弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄し、本件を大阪高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 上告代理人山田二郎、同浜田豊蔵、同根来正輝、同末広益男、同後藤芳朗、同田
村辰雄の上告理由について。原判決は、被上告会社が当時「私的独占の禁止及び公
正取引の確保に関する法律」(昭和二四年法律第二一四号による改正前。以下独禁
法と略称する。)一〇条による制約を受けていたとはいえ、その所有する増資会社
の株式を一時自社の重役に信託的に譲渡し株主名義を重役個人に書き替える方法に
より、または増資会社から第三者指名権を与えられて自社の重役個人を指名する方
法によつて、これら重役等に各社の増資新株の割当を受けさせ、それぞれその新株
を取得させた事実を認定し、このように第三者に新株を割当させることのできた被
上告会社の地位そのものは、金銭に見積ることもできる経済的価値ある利益とし、
被上告会社の前叙の行為は、同社に帰属した新株の割当に関する利益を各重役に移
転したものと見ることができる旨を判示したのである。前示独禁法一〇条は、一般
事業会社が当時なお保有を認められていた他社の株式につき増資のあつた場合に、
会社自ら増資新株を取得することを許さなかつたにもせよ、増資によりその株主一
般が受けうべき利益を会社において事実上享受するために採る行為までを無効とす
る趣旨とは解しがたい。従つて、被上告会社は、前叙の行為により重役等個人にそ
れぞれ増資株式を取得させたうえ、重役等のこれによつて取得した利得を同社に回
収することを約さしめることもできたはずであり、また重役その他の第三者に対し
相当の対価を徴して、その者のために前叙の行為をすることもできたわけであるか
ら、被上告会社がこのような方法に出ないで、重役等のために前叙の行為をしたこ
とは、増資会社の株式の所有に基づき被上告会社が享受する経済的利益を無償で重
役等に授与したことを意味し、この点に関する前叙原判示は正当といわなければな
らない。
 ところで、被上告会社の前叙の行為の実体を右のように解するならば、その移転
の対象となつた経済的利益は、いわば同社所有の増資会社株式について生じる新株
プレミアムから構成されるものとみられ、その利益の移転は、同社所有の増資会社
株式の値上り部分(同社の取得した第三者指名権も株式の増価部分と同視して妨げ
ない。)の価値の社外流出を意味するものということができる。そこで、これら株
式の値上りが被上告会社の右株式の取得価額(記帳価額)を上回わるものがあるな
らば、その部分は同社の未計上の資産であり、前叙の行為により移転する経済的利
益の全部または一部は、かかる未計上の資産から成ることが考えられる。そうであ
るとすれば、かかる未計上の資産の社外流出は、その流出の限度において隠れてい
た資産価値を表現することであるから、右社外流出にあたつて、これに適正な価額
を付して同社の資産に計上し、流出すべき資産価値の存在とその価額とを確定する
ことは、同社の資産の増減を明確に把握するため当然必要な措置であり、このよう
な隠れていた資産価値の計上は、当該事業年度において資産を増加し、その増加資
産額に相当する益金を顕現するものといわなければならない。そしてこのことは、
社外流出の資産に対し代金の受入れその他資産の増加をきたすべき反対給付を伴な
うと否とにかかわらない。してみると、本件において被上告会社が前叙の行為によ
つてその重役等に移転した利益に同社の未計上の資産価値が含まれると認められる
かぎり、当該事業年度においてそれに相当する益金の発生を肯定せざるをえないの
であつて、他面その重役等に対する利益授与による被上告会社の資産の減少が事業
上の損金となしがたいものとすれば、右益金の発生が総益金増加の原因となること
はいうまでもない。原判決がこの点に思いを致さず、前叙のように被上告会社がそ
の重役等に対し経済的利益を授与したことを認めながら、それが同社になんら利得
をもたらすものでないことを理由とし、これにより同社に益金を生ずる余地のない
ものと判断したのは、首肯しがたい。されば、右の判断を非難する論旨は理由があ
り、原判決は破毀を免れず、本件はなお審理を要するものと認め、これを原審に差
し戻すのを相当とする。
 よつて、民訴法四〇七条一項に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決す
る。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    石   田   和   外

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