弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件抗告を棄却する。
         理    由
 本件抗告理由の要旨は
 抗告人は昭和二六年一日三〇日横浜地方裁判所において銃砲等所持禁止令違反被
告事件につき「法定の除外事由なく昭和二五年九月二一日頃鎌倉市ab番地の自宅
でロイヤル自動拳銃一挺及び同案砲三三発を所持した」旨認定されて懲役六月に処
する旨の判決をうけ、控訴及び上告の申立をしたところ何れも棄却され、昭和二八
年五月一九日右第一審判決は確定するに至つたのである。
 しかし乍ら抗告人は右犯罪の真犯人ではなく、真実は内縁の妻Aの犯行にかかる
ものである。今回同人の自供書及びその間の真相を知るB、C各作成名義の書面
(証明書)を入手し得たので、原裁判所に対し再審請求の申立を為したが、原裁判
所は右自供書及証明書は刑事訴訟法第四三五条第六号にいう無罪若しくは免訴を言
渡し又は原判決において認めた罪より軽い罪を認めるべき「明らかな証拠を」「あ
らたに発見されたもの」とすることはできないとの理由で本件請求は理由のないも
のとしてこれを棄却したのであるが、これは証拠能力と証拠価値とを混同したもの
であり、又「あらたに発見されたもの」の意義を誤解したものである。人違を理由
に再審請求のあつたとき相当の証拠と理由が拳示されている限り煩を厭わず再審を
開始してその審理の結果によつて請求の当否を判断すべきものであつて、単に訴訟
記録の検討のみによつて軽々に再審開始自体を退けるべきものではない。何れにし
ても原決定は失当であるから原決定を取り消し、更に相当の裁判を求める為本件即
時抗告に及ぶというにある。
 よつて本件再審請求事件記録及び抗告人に対する銃砲等所持禁止令違反被告事件
記録によれば、抗告人が所論の如き判決を受け該判決が確定していること及び所論
の理由で再審の請求を為したところ、所論の如き理由で請求棄却の決定をうけたも
のであることを認めるに十分である。そこですすんで本件抗告の当否につき按ずる
に、所論の如く、相当の証拠と理由が挙示されて再審請求が為された場合即ち刑事
訴訟法第四三五条第六号の要件が具備されている限り再審を開始すべきものである
ことはいうまでもないところである。
 <要旨>而して同条に所謂明らかな証拠とは証拠能力さえあればよいので証拠価値
の有無を問はないものとは解することはできない。証拠能力は勿論一応証拠
価値をも有するものと認められるものであることを必要とするものと解する。
 そこで、Aの自供書、B、Cの各証明書を検討するのに、何れも作成名義人によ
つて任意に作成されたものと認めうるけれども、Aは抗告人の内縁の妻であり、そ
の自供書には作成年月日が記載されていないので果して何時作成されたものか自供
書自体によつてはこれを知るに由ないものであるが、抗告人作成名義の昭和二八年
五月一三目附書面の記載及びB、Cの証明書の作成年月日から考察すれば、その作
成されたのは右五月一三日頃と認められ、本件再審請求書が原裁判所に提出された
のは同年同月二〇日であつて本件抗告人の犯行日時は昭和二五年九月二一日頃とい
うのであるから、Aが本件拳銃は自己が所持していたもので抗告人が所持していた
ものでない旨自供した時は最早その犯罪の公訴時効が近く完成しようとしている際
であることが明かである。
 しかのみならず女性である同人が自供書記載のような理由ならBの手から拳銃を
取り上げ一時預つて置くというのなら格別、買受けるということは誠に理解に苦し
むところである。
 要するに自供書記載の事実はその記載自体から見ても又右銃砲等所持禁止令違反
被告事件の一件記録に徴してもAを取り調べるまでもなく到底信用するに足らない
ものと認められる。又Bは抗告人の共同被告人、CはAの当時使用人であり、その
証明書はその作成の年月日(上告棄却の判決言渡後である)から考えて結局抗告人
の再審請求に符合するように作成されたものと認められ、右被告事件の記録に徴し
て全く信用するに足らないものである。しからば右各証拠は所謂明らかな証拠と認
めることのできないものである。
 又右自供書も証明書も右上告棄却の判決が言渡された後に作成されたものではあ
るが、Aは前記の如く抗告人の内縁の妻であつて、右被告事件の審理中抗告人と同
居していたものであり、Bは共同被告人で抗告人と共に審理されていたものであ
る。又CはAの使用人として当時抗告人と同居していたものであることが窺える。
しからば抗告人においてこれらの証拠の存在を充分認識していたもので、何時でも
証拠(証人)として公判廷に顕出し取調を請求し得たものであるから所謂あらたに
発見した証拠とは認め難い。
 何れにしても右自供書、証明書は刑事訴訟法第四三五条第六号所定の要件を具備
した証拠とは認められず、他に右所定の要件を具備した証拠は存在せず、且つ同条
その他各号の要件をも具備しない本件再審請求を理由のないものとして棄却した原
決定はまことに相当である。
 従つて本件抗告は理由のないものであるから刑事訴訟法第四二六条第一項に則り
主文のとおり決定する。
 (裁判長判事 山田要治 判事 石井麻佐雄 判事 石井文治)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛