弁護士法人ITJ法律事務所

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平成14年12月6日判決言渡
平成14年(少コ)第2457号 損害賠償請求事件
         主    文
  1 原告の請求を棄却する。
  2 訴訟費用は,原告の負担とする。
         事実及び理由
第1 請   求  
   被告は,原告に対し,30万円を支払え。
第2 事案の概要
   本件は,被告所有のマンション3階に居住していた原告が,4階の真上に住
む被告の居室から連日騒がしい音を立てられ,勉強等に集中できなかった等の時間
的損失を被り,特に小さな子供の暴れ回ったり跳んだりする騒音による恐怖感や不
安感にさいなまれ,精神的苦痛等を受けたとして,被告に対し,不法行為に基づ
き,慰謝料等の損害賠償の支払を求めた事案である。
 1 請求原因の要旨
 (1) 原告は,平成11年3月から東京都新宿区ab丁目c番d号所在被告所有
の3階のワンルームマンション(以下「本件マンション」という。)に居住してい
たが,平成14年3月ころから,真上の4階に居住の被告の家族が計3名増え,連
日騒がしい音を立て,特に小さな子供の暴れ回ったり跳んだりする騒音が激しかっ
た。
(2)原告は,被告に対し,約4箇月の間10回近くも改善するように苦情を訴
えたが,同年9月ころまでの間全く改善されなかったため,原告は,その間勉強等
に集中できないなど作業効率低下による時間的損失を被っただけでなく,いつまた
騒音が出るかという恐怖感,不安感などさいなまれ,精神的苦痛を受けた。
 (3)そこで,原告はやむなく転居せざるを得ないと判断し,同年10月他に転
居した。
 (4) よって,被告に対し,不法行為に基づき,上記精神的苦痛による慰謝料3
0万円,新居探しや引越措置に要した費用15万円(1日1万円で15日分),及
び新居契約費用40万円(礼金16万円,敷金16万円,仲介手数料8万円)の合
計85万円のうち,精神的苦痛による慰謝料30万円を求める。
 2 被告の主張
  原告の主張する騒音は,日常生活する上でのやむを得ない範囲の生活音であ
る。被告は,生活音を抑えるように注意していたし,他の居住者からは苦情の申し
出は全く出ていない。
第3 当裁判所の判断
 1 原告,被告双方本人尋問の結果によれば,以下の事実が認められる。
 (1) 原告は,平成11年3月から被告所有の本件マンション3階に一人で入居
しており,現在大学院1年の学生である。通常平日は昼過ぎに学校に行き,早くて
夜7時ころ,遅いときは同10時ころ帰宅し,土日は大体家にいた。被告は,原告
の真上に当たる4階に居住している。平成14年3月上旬から,子供(被告の孫)
2人(翌月の4月から小学1年生と幼稚園児になる女の子)とその母親の3人が一
緒に住むことになったが,同月下旬には,3人は別棟に移ることになり,子供らが
遊びに,普段の日は午後早めに来て夕方には帰り,休日は午前中や午後時々来る程
度であった。
 (2)午前9時ころ4階の被告の居室から掃除機の音がし,その後子供の走り回
ったり,飛び跳ねたりしていると思われる音が断続的に昼くらいまで聞こえてき
た。夕方から夜間や早朝は,それらの音は全く出されなかった。音が聞こえたの
は,一週間のうち五日くらいであり,音がしない日もあった。
 (3) 原告は被告に,何回かにわたり苦情を言い改善するように申入れをしてき
たが,以前と同じような状況と感じ,平成14年9月中旬ころ本件マンションを退
去する決意をし,10月2日退去した。
 2 以上の事実に他の証拠及び弁論の全趣旨を綜合すれば,被告の居室から子供
らの騒ぐ声や駆け回る音が発生していたことは明らかであるが,原告がそれらの音
を聴く時間帯は,本年3月の平日は午前中,4月からは休日くらいで,子供らのい
る時間とそれほど重なっておらず,日中の比較的短い時間であること,子供らの騒
ぎ廻る音とはいっても,原告の健康状態や生活環境を著しく害するほどの異常な騒
音とはいえず,また,そのような状態が長い期間継続していたとは思われないこ
と,そして,被告は普段子供らに対し,騒音をなるべく立てないようにそれなりの
注意を与えていたことなどが認められ,これに反する証拠はない。
 3 ところで,通常本件マンションのような集合住宅においては,他の居住者の
迷惑となる行為をしないこと,とりわけ階下や隣の居住者の生活の平穏を害する騒
音を発生させないとすることは,お互いに当然に守るべき最低限のルールである。
   そして,一般に,他人の権利を侵害するこれら迷惑行為が違法なものとされ
るには,侵害行為の態様,侵害の程度,侵害される利益の内容等の事情を総合的に
判断されなければならないが,社会生活上受忍すべきとされる範囲内である場合に
は違法性がないことになり,受忍限度を超えているかどうかについては,通常人を
基準として判断すべきで,異常体質であることなど被害者側の特別の事情は,原則
として考慮されないものと考えるのが相当である。
 4 そこで,上記の考え方を前提として本件についてみると,前記認定のとおり
の状況では,原告の主張する被告の居室から出される騒音によって精神的苦痛を感
じるのが通常であるとはいえず,社会生活をしていく上では,受忍限度内のものと
認められ,被告の行為が違法性を帯びたものであるとまでは考えられない。
 5 以上の事実をもとに判断すると,原告の請求は理由がない。
     東京簡易裁判所民事第2室   
     
          裁 判 官中  島    寛

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