弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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             主       文
       本件控訴を棄却する。
       当審における未決勾留日数中50日を原判決の刑に算入する。
             理       由
 本件控訴の趣意は,弁護人大原貞夫作成の控訴趣意書に記載されているとおり
であるから,これを引用する。
第1 事実誤認の論旨について
   所論は,要するに,原判決は,第2の事実について,被告人に未必的殺意
があると認定したが,被告人は,被害者らに被告人運転車両の前を横切られ,被
害者と目線が合いバカにされたと思って激高し,けん銃を発射したのであって,
殺害の目的がないことはもちろん,その認識も認容もないから,原判決には事実
の誤認がある,というのである。
   そこで,検討すると,原判決の罪となるべき事実第2の認定事実及び(事
実認定の補足説明)における説示は,当裁判所も概ね正当なものとして是認する
ことができるから,原判決には所論のいう事実誤認はない。
   以下,所論にかんがみ付言する。
 1 関係証拠によれば,次のような事実が認められる。
 (1) 被告人が凶器として使用したけん銃は,32口径の自動装てん式けん銃で
あり,十分な殺傷能力を有している。
 (2) 被告人は,暴力団の対立抗争に備えてこのけん銃を入手し,数発試射した
ことがあるというのであって,その性能を認識していた。
 (3) 被告人は,5メートル余り離れた自動車の運転席から,助手席側の窓越し
に歩道上にいた被害者に向けてけん銃を1発発射した。助手席の窓は,地上約9
3センチメートルから約134センチメートルの高さに位置している。
 (4) この弾丸は,身体を時計回りにひねって避けようとした被害者の左臀部に
命中しており,その位置は,地上約103センチメートルの高さであった。
 (5) 被害者の傷は,左臀部から身体の中央(背骨の方向)にほぼ水平に向かう
深さ約10センチメートルの銃創であり,命中した弾丸は,厚さ約3センチメー
トルの腸骨を貫通して背骨の左下方にある内腸骨動脈に1センチメートル以内の
位置に迫っていた。仮に,弾丸が内腸骨動脈に損傷を与えていれば,被害者は,
多量の出血により死亡する危険性が高かったものである。
   そして,被告人は,捜査段階において,被害者の胴体の部分を狙ってけん
銃を撃ったと供述しているところ,この供述は,上記の各事実とよく符合してお
り,所論が指摘する犯行の動機や経緯の点を考慮してみても,その信用性に疑い
を挟むような事情はない。
   このような本件凶器の性状,使用方法,被害者との距離,負傷の部位,程
度,被告人の認識などに照らすと,未必の殺意を肯定した原判決の認定は正当で
ある。
 2 所論は,被告人が,検察官調書(原審検乙8号証)において,犯行時,
「シゴうしてやるという気持ち」であったと供述しているが,このことは,痛い
目に遭わせる,あるいは降参させるという程度の意味にとどまり,未必的にも殺
意を抱くような事情はなかった,というのである。
   しかしながら,被告人が,被害者らに被告人運転車両の前方を横切られ,
目が合いバカにされたと思い,激高してけん銃を発射したこと,その際,上記の
とおり「シゴうしてやるという気持ち」であったということは,未必の殺意と矛
盾するものではない。
   その他,所論が指摘する点を全て検討してみても,原判決の認定に事実誤
認はない。
   論旨は理由がない。
第2 量刑不当の論旨について
   所論は,要するに,被告人を懲役10年に処した原判決の量刑は不当に重
い,というのである。
   そこで,検討すると,本件は,被告人が,平成15年10月26日の深
夜,不特定若しくは多数の者の用に供される場所である広島市a区内の路上にお
いて,けん銃を発射し,引き続き,近くの路上において,被告人運転車両の前を
外国人3名に横切られて,目が合ったことなどから激高し,1名に対し,未必の
殺意をもって,けん銃を発射して命中させ,全治約1か月間を要する傷害を負わ
せたほか,他の2名に対し,至近距離からけん銃の銃口を向け,凶器を示して脅
迫し,それらの際,けん銃を適合する実包とともに携帯し,さらに,同日ころ,
覚せい剤を使用した,という事案である。
   けん銃の発射や殺人未遂等の一連の犯行は,人命を軽視したいずれも危険
極まりない悪質な犯行であり,その動機や態様に酌むべき事情は全くない。けん
銃で撃たれた被害者が,一命を取り留めたのは偶然の結果であり,同人が受けた
身体的,精神的苦痛は甚大である。また,脅迫された被害者2名の恐怖感も到底
軽視することができない。さらに,被告人は,繁華街の路上で合計2発の銃弾を
発射しており,周囲に及ぼした危険性も甚だしい。しかも,被告人は,長く暴力
団組員として活動していたのであり,粗暴犯や覚せい剤取締法違反の罪によるも
のを含めて前科が9犯あり,規範意識が相当に低下しているといわざるを得な
い。
   したがって,本件の犯情は悪質であり,被告人の刑事責任は重大である。
   そうすると,殺人の犯行は未遂に終わっていること,被告人は,けん銃を
提出して自首したこと,被害者3名に対し,慰謝料を支払って示談が成立してお
り,脅迫の被害者2名から宥恕を得ていること,本件犯行自体については,認め
る供述をして,謝罪の姿勢を示し,今後は暴力団とは関わらないと誓っているこ
と,内妻や知人らが被告人の更生に向けた協力をすると申し出ており,多数の嘆
願書をとりまとめていることなど,被告人のために酌むべき事情を十分考慮して
みても,原判決の量刑が不当に重いなどということはできない。
   論旨は理由がない。
 よって,刑訴法396条により本件控訴を棄却し,刑法21条を適用して,当
審における未決勾留日数中50日を原判決の刑に算入することとし,主文のとお
り判決する。
  平成16年8月24日
    広島高等裁判所第一部
        裁判長裁判官   大   渕   敏   和
 
           裁判官   芦   高       源
           裁判官   島   田       一

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