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平成23年10月13日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成22年(ワ)第22918号不正競争行為差止等請求事件
口頭弁論終結日平成23年8月4日
判決
東京都中央区<以下略>
原告株式会社東京にいたか屋
同訴訟代理人弁護士岩瀬吉和
同城山康文
同森清圀生
同浅井孝夫
同盛里吉博
同佐橋雄介
同後藤未来
同工藤奏子
広島県福山市<以下略>
被告備後漬物有限会社
東京都中央区<以下略>
被告株式会社東京漬膳
被告ら訴訟代理人弁護士岩井泉
同中澤構
同鶴由貴
同小柴仁
同潮田治彦
被告ら補佐人弁理士藤本昇
同白井里央子
同田中成幸
主文
1被告らは,別紙イ号包装目録,同ロ号包装目録及び同ハ号包装目録記
載の包装を使用し,又は,同包装を用いた商品を譲渡し,引き渡し,譲
渡若しくは引渡しのため展示してはならない。
2被告らは,漬物に関する宣伝用カタログその他の広告物に前項記載の
包装の図柄を表示して頒布してはならない。
3被告らは,第1項記載の包装,同包装を表示した宣伝用カタログその
他の広告物及び同包装の印刷用原版を廃棄せよ。
4被告らは,原告に対し,連帯して,390万8296円及びこれに対
する平成22年6月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を
支払え。
5原告のその余の請求をいずれも棄却する。
6訴訟費用は,これを5分し,その2を原告の負担とし,その余を被告
らの負担とする。
7この判決は,第4項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求
1被告らは,別紙イ号包装目録,同ロ号包装目録,同ハ号包装目録及び同ニ号
包装目録記載の包装(以下「イ号包装」などという。また,これらの包装を併
せて「被告包装」ということがある。)を使用し,又は,同包装を用いた商品
(以下「被告商品」という。)を譲渡し,引き渡し,譲渡若しくは引渡しのた
め展示してはならない。
2被告らは,漬物に関する宣伝用カタログその他の広告物に被告包装の図柄を
表示して頒布してはならない。
3被告らは,被告包装,同包装を用いた商品,同包装を表示した宣伝用カタロ
グその他の広告物及び同包装の印刷用原版を廃棄せよ。
4被告らは,原告に対し,連帯して,5000万円及びこれに対する平成22
年6月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
本件は,東京都中央区<以下略>に所在し,「東京べったら漬」及び「東京
ゆずべったら漬」の表示を用い,別紙原告商品等表示目録記載の包装を使用し
て,大根を麹で漬けた漬物である「べったら漬け」を製造,販売している原告
が,「東京べったら」及び「東京ゆずべったら」の表示を用い,被告包装を使
用して,埼玉県所在の会社が埼玉県内の工場において製造,加工したべったら
漬けを販売している被告らに対し,①べったら漬けは,東京の名産品であり,
「東京べったら」という商品名を有するべったら漬け商品は,東京産の原料を
使用しているか,又は,東京都内で製造,加工されたものとして購入されるも
のであるのに,被告商品は,その原料である大根の産地も,製造加工地も,製
造者の本店・住所も東京にはないから,被告商品に「東京べったら」ないし「東
京ゆずべったら」と表示することは不正競争防止法(以下「不競法」という。)
2条1項13号の原産地等誤認惹起行為に該当する,②被告商品の包装には,
「しろざらめを使用した上品な味わいが自慢の逸品です」,「白ざらめとは…
白砂糖の中で最も高級な,純度99.8~99.9%の最高級砂糖です」など
と表示されているが,白ざらめより高価格で高級な砂糖は多数存在するもので
あり,被告商品が他社のべったら漬けよりも著しく優良であるともいえないか
ら,被告商品に上記表示をすることは不競法2条1項13号の品質等誤認惹起
行為に該当する,③「東京べったら漬」及び「東京ゆずべったら漬」の表示
や別紙原告商品等表示目録記載の包装は,原告の商品表示として周知なもので
あり,被告らが,これに類似する「東京べったら」及び「東京ゆずべったら」
の表示や,被告包装を使用したべったら漬けを販売等することは,不競法2条
1項1号の不正競争に該当する,④仮に,被告らに上記①及び②の不正競争
行為が認められないとしても,被告らの上記行為は,原告がべったら漬けの老
舗業者として築き上げてきた「東京べったら漬」ブランドに乗じて,被告商品
があたかも原告の商品と同品質であるかのような体裁を生じさせているもので
あり,取引における公正かつ自由な競争として許される範囲を逸脱しているか
ら,民法709条の不法行為に該当する,などと主張して,不競法3条1項に
基づく被告包装の使用等の差止め及び同条2項に基づく被告包装等の廃棄を求
めるほか,損害賠償として,主位的には不競法4条に基づき,予備的には民法
709条に基づき,5000万円及びこれに対する不正競争(主位的請求)な
いし不法行為(予備的請求)の後である平成22年6月29日から支払済みま
で民法所定の年5分の割合による遅延損害金を連帯して支払うよう求める事案
である。
1争いのない事実等(末尾に証拠を掲げていない事実は,当事者間に争いがな
い事実である。)
(1)当事者
ア原告
原告は,東京都中央区<以下略>に本店を置く株式会社であり,べった
ら漬けを始めとする漬物を製造し,これらを全国の卸売店及び小売店を通
じて需要者たる一般消費者に販売している。
イ被告ら
(ア)被告備後漬物有限会社(以下「被告備後漬物」という。)は,広島
県福山市に本店を置き,漬物全般の製造販売を業とする有限会社である。
(イ)被告株式会社東京漬膳(以下「被告東京漬膳」という。)は,東京
都中央区を本店所在地とする株式会社である。
被告東京漬膳の代表取締役は,被告備後漬物の代表取締役の子であり,
被告備後漬物の常務取締役を務めている。
(2)原告商品の製造,販売
ア原告商品1(東京べったら漬)について
(ア)原告は,原告の製造販売するべったら漬けの包装に,原告の製造販
売する商品であることを示す表示として,別紙原告商品等表示目録記載
1-1の表示(「東京べったら漬」。以下「原告表示1-1」といい,
原告が同表示を付して販売する商品を「原告商品1」という。)を付し
ている。
(イ)原告は,原告の製造販売するべったら漬けの包装に,別紙原告商品
等表示目録記載1-2の図柄(以下「原告表示1-2」といい,同表示
を付した商品を「原告商品1-2」という。)を表示している。
(ウ)原告は,原告の製造販売するべったら漬けのうち「東京べったら漬
一本」という商品の包装に,別紙原告商品等表示目録記載1-3の図
柄(以下「原告表示1-3」といい,同図柄を付した商品を「原告商品
1-3」という。)を表示している。
(エ)原告は,原告の製造販売するべったら漬けのうち「東京べったら漬
スライス」という商品の包装に,別紙原告商品等表示目録記載1-4
の図柄(以下「原告表示1-4」といい,同図柄を付した商品を「原告
商品1-4」という。)を表示している。
イ原告商品2(東京ゆずべったら漬)について
(ア)原告は,原告の製造販売するゆず風味のべったら漬けの包装に,原
告の製造販売する商品であることを示す表示として,別紙原告商品等表
示目録記載2-1の表示(「東京ゆずべったら漬」。以下「原告表示2
-1」といい,原告が同表示を付して販売する商品を「原告商品2」と
いう。また,原告商品1及び原告商品2を総称して「原告商品」という
ことがある。)を付している。
(イ)原告は,原告の製造販売するゆず風味のべったら漬けの包装に,別
紙原告商品等表示目録記載2-2の図柄(以下「原告表示2-2」とい
う。また,原告表示1-1ないし1-4,同2-1及び2-2を総称し
て「原告表示」ということがある。)を表示している。
ウ原告商品の製造地及び原材料
(ア)原告は,埼玉県深谷市に所在する原告の自社工場(以下「原告埼玉
工場」という。)において,原告商品を製造している。また,原告商品
の原材料となる大根は,東京都において生産されたものではない。
(イ)原告商品の包装の表面ないし裏面には,原告商品の製造者が,東京
都中央区<以下略>を本店所在地とする株式会社である原告であること
が表示されている。なお,同包装には,原告商品が原告埼玉工場におい
て製造されたものであることは表示されていない。
(3)被告商品の製造,販売
ア被告商品1(東京べったら)について
(ア)被告らは,平成21年9月1日ころから,イ号包装を使用したべっ
たら漬け(以下「被告商品イ」という。)を販売した。
(イ)被告らは,遅くとも平成22年1月から,ハ号包装を使用した「東
京べったら(一本)」というべったら漬け(以下「被告商品ハ」という。)
を販売した。
(ウ)被告らは,遅くとも平成22年1月から,ニ号包装を使用した「東
京べったら(スライス)」というべったら漬け(以下「被告商品ニ」と
いい,被告商品イ及び被告商品ハと併せて「被告商品1」という。)を
販売した。
イ被告商品2(東京ゆずべったら)について
被告らは,平成21年9月1日ころから,ロ号包装を使用したゆず風味
のべったら漬け(以下「被告商品2」という。)を販売した。
ウ被告商品の製造者,製造地及び原材料
(ア)被告東京漬膳は,埼玉県北本市を本店所在地とする鈴木食品株式会
社(以下「鈴木食品」という。)との間で製造委託契約を締結し,べっ
たら漬けを製造させ,このべったら漬けを被告包装に封入させて,商品
として完成させている。鈴木食品は,埼玉県北本市に所在する自社工場
において被告商品を製造した(乙27,80)。被告商品の原材料であ
る大根は,東京都で生産されたものではない。
被告東京漬膳は,鈴木食品において製造した被告製品を同社から購入
し,これを被告備後漬物に販売した。被告備後漬物は,被告東京漬膳か
ら購入した被告商品をスーパー等の小売店に販売した。
(イ)被告商品の包装の裏面には,「販売者」として,被告東京漬膳の商
号及びその本店所在地が東京都であることが表示されている。なお,同
包装には,「販売者」として,被告備後漬物の商号及び本店所在地は表
示されていない。また,被告商品の包装には,被告商品の製造者が埼玉
県を本店所在地とする鈴木食品であり,被告商品は鈴木食品の埼玉県内
の工場において製造されたものであること,被告商品の原材料の大根の
産地が東京都でないこと,は表示されていない。
2争点
(1)不競法2条1項13号違反の有無(争点1)
ア被告商品の包装に「東京漬膳の」,「東京べったら」などと表示するこ
とは,被告商品の原産地等を誤認させる表示に当たるか(争点1-1)
イ被告商品の包装に「白ざらめを使用した上品な味わいが自慢の逸品です」,
「白ざらめとは…白砂糖の中で最も高級な,純度99.8~99.9%の
最高級砂糖です」などと表示することは,被告商品の品質等を誤認させる
表示に当たるか(争点1-2)
(2)不競法2条1項1号違反の有無(争点2)
ア原告表示は,原告の商品等表示として需要者の間に広く認識されている
か(争点2-1)
イ原告表示と被告包装は類似するか(争点2-2)
ウ被告商品を販売等することは,原告表示と混同を生じさせるか(争点2
-3)
(3)被告らが被告商品を販売等することは,取引における公正かつ自由な競
争として許される範囲を逸脱し,民法709条の不法行為(一般不法行為)
が成立するか(争点3)
(4)原告の損害(争点4)
3争点に関する当事者の主張
(1)争点1(不競法2条1項13号違反の有無)について
ア争点1-1(被告商品の包装に「東京漬膳の」,「東京べったら」など
と表示することは,被告商品の原産地等を誤認させる表示に当たるか)に
ついて
[原告の主張]
(ア)べったら漬け商品における「東京」の表示の有する意義
べったら漬け商品における「東京」の表示は,次のとおり,原産地表
示機能を有し,かつ,付加価値を有するものである。したがって,べっ
たら漬け商品に根拠なく「東京」という表示を付すことは,許されない。
aべったら漬け商品における「東京」の表示は,原産地表示機能を有
するものであること
加工食品の商品名に地名が表示されている場合,需要者は,一般的
に,当該商品の製造地ないしその原材料の生産地がその土地にあるも
のと理解する。したがって,べったら漬け商品において,「東京」の
表示は,原産地表示機能を有するものであり,需要者は,「東京べっ
たら」という商品名を有するべったら漬け商品である被告商品を,特
段の事情がない限り,①東京産の原料を使用しているか,又は,②東
京で製造,加工されたものとして,購入する。
また,消費者は,漬物に関して,各土地に古くから伝わる名産品た
る漬物にも強い魅力を感じる傾向があるため(例えば,「京都の漬物
は高級」,「京都の漬物は美味しい」といった漠然としてイメージを
持っている。),漬物という商品の商品価値は,商品包装等に表示さ
れ,消費者に認識される原産地に大きく左右される。
bべったら漬け商品における「東京」の表示は,付加価値を有するも
のであること
(a)「べったら漬け」の名称及び「べったら市」の由来
べったら漬けは,江戸時代の初めから,江戸名物として広く人々
に親しまれてきたものである。べったら漬けの由来は,当時,江戸
日本橋の宝田恵比須神社に商人が集まって市をたて,盛大な祭りが
行われていたところ,年々市が栄え,祭りが賑わうため,付近の百
姓たちが,飴と糀で漬けた大根を浅漬けと称して,この市で売り始
めたことに由来する。そして,この漬物が,べったら,べったら,
着物や手につくことから,「べったら漬け」と呼ばれるようになっ
たなどといわれている。江戸日本橋の宝田恵比須神社の市は,この
「べったら漬け」に由来して,「べったら市」と呼ばれるようにな
った。
(b)べったら市の振興及び原告の支援
べったら市は,太平洋戦争の勃発を契機に中止されていたが,原
告の前身である株式会社新高屋(以下「新高屋」という。なお,原
告は,平成5年に,新高屋が分社化して設立された会社であり,新
高屋から,べったら漬けの製造販売部門の営業を譲り受けた会社で
ある。)が,戦後間もなく,露天商やべったら市保存協会に働きか
けて,べったら市を復興させた。新高屋及び原告は,それ以後約6
0年間にわたり,べったら市に自ら出店するだけでなく,他の露店
に対してべったら漬けを提供したり,べったら市のために提灯やの
ぼり等の販促物を提供し続けてきた。
このように,原告は,べったら市保存協会と協力してべったら市
の振興に努め,その甲斐があり,べったら市は,毎年10月19日
から20日にかけて東京日本橋で開催される恒例の秋祭りとして,
広く認知されるようになった。
(c)上記のとおり,べったら漬けは,東京を発祥の地とするといわ
れ,東京の名産品として周知になっており,これには,東京日本橋
において毎年開催される,べったら市の振興が貢献している。
そのため,べったら漬け商品における「東京」の表示は,商品の
イメージや商品価値を顕著に高めるものであり,需要者は,こうし
た東京の名産品たる漬物を,単なるべったら漬けと区別して,より
高級なものとして認識する。現に,「東京」と付されたべったら漬
け商品は,一般的に高価であり,他のべったら漬け商品よりも高度
の顧客誘引力を有する。
(イ)被告商品の包装に「東京べったら」の商品名等が表示されることは,
不競法2条1項13号の原産地等を誤認させる表示に当たること
a被告包装には,「東京漬膳の」,「東京べったら」(ないし「東京
ゆずべったら」)と表示され,被告包装の裏面には,被告商品の販売
者が「東京都」に所在する「株式会社東京漬膳」であることが表示さ
れている。
このように,被告商品の包装全体では,合計4か所に「東京」の文
字が記載されており,これらを見る者に対し,被告商品が「東京」と
関連があるかのごとく印象付けている。
他方,被告商品の包装には,国産の大根を使用していることは記載
されているが,被告商品の原材料の産地,製造者及び製造地は記載さ
れていない。
そのため,被告商品の包装における表示は,後記b及びcのような
外観とあいまって,商品の原産地が東京であることを示すものといえ,
需要者は,被告商品が東京産の原料を使用しているか,又は,東京で
製造・加工された漬物であると認識,信頼して,被告商品を購入する。
bまた,イ号包装,ロ号包装及びハ号包装(これら3つの包装を併せ
て,以下「イ号包装ないしハ号包装」という。)の右下部には,べっ
たら漬けを売る市を描いた白黒の図絵が記されており(「べったら漬」
と書かれた立て看板,「名物べったら」と書かれた暖簾が見て取れる。),
その図絵に描かれた人々の衣装から,江戸時代の様子を描いたもので
あることが見て取れる。そして,これとほとんど同一の図絵は,被告
らの新聞広告(甲40)にも大きく掲載され,この図絵にも「名物べ
ったら」,「べったら漬」と書かれた暖簾が見て取れるばかりか,「日
本橋」と書かれた路標が描かれている。
したがって,イ号包装ないしハ号包装に描かれているべったら漬け
を売る市の図絵からは,江戸日本橋の「べったら市」が想起され,被
告商品が日本橋のべったら市と関連があるかのごとく印象付けてい
る。そのため,イ号包装ないしハ号包装を見た需要者は,被告商品は
べったら市に出店,参加,協賛,協力等をする企業によって製造され
ているものと認識,信頼し,そのような商品として購入する。
cさらに,イ号包装ないしハ号包装の裏面には,上方に,赤色のバッ
クに黒太字毛筆体で,非常に目立つ形で,「東京漬膳こだわりの味『白
ざらめ』」と記載されている。また,「東京漬膳」という商号は,単
なる漬物の販売業者ではなく,漬物メーカーであることを彷彿とさせ
る商号である。
したがって,この記載は,東京漬膳という会社が,「白ざらめ」の
点を含め,商品の品質,内容に責任を有する製造主体であることを示
唆するものである。
なお,被告包装には,被告東京漬膳が「製造者」として表示されて
いるわけではないが,需要者,とりわけ,一般消費者は,ある会社が
「販売者」として記載されている事実が,その会社は「製造者」であ
ることを否定する積極的な意味を有するとは理解しない。被告商品の
ように,商品に「製造者」が明記されていない場合は,なおさらであ
る。
d一方,被告商品は,前記1(2)ウのとおり,その原材料は東京産では
なく,その製造者は埼玉県に所在する鈴木食品であり,埼玉県に所在
する鈴木食品の工場で製造されている。また,被告ら及び鈴木食品は,
ベったら市に自ら出店,参加,協賛,協力等をしたことはない。
さらに,被告東京漬膳は,被告商品を発売する直前に東京に移転し
てきたものであって,被告備後漬物の関東支店に本店を有するものの,
実際にいかなる業務が行われているのかは不明である。被告東京漬膳
は,被告商品の包装に「販売者」として表示されているが,被告備後
漬物から独立した固有の実態を有しておらず,「東京漬膳」という商
号は,専ら,被告商品の原産地誤認を惹起する目的で付されているも
のである。
eしたがって,被告商品の包装に上記aないしcの表示をして販売等
する被告らの行為は,不競法2条1項13号所定の原産地,内容等を
誤認させる行為に該当する。
(ウ)原告商品に「東京」と表示することは不競法2条1項13号に違反
するものではないこと
原告商品は,原告埼玉工場で製造されるものであるが,次のような特
段の事情が存在するため,同商品に「東京」と表示しても,不競法2条
1項13号に違反するものではない。
a原告及びその前身である新高屋は,昭和5年に旧東京市京橋区(現
在の東京都中央区)において創業して以来,一貫して,東京都内に本
店を有している。
新高屋は,昭和39年までは,東京都台東区所在の自社工場におい
てべったら漬け商品を製造していたが,近隣の環境への配慮から,す
べての製造を原告埼玉工場に移した。しかしながら,原告及び新高屋
は,それ以降も,原告埼玉工場におけるべったら漬け商品の製造過程
を自社で管理している。
また,原告は,東京日本橋の「べったら市」の振興に努めるなどし
て,原告のべったら漬け商品を東京名産品として自ら育て上げた者で
あり,原告のべったら漬け商品は,商品名「東京べったら漬」として,
全国観光土産品連盟から東京の観光土産品の推奨品に認定され,東京
都中央区観光協会推奨名産品にも認定されている。
bこのように,ある土地(東京)で設立され商品を製造していた老舗
が,その本店を保ったまま,他の土地(埼玉)で商品を製造・加工す
るようになったとしても,製造工程が自社管理されている限り,需要
者が原産地表示に寄せる期待が裏切られない特段の事情が存在すると
いえる。
このような考え方は,観光土産品の表示に関する公正競争規約(「伊
勢市で製造販売している観光土産品について,…県外の工場で製造さ
れた完成品に伊勢名物と表示できるか」という問いに対し,「県外で
あっても自社工場で製造したものであればあれば,『名物』等の使用
は可能」とし,「他社工場(製造委託)で製造したものは,使用不可」
とする。以下「本公正競争規約」という。)及び全国観光土産品公正
取引協議会の策定した内規(平成20年2月27日付け通達「観光土
産品の表示について」。以下「本公正取引協議会内規」という。)に
も則るものである。
cよって,原告商品については,不競法2条1項13号違反は成立し
ない。
[被告らの主張]
(ア)「東京べったら漬」商品における「東京」の表示の意味
aべったら漬けは,江戸時代から作られている東京名産の漬物である。
したがって,べったら漬け商品における「東京」の表示は,べったら
漬けが東京発祥であり,その意味において東京の名産であることを表
示しているにすぎず,原産地を表示するものではない。
「東京べったら漬」という表示が付されて販売されている商品につ
いて,その原材料の生産地や商品の加工地が東京と関係のないものは,
古くから少なからず存在し,昭和60年代以降では,少なくとも,鈴
木食品や株式会社南食販売が「東京べったら漬」という表示を付した
商品を製造,販売していた。また,現在では,「東京べったら(漬)」
という表示を付した商品は,原告及び被告ら以外に,鈴木食品の他,
少なくとも11社が販売しており(なお,これら11社は,原告に商
品の製造を委託した会社ではない。),原告自身も,原産地が東京都
でないべったら漬けに「東京べったら漬」と表示して販売している。
このように,「東京べったら漬」という表示は,原材料の生産地や
商品の製造,加工地とは無関係に長年にわたって使用されてきたとい
うのが実情である。この事実は,「東京べったら漬」における「東京」
の表示は「べったら漬け」の発祥の地が東京であるということを表示
しているにすぎないものであることを如実に物語っている。
bまた,べったら漬けは,東京を発祥の地とする東京の名産品であり,
そのことは需要者も認識しているところであるが,「べったら漬け」
と称する漬物の中には,「紀州べったら」(紀州大根の皮をむき,紀
州業界独特の加工方法で作り上げられる)など,米麹と砂糖で漬けら
れる東京名産の「べったら漬け」とは異なった製法により製造される
ものがある。したがって,「東京べったら漬」商品における「東京」
の表示は,東京の伝統的な製法に従って生産されたものであることを
示すものでもある。
c以上のとおり,「東京べったら漬」との表示から需要者が認識する
のは,「東京発祥のべったら漬」又は「米麹と砂糖で漬けられたべっ
たら漬け」ということである。原告の主張するような「特定地域の業
者によって製造・加工されたべったら漬け」ということではない。
(イ)被告商品の包装における「東京べったら」などの表示は,原産地等
を誤認させるものではないこと
a「東京べったら」の表示について
(a)べったら漬け商品における「東京」の表示は,上記(ア)のとお
り,べったら漬けの発祥の地が東京であることや,東京の伝統的な
製法に従って生産されたべったら漬けであることを表示するものに
すぎない。
(b)したがって,被告商品の包装に「東京べったら」ないし「東京
ゆずべったら」と表示することにより,需要者に対し,東京の名産
品であるとの印象を付与することは,虚構ではない。一般消費者の
中には,べったら市のことを知らない者も多く,消費者は,必ずし
も,「べったら市で販売されている」と考えて被告商品を購入する
わけではない。
(c)また,被告商品の製造者である鈴木食品は,べったら漬けの老
舗メーカーである株式会社金久(以下「金久」という。)の工場長
を務めていた者が,昭和48年に「鈴木商店」の名称でべったら漬
けの製造販売を始めたことを起源とする会社であり,べったら漬け
製造専門の老舗のメーカーである。鈴木食品は,皮を剥いだダイコ
ンを1~2日間低塩で下漬けし,米麹と砂糖で漬けるという,東京
名産のべったら漬けの伝統的な製法によって,被告商品を製造した。
したがって,被告らには,実質的にも,被告商品に「東京」とい
う表示を付する理由がある。このような鈴木食品が製造する商品に
「東京べったら」ないし「東京ゆずべったら」の表示をしたとして
も,消費者の信頼を裏切るものではない。
そして,このような被告商品の表示は,全日本漬物協同組合連合
会(以下「全漬連」という。)の自主基準に適うものでもある。す
なわち,全漬連の自主基準では,「○○特産,○○名産,○○土産
等としていることについては,国内産,輸入原料の如何を問わず,
国内の地域独特のあるいは伝統的な製造加工技術によって製品化さ
れたことを以って当該○○(地域)特産等の名称を使用しているも
のとの理解に立つこととした。」と説明されている。そうすると,
被告らが,東京べったら漬けの老舗業者の一つである鈴木食品に製
造を委託し,東京名産のべったら漬け製造加工技術によって製品化
された被告商品を販売した場合,全漬連の考えとしては,東京名産
のべったら漬けという意味で「東京べったら漬」が使用されている
と理解されるといえる。
bイ号包装ないしハ号包装の図絵について
イ号包装ないしハ号包装に表示された図絵は,「日本橋べったら市」
を描いたものではなく,べったら漬けの発祥の地といわれる江戸でべ
ったら漬けを販売している町の風景を描いたものにすぎない。
したがって,被告包装に刷られている図絵から,被告商品が,あた
かも,何かしら日本橋の「べったら市」と関連があるかのごとく印象
付けられるわけでない。また,仮に,原告の主張を前提とするとして
も,原告の主張する前記のべったら漬けの由来に照らせば,べったら
漬けの包装に日本橋のべったら市の図絵を使用することは,何ら,需
要者の誤認を惹起するものではない。
このように,イ号包装ないしハ号包装に表示された図絵によって,
被告商品が,べったら市に出店,参加,協賛,協力等をする企業によ
って製造されていると認識されることはない。
c「東京漬膳」の表示について
「東京漬膳」の表示は,同社が漬物メーカーであることを彷彿とさ
せるものではない。また,被告東京漬膳は,被告商品の包装に,「製
造者」ではなく,あくまで「販売者」として明記されている。
したがって,「東京漬膳」を含む被告商品の表示から,被告東京漬
膳が販売者として商品の品質,内容に責任を有する旨を認識すること
ができるとしても,それ以上に,製造主体であることが示唆されてい
るということはできない。
また,被告東京漬膳は,東京に本店を置き,被告東京漬膳の従業員
を雇用し,販売業務を行っている。被告備後漬物は,各地方において
伝統的な製法により漬物を製造してきた生産者に商品の製造を委託し,
これらの生産者と協力しながら多様な商品を消費者に提供しようとし
ているのである。各地方の伝統的な手法により製造された漬物の販売
に関し,個別に会社を設立することは,違法でもなければ,不当なも
のでもない。
(ウ)原告は,不競法により保護されるべき正当な「営業上の利益」を有
しないこと
不競法2条1項13号の不正競争(誤認惹起行為)によって侵害され
る「営業上の利益」とは,誤認惹起行為がない場合に競争相手である債
権者が取得し得たであろう売上げであり,「公正な条件の下で営業活動
を行う利益」のことをいう。
しかしながら,原告が「東京べったら漬」と表示して販売している商
品(原告商品1)は,東京都で生産された大根を使用しているわけでも,
東京都内の工場で製造されたものでもなく,埼玉県に所在する原告埼玉
工場で製造されたものである。
そうすると,仮に,原告の主張するとおり,被告商品に「東京」とい
う表示を付して販売することが原産地又は内容について誤認させる行為
となる場合,原告自身も,公正な条件で営業活動を行っているものでは
ないものといえる。
なお,原産地とは,当該商品が製造,加工された特定の土地であり,
製造者の本店所在地や製造工程が管理されていることによって左右され
るものではない。原告が前記[原告の主張](ウ)において主張する事情
は,現に販売されている原告商品に対する需要者の信頼(原告が主張す
る「東京産の原料を使用しているか,又は,東京で製造・加工されたも
の」という付加価値に対する需要者の信頼)とは直接関係がない。
原告は,原告の商品表示が本公正競争規約等に則るものであるとも主
張する。しかしながら,上記規約等は,あくまで,観光土産品に関する
ものであるのに対し,本件で問題となっているのは,スーパー等で販売
されている日常生活品であり,観光土産品とは商品の特性や需要者が全
く異なる。
したがって,原告については,「公正な条件の下で営業活動を行う利
益」の侵害はないというべきである。
[被告らの主張に対する原告の反論]
(ア)べったら漬け商品における「東京」の表示の意味について
a東京は,べったら漬けの発祥地として知られているが,ある商品の
発祥地が知られていることは,その発祥地の地名の原産地表示機能を
失わしめるものではない。一般に,一般の消費者が,商品名にその商
品の発祥の地が付されていると認識するとは考えられない。
被告らは,東京がべったら漬けの発祥の地であり,そのことが知ら
れていることを根拠に,べったら漬け商品に付された「東京」という
地名の表示が原産地表示機能を失い,一般名称化していると主張する
ようであるが,国語辞典には,「東京べったら漬」(又は「東京べっ
たら」)という単語は掲載されておらず,農林水産省告示「農産物漬
物品質表示基準」にも掲載されていない。事典等の文献にも,「べっ
たら漬け」という項目の記載はあるが,「東京べったら漬」という項
目,記載は存在しない。したがって,「東京べったら漬」という単語
を,一般名称化した「奈良漬け」や「野沢菜漬け」といった単語と同
列に論じることはできない。
b「東京べったら漬」の商標は,べったら漬けの老舗メーカーであっ
た金久が,昭和40年代に,同社が製造したべったら漬け商品につい
て使用を開始したものであり,遅くとも昭和60年ころまでに,金久
の商品を表示するものとして,需要者の間に広く認識されていた。
そのため,昭和60年ころから,平成14年(金久が倒産した年)
までの間は,金久や,金久にプライベート・ブランド商品の製造を委
託していた会社及び金久から暖簾分けを受けた会社以外に,「東京べ
ったら漬」の商標及びこれに類似する商標を使用する業者は存在せず,
仮に存在したとしても,無視し得る規模,態様でのものであった。な
お,被告らは,鈴木食品などが昭和60年代以降に「東京べったら漬」
という表示を付した商品を製造,販売していたと主張するが,同事実
は否認する。鈴木食品は,同社の新聞広告(乙19,21~25等)
に「東京べったら」というキャッチコピーを用いたことはあるが,同
社の商品に「東京べったら漬」という表示を付した事実はない。
原告は,平成14年に,金久から,「東京べったら漬」商標を使用
する権利を含む,べったら漬けに関わるすべての業務についての営業
譲渡を受け,これを契機に,原告の製造販売するべったら漬け商品に
「東京べったら漬」の商標(原告表示1-1)を付して,販売促進を
図った。現在では,「東京べったら漬」又は「東京」を商品名に含む
べったら漬け商品における原告のシェアは,売上基準で約8割から9
割に及び,原告が「東京べったら漬」という商標をほぼ独占的に使用
している状況にある。
cべったら漬け商品は,漬物の中でも,全国的にポピュラーな商品と
なり,全国各地で製造販売されるに至っている。また,被告らの主張
するべったら漬けの伝統的な製造加工技術は,現在までに,全国的に
広まっており,東京以外の地方でも採用されている。
しかしながら,これら全国各地において,被告らの主張する伝統的
な製造加工技術で生産されてきたべったら漬けが,「東京べったら」
と呼ばれたことはない。
各地域では,「紀州べったら漬」,「京のべったら漬」,「火の国
べったら漬け」など,商品名の一部に各地の地名を含むべったら漬け
商品が販売されている。これらの表示は,その特定地域の業者によっ
て製造,加工されたべったら漬けを表示するものであり,需要者は,
そのように理解するものである。同様に,「東京べったら漬」という
表示における「東京」の部分も,原産地表示機能を有しているといえ
る。
仮に,被告らの主張に従い,被告商品の「東京べったら」という商
品名の「東京」の部分に原産地表示機能がないとした場合,日本国内
外を問わず,いずれの場所で生産されたべったら漬けであっても,「東
京べったら漬」として販売して構わないということになるが,これは,
一般消費者の感覚とかけ離れたものである。
(イ)被告商品の製造方法について
鈴木食品の製造する被告商品は,伝統的な東京のべったら漬けではな
く,鈴木食品が製造する食品に「東京べったら」,「東京ゆずべったら」
の表示をすることは,消費者の信頼を裏切るものである。すなわち,被
告商品は,近時全国的に行われている,皮を剥いだ大根を1~2日間低
温で下漬けし,米麹と砂糖で漬ける,という一般的製法により製造され
ているものにすぎず,その内容又は製造方法に特別に変わった地域的特
色や伝統的特色があるわけではない。また,被告商品の包装に鈴木食品
が「製造者」であると記載されているわけでもない。
したがって,被告製品の製造者が鈴木食品であるという事実は,原産
地についての需要者の誤認を解消するものではない。
(ウ)被告商品の表示は全漬連の自主基準に準拠するものではないこと
全漬連の自主基準は,原料が輸入品である場合に表示をどのようにす
べきかという問題についての,自主ルールを定めるものである。本件の
ように,商品の原産地と異なる地名を商品の包装に表示すること(すな
わち,原料の産地でも製造加工地でもない地名を表示すること)が許さ
れるかという問題を対象にするものではない。
被告らの主張は,全漬連の自主基準の制定経緯,制定目的等を無視し,
その字面だけを追って自分に都合のよい解釈をするものにすぎない。
イ争点1-2(被告商品の包装に「白ざらめを使用した上品な味わいが自
慢の逸品です」,「白ざらめとは…白砂糖の中で最も高級な,純度99.
8~99.9%の最高級砂糖です」などと表示されることは,被告商品の
品質等を誤認させる表示に当たるか)について
[原告の主張]
(ア)イ号包装ないしハ号包装には,「白ざらめを使用した上品な味わい
が自慢の逸品です」との文言が記載され,包装の裏面には,下図のとお
り,「東京漬膳こだわりの味『白ざらめ』」,「白ざらめとは…白砂糖
の中で最も高級な,純度99.8~99.9%の最高級砂糖です。」,
「こだわりの『白ざらめ』が美味しさの秘訣です。」などの文言が記載
されている(下線は,原告の主張に基づき裁判所が付した。)。
【イ号包装ないしハ号包装の裏面】
(イ)上記包装は,その裏面に「最も高級な」,「最高級砂糖」と,最上
級の意味を表す表現を繰り返して使用した上,包装の表面には,「この
上もなくすぐれた品物や作品。絶品。」(大辞泉)を意味する「逸品」
という表示をして,これを見る者に対し,他社の商品よりも著しく優良
であるかのような印象を与える。
しかしながら,「白砂糖」については,白砂糖という名称そのものが
俗称であるにすぎず,それが何を指しているのかあいまいである上,「白
ざらめ」より高価格である糖類も,グラニュー糖,顆粒状糖(フロスト
シュガー),和三盆等多数存在することから,「白ざらめ」が,高級品
の中でも一番高級という意味を表す「最も高級」な砂糖であるとはいえ
ない。
また,「不当表示の禁止」を定めた本公正競争規約7条は,「事業者
は,観光土産品について,次の各号に掲げる表示をしてはならない」と
規定した上,同8号は,「客観的な根拠又は全国協議会の定める基準に
よらないで,「特上」,「特選」,「極上」,「超」,「最高級」等の
文言を用いることにより,当該商品が特に優良であるかのように誤認さ
れるおそれがある表示」を挙げている。
(ウ)また,イ号包装ないしハ号包装には,上記(ア)のとおり,「白ざらめ
を使用した上品な味わいが自慢の逸品です」との文言が記載され,包装
の裏面には,上方に,赤色のバックに黒太字毛筆体で,非常に目立つ形
で,「東京漬膳こだわりの味『白ざらめ』」との文言が記載され,さら
にその下に「こだわりの『白ざらめ』が美味しさの秘訣です。」との文
言が記載されている。これらの表示は,一般消費者に対し,被告商品に
白ざらめが使用されたことによって,有意に味が良好なものに変化した
という印象,すなわち,べったら漬けのごく一部である砂糖に用いられ
た品質が,その全部の品質であるかのごとき印象を与えるものである。
しかしながら,べったら漬けの味は,砂糖だけでなく,大根,食塩,
麹等の原材料や製造方法により変化する。また,被告商品には,果糖ぶ
どう糖液糖に加え,ステビア,ラカンカといった甘味料も使用されてい
る。ステビアは,その種類にもよるが,砂糖(白ざらめを含む)の10
0倍ないし300倍の甘味度を有し,ごく少量用いられただけでも食物
の味に大きく影響するものであるから,被告商品の味は,白ざらめもさ
ることながら,白ざらめよりも安価なステビアによって,より大きく影
響されている。
(エ)したがって,被告らが被告商品の包装に上記表示を付して販売する
行為は,不競法2条1項13号の商品の品質又は内容の誤認惹起行為に
該当する。
[被告らの主張]
(ア)白ざらめは,糖度がほぼ100%であり,高級砂糖として扱われ,
主に,高級菓子や飲料に使われている。また,「白ざらめ」(白ざら糖)
とは,糖度が高く,グラニュー糖よりも品質が高い最上品質の砂糖であ
る。なお,和三盆は,高級と言われているが,香川県,徳島県という特
定地域の特産品であり,しかも,糖度において「白ざらめ」に劣るもの
であって,必ずしも,糖類の中の最高級品ではない。
(イ)また,糖類の種類は様々であり,各糖類の甘みを感じるには時間差
がある。被告商品は,被告商品を食した後も甘みを長時間継続して感じ
られるよう,複数の糖類を組み合わせることにより工夫したものであり,
ステビアを使用しているからステビアの甘みしか感じないということに
はならない。
(ウ)したがって,被告包装に原告の主張する表示を行なうことは,何ら
商品の品質について誤認させるものではない。
(2)争点2(不競法2条1項1号違反の有無)について
ア争点2-1(原告表示は,原告の商品等表示として需要者の間に広く認
識されているか)について
[原告の主張]
原告表示は,次のとおり,遅くとも平成21年8月までには,全国の卸
売業者,小売業者及び一般消費者の間で,原告の商品を示す表示として広
く知られるようになっていた。
(ア)原告表示1-1について
原告表示1-1(「東京べったら漬」)は,「東京」という地名と「べ
ったら漬」という普通名称から成るものである。
しかしながら,次のとおり,原告表示1-1は,遅くとも昭和60年
ころから,金久の商品等表示として広く周知されていたものであり,原
告は,原告表示1-1の周知性についても金久から承継した。
また,原告は,平成14年以降,原告の製造販売するべったら漬けの
包装に,原告の製造販売する商品であることを示す表示として原告表示
1-1を付し,圧倒的なシェアを確保,維持している。
その結果,原告表示1-1は,原告商品を示す表示としての識別力を
取得し,不競法2条1項1号の商品等表示性及び周知性を備えたもので
ある。
a金久による「東京べったら漬」表示の使用
「東京べったら漬」の表示は,べったら漬けの老舗メーカーであっ
た金久が,昭和40年代に,同社が製造したべったら漬け商品につい
て使用を開始したものである。
金久は,同商標を使用した宣伝広告を多数行い,新聞記事において
も,金久のべったら漬け商品の名称として「東京べったら漬」が紹介
された。その結果,「東京べったら漬」の表示は,遅くとも昭和60
年ころまでに,金久の商品を表示するものとして,商品等表示性及び
周知性を備えた。
そのため,昭和60年から金久が倒産した平成14年までの間は,
金久や,金久にプライベート・ブランド商品の製造を委託していた会
社及び金久から暖簾分けを受けた会社以外に,「東京べったら漬」の
表示及びこれに類似する表示を使用する業者は存在せず,仮に存在し
たとしても,無視し得る規模,態様のものであった。
また,金久の「東京べったら漬」商品の昭和40年代から平成14
年までの累計売上額は,300億円を下らない。
b金久から原告への「東京べったら漬」表示の承継
金久は,平成14年に倒産した。原告は,同年,金久から,「東京
べったら漬」表示を使用する権利を含む,べったら漬けに関わるすべ
ての業務についての営業譲渡を受け,「東京べったら漬」表示の周知
性についても金久から承継した。
c原告による「東京べったら漬」表示(原告表示1-1)の使用開始
及び原告の使用による周知性の強化
原告は,金久から上記営業譲渡を受けたことを契機に,原告の製造
販売するべったら漬け商品に原告表示1-1を付して,販売促進を図
ることとした。
原告は,その後,次のとおり,原告表示1-1を継続的かつ大量に
使用し,「東京べったら漬」又はこれに類似する商品名のべったら漬
け商品の中での圧倒的なシェアを確保,維持するとともに,原告商品
について多数の宣伝広告をし,べったら市とのタイアップを図るなど
して,原告表示1-1の周知性を確固たるものとした。
(a)原告商品の市場占有率
あ原告は,金久から営業譲渡を受けた平成14年から平成21年
7月までの間に,原告表示1-1を使用した商品を約2805万
6532個販売した。その販売額の合計は,約45億2548万
5489円であり,1年間の売上額は約8億5000万円である。
い他方,べったら漬け市場全体の年間売上額は,40億円程度で
ある。
うまた,原告以外に「東京べったら漬」又はこれに類似する商品
名のべったら漬けを販売している業者の売上高は,最大の鈴木食
品でも,年間約1億2000万円ないしそれを下回る程度のもの
である(なお,鈴木食品の上記売上高は,包装等が一般消費者の
目に触れることのない,いわゆる樽もの商品(べったら漬け大根
が個々に包装されず,まとめて樽や発泡スチロール箱に入れられ
て販売されるもの。)が売上げの半分以上を占めている。)。そ
の他の業者の売上高は,すべての業者を含めても,年間約350
0万円にすぎない。
えしたがって,「東京べったら漬」又はこれに類似する商品名を
付して販売されるべったら漬け商品における原告商品の市場占
有率は,仮に樽もの商品を含めたとしても,売上高ベースで8割
以上であり(なお,原告商品の上記売上高には,樽もの商品は含
まれていない。),樽もの商品を含めない場合は,売上高ベース
で約9割である。
(b)原告商品の宣伝広告及びべったら市とのタイアップについて
あ原告は,新聞広告により,遅くとも平成14年ころから原告商
品1を含む原告の商品を,遅くとも平成16年ころから原告商品
2を宣伝広告しており,「東京べったら漬」(原告表示1-1)
及び「東京ゆずべったら漬」(原告表示2-1)が,それぞれ,
原告の商号を使わない形で,原告の商品名として記載され,原告
表示1-2及び同2-2の包装の写真も掲載されている。原告は,
ここ数年,これらの新聞広告のために毎年400万円から700
万円を支出している。
い原告は,東京都交通局の地下鉄車内,バス車内,都電車内,都
営交通案内所において,毎年2000枚ないし4000枚程度の
広告により,遅くとも平成14年ころから,べったら市,自社,
原告表示1-1ないし1-4及び原告商品1を含む原告の商品
を,遅くとも平成16年ころから原告商品2を宣伝広告しており,
1年あたり約70万円を支出している。
う原告は,遅くとも平成14年ころから,自社及び原告商品1を
含む原告の商品に関する店頭の看板等の販促物(平成16年ころ
からは原告商品2に関するものも含む)を小売店等に提供してお
り,ここ数年は900万円ないし1200万円を支出している。
え原告は,昭和22年から,「べったら市」に対し,のぼり,提
灯,法被その他の提供を行い,べったら市を全面的に支援するこ
とにより自社を宣伝し,かつ,遅くとも平成14年ころからは原
告商品1を含む原告の商品を,遅くとも平成16年ころからは原
告商品2を宣伝広告しており,ここ数年は,毎年約300万円を
支出している。
お以上のとおり,原告商品は,極めて多数の新聞記事で取り上げ
られ,多数の宣伝広告がされている。これらの新聞記事では,「東
京べったら漬」及び「東京ゆずべったら漬」が,原告の商号を伴
わない形で,原告の商品名として紹介されており,原告商品の包
装の写真も掲載されている。新聞広告においても,「東京べった
ら漬」及び「東京ゆずべったら漬」が原告の商品名として記載さ
れ,原告表示1-2及び原告表示2-2の包装の写真も掲載され
ている。
さらに,一般消費者向けには,スーパーのチラシ等の宣伝広告
のほか,べったら市とタイアップして原告が企画するキャンペー
ン等により,原告商品を含む原告のべったら漬け商品及び原告表
示が,消費者に強く印象付けられている。そして,テレビやマス
コミの影響もあって,東京日本橋の「べったら市」が開催される
10月になると,原告商品の売上げは急激に上がり,例年,年末
までその状態が続く。
(c)このように,「東京べったら漬」の表示を付したべったら漬け
商品における原告商品の市場占有率は,少なくとも8割以上である
上,業界紙,マスコミ報道,店頭でのべったら市企画等,「東京べ
ったら漬」として露出するものは,ほぼすべて原告の商品である。
そのため,大多数の消費者は,「東京べったら漬」といえば,原告
の商品を連想し,イメージする。
これらの事情に鑑みれば,原告表示1-1は,金久及び原告の使
用により識別力を取得し,遅くとも平成21年8月までには,商品
等表示性及び周知性を備えたものであるといえる。
(イ)原告表示1-2ないし1-4について
a原告表示1-2について
(a)原告は,平成14年以後,原告の製造販売するべったら漬けの
包装に原告表示1-2を表示した商品(原告商品1-2)を販売し
ている。
(b)原告が金久から営業譲渡を受けた平成14年から平成21年7
月までの期間における,原告商品1-2の販売数の合計は約891
万6887個である。その販売額の合計は,約14億128万17
24円であり,1年間の売上額は約3億円である。
(c)原告表示1-2の販売状況については,上記のとおりである。
また,原告表示1-2中の「東京べったら漬」という文字部分(原
告表示1-1)は,上記(ア)のとおり周知性を有するものである。
したがって,原告表示1-2は,遅くとも平成21年8月までに
は,原告の商品を示す表示として広く知られるようになったといえ
る。
b原告表示1-3について
(a)原告は,遅くとも平成18年以後,原告の製造販売するべった
ら漬けのうち「東京べったら漬一本」という商品の包装に原告表
示1-3を表示した商品(原告商品1-3)を販売している。
(b)原告商品1-3の1年間の売上額は約2000万円であるが,
べったら漬け商品の中で,商品名に「東京」及び「一本」と付した
商品は,原告商品1-3及び被告商品ハのみであり,原告商品1-
3の市場占有率は,100%である。
(c)原告表示1-3の販売状況については,上記のとおりである。
また,原告表示1-3中の「東京べったら漬」という文字部分(原
告表示1-1)及び原告表示1-3とほぼ同一の商品等表示である
原告表示1-2は,上記(ア)及び(イ)のとおり周知性を有するもの
である。
したがって,原告表示1-3は,遅くとも平成21年8月までに
は,原告の商品を示す表示として広く知られるようになったといえ
る。
c原告表示1-4について
(a)原告は,遅くとも平成18年以後,原告の製造販売するべった
ら漬けのうち「東京べったら漬スライス」という商品の包装に原
告商品1-4を表示した商品(原告商品1-4)を販売している。
(b)原告商品1-4の1年間の売上額は約400万円であるが,べ
ったら漬け商品の中で,商品名に「東京」及び「スライス」と付し
た商品は,原告商品1-4及び被告商品ニのみであり,原告商品1
-4の市場占有率は,100%である。
(c)原告表示1-4の販売状況については,上記のとおりである。
また,原告表示1-4中の「東京べったら漬」という文字部分(原
告表示1-1)は,上記(ア)のとおり周知性を有するものである。
したがって,原告表示1-4は,遅くとも平成21年8月までに
は,原告の商品を示す表示として広く知られるようになったといえ
る。
(ウ)原告表示2-1及び同2-2について
a原告商品2の販売開始時期
原告は,平成16年以後,原告の製造販売するゆず風味のべったら
漬けの包装に原告表示2-1(「東京ゆずべったら漬」)及び同2-
2を表示した商品(原告商品2)を販売している。
b原告商品2の売上高
原告は,平成14年から平成21年7月までの間に,原告商品2を
約69万5347個販売した。その販売額の合計は,約1億1098
万2460円であり,1年間の売上額は約4000万円である。
c原告商品2の市場占有率
べったら漬け商品の中で,「東京ゆずべったら漬」又はこれに類似
する商品名を有する商品は,原告商品2以外には存在しない。したが
って,原告商品2の市場占有率は,100%である。
d原告表示2-1の周知性について
原告表示2-1は,上記(ア)のとおり原告による長年の使用により
商品等表示性及び周知性を備えた原告表示1-1(「東京べったら
漬」)に,「ゆず」という文字が挿入されたものであり,原告表示1
-1に類似する。そのため,原告表示2-1は,需要者にとって,原
告の商品を示すものであると容易に認識することができる。
したがって,原告表示2-1は,遅くとも平成21年8月までには,
原告の商品を示す表示として広く知られるようになったといえる。
e原告表示2-2の周知性について
原告商品2は,平成16年以来,一貫して,原告表示2-2の包装
により販売されており,また,原告表示2-2中の「東京ゆずべった
ら漬」という文字部分は,上記dのとおり,商品等表示性及び周知性
を有する。
したがって,原告表示2-2は,遅くとも平成21年8月までには,
原告の商品を示す表示として広く知られるようになったといえる。
[被告らの主張]
(ア)原告表示1-1(「東京べったら漬」)及び同2-1(「東京ゆず
べったら漬」)は,商品等表示性を有しないこと
次のとおり,「東京べったら漬」は,東京の名産品としてのべったら
漬けの一般的名称であり,それ自体に出所表示機能や自他商品識別機能
を具備するものではない。また,金久ないし原告のみが「東京べったら
漬」の表示を独占的に使用している事実はなく,金久ないし原告の使用
によって「東京べったら漬」の表示が識別力を生じたものでもない。
「東京ゆずべったら漬」も,「ゆず味の」東京べったら漬という漬物
のことを示すにすぎず,それ自体に出所表示機能や自他商品識別機能を
具備するものではなく,原告のみが「東京ゆずべったら漬」という表示
を独占的に使用している事実もない。
a「東京べったら漬」及び「東京ゆずべったら漬」は,一般的名称で
あること
(a)「べったら漬け」は,江戸時代に日本橋の恵比寿神社の祭礼で
売られたことから始まる物品であり,その意味において,東京の名
産品としての「江戸べったら漬け」と称呼され,明治以降,東京発
祥の物品(東京名産)の代表として「東京べったら漬」として周知,
著名となり,「べったら漬け」といえば東京の名産品であると認識
されている。
「東京」は,「江戸」と同様に,べったら漬けの発祥の地(名産
品)としての意味であり,「東京べったら漬」は,「奈良漬け」や
「野沢菜漬け」,「仙台長なす漬け」と同様に,発祥地を示す「東
京」と商品名としての「べったら漬け」が結合したものであって,
「東京発祥のべったら漬」(東京名産のべったら漬)又は「東京の
べったら漬け」を意味することは明らかである。
このように,「東京べったら漬」は,東京の名産品としてのべっ
たら漬けの一般的名称であって,それ自体に出所表示機能や自他商
品識別機能を具備するものではなく,これによって,何人かの業務
に係る商品であることを認識することはできない。出所表示機能や
自他商品識別機能を発揮する表示は,後記のとおり,包装等に併記
した製造者名や販売業者名,屋号である。
(b)「東京ゆずべったら漬」という表示も,「ゆず風味のべったら
漬け」という漬物を意味するにすぎず,出所表示機能や自他商品識
別機能を具備するものではない。
b「東京べったら漬」及び「東京ゆずべったら漬」の表示は,使用に
より識別力を得たとはいえないこと
(a)金久による「東京べったら漬」表示の使用状況
金久が昭和60年ころから自社の商品に表示していたのは,「金
久の東京べったら漬」の商標であり,「東京べったら漬」を単独で
表示していた事実はなく,「金久の」文字と「東京べったら漬」の
文字は,常に一体化されて使用されていた。
金久が登録していた商標も,「東京べったら漬」ではなく,「金
久の東京べったら漬」であった。なお,「東京べったら漬」の文字
を含む商標として登録されている商標は,「金久の東京べったら漬」,
「東京新高屋の東京べったら漬」,「東京漬膳の東京べったら」な
どのように,「東京べったら漬」または「東京べったら」の前に商
標権者の社名や屋号が一体的に結合されて登録されているものであ
り,「東京べったら漬」のみで登録された商標は存在しない。
(b)原告による「東京べったら漬」表示の使用状況
原告が「東京べったら漬」の表示を付して販売している商品は,
単に「東京べったら漬」という表示がされているのではなく,必ず,
「東京新高屋」と一体的に表示して使用がされている。
原告は,「東京べったら漬」及び「東京ゆずべったら漬」が,原
告の商号を使わない形で,新聞記事や新聞広告に原告の商品名とし
て記載されたと主張する。しかしながら,原告が引用する新聞記事
及び宣伝広告においては,原告の商品について,原告の商号ないし
原告を指し示す「同社」等という記載と「東京べったら漬」,「東
京ゆずべったら漬」という記載とが一体表示されているものであり,
原告の商号と無関係に「東京べったら漬」ないし「東京ゆずべった
ら漬」が表示されている新聞記事及び宣伝広告は存在しない。また,
原告による宣伝広告の媒体は,食品新聞,食料新聞及び食品経済新
聞であり,その購入者は業界関係者のみであって,一般消費者が購
入するものではない。
(c)他社による「東京べったら漬」及び「東京ゆずべったら漬」の
使用状況
「東京べったら漬」の表示を使用していたのは,金久及び原告の
みではなく,鈴木食品ほか11社が「東京べったら漬」という表示
を付した商品を製造,販売していたことについては,前記(1)ア「被
告らの主張」(ア)のとおりである。
そして,鈴木食品の「東京べったら漬」の1年間の売上額は,2
億円を上回るものであり,その販売個数は,約125万個である。
また,ゆず風味のべったら漬けは,原告の他に,鈴木食品など7社
が販売しており,原告のみが「東京ゆずべったら漬」なる表示を独
占的に使用している事実はない。
(d)「東京べったら漬」及び「東京ゆずべったら漬」の表示の周知
性とべったら市との関係
原告は,べったら市の周知性の向上に伴い,原告のべったら漬け
商品の周知性が向上したと主張する。
しかしながら,べったら市では,「べったら漬け」という商品が
紹介されているものであり,これにより,「べったら漬け」という
商品の一般的名称としての周知性が向上するとしても,「東京べっ
たら漬」の周知性が向上するわけではない。いわんや,原告の商品
等表示である「東京新高屋の東京べったら漬」の周知性が向上する
わけでもない。
また,原告は,原告又は原告の商品を取り上げたテレビ番組や新
聞記事の存在について主張するが,これらは,べったら市に関する
ものであるか,又は,べったら漬けという商品を一般的に紹介する
中で付随的に原告の商品に触れているにすぎず,これによって,「東
京べったら漬」,又は,原告の商品等表示である「東京新高屋の東
京べったら漬」が周知であるとはいえない。
(イ)原告表示1-2ないし1-4及び同2-2の周知性について
a原告表示1-2ないし1-4について
原告は,「東京べったら漬」(原告表示1-1)の表示を付した商
品のすべてについて,原告表示1-2の包装を使用して販売している
ものではない。そして,原告以外に,鈴木食品その他の会社も,「東
京べったら漬」の表示を付したべったら漬け商品を販売していること
から,原告表示1-2を付した商品のシェアは,「東京べったら漬」
商品の全売上げのわずか26.37%であり,販売個数においても2
6.9%と小さいものである。また,原告は,原告表示1-2の包装
の写真が多数の新聞広告に掲載されているかのごとく主張するが,甲
第37号証の写真以外は,すべて原告表示1-2とは異なる包装の写
真である。
したがって,原告表示1-2が原告の商品を示す表示として広く知
られるようになったとはいえない。また,この点は,原告表示1-3
及び同1-4についても同様である。
b原告表示2-2について
原告表示2-2が「東京べったら漬」商品の全売上げに占めるシェ
アは約3.5%であり,商品の販売個数においても約3.4%であっ
て,極めて小さいものである。このような売上高,販売個数ともに少
ない商品についてシェアを論じること自体,周知性の認定にとっては
無意味である。
また,原告表示2-2が新聞広告に掲載されているものは,甲第3
7号証の写真しか存在しない。
したがって,原告表示2-2が原告の商品を示す表示として広く知
られるようになったとはいえない。
イ争点2-2(原告表示と被告包装は類似するか)について
[原告の主張]
以下のとおり,イ号包装,ハ号包装及びニ号包装の主たる文字部分は,
原告表示1-1に類似し,ロ号包装の主たる文字部分は,原告表示2-1
に類似する。また,イ号包装及びロ号包装は,それぞれ原告表示1-2及
び原告表示2-2に類似し,ハ号包装は原告表示1-2及び原告表示1-
3に,ニ号包装は原告表示1-4に,それぞれ類似する。
(ア)原告表示1-1とイ号包装,ハ号包装及びニ号包装の類似性につい

原告表示1-1(「東京べったら漬」)は,漬物の名称であり,「漬」
以外の「東京べったら」が要部である。
これに対し,イ号包装,ハ号包装及びニ号包装の主たる文字部分は,
「東京べったら」であり,これは,原告表示1-1の要部と共通する。
また,使用されている商品は,いずれも漬物である。
したがって,イ号包装,ハ号包装及びニ号包装の主たる文字部分は,
原告表示1-1と類似する。
(イ)原告表示1-2とイ号包装の類似性について
原告表示1-2及びイ号包装の外観は下図のとおりであり,両者は類
似する。その理由は,次のとおりである。
【原告表示1-2】
【イ号包装】
a原告表示1-2は,縦約12cm,横約25cmの透明な包装パッ
クに印刷されている。
これに対し,イ号包装は,縦約12cm,横約23cmの透明な包
装パックに印刷されている。
b原告表示1-2は,中央部に大きくはっきりと目立つ態様で,商品
名である「東京べったら漬」と毛筆字体で書かれている。
一方,イ号包装も,中央部に大きくはっきりと目立つ態様で,商品
名である「東京べったら」と毛筆字体で書かれている。
両者は,いずれも,その包装の内側に大根が入ることにより,中央
部に記された文字が目立ち,見る者の目に強く印象付けられる。
c原告表示1-2の中央部の商品名表示の下には,緑色の太い横線が
引かれ,その横線の上に白抜き文字で「低温熟成」と記され,さらに
「じっくりねかせて仕上げました。」と商品の説明が記されている。
一方,イ号包装の中央部の商品名表示の下には,青色の太い横線が
引かれ,その横線の上に白抜き文字で「白ざらめを使用した上品な味
わいが自慢の逸品です。」と商品の説明が記されている。
d原告表示1-2の下部は,左側から右側まで緑色で塗られており,
その上には白色の模様が記されている。また,包装の切り口が上下2
か所に赤色で示されるほか,包装中央部に赤色が配され,包装全体が,
緑・白・黒・赤の色彩から構成されている。
一方,イ号包装の下部は,左側から右側まで青色で塗られており,
その上には白色の模様が記されている。また,包装の切り口が上下2
か所に赤色で示されるほか,包装中央部に赤色が配され,包装全体が,
青・白・黒・赤の色彩から構成されている。
e原告表示1-2の右下部には,前記(1)ア[原告の主張](イ)bのと
おり,江戸の日本橋を描いた白黒の図絵が記されている。これに対し,
イ号包装の右下部には,江戸日本橋のべったら市の様子を描いた白黒
の図絵が記されている。
f以上のとおり,イ号包装は,次の点において原告表示1-2と共通
する特徴を採用している。
①原告表示1-2とほぼ同じ大きさの透明な包装パックを用い,
②原告表示1-2と同様に,中央部に,大きくはっきりと目立つ態
様で商品名である「東京べったら」の文字が毛筆字体で表記され,
③中央部の商品名表示の下には,原告表示1-2と同様に太い横線
を引き,白抜き文字で商品説明を加え,
④包装の下部は,左側から右側まで原告表示1-2に配された緑色
と類似する青色が配され,その上には白色の模様が記され,
⑤原告表示1-2と同様,包装の切り口は上下2か所に赤色で示さ
れ,包装中央部に赤色が配され,
⑥包装全体が原告表示1-2と同じく,4種類の色彩から構成され,
⑦包装の右下部には,日本橋のべったら市を描いた図絵が施されて
おり,
⑧上記②の「東京べったら」の文字は,原告表示1-2の中央部に
大きくはっきりと目立つ態様で毛筆字体で表記されている「東京べ
ったら漬」の文字と類似し,
⑨包装表面の構図は,ほぼ中央に,毛筆体で商品名である「東京べ
ったら」という文字を記載し,右側に図絵を描き,商品名の上に自
社名を記載し,上部は無色透明のまま,下部は左から右にかけて青
色が配され,大きさもほぼ同一であるなど,原告表示1-2の構図
と全く同一である。
gこれらを全体観察すれば,イ号包装が取引者や一般消費者に与える
印象は,原告表示1-2と変わらないものであり,イ号包装は原告表
示1-2に類似するといえる。特に,原告が東京<以下略>の老舗漬
物業者であり,原告表示1-2にも「東京・日本橋」と記載している
ところ,イ号包装に「東京」の文字や江戸の日本橋の「べったら市」
の図絵が記されていることは,原告表示1-2とイ号包装の類似性を
際立たせている。
(ウ)原告表示1-2及び原告表示1-3とハ号包装の類似性について
a原告表示1-2の外観及び特徴は,上記(イ)のとおりである。一方,
原告表示1-3の外観は下図のとおりであり,両者の外観は,包装の
サイズ(原告表示1-3は,縦約12cm,横約34cmの透明な包
装パックに印刷されている。)及び商品名の表示(原告表示1-3の
商品名は,「東京べったら漬一本」である。)以外は,ほぼ同じで
ある。また,ハ号包装の外観は下図のとおりであり,包装のサイズ(ハ
号包装は,縦約12cm,横約32cmの透明な包装パックに印刷さ
れている。)及び商品名の表示(ハ号包装は,「東京べったら」の表
示のやや右上部に,大きくはっきりと目立つ態様で「一本」と毛筆字
体で書かれている。)を除き,イ号包装の外観とほぼ同じである。
【原告表示1-3】
【ハ号包装】
b以上のとおり,ハ号包装は,次の点において,原告表示1-2及び
同1-3と共通する特徴を採用している。
①原告表示1-3とほぼ同じ大きさの透明な包装パックを用い,
②原告表示1-2及び同1-3と同様に,中央部に,大きくはっきり
と目立つ態様で,商品名である「東京べったら」の文字が毛筆字体
で表記され,
③中央部の商品名表示の下には,原告表示1-2及び同1-3と同
様に太い横線を引き,白抜き文字で商品説明を加え,
④包装の下部は,左側から右側まで原告表示1-2及び同1-3に
配された緑色と類似する青色が配され,その上には白色の模様が記
され,
⑤原告表示1-2及び同1-3と同様,包装の切り口は上下2か所
に赤色で示され,包装中央部に赤色が配され,
⑥包装全体が,原告表示1-2及び同1-3と同じく,4種類の色
彩から構成され,
⑦包装の右下部には,日本橋のべったら市を描いた図絵が施されて
おり,
⑧上記②の「東京べったら」の文字は,原告表示1-2及び同1-
3の中央部に大きくはっきりと目立つ態様で毛筆字体で表記されて
いる「東京べったら漬」の文字と類似し,
⑨包装表面の中央付近には,原告表示1-3の包装表面の中央付近
と同様,「東京べったら」に続けて「一本」と大きく記載されてお
り,
⑩包装表面の構図は,ほぼ中央に毛筆体で商品名である「東京べっ
たら一本」という文字を記載し,右側に図絵を描き,商品名の上
に自社名を記載し,上部は無色透明のまま,下部は左から右にかけ
て青色が配され,大きさもほぼ同一であるなど,原告商品1-3の
構図と全く同一である。
cこれらを全体観察すれば,ハ号包装が取引者や一般消費者に与える
印象は,原告表示1-2及び同1-3と変わらないものであり,ハ号
包装は,原告表示1-2及び同1-3に類似する。
(エ)原告表示1-4とニ号包装の類似性について
原告表示1-4及びニ号包装の外観は,次図のとおりであり,両者は
類似する。その理由は,次のとおりである。
【原告表示1-4】
【ニ号包装】
a原告表示1-4は,縦約10cm,横約12cmの透明な四角の容
器で,その中央部にラベルが貼られている。ニ号包装もまた,縦約1
0cm,横約12cmの透明な四角の容器で,その中央部にラベルが
貼られている。
b原告表示1-4のラベル部分には,大きくはっきりと目立つ態様で,
商品名の要部である「東京べったら漬」と毛筆字体で縦書きされてい
る。ニ号包装のラベル部分には,大きくはっきりと目立つ態様で,商
品名の要部である「東京べったら」と毛筆字体で縦書きされている。
c以上のとおり,原告表示1-4とニ号包装とは,類似している。
(オ)原告表示2-1とロ号包装の類似性について
原告表示2-1(「東京ゆずべったら漬」)は,漬物の名称であり,
「漬」以外の「東京ゆずべったら」が要部である。
これに対し,ロ号包装の主たる文字部分は,「東京ゆずべったら」で
あり,これは,原告表示2-1の要部と共通する。また,使用されてい
る商品は,いずれも漬物である。
したがって,ロ号包装の主たる文字部分は,原告表示2-1と類似す
る。
(カ)原告表示2-2とロ号包装の類似性について
原告表示2-2及びロ号包装の外観は次図のとおりであり,両者は類
似する。その理由は,次のとおりである。
【原告表示2-2】
【ロ号包装】
a原告表示2-2は,縦約12cm,横約25cmの透明な包装パッ
クに印刷されている。
これに対し,ロ号包装は,縦約12cm,横約23cmの透明な包
装パックに印刷されている。
b原告表示2-2は,中央部に大きくはっきりと目立つ態様で,商品
名である「東京ゆずべったら漬」と毛筆字体で書かれている。
一方,ロ号包装も,中央部に大きくはっきりと目立つ態様で,商品
名である「東京ゆずべったら」と毛筆字体で書かれている。
両者は,いずれも,その包装の内側に大根が入ることにより,中央
部に記された文字が目立ち,見る者の目に強く印象付けられる。
c原告表示2-2の中央部の商品名表示の下には,黄色の太い横線が
引かれ,その横線の上に「低温熟成」と記され,さらに小さな黒字で
「じっくりねかせて仕上げました。」と商品の説明が記されている。
一方,ロ号包装の中央部の商品名表示の下には,黄色の太い横線が
引かれ,その横線の上に小さな黒字で「白ざらめを使用した上品な味
わいが自慢の逸品です。」と商品の説明が記されている。
d原告表示2-2の下部は,左側から右側まで黄色で塗られており,
その上には白色の模様が記されている。また,包装の切り口が上下2
か所に赤色で示されるほか,包装中央部に赤色が配され,包装全体が,
黄・白・黒・赤の色彩から構成されている。
一方,ロ号包装の下部は,左側から右側まで黄色で塗られており,
その上には白色の模様が記されている。また,包装の切り口が上下2
か所に赤色で示されるほか,包装中央部に赤色が配され,包装全体が,
黄・白・黒・赤の色彩から構成されている。
e原告表示2-2の透明な部分には,やや弓なりで長さ数cmほどの
黄色い曲線が複数描かれている(あたかも細いゆず皮が宙を舞うよう
に描かれている。)。
一方,ロ号包装の透明な部分にも,同様に,やや弓なりで長さ数c
mほどの黄色い曲線が複数描かれている。
f原告表示2-2の右下部には,江戸の日本橋を描いた白黒の図絵が
記されている。
これに対し,ロ号包装の右下部には,江戸日本橋のべったら市を描
いた白黒の図絵が記されている。
g以上のとおり,ロ号包装は,次の点において,原告表示2-2と共
通する特徴を採用している。
①原告表示2―2とほぼ同じ大きさの透明な包装パックを用い,
②原告表示2-2と同様に,中央部に,大きくはっきりと目立つ態様
で,商品名である「東京ゆずべったら」の文字が毛筆字体で表記さ
れ,
③中央部の商品名表示の下に,原告表示2-2と同様に黄色の太い横
線を引き,黒色の文字で商品説明を加え,
④包装の下部は,左側から右側まで黄色が配されて塗られ,その上に
は白色の模様が記され,
⑤原告表示2-2と同様に,包装の切り口は,上下2か所に赤色で示
され,包装中央部に赤色が配され,
⑥包装全体が,原告表示2-2と同じく,黄・白・黒・赤の4色の色
彩から構成され,とりわけ,黄色が支配的であり,
⑦包装の右下部には,江戸日本橋のべったら市を描いた図絵が施され
ており,
⑧上記②の「東京ゆずべったら」の文字は,原告表示2-2の中央部
に大きくはっきりと目立つ態様で毛筆字体で表記されている「東京
ゆずべったら漬」の文字と類似し,
⑨包装表面の透明な部分に,原告表示2-2と同様に,やや弓なりで
長さ数cmほどの黄色い曲線が,あたかも細いゆず皮が宙を舞うよ
うに複数描かれており,
⑩包装表面の構図は,ほぼ中央に,毛筆体で商品名である「東京ゆず
べったら」という文字を記載し,右側に図絵を描き,商品名の上に
自社名を記載し,上部は無色透明のまま,下部は左から右にかけて
黄色が配され,大きさもほぼ同一であるなど,原告表示2-2の構
図と全く同一である。
hこれらを全体観察すれば,ロ号包装が取引者や一般消費者に与える
印象は,原告表示2-2と変わらないものであり,ロ号包装は原告表
示2-2に類似するといえる。
[被告らの主張]
(ア)原告表示1-1とイ号包装,ハ号包装及びニ号包装の主要な文字部
分の類似性について
原告は,原告表示1-1(「東京べったら漬」)とイ号包装,ハ号包
装及びニ号包装の文字部分(「東京べったら」)とを対比する。
しかしながら,前記ア[被告らの主張]のとおり,そもそも,原告表
示1-1は,不競法2条1項1号の他人の商品等表示には該当しない。
また,イ号包装,ハ号包装及びニ号包装についても,「東京べったら」
の文字部分のみが商品等表示として使用された事実はない。
したがって,イ号包装,ハ号包装及びニ号包装の文字部分と原告表示
1-1を対比することは,誤りである。
(イ)原告表示1-2及び同1-3とイ号包装及びハ号包装の類似性につ
いて
a包装の形態及び商品名の表示位置について
原告表示1-2及び同1-3とイ号包装及びハ号包装は,いずれも,
横長透明な包装の正面側に商品名を表示して成る態様において,共通
する。しかしながら,これは,この種のべったら漬け商品の包装とし
ては原告のみならず同業他社でも古くから使用されている,ありふれ
た包装の形態であり,包装の正面側に商品名を表示することも,周知
の態様である。
b包装の文字部分について
(a)原告表示1-2及び同1-3の正面には,「東京」と「べった
ら漬」の文字が,黒色で同書同大で横一列に配置表示されるととも
に,この横一列の文字の略中央部分の上方側に,屋号としての「東
京新高屋」の5文字とその社章が,赤色の暖簾に白抜きにして表示
されている。また,該暖簾の左側には,やや小さく,「東京・日本
橋」と表示されている。
このような表示態様に加え,前記ア[被告らの主張]のとおり,
「東京べったら漬」自体には商品識別力や出所表示機能がないこと
からすると,原告表示1-2及び同1-3においては,「東京新高
屋」という屋号が商品識別力ないし出所表示機能を有するものであ
り,上記表示からは,「東京新高屋の東京べったら漬」,「トーキ
ョウニイタカヤノトーキョーベッタラヅケ」,又は,識別力のある
文字から「トーキョウニイタカヤ」と称呼されるのが自然である。
(b)これに対し,イ号包装ないしハ号包装の正面には,「東京」の
文字のうち,「東」が左上がりで他の文字より大きく表示され,か
つ,「京」の横に「べったら」と表示され,しかも,「東京」は「べ
ったら」より大きく表示され,かつ,各文字は黒色で,その外周縁
は白色で縁取りされ,前記「京べったら」の上方には,同様に白色
で縁取りされた屋号としての「東京漬膳の」との黒文字が表示され
ている。
このようなイ号包装及びハ号包装の表示態様からすると,上記表
示は,「東京漬膳の東京べったら」,「トーキョウツケゼンノトー
キョーベッタラ」,又は「トーキョウツケゼン」と称呼されるのが
自然である。
(c)以上のとおり,原告表示1-2及び同1-3とイ号包装及びハ
号包装の文字部分は,明らかに称呼が相違するのみならず,外観,
観念においても類似しない。
c包装のその他の表示態様について
(a)原告表示1-2及び同1-3の右下にやや小さく描かれた図絵
は,著名な歌川広重の「東海道五十三次の日本橋」の浮世絵を模写
した図絵であることが何人でも容易に判別することができる。
これに対し,イ号包装及びハ号包装の右側略半分に大きく描かれ
た図絵は,江戸時代の町の風景画であって,原告表示1-2及び同
1-3の日本橋の図絵とは全く異なる図形である。
(b)また,原告表示1-2及び同1-3における日本橋の図絵は,包
装の下辺に緑色で凹凸状に縁取りされた右側の凹状部内に小さく配
置されている。
これに対し,イ号包装における風景画は,その上方の空が青色で,
かつハート型の帯で大きく区画表示されており,風景画の左下方側
は白色のさざ波風の大きな幅のある海風に青色で描かれている。
(c)このように,原告表示1-2及び同1-3の包装表示とイ号包
装及びハ号包装の包装表示とは,全体のデザインコンセプトが明ら
かに相違し,図柄の構成が全く異なるとともに色彩も異なるもので
あって,これが類似することはあり得ない。
(ウ)原告表示1-4とニ号包装の類似性について
a原告表示1-4とニ号包装は,いずれも,透明な四角の容器の中央部
にラベルが貼られ,商品名を表示している態様において共通する。
しかしながら,この種のべったら漬けの包装は,原告だけでなく同
業他社でも古くから使用されている,ありふれた包装の形態である。
また,包装の中央部にラベルが貼られて商品名を表示することも,周
知の態様である。
b原告表示1-4では,包装の正面右端部分に,「東京」と「べった
ら漬」の文字が黒色で縦列に配置表示されているが,「東京」と「べ
ったら漬け」の大きさは異なり,左上部分には屋号としての「東京新
高屋」の5文字が赤字で横書きに表示されており,右下部分には,赤
地に白抜きで「スライス」と表示されている。このような表示態様に
加え,「東京べったら漬」自体には自他商品識別力や出所表示機能が
ないことからすると,原告表示1-4においては,「東京新高屋」と
いう屋号が自他商品識別力ないし出所表示機能を有するものであり,
上記表示からは,「東京新高屋の東京べったら漬」,「トーキョウニ
イタカヤノトーキョウベッタラヅケ」,又は,識別力のある文字から
「トーキョウニイタカヤ」と称呼されるのが自然である。
cこれに対し,ニ号包装の中央部分には,「東京」の文字と「べった
ら」の文字が,同書同大で2行にわたって表示され,右上部には,屋
号としての「東京漬膳の」との文字が青地に白抜きで縦書きに表示さ
れている。このようなニ号包装の表示態様からすれば,上記表示は,
「東京漬膳の東京べったら」,「トーキョウツケゼンノトーキョーベ
ッタラ」,又は「トーキョウツケゼン」と称呼されるのが自然である。
dしたがって,原告表示1-4とニ号包装の文字部分は,明らかに称呼
が相違するのみならず,外観,観念においても類似するものではない。
(エ)原告表示2-1の主要な文字部分とロ号包装の類似性について
原告は,原告表示2-1(「東京ゆずべったら漬」)とロ号包装の文字
部分(「東京ゆずべったら」)とを対比する。
しかしながら,そもそも,原告表示2-1は,不競法2条1項1号の他
人の商品等表示には該当しないものであり,ロ号包装についても,「東京
ゆずべったら」の文字部分のみが商品等表示として使用された事実はな
い。
(オ)原告表示2-2とロ号包装の類似性について
a包装の形態及び商品名の表示位置について
原告表示2-2とロ号包装は,いずれも,横長透明な包装の正面側に
商品名を表示して成る態様において,共通する。しかしながら,これは,
この種のべったら漬け商品の包装としては原告のみならず同業他社で
も古くから使用されている,ありふれた包装の形態であり,包装の正面
側に商品名を表示することも,周知の態様である。
b包装の文字部分について
(a)原告表示2-2の正面には,「東京」と「ゆずべったら漬」の
文字が,黒色で同書同大で横一列に配置表示されるとともに,この
横一列の文字の略中央部分の上方側に,屋号としての「東京新高屋」
の5文字とその社章が,赤色の暖簾に白抜きにして表示されている。
また,該暖簾の左側には,やや小さく,「東京・日本橋」と表示さ
れている。
このような表示態様に加え,「東京ゆずべったら漬」自体には自
他商品識別力や出所表示機能がないことからすると,原告表示2-
2においては,「東京新高屋」という屋号が自他商品識別力ないし
出所表示機能を有するものであり,上記表示からは,「東京新高屋
の東京ゆずべったら漬」,「トーキョウニイタカヤノトーキョウユ
ズベッタラヅケ」,又は,識別力のある文字から「トーキョウニイ
タカヤ」と称呼されるのが自然である。
(b)これに対し,ロ号包装の正面には,「東京」の文字のうち,「東」
が左上がりで他の文字より大きく表示され,かつ,「京」の文字と
「べったら」の文字との間にこれらの文字色(黒)と異なる赤色文
字で縦書きの「ゆず」の文字が挿入されて表示され,しかも,「東
京」は「べったら」より大きく表示され,かつ,各文字は「ゆず」
を除き黒色で,その外周縁は白色で縁取りされ,前記「京べったら」
の上方には,同様に白色で縁取りされた屋号としての「東京漬膳の」
との黒文字が表示されている。
このようなロ号包装の表示態様からすると,上記表示は,「東京
漬膳の東京べったら」,「トーキョウツケゼンノトーキョーベッタ
ラ」,又は「トーキョウツケゼン」と称呼されるのが自然である。
(c)以上のとおり,原告表示2-2とロ号包装の文字部分は,明ら
かに称呼が相違するのみならず,外観,観念においても類似しない。
c包装のその他の表示態様について
(a)原告表示2-2の右下にやや小さく描かれた図絵は,著名な歌
川広重の「東海道五十三次の日本橋」の浮世絵を模写した図絵であ
る。
これに対し,ロ号包装及びハ号包装の右側略半分に大きく描かれ
た図絵は,江戸時代の町の風景画であって,原告表示2-2の日本
橋の図絵とは全く異なる。
(b)また,原告表示2-2における日本橋の図絵は,包装の下辺に黄
色で凹凸状に縁取りされた右側の凹状部内に小さく配置されている。
これに対し,ロ号包装における風景画は,その上方が黄色で,か
つハート型の帯で大きく区画表示(ゆずを截断した状態表示)され
ており,風景画の左下方側は白色のさざ波風の大きな幅のある海風
に黄色で描かれている。
(c)原告表示2-2の左上方には,「ゆず味」の文字とゆずの実の
図柄が大きく表示されている。これに対し,ロ号包装には,このよ
うな表示態様はない。
(d)このように,原告表示2-2の包装表示とロ号包装の包装表示
とは,全体のデザインコンセプトが明らかに相違し,図柄の構成が
全く異なるとともに色彩も異なるものであって,これが類似するこ
とはあり得ない。
ウ争点2-3(被告商品を販売等することは原告表示と混同を生じさせる
か)について
[原告の主張]
(ア)原告表示と被告包装の類似性
前記イ[原告の主張]のとおり,イ号包装,ハ号包装及びニ号包装の
主たる文字部分は原告表示1-1に類似し,ロ号包装の主たる文字部分
は原告表示2-1に類似する。また,イ号包装及びロ号包装は,それぞ
れ原告表示1-2及び原告表示2-2に類似し,ハ号包装は原告表示1
-2及び原告表示1-3に,ニ号包装は原告表示1-4に,それぞれ類
似する。
(イ)原告が東京の名産品である「東京べったら漬」の製造者であり,べ
ったら市に出店している業者であることは,需要者の間に広く知られて
ること
a前記イ[原告の主張]のとおり,原告表示は,遅くとも平成21年
8月までには周知になっていたものであり,原告の商品は,東京<以
下略>のべったら漬けの老舗メーカーである原告の製造する東京の名
産品のべったら漬けであるという認識も,需要者の間に定着している。
b原告表示と被告包装のいずれにも挿入されている日本橋の図絵は,
「ベったら市」の販促企画のポスターなどの印象と密接に関連するもの
である。原告は,長年にわたり,全国の各スーパーで「べったら市」
特別企画を行い,店頭デザインパネルや新聞広告において「お江戸日
本橋」の「東京べったら漬」とうたい,マスメディアの露出にあわせ
て,「東京の観光行事にベったら市があり」その「日本橋べったら市
に出店して販売している」東京ベったら漬けの商品として原告商品を
店頭に表示しており,原告商品は,毎年,一般消費者の記憶に刷り込
まれ続けてきている。
そのため,被告包装上の上記図絵の存在により,需要者は,べった
ら市,ひいては,べったら市に出店している業者(すなわち,原告)
を想起する。
c他方,被告包装は,被告東京漬膳の会社名や商品名として,「東京」
の文字を含むものであるが,被告東京漬膳は,平成21年9月以前は
商品の販売実績を有しなかったものであり,現在も固有の従業員を有
さず,品質管理を担当する従業員も存在しない,実体のない会社であ
る。また,被告らは,べったら市に参加したり,協賛,協力したりし
たことは一度もないにもかかわらず,イ号包装ないしハ号包装の右下
部には江戸日本橋のべったら市の図絵が挿入されている。
このように,べったら市に全く関与したこともなく,縁もゆかりも
ない被告東京漬膳のべったら漬け商品の包装に,江戸日本橋のべった
ら市の図絵を用いれば,流通小売各社及び問屋等の取引業者並びに一
般消費者において,原告商品との誤認混同を生じる。
(ウ)また,スーパーを始めとする小売店等では,定番商品としては1社の
商品しか取り扱われないものであり,この状態が,原告商品1について
は平成14年ころから,原告商品2については平成16年ころから継続
し,原告商品のみが,数年以上ほぼ同じ陳列場所に陳列され続けていた。
さらに,原告は,毎年,べったら市が開催される時期になると,マス
メディアでの露出にあわせて大々的に「べったら市」企画を催し,ポス
ターやポップ,チラシ等の販促物を展示・配布しており,原告商品は,
確実に消費者の記憶に焼き付いている。
このように長期間原告表示を目にしていた取引者や一般消費者が,あ
る日突然,同じ陳列場所に,原告商品の包装に類似した包装の被告商品
が原告商品と置き換えられているのを目にすれば,過去の原告商品の包
装についての記憶と無意識に関連付け,被告商品が原告商品と同一であ
るか,又は同じ出所であると誤認混同してしまうのは当然である。
[被告らの主張]
(ア)原告表示と被告包装とが類似するものでないことについては,前記
イ[被告らの主張]のとおりである。特に,原告商品の包装の表面には
「東京新高屋」という屋号が明記されており,他方,被告包装の表面に
は「東京漬膳」という屋号が明記されているのであって,両者が誤認混
同されるおそれはない。流通小売各社が,商品名に「東京べったら漬」
と記載され,商品の販売者欄に「東京」という文字が記載されているこ
とをもって,出所を混同することはあり得ない。
また,卸売業者や小売業者は,商品の包装表示から購入するかどうか
を判断するのではなく,むしろ,味と価格で商品を吟味するのであって,
この点からしても,原告の商品と被告商品とが誤認混同されるおそれは
ない。
さらに,べったら漬けは,スーパーをはじめとする小売店等では,定
番商品として1社の商品のみが取り扱われる傾向があり,このような販
売形態がとられているべったら漬けにおいて,一般消費者が商品の出所
を誤認混同することはあり得ない。
(イ)原告は,被告らがべったら市に参加,協賛,協力をしたことが一度
もないのに,べったら市の図絵をイ号包装ないしハ号包装に挿入してい
ると主張する。
しかしながら,イ号包装ないしハ号包装は,べったら漬けの発祥地と
いわれる江戸でべったら漬けを販売している町の風景が描かれたもの
にすぎず,べったら市の絵でもなければ,べったら市を想起させるもの
でもない。また,東京べったら漬けの小売包装において,江戸時代ころ
の絵が挿入されているものとしては,被告商品の他に,株式会社八幡屋
の商品も存在する。
したがって,上記のような想像画にすぎないものを包装に表示してい
ることによって,被告商品が原告商品と誤認混同を生じさせるものであ
るとはいえない。
(3)争点3(一般不法行為の成否)について
[原告の主張]
仮に,被告らに不正競争行為が認められないとしても,被告らの行為は,
次のとおり,民法709条の不法行為に該当する。
ア原告は,東京を本拠に昭和5年に創業した新高屋の,べったら漬けの老
舗製造業者としての地位を引き継ぎ,東京・日本橋の「べったら市」の振
興及び周知に尽力し,「べったら漬けといえば新高屋」と言われるまでに
自社のブランドを築き上げ,特に平成14年以降は,「東京べったら漬」
及び「東京ゆずべったら漬」のブランドを高めてきた。
その結果,べったら漬けの市場において,「東京べったら漬」は,単な
るべったら漬け商品とは異なる高価格帯で販売されるブランドとして確立
され,また,市場に出回る「東京べったら漬」なる商品のほとんどを,原
告の商品が占めている。このような原告の「東京べったら漬」ブランドの
構築には,原告の多大な費用と労力がかけられている。
イ被告備後漬物は,平成14年以来,中国地方最大の問屋として,原告の
「東京べったら漬」商品を取り扱ってきたものであるが,原告が全国の各
小売店で大々的な販促活動を行って「東京べったら漬」の売上げを伸ばし
ていることに目を付け,突如,べったら漬け市場に参入し,しかも,原告
が被告備後漬物に卸してきた主力商品である「東京べったら漬」,「東京
ゆずべったら漬」,「東京べったら漬一本」及び「東京べったら漬ス
ライス」と同じ商品構成である,「東京べったら」,「東京ゆずべったら」,
「東京べったら(一本)」及び「東京べったら(スライス)」の4品目を
取り揃えた。また,被告備後漬物は,商品パッケージのデザインには無数
の選択肢があるにもかかわらず,べったら市を想起させる図絵を載せるな
どして,被告商品の包装を対応する原告商品の包装(原告表示1-2ない
し1-4,原告表示2-2)に類似させた。
ウべったら漬けは,各小売店において,通常,定番商品としては1社の商
品しか取り扱われないものであり,被告商品は,原告商品に置き換えられ
て販売されている。
また,被告らは,被告商品は東京の原材料を使用するものではなく,東
京で製造又は加工するものでもないため,商品名に「東京」と付すること
のできる理由がないにもかかわらず,「東京べったら」「東京ゆずべった
ら」「東京べったら(一本)」「東京べったら(スライス)」という商品
名を使用して,安価に第三者に委託製造させたべったら漬けを,原告商品
と同様の高価格帯で販売している。
これは,原告がべったら漬けの老舗製造業者として多大な費用と労力を
投資して築き上げてきた「東京べったら漬」ブランドに乗じて被告商品を
販売しているものであり,あたかも,被告商品が原告商品と同じ品質であ
るかのような体裁を生じさせている。
エこのような被告らの行為は,取引における公正かつ自由な競争として許
される範囲を逸脱しており,不法行為に該当するものであり,上記不法行
為を行うにつき,被告らには,故意又は過失がある。また,被告備後漬物
は,平成21年9月以前から原告商品を取り扱っていたものであり,被告
東京漬膳は,被告備後漬物の役員によって設立され,かつ役員を共通にす
る会社であるから,被告らの行為は,客観的に共同でされたものである。
[被告らの主張]
不競法の対象とならない行為が民法709条所定の一般不法行為となるか
否かの判断に当たっては,市場における競争は本来自由であることを考慮し
なければならない。市場における競争は本来自由であるべきであり,一定の
範囲の行為についてのみ不正競争行為としてこれを規制する不競法の趣旨に
照らせば,同法において規制対象とならない行為については,当該行為が市
場において利益を追求するという観点を離れて,殊更に相手方に損害を与え
ることのみを目的としてされたような特段の事情が存在しない限り,民法7
09条の一般不法行為を構成することもないというべきである。
本件において,原告は,被侵害利益,被告らの加害行為,被告らの故意に
ついてるる主張するものの,結局のところ,これらは不競法2条1項1号違
反を基礎付ける事実の主張の繰返しにすぎず,上記特段の事情が存在しない
ことは明らかである。
(4)争点4(原告の損害)について
[原告の主張]
ア被告らの共同行為
(ア)被告備後漬物は,平成21年9月以前から原告商品を取り扱ってい
たものであり,被告東京漬膳は,被告備後漬物の役員によって設立され,
かつ役員を共通にする会社である。
(イ)したがって,被告らには,前記不競法2条1項13号及び同1号の
不正競争行為を行うにつき,故意又は過失がある。また,被告らの行為
は,客観的に共同でされたものである。
イ不競法5条2項により推定される損害
被告らは,平成21年9月から本件訴訟の提起日である平成22年6月
18日までの間に,被告商品の販売等による不正競争行為によって,次の
とおり,合計3000万円以上の利益を上げており,これは,原告の得べ
かりし利益と推定される(不競法5条2項)。したがって,被告らは,上
記期間における被告商品の販売について,原告に対し,連帯して3000
万円を支払う義務を負う。
(ア)被告商品1個当たりの販売利益
被告商品は,いずれも,鈴木食品から被告東京漬膳に対して販売され,
被告東京漬膳から被告備後漬物に転売された後,被告備後漬物から小売
店に販売された。被告らにおける被告商品1個当たりの販売利益は,次
のとおりである。
a被告商品イ及び被告商品ロについて
被告東京漬膳は,被告商品イ及び被告商品ロを鈴木食品から1個当
たり平均120円で購入し,被告備後漬物に対し,1個当たり平均1
60円で販売した。
被告備後漬物は,スーパー等の小売店に対し,これらの商品を1個
当たり平均200円で販売した。被告備後漬物がこれらの商品の販売
について支出する経費の額は,被告東京漬膳が鈴木食品からこれらの
商品を購入した金額の7.5%程度である。
したがって,被告らは,被告商品イ及び被告商品ロの販売について,
被告ら合計で1個当たり少なくとも71円(200円-(120円+120円
×7.5%)=71円)の利益を得た。
b被告商品ハについて
被告東京漬膳は,被告商品ハを鈴木食品から1個当たり平均150
円で購入し,被告備後漬物に対し,1個当たり平均200円で販売し
た。
被告備後漬物は,スーパー等の小売店に対し,被告商品ハを1個当
たり平均250円で販売した。被告備後漬物が被告商品ハの販売につ
いて支出する経費の額は,被告東京漬膳が鈴木食品から被告商品ハを
購入した金額の8%程度である。
したがって,被告らは,被告商品ハの販売について,被告ら合計で
1個当たり少なくとも88円(250円-(150円+150円×8%)=88
円)の利益を得た。
c被告商品ニについて
被告東京漬膳は,被告商品ニを鈴木食品から1個当たり平均90円
で購入し,被告備後漬物に対し,1個当たり平均120円で販売した。
被告備後漬物は,スーパー等の小売店に対し,被告商品ニを1個当
たり平均150円で販売した。被告備後漬物が被告商品ニの販売につ
いて支出する経費の額は,被告東京漬膳が鈴木食品から被告商品ニを
購入した金額の7.5%程度である。
したがって,被告らは,被告商品ニの販売について,被告ら合計で
1個当たり少なくとも55.5円(150円-(90円+90円×7.5%)=
55.5円)の利益を得た。
(イ)被告商品の販売個数
被告らは,平成21年9月から平成22年6月18日までの間に,被
告商品イを28万個以上,被告商品ロを9万個以上,被告商品ハを6万
個以上,被告商品ニを6万個以上,それぞれ販売した。
(ウ)したがって,被告らが平成21年9月から平成22年6月18日ま
での間に被告商品の販売により得た利益の額は,被告商品イにつき19
88万円(71円×28万個),被告商品ロにつき639万円(71円×9万
個),被告商品ハにつき528万円(88円×6万個),被告商品ニにつ
き333万円(55.5円×6万個)を下らず,これらの合計額は3488
万円を下らない。
原告は,この一部請求として,イ号商品につき1900万円,ロ号商
品につき600万円,ハ号商品につき490万円及びニ号商品につき1
0万円(合計3000万円)を請求する。
ウ信用毀損,弁護士費用等の損害
原告は,上記アの損害のほか,被告らの不正競争行為によって,以下の
とおり,営業上の損失を蒙り,又は費用を支出したので,被告らに対し,
この損害の賠償を求める。
(ア)信用毀損による損害300万円
(イ)侵害調査費用200万円
(ウ)弁護士費用1500万円
[被告らの主張]
ア上記[原告の主張]ア(被告らの共同行為)については,(ア)の事実は
認め,(イ)の事実ないし主張は否認ないし争う。
イ上記[原告の主張]イ(不競法5条2項により推定される損害)につい
ては,否認ないし争う。
被告商品イ,被告商品ロ及び被告商品ハ(以下,これらの商品を併せて
「被告商品イないしハ」という。)の販売による被告らの利益は,次のと
おりである。
(ア)被告東京漬膳の利益の額
a被告東京漬膳は,鈴木食品から,被告商品イ及び被告商品ロを1個
当たり●(省略)●円で購入し,被告商品ハを1個当たり●(省略)
●円で購入した。
被告東京漬膳は,被告備後漬物に対し,被告商品イないしハを販売
した。被告東京漬膳の被告備後漬物に対する被告商品イないしハの販
売価額は,被告東京漬膳が鈴木食品に支払った代金(消費税抜き)に
●(省略)●%を乗じた金額を付加した金額であった。
b被告東京漬膳は,鈴木食品に対し,平成21年9月1日から平成2
3年3月31日までの間に製造された被告商品イないしハの代金とし
て,別表1「東京漬膳べったら3品仕入金額一覧」のとおり,合計●
(省略)●円に消費税を付加した●(省略)●円を支払った。
他方,被告東京漬膳は,同被告が平成21年9月1日から平成23
年3月31日までの間に被告備後漬物に販売した被告商品イないしハ
の代金として,被告備後漬物から,別表2「備後漬物べったら3品販
売データー」(以下,単に「別表2」という。)のとおり,合計●(省
略)●円に消費税を付加した●(省略)●円の支払を受けた。
cしたがって,被告東京漬膳が平成21年9月1日から平成23年3
月31日までの間に被告商品イないしハの販売により得た利益の額は,
最大でも●(省略)●円(●(省略)●円-●(省略)●円)である。
(イ)被告備後漬物の利益の額
a被告備後漬物は,平成21年9月1日から平成23年3月31日ま
での間に,別表2のとおり,被告商品イないしハの販売により合計●
(省略)●円の売上げを得た。
一方,同期間中に被告備後漬物が被告東京漬膳に支払った被告商品
イないしハの代金額は,上記(ア)bのとおり●(省略)●円である。
b被告備後漬物は,被告東京漬膳から購入した被告商品イないしハを
全国の取引先に販売するに当たり,商品の運搬費,センターフィー(集
中配送センターを有する取引先に商品を搬送する場合に,集中配送セ
ンターから各小売店舗への搬送に要する運搬費),リベート(取引先
への販売額に応じて取引先に対して支払う割戻し),データ処理料(取
引先がオンライン発注システムを利用する場合に,取引先からいわゆ
る手間賃として請求されるもの)及び特売条件による負担(取引先が
被告備後漬物から購入した商品を一般消費者に対して販売するに際し
て,割引等を行って販売促進をする場合に,被告備後漬物が当該割引
分を負担するもの)などとして,別表2のとおり,合計●(省略)●
円を支出した。これらの費用は,被告商品イないしハの販売のために
追加的に増加した費用であるから,被告備後漬物の利益を算定するに
当たって控除すべきである。
cしたがって,平成21年9月1日から平成23年3月31日までの
間に被告備後漬物が被告商品イないしハの販売により得た利益の額は,
最大でも●(省略)●円(●(省略)●円-●(省略)●円-●(省
略)●円)である。
(ウ)被告商品の販売に対する被告包装の寄与度
被告商品の売上げ及び利益の獲得には,次のとおり,被告備後漬物の
独自の営業努力,信用,被告商品自体の品質の高さなどが寄与するとこ
ろが大きいものである。被告商品の販売に対する被告包装の寄与は,皆
無であるか,又は極めて小さいものである。
a被告備後漬物の業態及び販売地域
被告商品は,被告東京漬膳が鈴木食品から購入した商品のすべてが
被告備後漬物に販売され,被告備後漬物の販売網を通じて,卸業者や
小売業者に販売された。被告商品の売上げは,その約85%が西日本
地域におけるものである。
被告備後漬物は,昭和21年に広島県で創業して以来,西日本を中
心に,卸売業者や小売業者に対して各種漬物を販売しており,特に,
キムチに関しては,その売上げや販売数量は日本でトップクラスであ
る。被告備後漬物は,被告商品の販売に際しても,西日本における同
社の営業網や営業力の強みを生かし,その販売力や販売網を駆使する
ことによって,その売上げを伸ばしたものである。
b被告商品の品質
被告商品は,「味」が決め手となる「漬物」である。需要者は,被
告商品の「味」を選択して被告商品を購入するものであり,被告包装
に着目して被告商品を購入するわけではない。また,被告商品は食品
であるから,「安全」,「安心」という点も,需要者が商品を購入す
る強い動機となる。
この点,被告備後漬物が販売する漬物は,「味」が良いということ
だけでなく,「安心・安全な漬物」として広く認知されている。被告
備後漬物の主力商品であるキムチが,国際的な品評機関である「モン
ドセレクション」の金賞を受賞している事実は,このことを端的に示
している。また,被告商品イは,モンドセレクションの2011年度
銀賞を受賞しており,同商品自体も高い品質を有するものである。
被告商品の売上げには,このような,「高品質な漬物を長年にわた
って提供してきた備後漬物が販売する漬物」であるという需要者の信
頼及び被告商品の品質の高さが,大きく寄与している。
c被告備後漬物の提案力,企画力
被告備後漬物は,長年の営業経験を生かし,各取引先に対し,商品
展示方法や商品の陳列方法等について独自な提案を行っており,これ
らの提案力や企画力が取引先に評価され,売上げを伸ばしている。被
告商品の売上げの向上は,被告備後漬物の企画力や提案力という,他
社にはない独自な営業手法が功を奏したものである。
d被告商品の販売形態
スーパー等の小売店の陳列棚には,通常,特定の1社のべったら漬
けのみが陳列される。そのため,べったら漬けの販売(仕入れ)に当
たっては,仕入担当者(購入者)との人的関係,商品の企画力・品質
・価格等が,最大の要因となる。
このような事情の下で,被告商品の売上げについては,上記aない
しcの被告備後漬物の人的ネットワーク・営業網・販売網,被告商品
の品質の高さ,被告備後漬物の企画力こそが寄与したものであり,商
品の包装に着目して商品が購入されることはほとんどない。
e被告包装の色彩及び「東京漬膳の」という表示
「べったら漬け」及び「東京べったら漬」を販売している各社の商
品包装の色彩は,ほとんどが「緑色」である。これに対し,イ号包装
の色彩は,従来の包装には存在しない「青色」を採用したため,取引
先業者の目にとまり,イ号包装を使用した被告商品の売上げに貢献し
た。
また,被告包装には,「東京漬膳の」という表示が,購入者から一
見して明らかな態様で明記されているため,購入者が被告商品を原告
の商品と誤認することは考え難い。
f被告商品の包装表示
べったら漬け及び東京べったら漬けは,原告及び被告ら以外にも多
数の企業が販売し,その包装表示は,「屋号」や「商号」を除き,各
社が独自に,又は類似するものを用いているが,包装表示にとって重
要な表示は,その出所識別標識としての販売業者の「屋号」や「商号」
であって,包装デザインではない。
また,本件では,前記(2)ア[被告らの主張](ア)のとおり,原告表
示1-1(「東京べったら漬」)及び同2-1(「東京ゆずべったら
漬」)には出所表示機能や自他商品識別機能がないため,この表示を
度外した包装表示が,被告商品の需要を喚起せしめて商品の販売に寄
与した程度が検討されなければならない。このような見地からすると,
被告包装の被告商品の販売に対する寄与は,皆無であるといえる。
イ上記[原告の主張]イ(信用毀損,弁護士費用等の損害)については,
否認ないし争う。
[被告らの主張に対する原告の反論]
ア上記[被告らの主張]イ(ア)(被告東京漬膳の利益の額)及び(イ)(被告
備後漬物の利益の額)については,おおむね認める。
イ上記[被告らの主張]イ(ウ)(被告商品の販売に対する被告包装の寄与
度)については,否認ないし争う。
被告らは,商品包装のデザインや掲載する図絵,包装パッケージの形態
や大きさには無数の選択肢があるにもかかわらず,被告商品の包装の表示
態様を原告商品の包装に意図的に類似させ,一般消費者らに原告商品との
誤認混同を生じさせて,被告商品を販売した。また,被告包装は,包装表
示のデザイン・図絵が原告商品の包装と類似するだけでなく,包装の素材,
形状,大きさに至るまで,原告商品と同一,又は極めて類似している。し
たがって,被告商品の売上げに被告包装が寄与したことは明らかである。
被告らが主張する事情は,次のとおり,被告商品の売上げに寄与したも
のではない。
(ア)被告商品の販売地域について
被告備後漬物が,被告商品とは別種類の商品である「キムチ」に関し
て構築してきたとする営業網などは,被告商品の売上げとは関係がない。
仮に,被告備後漬物が西日本を中心に築いてきたという「営業網」や「人
的ネットワーク」のみで被告商品を販売できるのであれば,被告らは,
原告表示を模倣する必要などなかったはずである。また,被告らは,販
売ネットワークを維持するための「センターフィー」等の管理費用を被
告らの利益の額から控除しているのだから,さらに,被告らの営業網で
販売されたことをもって利益の額の一定割合を減じることは相当でな
い。
(イ)被告商品の品質について
モンドセレクションでの受賞は,その実態を見ると,被告らが強調す
るほど大げさなものではなく,被告商品イが銀賞を受賞したことなど,
取り上げるだけの価値に乏しい。モンドセレクションは,審査料を支払
って自ら応募するものであり,ノーベル賞のようにあらゆる候補者の中
から選考されて表彰されるものとは全く異なる。日本においてさえマイ
ナーな商品が数多く金賞を受賞しているのは,このような自薦の形をと
る応募システムのためである。
また,被告らは,「被告備後漬物が販売する漬物」であるという需要
者の信頼が被告商品の販売に寄与したと主張するが,被告商品の包装に
は,被告備後漬物の社名は表示されていない。
(ウ)被告備後漬物の提案力,企画力について
被告らの「企画力」,「提案力」,「人的関係」,「人的ネットワー
ク」等については,これを立証する証拠が何ら提出されていない。また,
これらは,被告商品の販売のためにのみ必要なものではなく,このよう
に,侵害商品の売上高の多寡にかかわらず必要となり,侵害商品の販売
に直接結び付けられないものは,損害額の算定に当たって考慮すべきで
はない。
(エ)被告商品の色彩について
被告商品イの「青色」の色彩が取引業者の目にとまったことや,その
ことが同商品の売上げに貢献したことを裏付ける証拠はない。
本件では,被告商品の包装に「青色」が使用され,「東京漬膳の」と
いう表示がされたとしてもなお,被告包装は原告表示と類似し,被告商
品と原告商品との間に誤認混同を生じさせるおそれがあるものであり,
これらの事実は,寄与度による減額をすべき事情には当たらない。
第3当裁判所の判断
1争点1(不競法2条1項13号違反の有無)について
(1)争点1-1(被告商品の包装に「東京漬膳の」,「東京べったら」などと
表示することは,被告商品の原産地等を誤認させる表示に当たるか)につい

ア前記争いのない事実等のとおり,被告商品は,東京都内で製造されたも
のではなく,その原材料も,東京都で生産されたものではない。
この点について,原告は,べったら漬けにおける「東京」の表示は原産
地表示機能を有し,被告包装には,「東京漬膳の」,「東京べったら」と
表示され,被告包装の裏面には,被告商品の販売者が「東京都」に所在す
る「株式会社東京漬膳」であることが表示されるなど,包装全体では合計
4か所に「東京」の文字が記載されていることから,これらを見る者に対
して被告商品が「東京」と関連があるかのように印象付けている上,①被
告商品の包装には,被告商品の原材料の産地,製造者及び製造地は記載さ
れていないこと,②イ号包装ないしハ号包装には,江戸時代の日本橋の
べったら市を描いた図絵が記されており,被告商品が日本橋のべったら市
と関連があるかのように印象付けていること,③「東京漬膳」という商
号は,単なる漬物の販売業者ではなく,漬物メーカーであることを彷彿と
させる商号であること,などとあいまって,被告商品の包装における上記
各表示は,商品の原産地が東京であること,すなわち,被告商品が東京産
の原料を使用しているか,又は,東京で製造・加工された漬物であること
を示すものであると主張する。
イそこで検討するに,証拠(甲6,11,12,14,15,18,12
0,甲120の2,甲131~134,136,138~141,143,
144,甲157の14~19,乙1,6,14~16,乙18の1~1
0,乙19~27,46~52,54,55,67,68,70)及び弁
論の全趣旨によれば,べったら漬けの沿革や,「東京」の表示を付したべ
ったら漬け商品の販売状況等に関して,以下の事実が認められ,同認定を
左右するに足りる証拠はない。
(ア)べったら漬けの沿革等
べったら漬けは,大根を塩で下漬けし,麹,砂糖などで漬けた漬物で
あり,江戸時代から作られている東京発祥の名産品である。
べったら漬けの由来は,江戸時代に,江戸日本橋の恵比寿神社の祭礼
で大根の麹漬けの浅漬けが売られたことに始まるなどといわれている。
現在も,東京日本橋の恵比寿神社の界隈では,毎年10月19日及び同
月20日にべったら市が開かれており,例年,べったら漬けを販売する
露天が連なり,原告ほか多数のべったら漬けメーカーや小売業者が出店
し,多くの客が同市を訪れるなど,賑わいをみせている。
(イ)「東京」の表示を付したべったら漬けの販売状況
aべったら漬けは,東京発祥の名産品であるが,現在では,東京都内
に限らず,和歌山県,京都府,熊本県,北海道など,全国各地で製造
されており,これらの地で製造される商品には,「紀州べったら漬け」,
「京のべったら漬け」,「肥後自慢べったら漬け」,「北海道べった
ら漬」などの表示を付して販売されているものがある。
b一方,べったら漬け商品に「東京」の表示を付した商品も,次のと
おり,古くから,複数の会社によって製造ないし販売されている。
(a)金久による「東京べったら漬」の表示の使用
べったら漬けの老舗メーカーであった金久は,昭和40年代ころ
から,同社が製造したべったら漬けに「東京べったら漬」の表示を
付して販売することを始め,同社が倒産した平成14年まで,同商
品の販売を続けた。
また,金久は,昭和56年に,「金久の東京べったら漬」という
標章について商標登録を出願し,商標登録を受けており,金久が販
売していた「東京べったら漬」の包装には,「金久の東京べったら
漬」と表示されたものが使用されていた。
なお,金久は,当初は東京都内の工場でべったら漬けを製造して
いたが,昭和45年ころ以降,金久の関連会社である金久食品の埼
玉県に所在する工場においてべったら漬けを製造するようになり,
「東京べったら漬」の表示を付した商品についても,上記工場で製
造していた。また,金久は,上記商品の原材料として東京産のもの
は使用していなかった。
(b)原告による「東京べったら漬」の表示の使用
金久は,平成14年に倒産し,原告は,同年,金久から,「金久
の東京べったら漬」の商標権を含む,べったら漬けに関わるすべて
の業務について営業譲渡を受けた。
原告は,金久から上記営業譲渡を受けた平成14年ころから,原
告の製造販売するべったら漬けに「東京べったら漬」の表示(原告
表示1-1)を付すことを始め,現在まで,同商品(原告商品)の
販売を続けている。
また,原告は,平成18年に,「東京にいたかやの東京べったら
漬」,「東京新高屋の東京べったら漬」及び「新高屋の東京べった
ら漬」の各標章について商標登録を出願し,同年,商標登録を受け
た。原告の販売する「東京べったら漬」の表示をした商品の包装に
は,「東京べったら漬」の表示と近接した位置に「東京新高屋」の
商号が表示されている。
なお,原告は,昭和39年ころまでは,東京都内の自社工場でべ
ったら漬けを製造していたが,近隣の問題もあって,工場を埼玉県
に移転し,その後は,原告埼玉工場においてべったら漬け(「東京
べったら漬」の表示を付した商品を含む。)を製造している。また,
原告商品の原材料は,東京都で生産されたものではない。
(c)その他の会社による「東京べったら漬」等の表示の使用
べったら漬け商品に「東京」の表示を付して製造ないし販売して
いる会社は,原告及び金久以外にも存在し,少なくとも昭和60年
ころには,鈴木食品及び株式会社南食販売が,「東京べったら漬」
ないし「東京べったら」という表示を付したべったら漬けを製造,
販売していた(なお,鈴木食品は,金久において工場長を務めてい
た者が興した会社である。)。
また,平成21年の時点において,鈴木食品の他に,少なくとも
11社(株式会社八社会,コプロ株式会社,株式会社八幡屋,株式
会社彩園,株式会社タカヤマコーポレーション,株式会社大森屋,
株式会社城忠一商店,有限会社堀江紘一商店,千住金久漬物株式会
社,やまう株式会社,有限会社出町なかにし)が,「東京べったら
漬」ないし「東京べったら」という表示を付したべったら漬けを販
売している(なお,これら11社は,原告に商品の製造を委託した
会社ではない。)。
これらの会社の販売するべったら漬けも,そのほとんどは,東京
都内で製造されたものではなく,原材料として東京産のものは使用
されていない。
ウ上記認定事実によれば,べったら漬けは,江戸日本橋の恵比寿神社の祭
礼で売られていたことに始まる東京発祥の名産品であり,現在でも,毎年
日本橋で開催されるべったら市を多くの人が訪れるなど,東京(江戸)や
べったら市との関係が深い商品であり,「東京べったら漬」,「東京べっ
たら」などの表示を付されたべったら漬けは,少なくとも20年以上前か
ら複数の会社によって製造,販売されてきているものの,その大半は,原
告及び金久が製造販売していた商品を含めて,原材料は東京産ではなく,
東京都内の工場で製造されたものでもないことが認められる。
このような事情に鑑みると,「東京べったら漬」の表示は,長年にわた
り原材料の生産地や商品の製造,加工地とほとんど関連付けられることな
く使用されてきたということができるから,べったら漬けの包装に「東京
べったら漬」や「東京べったら」などの表示や江戸時代のべったら市の図
絵が付されていたとしても,これらの表示を見た需要者においては,「東
京発祥のべったら漬」という意味に受け取ることはあっても,東京産の原
料を使用しているとか,あるいは,東京都内で製造,加工されたものであ
ると認識して購入するものとは認め難い。
したがって,原告の上記主張を採用することはできない。
エ原告は,イ号包装ないしハ号包装に描かれているべったら漬けを売る市
の図絵からは,江戸日本橋のべったら市が想起され,被告商品が日本橋の
べったら市と関連があるかのように印象付けているため,同包装を見た需
要者は,被告商品はべったら市に出店,参加,協賛,協力等をする企業に
よって製造されているものと認識,信頼すると主張する。
しかしながら,上記図絵は,一見したところ,江戸時代のべったら漬け
を販売している町の風景を描いたものとみられるにすぎず,同図絵が需要
者に江戸日本橋のべったら市を描いたものであると認識されることを認め
るに足りる証拠はない。
また,仮に,上記図絵が江戸日本橋のべったら市を描いたものであると
需要者に認識されるとしても,前記認定のべったら漬けの由来等に照らせ
ば,べったら漬けという商品は,古くからべったら市と深い関係があった
ものといえるから,同図絵を見た需要者が,当該商品(べったら漬け)は,
江戸時代から作られている日本橋ゆかりの商品であると認識することはあ
り得るとしても,当該商品が現代のべったら市に出店,参加,協賛,協力
等をする企業によって製造されていると認識するとは,にわかに認め難く,
原告の主張は理由がない。
オさらに,原告は,イ号包装ないしハ号包装の裏面には,「東京漬膳こだ
わりの味『白ざらめ』」と記載されている上,「東京漬膳」という商号は,
単なる漬物の販売業者ではなく,漬物メーカーであることを彷彿とさせる
商号であることから,上記記載は,東京漬膳という会社が,「白ざらめ」
の点を含め,商品の品質,内容に責任を有する製造主体であることを示唆
するものであるとも主張する。
しかしながら,被告東京漬膳は,被告商品の包装に「製造者」として表
示されているものではなく,「販売者」として表示されているにすぎない。
また,「東京漬膳」という商号は,「漬」の文字を含むことから,漬物を
扱う業者であることをうかがわせるものであるものの,商号の主体が直ち
に漬物の「製造者」であることを示すものであるとまではいえない。
したがって,「東京漬膳」を含む被告商品の表示からは,被告東京漬膳
が製造主体であることが示唆されているということはできず,原告の主張
は理由がない。
カ以上のとおりであるから,被告商品の包装に「東京べったら漬」,「東
京漬膳の」などと表示することは,被告商品の原産地等を誤認させる表示
に当たるということはできない。
(2)争点1-2(被告商品の包装に「白ざらめを使用した上品な味わいが自慢
の逸品です」,「白ざらめとは…白砂糖の中で最も高級な,純度99.8~
99.9%の最高級砂糖です」などと表示することは,被告商品の品質等を
誤認させる表示に当たるか)について
ア原告は,被告商品の包装は,①その裏面に「最も高級な」,「最高級
砂糖」と,最上級の意味を表す表現を繰り返して使用した上,包装の表面
に,「この上もなくすぐれた品物や作品。絶品。」(大辞林)を意味する
「逸品」という表示をして,これを見る者に対し,他社の商品よりも著し
く優良であるかのような印象を与える,②包装の表面に「白ざらめを使
用した上品な味わいが自慢の逸品です」と表示し,包装の裏面に「東京漬
膳こだわりの味『白ざらめ』」,「こだわりの『白ざらめ』が美味しさの
秘訣です。」と表示することにより,一般消費者に対し,被告商品に白ざ
らめが使用されたことによって有意に味が良好なものに変化したという印
象(べったら漬けのごく一部である砂糖に用いられた品質がその全部の品
質であるかのごとき印象)を与える,と主張する。
イしかしながら,証拠(乙10~13)及び弁論の全趣旨によれば,白ざ
らめ(「白双糖(しろざらとう)とも呼ばれる。)は,無色大粒の結晶で,
純度が高く,甘味は淡泊で,上品な甘さを持つことなどが特徴であり,用
途としては高級な菓子類等の製造に用いられ,辞典において「品質的には
グラニュー糖と同じか,それ以上です」(乙10日高秀昌等編[砂糖の
辞典]),「最上品質の砂糖」(乙11五十嵐脩等編[丸善食品総合辞
典<普及版>]),などと説明されていることが認められる。また,上記
②の表示によって,需要者に対し,べったら漬けの原材料のごく一部であ
る砂糖に用いられた品質がべったら漬け全部の品質であるかのような印象
を与えると認めることもできない。
上に述べたところによれば,被告商品の包装の上記表示をもって,被告
商品の品質について原告の主張する誤認をさせるものとは認められず,原
告の上記主張を採用することはできない。
2争点2(不競法2条1項1号違反の有無)について
(1)争点2-1(原告表示は,原告の商品等表示として需要者の間に広く認識
されているか)について
ア原告表示1-1(「東京べったら漬」)について
(ア)原告は,原告表示1-1は,「東京」という地名と「べったら漬」
という普通名称から成るものであるものの,金久及び原告が長期間にわ
たって自社の商品に独占的に使用したことにより,遅くとも平成21年
8月までには,原告商品を示す表示としての識別力を取得し,商品等表
示性及び周知性を備えたものであると主張する。
(イ)しかしながら,「東京べったら漬」という表示は,その語自体が普
通名称である「べったら漬」という語に「東京」という地名を付したに
すぎないものである上,べったら漬けは東京(江戸)を発祥の地とし,
東京の名産品として広く知られているものであることを併せ考えると,
基本的には,自他商品識別機能を有しておらず,本来的に特定人の独占
になじまないものであって,特定人がそれを長年にわたり使用し続ける
ことにより,需要者において当該特定人の商品を表示するものとして広
く認識されるに至っているなどの特段の事情のない限り,不競法2条1
項1号の「商品等表示」に当たらないというべきである。
(ウ)このような考え方に立って,上記「特段の事情」の有無について検
討するに,前記(1)イのとおり,「東京べったら漬」ないし「東京べった
ら」の表示は,必ずしも,金久及び原告によって長年にわたって独占的
に使用されてきたものではなく,鈴木食品ほか十数社も,自社の製造な
いし販売する商品に上記表示を付していたこと,金久及び原告も,自社
の商品の包装に「東京べったら漬」の表示のみを付していたわけではな
く,「金久の東京べったら漬」と表示したり,「東京べったら漬」の表
示に近接して「東京新高屋」の屋号を表示するなどしていたこと,が認
められる。
また,証拠(甲1,2,6,7,32~38,49~103,107
~117,133,134,139~141,151,157の1,1
33,乙67,68)及び弁論の全趣旨によれば,「東京べったら漬」
ないし「東京べったら」の表示を付したべったら漬けの宣伝広告,販売
個数,売上高等について,次の事実が認められる。
aべったら漬け全体の市場
べったら漬けは,漬物の一種であり,べったら漬け全体の市場は,
年間30億円ないし40億円程度と推測されている。
b金久の「東京べったら漬」の売上高等
金久は,老舗の漬物メーカーであり,平成14年に同社が倒産する
までの間は,べったら漬けについて,全国の漬物メーカーの中でもト
ップクラスの売上高があった。「東京べったら漬」の表示を付したべ
ったら漬けは,金久が昭和45年ころから製造販売していた同社の主
力商品であり,新聞に同商品の広告を掲載するなどして宣伝し,毎年,
相当額の売上高があった(なお,原告は,金久の「東京べったら漬」
商品の昭和40年代から平成14年までの累計売上額は300億円を
下らないと主張するものの,これを認めるに足りる証拠はない。)。
c原告の「東京べったら漬」の売上高等
原告は,市場においてべったら漬けのトップメーカーであると評価
されており,同社の製造するべったら漬けの1年間の売上高は,約1
0億円である。また,このうち「東京べったら漬」の表示の付くべっ
たら漬け(原告商品1)の売上高は約8億5000万円であり,原告
商品1のうち原告商品1-2の売上高は約3億円,原告商品1-3の
売上高は約2000万円,原告商品1-4の売上高は約400万円で
ある(なお,原告商品1-3及び1-4は,いずれも,原告が平成1
8年ころから販売を開始した商品であるが,例年,原告商品1-3に
ついては,べったら市の行われる10月期及び12月期にのみ出荷さ
れ,原告商品1-4については10月期にのみ出荷される。)。
一方,「東京ゆずべったら漬」(原告商品2)の1年間の売上高は,
約4000万円である。
原告商品は,原告の主力商品であり,原告は,新聞に同商品の広告
を掲載するなどして,同商品を宣伝している。
dその他の会社の「東京べったら漬」ないし「東京べったら」の売上
高等
鈴木食品は,遅くとも昭和60年ころから,同社の製造するべった
ら漬けに「東京べったら漬」ないし「東京べったら」の表示を付して
販売している。また,他社の製造委託を受けて,上記商品を製造し,
当該他社において,「東京べったら漬」ないし「東京べったら」の表
示を付して販売している(なお,鈴木食品の製造に係る上記商品の販
売額について,原告は年間約1億2000万円ないしそれを下回る程
度であると主張し,被告らは年間2億円を上回るものであると主張す
るが,その正確な販売額は,本件証拠上明らかでない。)。
鈴木食品の製造に係るもの以外に他社において製造ないし販売して
いる「東京べったら漬」の表示を付したべったら漬けの1年間の売上
高は,約3500万円である。
(エ)上記認定の事実関係によれば,確かに,本件では,金久及び原告が
自社の商品に「東京べったら漬」の表示を付して長期間販売を続けてお
り,両者の商品が「東京べったら漬」の表示を付して販売されるべった
ら漬けの売上高,販売個数の中で占める割合も,相当に高いものである
ことが認められる。しかしながら,他方で,金久及び原告以外の鈴木食
品など複数の会社によっても,相当以前から,「東京べったら漬」ない
し「東京べったら」の表示を付したべったら漬けが販売され続けており,
これらの会社が販売する商品の売上高,販売個数が全体に占める割合も,
決して少ないものではない。これに加えて,前記のとおり,そもそも「東
京べったら漬」という語自体が元々自他商品識別力を有しない語である
ことや,金久及び原告が「東京べったら漬」の表示を使用する態様(「東
京べったら漬」の表示のみではなく,「金久の東京べったら漬」と表示
したり,「東京べったら漬」の表示に近接して「東京新高屋」の屋号を
表示するなどしていること。)や,べったら漬けは東京を発祥の地とす
る商品として有名なものであることなどをも総合的に考慮すると,原告
について「東京べったら漬」の語のみで識別力を得た特段の事情がある
と認めることはできないというべきである。
したがって,原告表示1-1について使用により識別力を得たもので
あると認めることはできず,この点についての原告の主張は,採用する
ことができない。
イ原告表示2-1(「東京ゆずべったら漬」)について
原告は,原告表示2-1は,金久及び原告による長年の使用により商品
等表示性及び周知性を備えた原告表示1-1に「ゆず」という文字が挿入
されたものであり,原告表示1-1に類似するため,需要者にとって原告
の商品を示すものであると容易に認識することができることから,原告表
示2-1についても,遅くとも平成21年8月までには商品等表示性及び
周知性を備えたものであると主張する。
しかしながら,「東京べったら漬」という表示は,前記のとおり出所表
示機能や自他商品識別機能を有さない「東京べったら漬」の語に,漬物に
加えた風味を表す「ゆず」の語を付したものにすぎず,それ自体自他商品
識別機能を有しておらず,特定人の独占になじまないものであり,特段の
事情のない限り不競法2条1項1号の商品等表示に当たらないというべき
である。原告表示1-1が商品等表示性及び周知性を備えたものであると
認められないことについては,上記アに説示したとおりである。
したがって,原告表示1-1に商品等表示性及び周知性が認められるこ
とを前提とする原告の主張は,採用することができず,他に原告表示2-
1について「東京ゆずべったら漬」の語のみで使用により識別力を得た特
段の事情があることを認めるに足る証拠はない。
ウ原告表示1-2(「東京べったら漬」の包装に用いられた文字及びデザ
イン)及び同2-2(「東京ゆずべったら漬」の包装に用いられた文字及
びデザイン)について
(ア)前記ア(ウ)に掲げた各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が
認められる。
a原告表示1-2を包装に用いた原告商品1-2及び原告表示2-2
を包装に用いた原告商品2の販売個数等
(a)原告表示1-2を包装に用いた原告商品1-2は,原告が原告商
品(「東京べったら漬」の表示を付したべったら漬け)の販売を開始
した時期と同じころに販売を始めた商品であり,平成14年から平成
21年7月までの期間における販売数の合計は,約890万個である。
また,その販売額の合計は約14億円であり,1年間の売上額は約3
億円である。
べったら漬け商品の包装のデザインに原告表示1-2と類似のも
のは証拠上見当たらず,原告表示1-2のデザインは原告独自のもの
と認められる。
(b)原告は,平成16年以後,原告の製造販売するゆず風味のべった
ら漬けの包装に原告表示2-2を表示した商品(原告商品2)を販売
している(なお,原告の製造販売するゆず風味のべったら漬けは,原
告商品2-2のみである。)。原告は,平成14年から平成21年7
月までの間に,原告商品2を約70万個販売した。その販売額の合計
は,約1億1000万円であり,1年間の売上額は約4000万円で
ある。また,ゆず風味のべったら漬けは,原告商品2以外にも存在す
るが,べったら漬け商品の中で,「東京ゆずべったら漬」又はこれに
類似する商品名を有する商品は,被告商品の販売が開始されるより以
前には原告商品2以外に存在しない。
べったら漬け商品の包装のデザインに原告表示2-2と類似のも
のは証拠上見当たらず,原告表示2-2のデザインは原告独自のもの
と認められる。
b原告商品1-2及び原告商品2の宣伝広告
(a)原告は,漬物業界の業界誌である食料新聞,食品新聞及び食品経
済新聞の新聞広告に,遅くとも平成14年ころから原告商品1-2を
含む原告の商品を,遅くとも平成16年ころから原告商品2を宣伝広
告しており,原告表示1-2及び同2-2の包装の写真も多数回掲載
された。
(b)原告は,一般消費者向けに,スーパーのちらし等に原告商品1-
2を含む原告商品1及び原告商品2の宣伝広告を行った。
(イ)前記認定事実によれば,原告は,平成14年から平成21年7月ま
での間において,いずれも原告独自のデザインである原告表示1-2を
その包装に付した原告商品1-2及び原告表示2-2をその包装に付し
た原告商品2を,多くの一般顧客が容易に購入することができ,かつ,
容易に目にすることのできると考えられる,全国各地のスーパー等にお
いて大量に販売していたこと,原告商品1-2の売上高は,原告商品1
のうち約3分の1を占め,他社の商品を含めた「東京べったら漬」の表
示を付されたべったら漬け全体の売上高との関係でみても約2割を占め
ていること,原告商品2の売上高は,原告の販売するゆず風味のべった
ら漬けの売上高のすべてを占めており,被告ら以外の他社からは「東京
ゆずべったら漬」ないし「東京ゆずべったら」の表示を付されたべった
ら漬けは販売されていないこと,新聞広告やスーパーのちらし等にも原
告商品1-2及び原告商品2-2が多数回掲載されたこと,が認められ
る。
このような状況に照らせば,原告表示1-2及び原告表示2-2は,
被告商品の販売が開始された平成21年9月1日ころには,原告の商品
を表すものとして需要者(全国の卸売業者,小売業者,一般消費者)の
間に広く認識されていたといえ,その状態は現時点においても継続して
いるものといえる。
エ原告表示1-3及び同1-4について
前記ア(ウ)cのとおり,原告商品1-3及び同1-4は,いずれも,平
成18年ころから販売を開始したものであり,1年間のうち限られた時期
にのみ販売されるものであって,売上高も約2000万円(原告商品1-
3)及び約400万円(原告商品1-4)にとどまり,原告商品(「東京
べったら漬」の表示を付した商品)全体の販売高に占める割合も約2%(原
告商品1-3)及び約0.5%(原告商品1-4)にすぎないものである。
したがって,原告表示1-3及び同1-4については,いまだ商品等表
示として需要者の間に広く認識されているものとは認められない(なお,
原告表示1-4は,ニ号包装と類似しているとも認められない。)。
(2)争点2-2(原告表示と被告包装は類似するか)について
上記のとおり,本件では,原告表示1-2及び2-2について,原告の商
品等表示としての周知性を認めることができる。そこで,以下において,原
告表示1-2とイ号包装及びハ号包装,原告表示2-2とロ号包装について,
それぞれ類似するか否かを検討する。
ア原告表示1-2とイ号包装の類似性について
(ア)証拠(甲1)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
a原告表示1-2は,縦約12cm,横約25cmの透明な包装パッ
クに印刷されている。イ号包装は,縦約12cm,横約23cmの透
明な包装パックに印刷されている。
b原告表示1-2は,中央部に大きくはっきりと目立つ態様で,商品
名である「東京べったら漬」の文字が,黒色・同書・同大の毛筆字体
で,横一列に書かれている。また,「東京べったら漬」の文字の略中
央部分の上方側に,「東京新高屋」の5文字とその社章が,赤色の暖
簾に白抜きで,横一列に表示されている。上記暖簾の左側には,やや
小さく「東京・日本橋」と表示されている。
イ号包装は,中央部に大きくはっきりと目立つ態様で,商品名であ
る「東京べったら」の文字が,黒色で,その外周縁が白色で縁取りさ
れて,毛筆字体で書かれている。「東京べったら」の文字のうち,「東」
の文字は,他の文字よりやや上方に表示されている。また,「京べっ
たら」の文字の上方には,「東京漬膳の」の文字が,商品名よりも小
さな黒色の文字で,横書きで表示されている。そして,「べったら」
の「ら」の文字の右上には,「国産」の文字と「大根使用」の文字が,
赤色の略円形の内側に横2列に記載されている。
c原告表示1-2の「東京べったら漬」の文字の下には,緑色の太い
横線が引かれ,その横線の上に白抜き文字で「低温熟成」と記され,
さらに,「じっくりねかせて仕上げました。」と商品の説明が記され
ている。上記横線の下には,黒文字で,「国内産大根・米糀使用要
冷蔵」の文字が,黒色で横一列に記されている。
イ号包装の「東京べったら」の文字の下には,原告表示1-2の上
記横線と同程度の太さの青色の横線が引かれ,その横線の上に白抜き
文字で「白ざらめを使用した上品な味わいが自慢の逸品です。」と商
品の説明が記されている。上記横線の下には,黒文字で「要冷蔵」と
横書きで記されている。
d原告表示1-2の下部は,左端から右端まで上記cの横線と同じ緑
色で塗られており,その上には白色の模様が記されている。また,包
装の切り口が左上及び左下の2か所に赤色で示されている。
イ号包装の下部は,左端から中央部のやや右側まで上記cの横線と
同じ青色で塗られており,その上には白色の模様が記されている。ま
た,包装の切り口が左上及び左下の2か所に赤色で示されている。
e原告表示1-2の右下部には,包装の下辺に緑色で凹凸状に縁取り
された右側の凹状部内に,江戸時代の日本橋を描いた白黒の図絵(橋
の上に江戸時代の人々が描かれ,橋の上部に空が広がっている。)が
記されている。
イ号包装の右下部から右上部にかけては,江戸時代のべったら漬け
を販売している店舗及び店舗を訪れる人々の様子を描いた白黒の図
絵が記されており,上記図絵の中央部分には太鼓型の橋が記され,右
上部には青色の空が記されている。
(イ)そうすると,イ号包装は,次の点において原告表示1-2と共通ない
し類似する。
①原告表示1-2とほぼ同じ大きさの透明な包装パックを用いてい
る。
②包装の中央部に,大きくはっきりと目立つ態様で,商品名である「東
京べったら」の文字が毛筆字体で表記されている。
③中央部の「東京べったら」の文字の下には,太い横線を引き,白抜
き文字で当該商品の説明を加えている。
④包装の下部は,左端から右端ないし中央部のやや右側まで,上記③
の横線と同色の模様が表記され,その上に白色の模様が記されてい
る。
⑤包装の切り口は,左上と左下の2か所に赤色で示されている。
⑥包装全体が4種類の色彩から構成されており,うち3色は,黒色,
白色,赤色である。③の太い横線及び④の模様には,原告表示1-
2では緑色,イ号包装では青色と,いずれも寒色系の色が用いられ
ている。
⑦包装の右下部には,江戸時代の町の風景を描いた白黒の図絵が施さ
れ,図絵の中には,太鼓型の橋,江戸時代の人々及びその上空が描
かれている。
(ウ)以上のとおり,イ号包装と原告表示1-2とは,いずれも,包装の
ほぼ中央に毛筆体で,商品名である「東京べったら」という文字を横一
列ないし略横一列に記載し,その右側に江戸時代の町及び人々の様子を
描いた白黒の図絵を太鼓型の橋やその上空を含めて描き,商品名の上に
は,自社名を商品名よりも小さい文字で横一列に記載し,商品名の下に
は,いずれも寒色系の色付きの太い横線を引き,その中に当該商品の説
明文を記載し,包装の上部は無色透明のまま,包装の下部は左端から右
端ないし中央部のやや右側にかけて上記横線と同色の模様が表記され,
包装全体を構成するその余の色彩も共通するなどしており,両者は,そ
の構図や色彩の構成に共通点が多いことが認められ,包装の大きさもほ
ぼ同一である。これらの点に加え,上記(2)で判示した原告表示1-2の
周知性をも併せ考慮するならば,原告表示1-2とイ号包装とは,全体
的,隔離的に対比して観察した場合には,その共通点から生じる印象の
強さが相違点(「東京べったら」の文字の上方に表示された会社名,「東
京べったら」の文字の下に引かれた太線及び左端から右端ないし右側ま
で表記された模様の色彩,商品を説明する文章や包装の右下に表示され
た図絵の細部等)から生じる印象の強さを上回り,需要者又は取引者に
おいて,両表示が類似するものと受け取られるおそれがあるというべき
である。
イ原告表示1-2とハ号包装の類似性について
需要者又は取引者において原告表示1-2とイ号包装が類似するものと
受け取られるおそれがあることについては,上記ア(イ)に説示したとおり
である。一方,証拠(甲1)及び弁論の全趣旨によれば,イ号包装の外観
とハ号包装の外観は,包装のサイズ(ハ号包装は,縦約12cm,横約3
2cmの透明な包装パックに印刷されている。)及び商品名の表示(ハ号
包装は,「東京べったら」の表示のやや右上部に,大きくはっきりと目立
つ態様で「一本」と毛筆字体で書かれている。)を除き,ほぼ同じである
ことが認められる。
したがって,原告表示1-2とハ号包装についても,これを全体的,隔
離的に対比して観察した場合には,需要者又は取引者において,両表示が
類似するものと受け取られるおそれがあるといえる。
ウ原告表示2-2とロ号包装の類似性について
(ア)証拠(甲1)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
a原告表示2-2は,縦約12cm,横約25cmの透明な包装パッ
クに印刷されている。ロ号包装は,縦約12cm,横約23cmの透
明な包装パックに印刷されている。
b原告表示2-2は,中央部に大きくはっきりと目立つ態様で,商品
名である「東京ゆずべったら漬」の文字が,黒色・同書・同大の毛筆
字体で,横一列に書かれている。また,「東京べったら漬」の文字の
略中央部分の上方に,「東京新高屋」の5文字とその社章が,赤色の
暖簾に白抜きで,横一列に表示されている。上記暖簾の左側には,や
や小さく「東京・日本橋」と表示されている。
ロ号包装は,中央部に大きくはっきりと目立つ態様で,商品名であ
る「東京ゆずべったら」の文字が,黒色で,その外周縁が白色で縁取
りされて,毛筆字体で書かれている。「東京ゆずべったら」の文字の
うち,「東」の文字は,他の文字よりやや左上方に表示され,「京」
の文字と「べったら」の文字との間に,これらの文字色(黒)と異な
る赤色文字で,縦書きの「ゆず」の文字が挿入されている。また,「京
ゆずべったら」の文字の上方には,「東京漬膳の」の文字が,商品名
よりも小さな黒色の文字で,横書きで表示されている。そして,「べ
ったら」の「ら」の文字の右上には,「国産」の文字と「大根使用」
の文字が,赤色の略円形の内側に横2列に記載されている。
c原告表示2-2の「東京ゆずべったら漬」の文字の下には,黄色の
太い横線が引かれ,その横線の上に「低温熟成」と記され,さらに小
さな黒字で「じっくりねかせて仕上げました。」と商品の説明が記さ
れている。上記横線の下には,黒文字で,「国内産大根・米糀使用要
冷蔵」の文字が,黒色で横一列に記されている。また,「東京ゆずべ
ったら漬」の文字の左上方には,「ゆず味」の文字とゆずの実の図柄
が表示されている。
ロ号包装の「東京ゆずべったら」の文字の下には,原告表示2-2
の上記横線と同程度の太さ及び上記横線と同色の黄色の横線が引か
れ,その横線の上に黒色の文字で「白ざらめを使用した上品な味わい
が自慢の逸品です。」と商品の説明が記されている。上記横線の下に
は,黒文字で「要冷蔵」と横書きで記されている。
d原告表示2-2の下部は,左端から右端まで上記cの横線と同色の
黄色で塗られており,その上には白色の模様が記されている。また,
包装の切り口が左上及び左下の2か所に赤色で記されている。
ロ号包装の下部は,左端から中央部のやや右側まで黄色で塗られて
おり,その上には白色の模様が記されている。また,包装の切り口が
左上及び左下の2か所に赤色で示されている。
e原告表示2-2の透明な部分には,やや弓なりで長さ数cmほどの
黄色い曲線が,細いゆず皮が宙を舞うように複数描かれている。ロ号
包装の透明な部分にも,同様に,やや弓なりで長さ数cmほどの黄色
い曲線が,細いゆず皮が宙を舞うように複数描かれている。
f原告表示2-2の右下部には,包装の下辺に黄色で凹凸状に縁取り
された右側の凹状部内に,江戸時代の日本橋を描いた白黒の図絵(橋
の上に江戸時代の人々が描かれ,橋の上部に空が広がっている。)が
記されている。
ロ号包装の右下部から右上部にかけては,江戸時代のべったら漬け
を販売している店舗及び店舗を訪れる人々の様子を描いた白黒の図
絵が記されており,上記図絵の中央部分には太鼓型の橋が記され,右
上部には黄色の空が記されている。
(イ)そうすると,ロ号包装は,次の点において原告表示2-2と共通ない
し類似するといえる。
①原告表示2-2とほぼ同じ大きさの透明な包装パックを用いている。
②包装の中央部に,大きくはっきりと目立つ態様で,商品名である「東
京ゆずべったら」の文字が毛筆字体で表記されている。
③中央部の「東京ゆずべったら」の文字の下には,太い黄色の横線を引
き,黒色文字で当該商品の説明を加えている。
④包装の下部は,左端から右端ないし中央部のやや右側まで,上記③の
横線と同色の黄色の模様が表記され,その上に白色の模様が記されて
いる。
⑤包装の切り口は,左上と左下の2か所に赤色で示されている。
⑥包装全体が4種類の色彩(黒色,白色,赤色,黄色)から構成されて
いる。
⑦包装の右下部には,江戸時代の町の風景を描いた白黒の図絵が施さ
れ,図絵の中には,太鼓型の橋,江戸時代の人々及びその上空が描か
れている。
⑧包装の表面の透明な部分に,やや弓なりで長さ数cmほどの黄色い曲
線が,細いゆず皮が宙を舞うように複数描かれている。
(ウ)以上のとおり,ロ号包装と原告表示2-2とは,いずれも,包装の
ほぼ中央に毛筆体で,商品名である「東京ゆずべったら」という文字を
横一列ないし略横一列に記載し,その右側に江戸時代の町及び人々の様
子を描いた白黒の図絵を太鼓型の橋やその上空を含めて描き,商品名の
上には,自社名を商品名よりも小さい文字で横一列に記載し,商品名の
下には,いずれも黄色の太い横線を引き,その中に黒色文字で当該商品
の説明文を記載し,包装の表面の透明な部分に,やや弓なりで長さ数c
mほどの黄色い曲線が細いゆず皮が宙を舞うように複数描かれ,包装の
上部は無色透明のまま,包装の下部は左端から右端ないし中央部のやや
右側にかけて上記横線と同色の黄色の模様が表記され,包装全体を構成
するその余の色彩も共通するなどしており,両者は,その構図や色彩の
構成に共通点が多いことが認められ,包装の大きさもほぼ同一である。
これらの点に加え,上記(2)で判示した原告表示2-2の周知性をも併せ
考慮するならば,原告表示2-2とロ号包装とは,全体的,隔離的に対
比して観察した場合には,その共通点から生じる印象の強さが相違点
(「東京ゆずべったら」の文字の上方に表示された会社名,原告表示2
-2の左上に表示された「ゆず味」の文字とゆずの実の図柄,商品を説
明する文章や包装の右下に表示された図絵の細部等)から生じる印象の
強さを上回り,需要者又は取引者において,両表示が類似するものと受
け取られるおそれがあるというべきである。
(3)争点2-3(被告商品を販売等することは,原告表示と混同を生じさせる
か)について
上記(2)において説示したとおり,需要者又は取引者において,イ号包装及
びハ号包装を原告表示1-2と,ロ号包装を原告表示2-2と,それぞれ類
似するものと受け取られるおそれを有しているものと認められる。また,証
拠(甲104,105)及び弁論の全趣旨によれば,①原告商品及び被告
商品は,いずれもスーパーを始めとする小売店等で販売されるものであるこ
と,②被告備後漬物は,西日本を中心に業務を行っている会社であり,平
成14年以来,問屋として原告商品を取り扱い,同社の取引先であるスーパ
ー等の小売店に原告商品を販売していたこと,③スーパー等の小売店では,
べったら漬けという商品は,定番商品としては,通常,1社の商品しか取り
扱われないこと,④被告備後漬物は,平成21年9月ころに被告商品の販
売を開始して以後,同社の取引先である上記小売店等に対し,原告商品に代
えて被告商品を販売することが多くなり,そのため,これらの小売店等では,
原告商品に置き換えられる形で被告商品が販売されたこと,が認められる。
これらの諸事情に照らせば,需要者又は取引者において,被告商品イ及び
ハを原告商品1-2と,被告商品ロを原告商品2と,それぞれ同一のもので
あると混同し,又は,被告商品イないしハが原告商品1-2及び原告商品2
と出所を同じくする関連商品であると誤認し得るものと認めることができる。
(4)差止請求等の可否
以上を前提に,原告の被告らに対する各差止請求及び廃棄請求の可否につ
いて検討する。
ア差止請求について
被告らによる,イ号包装,ロ号包装及びハ号包装(以下「イ号包装ない
しハ号包装」という。)の使用,同包装を用いた商品(被告商品イないし
ハ)の譲渡,引渡し,譲渡若しくは引渡しのための展示,漬物に関する宣
伝用カタログその他の広告物に上記包装の図柄を表示して頒布する行為は,
前記のとおり,不競法2条1項1号所定の不正競争に当たるものであると
認められる。
また,弁論の全趣旨によれば,被告らは,上記行為は不競法2条1項1
号所定の不正競争に当たらないものであるとして,平成22年6月に原告
から本件訴訟を提起された後も,少なくとも,平成23年3月31日ころ
までの間,被告商品イないしハの販売を継続し,本件訴訟においても,上
記行為は不競法2条1項1号の不正競争に当たらないと主張して,これを
争っていること,現在もイ号包装ないしハ号包装及び同包装の印刷用原版
を廃棄せずに所持していることが認められる。
そうすると,被告らが,後記のとおり,平成23年4月1日以後は被告
商品イないしハを販売せず,イ号包装ないしハ号包装のデザインを変更し
た包装を用いてべったら漬けを販売しており,今後も,少なくともイ号包
装ないしハ号包装を使用することが違法ではないと判断されるまではこれ
らの包装を使用する予定はないと述べていることなどを考慮したとしても,
被告らにおいて,今後,イ号包装ないしハ号包装を使用したべったら漬け
を譲渡等するおそれがあると認められるから,これらの行為の差止めを認
める必要性があるというべきである。
したがって,原告は,被告らに対し,不競法3条1項に基づき,イ号包
装ないしハ号包装の使用,同包装を用いた商品の譲渡,引渡し,譲渡若し
くは引渡しのための展示,漬物に関する宣伝用カタログその他の広告物に
上記包装の図柄を表示して頒布すること,の差止めを求めることができる。
イ廃棄請求について
前記のとおり,被告らは,現在も,イ号包装ないしハ号包装及び同包装
の印刷用原版を廃棄しておらず,これらを所持していることが認められる。
また,被告らがイ号包装ないしハ号包装を表示した宣伝用カタログを廃棄
したことについては,これを認めるに足りる証拠はない。
したがって,原告は,被告らに対し,不競法3条2項に基づき,イ号包
装ないしハ号包装,同包装を表示した宣伝用カタログその他の広告物及び
同包装の印刷用原版の廃棄を求めることができる。
他方,証拠(乙99~102)及び弁論の全趣旨によれば,被告らは,
遅くとも平成23年4月1日以後,イ号包装ないしハ号包装を用いた商品
(被告商品イないしハ)の販売を取り止めていること,上記商品の賞味期
限は製造日を含めて45日であること,被告らは,被告商品イないしハの
在庫を既に廃棄したと述べていること,が認められるのであって,被告ら
が現在も被告商品イないしハを所持していることを認めるに足る証拠はな
い。
したがって,原告の廃棄請求のうち,被告商品イないしハの廃棄を求め
る部分については理由がない。
3争点3(被告らが被告商品を販売することは,取引における公正かつ自由な
競争として許される範囲を逸脱し,民法709条の不法行為(一般不法行為)
が成立するか)について
原告は,仮に,被告らが,被告包装に「東京べったら」,「東京ゆずべった
ら」などの商品名を表示したり,「白ざらめを使用した上品な味わいが自慢の
逸品です」などと表示することが不正競争行為と認められないとしても,その
ような表示をした包装を用いてべったら漬けを販売する行為は,原告が多大な
費用と労力を投資して築き上げてきた「東京べったら漬」のブランドを損なう
ものであり,民法709条の不法行為に該当すると主張する。
しかしながら,被告包装に「東京べったら」や「白ざらめを使用した上品な
味わいが自慢の逸品です」などと表示することが被告商品の原産地や品質を誤
認させるものではないこと,原告表示1-1(「東京べったら漬」)は原告の
商品等表示として需要者の間に広く認識されているものといえないことについ
ては,前記説示のとおりである。したがって,被告らが,被告らの販売するべ
ったら漬けの包装に「東京べったら」,「東京ゆずべったら」などと表示して
販売したとしても,それだけでは,取引における公正かつ自由な競争として許
される範囲を逸脱した違法な行為であるということはできず,民法上の一般不
法行為を構成することもないというべきである。
4争点4(原告の損害)について
(1)不競法5条2項による推定
ア証拠(乙84~90)及び弁論の全趣旨によれば,被告らは,平成21
年9月1日から平成22年6月18日までの間に,被告商品イないしハの
販売により,次のとおりの利益を得たことが認められる。
(ア)被告東京漬膳の利益
a被告東京漬膳は,鈴木食品から,被告商品イ及び被告商品ロを1個
当たり●(省略)●円で購入し,被告商品ハを1個当たり●(省略)
●円で購入して,これらの商品すべてを被告備後漬物に販売した。
b被告東京漬膳は,鈴木食品に対し,平成21年9月1日から平成2
2年6月18日までの間に製造された被告商品イないしハの代金とし
て,別表3「平成21年9月1日から平成22年6月18日までの間
の被告商品イないしハの販売による被告らの利益」(以下,単に「別
表3」という。)のとおり,合計●(省略)●円(消費税は含まない。)
を支払った(なお,平成22年6月1日から同月18日までの間の代
金については,日割計算で算定した。以下同じ。)。
他方,被告東京漬膳は,同被告が平成21年9月1日から平成22
年6月18日までの間に被告備後漬物に販売した被告商品イないしハ
の代金として,被告備後漬物から,別表3のとおり,合計●(省略)
●円(消費税は含まない。)の支払を受けた。
cしたがって,被告東京漬膳が平成21年9月1日から平成22年6
月18日までの間に被告商品イないしハの販売により得た利益の額は,
●(省略)●円である。
(イ)被告備後漬物の利益
a被告備後漬物は,平成21年9月1日から平成22年6月18日ま
での間に,別表3のとおり,被告商品イないしハの販売により合計●
(省略)●円の売上げを得た。
一方,同期間中に被告備後漬物が被告東京漬膳に支払った被告商品
イないしハの代金額は,上記(ア)bのとおり●(省略)●円である。
b被告備後漬物は,被告東京漬膳から購入した被告商品イないしハを
全国の取引先に販売するに当たり,商品の運搬費,センターフィー(集
中配送センターを有する取引先に商品を搬送する場合に,集中配送セ
ンターから各小売店舗への搬送に要する運搬費),リベート(取引先
への販売額に応じて取引先に対して支払う割戻し),データ処理料(取
引先がオンライン発注システムを利用する場合に,取引先からいわゆ
る手間賃として請求されるもの)及び特売条件による負担(取引先が
被告備後漬物から購入した商品を一般消費者に対して販売するに際し
て,割引等を行って販売促進をする場合に,被告備後漬物が当該割引
分を負担するもの)などとして,別表3のとおり,合計●(省略)●
円を支出した。これらの費用は,被告商品イないしハの販売のために
追加的に増加した費用であるから,被告備後漬物の利益を算定するに
当たって控除するのが相当である。
cしたがって,平成21年9月1日から平成22年6月18日までの
間に被告備後漬物が被告商品イないしハの販売により得た利益の額
は,●(省略)●円である。
イ被告らの関係
前記争いのない事実等に加え,証拠(甲4,5,乙84,90)及び弁
論の全趣旨によれば,①被告東京漬膳は,平成20年10月7日に,漬
物の製造及び販売等を目的として設立された株式会社であり,平成21年
9月1日より前には漬物等の商品の販売実績を有していなかったこと,②
被告備後漬物は,昭和25年10月12日に設立された有限会社であり,
漬物の製造及び販売等を業とし,その年商は約100億円であること,③
被告東京漬膳の役員は代表取締役1名であり,被告備後漬物の役員は代
表取締役ほか2名であるところ,被告東京漬膳の代表取締役は,被告備後
漬物の代表取締役の子であり,被告備後漬物の常務取締役を兼務している
こと,④被告東京漬膳は,鈴木食品から購入した被告商品を被告備後漬
物に対してのみ販売し,被告備後漬物は,同社の販売する被告製品の全量
を被告東京漬膳から仕入れていること,が認められる。
以上のような被告商品の販売における被告らの緊密な一体性に鑑みる
と,被告東京漬膳が鈴木食品に被告商品の製造を委託し,鈴木食品から被
告東京漬膳が購入した被告商品を被告備後漬物に転売し,被告備後漬物に
おいて被告商品を全国の小売店等に販売するという一連の不正競争行為に
ついて,これを全体的に考察すれば,被告らは主観的,客観的に共同して
上記不正競争行為を行ったものと認められる。
したがって,不競法5条2項に基づいて,不正競争によって営業上の利
益を侵害された者(原告)の損害の額を推定する際には,被告らを一体的
な侵害者(共同不法行為者)と評価した上で,被告らが受けた利益の全体
額をもって原告が受けた損害の額と推定するのが相当である。
ウ被告商品の販売に対する被告包装の寄与度
(ア)被告らは,被告商品の売上げ及び利益の獲得には,被告備後漬物の
独自の営業努力,同社の信用,被告商品の品質の高さなどが大きく寄与
したものであり,被告包装の寄与は皆無であるか極めて小さいものであ
ると主張する。
(イ)しかしながら,原告表示1-2及び同2-2が周知であること,こ
れらの原告表示とイ号包装ないしハ号包装とは,包装の素材,形状,大
きさなどを含めて,相当程度類似していると認められることについては,
既に説示したとおりである。また,証拠(甲1,乙2)及び弁論の全趣
旨によれば,原告商品と被告商品とは,いずれも,べったら漬けという
商品であり,商品一つ一つを個別に包装して,スーパー等の小売店にお
いて商品棚に陳列して販売するという販売態様において共通する点があ
り,商品の販売価格(小売価格)もほぼ同じ(1個当たり300円前後)
であること,原告表示と類似するイ号包装ないしハ号包装は,被告商品
の表面全体にわたるデザインないし図絵であり,需要者の目に入りやす
いものであること,が認められる。
一方,被告備後漬物の営業努力や同社の信用,被告商品の品質の高さ
などが被告商品の販売に大きく寄与したことについては,これを裏付け
るに足りる客観的な証拠はない(なお,被告らは,「被告備後漬物が販
売する漬物」であるという需要者の信頼が被告商品の販売に寄与したと
主張するが,前記第2の1(3)ウ(イ)のとおり,被告商品の包装に被告備
後漬物の社名は表示されていない(包装の裏面に「販売者」として表示
されているのは,被告東京漬膳である。)ことから,スーパー等の小売
店で被告商品を購入した需要者が,被告備後漬物の販売する漬物である
と信頼して被告商品を購入したものとは認められない。)。
これらの事情を総合的に考慮すると,本件において,寄与度による減
額をすべき事情があると認めることはできず,被告らの主張は理由がな
い。
(2)弁護士費用等の損害
ア原告は,上記(1)の損害のほか,被告らの不正競争行為によって信用毀損
による損害(300万円),侵害調査費用(200万円)及び弁護士費用
(1500万円)の損失を蒙り,又は費用を支出したと主張し,これらの
損害の賠償を請求する。
イしかしながら,信用毀損による損害については,被告らの不正競争行為
により原告の信用が毀損されたことを認めるに足りる証拠はない。また,
調査費用に関するものについては,原告は,その内訳,実際の支出額等に
ついて,具体的に主張しておらず,同主張を裏付けるに足りる客観的な証
拠も存在しない。したがって,これらの損害賠償請求に関する原告の主張
は,理由がない。
ウ弁護士費用の損害については,原告は,弁護士を選任して本件訴訟を追
行しているものであり,本件事案の内容,認容額及び本件訴訟の経過等を
総合すると,上記不正競争行為と相当因果関係のある弁護士費用の額は,
36万円と認められる。
(3)小括
したがって,被告らは,原告に対し,上記(1)ア(ア),同(イ)及び(2)ウの合
計額である390万8296円(●(省略)●円+●(省略)●円+360,000
円)及びこれに対する不正競争の後である平成22年6月29日から支払済
みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を連帯して支払う義務が
ある。
5よって,原告の請求は主文第1項ないし第4項の限度で理由があるからこれ
を認容し,その余の請求はいずれも理由がないからこれを棄却し,仮執行宣言
については,主文第1項ないし第3項については相当でないからこれを付さな
いこととして,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官阿部正幸
裁判官山門優
裁判官志賀勝
(別表1~3は,省略)

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