弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人平林庄太郎上告趣意第一点について。
 所論原判決判示事実第一の(二)に「右A管理下」とあるのは、「Aの占有する」
の意味であることは、判文上容易に了解し得らるところである、そしてこの意味に
おける原審の事実認定は原判決挙示の証拠に照らし、これを肯認するに難くないの
である。しかも、暴行又は脅迫を以て他人の占有に属する財物を強取すれば、たと
いその物が自己の財物であつてもなお強盗罪の成立を妨げないのであるから、原審
が右Aの占有に属する金品を強取した旨の事実を認定した以上、「その財物が何人
の占有に属するか」又は「何故に同人の占有に属したるかの理由」等に関して特に
説示しなかつたとしても、強盗罪の判示として何等欠くるところはない。それ故原
判決には所論のような違法はなく論旨は理由なきものである。
 同第二点について。
 一件記録によれば、原判決が裁判長判事亀崎弘尚、判事江崎太郎、判事堀義次の
三名によりなされたものであること、そして判事堀義次は、三回に亘り開廷せられ
た原審公判中その第二回及び第三回の公判にのみ関与したに過ぎないものであるこ
とは、論旨の指摘する通りである。しかし、原審第二回公判期日においては、第一
回公判当時と裁判所の構成に変更があつたため―すなわち従前構成員であつた判事
小中公毅が脱退し、新たに判事堀義次が構成員となり、茲に冒頭掲記の判事三名が
裁判所を構成するに至つたので―裁判所は弁論更新の手続を行い事件の審理を最初
から遣り直し該期日に弁論を終結して第三回公判期日において判決を言渡したもの
である。この事は審公判調書の記載によつて明らかである。従つて、原判決はその
判決の基礎となつた口頭弁論に関与した判事によつて為されたものであるから、原
判決には、所論のような違法はない。
 次に、刑訴応急措置法第一三条第二項の規定が、憲法に違反するものでないとい
うことは、論旨も指摘する通り、既に当裁判所大法廷の判決によつて明らかにせら
れているのであつて、所論の事由を以てしても、今この判例を変更すべき必要あり
とは認め得ない。従つてこの点に関する所論は結局事実審である原審の裁量権の範
囲内で為された量刑の不当を非難するに帰着し上告適法の理由とならない。
 よつて刑訴第四四六条に従い主文の通り判決する。
 この判決は裁判官全員一致した意見である。
 検察官 安平政吉関与
  昭和二三年一〇月一四日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    岩   松   三   郎
            裁判官    沢   田   竹 治 郎
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    齋   藤   悠   輔

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