弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 弁護人牧野良三、同大竹武七郎の上告趣意第一点について。
 所論各証人に対する検察官の面前調書の証拠調が、これら各証人を尋問した公判
期日の後の公判期日で行われたからといつて憲法三七条二項の保障する被告人らの
反対尋問権を奪つたことにならないことは既に当裁判所大法廷判例の趣旨とすると
ころである(昭和二四年(つ)九三号同二五年三月六日・刑事判例集四巻三号三〇
八頁)。しかも、本件における主要な争点たる金銭供与の趣旨、検察官に対する供
述の任意性の有無については、既に先の証人尋問に際し、反対尋問権の行使の機会
が与えられているに止まらず、記録に徴すると充分に反対尋問が行われているので
ある。また証拠調に当つて当事者に異議があつたからといつてその意見を聴いた上
で決定をし、適法に証拠調をした以上、証拠調手続が違法となるの理はなく、更に
第一審裁判所がこれら証人の再尋問の請求を却下したからといつて先に適法になさ
れた証拠調が遡つて不適法になる理由もない。所論は採用できない(昭和二七年(
あ)六七〇四号同二九年五月一一日第三小法廷判決参照)。
 同第二点について。
 刑訴三二一条一項二号は、伝聞証拠排斥に関する同三二〇条の例外規定の一つで
あつて、このような供述調書を証拠とする必要性とその証拠について反対尋問を経
ないでも充分の信用性ある情況の存在をその理由とするものである。そして証人が
検察官の面前調書と異つた供述をしたことによりその必要性は充たされるし、また
必ずしも外部的な特別の事情でなくても、その供述の内容自体によつてそれが信用
性ある情況の存在を推知せしめる事由となると解すべきものである。このことは既
に当裁判所再三の判例の趣旨とするところであり(昭和二六年(あ)一一一一号同
年一一月一五日第一小法廷判決・刑集五巻一二号二三九三頁)、原判決の判断もこ
れと同趣旨に出るものであるから、原判決には何ら理由の不備又は判断の遺脱なく、
所論は理由がない。
 同第三点について。
 所論は採証法則違反、経験則違反を主張するが、事実審裁判所の裁量に属する証
拠の取捨選択を争い事実誤認を主張するに帰する。
 同第四点について。
 量刑不当を主張するに止まる。また全記録を調べても本件について刑訴四一一条
を適用すべきものとは認められない。
 よつて同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
  昭和三〇年一月一一日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    小   朴   俊   三
            裁判官    本   村   善 太 郎

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