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平成16年(行ケ)第156号 特許取消決定取消請求事件
平成17年2月10日口頭弁論終結
     判    決
 原 告 中央発條株式会社
 訴訟代理人弁理士 大川宏,進藤素子,東口倫昭
 被 告 特許庁長官 小川洋
 指定代理人 上原徹,井出英一郎,岡田孝博,西川惠雄
     主    文
 原告の請求を棄却する。
 訴訟費用は原告の負担とする。
     事実及び理由
第1 原告の求めた裁判
 「特許庁が異議2003-71598号事件について,平成16年3月4日にし
た決定を取り消す。」との判決。
第2 事案の概要
 本件は,後記本件特許を取消しとした決定の取消しを求める事件である。
 1 手続の経緯
 (1) 原告は,発明の名称を「シートベルト巻取装置用S字ぜんまいばねの製造方
法」とする特許第3360181号(平成3年1月31日出願,平成14年10月
18日設定登録。以下「本件特許」という。)の特許権者である。
 (2) 本件特許について,平成15年6月23日,特許異議の申立てがされ(異議
2003-71598号事件として係属),特許庁は,平成16年3月4日,「特
許3360181号の請求項1に係る特許を取り消す。」との決定をし,同月19
日,その謄本を原告に送達した。
 2 特許請求の範囲の記載
 「ピアノ線または硬鋼線を減面率60%~90%に冷間圧延して引張強さを22
0kgf/mm2
~280kgf/mm2
にした帯材を巻き指数50~70で一次巻き
した後逆方向に二次巻きすることを特徴とするシートベルト巻取装置用S字ぜんま
いばねの製造方法。」
 3 決定の理由の要点
 決定の理由は,以下のとおりであるが,要するに,本件発明は,刊行物1ないし
3(それぞれ,異議甲1ないし3,そして本訴甲1ないし3に対応する。)に記載
の発明及び事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるか
ら,本件発明は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができず,した
がって,本件発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対
してされたものである,というのである。
 (1) 引用刊行物記載の発明,事項
 (1-1) 通知した取消しの理由に引用された刊行物1(特公平2-56974号公
報[異議申立人の提示した異議甲1(本訴甲1)])には,次の事項が記載されて
いる。
 ア 「ぜんまいばねを製造する従来例を第1図に基づき説明する。ステンレス
鋼,はがね鋼等の鋼材を用いて例えば0.13mm厚に冷間圧延加工された薄板
を,スリツトと成し,緑摺り(ラウンド加工)し,このような素材工程を経た鋼帯
1を第1図に示す送りローラ2及びガイド部材3を通して曲げ部材4に送り,当該
部材に鋼帯1を当接して曲げ成形する。・・・次いで・・・第2図に示す如き態様
でばねを支持ドラム5からセツテイング用ドラム6に巻き付けてプリセツテイング
を行う。このプリセツテイングは曲げ成型後のばねを逆巻きにし,その径を例えば
曲げ成形時φ12~13からφ14~16に広げる工程である。」(1欄15行~
2欄11行)
 イ 「自動車のシートベルトの巻取装置に使用される巻取ばねについては,第3
図に示す出力ドラム8の出力軸に設けたリール(図示せず)を引くと矢標方向に出
力ドラムが回転してそこにぜんまいばねが巻回され,リールをはなすと再び支持ド
ラム7に巻き戻されるようになっている。」(2欄22行~3欄6行)
 ウ 「そこで,本発明者らはこの従来例によるぜんまいばねについての残留応力
を測定したところ,第2図に示すセツテイング時のばね使用時の引張側残留応力
(発生応力)は+20~30kgf/mm2
程度であり,又,支持ドラムセツトによ
る発生応力は約30kgf/mm2
,疲労テスト時の発生応力は約170kgf/mm

であり,合せてばね表面の発生応力は約220~230kgf/mm2
程度にもなる
ことが判った。」(3欄11~18行)
 エ 「第2表は厚さ0.13mm×幅14mmのステンレス鋼帯についてφ9の
バネを後方張力22kgf/mm2
,半径0.7および0.8mmダイスを用いて一
次成形し,次いでφ15に2次成形したぜんまいばねの残留応力を測定した結果を
示すが,この本発明実施例の場合,使用時引張り側残留応力(X)は80kg/mm

以上の圧縮残留応力を示している。」(6欄27~33行)
 以上の摘記事項からみて,刊行物1には次の発明(以下「刊行物1記載の発明」
という。)が記載されている。
 「ステンレス鋼,はがね鋼の鋼材を冷間圧延加工した鋼帯を,曲げ成形した後逆
巻きするシートベルト巻取装置用ぜんまいばねの製造方法。」
 (1-2) 同じく取消しの理由に引用された刊行物2(特公昭62-10721号公
報[異議申立人の提示した異議甲2(本訴甲2)])には,次の事項が記載されて
いる。
 ア 「円形断面を有するばね用硬鋼線を熱処理を施すこと無く,板幅の板厚に対
する比R=板幅/板厚が,約10以上となるように冷間圧延をして長方形断面形状
とし,引張り強さ165kg/mm2
以上の帯状に形成したことを特徴とするうず巻
ばね用材料。」(1欄2~7行)
 イ 「本発明によって,出発材料としてJIS G 3506による硬鋼線材S
WRH 77Bから作られたJIS G 3521による硬鋼線SWBの直径2.
7mmを採用した場合に,その化学成分(%)及び引張り強さの規格値並びに実績
値の1例と,冷間圧延後の引張り強さの実績値の1例を示すと表2のとおりであ
る。」(4欄18~24行)
 ウ 硬鋼線材の引張り強さの実績値が,冷間圧延前で160kg/mm2
であり,
冷間圧延後で241kg/mm2
であること。(2頁表2)
 エ 「・・・冷間圧延によって引張り強さを向上させた硬鋼線・・・」(2頁最
終行~5欄第1行)
 (1-3) 同じく取消しの理由に引用された刊行物3(特開昭50-44971号公
報,本訴甲3)には,次の事項が記載されている。
 ア 「まず,ステンレス鋼に70%~85%の高い圧延率を加え,・・・ステン
レス鋼帯に裁断し,巻き線機によってうず巻き状に巻き込み・・・のち,巻き線機
によって逆方向に巻き込む。しかして,ステンレス鋼帯は,側面エス字状にして互
に反する巻き方向aおよびbを持つゼンマイAを形成する(第3図)。」(1頁右
下欄11行~2頁左上欄4行)
 イ 「本発明は,・・・自動車の安全ベルトのゼンマイとして用いれば,乗員を
して緩かな弾力性,柔軟性をもたらしめることが可能である。」(2頁右上欄15
~18行)
 (2) 対比
 そこで,本件発明と刊行物1記載の発明とを対比すると,後者の「ステンレス
鋼,はがね鋼の鋼材を冷間圧延加工した鋼帯」は,前者の「ピアノ線または硬鋼線
を減面率60%~90%に冷間圧延して引張強さを220kgf/mm2
~280k
gf/mm2
にした帯材」に,鋼材を冷間圧延した帯材である限りにおいて一致す
る。そして,後者の「曲げ成形」はその技術的意義からみて前者の「一次巻き」
に,同様に「逆巻き」は「二次巻き」に相当するから,両者は,次の一致点,相違
点を有する。
 一致点
 鋼材を冷間圧延した帯材を一次巻きした後逆方向に二次巻きするシートベルト巻
取装置用ぜんまいばねの製造方法。
 相違点(1)
 本件発明は,鋼材が「ピアノ線または硬鋼線」であり,このピアノ線または硬鋼
線を「減面率60%~90%に冷間圧延して引張強さを220kgf/mm2
~28
0kgf/mm2
にした帯材」として「巻き指数50~70で一次巻き」するのに対
し,刊行物1記載の発明は,鋼材がステンレス鋼,はがね鋼であり,冷間圧延する
際の減面率及び冷間圧延後の引張強さ,帯材を一次巻きする際の巻き指数について
不明である点。
 相違点(2)
 本件発明は,ぜんまいばねが「S字ぜんまいばね」であるのに対し,刊行物1記
載の発明は,当該構成を具備していない点。
 (3) 判断
 上記相違点について検討する。
 相違点(1)について
 刊行物2には,硬鋼線から冷間圧延して帯状に形成した材料によりうず巻ばねを
製造することが記載されている(上記摘記事項(1-2)ア)。刊行物2に記載される
「ばね」は「うず巻ばね」であるが,「ぜんまいばね」は「うず巻ばね」のひとつ
の形態であることからすれば,刊行物2に記載の硬鋼線を刊行物1記載の発明に適
用することを特に妨げるような阻害要因は存在せず,刊行物1記載の発明において
鋼帯の材料を,刊行物2に記載の硬鋼線とし,これをぜんまいばねとすることに格
別困難な点は見出せない。
 また,刊行物1には,「疲労テスト時の発生応力は約170kgf/mm2
であ
り,合せてばね表面の発生応力は約220~230kgf/mm2
程度にもなること
が判った。」(上記摘記事項(1-1)ウ)と記載されていることからみて,シートベル
ト巻取装置用ぜんまいばねには,上記ばね表面の発生応力に耐えうる程度の引張強
さが必要とされることは当業者が当然に考慮するところである。そして,刊行物2
には,硬鋼線から冷間圧延により,引張強さを241kg/mm2
とした帯材により
うず巻ばねを製造することが記載されていること(上記摘記事項(1-2)イ及びウ),
引張強さは,単位断面積にかかる荷重に係る物理量であって,その材料の厚みには
直接的には関係しない物理量であることからすれば,シートベルト巻取装置用ぜん
まいばねとして,220kgf/mm2
~280kgf/mm2
に含まれる数値の引張
強さの帯材を用いることは格別のものとはいえず,この引張強さを得るために冷間
圧延の減面率を60%~90%に含まれる数値とすることは,材料の特性に応じて
当業者が容易に成し得るものである。
 (なお,刊行物2においては,引張強さの単位として「kg/mm2
」が用いられ
ているが,これは単位断面積あたりにかかる荷重を重量として表記したものであ
り,荷重を力として表記した本件発明あるいは刊行物1に記載の発明に用いられる
単位「kgf/mm2
」と実質的に異なるものではない。)
 また,本件発明において,一次巻きの巻き指数を50~70としているのは,所
望の巻き戻しトルクを得るためであるが(本件特許明細書段落【0005】),所
望の巻き戻しトルクを得るための巻き指数をどの程度とするかはばね材料の特性に
応じて適宜選択される値にすぎない。そして,刊行物1の上記摘記事項(1-1)エによ
れば,一次成形の際に,厚さ0.13mmの鋼帯をφ9としており,この場合の巻
き指数は略69となるように,本件発明における巻き指数の値も特別なものではな
い。
 相違点(2)について
 刊行物3には,圧延により加工された鋼帯をうず巻き状に巻き込み,のち,逆方
向に巻き込むことによりエス字状にゼンマイを形成すること,同ゼンマイを自動車
の安全ベルトのゼンマイとして用いることが記載されている。刊行物3記載の「エ
ス字状」は「S字」と同義であり,「自動車の安全ベルトのゼンマイ」は「シート
ベルト巻取装置用ぜんまい」にほかならない。そして,刊行物1記載の発明と刊行
物3記載のぜんまいとは,圧延加工された鋼帯を用い,同鋼帯より形成されたぜん
まいばねをシートベルト巻取装置に用いる点で共通の技術であることからすれば,
刊行物1記載の発明において,ぜんまいばねを「S字ぜんまいばね」とすることは
当業者が容易に想到することができたものである。
 そして,本件発明の作用効果は,刊行物1ないし3に記載の発明及び記載の事項
から当業者が予測可能なものであって,格別のものではない。
 したがって,本件発明は,刊行物1ないし3に記載の発明及び事項に基いて当業
者が容易に発明をすることができたものである。
 (4) 決定のむすび
 以上のとおりであるから,本件発明は,特許法29条2項の規定により特許を受
けることができない。
 したがって,本件発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出
願に対してされたものと認める。
第3 当事者の主張の要点
 1 原告主張の決定取消事由
 決定は,本件発明と刊行物1記載の発明との一致点の認定を誤り(取消事由
1),本件発明と刊行物1発明との相違点(1)の判断を誤り(取消事由2),本
件発明の顕著な作用効果を看過し(取消事由3),その結果,本件発明の特許を取
り消したものであって,これらの誤りが決定の結論に影響を及ぼすことは明らかで
あるから,決定は違法なものとして取り消されるべきである。
 (1) 取消事由1(一致点の認定の誤り)
 決定は,本件発明と刊行物1記載の発明との一致点を「鋼材を冷間圧延した帯材
を一次巻きした後逆方向に二次巻きするシートベルト巻取装置用ぜんまいばねの製
造方法。」と認定したが,誤りである。
 ア 本件発明は,ピアノ線又は硬鋼線を冷間圧延して帯材としているのであっ
て,帯材の母材は,断面が円形のピアノ線又は硬鋼線の「線材」である。これに対
し,刊行物1記載の発明は,ステンレス鋼,はがね鋼等の鋼材を冷間圧延して鋼帯
としているのであって,鋼帯の母材である鋼材は,ステンレス鋼,はがね鋼等の
「板材」である。したがって,本件発明の「ピアノ線または硬鋼線」は,その材質
及び形状において,刊行物1記載の発明の「鋼材」とは異なるから,本件発明と刊
行物1記載の発明とが,鋼材を冷間圧延した帯材である限りにおいて一致するとい
うわけではない。
 イ また,刊行物1は,ぜんまいばねの使用形態の一例として,シートベルトの
巻取装置を挙げているにすぎないから,刊行物1のぜんまいばねの製造方法は,シ
ートベルト巻取装置用ぜんまいばねの製造方法ではない。
 ウ したがって,決定は,本件発明と刊行物1記載の発明との一致点の認定を誤
り,ひいては相違点を看過したものである。
 (2) 取消事由2(相違点(1)の判断の誤り)
 ア うず巻きばねの製造用材料として,硬鋼線から冷間圧延して帯状に形成した
材料を用いることが想到容易であるとした判断の誤り
 決定は,「刊行物2には,硬鋼線から冷間圧延して帯状に形成した材料によりう
ず巻ばねを製造することが記載されている・・・。刊行物2に記載される「ばね」
は「うず巻ばね」であるが,「ぜんまいばね」は「うず巻ばね」の一つの形態であ
ることからすれば,刊行物2に記載の硬鋼線を刊行物1記載の発明に適用すること
を特に妨げるような阻害要因は存在せず,刊行物1記載の発明において鋼帯の材料
を,刊行物2に記載の硬鋼線とし,これをぜんまいばねとすることに格別困難な点
は見出せない。」と判断したが,誤りである。
 (ア) 「ぜんまいばね」と「うず巻きばね」の異同について
 甲6(ばね技術研究会編「第3版ばね」丸善昭和57年12月20日発行)によ
れば,「渦巻ばね」は,「非接触形渦巻ばね」,「接触形渦巻ばね(ぜんま
い)」,「定荷重渦巻ばね」に分類されるところ(「3.6渦巻ばね」の項),刊
行物1の「ぜんまいばね」は,刊行物1に記載されている製造方法等に照らすと,
「接触形渦巻ばね」に分類され,刊行物2の「うず巻ばね」は,技術常識及び刊行
物2における「スタータ用うず巻きばねを作製し」(5欄1,2行)等との記載に
照らすと,「非接触形渦巻ばね」に分類される。また,甲7(日本工業標準調査会
審議「ばね用語JISB0103-1996」日本規格協会発行)によれば,「渦巻ばね」,
「ぜんまい」,「ひげぜんまい」,「定荷重ぜんまい」が分類されているところ,
刊行物1の「ぜんまいばね」は,「定荷重ぜんまい」に分類され,刊行物2の「う
ず巻ばね」は,「渦巻ばね」に分類される。
 したがって,分類の仕方は色々あるが,刊行物1の「ぜんまいばね」と刊行物2
の「うず巻ばね」とは,明確に区別されるものであり,刊行物1の「ぜんまいば
ね」が,刊行物2の「うず巻ばね」の一つの形態であるとはいえない。
 (イ) 「うず巻きばね」技術の「ぜんまいばね」への適用について
 刊行物1の「ぜんまいばね」は,(ア)のとおり,刊行物2の「うず巻ばね」の一つ
の形態であるとはいえず,また,刊行物1の「ぜんまいばね」と刊行物2の「うず
巻ばね」とでは,構造の相違により用途が異なるため,各々のばね材に要求される
寸法精度,特性等が異なる。そして,刊行物1に記載された鋼帯は,板状の鋼材を
冷間圧延した後,所定幅に切断し,縁摺りしたスリット材であって,その材料は,
板状の鋼材であるところ,材料(母材)が変われば,ぜんまいばね材を製造するた
めの工程や条件が変わるのは当然であるから,刊行物1に記載された鋼帯の材料
を,刊行物2に記載の硬鋼線(線材)に変更したとしても,ぜんまいばね材を製造
することはできない。なお,従来,ぜんまいばねは,刊行物1に記載されたような
「ばね用鋼帯」から作られているが(甲5(ばね技術研究会編「第3版ばね」丸善
平成2年10月15日第3刷発行)「5.5.9渦巻ばね a.接触形渦巻ばね」
の項),これは,硬鋼線等の線材を圧延し,所望の寸法及び引張強さのぜんまいば
ね材とすることが,高レベルの技術を必要として,極めて難しく,「ばね用鋼帯」
に代わるぜんまいばね材を,例えば,硬鋼線等の線材から通常の圧延によって製造
することはできないとされていたからである。
 イ 引張強さ,冷間圧延の減面率の数値限定を想到容易であるとした判断の誤り
  決定は,「刊行物1には,「疲労テスト時の発生応力は約170kgf/mm2
であり,合せてばね表面の発生応力は約220~230kgf/mm2
程度にもなる
ことが判った。」・・・と記載されていることからみて,シートベルト巻取装置用
ぜんまいばねには,上記ばね表面の発生応力に耐えうる程度の引張強さが必要とさ
れることは当業者が当然に考慮するところである。そして,刊行物2には,硬鋼線
から冷間圧延により,引張強さを241kg/mm2
とした帯材によりうず巻ばねを
製造することが記載されていること・・・,引張強さは,単位断面積にかかる荷重
に係る物理量であって,その材料の厚みには直接的には関係しない物理量であるこ
とからすれば,シートベルト巻取装置用ぜんまいばねとして,220kgfmm2

280kgf/mm2
に含まれる数値の引張強さの帯材を用いることは格別のものと
はいえず,この引張強さを得るために冷間圧延の減面率を60%~90%に含まれ
る数値とすることは,材料の特性に応じて当業者が容易に成し得るものである。」
と判断したが,誤りである。
 (ア) 引張強さについて
 刊行物1には,単に,従来の「鋼帯」から製造されるぜんまいばねに発生する応
力値が「220~230kgf/mm2
」と示されているにすぎず,この応力値とシ
ートベルト巻取装置におけるぜんまいばねとの関係については,何ら記載されてい
ないから,シートベルト巻取装置用ぜんまいばねに,上記のようなばね表面の発生
応力に耐え得る程度の引張強さが必要とされることについて,当業者が当然に考慮
するところであるとはいえない。
 また,刊行物2には,引張強さ241kgf/mm2
のうず巻ばね用材料が記載さ
れているだけであるし,うず巻ばね用材料は,ア(イ)のとおり,ぜんまいばね材とし
てそのまま適用できるものではないから,シートベルト巻取装置用ぜんまいばねの
「帯材」として,刊行物2記載のうず巻ばね用材料を用いること自体,容易に想起
されるものではない。さらに,「220kgf/mm2
~280kgf/mm2
に含ま
れる数値の引張強さの帯材を用いる」ことは,引張強さの範囲をこのような範囲に
規定する根拠は何もなく,当業者が容易に想到できるものではない。
 (イ) 減面率について
 刊行物2には,硬鋼線を冷間圧延し,引張強さ241kgf/mm2
のうず巻ばね
用材料を得たことが記載されているが,これは,板厚0.7mmのうず巻ばね用材
料の一実施例にすぎない。また,刊行物2には,減面率についての記載はないが,
この実施例における減面率を計算すると,14.4%となる。
 これに対し,本件発明は,シートベルト巻取装置用としてトルク定数の小さなS
字ぜんまいばねを得るために,「ピアノ線または硬銅線を減面率60%~90%に
冷間圧延して引張強さを220kgf/mm2
~280kgf/mm2
にした帯材」を
用いる。が,その板厚は,明細書(甲4)段落【0008】に記載されているよう
に,0.19mm程度と極めて薄い(刊行物1にも,「0.13mm×幅14mm
のステンレス鋼帯」(6欄27,28行)と記載されているように,ぜんまいばね
材には極めて薄い板厚が要求される。)。
 このように,本件発明の帯材と刊行物2記載のうず巻ばね材料とでは,用途の違
いから,圧延条件(減面率)が異なり,かつ,要求される板厚や引張強さが異なる
から,刊行物2の記載からは,本件発明のS字ぜんまいばね用の帯材における減面
率,引張強さの範囲が導き出せるものではなく,上記引張強さの帯材を得るため
に,減面率を60%~90%とすることは,当業者が容易になし得るものではな
い。
 ウ 巻き指数の値が格別のものではないとした判断の誤り
 決定は,「本件発明において,一次巻きの巻き指数を50~70としているの
は,所望の巻き戻しトルクを得るためであるが(・・・),所望の巻き戻しトルク
を得るための巻き指数をどの程度とするかはばね材料の特性に応じて適宜選択され
る値にすぎない。そして,刊行物1・・・によれば,一次成形の際に,厚さ0.1
3mmの鋼帯をφ9としており,この場合の巻き指数は略69となるように,本件
発明における巻き指数の値も特別なものではない。」と判断したが誤りである。
 (ア) 刊行物1に記載されたような従来の鋼帯からぜんまいばねを製造する場合,
鋼帯の引張強さが小さいため,一次巻き指数は150程度であった。これに対し,
本件発明は,ピアノ線又は硬鋼線から冷間圧延された所定の「帯材」を使用し,か
つ,一次巻き指数を50ないし70とすることで,所望のトルク特性をもつS字ぜ
んまいばねを実現させたものであって,この一次巻き指数は,S字ぜんまいばねの
トルク特性,へたり性能,耐久性が満足のゆくレベルとなるよう,「帯材」を用い
た幾多の実験を重ねて規定されたものであり,適宜選択した値ではない。
 (イ) また,刊行物1の実施例では,ステンレス鋼帯に後方から張力を負荷した状
態で,ダイスでしごきながら一次成形しているのに対し,本件発明は,押し加工法
で一次巻きを行っているのであって,一次巻きの成形法が異なる。刊行物1は,上
記のような特殊な成形により,たまたま一次巻き指数が略69になっているにすぎ
ないから,ぜんまいばね材に加え,一次巻きの成形法も異なる刊行物1の実施例か
ら計算される巻き指数で,本件発明の一次巻き指数を論じることはできない。
 エ 以上のとおり,決定は,本件発明と刊行物1記載の発明との相違点(1)の
判断を誤ったものである。
 (3) 取消事由3(本件発明の顕著な作用効果の看過)
 決定は,「本件発明の作用効果は,刊行物1ないし3に記載の発明及び記載の事
項から当業者が予測可能なものであって,格別のものではない。」と認定判断した
が,誤りである。
 本件発明では,引張強さの大きい帯材を用いて帯材の厚さを小さくすることで,
トルク定数を小さくし,また,一次巻きの巻き指数を小さくすることで,所望の巻
き戻しトルクを確保する。本件発明は,これにより,シートベルトの引き出し量に
対するばね巻取りトルクの変化が小さいトルク特性を有するS字ぜんまいばねを製
造することができる,という特有の効果を奏する。そして,このS字ぜんまいばね
を用いれば,シートベルトの着脱操作が容易となり,装着時の圧迫感を軽減するこ
とができる。
 このような作用効果は,刊行物1ないし3のいずれにも記載されていないし,そ
れを示唆する記載もないのであって,当業者は,本件発明の作用効果を,刊行物1
ないし3に記載の発明及び記載の事項から予測することはできない。
 したがって,決定は,本件発明の作用効果の認定判断を誤ったものである。
 2 被告の反論
 決定の認定判断は正当であり,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。
 (1) 取消事由1(一致点の認定の誤り)に対して
 ア 決定は,「鋼材を冷間圧延した帯材である限りにおいて一致」と認定し,冷
間圧延前の母材の形状についての要件は除外している。ここで,「鋼材」とは「鋼
鉄を機械や建築の材料として加工したもの」(広辞苑第4版)の意味であって,そ
の具体的形状までをも特定するものではない。決定は,刊行物1記載の発明を,材
質が「鋼」であるものを冷間圧延して,「帯」形状とし,これを成形して「ぜんま
いばね」とする製造方法として認定しているのであるから,本件発明と刊行物1記
載の発明とは,鋼材を冷間圧延した帯材である限りにおいて一致する。そして,決
定は,「鋼」としての材質の違い,及び,冷間圧延前の母材の形状の違いについ
て,相違点(1)(「本件発明は,鋼材が『ピアノ線又は硬鋼線』であり」)を認
定している。
 イ 刊行物1には,「自動車のシートベルトの巻取装置に使用される巻取ばねに
ついては・・・」(第2欄第22行ないし第3欄第6行)と記載されているとこ
ろ,他の用途の実施例は記載されていないことからみて,刊行物1に記載のぜんま
いばねは,自動車のシートベルト巻取装置に使用されるものを対象としているとい
うべきである。
 (2) 取消事由2(相違点(1)の判断の誤り)に対して
 ア うず巻きばねの製造用材料として,硬鋼線から冷間圧延して帯状に形成した
材料を用いることが想到容易であるとした判断の誤りに対して
 (ア) 「ぜんまいばね」と「うず巻きばね」の分類について
 甲6には,「渦巻ばねは隣接コイルが互いに接触しないものと,接触するものと
に分けられる。・・・接触型渦巻ばねは時計や機器の動力用ぜんまいとして用いら
れる。」(271頁)と記載され,また,甲7には,「ぜんまい」は,「動力用の
素線が互いに接触している渦巻ばね」(「定義」の欄)であると記載されているか
ら,これらの記載からみて,「ぜんまいばね」は「うず巻きばね」の一つの形態で
あるということができる。
 (イ) 「うず巻きばね」の技術を「ぜんまいばね」に適用することについて
 「ぜんまいばね」は,(ア)のとおり,「うず巻きばね」の一つの形態であり,ま
た,これらのばねは,その作用において,螺旋状に巻かれたばねがもとの形状に戻
ろうとする応力をばね力としている点で共通であり,その形状においても,帯板状
の材料を螺旋に巻いたものである点で共通であることからみれば,うず巻ばね用材
料をぜんまいばねに適用することを妨げる特段の阻害要因は存在しない。
 イ 引張強さ,冷間圧延の減面率の数値限定を想到容易であるとした判断の誤り
に対して
 (ア) 引張強さについて
 刊行物1記載のぜんまいばねは,(1)イのとおり,自動車のシートベルト巻取装置
に使用されるものを対象としている上,刊行物1の「この従来例によるぜんまいば
ねについての残留応力を測定したところ,・・・ばね表面の発生応力は220~2
30kgf/mm2
にもなることが判った。」(3欄11ないし18行)との記載に
おける「この従来例」とは,自動車のシートベルトに使用される巻取ばねを指すも
のであるから,自動車のシートベルト巻取装置に使用されるぜんまいばねには,2
20~230kgf/mm2
のばね表面の発生応力に耐え得る程度の引張強さが必要
とされることは,当業者が当然に考慮するところであって,刊行物1記載の発明に
おける鋼帯の引張強さを220~280kgf/mm2
の範囲内の数値とすること
は,当業者が容易に想到し得るものである。
 また,うず巻きばねの技術をぜんまいばねに適用することができることについて
は,アのとおりである。
 (イ) 減面率について
 刊行物2には,母材である硬鋼の引張強さが冷間圧延後に増大すること(4欄1
8ないし24行及び2頁表2),硬鋼線という線材から冷間圧延により帯材を得て
いること(1欄2ないし7行)が記載されている。また,冷間圧延の際の減面率が
大きいほど引張強さが大きくなること,材質の異なるものにおいて冷間圧延後に同
じ値の引張強さを得るには,減面率を異にする必要があることは,周知である(例
えば,乙1(ばね技術研究会編「第3版ばね」丸善平成2年10月15日第3刷発
行)58頁,図2・75)。
 そして,母材の材質が異なればその引張強さは異なるのであるから,冷間圧延に
よって所望の値の引張強さを得ようとすれば,圧延の際の減面率を母材の材質に応
じて変更すればよいことは充分に予測するところであるから,減面率をどの程度と
するかは,材質,必要とされる引張強さに応じて適宜選択すべき設計事項にすぎな
い。
 ウ 巻き指数の値が格別のものではないとした判断の誤りについて
 刊行物1には,厚さ0.13mmの鋼帯について,巻き指数69で一次成形する
ことが記載されており(6欄27ないし33行),本件発明における巻き指数の5
0~70という値は,薄い帯材からぜんまいばねに成形する際の値として特別なも
のではない。そして,巻き指数の値は,所望するトルク特性に適合するように,ば
ね材の特性に応じて選択されるものにすぎない。なお,原告は,一次巻きの加工法
の相違について言及しているが,特許請求の範囲には一次巻きの加工法について格
別の記載はない。
 (3) 取消事由3(本件発明の顕著な作用効果の看過)に対して
 帯材の厚さ及びトルク定数の値については,本件発明の特許請求の範囲に記載さ
れていないから,原告の主張する作用効果は,特許請求の範囲の記載に基づかない
ものである。
 また,刊行物1記載の発明におけるぜんまいばねにおいて,必要とされる帯材の
引張強さは,(2)イ(ア)のとおり,本件発明と同じ程度であって,その板厚は,0.
13mmであり,本件発明の実施例(0.19mm)と同様に薄いものである。し
かも,巻き指数の値は,(2)ウのとおり,所望するトルク特性に適合するように,ば
ね材の特性に応じて選択されるものにすぎないから,その作用効果は,刊行物1な
いし3に記載の発明及び記載の事項から予測することができるものである。
第4 当裁判所の判断
 1 取消事由1(一致点の認定の誤り)について
 (1) 刊行物1(甲1)には,「ステンレス鋼,はがね鋼等の鋼材を用いて・・・
冷間圧延加工された薄板」と記載されており,母材が「鋼材」であることは明らか
であるが,「鋼材」が一般的に「板状」のものであるとしても,刊行物1には,母
材である「鋼材」の形状は具体的に明記されていない。
 そして,決定は,刊行物1において,母材である「鋼材」が「線材」であると認
定したわけではなく,刊行物1の「ステンレス鋼,はがね鋼の鋼材を冷間圧延加工
した鋼帯」が,本件発明の「ピアノ線または硬鋼線を減面率60%~90%に冷間
圧延して引張強さを220kgf/mm2
~280kgf/mm2
にした帯材」と対比
して,鋼材を冷間圧延した帯材である限りにおいて一致すると認定した上,相違点
(1)として,本件発明の鋼材が「ピアノ線または硬鋼線」であるのに対して,刊
行物1の鋼材が「ステンレス鋼,はがね鋼」であると認定し,これについて判断し
ているから,決定が,鋼材を冷間圧延した帯材である限りにおいて一致すると認定
したことに,誤りはない。
 (2) また,刊行物1には,第1図,第2図に,従来例によるぜんまいばねの製造
工程が記載され,第3図には,従来例によるぜんまいばねの疲労テストについて記
載されているところ,発明の詳細な説明に,「自動車のシートベルトの巻取装置に
使用される巻取ばねについては,第3図に示す」(2欄22行ないし3欄1行)と
記載され,従来例の用途として,自動車のシートベルトが具体的に挙げられている
のであって,刊行物1において,従来例を改良する部分が,自動車のシートベルト
用ぜんまいばねに適用できることは明らかであるから,決定が,刊行物1のぜんま
いばねの製造方法を,「シートベルト巻取装置用の」ぜんまいばねの製造方法であ
ると認定したことに,誤りはない。
 (3) したがって,取消事由1は,理由がない。
 2 取消事由2(相違点(1)の判断の誤り)について
 (1) うず巻きばねの製造用材料として,硬鋼線から冷間圧延して帯状に形成した
材料を用いることが想到容易であるとした判断の誤りについて
 ア 「ぜんまいばね」と「うず巻きばね」の異同について
 (ア) 甲6には,「渦巻ばねは隣接コイルが互いに接触しないものと,接触するも
のに分けられる。」(271頁,「3.6渦巻ばね」の項),「ひげぜんま
い・・・は,小形で巻数の多い非接触形渦巻ばねにほかならない」(275頁,
「d.ひげぜんまい」の項),「接触形渦巻ばね(ぜんまい)」(278頁,
「3.6.3」の項見出し)と記載され,また,甲7には,「ぜんまい」とは,
「動力用の素線が互いに接触している渦巻ばね(付図38~40)。」であり,
「ひげぜんまい」とは,「計器用などの素線が互いに接触していない渦巻ばね(付
図41)。」であり,「渦巻ばね(うずまきばね)」とは,「平面内で渦巻型をし
ているばね(付図38~41)。」であると記載されている。これらの記載によれ
ば,「渦巻ばね」とは,「ぜんまい」と「ひげぜんまい」を総称していうものであ
ると認められるから,「ぜんまいばね」は,「うず巻ばね」の一つの形態であると
いうことができる。なお,甲6には,甲7の付図42に示される「定荷重ぜんま
い」と同一の構造の「定荷重渦巻ばね」について,「定荷重渦巻ばね・・・は自由
時に密着巻きされた特殊な渦巻ばね」(281頁,「3.6.4定荷重渦巻ばね」
の項)と記載されており,この記載によれば,「定荷重ぜんまい」(刊行物1の
「ぜんまいばね」がこれに分類される。)も,「渦巻ばね」の一種であることが明
らかである。
 (イ) 原告は,刊行物1の「ぜんまいばね」は,甲6によれば「接触形渦巻ばね」
に,甲7によれば「定荷重ぜんまい」に分類されるから,刊行物1の「ぜんまいば
ね」は,刊行物2(甲2)の「うず巻ばね」(甲6の「非接触形渦巻ばね」,甲7
の「渦巻ばね」)の一つの形態であるとはいえないと主張する。
 確かに,刊行物1の「ぜんまいばね」と刊行物2の「うず巻ばね」とは,形状,
構造を異にし,また,甲6には,「非接触形渦巻ばねは,エネルギーの蓄積用とし
ては自動車の装備部品・・・などに用いられ,また振動周期の等時性を利用する場
合としては時計のひげぜんまいに利用される。接触形渦巻ばねは時計や機器の動力
用ぜんまいとして用いられる。また特殊なものとして定荷重渦巻ばねは上下窓のバ
ランサやモータのブラシ押さえなどに使われる。」(271頁,「3・6渦巻ば
ね」の項)と記載されているから,この記載によれば,用途も異にしていると認め
られる。
 しかし,相違点(1)についての決定の説示に照らすと,決定は,刊行物1記載
の発明における鋼帯の材料を,刊行物2に記載の硬鋼線に変更することの想到容易
性について判断するに当たり,材料の変更を動機付ける根拠として,「ぜんまいば
ね」が「うず巻ばね」の一つの形態であること,すなわち,一般的に,「ぜんまい
ばね」が「うず巻ばね」の一種であるといえると認定したものである。言い換える
と,決定は,刊行物1の「ぜんまいばね」が,刊行物2の「うず巻ばね」と,形
状,構造及び用途を同じくしているとして,これを想到容易性の根拠としたのでは
なく,「ぜんまいばね」と「うず巻ばね」とが近接した技術分野にあるとして,こ
れを想到容易性の根拠としたのである。
 したがって,決定が,「「ぜんまいばね」は「うず巻ばね」の一つの形態であ
る」と認定したことに誤りはなく,原告の上記主張は,採用することができない。
 イ 「うず巻きばね」技術の「ぜんまいばね」への適用について
 (ア) 甲12(小玉正雄著「ばねのおはなし」日本規格協会発行)には,「ぜんま
いの場合には,薄い鋼帯を直線に近い形状にしたままで熱処理作業を行うのに対
し,非接触型の渦巻ばねでは,渦巻形状にしてから熱処理を行っています。」(1
45頁3ないし5行)と記載されており,この記載によれば,ぜんまいのような接
触型渦巻ばねも,非接触型渦巻ばねも,製造工程は異なるものの,薄い鋼帯を材料
として製造されるものであると認められる。そうすると,薄い鋼帯であれば,ぜん
まいばね用の材料が,うず巻ばね用の材料としても使用することができるというこ
とができる。
 そして,刊行物2には,「円形断面を有するばね用硬鋼線を熱処理を施すこと無
く,板幅の板厚に対する比R=板幅/板厚が,約10以上となるように冷間圧延を
して長方形断面形状とし,引張り強さ165kg/mm2
以上の帯状に形成したこと
を特徴とするうず巻ばね用材料。」(1欄1ないし7行),「本発明においては,
最終製品材料に要求される機械的性質並びに断面形状を考慮し,硬鋼線1の最適寸
法の素材を選定し,この素材に適当なバックテンションをかけながら,複数回圧延
ロール2,4を通し,所定の寸法のもの5に仕上げるものである。」(3欄22行
ないし4欄2行)と記載されており,これらの記載によれば,刊行物2のうず巻ば
ね用材料は,円形断面を有するばね用硬鋼線を出発材料とするが,冷間圧延処理に
より,長方形の断面形状を有する薄板状にした上,うず巻ばねに形成するものであ
ると認められる。また,刊行物1には,「ぜんまいばねを製造する従来例を第1図
に基づき説明する。ステンレス鋼,はがね鋼等の鋼材を用いて例えば0.13mm
厚に冷間圧延加工された薄板を,スリツトと成し,縁(「緑」とあるのは「縁」の
誤記と認める。)摺り(ラウンド加工)し,このような素材工程を経た鋼帯1を第
1図に示す送りローラ2及びガイド部材3を通して曲げ部材4に送り,当該部材に
鋼帯1を当接して曲げ成形する。・・・次いで・・・第2図に示す如き態様でばね
を支持ドラム5からセツテイング用ドラム6に巻き付けてプリセツテイングを行
う。このプリセツテイングは曲げ成形後のばねを逆巻きにし,その径を例えば曲げ
成形時φ12~13からφ14~16に広げる工程である。」(1欄15行ないし
2欄11行)と記載されており,この記載によれば,刊行物1のぜんまいばねは,
薄板を,スリットとし,縁摺り(ラウンド加工)した鋼帯から形成されるが,「第
2表は厚さ0.13mm×幅14mmのステンレス鋼帯についてφ9のバネを後方
張力22kgf/mm2
,半径0.7および0.8mmダイスを用いて一次成形し,
次いでφ15に2次成形したぜんまいばね」(6欄27ないし30行)と記載され
ていることにかんがみると,上記鋼帯は,長方形の断面形状を有する薄板状のもの
であると認められる。
 そうすると,刊行物1のぜんまいばね用材料も,刊行物2のうず巻ばね用材料
も,出発材料は異なるものの,一旦,長方形の断面形状を有する薄い鋼帯に成形し
た上,それぞれ,ぜんまいばね,うず巻ばねへと形成するのである。そして,前記
のとおり,薄い鋼帯であれば,ぜんまいばね用の材料が,うず巻ばね用の材料とし
ても使用することできるから,刊行物2に記載されている材料(薄い鋼帯)を,刊
行物1のぜんまいばね用材料(薄い鋼帯)として用いることは,当業者であれば容
易に想到できるというべきである。なお,刊行物2の実施例においては,うず巻ば
ね用材料として,「厚さt=0.7mm,幅b=7mmの長方形断面のもの」(4
欄13ないし14行)を用いているが,「最終製品材料に要求される機械的性質並
びに断面形状を考慮し,硬鋼線1の最適寸法の素材を選定し,・・・所定の寸法の
もの5に仕上げる」(3欄22行ないし4欄2行)と記載されていることにかんが
みると,刊行物2の材料を,刊行物1のぜんまいばね用材料と同様の厚みに形成し
て,ぜんまいばね用材料とすることも,当業者であれば容易に想到できるというべ
きである。
 (イ) 原告は,材料(母材)が変われば,ぜんまいばね材を製造するための工程や
条件が変わるのは当然であるから,刊行物1の鋼帯の材料を,刊行物2に記載の硬
鋼線(線材)に変更したとしても,ぜんまいばね材を製造することはできない旨主
張する。確かに,材料(母材)が変われば,ぜんまいばね材を製造するための工程
や条件が変わるものであるが,刊行物2には,(ア)のとおり,硬鋼線等の線材から圧
延によって薄い鋼板を形成することが記載されているのであって,刊行物2に記載
されている材料を,刊行物1のぜんまいばね用材料として用いることは,当業者で
あれば容易に想到できるものである。そして,本件発明の特許請求の範囲は,「ピ
アノ線または硬鋼線を減面率60%~90%に冷間圧延して引張強さを220kg
f/mm2
~280kgf/mm2
した帯材」と規定していて,冷間圧延の結果につい
ては特定しているものの,冷間圧延の工程や製造条件ついては特定していないか
ら,本件発明の帯材が,刊行物2に記載されているような通常の圧延によるもので
ないとまでは認めることができない。そうであれば,刊行物1の鋼帯の材料を,刊
行物2に記載の硬鋼線(線材)に変更したとしても,実験等により工程や条件を適
宜決定して,ぜんまいばね材を製造することができるといわなければならない。原
告の上記主張は,採用することができない。
 また,原告は,ぜんまいばねが「ばね用鋼帯」から作られているのは,硬鋼線等
の線材を圧延し,所望の寸法及び引張強さのぜんまいばね材とすることが,高レベ
ルの技術を必要として,極めて難しく,「ばね用鋼帯」に代わるぜんまいばね材
を,例えば,硬鋼線等の線材から通常の圧延によって製造することはできないとさ
れていたからである旨主張する。しかし,本件明細書には,「【実施例】ピアノ線
材SWRS62を減面率70%に冷間圧延した本発明にかかる帯材と従来一般に使
用されているステンレス鋼線SUS301-CSPEHを冷間圧延した帯材とを比
較する・・・」(段落【0007】)と記載されており,この記載によれば,ステ
ンレス鋼線ではあるが,線材からぜんまいばね用の帯材を形成することが示されて
いるから,「ばね用鋼帯」に代わるぜんまいばね材を,線材から通常の圧延によっ
て製造することができないとされていたとは考え難い。したがって,原告の上記主
張は,採用の限りでない。
 (2) 引張強さ,冷間圧延の減面率の数値限定を想到容易であるとした判断の誤り
について
 ア 引張強さについて
 (ア) 刊行物1には,「そこで,本発明者らはこの従来例によるぜんまいばねにつ
いての残留応力を測定したところ,第2図に示すセツテイング時のばね使用時の引
張側残留応力(発生応力)は+20~30kgf/mm2
程度であり,又,支持ドラ
ムセツトによる発生応力は約30kgf/mm2
,疲労テスト時の発生応力は約17
0kgf/mm2
であり,合せてばね表面の発生応力は約220~230kgf/mm

程度にもなることが判った。」(3欄11ないし18行)と記載されているもの
の,この記載は,従来の「鋼帯」から製造されるぜんまいばねに発生する応力値と
シートベルト巻取装置におけるぜんまいばねの引張強さの関係を直接的に示してい
るわけではない。
 しかし,従来例のぜんまいばねにおいて,ばね表面における発生応力が約220
~230kgf/mm2
になるということは,ぜんまいばねの表面に,使用時におい
て,それだけの外力(荷重)が加わることを意味するから,ぜんまいばねの「鋼
帯」には,破断を防ぐために,このような応力を考慮した上での引張強さが求めら
れる。しかも,刊行物1には,第4図に,従来例のぜんまいばねの引張強さが20
0kgf/mm2
であることが示されているから,ぜんまいばねを従来どおりの態様
で使用するのであれば,ばね材料の引張強さを,少なくとも上記の値以上のものに
設計することは,当業者であれば容易に想到できることである。また,刊行物2に
は,表2に,硬鋼線(SWRH 77B)を冷間圧延して得られるうず巻ばね用材
料の引張り強さが241kg/mm2
であることが示されているから,甲2に記載さ
れた冷間圧延によれば,200kgf/mm2
を超える引張強さが得られることは,
容易に理解されるところである。
 そうであれば,従来例のぜんまいばねにおいて得られる上記の知見を基にして,
実験等により,必要な引張強さを容易に設定することができるというべきであり,
刊行物2に従って,刊行物1のぜんまいばね用材料を形成するに当たり,上記のよ
うな引張強さが得られるような原材料や冷間圧延手法を選択することは,当業者で
あれば容易に行うことができると認められる。
 (イ) 原告は,刊行物1には,ぜんまいばねに発生する応力値とシートベルト巻取
装置におけるぜんまいばねとの関係が記載されていないから,シートベルト巻取装
置用ぜんまいばねに,ばね表面の発生応力に耐え得る程度の引張強さが必要とされ
ることについて,当業者が当然に考慮するところであるとはいえない旨主張する
が,(ア)に判示したところによれば,原告の上記主張は,採用の由ないものといわな
ければならない。
 また,原告は,シートベルト巻取装置用ぜんまいばねの「帯材」として,刊行物
2記載のうず巻ばね用材料を用いること自体,容易に想起されるものではないし,
帯材の引張強さの範囲を220kgf/mm2
~280kgf/mm2
に規定する根拠
は何もなく,当業者が容易に想到できるものではない旨主張する。しかし,シート
ベルト巻取装置用ぜんまいばねの「帯材」として,刊行物2記載のうず巻ばね用材
料を用いることは,(1)イ(ア)に判示したように,当業者であれば容易に想到できる
というべきであるし,また,本件発明において,引張強さの範囲を220kgf/m
m2
ないし280kgf/mm2
に規定する格別の根拠はないとしても,必要な引張強
さを得るために原材料や冷間圧延手法を選択し,その結果,220kgf/mm2

280kgf/mm2
の引張強さの帯材を用いることは,格別のものでなく,当業者
であれば容易に想到できるものである。原告の主張は,採用することができない。
 イ 減面率について
 (ア) 刊行物2の材料を,刊行物1のぜんまいばね用材料と同様な厚みに形成し
て,ぜんまいばね用材料とすることは,(1)イ(ア)に判示したように,当業者であれ
ば容易に想到できるものである。確かに,出発材料によっては,同一厚みのぜんま
いばね材料を形成するための圧延条件(減面率)を変える必要があるが,目標とす
る厚みが決まれば,出発材料に応じて,圧延条件(減面率)を変更すれば足りるの
である。
 本件明細書の特許請求の範囲には,「ピアノ線または硬鋼線を減面率60%~9
0%に冷間圧延して引張強さを220kgf/mm2
~280kgf/mm2
にした帯
材」と記載されているが,原材料の引張強さも,線の直径も規定していないし,帯
材の厚みも規定していない。また,上記の特定の引張強さのぜんまいばね材料が,
上記の特定の減面率を採用することによってはじめて形成できたとは認められな
い。そうすると,減面率は,上記の特定の引張強さ(厚みは不定)のぜんまいばね
を製造するために,出発材料,ぜんまいばね材料に必要とされる厚みに応じて,自
ずと定められるものであるといわざるを得ないのであって,格別のものであるとは
認められない。
 (イ) 原告は,刊行物2の記載からは,本件発明のS字ぜんまいばね用の帯材にお
ける減面率,引張強さの範囲が導き出せるものではなく,上記引張強さの帯材を得
るために,減面率を60%~90%とすることは,当業者が容易になし得るもので
はない旨主張する。しかし,刊行物2には,表2に,硬鋼線材を冷間圧延して長方
形断面形状の帯材を形成することによって,引張強さが160kg/mm2
から24
1kg/mm2
にまで向上することが示されているところ,乙1(ばね技術研究会編
「第3版ばね」丸善,平成2年10月15日第3刷発行)58頁,図2・75)によれ
ば,冷間圧延の際の減面率が大きいほど引張強さが大きくなること,材質の異なる
ものにおいて,冷間圧延後に同じ値の引張強さを得るには,減面率を異にする必要
があることが認められるから,この事実を併せ考えると,冷間圧延時の減面率を変
えることにより帯材の引張強さを変えることができるということが容易に理解する
ことができるし,また,母材の材質に応じて減面率と引張強さとの関係を求めるこ
とは,実験等により,容易に行うことができると考えられる。したがって,上記引
張強さの帯材を得るために,減面率を60%~90%とすることは,当業者が容易
に行うことができる。原告の上記主張は,採用の限りでない。
 (3) 巻き指数の値が格別のものではないとした判断の誤り
 ア 本件明細書によれば,「巻き指数」とは,「一次巻きの直径と帯材の厚さと
の比」のことをいうとされており(3欄18ないし19行),本件発明は,巻き指
数50~70で一次巻きするものである。
 刊行物1には,「所定径より小さなばねを一次成形し,更に2次成形としてばね
の成形状態から逆方向に曲げ,成形径を所定径まで拡大することにより,圧縮残留
応力を単に付与できるだけでなく,圧縮残留応力の絶対値をより大きくし,疲労寿
命のより一層向上したぜんまいばねを得ることができる」(4欄33ないし39
行)と記載されており,この記載によれば,一次成形においては,小さな径に成形
することが疲労寿命の向上につながることが理解される(なお,刊行物1には,
「プリセッティングは曲げ成形後のばねを逆巻きにし,その径を例えば曲げ成形時
φ12~13からφ14~16に広げる工程である。」(2欄9ないし11行)と
記載されているから,「成形径」,「所定径」は,「φ12~13」,「φ14~
16」であると認められる。)。また,刊行物1には,「第2表は厚さ0.13m
m×幅14mmのステンレス鋼帯についてφ9のバネを後方張力22kgf/mm2
,半径0.7および0.8mmダイスを用いて一次成形し,次いでφ15に2次成
形したぜんまいばねの残留応力を測定した結果を示すが,この本発明実施例の場
合,使用時引張り側残留応力(X)は80kg/mm2
以上の圧縮残留応力を示して
いる。」(6欄第27ないし33行)と記載されており,この記載によれば,計算
によって,一次成形の際に,略69という巻き指数を採用していることが理解され
る。
 本件発明の特許請求の範囲には,「巻き指数50~70で一次巻きした後逆方向
に二次巻きする」と記載されているだけで,二次巻きの成形条件が規定されていな
いが,刊行物1において,「略69」という巻き係数を採用していることからする
と,本件発明における巻き係数の値の範囲は,刊行物1が採用した値を含んでい
る。そして,刊行物1に従った条件を採用して一次巻きすれば(すなわち,略69
の巻き係数で一次巻きすれば),ぜんまいばねの疲労寿命の向上が期待できるから
(もっとも,二次巻きについても,刊行物1に従った成形条件を採用することが必
要となるが,本件発明においては,二次巻き条件が特定されていないから,刊行物
1に従った成形条件により成形することを排除していない。),一次巻きの条件に
ついて,刊行物1に示された巻き指数「略69」の近辺について,実験を行い,こ
れにより,巻き指数を50ないし70とする好適範囲を定めることは,当業者であ
れば容易に想到できるというべきである。
 イ 原告は,本件発明において,一次巻き指数は,S字ぜんまいばねのトルク特
性,へたり性能,耐久性が満足いくレベルとなるよう,「帯材」を用いた幾多の実
験を重ねて規定されたものであり,適宜選択した値ではない旨主張する。しかし,
本件発明においては,帯材の厚みも規定されていないから,帯材の厚みを小さくす
ることによって,上記巻き指数が達成できるとはいえないし,特定の引張強さの帯
材を用いることによって,はじめて上記巻き指数を達成できるとも認められないか
ら,巻き指数を50ないし70とする数値限定は,ぜんまいばねの求められる性能
に応じて定められる好適範囲の意義しか有しないと考えられる。そして,アに判示
したように,一次巻き条件について,巻き指数「略69」の近辺について,実験を
行い,これにより,巻き指数を50ないし70とする好適範囲を定めることは,当
業者であれば容易に想到できるのであって,ばね材料の特質に応じて適宜選択し得
るものである。原告の上記主張は,採用の限りでない。
 また,原告は,刊行物1の実施例では,ステンレス鋼帯に後方から張力を負荷し
た状態で,ダイスでしごきながら一次成形し,たまたま一次巻き指数が略69にな
ったにすぎず,この巻き指数で,押し加工法で一次巻きを行っている本件発明の巻
き指数を論じることはできない旨主張する。しかし,本件発明の特許請求の範囲
は,一次巻き加工法について規定していないから,本件発明が,「押し加工法」に
より一次成形することを前提とするものであるとは認められない。そして,仮に本
件発明が「押し加工法」により一次成形するものであるとしても,刊行物1には,
一次成形において,小さな径に成形することで,疲労寿命を向上させることが示唆
されているから,可能な限り,小さな径に成形することは,当業者ならば容易に想
到できることである。確かに,刊行物1には,「本発明者らは一次成形径を小さく
するという観点から,従来法(押し加工法)について成形時半径を小さくすること
について検討してみたが,従来法の如き押し加工法では成形時半径を小さくすると
鋼帯にオレが発生し,成形時半径を小さくすることには限界があることが判っ
た。」(4欄27ないし32行)と記載されており,この記載によれば,巻き指数
を小さくする成形が困難であることは理解されるものの,小さな径に成形できるか
否かは,鋼帯の曲がりやすさ,すなわち,厚みにもよるのであるから,「押し加工
法」を用いたのでは,決して,小さな径には成形できないというわけではなく,
「押し加工法」を試みることについて格別の創意を要するとはいえない。そうであ
れば,「略69」の近辺について,実験を行い,これにより,巻き指数を50ない
し70とする好適範囲を定めることは,当業者であれば容易に想到できるというべ
きである。原告の上記主張は,採用することができない。
 (4) したがって,相違点(1)についての決定の判断に誤りはないから,取消事
由2は,理由がない。
 3 取消事由3(本件発明の顕著な作用効果の看過)について
 (1) 本件発明において採用される,硬鋼線を出発材料とした冷間圧延,減面率の
数値限定,帯材の引張強さについての数値限定,一次巻きの巻き指数の数値限定
は,いずれも,当業者が容易に想到できるものであることは,上記2に判示したと
おりである。
 また,本件明細書には,本件発明の作用効果について,「引張強さの大きい帯材
を使用することにより厚さを小さくしてトルク定数を低減するとともに,従来,一
次巻きの直径と帯材の厚さとの比(・・・)が150程度であつたのを50~70
とすることにより巻き戻し方向の残留応力を大きくし,これによつて所望の巻き戻
しトルクを確保することができた。・・・すなわち,引張強さの大きい帯材を用い
て厚さを小さくすることによりトルク定数を小さくし,一次巻きの巻き指数を小さ
くすることによつて所望のトルクを得るようにしたものであつて,引き出し長さの
変化によるトルクの変化が小さく,しかも所望のトルクが得られるから,着脱時に
シートベルトを長く引き出してもこれに要する力は比較的小さくて着脱操作が容易
であり,また,装着時の引張力も小さいから圧迫感が小さく,さらに,シートベル
トの巻き取りに要するトルクは十分に確保できる効果がある。」(3欄16行ない
し32行)と記載されている。この作用効果は,製造方法それ自体が奏するもので
はなく,製造されたS字ぜんまいばねが奏するものであるが,本件明細書には,
「従来主として用いられていた・・・引張強さが180kgf/mm2
」(3欄12
ないし14行),「従来,・・・(・・・巻き指数という)が150程度であっ
た」(3欄18ないし20行),「板厚が,・・・従来のS字ぜんまいばねは0.
20mm」(4欄12ないし14行)と記載されており,これらの記載に照らす
と,製造されたS字ぜんまいばねが奏する上記の作用効果は,特定の従来品と比較
してのものにとどまるのであって,これによって刊行物1ないし刊行物3から予測
できる範囲を一般的に超えるものとは認められない。
 (2) したがって,取消事由3も,理由がない。
第5 結論
 以上のとおりであって,原告主張の決定取消事由は,いずれも理由がないから,
原告の請求は棄却されるべきである。
  東京高等裁判所知的財産第4部
        裁判長裁判官     塚  原  朋  一
           裁判官     塩  月  秀  平
           裁判官     髙  野  輝  久

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