弁護士法人ITJ法律事務所

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主文
1被告らは,連帯して,原告A及び原告Bに対し,それぞれ2297万3
544円及び内金2256万0982円に対する平成17年5月22日か
ら支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
2被告らは,連帯して,原告C及び原告Dに対し,それぞれ3031万3
381円及び内金3011万4066円に対する平成17年5月22日か
ら支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
3原告らの被告らに対するそのほかの請求をいずれも棄却する。
4訴訟費用は,その4分の3を被告らの,その4分の1を原告らの負担と
する。
5この判決は,第1項及び第2項に限り,仮に執行することができる。
事実
第1当事者の求めた裁判
1請求の趣旨
(1)被告らは,連帯して,原告A及び原告Bに対し,それぞれ3149
万7995円及び内金3108万1323円に対する平成17年5月2
2日から支払済みまで年5パーセントの割合による各金員を支払え。
(2)被告らは,連帯して,原告C及び原告Dに対し,それぞれ3883
万3905円及び内金3863万4590円に対する平成17年5月2
2日から支払済みまで年5パーセントの割合による各金員を支払え。
(3)訴訟費用は被告らの連帯負担とする。
(4)仮執行宣言
2請求の趣旨に対する被告Eの答弁
(1)原告らの請求をいずれも棄却する。
(2)訴訟費用は原告らの負担とする。
第2当事者の主張
1請求原因
(1)本件事故の発生
F,Gは,以下の交通事故(以下「本件事故」という)に遭った。。
ア日時平成17年5月22日午前4時14分ころ
イ場所多賀城市HI丁目J番K号の先にある信号機により交
通整理が行われているT字交差点(以下「本件交差点」
という)。
ウ加害車両被告Lが運転し,被告Eが同乗していた普通貨物自動
車(宮城○○○○○○○)
エ事故態様被告Lは,被告Eと飲酒し,アルコールの影響により
正常な運転が困難な状態で,前記日時ころ,加害車両を
,,運転し対面信号が赤色を表示しているのを見落として
時速約60キロメートルで,本件交差点に進入し,本件
交差点の出口に設けられた横断歩道の手前で停止してい
たMが運転する車両に加害車両を衝突させ,さらに,歩
行者用信号機の青色表示に従ってこの横断歩道を横断
中,あるいはこの横断歩道の手前にいたF,Gに,加害
車両又はMが運転する車両を衝突させて,傷害を負わせ
た。
オ傷害結果Fは,頚椎骨骨折などの傷害を負い,その場で即死し
た。Gは,頭蓋底骨折などの傷害を負い,同日午前5時
34分ころ,搬送先の病院で死亡した。
(2)責任原因
ア被告Lは,アルコールの影響により正常な運転が困難な状態で,加
害車両を運転し,赤信号を見落として進入した本件交差点で,本件事
故を引き起こし,F,Gを死亡させた。被告Lには,民法709条に
基づいて,この事故によりF,G,原告らに生じた損害を賠償する責
任がある。
イ(ア)被告Eは,被告Lと暴走族の先輩,後輩の関係であった。
本件事故の前にも,被告Lが運転する車両に同乗して,飲食店に
行き,そこで被告Lが飲酒していることを分かった上で,その運転
する車両で,自宅に送ってもらうことが何回かあった。
(イ)被告Eは,平成17年5月21日(本件事故の前日)も,被告
Lが運転する加害車両に同乗して,居酒屋,パブ,クラブを回り,
同日の午後9時ころから同月22日の午前3時30分ころまで,ふ
たりで飲酒した。
被告Eは,これらの店で,被告Lの飲酒を制止していない。被告
Lが加害車両を運転してこれらの店に行くとき,飲酒していること
を分かっていたのに,運転を制止していない。
(ウ)被告Eは,同日午前3時47分ころ,被告Lに対し,多賀城市
内にある自宅に送るよう頼んで,仙台市N区O町内に駐車していた
加害車両を運転させた。
加害車両を運転していた被告Lは,同日午前4時14分ころ,本
件事故を引き起こした。
(エ)このような被告Eの行為は,被告Lの行為と密接に関連し,本
件事故の発生について,被告Lの行為と共同して原因を与えたもの
というべきであるから,被告Eには,民法709条,719条1項
前段に基づいて,この事故によりF,G,原告らに生じた損害を賠
償する責任がある。
(3)相続
原告A及び原告BはFの,原告C及び原告DはGのそれぞれ両親であ
る。
(4)損害
F,原告A及び原告Bは別紙1記載の,G,原告C及び原告Dは別紙
2記載の損害を被った。
(5)よって,原告らは,被告らに対し,民法709条,719条1項に
基づいて,
①原告A及び原告Bについては,それぞれ3149万7995円及び
内金3108万1323円に対する平成17年5月22日から支払済
みまで民法で定める年5パーセントの割合による遅延損害金
②原告C及び原告Dについては,それぞれ3883万3905円及び
内金3863万4590円に対する平成17年5月22日から支払済
みまで民法で定める年5パーセントの割合による遅延損害金
の連帯支払を求める。
2請求原因に対する認否
(被告L)
争うことを明らかにしない。
(被告E)
(1)請求原因記載(1)の事実のうち,エの事実は知らない。そのほかの事
実はいずれも認める。
(2)同記載(2)イ(ア)ないし(ウ)の各事実のうち,被告Eが自宅に送るよ
う頼んだ事実は否認する。そのほかの事実はいずれも認める。
被告Eが原告らに対して損害賠償責任を負うこと自体は争わない。
(3)同記載(3)の事実は認める。
(4)同記載(4)の主張は争う。
原告らが主張する葬儀関連費用,逸失利益,慰謝料,弁護士費用は過
大である。
また,被告Eは,自宅に送るよう頼んでいないし,本件事故当時,加
害車両で睡眠をしていただけであるから,その悪質さは被告Lと比べて
さほど高いとは言えない。負担すべき慰謝料は被告Lと同額とされるべ
きではない。
理由
第1被告Lに対する請求について
被告Lは,請求原因事実を争うことを明らかにしないので,これらの事
実を自白したものとみなす。
したがって,被告Lには,原告らに対し,民法709条に基づいて,本
件事故により生じた損害(その額は第2で判断する)を賠償する責任が。
ある。
第2被告Eに対する請求
1関係証拠(甲1∼3〔枝番を含む)によると,請求原因事実記載(1)。〕
エの事実が認められる。同記載(1)のほかの事実はいずれも争いがない。
2同記載(2)イ(ア)ないし(ウ)の各事実のうち,被告Eが自宅に送るよう
頼んだ事実のほかは,いずれも争いがなく,被告Eが原告らに対して損害
賠償責任を負うこと自体は争っていない。
争いがない事実のほか,関係証拠(甲3,8)によると,被告Lと被告
Eは,加害車両で乗り付けて,平成17年5月21日午後9時ころから午
後10時ころまで,多賀城市内にある居酒屋で飲酒した後,やはり加害車
両を乗り付けて,同月22日午前3時30分ころまで仙台市N区内にある
パブ,クラブで飲酒していた。
被告Eは,このクラブを出るときに「頼むから」と告げている。これ。
までも,ふたりで飲酒した後,被告Lが運転する車両で,自宅に送っても
らうことが何回かあった。この日,被告Eは,多賀城市内から仙台市内に
移動してから,最後に飲んでいたクラブを出るまでの間,加害車両をどう
,,。するのかどうやって帰宅するかについてはっきりと確認もしていない
そうすると,はっきりとしたやり取りまではなかったが,被告Eは,最後
は飲酒した被告Lに加害車両で送ってもらうつもりで,加害車両に同乗し
て居酒屋などに行き,ふたりで飲酒し,実際に,自宅に送ってもらうよう
頼んで,運転をさせたとみるのが相当である。
そして,被告Eは,この間,被告Lに対し,飲酒をすることや運転をす
ることを制止していない。もっとも,この間,被告Lが泥酔したり,眠そ
うにしている様子とは感じていなかった。しかし,自分より被告Lは酒に
強いと思っていたが,吐いたり,眠り込んでいる自分と同じペースで飲ん
でいたと感じていた。それまで,ふたりで飲酒していたとき,この日のよ
うに6時間以上も飲み続けてから運転を始めたこともなかった。
このように,被告Eは,被告Lが飲酒運転する加害車両に同乗して運行
の利益を受けるつもりで,その運転や飲酒を制止することなく,6時間以
上もふたりで飲酒を続け,最後に飲んでいたクラブを出た時点で,相当量
の飲酒をしていることを分かっていながら,運転を制止するどころか,自
宅に送ってもらうよう頼んで,被告Lに加害車両の運転をさせた。その結
果,被告Lは,アルコールの影響により正常な運転が困難な状態で,加害
車両を運転し,本件事故を引き起こした。
そうすると,被告Eは,少なくとも,被告Lが引き起こした本件事故に
よるF,Gに対する加害行為を援助,助長したことは明らかである。被告
Eには,自分でも認めているとおり,原告らに対し,民法709条,71
9条2項に基づいて,被告Lと連帯して,本件事故により生じた損害を賠
償する責任がある。
3原告らに対して賠償しなければならない損害額
(1)治療費Gについて8万9787円
関係証拠(甲7の2の1・2)によると,Gの治療費として,この金
額がかかったことが認められる。
(2)逸失利益各5332万8131円
(,,),,,,関係証拠甲3甲5の12によるとFGは本件事故当時
いずれも15歳の女子高校生であり,67歳まで就労して収入を得られ
たはずなのに,本件事故により死亡したことで,得ることができなくな
った。
その金額は,以下の計算で算出された金額とみるのが相当である。
485万4000円(賃金センサス平成16年第1巻第1表産業計全
労働者の年収額)×(1−0.3〔生活費控除割合)×15.694〕
9(67歳までの就労可能期間に対応するライプニッツ係数)=533
2万8131円
(3)死亡慰謝料各2500万0000円
ア本件事故は,被告Lが,アルコールの影響により正常な運転が困難
な状態で,加害車両を運転し,赤信号を見落として進入した本件交差
点で引き起こされたものである。青信号に従って横断歩道を横断中,
あるいはこの横断歩道の手前にいたF,Gには何の落ち度もない。そ
,,の事故態様がどれだけ悪質でその結果がどれだけ重大であったかは
被告Lが,本件事故に関し,危険運転致死傷罪で,法定刑の上限であ
る懲役20年の有罪判決を宣告されたことを挙げるまでもなく明らか
である。F,Gは,本件事故当時,いずれも将来のある15歳の女子
,,,高校生でありこのような事故に遭い死亡するまでに味わった苦痛
無念さはとても短い言葉では表現できない。
そうすると,被告らが,本件訴訟で,本件事故のことを反省し,原
告らに謝罪していることも考慮に入れても,F,Gの被った精神的苦
痛を慰謝するための金銭は,各2500万円とみるのが相当である。
イ被告Eは,このことについて「自宅に送るよう頼んでいないし,,
本件事故当時,加害車両で睡眠をしていただけであるから,その悪質
さは被告Lと比べてさほど高いとは言えない。負担すべき慰謝料は被
告Lと同額とされるべきではない」と主張する。。
しかし,共同不法行為者の被害者に対する損害賠償債務は不真正連
帯債務と解される。このことは幇助の場合も同じである。この主張で
挙げられる事情は,被告Lと被告Eとの間での求償がされるときに考
慮され得るのにとどまり,被害者である原告らに対する責任を免れる
根拠にはならない。
(4)相続
原告A及び原告BはFの,原告C及び原告DはGのそれぞれ両親であ
ることは争いがない。
したがって,原告A及び原告BはFの被告らに対する損害賠償請求権
の2分の1ずつ3916万4065円(1円未満切捨て,以下も同じで
ある)を相続した。同じく,原告C及び原告DはGの被告らに対する。
損害賠償請求権の2分の1ずつ3920万8959円を相続した。
(5)葬儀関連費用各75万0000円
関係証拠(甲6の1の1∼8,甲6の2の2∼8)によると,原告A
及び原告BはFの葬儀関連費用として398万3235円,原告C及び
原告DはGの葬儀関連費用として188万円の支出をしたことが認めら
れ,本件事故により生じたものとして被告らに負担させるべき費用は各
75万円とみるのが相当である。
(6)固有の慰謝料各250万0000円
本件事故の態様は前記(3)で挙げたとおりである。原告らが,大切に
育ててきたF,Gを,わずか15歳で,突然,失ってしまったことで,
精神的な苦痛を被ったことは容易に推察されるし,被告らに対して厳し
い感情を抱くのももっともである。
そうすると,前記のとおり,被告らが,本件訴訟で,本件事故のこと
を反省し,原告らに謝罪していることも考慮に入れても,原告らが被っ
た精神的苦痛を慰謝するための金銭は,各250万円とみるのが相当で
ある。
なお,慰謝料の負担について,被告Eの主張が採用できないことは前
記判断のとおりである。
(7)確定遅延損害金
原告A及び原告Bについて各41万2562円
原告C及び原告Dについて各19万9315円
関係証拠(甲7の1の1・2)によると,原告A及び原告Bは,平成
(「」。)17年9月7日に自動車損害賠償責任保険以下自賠責保険という
から保険金3000万円,同年12月5日に日本興亜損害保険株式会社
から人身傷害保険金1390万6167円(臨時費用10万円を除いた
もの)の支払を受けた。
同じく,関係証拠(甲7の2の1・2)によると,原告C及び原告D
は,自賠責保険から同年8月26日に保険金3000万3300円,平
成18年2月2日に保険金8万6487円の支払を受けた。
不法行為に基づく損害賠償債務は,損害の発生と同時に,何らの催告
を要しないで遅滞に陥るものであって,後から自賠責保険などから元本
債務に相当する損害のてん補があったとしても,そのてん補された損害
金の支払債務に対する損害発生日である事故日から支払日までの遅延損
害金は既に発生しているから,以下の計算のとおり,支払金額に対する
事故日から支払日までの間の民法で定める年5パーセントの割合による
(,,遅延損害金が生じていることが認められるなお原告C及び原告Dは
平成17年8月26日に支払われた保険金のうち3000万円に相当す
る部分の確定遅延損害金だけを損害として主張しているので,そのほか
の部分については判断しない。。)
(原告A及び原告B)
①自賠責保険関係
3000万0000円×0.05(法定利率)×109日(事故日
から支払日までの日数)÷365日=44万7945円
②人身傷害保険金関係
1390万6167円×0.05(法定利率)×198日(事故日
から支払日までの日数)÷365日=37万7180円
(原告C及び原告D)
3000万0000円×0.05(法定利率)×97日(事故日から支
払日までの日数)÷365日=39万8630円
(8)前記までの小計額
原告A及び原告Bについて各4282万6627円
原告C及び原告Dについて各4265万8274円
(,,。)(9)損害のてん補てん補の日額は前記(7)で認定したとおりである
原告A及び原告Bについて各2195万3083円
(てん補後の金額・各2087万3544円)
原告C及び原告Dについて各1504万4893円
(てん補後の金額・各2761万3381円)
(10)弁護士費用
原告A及び原告Bについて各210万0000円
原告C及び原告Dについて各270万0000円
本件訴訟での認容額,訴訟の経過からすると,本件事故により生じた
ものとして被告らに負担させるべき費用は前記金額とみるのが相当で
ある。
(11)合計額
原告A及び原告Bについて各2297万3544円
原告C及び原告Dについて各3031万3381円
第3結論
以上によれば,原告A及び原告Bの本件請求はそれぞれ2297万35
44円と確定遅延損害金を除いた2256万0982円に対する本件事故
日である平成17年5月22日から支払済みまで民法で定める年5パーセ
ントの割合による遅延損害金の連帯支払を求める部分は理由があり,その
ほかの部分は理由がない。
原告C及び原告Dの本件請求はそれぞれ3031万3381円と確定遅
延損害金を除いた3011万4066円に対する本件事故日である平成1
7年5月22日から支払済みまで民法で定める年5パーセントの割合によ
る遅延損害金の連帯支払を求める部分は理由があり,そのほかの部分は理
由がない。
よって,訴訟費用の負担について民事訴訟法65条1項ただし書,64
条,61条を,仮執行の宣言について同法259条1項を適用して(相当
ではないので,訴訟費用の負担を求める部分には仮執行の宣言を付さな
い,主文のとおり判決する。。)
仙台地方裁判所第1民事部
裁判官近藤幸康

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