弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決(ただし、本件公訴事実中、各商法違反の点につき控訴を棄却し
た部分を除く。)を破棄し、本件を東京高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 被告人Aの弁護人岸達也、同吉江知養の上告趣意について。
 所論第一点は、事実誤認、単なる法令違反の主張であり、同第二点中違憲をいう
点は、実質は単なる訴訟法違反の主張であり、同じく判例違反をいう点は、所論引
用の判例は本件と事案を異にし適切でないから、すべて適法な上告理由に当らない。
 検察官の上告趣意について。
 所論は、判例違反をいうが、所論引用の最高裁判例は、所論の点に関しなんらの
判断を示しておらず、同大審院判例は、本件とは異なる法律のもとに示された判断
であり、同東京高裁判例及び大阪高裁判例は、いわゆる「見せ金」により払込を仮
装して会社の設立の登記を申請しこれを完了するときは、公正証書原本不実記載罪
が成立する旨判示するにとどまり、かような場合にはいかなる登記事項に関し、公
正証書原本不実記載罪が成立するかの判断を示しているものではないから、所論引
用の各判例はすべて本件に不適切であつて、所論は適法な上告理由に当らない。
 論旨に鑑み、職権をもつて調査するに、本件公訴事実中公正証書原本不実記載、
同行使の点に関し、原判決及びその認容する第一審判決は、証拠により被告人らが
会社の発起人又は取締役と共謀の上、各会社の株金の払込が仮装のものであるにか
かわらずこれを秘し、その株式引受人による払込が完了し、それぞれ設立又は増資
をした旨の登記申請をなし、商業登記簿の原本に、右各会社の設立又は増資に関す
る記載をなさしめた事実を認定しながら、会社の設立又は増資の場合において、株
金が払込済であることは、昭和三二年法律第一四八号による商法の一部改正以後は
商業登記簿の登記事項から削除されているから、被告人らが前記のように株金の払
込が仮装であることを秘して会社の設立又は増資の登記申請をしても、公正証書原
本不実記載罪を構成するいわれはなく、従つてその行使罪も成立しないことは明ら
かであると判示して、この点につき被告人らに無罪の言渡をした。
 しかしながら、株式会社制度が現在の社会生活殊に経済取引において重要な意義
を有することは論ずるまでもなく、商法はその経済取引の安全確保のため、株式会
社の主要な事項につき、公務員が作成すべき公正証書である商業登記簿にその登記
をすることを義務づけることによりこれを保障しているのである。株式会社の営業
活動の基盤をなすものはいうまでもなく資本金であるから、商法は資本の充実をは
かるため、株式の現実の払込を確保すべく多くの規定を設けているのであるが、右
株式の払込が現実になされているという点について、商法が経済取引の安全確保の
ため商業登記簿の登記事項として規定しているところをみるに、昭和二三年法律第
一四八号による改正前の商法は、株金払込について分割払込を認める立法主義を採
用していたため、当時の商法一八八条二項五号は、「各株ニ付払込ミタル株金額」
を登記事項として規定していた。ところが、昭和二三年法律第一四八号により全額
を一時に払い込ませる立法主義を採用した関係上、右一八八条二項五号を削除した。
しかし当時の同法一八八条二項一号、一六六条一項三号により、会社の資本の総額
は登記事項として公示されていたのであり、その後昭和二五年法律第一六七号によ
る授権資本制度の採用に伴い、会社の発行する株式の総数と、会社の設立に際して
発行する株式の総数との間に不一致が生ずることとなつたため、会社の現実の資本
を公示する必要上、右法律により会社の設立に際して発行された株式の総数、一株
の金額、資本の額をそれぞれ登記事項とするに至つたものである。右改正の経過に
徴すれば、現行商法一八八条二項五号「発行済株式ノ総数」は、昭和二三年法律第
一四八号による改正前の同条項五号「各株ニ付払込ミタル株金額」と同じく株金の
払込済のものを指称するものと解すべきである。従つて、会社の設立又は増資に際
し、株金の払込が仮装のものであるにかかわらずこれを秘し、その株式引受人によ
る払込が完了し、設立又は増資をした旨の登記申請をなし、商業登記簿の原本にそ
の記載をなさしめたときは、商法一八八条二項五号「発行済株式ノ総数」に関し、
公正証書原本不実記載罪が成立するというべきである。然るに、原判決が、株金の
払込済であることが現行商法上登記事項とされていないとして公正証書原本不実記
載、同行使罪の成立を否定したのは、法律の解釈を誤つた結果、審理不尽、理由不
備の違法を犯したものといわざるを得ず、右違法が判決に影響を及ぼすことは明ら
かであり、これを破棄しなければ著しく正義に反すると認められる。また、原判決
が有罪と認定した被告人Aに対する贈賄の罪は、同人に対する公正証書原本不実記
載、同行使の罪と併合罪の関係にあるから、右贈賄の部分もともに破棄すべきであ
る。
 よつて、刑訴法四一一条一号、四一三条本文により、裁判官全員一致の意見で、
主文のとおり判決する。
 公判出席検察官 岡嵜格
  昭和四一年一〇月一一日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    下   村   三   郎
            裁判官    五 鬼 上   堅   磐
            裁判官    柏   原   語   六
            裁判官    田   中   二   郎

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