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平成22年9月29日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成21年(ワ)第46045号損害賠償請求事件
口頭弁論終結日平成22年6月2日
判決
埼玉県南埼玉郡<以下略>
原告有限会社中央ロジスティクス・
エンジニアリング
同訴訟代理人弁護士土釜惟次
佐々木良行
福岡県古賀市<以下略>
被告西部電機株式会社
同訴訟代理人弁護士松尾和子
佐竹勝一
主文
1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
被告は,原告に対し,2887万5000円及びこれに対する平成22年6
月3日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要等
1本件は,原告が特許出願した発明(後記2(2)第1条(1)記載の特許出願に係
る発明。以下,「本願発明A」∼「本願発明D6」といい,一括して「本願発
明」ともいう。)についての実施許諾等を内容とするライセンス契約(以下
「本件契約」という。)に基づき,原告が,被告に対し,特許使用料2152
万5000円(平成14年6月分から平成21年3月分まで),技術援助料4
72万5000円(平成20年1月分から平成21年3月分まで)の合計26
25万円及びこれに対する弁済期の後である平成22年6月3日(同月2日付
け訴え変更申立書の送達の日の翌日)から支払済みまで商事法定利率年6分の
割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,上記債務の不履行(履行遅
滞)による損害賠償請求として,弁護士費用262万5000円及びこれに対
する弁済期の後である平成22年6月3日から支払済みまで商事法定利率年6
分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
2前提となる事実(証拠等を掲記した事実を除き,当事者間に争いがない。)
(1)当事者
ア原告は,物流システムの研究開発及び物流計画,機能設計に関するコン
サルティング業務を営む有限会社である。
イ被告は,産業機械,工作機械の製造及び販売等を営む株式会社である。
(2)原告と被告は,平成14年3月20日,下記内容(要旨を抜粋。表現は原
則として契約書〔甲1〕の記載に従い,当事者の表記及び用字は本判決のも
のに改めた。)の「CLEディレクトソウイングシステム特許ライセンス契
約」(本件契約)を締結した。

第1条原告が被告に供与する技術内容について
(1)に示す出願特許に基づく一般的通常実施権を許諾する。
A特願2000−391464ピッキング装置(面単位仕分け
移載装置)
B1特願2000−382780ピッキング方法及び装置(面・
ケース取出し保管区分)(判決注:特許第3862206号,平
成18年10月6日設定登録)
B2特願2001−002247ピッキング方法及び装置(ケー
ス・バラ保管部ピッキング)(判決注:平成19年11月20日
拒絶査定,その後確定)
C1特願2001−002254ピッキング装置(自動倉庫側面
入出庫コンベヤ配置)(判決注:特許第4296254号,平成
21年4月24日設定登録)
C2特願2001−002259ピッキング方法及びピッキング
装置(ハーフパレット荷ピッキング)(判決注:特許第4370
376号,平成21年9月11日設定登録)
C3特願2001−303176ピッキング自動倉庫(ハーフパ
レット出荷ピッキング)(判決注:特許第4370377号,平
成21年9月11日設定登録)
D1特願2001−218692仕分け方法及び装置(分岐先余
剰品戻し工程)(判決注:特許第3945619号,平成19年
4月20日設定登録)
D2特願2001−218713検品保証システム(検品保証シ
ステム)(判決注:特許第3945620号,平成19年4月2
0日設定登録)
D3特願2001−400319物品の仕分け方法及び装置(複
数間口表示投入選択)(判決注:特許第3867958号,平成
18年10月20日設定登録)
D4特願2001−400339物品の仕分け方法及び装置(特
定仕分け基準選択)(判決注:平成19年2月16日拒絶査定,
その後確定)
D5特願2001−400354物品の仕分け方法及び装置(ケ
ース品交互分配欠品ゼロ化)(判決注:平成19年3月6日拒絶
査定,その後確定)
D6特願2002−040744物品の仕分け方法及び装置(期
限付き物品の発見仕分け処理)(判決注:平成19年3月20日
拒絶査定,その後確定)
(2)上記関連技術ノウハウ及びレイアウト図等の情報提供
(3)被告の立案図及びシステムの評価並びに講習援助
(4)発表協力
第2条被告が原告に支払う対価・契約期間について
(1)技術援助料として月額30万円(別途消費税)
(2)実施料として被告の販売価格の4%(別途消費税)
(3)契約期間は平成14年4月から1年間とする。期間終了3か月前ま
でに原告・被告いずれかから相手方に対し書面により本件契約を解約
する旨の通知がない場合は,1年ごとに契約が更新される。満5年を
経過した場合は,実施料を販売価格の3%(別途消費税)とする。
(4)被告は,別途定める規定により,仕分け通過実績1ケース当たり1
円等,別途定める特許使用料(以下「特許使用料」という。)を支払
う。
第3条支払方法について
(1)技術援助料は,月初めに原告の指定する銀行口座に現金にて振り込
む。
(2)被告が支払う実施料については,被告は,被告より設備を購入利用
する者(以下「ユーザー」という。)との契約締結をして,ユーザー
から支払を受けた後20日以内に原告の指定する銀行口座に現金にて
振り込む。
(3)特許使用料は,毎月末締め翌月末までに原告の指定する銀行口座に
現金にて振り込む。
(4)被告の契約の事情が途中変更された場合でも,いったん振り込まれ
た料金については,原告は,これを返還しない。
第5条制御コンピュータ等の販売禁止について
(1)被告は,第1条(1)出願特許にかかわるソフトウェアを組み込んだ
制御コンピュータ及び当該ソフトウェア(以下「制御コンピュータ
等」という。)をユーザーに販売してはならない。
(2)被告とユーザーとの契約は,すべてコンピュータ使用契約の形態で
行うものとし,被告は,被告のユーザーより毎月使用料金の支払を受
けるものとする。
(3)ユーザーから被告に支払われる制御コンピュータ等の使用料金には,
コンピュータ本体,ソフトウェア,メンテナンス料金,特許使用料
(仕分け通過実績1ケース当たり1円等,別途定める。)を含める。
特許使用料については,被告は,原告に毎月末締め翌月末までに支払
うものとする。
(4)特許契約期間が終了していても,被告は,特許存続中使用中の制御
コンピュータ等については,特許使用料を原告に支払うものとする。
(5)原告の指定があった場合,被告は,CLE商標を表示画面に表示し
なければならない。
第6条実施報告について
(1)被告は,毎月末日までの仕分け通過ハンドリング数量,販売数量,
販売価格等,特許発明の実施状況を明記した報告書を翌月20日まで
に原告に提出しなければならない。
(2)被告は,前項の報告書に記載すべき事項を正確かつ具体的に記載し
た記録を作成し,原告の請求があったときは,その記録並びに証拠書
類の閲覧に応じ,又は原告が被告の工場に臨み実施状況を調査するこ
とを許容しなければならない。
(3)前項の報告書に記載すべき事項の詳細については,原告,被告協議
の上決定する。
(3)被告は,トーヨーカネツ株式会社(通称「TKK」。以下「TKK」とい
う。)に対し,本願発明D1∼D5に係るソフトウェアを組み込んだ「ディ
レクトソウイングシステム」(下流仕分けシステム〈通称TC〉。以下「本
件設備」という。)を代金9100万円(消費税込みで9555万円)で販
売した。
TKKは,その後,本件設備を東銀リース株式会社(以下「東銀リース」
という。)に販売し,東銀リースは,株式会社東北丸和サービス(株式会社
丸和運輸機関〔以下「丸和運輸」という。〕の子会社。以下「東北丸和」と
いう。)に本件設備をリースした。
東北丸和は,遅くとも平成14年6月までに,菅文物流センター(<住所
省略>所在)において,本件設備の使用を開始した。(甲2,乙15)
(4)被告は,原告に対し,本件設備をTKKに販売したことによる「実施料」
(本件契約2条(2))として,平成14年9月10日,上記販売価格(消費
税込みで9555万円)の4%に相当する金員(382万2000円)を支
払った。(乙7)
(5)本件契約は,遅くとも平成21年3月までに(時期については当事者間に
争いがある。)終了した。
3争点
(1)被告は,原告に対し,本件契約に基づき,平成14年6月分から平成21
年3月分までの特許使用料として2152万5000円を支払う義務がある
か。
(2)被告は,原告に対し,本件契約に基づき,平成20年1月分から平成21
年3月分までの技術援助料として472万5000円を支払う義務があるか。
(3)被告は,原告に対し,上記(1),(2)の債務の不履行に基づき,原告の弁護
士費用を賠償する責任があるか。
4争点に関する当事者の主張
(1)争点(1)(被告は,原告に対し,本件契約に基づき,平成14年6月分か
ら平成21年3月分までの特許使用料として2152万5000円を支払う
義務があるか)について
ア原告
(ア)本件契約2条(4)によれば,被告は,本件システムをユーザーに使用
させる場合,原告に対し,別途定める規定(特許使用料基準表)により,
特許使用料を支払う義務がある。
同基準表によれば,本件システムの使用料は,ユーザーの使用実績
(通過ハンドリング数量)に応じて算定されるところ,本件においては,
東北丸和の使用実績について被告から報告がなく,原告において東北丸
和の通過ハンドリング数量を把握することができないから,同基準表③
の規定(通過ハンドリング数量が不明確な場合や把握できない場合は,
上限使用料を支払うものとする旨の規定)により,上限使用料(同基準
表によれば,消費税込みで月額26万2500円)が基準とされる。
東北丸和が本件システムを使用した期間は,平成14年6月から平成
21年3月まで(82か月)であるから,この間の特許使用料は,合計
2152万5000円(26万2500円/月×82月)となる。
よって,原告は,被告に対し,本件契約に基づく特許使用料として,
2152万5000円及びこれに対する弁済期の経過した後である平成
22年6月3日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延
損害金の支払を求める。
(イ)実施料の支払は本件契約2条(2)に基づくものであるから,原告が被
告から実施料の支払を受けたからといって,同条(4)の特許使用料を放
棄したなどということはできない。また,原告の特許発明を用いること
によって製造メーカー(被告)と物流業者(東北丸和)のそれぞれが利
益を得ているのであるから,原告が実施料と特許使用料の支払を受けた
としても,それぞれの利益の対価を得ているにすぎず,その使用の対価
を二重に受領しているわけではない。
(ウ)東北丸和が平成17年5月21日以降,本件設備を使用していないと
の事実は,否認する。
イ被告
(ア)本件契約は,本件設備の売買の終了後,一般ユーザー(丸和を除く)
向け実施用として締結されたもので,本件設備の売買とは無関係のもの
であり,本件設備の売買には適用されない。
原告代表者も,東北丸和向けの本件設備に関しては,ソフトウェア部
分を含む全体を販売し,被告ではなくユーザーから特許使用料を回収す
ることを想定していたことから,本件契約締結当時,被告に対し,「東
北丸和が特許使用料を支払うことになっているので,心配する必要はな
い。」などと述べており,被告も,東北丸和向けの本件設備について,
ソフトウェア部分の販売が禁止されているとか,被告がユーザーから特
許使用料を回収して,これを原告に支払うなどの話は全く聞いておらず,
原告と被告との間においては,本件設備について,被告が原告に対し,
特許使用料を支払う旨の合意はされていなかった。
(イ)その後,原告は,上記(ア)の経緯にもかかわらず,被告がTKKにソ
フトウェア部分(制御コンピュータ等)を販売したことが本件契約に違
反するのではないかと問題としてきた。被告は,原告との関係を考慮し,
円満解決のため,できるだけ本件契約に沿う形で対処することとし,本
件設備に限り「制御コンピュータ等」の販売を行ったことを認めてもら
う代わりに,原告に対し,実施料として,ソフトウェア部分を含む販売
価格(消費税込みで9555万円)の4%に当たる金員382万200
0円を支払うことによって解決することとした。
被告は,平成14年9月10日,上記実施料382万2000円の支
払を完了しており,これによって,被告は,本件設備に関し,丸和運輸
から特許使用料を徴収して,これを原告に支払う責任はなくなっている。
実施料に加え,全く同一の本件設備について,販売後の使用に応じて
特許使用料を支払うということは,本件契約の対象となる発明について,
二重にその使用の対価を支払うことを意味する。
(ウ)以上のとおり,被告は,原告に対し,特許使用料を支払う義務がない。
仮に,被告が特許使用料の支払義務を負うとしても,本件設備は平成
17年5月21日以降は東北丸和(ユーザー)によって使用されていな
いから,同日以降その支払義務は発生していない。
(2)争点(2)(被告は,原告に対し,本件契約に基づき,平成20年1月分か
ら平成21年3月分までの技術援助料として472万5000円を支払う義
務があるか)について
ア原告
(ア)本件契約2条(1)により,被告は,原告に対し,月額31万5000
円(消費税込み)の技術援助料を支払う義務がある。この技術援助料の
具体的な内容は特許維持費であり,使用実績に関係なく発生する性質の
ものである。
被告は,本件契約締結後平成19年12月まで,原告に対し技術援助
料を支払っていたが,平成20年1月以降その支払を停止した。
よって,原告は,被告に対し,本件契約に基づき,平成20年1月か
ら本件契約が終了した平成21年3月まで(15か月)の技術援助料と
して,472万5000円(31万5000円/月×15月)及びこれ
に対する弁済期の経過した後である平成22年6月3日から支払済みま
で商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める。
(イ)本件契約が平成19年3月末で終了したとする被告の主張は争う。
被告は,原告に対し,平成18年12月4日付けの文書(乙21)に
より,本件契約を平成19年3月をもって終了する旨の通知をしたが,
原告は,被告に対し,平成18年12月5日付けの文書(甲18)で2
年間の猶予を申し入れた。これを受けて,被告は,原告に対し,同月2
0日付けの文書(甲19)により,本件契約の更新を申し入れるととも
に,本件契約の終了時期が平成21年3月であることを確認したのであ
るから,平成19年3月末日をもって本件契約が終了したということは
できない。
イ被告
被告は,平成18年12月4日付けの文書(乙21)により,原告に対
し,平成19年3月をもって本件契約を終了する旨通知しているから,本
件契約は,本件契約2条(3)の規定により,平成19年3月をもって終了
した。
したがって,被告は,原告に対し,平成19年4月分以降の技術援助料
を支払う義務を負わない。被告は,平成19年4月から同年12月まで,
原告に対し,技術援助料(合計283万5000円)を支払っているが,
これはコンピュータの登録ミスにより誤って支払われたもので,本来,被
告に返還されるべきものである。
(3)争点(3)(被告は,原告に対し,上記(1),(2)の債務の不履行に基づき,
原告の弁護士費用を賠償する責任があるか)について
ア原告
被告が上記(1)の特許使用料(2152万5000円)及び上記(2)の技
術援助料(472万5000円)を任意に支払わない(債務不履行)ため,
原告は,本件訴訟の提起を余儀なくされた。
本件訴訟は特許に関するものであり,専門性が極めて高く,本人による
訴訟追行は極めて困難であるから,本件に関する弁護士費用は,被告によ
る債務不履行と相当因果関係のある損害である。その損害額は,上記(1)
の特許使用料及び上記(2)の技術援助料の合計金額(2625万円)の1
割を下回らない。
よって,原告は,被告に対し,債務不履行による損害賠償請求として,
262万5000円及びこれに対する弁済期の経過した後である平成22
年6月3日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金
の支払を求める。
イ被告
争う。
第3当裁判所の判断
1争点(1)(被告は,原告に対し,本件契約に基づき,平成14年6月分から
平成21年3月分までの特許使用料として2152万5000円を支払う義務
があるか)について
(1)証拠(各項に掲記)と弁論の全趣旨によれば,次の事実を認めることがで
きる。
ア原告は,平成13年1月10日,被告に対し,「ディレクトソウイング
システム」という名称の物流設備(ただし,本件設備とは異なるもの)に
ついて,ライセンス契約の締結を持ちかけ,契約の条件や範囲についての
希望を伝えた。
原告は,同契約において,本件契約の「特許使用料」に相当する「ユー
ザー利用料」を想定していたが(ただし,丸和運輸がユーザーとなる場合
については,「ユーザー利用料」の適用の対象から除くものとされた。),
被告は,市場調査をした上で,契約の内容とするか否かを検討すべきであ
ると述べるにとどまった。(乙1,30)
イ原告代表者のA(以下「A」という。)は,平成13年7月,株式会社
日本ロジスティクス研究所(丸和運輸の物流事業の一環として,物流セン
ター設備のエンジニアリング,設計業務を行うために設立された丸和運輸
の子会社。以下「JLI」という。)の代表取締役に就任し,同年8月8
日,その就任あいさつのため,被告(東京支店)を訪問した際,被告に対
し,丸和運輸向けのシステムについてライセンス契約を締結するよう勧誘
した。(甲39,乙4の1,乙14,17)
ウAは,平成13年9月28日,JLIの代表者として,丸和運輸の会議
室で開催された説明会において,東北丸和向けの本件設備に係るプロジェ
クト(KBプロジェクト)について,本件設備に必要な機能や仕様,設置
場所の概要や図面,見積り時に提出すべき書類や保証すべき事項等を記載
した説明資料を用いて説明を行った。同説明会には被告の担当者(B,C,
D)も出席していたが,Aから,本件設備に組み込まれるソフトウェアに
ついて販売を禁止するとか,ソフトウェア部分の特許使用料については別
途ユーザーに請求するなどの説明はなかった。(甲25,乙4の2,乙3
0)
エ被告は,平成13年10月22日及び同月30日,JLIに対し,上記
プロジェクトに係る見積書,仕様書を提出し,平成14年2月13日,丸
和運輸から,本件設備の売買に係る注文の内示を受けた。この際も,原告
から,本件設備に組み込まれるソフトウェアについて販売を禁止するとか,
ソフトウェア部分の特許使用料については別途ユーザーに請求するなどの
話はなかった。(甲25,乙23,30)
オ原告と被告は,平成14年3月20日,本件契約を締結した(甲1)。
カ被告は,平成14年3月28日,本件契約書に規定されている「特許使
用料」の取扱いについて,丸和運輸に確認したところ,丸和運輸は,同月
29日,TKK(本件設備の直接の買主となる者)を窓口として,被告に
対し,「(本件設備に係る)ライセンス使用料については,CLE(判決
注:原告)と西部電気㈱(判決注:被告)との間で請求関係が起きないよ
うに,当社(判決注:丸和運輸)とCLEとの間で解決にあたります。」
という回答をした。(乙12)
また,TKKは,同月29日,被告に対し,本件設備に係る注文書を発
行した。(甲3)
キ被告は,平成14年4月8日,原告に対し,TKKを直接の買主として,
本件設備を菅文物流センター(<住所省略>所在)に設置し,これを東北
丸和に使用させることなどについて報告をしたところ,原告は,被告がT
KKにソフトウェア部分(制御コンピュータ等)を販売したことが本件契
約に違反するのではないかと主張し,同月11日,被告に対し,①制御コ
ンピュータ販売禁止,②ユーザーとコンピュータ使用料の契約を行うこと,
③特許使用料の支払などを要求した。(乙5,6)
ク被告は,TKKに対し,本件設備を代金9100万円(消費税込みで9
555万円)で販売した。TKKは,その後,本件設備を東銀リースに販
売し,東銀リースは,東北丸和に本件設備をリースした。東北丸和は,遅
くとも平成14年6月までに,菅文物流センターにおいて,本件設備の使
用を開始した。(甲2,乙15)
ケ原告の上記キの要請に対し,被告は,原告との関係の継続を考慮し,円
満解決のためできるだけ本件契約に沿う形で対処することとし,平成14
年6月20日,上記クの本件設備について本件契約2条(2)の実施料を算
定するため,ソフトウェア部分とそれ以外の部分の価格を計算し,原告に
報告した。(乙15)
コ原告は,その後,被告に対し,本件設備に関する売買契約を本件契約に
沿うように修正するよう要求した。これを受けて,被告は,平成14年7
月16日作成の修正契約書案(乙24の2)を原告に提出したところ,原
告は,被告に対し,同月19日,同契約書案について,「当該システムの
制御ハードウェア及び制御ソフトウェアは,本来その譲渡が禁止されてい
るが,今回に限り,被告が設備機器,制御ハードウェア及び制御ソフトウ
ェアを含む全体の価格である金9100万円の4%を実施料として原権利
者(判決注:原告をいうものと認められる。)に対し支払うことを条件に,
原権利者は,本リース期間及び再リース期間に限り,その使用を許諾する
ものとする。」,「リース会社は,全体の価格である合計金9100万円
の4%及び特許使用料月額25万円を原権利者に対し,直接支払うものと
する。」などと記載したファクシミリ文書(乙24の1)を送信した。ま
た,原告は,同月23日,被告に対し,上記契約書案について,ファクシ
ミリ文書(乙25の1)により,「全体の販売価格である金9100万円
の4%」を支払う主体が被告であることを明らかにする旨の訂正をするよ
う申し入れた。(乙2の2)
被告は,原告の上記申入れを受けて,同月24日,修正契約書案(乙2
5の2)を作成した。同契約書案は,被告ではなくユーザーがリース会社
に特許使用料を支払い(2条②5項),被告がハード及びソフトを含む本
件設備の全体の販売価格の4%を原告に支払う旨を規定していた(1条
②)。
サ被告は,平成14年9月10日,原告に対し,ソフトウェア部分を含む
設備全体の金額を基に計算した実施料(382万2000円)を支払った。
(乙7)
シ被告は,その後,原告の要請を受け,丸和運輸に対し,特許使用料を原
告に対し支払うように働きかけたが,結局,丸和運輸に支払の意思がなく,
平成15年1月9日,原告に対し,その旨を報告した。(乙26)
原告は,同月19日,被告に対し,TKKが原告とライセンス契約を締
結するよう協力の要請をしたが,被告とTKKとの交渉もうまくいかなか
ったことから,被告は,同月30日,原告に対し,丸和運輸及びTKKの
いずれからも特許使用料の支払を受けることはできなかったことを報告し
た。(甲17,乙13)
(2)上記認定事実によれば,本件設備については,丸和運輸から平成14年2
月13日付けで注文の内示が出され,本件契約の締結前から売買契約締結の
ための交渉が進んでいたが,この売買契約においては,売買の対象から制御
コンピュータ部分を除くなどの限定が付されていたと認めることはできず,
また,丸和運輸ないし東北丸和がユーザーとして本件設備を利用する場合に
特許使用料が発生する旨の合意も認めることはできない。すなわち,本件設
備については,制御コンピュータ等の部分を含む全体について売買契約が締
結されたものと認められ,本件契約を適用することが予定されていた取引と
は認められない。
もっとも,その後,原告が,被告に対し,本件設備のうち制御コンピュー
タ等をTKKに販売したことが本件契約に違反しているなどと主張しだした
ことから,被告は,上記売買についても事後的に本件契約の規定と整合する
方向で解決すべく対応したことが認められるが,これについても,結局のと
ころ,原告において,本件設備のうち制御コンピュータ部分等の売買を認め
る代わりに,被告において,実施料として本件設備全体の販売価格(消費税
込みで9555万円)の4%の金員(382万2000円)を支払い,特許
使用料については,原告がリース会社ないしユーザーから支払を受けるとい
うことで解決する旨の合意がされ,被告は,その後上記実施料382万20
00円の支払をしていることが認められる。
以上のとおり,被告がTKKに販売した本件設備について本件契約が適用
されると認めることはできないから,原告の,本件契約に基づく特許使用料
の請求は,理由がない。
2争点(2)(被告は,原告に対し,本件契約に基づき,平成20年1月分から
平成21年3月分までの技術援助料として472万5000円を支払う義務が
あるか)について
(1)証拠(各項に掲記)と弁論の全趣旨によれば,次の事実を認めることがで
きる。
ア被告は,本件契約に基づく販売等の実績が上がらなかったことから,平
成18年12月4日,原告に対し,本件契約2条(3)の規定に基づき,本
件契約を平成19年3月をもって終了させる旨書面で通知した。(乙2
1)
イこれに対し,原告は,平成18年12月5日付け文書で,被告に対し,
本件契約の終了まであと2年間(平成21年3月まで)の猶予がほしいと
申し入れた。(甲18)
ウ被告は,原告の申入れを受けて,改めて検討した結果,原告に対し,平
成18年12月20日付け文書により,被告が提案する「新たな契約書」
に原告が合意できるのであれば,平成19年4月から2年間(平成21年
3月まで),本件契約を更新する旨回答した。(甲19)
エ原告は,被告に対し,平成18年12月24日付け文書で,被告の上記
提案は容認することができない旨回答するとともに,平成19年3月6日
付け文書で,本件契約終了に伴う清算金として4500万円の支払を求め
るなどしたため,原告と被告の交渉は決裂した。(乙27,29)
(2)本件契約2条(3)には,原告又は被告が本件契約の終了3か月前までに書
面で本件契約を解約する旨の通知をした場合には,契約期間の満了により本
件契約は終了することが規定されている。そして,上記(1)に認定したとお
り,被告は,平成18年12月4日付けの書面(乙21)で,原告に対し,
期間の満了(平成19年3月20日の経過)により本件契約を終了させる旨
通知し,その後,原告と被告との間で契約の更新に向けた協議が行わたもの
の,結局,その交渉は合意に至らなかったのであるから,本件契約は,上記
規定により平成19年3月20日の経過により終了したものと認められる。
この点,原告は,平成18年12月5日付け書面(甲18)により,本件
契約の終了時期について2年間の猶予(延長)を申し入れたところ,被告は,
同月20日付け文書(甲19)において「平成21年3月で本契約は終了い
たします」という返答をし,本件契約の終了時期が平成21年3月であるこ
とを確認したなどと主張するが,上記(1)ウ認定のとおり,「平成21年3
月で本契約は終了いたします」というのは,被告が提案する「新たな契約
書」に原告が合意した場合について言及したものであることは明らかであり,
結局,原告と被告との間で「新たな契約書」に関する合意は成立しなかった
のであるから,本件契約の期間が平成21年3月まで更新されたということ
はできない。
したがって,本件契約は平成19年3月20日の経過により終了したから,
被告は,平成20年1月分から平成21年3月分までの技術援助料(472
万5000円)を支払う義務はなく,原告の本件契約に基づく技術援助料の
請求は理由がない。
3争点(3)(被告は,原告に対し,上記(1),(2)の債務の不履行に基づき,原
告の弁護士費用を賠償する責任があるか)について
上記1,2に説示したとおり,被告に原告主張の債務不履行を認めることは
できないから,原告の債務不履行に基づく弁護士費用相当額の損害賠償請求も,
理由がないことが明らかである。加えて,原告の主張する特許使用料(平成1
4年6月分から平成21年3月分まで)及び技術援助料(平成20年1月分か
ら平成21年3月分まで)に係る債務はいずれも金銭債務であり,民法419
条によれば,金銭債務の不履行についてはその損害賠償の額は約定又は法定の
利率によるとされ,債務者はその損害の証明をすることを要しないとされてい
るが,その反面として,たとえそれ以上の損害が生じたことを立証しても,そ
の賠償を請求することはできないものというべきであるから,金銭債務の不履
行による損害賠償として弁護士費用相当額を請求することはできないというべ
きである(最高裁昭和48年10月11日第一小法廷判決・裁判集民事110
号231頁参照)。したがって,原告の上記請求は,この点においても失当と
いうほかない。
4結論
以上のとおり,原告の請求は,いずれも理由がないから,全部棄却すること
として,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官
岡本岳
裁判官
鈴木和典
裁判官
寺田利彦

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