弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する。
     訴訟費用は控訴人の負担とする。
         事    実
 控訴代理人は控訴の趣旨として原判決を取消す。別紙目録記載の物件(原判決物
件目録記載を引用する)は控訴人の所有に属することを確認する。被控訴人は控訴
人に対し右物件を引渡せ。右物件を引渡すことができぬときは被控訴人は控訴人に
対し金三十七万五千円を支払え。訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とする旨
の判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。
 当事者双方の事実上の主張及び証拠関係は当審で、控訴代理人において甲第九、
一〇号証を提出し、証人A、B、C及び控訴人D本人の尋問を求め、検証の結果を
援用し、乙第五号証の一は原本の存在及び成立を認め、乙第五号証の二は不知但し
調書の部分は原本の存在を認むと述べ、被控訴代理人において乙第五号証の一、二
を提出し、証人E、F、G及び被控訴人H本人の尋問を求め、甲第九、一〇号証は
その成立を認めた外原判決に記載した通りであるからここにこれを引用する。
         理    由
 成立に争のない甲第一号証の一、二原審証人Aの証言により真正に成立したと認
める甲第三号証の一、二原審及び当審証人Aの各証言、原審証人Iの証言(一
部)、 原審(第一回)及び当審における控訴人本人訊問の各結果を綜合すれば別
紙目録記載の物件(原判決物件目録記載を引用する)がもとJの所有であつたこ
と、昭和二五年七月Cが松江地方裁判所執行吏Aに対し松江地方法務局所属公証人
K作成第六五二五号第六四八二号各公正証書の執行力ある正本に基きJに対する強
制執行を委任したこと、同月一八日A執行吏が右強制執行の目的で前記Cの代理人
たる控訴人と共に島根県能義郡a町のJ方に赴きJが同町出雲工作所内に占有して
いる右物件に対し差押手続をなしたこと、そしてA執行吏は「松江地方裁判所執行
吏差押物件」と記し職印を押した縦六センチメートル横三、四七ンチメートルの白
い小紙片(いわゆる公示書)を同工作所内に山積された本件木材に四枚を貼つて差
押の表示を施した上右物件を債務者たるJの保管に任したこと、並に控訴人は同年
八月八日本件物件を競落したことを認めることができる。被控訴人の全立証による
も右認定を左右するを得ない。
 <要旨第一>ところで被控訴人は右差押が無効である旨抗弁するのでこの点につい
て考えてみるに民事訴訟法第五六六条第二項によれば執行吏が債務者に
茅押物件の保管をまかせる場合は封印その他の方法でその差押を明白にしたときに
限つて差押の効力を生ずることになつているがかように差押を明白にするのはただ
差押の事実を確保するだけでなく一般取引の安全を保護し第三者が不測の損害を被
らないことを目的としたものであることは明かである。従てその差押の表示は何人
にも見易い箇所に又何人がみてもその物が差押物であることを知るに足る方法でな
されなければその差押は要件を欠き無効であると言わねばならぬ。
 然るに原審証人L、Mの各証言、原審及び当審証人A、G、Fの各証言、当審証
人Eの証言、原審及び当審における被控訴人本人訊問の結果を綜合すれば前示差押
のなされた当日本件物件の置いてあつた出雲工作所ではM、F、G等の大工七、八
名が本件物件の加工に従事していたこと、債務者Jは債権者代理人たる控訴人及び
執行吏Aに対し世間態が悪いから本件物件の差押は大工その他に気付かれないよう
に内密に施行するよう懇願したので控訴人及びA執行吏もこれを了承し昼休み時に
何人にも気付かれないように本件物件の点検及び差押手続をなし広い出雲工作所の
建物の諸所に置かれていた七百本以上の本件木材の数多の山に対し僅かに前示公示
書たる小紙片四枚を<要旨第二>人目につかぬように貼つた上本件物件をJの保管に
任したことを認めることができる。右のように山積された木材に対し差
押を明白にするには少くともその木材の山に対し縄張その他の方法を施してそれが
一括されていることを示した上その諸所に前示の如き公示書を貼るか又は相当の大
きさの立札をして第三者において一見してその木材の山が一括して差押の対象とな
つていることを認識し得るようにすることを要し情を知らぬ第三者において差押物
件であることを知り得ぬ程度の方法を施してもそれは差押の要件を充足したものと
は言い得ないであろう。現に前顕各証言等によれば当日出雲工作所で働いていた前
示大工等並に右工作所の構内に居住し当日は終日在宅していたL等は全く本件物件
の差押並に右公示書の存在に気付かなかつたのみならず右差押の翌日たる七月一九
日被控訴人がJ及びMその他数名の大工と共に本件木材を一々点検しこれに被控訴
人商店の商号スタンプを押した際にも被控訴人及び右大工等は右公示書の存在に気
付かなかつたことを認めることができるからA執行吏が本件物件の差押に当り施し
た前示差押の表示は本件物件の差押の事実を明白にするための公示方法としては全
く不十分であつたものと言うべく本件物件の差押は民事訴訟法第五六六条第二項に
違反し当然無効であると解するを相当とする。されば右差押が有効なることを前提
としてなされた本件物件の競売手続は当然無効であつて右競売により控訴人は本件
物件の所有権を取得するわけではない。そうすると控訴人がその主張の競売手続に
より本件物件の所有権を取得したことを前提とする控訴人の本件請求はその余の点
について判断するまでもなく失当として棄却を免れず、これと同旨に出た原判決は
相当であるから民事訴訟法第三八四条第一項を適用し本件控訴を棄却することとし
控訴費用の負担について同法第八九条を適用し主文の通わ判決する。
 (裁判長裁判官 平井林 裁判官 藤間忠顕 裁判官 石見勝四)

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