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平成14年(行ケ)第71号 特許取消決定取消請求事件(平成14年7月3日口
頭弁論終結)
          判           決
       原      告   イビデン株式会社
       原      告   日産ディーゼル工業株式会社
       両名訴訟代理人弁護士 木 下 洋 平
       同      弁理士 小 川 順 三
       被      告   特許庁長官 及 川 耕 造
       指定代理人      西 川 惠 雄
       同          氏 原 康 宏
       同          高 木   進
       同          宮 川 久 成
          主           文
 特許庁が異議2001-71817号事件について平成13年12月
26日にした決定を取り消す。
      訴訟費用は被告の負担とする。
          事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
 1 原告ら
   主文と同旨
 2 被告
   原告らの請求を棄却する。
   訴訟費用は原告らの負担とする。
第2 当事者間に争いのない事実
 1 特許庁における手続の経緯
 (1) 原告らは、名称を「セラミック構造体」(その後、下記本件訂正審決によ
り「排気ガス浄化装置用フィルタとして用いられるセラミック構造体」と訂正)と
する特許第3121497号発明(平成6年7月14日特許出願、平成12年10
月20日設定登録、以下「本件発明」といい、この特許を「本件特許」という。)
の特許権者である。
    その後、本件特許につき特許異議の申立てがされ、同申立ては、異議20
01-71817号事件として特許庁に係属したところ、原告らは、平成13年1
1月20日、本件特許出願の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」とい
う。)の特許請求の範囲の記載を訂正する旨の訂正請求(以下「本件訂正請求」と
いう。)をした。
 特許庁は、同特許異議事件について審理した上、同年12月26日、「訂
正を認める。特許第3121497号の請求項1ないし3に係る特許を取り消
す。」との決定(以下「本件決定」という。)をし、その謄本は、平成14年1月
16日、原告らに送達された。
 (2) 原告らは、本件決定の取消しを求める本訴提起後の平成14年3月14
日、本件明細書の特許請求の範囲の記載を訂正する旨の訂正審判の請求をしたとこ
ろ、特許庁は、同請求を訂正2002-39075号事件として審理した上、同年
4月23日、上記訂正を認める旨の審決(以下「本件訂正審決」という。)をし、
その謄本は、同年5月7日、原告らに送達された。
 2 特許請求の範囲の記載
 (1) 設定登録時の特許請求の範囲の記載
【請求項1】長手方向に沿って並列する複数の貫通孔を有し、かつ、これら
の貫通孔の各端面は、それぞれ市松模様状に目封じされていると共に、ガスの入側
と出側とでは開閉が逆の関係にあり、そして、これらの貫通孔の隣接するものどう
しは、多孔質な隔壁を通じて互いに通気可能にしたセラミック部材を、複数個結束
させて集合体としたセラミック構造体において、
 前記各セラミック部材の相互間に、少なくとも無機繊維、無機バインダ
ー、有機バインダーおよび無機粒子からなるものを充填し、乾燥し、硬化して、前
記無機繊維と、無機粒子と、無機バインダーの加熱焼成によって生成するセラミッ
クスとが、三次元的に交錯する構造の弾性質シール材を形造り、そのシール材を介
して前記各セラミック部材が一体に接着されており、とくに前記無機粒子として、
炭化珪素、窒化珪素、および窒化硼素から選ばれる少なくとも1種以上の無機粉末
またはウィスカーを用いることを特徴とするセラミック構造体。
【請求項2】前記シール材において、無機繊維としては、シリカ-アルミ
ナ、ムライト、アルミナおよびシリカから選ばれる少なくとも1種以上のセラミッ
クファイバーを用い、無機バインダーとしては、シリカゾルおよびアルミナゾルか
ら選ばれる少なくとも1種以上のコロイダルゾルを用い、そして有機バインダーと
しては、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロースおよびカル
ボメトキシセルロースから選ばれる少なくとも1種以上の多糖類を用いることを特
徴とする請求項1に記載のセラミック構造体。
【請求項3】前記シール材は、固形分で、10~70wt%のシリカ-アルミナセ
ラミックファイバー、1~30wt%のシリカゾル、0.1~5.0wt%のカルボメトキシセ
ルロースおよび3~80wt%の炭化珪素粉末からなることを特徴とする請求項2に記
載のセラミック構造体。
(2) 本件訂正請求に係る訂正後の特許請求の範囲の記載(注、訂正部分を下線で
示す。)
   【請求項1】長手方向に沿って並列する複数の貫通孔を有し、かつ、これら
の貫通孔の各端面は、それぞれ市松模様状に目封じされていると共に、ガスの入側
と出側とでは開閉が逆の関係にあり、そして、これらの貫通孔の隣接するものどう
しは、多孔質な隔壁を通じて互いに通気可能にした焼成セラミック部材を、複数個
結束させて集合体としたセラミック構造体において、
 前記各焼成セラミック部材の相互間に、少なくとも無機繊維、コロイダル
ゾルからなる無機バインダー、有機バインダーおよび無機粒子からなるものを充填
し、乾燥し、硬化して、前記無機繊維と、無機粒子と、無機バインダーの加熱焼成
によって生成するセラミックスとが、三次元的に交錯する構造の弾性質シール材を
形造り、そのシール材を介して前記各セラミック部材が一体に接着されており、と
くに前記無機粒子として、炭化珪素、窒化珪素、および窒化硼素から選ばれる少な
くとも1種以上の高熱伝導性の無機粉末またはウィスカーを用いることを特徴とす
るセラミック構造体。
   【請求項2】前記シール材において、無機繊維としては、シリカ-アルミ
ナ、ムライト、アルミナおよびシリカから選ばれる少なくとも1種以上のセラミッ
クファイバーを用い、無機バインダーとしては、シリカゾルおよびアルミナゾルか
ら選ばれる少なくとも1種以上のコロイダルゾルを用い、そして有機バインダーと
しては、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロースおよびカル
ボキシメチルセルロース(注、この部分の訂正は明りょうでない記載の釈明を目的
とした訂正である。)から選ばれる少なくとも1種以上の多糖類を用いることを特
徴とする請求項1に記載のセラミック構造体。
【請求項3】前記シール材は、固形分で、10~70wt%のシリカ-アルミナセ
ラミックファイバー、1~30wt%のシリカゾル、0.1~5.0wt%のカルボキシメチル
セルロース(注、この部分の訂正は明りょうでない記載の釈明を目的とした訂正で
ある。)および3~80wt%の炭化珪素粉末からなることを特徴とする請求項2に記
載のセラミック構造体。
 (3) 本件訂正審決に係る訂正後の特許請求の範囲の記載(注、訂正部分を下線
で示す。なお、二重下線部分は、上記(2)との相違部分である。) 
   【請求項1】長手方向に沿って並列する複数の貫通孔を有し、かつ、これら
の貫通孔の各端面は、それぞれ市松模様状に目封じされていると共に、ガスの入側
と出側とでは開閉が逆の関係にあり、そして、これらの貫通孔の隣接するものどう
しは、多孔質な隔壁を通じて互いに通気可能にした焼成セラミック部材を、
複数個結束させて集合体としたセラミック構造体において、
 前記各焼成セラミック部材の相互間に、少なくとも無機繊維、コロ
イダルゾルからなる無機バインダー、有機バインダーおよび無機粒子からなるもの
を充填し、乾燥し、硬化して、前記無機繊維と、無機粒子と、無機バインダーの加
熱焼成によって生成するセラミックスとが、三次元的に交錯する構造の弾性質シー
ル材を形造り、そのシール材を介して前記各セラミック部材が一体に接着されてお
り、とくに前記無機粒子として、炭化珪素、窒化珪素、および窒化硼素から選ばれ
る少なくとも1種以上の高熱伝導性の無機粉末またはウィスカーを用いることを特
徴とするセラミック構造体。
   【請求項2】前記シール材において、無機繊維としては、シリカ-アルミ
ナ、ムライト、アルミナおよびシリカから選ばれる少なくとも1種以上のセラミッ
クファイバーを用い、無機バインダーとしては、シリカゾルおよびアルミナゾルか
ら選ばれる少なくとも1種以上のコロイダルゾルを用い、そして有機バインダーと
しては、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロースおよびカル
ボキシメチルセルロース(注、この部分の訂正は明りょうでない記載の釈明を目的
とした訂正である。)から選ばれる少なくとも1種以上の多糖類を用いることを特
徴とする請求項1に記載のセラミック構造体。
【請求項3】前記シール材は、固形分で、10~70wt%のシリカ-アルミナセ
ラミックファイバー、1~30wt%のシリカゾル、0.1~5.0wt%のカルボキシメチル
セルロース(注、この部分の訂正は明りょうでない記載の釈明を目的とした訂正で
ある。)および3~80wt%の炭化珪素粉末からなることを特徴とする請求項2に記
載のセラミック構造体。
 3 本件決定の理由
   本件決定は、本件訂正請求に係る訂正を認めた上、本件発明の要旨を同訂正
後の特許請求の範囲の記載(上記2(2))のとおり認定し、本件発明は、実願平4-
73813号(実開平6-47620号)のCD-ROM、特開平1-25258
8号公報、特公昭57-5429号公報、特開平6-9253号公報に記載された
各発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法
29条2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は拒絶
の査定をしなければならない特許出願に対してされたものであって、特許法等の一
部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)
4条2項の規定により取り消されるべきものであるとした。
第3 当事者の主張
 1 原告ら
   本件決定が、本件発明の要旨を本件訂正請求に係る訂正後の特許請求の範囲
の記載(上記第2の2(2))のとおり認定した点は、本件訂正審決の確定により特許
請求の範囲の記載が上記第2の2(3)のとおり訂正されたため、誤りに帰したことに
なる。そして、この瑕疵は本件決定の結論に影響を及ぼすものであるから、本件決
定は違法として取り消されるべきである。
 2 被告
   本件訂正審決の確定により特許請求の範囲の記載が上記のとおり訂正された
ことは認める。
第4 当裁判所の判断
   本件訂正審決の確定により、本件明細書の特許請求の範囲の記載が上記第2
の2(3)のとおり訂正されたことは当事者間に争いがなく、この訂正によって、特許
請求の範囲が減縮されたことは明らかである。
   そうすると、本件決定が、本件発明の要旨を、本件訂正請求に係る訂正後の
特許請求の範囲の記載(上記第2の2(2))のとおり認定したことは、結果的に誤り
であったことに帰し、これが本件決定の結論に影響を及ぼすことは明らかであるか
ら、本件決定は、瑕疵があるものとして取消しを免れない。
   よって、原告らの請求は理由があるから認容し、訴訟費用の負担につき行政
事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。
     東京高等裁判所第13民事部
         裁判長裁判官 篠  原  勝  美
    裁判官 岡  本     岳
    裁判官 宮  坂  昌  利

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