判所の建築指導課あての調査嘱託に対し、建築指導課長J名で本件私道を二
項道路として認定しておらず、認定したことはないなどとの内容の回答がされ、さ
らに、同課長が証人尋問でも同様の証言をしたため、裁判所から本件私道が二項道
路でないことを一応の前提とする和解を勧められ、控
訴人もこれに応じざるを得なくなり、控訴人とBは、平成八年一一月一日の第一三
回口頭弁論期日において、①控訴人とBは、本件私道をめぐる紛争を本件和解によ
り解決し、今後は円満な近隣関係を築きあげていくことに努める、②本件私道の幅
員として一・八〇メートルを維持するため、Bは、本件私道の中心線より九〇セン
チメートルの位置を限度として、浦和市道に存する高さ(一九〇センチメートル以
内)に合わせてブロック塀を設置することとし、控訴人はこれに異議を述べない、
③Bは控訴人に対して、右範囲内の通行を妨害しない、④本件私道について、道路
関係土地所有者全員が幅員を四メートルとするため前記中心線よりそれぞれ各二メ
ートルとすることに合意した場合には、Bもこの合意に同意するとともに、前項の
ブロック塀についてはこの内容に反しないようにするために必要な措置を講じる、
⑤本件私道が法四二条二項による道路であることが確定された場合においても、B
は右と同じ措置を講じる旨等を内容とする裁判上の和解(以下「本件和解」とい
う。)をした。
11 Bは、平成八年一一月ころ、本件和解に基づき、本件私道上のi点とj点を
結んだ線上付近にブロック塀を設置した。
 次いで、Fは、平成九年八月ころ、Bから本件私道が二項道路でないといわれ、
建築指導課にも問い合わせて同様の回答を受けて、B所有地のブロック塀の前の本
件私道上に、浦和市道からの入口部分及び玄関先部分を除き、ブロック積みの花壇
を設置し、同年七月二九日、本件私道敷として八二番五から八二番八を分筆したの
を錯誤訂正した上、同年九月五日、右八二番五の土地及び八三番一の南側にあった
同人所有の八四番八の土地を八三番一の土地に合筆する旨の登記手続をした(これ
により、土地地番が原判決別紙図面二のようになった。)。
二 1被控訴人は、浦和市施行細則(甲二一、二二)を定めて、法第三章の規定が
適用されるに至った際現に建築物が立ち並んでいる幅員四メートル未満の道で、一
般公衆の通行の用に使用されていて、幅員が一・八メートル以上四メートル未満の
もので、側溝その他適当な標識によりその境界の明確な道を一括して二項道路とす
る旨の本件指定処分をした(当事者間に争いがない。)ところ、控訴人は、本件私
道についても、本件指定処分を受けたと主張するのに対し、被控訴人は、本件私道
は二項道路としての右幅員の要件を具備していない
と主張する。右一4認定の事実によれば、本件私道が、第三章の規定が適用される
に至った際、現に建築物が立ち並んでいる幅員四メートル未満の道で、一般公衆の
通行の用に使用されており、側溝その他適当な標識によりその境界の明確な道であ
ると認められ、これらの点については、被控訴人においても明らかに争っておら
ず、被控訴人が問題にするのは、基準時(法施行時、すなわち昭和二五年一一月二
三日)における本件私道の幅員が一・八メートル以上あったか否かだけであるの
で、以下この点について判断する。
2 右一1認定の事実によれば、紛争となった平成六年ころ以降の本件私道の現況
幅員が一・八メートルに満たない部分があることが認められる(なお、平成六年現
地調査の結果(控訴人所有地の塀とD所有地の塀との間の測定値)の正確性には、
その後の測量結果等に照らし疑問があるので、この測定値を除く。)が、これから
直ちに基準時においても幅員が一・八メートルに満たなかったとは推認できない。
他方において、基準時における測量図面があれば、直接証拠として右幅員の要件該
当性の判断は容易であるが、本件においてはそれがなく、また、二項道路該当性が
争われる場合にはそれがない場合が大半であろうから、このような場合には、判明
している現況幅員を前提に、過去の事実にさかのぼって間接事実(間接証拠)の積
み重ねによって判断していくしかない。
 そこで、本件についてこれを検討するに、前記一認定の事実によれば、控訴人は
昭和三七年に、F及びH並びにBはいずれも昭和五四年に本件私道を二項道路とす
る旨の建築確認申請をし、その旨の確認申請を受けていること、特に、F及びHは
建築確認申請前にF所有地のうち二項道路として後退を要する土地を分筆し、公衆
用道路として登記手続をし、かつ、実際にも本件私道中心線から二メートル後退し
て塀を設置したこと、Bも事後的ではあるが建築指導課の本件私道が二項道路であ
る旨の指導に従ってB所有地のうち二項道路として後退を要する土地を分筆し、公
衆用道路として登記手続をし、かつ、実際にも本件私道中心線から二メートル後退
して塀を設置したこと、控訴人が昭和三五年に控訴人所有地を取得したころは、本
件私道と各所有地の建物敷地との境界(板塀又は植え込み)はほぼ一直線であった
のに、昭和四〇年ころ以降になってB、E及びCがいずれも従前の塀を造り替える
際にそれぞれ
一五ないし二〇センチメートルくらい本件私道寄りに新たな塀を設置し、そのため
本件私道と各所有地の塀に凸凹が生じたことが認められ、右一1認定の現況幅員に
これらの事実を併せ考慮すると、控訴人が控訴人所有地を取得した昭和三五年ころ
ないし昭和四〇年ころまでの本件私道の現況幅員は一・八メートル以上あったもの
と認めることができ、この状態は基準時においても同様であったものと推認するこ
とができる。しかも、本件私道が二項道路に当たることは、これにより建築敷地の
後退を余儀なくされるB、Fら周辺土地所有者においても承知・承諾していたもの
で、被控訴人においても昭和五四年ころにはそのように判断し、建築確認について
の行政指導をしていたものであり、被控訴人が本件私道が二項道路に当たらないと
し出したのは、平成五年にB所有地に隣接する東側の浦和市道の拡幅をBに指導し
たのに対し、Bから本件私道が二項道路でないと主張され、当時の現況では二項道
路の幅員の要件を満たさなかったことなどから、これに反論しなくなったことによ
るものである。
 被控訴人は、本件私道を二項道路として建築確認がされても、現地調査で確認さ
れていないから、本件私道が二項道路であるということはできないと主帳するが、
過去に複数回にわたり二項道路であることを前提に建築確認がされているのである
から、他に本件私道が二項道路に当たらないと認定し、又は、これを推認し得るよ
うな特段の事情がない限り、二項道路に当たると推認すべきである。この点につい
て、昭和五四年にBが建築確認申請をした際の添付図面に本件私道の現況幅員が
一・六〇〇メートルと記載されているが、他方において、本件私道を二項道路とし
たものであることは前記一7認定のとおりであるから、右「一・六〇〇メートル」
はあくまでも現況を記載したにすぎないものと認められ、その現況は前記のとおり
Bらにおいて塀を造り替える際に本件私道寄りに設置した結果であるから、右現況
から本件私道が二項道路の幅員の要件(基準時において一・八メートル以上あるこ
と)を満たさないということは到底できない。
3 以上のとおりで、本件私道は、浦和市長が浦和市施行細則によりした本件指定
処分に係る二項道路であると認められる。
三 よって、控訴人の請求は理由があるから、これを棄却した原判決を取り消し、
控訴人の請求を認容することとし、主文のとおり判決する。
東京
高等裁判所第七民事部
裁判長裁判官 奥山興悦
裁判官 杉山正己
裁判官 沼田寛

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