弁護士法人ITJ法律事務所

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       主   文
一 原告の請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
       事実及び理由
第一 請求
一 被告は、「ALWAYS」なる欧文字又は「オールウェイズ」なるカタカナ文
字の表示からなる標章をコーラの缶に付し、又は右標章を付した缶入りコーラを販
売し、若しくは販売のために展示してはならない。
二 被告は、前項の標章を付したコーラの缶を廃棄せよ。
三 被告は、原告に対し、金一○○万円及びこれに対する平成九年六月四日から支
払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二 事案の概要
 本件は、原告が、被告に対し、後記商標権に基づき、「オールウェイズ」等の標
章を付した缶入りコーラの販売等の差止め、及び被告による右商標権の侵害により
弁護士・弁理士費用相当額の損害を被ったとして、損害賠償を、それぞれ求めた事
案である。
一 争いのない事実等(証拠を掲記した事実以外は、当事者間に争いがない。)
1 原告の商標権
 原告は、次のとおりの商標権(以下「本件商標権」といい、その 登録商標を
「本件登録商標」という。)を有する。
 登録番号 第一六四三九三○号
 登録日 昭和五八年一二月二六日
 存続期間の更新登録 平成六年五月三○日
 指定商品 コーヒー、その他旧第二九類に属する商品
 登録商標 別紙登録商標目録記載のとおり
2 被告の行為
(一) 被告は、業として、清涼飲料コカ・コーラを製造販売している。
(二) 被告は、平成五年から、右コカ・コーラの缶に、「ALWAYS」ないし
「always」なる欧文字(以下「本件欧文字表記」という。)を付している。
その態様は、別紙被告標章目録一記載のとおり、缶上に一か所、小さく白抜きの円
弧が描かれ、その中に、コカ・コーラのボトルの図柄を背景とした「Coca-C
ola」という文字が記載され、その上部に、円弧に沿って、小さな字で「ALW
AYS」という白抜き文字が記載されている図柄(以下「被告図柄一」という。)
のものである(甲三の1)。
(三) 被告は、平成九年四月から、右コカ・コーラの缶に、本件欧文字表記及び
「オールウェイズ」なるカタカナ文字(以下「本件カタカナ表記」という。)を付
している。その態様は、別紙被告標章目録二記載のとおり、缶上に大きな円弧の上
下一部が缶の大きさに収まらない形で描かれ、円弧の中心に、コカ・コーラのボト
ルの図柄が描かれ、それを背景として円弧の中央を横切るように「Coca-Co
la」という文字が記載され、円内のその周辺に、日本語「オールウェイズ」、英
語「always」、スペイン語「Siempre」、ポーランド語「zawsz
e」及びフランス語「Toujours」が記載されている図柄(以下「被告図柄
二」という。)のものである(甲三の2、乙一、一三)。
二 争点
1 商標的使用の有無
(原告の主張)
 被告は、前記のとおり、コカ・コーラの缶に、本件欧文字表記及び本件カタカナ
表記を付しているのであるから、これらの標章を商標として使用しているものであ
る。
 なお、コカ・コーラの商標を所有する米国法人のザ・コカ・コーラ・カンパニー
は、自ら開設したインターネットのホームページにおいて、「ALWAYS」アイ
コンが同社の商標であることを認めている。また、同社は、平成五年二月一日に、
「ALWAYS」なる通常の字体による欧文字の標章につき、清涼飲料等の第三二
類の商品を指定商品として商標出願しているから、同社は右標章を商標として使用
していることを自認している。
(被告の主張)
 次のとおりの、被告が本件欧文字表記及び本件カタカナ表記を使用するに至る経
緯、使用態様、取引の実情等を総合すれば、被告は右各表記を自他商品を識別する
という機能を有するものとして使用していないというべきであり、被告による右各
表記の使用は、商標としての使用ではない。
(一) 米国法人である訴外ザ・コカ・コーラ・カンパニー、訴外日本コカ・コー
ラ株式会社及び被告は、平成五年三月から、「Always Coca-Cola
(オールウェイズ コカ・コーラ)」キャンペーンを一斉に開始した。
 長期間にわたって世界中で圧倒的な人気を得ているコカ・コーラについては、こ
れまでも様々なキャンペーンが実施され、各キャンペーン毎に「Come on 
in.Coke」、「Yes Coke Yes」、「Coke is i
t!」、「I feel Coke.」、「さわやかになる、ひととき」といった
キャッチフレーズが使用されてきた。そして、非常に印象的なテレビコマーシャル
の製作、放送を始め、大規模な広告宣伝活動が行われ、多くの消費者に各キャンペ
ーンテーマを強く印象づけてきた。多くの場合、キャンペーンの一環として、各キ
ャッチフレーズは、被告を含むコカ・コーラボトラー各社の主力商品であるコカ・
コーラの缶上に実際に表示されてきた。
 これらに引き続いて、平成五年三月から全世界的な規模で「Always Co
ca-Cola」キャンペーンが開始され、これまでのキャンペーン同様に大規模
な広告宣伝活動が行われ、日本でも、毎年五○億円を超える広告宣伝費が費やさ
れ、多くの消費者に強い印象を与えてきた。そして、他のキャンペーン同様、キャ
ンペーンの一環として、コカ・コーラの缶上には、「Always Coca-C
ola」のキャッチフレーズが表示されてきた(被告図柄一)。平成九年四月から
コカ・コーラの缶のデザインが一新されたが、そこにおいても、「Always 
Coca-Cola」のキャッチフレーズが表示されている(被告図柄二)。
 以上の経緯から明らかなとおり、本件欧文字表記も本件カタカナ表記も、キャン
ペーンのキャッチフレーズである「Always Coca-Cola(オールウ
ェイズ コカ・コーラ)」の一部に過ぎず、コカ・コーラの缶上にもこれらの表記
が独立して表記されているのではなく、これらの表記は、右キャッチフレーズ全体
の一部を構成するに過ぎない。
(二) 被告図柄一は、缶の一部に小さくキャンペーンの実施を示す円形のキャン
ペーン・マークが一か所付加的に記されているもので、前記のとおりの構成である
から、全体として、キャンペーンのキャッチフレーズを消費者に強く印象付けてい
る。被告図柄一では、「ALWAYS」という文字と「Coca-Cola」とい
う文字は二段で表記されているが、マークとしての一体性に加え、「Always
 Coca-Cola」キャンペーンが大規模に宣伝広告され大多数の消費者に認
知されていることも考慮すれば、この缶を購入する消費者は、被告図柄一全体を不
可分一体のものと認識し、本件欧文字表記を単独で意識することはない。
 また、被告図柄二は、前記のとおりの構成であるから、全体として、キャンペー
ンのキャッチフレーズを消費者に強く印象付けている。被告図柄二では、「alw
ays」及び「オールウェイズ」という文字と「Coca-Cola」という文字
は二段で表記されているが、マークとしての一体性に加え、「Always Co
ca-Cola」キャンペーンが大規模に宣伝広告され大多数の消費者に認知され
ていることも考慮すれば、この缶を購入する消費者は、被告図柄二全体を不可分一
体のものと認識するのであり、本件欧文字表記及び本件カタカナ表記を単独で意識
することはない。
(三) 本件欧文字表記及び本件カタカナ表記が記載された缶には、商品名として
世界的に著名な「Coca-Cola」という商標が記載されている。右商標は、
字体は一貫して同じものが世界中で使用され続けてきており、しかも、コカ・コー
ラの缶上においては一貫して、赤字に白抜きで表示されてきたものであり、極めて
識別力が強いものである。したがって、正に右商標が他の商品との識別を可能とし
ているのであって、本件欧文字表記及び本件カタカナ表記は、商品の出所を示すも
のとして機能していない。
2 商標の類否
(原告の主張)
本件登録商標と本件欧文字表記及び本件カタカナ表記とは、次のとおり類似する。
(一)称呼の類似
 本件欧文字表記及び本件カタカナ表記は、英語の「ALWAYS」に由来すると
考えられ、需要者により「オールウエイズ」又は「オールウェイズ」(両者の差異
は微差に過ぎない。)と発音される。「ALWAYS」なる英単語は、冒頭の
「A」にアクセントがあり、末尾の「S」は単なる子音に過ぎない。また、右
「S」は、名詞を副詞に変形させる機能以外には何の意味もなく、曖昧に発音され
る。一般的に、単語の末尾の発音は、殊更注意されないことが多い。
 以上から、「ALWAYS」の要部は「ALWAY」(日本風の発音では「オー
ルウェイ」)であるが、これは本件登録商標の称呼と同一ないし著しく類似する。
したがって、本件登録商標と本件欧文字表記及び本件カタカナ表記とは、称呼にお
いて類似する。
(二) 観念の類似
 本件登録商標は、英語の「ALLWAY」及び「ALWAY」に由来するが、需
要者が本件登録商標から「ALLWAY」なる英語を容易に想起することは明らか
である。本件欧文字表記の「ALWAYS」は、「ALWAY」及び「ALLWA
Y」と同義である。
 したがって、本件登録商標と本件欧文字表記及び本件カタカナ表記とは、観念に
おいて類似する。
(三) 外観の類似
 本件登録商標は、「オールウエイ」なるカタカナ書きの六文字を横一列に配置し
たものであるのに対し、本件カタカナ表記は、「オールウェイズ」なるカタカナ書
きの七文字を横一列に配置したものである。
 両者の差異は、「エ」の大小と「ズ」の有無である。前者については、その大小
により外観にはそれほどの相違を来さない。後者については、末尾の文字は一般的
に意識されにくいこと、本件カタカナ表記はコーラ缶の側面において使用されてい
るところ、角度によっては末尾の「ズ」は見えないこと等に照らせば、その有無に
より外観上重大な相違を生じない。さらに、本件カタカナ表記が特徴のない普通の
字体のカタカナで記載されているに過ぎないことも考え併せれば、本件登録商標と
本件カタカナ表記とは外観上類似する。
(四) 本件で問題となっている清涼飲料や果実飲料は、食料品であって一般消費
者が日常頻繁に購入する商品であり、商品選択性の強い部類には属さないから、需
要者において、商品の出所を表示する商標の異同について相当の注意を払うとは認
められない。
 商標権に基づく差止請求権が成立するためには、被告が、商標権に係る指定商品
と同一又は類似する商品に、同一又は類似する商標を使用していることが必要であ
るが、具体的な出所混同の恐れを生じることは必要でないのであるから、原告の本
件登録商標の使用状況が本訴において問題となることはない。
(被告の主張)
 本件欧文字表記及び本件カタカナ表記と本件登録商標との類似性は、次のとおり
認められない。
(一) 原告は、本件欧文字表記及び本件カタカナ表記そのものと本件登録商標と
の類似性を主張しているが、本件商標登録と類否の判断をすべき対象は、「ALW
AYS Coca-Cola」、「always Coca-Cola」あるいは
「オールウェイズ Coca-Cola」であって、「ALWAYS」、「alw
ays」、「オールウェイズ」そのものではないので、右原告の主張は失当であ
る。
 すなわち、前記のとおり、被告図柄一及び二のマークとしての一体性に加え、
「Always Coca-Cola(オールウェイズ コカ・コーラ)」キャン
ペーンが大規模に宣伝広告され、大多数の消費者に認知されていること等を併せ考
慮すれば、「ALWAYS」や「オールウェイズ」という表記が独立して単独で自
他識別機能を有する商標として消費者に認識されることはないのであって、あくま
でも「Always Coca-Cola(オールウェイズ コカ・コーラ)」と
いうキャッチフレーズを表示するものとして全体的に認識されるものと考えられ
る。
 そして、本件登録商標と「ALWAYS Coca-Cola」、「alway
s Coca-Cola」、「オールウェイズ Coca-Cola」の各商標と
の類似性を検討すると、Coca-Cola商標は極めて識別力の強い商標である
から、右各商標の要部はいずれも「Coca-Cola」と考えられ、したがっ
て、本件登録商標と称呼、外観、観念のいずれにおいても非類似である。また、右
各商標全体と本件登録商標を比較しても同様である。
(二) 仮に、本件登録商標と類否の判断をすべき対象を、本件欧文字表記のみで
あるとしても、本件登録商標と右表記とは、次のとおり類似しない。
(1) 本件登録商標はカタカナから構成されており、本件欧文字表記はアルファ
ベットから構成されており、両者は、外観上非類似である。
(2) 本件登録商標の称呼を文字表記すると「オールウエイ」であり、本件欧文
字表記の称呼をカタカナで文字表記すると「オールウェイズ」である。本件登録商
標では、「エ」の部分が大文字であるため、「ウ」、「エ」、「イ」の各文字をそ
れぞれはっきりと発音するのに対し、本件欧文字表記は「エ」の文字が小文字であ
り、拗音の発音がされるため、「ウェイ」の部分は一気に短音で発音される。ま
た、本件欧文字表記には末尾に「ズ」という濁音があり、これが大きな特徴となっ
ているが、本件登録商標にはかかる特徴は存しない。
 したがって、本件登録商標と本件欧文字表記とは称呼において類似しない。
(3)本件欧文字表記の「ALWAYS」という英単語は、「常に」、「いつも」
という観念、意味を直ちに相起するほど一般的に親しまれている英単語である。
 一方、本件登録商標の「ウエイ」の部分(すべて大文字であり、拗音を含まな
い。)から「WAY」との英単語を一般人が想起することは非常に困難であるか
ら、本件登録商標から「ALL WAY」又は「ALWAY」といった英単語を一
般人が想起することは困難である。したがって、本件登録商標と本件欧文字表記と
は、観念上非常に大きく相違している。仮に、本件登録商標から「ALL WA
Y」との英語を想起できたとしても、一般人はこれから「すべての道」又は「すべ
ての方法」といった意味しか想起できない。
 したがって、本件登録商標と本件欧文字表記とは、観念においても非類似であ
る。
(三) 仮に、本件登録商標と類否の判断をすべき対象を、本件カタカナ表記のみ
であるとしても、次のとおり本件登録商標と右表記とは非類似である。
(1) 本件登録商標は六文字から構成されるのに対し、本件カタカナ表記は七文
字から構成されている。また、本件登録商標に含まれる「エ」の文字は大文字であ
り、六文字とも同一の大きさであるのに対し、本件カタカナ表記に含まれる「ェ」
の文字は小文字であり、七文字中一文字だけが小文字であるという特徴を有してい
る。さらに、本件カタカナ表記の末尾には「ズ」という文字があり、この文字は、
他の文字と異なる濁音文字であるという特徴を有している。これらの外観上の相違
点から、本件登録商標と本件カタカナ表記とは外観上非類似である。
(2) 前記(二)(2)のとおり、本件登録商標と本件カタカナ表記とは、称呼
において非類似である。
(3) 前記(二)(3)のとおり、本件登録商標と本件カタカナ表記とは、観念
において非類似である。
(四) 仮に、本件登録商標と本件欧文字表記及び本件カタカナ表記との間に称呼
において幾らかの類似性が認められるとしても、前記のとおりの観念、外観におけ
る大きな相違点や、本件欧文字表記及び本件カタカナ表記の使用態様、取引の実情
等を総合的全体的に判断すれば、類似性は認められない。
(五) 商標法の目的は、登録商標と出所の混同を生じるおそれのある商標の登録
及び使用を排除することにより公正な競争秩序を維持することにあるから、出所混
同のおそれがない限り、商標の類似は認められない。
 本件欧文字表記及び本件カタカナ表記は、非常に著名な商品であるコカ・コーラ
の缶に記載されているものであり、当該缶上には極めて識別力の強い商標であるC
oca-Cola商標が記載されているのであるから、本件欧文字表記及び本件カ
タカナ表記が付された被告商品を購入する者は、疑いなく、著名なコカ・コーラと
認識した上で商品を購入しているのであって、他の第三者の商品と誤認して購入す
る可能性はないから、本件登録商標と本件欧文字表記及び本件カタカナ表記との類
似性は認められない。
 原告は、本件登録商標を付した梅ジュースを販売している旨主張するが、既に流
通している他人の既存の商品に、本件登録商標が記された極めて簡易なシールを貼
って、ごく少量を転売しているに過ぎない。のみならず、右梅ジュースは、被告に
よる不使用取消審判請求の前に急造されたものと判断せざるを得ない。したがっ
て、原告は本件登録商標を商標として使用していないものというべきであるから、
本件登録商標と本件欧文字表記及び本件カタカナ表記との誤認混同のおそれはな
い。
3 権利濫用の有無
(被告の主張)
 原告は、本件登録商標の更新登録手続の際に、本件登録商標の使用を証する証拠
として、前記梅ジュースではなく、ココナッツミルクの缶上に本件登録商標が記載
されている写真を提出している。しかし、ココナッツミルクは食材として使用され
る物であり、旧分類第二九類に属するものではない。また、右写真は、他社の商品
の商標を消去し、代わりに本件登録商標を付して撮影した疑いがある。したがっ
て、右更新登録手続には重大な瑕疵がある。このように不使用商標である本件登録
商標に基づく請求は権利の濫用として許されない。なお、訴外ザ・コカ・コーラ・
カンパニーは右更新登録の無効審判を特許庁に請求している。
(原告の主張)
 争う。
第三 争点に対する判断
一 争点1(商標的使用の有無)について
1 証拠(甲三の1、2、乙一、二の1ないし6、三ないし六、一三)に争いのな
い事実及び当裁判所に顕著な事実を総合すれば、次の事実が認められる。
(一) 清涼飲料コカ・コーラの商品名は、日本国内において著名である(当裁判
所に顕著な事実)。
 日本コカ・コーラ株式会社は、清涼飲料コカ・コーラについて、米国法人である
ザ・コカ・コーラ・カンパニーから商標権等の使用許諾を得てその製造、販売等を
行っている。日本コカ・コーラ株式会社は、日本国内の一七の担当地域ごとのボト
ラーに対して、商標権等の使用の再許諾をし、各ボトラーがその担当地域において
コカ・コーラ等の製品を製造、販売している。被告は、長野地区を担当するボトラ
ーである。
(二) コカ・コーラについては、従前様々なキャンペーンが実施され、各キャン
ペーン毎に「Come on in.Coke」、「Yes Coke Ye
s」、「Coke is it!」、「I feel Coke.」、「さわやか
になる、ひととき」といったキャッチフレーズが使用され、それを使用した広告宣
伝活動が大規模に行われてきた。
 ザ・コカ・コーラ・カンパニーは、平成五年三月から、「Always Coc
a-Cola(オールウェイズ コカ・コーラ)」キャンペーンを全世界的に一斉
に開始した。このキャンペーンについても大規模な広告宣伝活動が行われ、日本で
も、毎年五○億円を超える広告宣伝費を費やして広告宣伝活動が行われた。例え
ば、雑誌等の広告では、「止まって動いてまた止まっての……あいまにもオールウ
ェイズ、コカ・コーラ」、「心があちこち遊び回っている……あいまにもオールウ
ェイズ、コカ・コーラ」等のコピーが、コカ・コーラの缶やボトルの図柄とともに
掲載された。そして、このキャンペーンの一環として、コカ・コーラの缶に、被告
図柄一のとおり、「Always Coca-Cola」のキャッチフレーズが表
示された。平成九年四月からコカ・コーラの缶のデザインが一新されたが、そこに
おいても、被告図柄二のとおり、「Always Coca-Cola」のキャッ
チフレーズが表示された。
(三) 被告がコカ・コーラの缶に付している被告図柄一の態様は、別紙被告標章
目録一記載のとおり、缶上に一か所、小さく白抜きの円弧が描かれ(その直径は、
缶の高さの約六分の一程度である。)、その中に、コカ・コーラのボトルの図柄を
背景とした「Coca-Cola」という文字が記載され、その上部に、円弧に沿
って、小さな字で「ALWAYS」という白抜き文字が記載されている(その縦幅
は小さな円弧の直径の約七分の一程度である。)図柄である。被告図柄二の態様
は、別紙被告標章目録二記載のとおり、缶上に大きな円弧の上下一部が、缶の大き
さに収まらない形で描かれ、円弧の中心に、コカ・コーラのボトルの図柄が描か
れ、それを背景として円弧の中央を横切るように「Coca-Cola」という文
字が大きく記載され、円内のその周辺に、カタカナ「オールウェイズ」、英語「a
lways」、スペイン語「Siempre」、ポーランド語「zawsze」及
びフランス語「Toujours」が小さく記載されており、そのうち、「Coc
a-Cola」の文字の上部には近接して「always」及び「オールウェイ
ズ」の文字が記載され、「always」及び「Coca-Cola」は共に白抜
き文字により構成されている。
 右事実によれば、被告図柄一は、缶の一か所に、ごく小さく、「Coca-Co
la」という文字の上部に「ALWAYS」という文字が記載されており、また、
被告図柄二も、円弧の中心にコカ・コーラボトルの図柄及び「Coca-Col
a」の文字が大きく強調され、その周囲に小さく「always」、「オールウェ
イズ」の文字が「Coca-Cola」の文字の上部に近接して記載されており、
また「always」及び「Coca-Cola」の文字は共に白抜き文字により
構成されたものであるから、被告図柄一及び二に接した一般の取引者、需要者は、
本件欧文字表記及び本件カタカナ表記とコカ・コーラ商標とが一体の表記であると
の印象を受けることが認められる。
2 以上のとおり、①コカ・コーラについては、従来から、「Come on i
n.Coke」、「Yes Coke Yes」、「Coke is it!」、
「I feel Coke.」、「さわやかになる、ひととき」等の様々なキャッ
チフレーズによるキャンペーンが実施されていたこと、「Always Coca
-Cola(オールウェイズ コカ・コーラ)」のキャッチフレーズは、これらの
キャンペーンの一環として、平成五年から長期間にわたり、大規模に広告宣伝活動
が行われてきたこと、②被告図柄一及び二において、前記のとおり、本件欧文字表
記及び本件カタカナ表記は、いずれも、著名商標である「Coca-Cola」に
隣接した位置に、一体的に記載されていること、③「Always」ないし「オー
ルウェイズ」が、「常に、いつでも」を意味することは、一般に知られているもの
と解されること、特に、被告図柄二においては、同一の意味を指すスペイン語「S
iempre」、ポーランド語「zawsze」及びフランス語「Toujour
s」の語とともに記載されていること、④右キャッチフレーズは、ごく短い語句で
あるが、需要者が、いつも、コカ・コーラを、飲みたいとの気持ちを抱くというよ
うな、商品の購買意欲を高める効果を有する内容と理解できる表現であること等の
事情に照らすならば、コカ・コーラの缶上に記載された本件欧文字表記及び本件カ
タカナ表記を見た一般顧客は、専ら、ザ・コカ・コーラ・カンパニーがグループと
して実施している、販売促進のためのキャンペーンの一環であるキャッチフレーズ
の一部であると認識するものと解される。したがって、本件欧文字表記及び本件カ
タカナ表記は、いずれも商品を特定する機能ないし出所を表示する機能を果たす態
様で用いられているものとはいえないから、商標として使用されているものとはい
えない。
 なお、原告主張のとおり、ザ・コカ・コーラ・カンパニーが、自ら開設したイン
ターネットのホームページにおいて「ALWAYS」アイコンが同社の商標である
としていること、及び平成五年二月一日に、「ALWAYS」なる通常の字体によ
る欧文字の標章につき、清涼飲料等の第三二類の商品を指定商品として商標登録出
願していることが認められる(甲四、六)が、これらの事実があっても、なお、コ
カ・コーラの缶上における本件欧文字表記及びカタカナ表記が自他商品の識別のた
めのもの、すなわち商標としてのものであると認めることはできず、前記結論を左
右するものとはいえない。
 したがって、被告が、本件各表記を商標として使用していることを前提とする原
告の主張は、その余の点を判断するまでもなく理由がない。
二 争点2(商標の類否)について
 以上のとおり、原告の主張は、その余の点を判断するまでもなく失当であるが、
本件欧文字表記及び本件カタカナ表記と本件登録商標との類否についても、付加し
て、検討する。
1 被告図柄一について
 被告図柄一には本件欧文字表記が含まれているが、前記のとおり、被告図柄一
は、缶に付されたごく小さい円形のマークであり、全体として一体のマークとして
の印象を一般の取引者、需要者に強く与えるデザインであるというべきであるか
ら、類否を判断するに当たっては、被告図柄一全体と本件登録商標とを対比すべき
である。
 そして、前記のとおり、①本件欧文字表記は、被告図柄一の外縁を描く小さな円
弧の上部に、円弧に沿って、小さな文字で記載されているが、その縦幅は小さな円
弧の直径の約七分の一程度であり、被告図柄一の中の「Coca-Cola」なる
文字に比べて本件欧文字表記は小さく記載されていること、②円弧の中央には特徴
的なコカ・コーラのボトルの図柄が描かれ、「Coca-Cola」の文字が円弧
の中央を横切るように大きな文字で記載されていること、③更に、前記のとおりコ
カ・コーラ商標は著名であること等の事実に照らすならば、被告図柄一のうち、我
が国の一般的な取引者及び需要者の注意を惹いて中心的な識別力を有する要部は、
「Coca-Cola」の部分と解するのが相当である。
 そうすると、被告図柄一の要部は、外観、称呼、観念のいずれにおいても本件登
録商標と類似しないものであるから、被告図柄一は、本件登録商標と類似しない。
2 被告図柄二について
 被告図柄二には本件欧文字表記及び本件カタカナ表記が含まれているが、前記の
とおり、被告図柄二は、円弧の中心にコカ・コーラボトルの図柄及び「Coca-
Cola」の文字が大きく強調され、その周囲に小さく「always」、「オー
ルウェイズ」等の文字が記載され、特に右二つの文字は「Coca-Cola」の
文字の上部に近接して記載されており、また「always」及び「Coca-C
ola」の文字は共に白抜き文字によって構成されていること、また、「Alwa
ys Coca-Cola(オールウェイズ コカ・コーラ)」キャンペーンが長
期にわたり大規模に行われていること等を考慮すれば、「always」及び「オ
ールウェイズ」の部分と「Coca-Cola」の部分とは全体として一体の標章
であるとの印象を我が国の一般的な取引者及び需要者に与えるものというべきであ
るから、類否を判断するに当たっては、被告図柄二全体と本件登録商標とを対比す
べきである。
 そして、①被告図柄二において「always」及び「オールウェイズ」なる語
が「Coca-Cola」の文字よりも小さく記載されていること、②「Coca
-Cola」の文字は、円弧の中央を横切るように、「always」及び「オー
ルウェイズ」の文字より、極めて大きな文字で記載されていること、③コカ・コー
ラ商標は著名であること等の事実に照らすならば、被告図柄二のうち、我が国の一
般的な取引者及び需要者の注意を惹いて中心的な識別力を有する要部は、「Coc
a-Cola」の部分と解するのが相当である。
 そうすると、被告図柄二の要部は、外観、称呼、観念のいずれにおいても本件登
録商標と類似しないものであるから、被告図柄二は全体として、本件登録商標と類
似しない。
三 したがって、原告の本件請求は、いずれも理由がないからこれを棄却する。
(裁判官 飯村敏明 八木貴美子 沖中康人)
登録商標目録
<82409-001>
被告標章目録一
<82409-002>
被告標章目録二
<82409-003>

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残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
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71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
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履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
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