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裁判例


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(別紙及び別表は添付省略)
平成26年11月27日判決言渡し
平成25年(行ウ)第15号奈良県議会派並びに同議会議員に係る不当利得返還請
求事件
判決
主文
1被告奈良県知事は,A17に対し2万9450円,A21に対し18万51
36円,及びA23に対し4万1666円を請求せよ。
2原告両名のその余の請求をいずれも棄却する。
3訴訟費用は,これを50分し,その1を被告の負担とし,その余を原告両名
の負担とする。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1請求の趣旨
被告は,別表1の「相手先」欄記載の各相手方(以下「相手方ら」という。)
に対し,それぞれ同表の「合計」欄記載の各金員並びにうち同表の「23.
4月分」欄記載の各金員に対する平成23年6月1日から支払済みまでいず
れも年5分の割合による金員及びうち同表の「23.5月~24.3月」欄
記載の各金員に対する平成24年5月1日から支払済みまでいずれも年5分
の割合による金員を請求せよ。
訴訟費用は,被告の負担とする。
2請求の趣旨に対する答弁
本案前の答弁
ア原告両名の請求のうち,平成23年4月分の政務調査費に係る訴えを却
下する。
イ訴訟費用は原告両名の負担とする。
本案に対する答弁
ア原告両名の請求をいずれも棄却する。
イ訴訟費用は原告両名の負担とする。
第2事案の概要
1本件は,原告両名が,奈良県議会会派及び奈良県議会議員である相手方らが
奈良県から交付を受けた平成23年度の政務調査費について,別表2記載のと
おり,その支出に使途基準に適合しない目的外支出(以下,単に「目的外支出」
ということがある。)があったから,これら目的外支出に係る政務調査費につ
いて法律上の原因なく利益を受けているにもかかわらず,奈良県の執行機関で
ある被告は相手方らに対する不当利得返還請求権の行使を違法に怠っていると
して,被告に対し,地方自治法242条の2第1項4号本文に基づき,相手方
らに対して上記不当利得返還請求権を行使して当該利益及びその遅延損害金の
支払を請求するよう求める住民訴訟である。
2争いのない事実等
以下の事実は,当事者間に争いのない事実,当裁判所に顕著な事実又は証拠
若しくは弁論の全趣旨によって認めることができる事実である。
当事者等
ア原告両名は,奈良県の住民である。
イ被告は,奈良県の執行機関たる奈良県知事である。
ウ相手方らのうち別表1の「相手先」欄記載の自由民主党,自由民主党改
革,自由民主党未来及び民主党奈良県議団は,いずれも平成23年度に奈
良県から政務調査費の交付を受けた奈良県議会会派(以下,個々の会派を
呼称するときは「相手方自由民主党」等といい,上記4会派を総称して「相
手方会派ら」という。)である。なお,自由民主党未来は,平成24年7
月17日に解散した。
相手方らのうち別表1の「相手先」欄記載の相手方会派らを除く者は,
いずれも平成23年度に奈良県から政務調査費の交付を受けた奈良県議会
議員(以下,個々の議員を呼称するときは「相手方A○」(○は数字で1
から32)といい,上記議員を総称して「相手方議員ら」という。)であ
る。
(争いのない事実,甲2の1~5・6の1~5・7の1~151,乙1,弁
論の全趣旨)
関係法令等の定め
ア地方自治法
平成20年法律第69号による改正前の地方自治法100条13項は,
普通地方公共団体が,条例の定めるところにより,その議会の議員の調査
研究に資するため必要な経費の一部として,その議会における会派又は議
員に対し,政務調査費を交付することができ,その場合,当該政務調査費
の交付の対象,額及び交付の方法は,条例で定めなければならないと規定
している。
イ奈良県議会政務調査費の交付に関する条例
奈良県では,前記アの規定を受けて,奈良県議会政務調査費の交付に関
する条例(奈良県政務調査費の交付に関する条例。以下「本件条例」とい
う。)を制定し,議会における会派及び議員に対し政務調査費(会派につ
き議員1人当たり月額2万円,議員につき月額28万円)を交付すること
としている。そして,本件条例9条は,会派及び議員は,政務調査費を議
長が別に定める使途基準に従い使用しなければならないと定めている。
本件条例は,政務調査費の交付,報告,調査及び返還について,奈良県
議会の月の初日に在職する議員等に対し,予め定額の政務調査費を交付す
ること(3条,4条,8条),会派及び議員は年度終了等の日から30日
以内に収支報告書を提出すべきこと(10条),奈良県議会議長は,政務
調査費の適正な運用を期すため,収支報告書等が提出された時は,必要に
応じて調査を行うものとすること(11条),会派又は議員は,その年度
において交付を受けた政務調査費の総額から,当該会派又は議員がその年
度において行った政務調査費による支出(第9条に規定する使途基準に従
って行った支出をいう。)の総額を控除して残余がある場合は,当該残余
の額に相当する額を速やかに返還しなければならないこと(12条)など
を規定している。
ウ奈良県政務調査費の交付に関する規程
本件条例9条を受けた奈良県政務調査費の交付に関する規程(以下「本
件規程」という。)は,その5条及び別表第1,2により,会派及び議員
に係る上記使途基準(以下「本件使途基準」という。)として,調査研究
費,研修費,会議費,資料作成費,資料購入費,広報費,事務所費,事務
費及び人件費の9つの項目を挙げ,調査研究費につき「会派ないし議員が
行う県の事務及び地方行財政に関する調査研究並びに調査委託に要する経
費(調査委託費,交通費,宿泊費等)」,資料購入費につき「会派ないし
議員が行う調査研究のために必要な図書・資料等の購入に要する経費(書
籍購入代,新聞雑誌購読料等)」,広報費につき「会派ないし議員が行う
議会活動及び県政に関する政策等の広報活動に要する経費(広報紙・報告
書等印刷費,送料,交通費等)」,事務所費につき「会派ないし議員が行
う調査研究活動のために必要な事務所の設置,管理に要する費用(事務所
の賃借料,管理運営費等)」,事務費につき「会派ないし議員が行う調査
研究に係る事務遂行に要する経費(事務用品・備品購入費,通信費等)」,
人件費につき「会派ないし議員が行う調査研究を補助する職員を雇用する
経費(給料,手当,社会保険料,賃金等)」などと規定している。
(甲3,4,乙2,3)
⑶政務調査費の充当について
相手方らは,平成23年度の以下の支出をし,奈良県議会議長に対し,そ
の支出を政務調査費から充当したとの報告をした(ただし,相手方らが政務
調査費を充当した支出はこれに限られるものではない。)。
ア相手方自由民主党は,資料購入費として,自由民主党の機関紙である「自
由民主」の年間購読料に6万円を支出し,これら平成23年度の政務調査
費を充当した。
相手方自由民主党改革は,資料購入費として,自由民主党の機関紙であ
る「自由民主」の年間購読料に2万5000円を支出し,これに平成23
年度の政務調査費を充当した。
相手方自由民主党未来は,資料購入費として,自由民主党の機関紙であ
る「自由民主」の年間購読料に1万5000円を支出し,調査研究費とし
て,B研究会の23年度会費に合計30万円を支出し,これらに平成23
年度の政務調査費を充当した。
相手方民主党奈良県議団は,広報費として,C新聞に掲載した企画広告
(甲2の6の5)の掲載料40万円を支出し,これに平成23年度の政務
調査費(5月以降分政務調査費)を充当した。
イ相手方議員らは,それぞれ,別表2の「支出項目・支出月」欄及び「支
出額」欄記載の各支出を行い,それに「按分率」欄記載の按分率で政務調
査費を充当した。
(争いのない事実,甲2の1~5・6の1~5・7の1~151,24,2
5の1・2,26,27,28の1~4,30の1~4,弁論の全趣旨)
監査請求
原告両名を含む7名は,平成25年3月22日,奈良県監査委員会に対し,
平成23年度の奈良県議会政務調査費について,相手方会派らが行った機関
紙の購読料,広報費及び研究会費の支出並びに相手方議員らが行った別表2
記載の支出は政務調査費の目的外であり,かかる支出に相当する政務調査費
は奈良県議会会派及び議員の不当利得になるから,相手方らはこれを奈良県
に返還する義務を負うとして,被告に対しこれら相手方らに対する返還請求
権を行使するよう勧告することなどを求める住民監査請求(以下「本件監査
請求」という。)を行った。
(争いのない事実,甲1,11)
監査結果
奈良県監査委員は,平成25年5月17日,本件監査請求について以下の
とおり監査結果の決定を行い,この頃,これを原告両名を含む7名に通知し
た。
ア平成23年度の奈良県議会政務調査費のうち,同年4月分(以下「4月
分政務調査費」という。)については,同年5月30日までに収支報告書
が提出されていたから,本件監査請求のうち,同年4月分に係る部分につ
いては,地方自治法242条2項本文規定の監査請求期間は同年5月30
日から起算すべきであり,当該部分については監査請求期間の徒過により
不適法である。
イ平成23年度の(平成23年)5月分から(平成24年)3月分までの
奈良県議会政務調査費(以下「5月以降分政務調査費」という。)につい
ては,政務調査費の支出に違法,不当な点はないから,本件監査請求のう
ち当該部分については理由がない。
(甲11,弁論の全趣旨)
本訴の提起
原告両名は,平成25年6月14日,当裁判所に本件訴えを提起した。
(当裁判所に顕著)
第3争点及び争点に対する当事者の主張
14月分政務調査費に係る訴えの適法性(本案前の争点)
(原告両名)
本件監査請求は,被告が,相手方らに対して不当利得返還請求権の行使を怠
る事実が違法であることを内容とするものである。そして,政務調査費の交付,
使用及び返還の仕組みからすれば,どの支出に政務調査費が充当され,それが
使途基準に適合しているか否かは,政務調査費の交付の時点では明らかではな
く,相手方らが収支報告書を奈良県議会議長に提出した時点で確定するものと
解されるが,本件監査請求は,政務調査費の交付という財務会計行為の違法,
無効から不当利得返還請求権が発生したと主張するものではなく,相手方らの
政務調査費の使用の違法,無効という財務会計行為に当たらない行為から返還
請求権が発生したと主張するものであり,特定の財務会計上の行為の違法,無
効を判断する必要はないから,地方自治法242条2項本文の監査請求期間の
制限は適用されない。
(被告)
本件条例は,政務調査費の交付を受けた会派又は議員は,当該政務調査費
に係る収支報告書を年度終了の日の翌日から起算して30日以内に議長に提
出すべき旨を定めているが,当該議員が任期終了により議員でなくなった場
合には,当該議員でなくなった日の属する月までの収支報告書を,同日の翌
日から起算して30日以内に議長に提出すべき旨を定めている。
そして,平成23年4月1日時点で在職していた奈良県議会議員は,同月
29日,任期満了により議員でなくなったので同年5月30日までに収支報
告書を提出し,被告は,当該収支報告書に基づいて同年6月20日に上記奈
良県議会議員に対して政務調査費の確定通知を行った。
ところで,会派又は議員が違法又は不当に政務調査費を支出した場合にお
いては,当該会派又は議員から収支報告書が提出され,当該収支報告書に基
づいて奈良県知事が違法又は不当な政務調査費の支出について適法な政務調
査費の支出であると誤って確定することにより,当該会派又は議員が本来で
あれば返還すべき政務調査費の返還を免れて不当な利益を得る一方で,奈良
県に同額の損失が生じるものである。そして,本件監査請求は,違法な又は
不当な政務調査費の支出について,適法な政務調査費の支出であると奈良県
知事が確定することが違法又は不当な財務会計行為に当たるとして,当該違
法又は不当な財務会計行為によって発生した不当利得返還請求権の行使を怠
る事実として構成するものであるから,本件監査請求には地方自治法242
条2項本文規定の監査請求期間の制限が適用されるというべきである。
4月分政務調査費については,4月分政務調査費に係る不当利得返還請求
権が仮に存在するとしても,同請求権は被告が政務調査費の
確定通知を行った平成23年6月20日に発生したことになるが,本件監査
請求は同日から1年間が経過した後である平成25年3月22日になされて
いるから,当該部分に関する住民監査請求は地方自治法242条2項本文規
定の監査請求期間の制限を徒過したものとして不適法であり,本件請求のう
ち,4月分政務調査費に係る訴えは適法な監査請求を経ないものとして不適
法であるから却下されるべきである。
2不当利得返還請求権の存否
(原告両名)
相手方らが行った支出が目的外支出に該当する理由は,別紙1及び別表2の
「目的外支出」欄,「支払先・使途等」欄及び「備考」欄記載のとおりである。
(被告)
原告両名が目的外支出と主張する相手方らが行った支出は,いずれも適法か
つ適切なものであって,目的外支出に当たらない。
第4当裁判所の判断
14月分政務調査費に係る訴えの適法性(本案前の争点)
怠る事実に係る監査請求期間の制限の有無
ア本件監査請求の要旨
原告両名らによる本件監査請求の要旨は,相手方らの政務調査費の支出
には本件使途基準に反する目的外支出があり,被告は相手方らに対してそ
の目的外支出に相当する不当利得の返還を求める権利があるにもかかわら
ず,この権利行使を怠っているので,必要な措置をとるよう勧告すること
を求めるというものである。
そうすると,本件監査請求は,怠る事実に係る監査請求であると認めら
れる。
イ監査請求期間の制限の有無
怠る事実に係る監査請求には,原則として,監査請求期間の制限が及ば
ないと解するのが相当である。
しかし,地方公共団体において違法に財産の管理を怠る事実があるとし
て,住民監査請求があった場合,当該監査請求が,当該地方公共団体の長
その他の財務会計職員の特定の財務会計上の行為を違法であるとし,当該
行為が違法,無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行
使をもって財産の管理を怠る事実と構成しているものであるときは,監査
請求期間を制限した法の趣旨を没却しないように,当該監査請求について
は,当該怠る事実に係る請求権の発生原因たる当該行為のあった日又は終
わった日を基準として監査請求期間の制限が及ぶと解される。
ただし,実体法上の請求権の不行使をもって怠る事実と構成してされた
住民監査請求において,監査委員が当該怠る事実の監査を遂げるためには,
特定の財務会計上の行為の存否,内容等について検討しなければならない
としても,当該行為が財務会計法規に違反して違法であるか否かの判断を
しなければならない関係にはない場合には,当該監査請求には監査請求期
間の制限が及ばないと解される(最高裁昭和57年(行ツ)第164号同
62年2月20日第二小法廷判決・民集41巻1号122頁,最高裁平成
10年(行ヒ)第51号同14年7月2日第三小法廷判決・民集56巻6
号1049頁等参照)。
不当利得返還請求権の成立
ア本件条例の規定等
本件条例は,奈良県議会の会派及び議員に対し,月の初日に在職する議
員等に対し,予め定額の政務調査費を交付すること(3条,4条,8条),
会派及び議員は,交付を受けた政務調査費を使途基準に従って使用しなけ
ればならないこと(9条),会派及び議員は年度終了等の日から30日以
内に収支報告書を提出すべきこと(10条),奈良県議会議長は,政務調
査費の適正な運用を期すため,収支報告書等が提出された時は,必要に応
じて調査を行うものとすること(11条)等を定めた上で,「政務調査費
の返還」として「会派又は議員は,その年度において交付を受けた政務調
査費の総額から,当該会派又は議員がその年度において行った政務調査費
による支出(第9条に規定する使途基準に従って行った支出をいう。)の
総額を控除して残余がある場合は,当該残余の額に相当する額を速やかに
返還しなければならない。」(12条)と規定している。そうすると,会
派又は議員は,政務調査費として交付を受けた金員のうち,奈良県議会議
長に対する報告において政務調査費に支出した旨の記載がない金額だけで
なく,たとえ奈良県議会議長に対する報告において政務調査費に支出した
旨の記載がある金額であっても,その支出が本件条例9条の使途基準に従
っていないものについても,本件条例12条にいう「残余の額」として速
やかに返還すべき義務を負うものであり,かかる返還義務は議長の収支報
告書に対する調査等を待つことなく,年度等が終了することによって,当
該期間における政務調査費を新たに支出することができなくなることによ
って直ちに発生するものと解される。
イ奈良県知事による確定の要否
被告は,会派又は議員が違法又は不当に政務調査費を支出した場合にお
いては,当該会派又は議員から収支報告書が提出され,当該収支報告書に
基づいて奈良県知事が違法又は不当な政務調査費の支出について適法な政
務調査費の支出であると誤って確定することにより,当該会派又は議員が
本来であれば返還すべき政務調査費の返還を免れて不法な利益を得る一方
で,奈良県には同額の損失が生じると主張する。
しかし,被告がいう「確定」については,奈良県知事がかかる「確定」
を行うことは本件条例に何ら規定されていないから,仮に,奈良県知事が
政務調査費について,会派又は議員から提出された収支報告書に基づいて
何らかの通知を行った事実が存在するとしても,かかる通知によって何ら
かの法的な権利関係が生じるものではないというべきである。そして,予
め交付を受けた政務調査費の残余額について,返還義務が発生する原因及
びその時期に関する本件条例の規定の解釈は前記アのとおりであるから,
被告の上記主張は理由がない。
以上によれば,原告両名らが本件監査請求において被告が権利行使を怠っ
ていると主張している奈良県の相手方らに対する不当利得返還請求権は,各
相手方が,予め交付を受けた政務調査費について,年度内等の一定の期間内
にその全額を本件条例9条の使途基準に従って使用しなかったことによって
発生し,当該使用しなかったことは財務会計上の行為には当たらないという
べきであるから,本件監査請求において主張されている怠る事実に関する監
査を遂げるためには,監査委員は,相手方らに対する政務調査費の交付とい
う財務会計行為の存否については判断する必要があるとしても,当該財務会
計行為の違法性又は不当性を判断する必要はないというべきである。
そうすると,怠る事実についての監査を遂げるために財務会計の違法性な
いし不当性を判断する必要がない本件監査請求については,監査請求期間の
制限は及ばないというべきである。
したがって,本件監査請求のうち,4月分政務調査費について,監査請求
期間の制限を徒過して監査請求が行われたということはできず,当該部分に
ついて適法な監査請求を経ていないというべきものではないから,本件訴え
のうち4月分政務調査費に関する請求に係る訴えも適法である。
2不当利得返還請求権の存否(本案の争点)
⑴相手方自由民主党,相手方自由民主党改革及び相手方自由民主党未来の資
料購入費について
原告両名は,相手方自由民主党,相手方自由民主党改革及び相手方自由民
主党未来が自由民主党の機関紙「自由民主」の購読料(それぞれ,6万円,
2万5000円及び1万5000円)に政務調査費を充当したことについて,
同紙の内容は入党案内,寄付金等であり,購入部数も会派人数で決められて
いるから,政党活動というべきであり,目的外支出であると主張する。
しかし,証拠(乙7)によれば,同紙は,法案等に関する国会の動きや,
社会的課題に関する自由民主党の方針,関連団体の考え方などが記載されて
いるから,奈良県議会における議員活動を行う上で影響を及ぼす事項につい
ての情報を得るための資料として購入されているものと認められる。また,
購入部数についても,会派に所属する各議員が一部ずつ利用するため,所属
議員数分購入したとしても,これが適正を欠くとはいえない。
そうすると,相手方自由民主党,相手方自由民主党改革及び相手方自由民
主党未来が,資料購入費として自由民主党の機関紙「自由民主」の購読料に
政務調査費を充当することが,必要性,合理性を欠くものであって目的外支
出に当たるとはいうことができない。
⑵相手方自由民主党改革の調査研究費について
原告両名は,相手方自由民主党改革が,調査研究費としてB研究会の平成
23年度会費(合計30万円)に政務調査費を充当したことが目的外使用に
当たると主張する。
しかしながら,証拠(甲2の4,乙8~10)によれば,B研究会は,学
識経験者や奈良県に関係する著名人などを講師とする講演会を行っているほ
か,会員になっている知事,国会議員,地方公共団体の議会議員及び経済界
の関係者等による懇談会等を行うことを主な目的としている団体であること
が認められるから,このような団体が主催する会合等に会派に所属する議員
が出席して情報収集及び意見交換等を行うことは,会派が行う調査研究のた
めの活動として不必要とも不相当ともいうことができない。
したがって,相手方自由民主党改革が,調査研究費としてB研究会の平成
23年度会費(合計30万円)に政務調査費を充当したことが目的外使用に
当たるとはいうことができない。
⑶相手方民主党奈良県議団の広報費について
ア原告両名は,相手方民主党奈良県議団が広報費としてC新聞に掲載した
企画広告の掲載料(40万円。甲2の6の4,2の6の5)に5月以降分
政務調査費を充当したことは,目的外支出に当たると主張する。
イ証拠(甲2の6の5)によれば,当該広告は,相手方民主党奈良県議団
がまとめた奈良県のエネルギー政策に関する政策提案を示すとともに,そ
れに対する県民の意見を求めるものであったと認められる。
ウところで,前記第2の2⑵ウのとおり,本件条例9条を受けた本件規程
5条が定める会派に係る使途基準である別表第1には広報費につき「会派
が行う議会活動及び県政に関する政策等の広報活動に要する経費(広報紙
・報告書等印刷費,送料,交通費等)」と規定されている。その趣旨は,
広報には,会派が自らの議会活動及び県政に関する政策等を県民に広く知
らしめることにより,これを知った県民から意見や情報が寄せられること
があり,そのような意見や情報を端緒として新たな調査活動等が行われる
ということがあるので,調査研究活動に資する場合があることにあると解
される。そうすると,確かに,広報には,自らの議会活動や政策を有権者
に周知し,支持者の拡大を図るという選挙活動の一環として機能し得る面
もあることは否定し難いが,そうであるとしても,上記趣旨に鑑みれば,
専ら選挙活動の経費として支出したとみるべき事情がない限り,広報費
は,本件使途基準に反するものとはいえないと解するのが相当である。
エそうすると,前記イで判示したとおり,相手方民主党奈良県議団は上記
企画広告を掲載するための費用に政務調査費を充当することができ,相手
方民主党奈良県議団がC新聞に掲載した企画広告は,必要性,合理性を欠
くものとして目的外支出に当たるということはできない。
⑷相手方A1の人件費について
相手方A1が人件費に政務調査費を充当していた職員において,選挙活動
ないし後援会活動などの調査研究以外の活動に従事していたことを認めるべ
き具体的な証拠はない。
なお,甲第12,第17号証の各1も,相手方A1について後援会が存在
することを窺わせるのみであり,上記認定を左右するものではない。
そうすると,上記支出が目的外支出に該当するとはいうことができない。
⑸相手方A2の事務所費及び人件費について
相手方A2が事務所費及び人件費に政務調査費を充当していた事務所ない
し職員について,選挙活動ないし後援会活動などの調査研究以外の活動に使
用され又は従事していたことを認めるべき具体的な証拠はない。
なお,甲第12,第13,第17号証の各2も,相手方A2について後援
会が存在することを窺わせるのみであり,上記認定を左右するものではない。
そうすると,上記支出が目的外支出に該当するとはいうことができない。
⑹相手方A3の事務所費及び調査研究費について
ア事務所費について
相手方A3が事務所費に政務調査費を充当していた事務所において,選
挙活動ないし後援会活動などの調査研究以外の活動が行われていたことを
認めるべき具体的な証拠はない。
なお,甲第13,第17の各3も,相手方A3について後援会が存在す
ることを窺わせるのみであり,上記認定を左右するものではない。
そうすると,上記支出が目的外支出に該当するとはいうことができない。
イ調査研究費(B研究会の会費)について
原告両名は,相手方A3が調査研究費として政務調査費を充当したB研
究会の会費について,目的外使用に該当すると主張する。
しかし,B研究会の会費に政務調査費を充てることが目的外使用に当た
らないことは,前で判示したとおりである。
⑺相手方A4の人件費について
相手方A4が人件費に政務調査費を充当していた職員において,選挙活動
ないし後援会活動などの調査研究以外の活動に従事していたことを認めるべ
き具体的な証拠はない。
なお,甲第12号証の3,第13,第17号証の各4も,相手方A4につ
いて後援会が存在することを窺わせるのみであり,上記認定を左右するもの
ではない。
そうすると,上記支出が目的外支出に該当するとはいうことができない。
⑻相手方A5の事務所費及び人件費について
相手方A5が事務所費(ただし,本件において原告両名が請求の対象とし
ているものに限る。)及び人件費に政務調査費を充当していた事務所ないし
職員について,選挙活動ないし後援会活動などの調査研究以外の活動に使用
され又は従事していたことを認めるべき具体的な証拠はない。
なお,甲第12,第13号証の各12,第17号証の5も,相手方A5に
ついて後援会が存在することを窺わせるのみであり,上記認定を左右するも
のではない。
そうすると,上記支出が目的外支出に該当するとはいうことができない。
⑼相手方A6の調査研究費(B研究会の会費及びD研究会の会費)について
原告両名は,相手方A6が調査研究費として政務調査費を充当したB研究
会の会費について,目的外使用に該当すると主張する。
しかし,B研究会の会費に政務調査費を充てることが目的外使用に当たら
ないことは,前で判示したとおりである。
また,原告両名は,相手方A6が調査研究費として政務調査費を充当した
D研究会の会費について,目的外使用に該当するとも主張する。
しかし,D研究会の会費が目的外使用に当たると認めるべき証拠の存在は
認められない。
⑽相手方A7の事務所費及び人件費について
相手方A7が事務所費(ただし,本件において原告両名が請求の対象とし
ているものに限る。)及び人件費に政務調査費を充当していた事務所ないし
職員について,選挙活動ないし後援会活動などの調査研究以外の活動に使用
され又は従事していたことを認めるべき具体的な証拠はない。
なお,甲第12号証の4,第13号証の5,第17号証の6も,相手方A
7について後援会が存在することを窺わせるのみであり,上記認定を左右す
るものではない。
そうすると,上記支出が目的外支出に該当するとはいうことができない。
⑾相手方A8の事務所費及び人件費について
相手方A8が事務所費(ただし,本件において原告両名が請求の対象とし
ているものに限る。)及び人件費に政務調査費を充当していた事務所ないし
職員について,選挙活動ないし後援会活動などの調査研究以外の活動に使用
され又は従事していたことを認めるべき具体的な証拠はない。
なお,甲第13号証の6,第17号証の7も,相手方A8について後援会
が存在することを窺わせるのみであり,上記認定を左右するものではない。
そうすると,上記支出が目的外支出に該当するとはいうことができない。
⑿相手方A9の調査研究費及び人件費について
ア調査研究費(B研究会の会費及びD研究会の会費)について
原告両名は,相手方A9が調査研究費として政務調査費を充当したB研
究会の会費について,目的外使用に該当すると主張する。
しかし,B研究会の会費に政務調査費を充てることが目的外使用に当た
らないことは,前で判示したとおりである。
また,原告両名は相手方A9が調査研究費として政務調査費を充当した
D研究会の会費について,目的外使用に該当するとも主張する。
しかし,D研究会の会費が目的外使用に当たると認めるべき証拠の存在
は認められない。
イ調査研究費(調査委託費)について
原告両名は,相手方A9が政務調査費を充当した調査委託費について,
領収証(甲2の7の33・34)の支払先が黒塗りされており,支払の事
実が確認できないなどとして,目的外支出に当たると主張する。
しかしながら,上記領収証は,相手方A9は奈良県議会議長に対し黒塗
りがされていない領収証を提出したものの,原告両名が上記領収証の開示
を受けた際に,その一部が不開示とされて支払先が黒塗りされたものと考
えられるから,このように支払先が開示されたかったからといって,直ち
に相手方A9が実際には上記調査委託料を支払っていないと推認すること
はできないし,このほかに相手方A9が上記委託料を支払っていないこと
を推認させる証拠は存在しない。また,上記委託料を支払った調査が調査
研究に当たらないなど,上記委託料が目的外使用に当たることを推認すべ
き証拠の存在も認めることができない。
そうすると,上記支出が目的外支出に該当するとはいうことができない。
ウ人件費について
相手方A9が人件費に政務調査費を充当していた職員について,選挙活
動ないし後援会活動などの調査研究以外の活動に従事していたことを認め
るべき具体的な証拠はない。
なお,甲第8号証,第13号証の10,第13号証の12,第17号証
の8も,相手方A9について後援会が存在することを窺わせるのみであり,
上記認定を左右するものではない。
そうすると,上記支出が目的外支出に該当するとはいうことができない。
⒀相手方A10の事務所費及び人件費について
相手方A10が事務所費(ただし,本件において原告両名が請求の対象と
しているものに限る。)及び人件費に政務調査費を充当していた事務所ない
し職員について,選挙活動ないし後援会活動などの調査研究以外の活動に使
用され又は従事していたことを認めるべき具体的な証拠はない。
なお,甲第13号証の7,第17号証の9も,相手方A10について後援
会が存在することを窺わせるのみであり,上記認定を左右するものではない。
そうすると,上記支出が目的外支出に該当するとはいうことができない。
⒁相手方A11の事務所費及び人件費について
相手方A11が事務所費及び人件費に政務調査費を充当していた事務所な
いし職員について,選挙活動ないし後援会活動などの調査研究以外の活動に
使用され又は従事していたことを認めるべき具体的な証拠はない。
なお,甲第12号証の21,第17号証の18も,相手方A11について
後援会が存在することを窺わせるのみであり,上記認定を左右するものでは
ない。
また,原告両名は,相手方A11が事務所費に政務調査費を充当したこと
について,当該事務所費に係る事務所の貸主である株式会社Eは相手方A1
1の親族が経営する会社であり,かかる事務所費に政務調査費を充当するこ
とは認められないなどと主張する。確かに,証拠(甲17の18,甲20)
によれば,株式会社Eの代表取締役はFであることが認められ,その住所等
に鑑みれば,Fは相手方A11の配偶者ないし親族である可能性があるが,
本件条例及び本件規程は,上記事務所の貸主が相手方A11の親族等が所有
又は経営する会社であったとしても,実際に賃料が支払われているのであれ
ば,これに政務調査費を充当することを禁じていると解することはできない
から,上記事情が存在することをもって目的外使用に当たるとはいうことが
できない(なお,本件において上記賃料が実際には支払われていないことを
窺わせる証拠等の存在は認められない。)。
そうすると,上記支出が目的外支出に該当するとはいうことができない。
⒂相手方A12の事務所費及び調査研究費について
ア事務所費について
相手方A12が事務所費に政務調査費を充当していた事務所において,
選挙活動ないし後援会活動などの調査研究以外の活動が行われていたこと
を認めるべき具体的な証拠はない。
なお,甲第12号証の5,第17号証の10も,相手方A12について
後援会が存在することを窺わせるのみであり,上記認定を左右するもので
はない。
また,原告両名は,相手方A12が事務所費に政務調査費を充当したこ
とについて,当該事務所費に係る事務所の貸主であるG株式会社は相手方
A12が代表取締役を務める会社であり,代表取締役以外の役員も相手方
A12の親族等が務めていることが窺われるので,かかる事務所費に政務
調査費を充当することは認められないと主張する。確かに,証拠(甲18)
によれば,平成23年当時,相手方A12はG株式会社の代表取締役を務
めていたことが認められるが,本件条例及び本件規程は,上記事務所の貸
主が相手方A12の所有又は経営する会社であったとしても,実際に賃料
が支払われているのであれば,これに政務調査費を充当することを禁じて
いると解することはできないから,上記事情が存在することをもって目的
外使用に当たるとはいうことができない(なお,本件において上記賃料が
実際には支払われていないことを窺わせる証拠等の存在は認められな
い。)。
そうすると,上記支出が目的外支出に該当するとはいうことができない。
イ調査研究費(調査委託費)について
原告両名は,相手方A12が有限会社Hに対する支払(甲2の7の40)
に調査研究費として政務調査費を充てたことについて,相手方A12が有
限会社Hに委託した調査内容等の実態が不明であるなどとして,政務調査
費の充当は認められないと主張する。
しかしながら,本件条例及び本件規程は,奈良県外及び日本国外におけ
る調査活動について,その目的,内容及び結果等について報告を求めてい
る(本件条例10条1項,本件規程6条4項)ものの,これ以外には調査
の内容や結果について具体的に報告することを義務づけておらず,議員が
調査活動を第三者に委託した場合においても同様であるから,議員が調査
の内容や結果を具体的に明らかにしない限り政務調査費の充当が認められ
ないというべきものではない。
そうすると,相手方A12が有限会社Hに調査を委託したことについて,
当該調査委託料に政務調査費を充当したことが目的外使用に当たるとはい
うことができない。
⒃相手方A13の人件費及び調査研究費について
ア人件費について
相手方A13が人件費に政務調査費を充当していた職員について,選挙
活動ないし後援会活動などの調査研究以外の活動に従事していたことを認
めるべき具体的な証拠はない。
なお,甲第12号証の6,第14号証の1,第17号証の11も,相手
方A13について後援会が存在することを窺わせるのみであり,上記認定
を左右するものではない。
そうすると,上記支出が目的外支出に該当するとはいうことができない。
イ調査研究費(B研究会会費)について
原告両名は,相手方A13が調査研究費として政務調査費を充当したB
研究会の会費について,目的外使用に該当すると主張する。しかし,B研
究会の会費に政務調査費を充てることが目的外使用に当たらないことは,
前で判示したとおりである。
ウ調査研究費(調査委託費)について
原告両名は,相手方A13がIに対する支払(甲2の7の47)に調査
研究費として政務調査費を充てたことについて,相手方A13がIに委託
した調査内容等の実態が不明であるなどとして,政務調査費の充当は認め
られないと主張する。
しかしながら,本件条例及び本件規程は,奈良県外及び日本国外におけ
る調査活動について,その目的,内容及び結果等について報告を求めてい
る(本件条例10条1項,本件規程6条4項)ものの,これ以外には調査
の内容や結果について具体的に報告することを義務づけておらず,議員が
調査活動を第三者に委託した場合においても同様であるから,議員が調査
の内容や結果を具体的に明らかにしない限り政務調査費の充当が認められ
ないというべきものではない。
そうすると,相手方A13がIに調査を委託したことについて,当該調
査委託料に政務調査費を充当したことが目的外使用に当たるとはいうこと
ができない。
⒄相手方A14の事務所費,人件費及び調査研究費について
ア事務所費及び人件費について
相手方A14が事務所費(ただし,本件において原告両名が請求の対象
としているものに限る。)及び人件費に政務調査費を充当していた事務所
ないし職員について,選挙活動ないし後援会活動などの調査研究以外の活
動に使用され又は従事していたことを認めるべき具体的な証拠はない。
なお,甲第12号証の7,第17号証の12も,相手方A14について
後援会が存在することを窺わせるのみであり,上記認定を左右するもので
はない。
そうすると,上記支出が目的外支出に該当するとはいうことができない。
イ調査研究費(D研究会の会費)について
原告両名は,相手方A14が調査研究費として政務調査費を充当したD
研究会の会費について,目的外使用に該当するとも主張する。
しかし,D研究会の会費が目的外使用に当たると認めるべき証拠の存在
は認められない。
⒅相手方A15の事務所費,人件費及び調査研究費について
ア事務所費及び人件費について
相手方A15が事務所費(ただし,本件において原告両名が請求の対象
としているものに限る。)及び人件費に政務調査費を充当していた事務所
ないし職員について,選挙活動ないし後援会活動などの調査研究以外の活
動に使用され又は従事していたことを認めるべき具体的な証拠はない。
なお,甲第13号証の8,第17号証の13も,相手方A15について
後援会が存在することを窺わせるのみであり,上記認定を左右するもので
はない。
また,原告両名は,相手方A15が事務所費に政務調査費を充当したこ
とについて,当該事務所費に係る事務所の貸主である有限会社Jは,相手
方A15の親族が代表取締役を務め,相手方A15も取締役を務める会社
であり,かかる事務所費に政務調査費を充当することは認められないなど
と主張する。確かに,証拠(甲2の7の59・60,19)によれば,有
限会社Jの代表取締役であるKの住所地は相手方A15の住所地と同一で
あって,Kは相手方A15の親族であることが窺われるほか,相手方A1
5も同社の取締役を務めていることが認められる。しかし,本件条例及び
本件規程は,上記事務所の貸主が相手方A15の親族等が代表取締役を務
め,又は相手方A15が取締役を務めている会社であったとしても,実際
に賃料が支払われているのであれば,これに政務調査費を充当することを
禁じていると解することはできないので,上記事情が存在することをもっ
て目的外使用に当たるとはいうことができない(なお,本件において上記
賃料が実際には支払われていないことを窺わせる証拠等の存在は認められ
ない。)。
そうすると,上記支出が目的外支出に該当するとはいうことができない。
イ調査研究費(D研究会の会費)について
原告両名は,相手方A15が調査研究費として政務調査費を充当したD
研究会の会費について,目的外使用に該当するとも主張する。
しかし,D研究会の会費が目的外使用に当たると認めるべき証拠の存在
は認められない。
ウ調査研究費(調査委託費)について
原告両名は,相手方A15が有限会社Hに対する支払(甲2の7の54
~56)に調査研究費として政務調査費を充てたことについて,相手方A
15が有限会社Hに委託した調査内容等の実態が不明であるなどとして,
政務調査費の充当は認められないと主張する。
しかしながら,本件条例及び本件規程は,奈良県外及び日本国外におけ
る調査活動について,その目的,内容及び結果等について報告を求めてい
る(本件条例10条1項,本件規程6条4項)ものの,これ以外には調査
の内容や結果について具体的に報告することを義務づけておらず,議員が
調査活動を第三者に委託した場合においても同様であるから,議員が調査
の内容や結果を具体的に明らかにしない限り政務調査費の充当が認められ
ないというべきものではない。
そうすると,相手方A15が有限会社Hに調査を委託したことについて,
当該調査委託料に政務調査費を充当したことが目的外使用に当たるとはい
うことができない。
⒆相手方A16の事務所費,人件費及び調査研究費について
ア事務所費及び人件費について
相手方A16が事務所費(ただし,本件において原告両名が請求の対象
としているものに限る。)及び人件費に政務調査費を充当していた事務所
ないし職員について,選挙活動ないし後援会活動などの調査研究以外の活
動に使用され又は従事していたことを認めるべき具体的な証拠はない。
なお,甲第12号証の8,第13号証の13,第17号証の14も,相
手方A16について後援会が存在することを窺わせるのみであり,上記認
定を左右するものではない。
また,事務所費のうち,駐車場代について,原告両名に開示された領収
証の支払先が黒塗りとなっていたとしても,これをもって駐車場代の支出
に政務調査費を充てることが目的外支出となるものではない。
そうすると,上記支出が目的外支出に該当するとはいうことができない。
イ調査研究費(D研究会の会費)について
原告両名は,相手方A16が調査研究費として政務調査費を充当したD
研究会の会費について,目的外使用に該当するとも主張する。
しかし,D研究会の会費が目的外使用に当たると認めるべき証拠の存在
は認められない。
ウ調査研究費(調査委託費)について
原告両名は,相手方A16が有限会社Hに対する支払(甲2の7の64)
に調査研究費として政務調査費を充てたことについて,相手方A16が有
限会社Hに委託した調査内容等の実態が不明であるなどとして,政務調査
費の充当は認められないと主張する。
しかしながら,本件条例及び本件規程は,奈良県外及び日本国外におけ
る調査活動について,その目的,内容及び結果等について報告を求めてい
る(本件条例10条1項,本件規程6条4項)ものの,これ以外には調査
の内容や結果について具体的に報告することを義務づけておらず,議員が
調査活動を第三者に委託した場合においても同様であるから,議員が調査
の内容や結果を具体的に明らかにしない限り政務調査費の充当が認められ
ないというべきものではない。
そうすると,相手方A16が有限会社Hに調査を委託したことについて,
当該調査委託料に政務調査費を充当したことが目的外使用に当たるとはい
うことができない。
⒇相手方A17の事務所費及び人件費について
ア平成23年4月分の人件費について
証拠(甲2の7の69・72,73)によれば,相手方A17は,平成
23年4月の人件費である16万6000円のうち約67.7パーセント
に当たる11万2450円に4月分政務調査費を充当していることが認め
られる。そして,上記認定事実によれば,相手方A17は,平成23年4
月分の人件費で雇用した職員が政務調査活動以外の活動に従事したことを
認めているものと解される。
ところで,政務調査費を人件費等に充当した職員について,当該職員が
選挙活動ないし後援会活動などの調査研究以外の活動に従事していたこと
が認められる場合においては,当該職員が政務調査活動に従事した割合等
について格別の主張及び立証が行われない限り,当該職員の活動のうち少
なくとも50パーセントは調査研究活動以外の活動であったと認めるのが
相当であり,当該部分については目的外使用に当たるというべきである。
なお,議員にとって政治活動や後援会活動を行うことが重要であるとして
も,そのことから当然に政務調査活動のために雇用された職員が政治活動
や後援会活動に従事することが推認されるということはできない。
そして,相手方A17が支出した平成23年4月分の人件費について,
政務調査活動に従事した割合等について的確な立証がなされたということ
はできないから,上記人件費について,その50パーセントである8万3
000円を超える部分(2万9450円)に平成23年4月分政務調査費
を充当したことは目的外支出に該当するというべきである。
イ平成23年5月分から平成24年3月分の事務所費及び人件費について
相手方A17が事務所費及び人件費に政務調査費を充当していた平成2
3年5月分から平成24年3月分の事務所ないし職員について,選挙活動
ないし後援会活動などの調査研究以外の活動に使用され又は従事していた
ことを認めるべき具体的な証拠はない。
なお,甲第13号証の9,第17号証の15も,相手方A17について
後援会が存在することを窺わせるのみであり,上記認定を左右するもので
はない。
そうすると,相手方A17が政務調査費を充当した平成23年5月分か
ら平成24年3月分の事務所費及び人件費については,目的外支出に該当
するとはいうことができない。
相手A18の人件費及び資料購入費について
ア人件費について
相手方A18が人件費に政務調査費を充当していた職員について,選挙
活動ないし後援会活動などの調査研究以外の活動に従事していたことを認
めるべき具体的な証拠はない。
なお,甲第12号証の9,第13号証の5,第17号証の16も,相手
方A18について後援会が存在することを窺わせるのみであり,上記認定
を左右するものではない。
そうすると,上記支出が目的外支出に該当するとはいうことができない。
イ資料購入費について
原告両名は,相手方A18が有限会社Hに支出した資料購入費合計25
万2000円(甲2の7の147~149)について,その実態が明らか
ではなく,政務調査費の充当は認められるべきではないと主張する。確か
に,相手方A18の上記資料購入費の支出について,その具体的な内容は
不明である。
しかし,本件条例及び本件規程は,資料購入費について,購入した資料
の具体的な内容やその使用目的等について具体的に報告することを義務づ
けておらず,議員が購入した資料の内容等を具体的に明らかにしない限り
政務調査費の充当が認められないというべきものではない(なお,上記資
料購入費の支出については,平成23年4月分の2万1000円の領収証
のみが証拠として提出されており,平成23年5月から平成24年3月分
までの23万1000円の領収証について,単に証拠として提出されてい
ないだけなのか,相手方A18が領収証を奈良県議会の議長に提出してい
ないかは不明であるが,原告両名も相手方A18が上記資料購入費を実際
には支出していなかったとまでは主張していない。)。
そうすると,相手方A18が支出した上記資料購入費について,当該資
料購入費に政務調査費を充当したことが目的外使用に当たるとはいうこと
ができない。
相手方A19の人件費について
相手方A19が人件費(ただし,本件において原告両名が請求の対象とし
ているものに限る。)に政務調査費を充当していた職員について,選挙活動
ないし後援会活動などの調査研究以外の活動に従事していたことを認めるべ
き具体的な証拠はない。
なお,甲第12号証の10,第13号証の6,第17号証の21も,相手
方A19について後援会が存在することを窺わせるのみであり,上記認定を
左右するものではない。
そうすると,上記支出が目的外支出に該当するとはいうことができない。
相手方A20の人件費について
原告両名は,相手方A20は,平成23年4月の人件費24万1600円
のうち50パーセントに当たる12万0800円に4月分政務調査費を充当
している(甲2の7の74・75)が,その総額の33.5パーセントを超
える部分については,当該職員が政務調査以外の活動に従事した部分に該当
すると考えられるから,当該部分については,目的外使用に当たると主張す
る。
しかし,政務調査費を人件費に充てた職員が政務調査活動以外の活動に従
事したことが窺われる場合においては,平成23年4月についても,別段の
立証がない限り,50パーセントの範囲において政務調査活動に従事したと
推認されることは前記⒇アで判示したとおりである。
そして,本件において,相手方A20について上記別段の立証がなされた
とは認められないから,相手方A20が平成23年4月の人件費のうち,5
0パーセントに4月分政務調査費を充当したことが目的外使用に当たるとは
いうことができない。
相手方A21の事務所費について
証拠(甲2の7の83・84)によれば,相手方A21は,平成23年5
月から平成24年3月までの事務所費総額243万7050円のうち75パ
ーセントに相当する182万7782円(182万7787円の違算であ
る。)を5月以降分政務調査費に充当していることが認められる。そして,
上記認定事実によれば,相手方A21は,事務所費に係る事務所が政務調査
活動以外の活動に使用されていたことを認めているものと解される。
ところで,政務調査費を賃料等に充当した事務所について,当該事務所に
おいて選挙活動ないし後援会活動などの調査研究以外の活動が行われていた
ことが認められる場合,政務調査活動に用いられた割合等について格別の主
張及び立証が行われない限り,当該事務所における活動のうち少なくとも5
0パーセントは調査研究活動以外の活動であったと認めるのが相当であり,
当該部分については目的外使用に当たるというべきである(なお,平成23
年4月分についても同様である。)。
そして,相手方A21が支出した平成23年5月から平成24年3月まで
の事務所費について,政務調査活動に用いられた割合等について的確な立証
がなされたということはできないから,上記事務所費について,その50パ
ーセントである121万8525円を超える部分(60万9257円)に平
成23年5月以降分政務調査費を充当したことは目的外支出に該当するとい
うべきである。
もっとも,相手方A21の平成23年5月以降分政務調査費については,
政務調査費の合計が308万円であり,支出の合計は350万4121円と
されている(甲2の7の83)ので,上記目的外支出の額である60万92
57円を支出の合計から控除すると289万4864円であるから,これと
政務調査費の合計308万円の差額である18万5136円が相手方A21
が返還すべき金額となる(なお,原告両名は,相手方A21について,上記
事務所費のほかには目的外支出が存在することについて主張していない。)。
相手方A22の人件費について
相手方A22が人件費に政務調査費を充当していた職員について,選挙活
動ないし後援会活動などの調査研究以外の活動に従事していたことを認める
べき具体的な証拠はない。
なお,甲第12号証の12,第17号証の20も,相手方A22について
後援会が存在することを窺わせるのみであり,上記認定を左右するものでは
ない。
そうすると,上記支出が目的外支出に該当するとはいうことができない。
相手方A23の事務所費,人件費及び調査研究費について
ア事務所費及び人件費について
証拠(甲2の7の90・91)及び弁論の全趣旨によれば,相手方A
23は,平成23年4月の事務所費(15万円)及び人件費(10万円)
について,その約3分の2に該当する額(事務所費について10万円,
人件費について6万6666円)に4月分政務調査費を充当しているこ
とが認められる。そして,上記認定事実によれば,相手方A23は,上
記事務所費及び人件費にかかる事務所及び職員が政務調査活動以外の活
動に使用され又は従事していたことを認めているものと解される。
そして,相手方A23が支出した上記事務所費及び人件費について,
政務調査活動に用いられた割合等について的確な立証がなされたという
ことはできないから,前記⒇ア及びのとおり,上記事務所費及び人件
費について,その50パーセント(事務所費について7万5000円,
人件費について5万円)を超える部分(事務所費について2万5000
円,人件費について1万6666円の合計4万1666円)に4月分政
務調査費を充当したことは目的外支出に該当するというべきである。
相手方A23が事務所費及び人件費に政務調査費を充当していた平成
23年5月分から平成24年3月分の事務所ないし職員について,選挙
活動ないし後援会活動などの調査研究以外の活動に使用され又は従事し
ていたことを認めるべき具体的な証拠はない。
なお,甲第12号証の13,第17号証の22も,相手方A23につ
いて後援会が存在することを窺わせるのみであり,上記認定を左右する
ものではない。
そうすると,相手方A23が政務調査費を充当した平成23年5月分
から平成24年3月分の事務所費及び人件費については,目的外支出に
該当するとはいうことができない。
なお,原告両名は,相手方A23が事務所費に政務調査費を充当した
ことについて,当該事務所費に係る事務所の貸主であるL株式会社は相
手方A23の親族が代表取締役を務める会社であり,かかる事務所費に
政務調査費を充当することは認められないなどと主張する。確かに,証
拠(甲22)及び弁論の全趣旨によれば,L株式会社の代表取締役であ
るMの住所地は相手方A23の住所地と同一であることが認められ,M
は相手方A23の親族であることが窺われる。
しかし,本件条例及び本件規程は,上記事務所の貸主が相手方A23
の親族等が代表取締役を務めている会社であったとしても,実際に賃料
が支払われているのであれば,これに政務調査費を充当することを禁じ
ていると解することはできないので,上記事情が存在することをもって
目的外使用に当たるとはいうことができない(なお,本件において上記
賃料が実際には支払われていないことを窺わせる証拠等の存在は認めら
れない。)。
イ調査研究費(B研究会の会費)について
原告両名は,相手方A23が調査研究費として政務調査費を充当したB
研究会の会費について,目的外使用に該当すると主張する。
しかし,B研究会の会費に政務調査費を充てることが目的外使用に当た
らないことは,前で判示したとおりである。
相手方A24の人件費及び調査研究費について
ア人件費について
相手方A24が人件費に政務調査費を充当していた職員について,選挙
活動ないし後援会活動などの調査研究以外の活動に従事していたことを認
めるべき具体的な証拠はない。
なお,甲第17号証の23も,相手方A24について後援会が存在する
ことを窺わせるのみであり,上記認定を左右するものではない。
そうすると,上記支出が目的外支出に該当するとはいうことができない。
イ調査研究費(D研究会の会費)について
原告両名は,相手方A24が調査研究費として政務調査費を充当したD
研究会の会費について,目的外使用に該当するとも主張する。
しかし,D研究会の会費が目的外使用に当たると認めるべき証拠の存在
は認められない。
ウ調査研究費(調査委託費)について
原告両名は,相手方A24が有限会社Hに対する支払(甲2の7の97
・99・100)に調査研究費として政務調査費を充てたことについて,
相手方A24が有限会社Hに委託した調査内容等の実態が不明であるなど
として,政務調査費の充当は認められないと主張する。
しかしながら,本件条例及び本件規程は,奈良県外及び日本国外におけ
る調査活動について,その目的,内容及び結果等について報告を求めてい
る(本件条例10条1項,本件規程6条4項)ものの,これ以外には調査
の内容や結果について具体的に報告することを義務づけておらず,議員が
調査活動を第三者に委託した場合においても同様であるから,議員が調査
の内容や結果を具体的に明らかにしない限り政務調査費の充当が認められ
ないというべきものではない。
そうすると,相手方A24が有限会社Hに調査を委託したことについて,
当該調査委託料に政務調査費を充当したことが目的外使用に当たるとはい
うことができない。
相手方A25の人件費及び調査研究費について
ア人件費について
相手方A25が人件費に政務調査費を充当していた職員について,選挙
活動ないし後援会活動などの調査研究以外の活動に従事していたことを認
めるべき具体的な証拠はない。
なお,甲第12号証の14,第17号証の24も,相手方A25につい
て後援会が存在することを窺わせるのみであり,上記認定を左右するもの
ではない。
そうすると,上記支出が目的外支出に該当するとはいうことができない。
イ調査研究費(B研究会の会費)について
原告両名は,相手方A25が調査研究費として政務調査費を充当したB
研究会の会費について,目的外使用に該当すると主張する。
しかし,B研究会の会費に政務調査費を充てることが目的外使用に当た
らないことは,前で判示したとおりである。
ウ調査研究費(調査委託費)について
原告両名は,相手方A25が平成23年5月及び同年9月に支出した調
査委託費(甲2の7の108・109)に調査研究費として政務調査費を
充てたことについて,相手方A25が委託した調査内容等の実態が不明で
あるなどとして,政務調査費の充当は認められないと主張する。
しかしながら,本件条例及び本件規程は,奈良県外及び日本国外におけ
る調査活動について,その目的,内容及び結果等について報告を求めてい
る(本件条例10条1項,本件規程6条4項)ものの,これ以外には調査
の内容や結果について具体的に報告することを義務づけておらず,議員が
調査活動を第三者に委託した場合においても同様であるから,議員が調査
の内容や結果を具体的に明らかにしない限り政務調査費の充当が認められ
ないというべきものではない。
なお,上記支出に係る領収証(甲2の7の108・109)の支払先が
黒塗りされているが,相手方A25は奈良県議会議長に対し黒塗りがされ
ていない領収証を提出したものの,原告両名が開示を受けた際に,その一
部が不開示とされて支払先が黒塗りされたものと考えられ,このように支
払先が開示されたかったからといって,直ちに相手方A25が実際には上
記調査委託料を支払っていないなどということもできない。
以上によれば,相手方A25が上記調査を委託したことについて,当該
調査委託料に政務調査費を充当したことが目的外使用に当たるとはいうこ
とができない。
相手方A26の事務費(ガソリン代等)について
原告両名は,相手方A26がガソリン代等の燃油代金に事務費として政務
調査費を充当したことについて,上記燃油代金に係る収支報告書及び領収証
が訂正された際,領収証の添え書きの品目が異なっていることなどを挙げて,
上記支出は使途不明で違法な支出であって目的外使用に当たるなどと主張す
る。確かに,相手方A26の上記支出については,当初提出された収支報告
書(乙2の7の111)に添付された領収書はり付け用紙(甲2の7の11
2~114)の添え書きにおいては,ガソリン代である旨が記載されていた
ものの,その後訂正された収支報告書(甲30の1)及び提出された領収証
(甲30の2から4)の金額が変更されているほか,同領収書のはり付け用
紙の添え書きにおいてはガソリン・灯油代と記載されていることが認められ
る。
しかしながら,かかる金額及び添え書きの品目が訂正されたことをもって,
上記燃油代金に政務調査費を充当することが目的外支出に当たるとはいうこ
とができない(なお,相手方A26が政務調査活動のために灯油を用いたと
すれば,政務調査活動に使用する事務所の暖房等に使用されたと考えられる
から,上記灯油代は事務費ではなく事務所費として分類するのがより適切で
あるとは推認されるものの,これによって上記結論が左右されるものではな
い。)。
相手方A27の事務所費及び人件費について
相手方A27が事務所費及び人件費(ただし,本件において原告両名が請
求の対象としているものに限る。)に政務調査費を充当していた事務所ない
し職員について,選挙活動ないし後援会活動などの調査研究以外の活動に使
用され又は従事していたことを認めるべき具体的な証拠はない。
なお,甲第12号証の15,第17号証の25も,相手方A27について
後援会が存在することを窺わせるのみであり,上記認定を左右するものでは
ない。
また,上記事務所費及び人件費に係る領収証については,証拠(甲2の7
の116及び117)の支払先が黒塗りされているが,相手方A27は奈良
県議会議長に対し黒塗りがされていない領収証を提出したものの,原告両名
が開示を受けた際に,その一部が不開示とされて支払先が黒塗りされたもの
と考えられ,このように支払先が開示されたかったからといって,直ちに相
手方A27が実際には上記事務所費及び人件費を支払っていないなどという
こともできない。
以上によれば,相手方A27が上記事務所費及び人件費に政務調査費を充
当したことが目的外支出に当たるとはいうことができない。
相手方A28の人件費,事務所費及び事務費について
ア人件費について
相手方A28が人件費(ただし,本件において原告両名が請求の対象と
しているものに限る。)に政務調査費を充当していた職員について,選挙
活動ないし後援会活動などの調査研究以外の活動に従事していたことを認
めるべき具体的な証拠はない。
なお,甲第9号証,第13号証の15,第14号証の4,第17号証の
26も,相手方A28について後援会が存在することを窺わせるのみであ
り,上記認定を左右するものではない。
そうすると,上記支出が目的外支出に該当するとはいうことができない。
イ事務所費について
証拠(甲2の7の122)によれば,相手方A28は,平成23年5月
から平成24年3月の事務所費について,その50パーセントに政務調査
費を充当していることが認められる。そして,上記認定事実によれば,相
手方A28は,上記事務所費に係る事務所が政務調査活動以外の活動に使
用されていたことを認めているものと解される。
そして,相手方A28が支出した上記事務所費について,政務調査活動
に用いられた割合等について的確な立証がなされたということはできない
から,前記で判示したとおり,上記事務所費について,その50パーセ
ントを超える部分に政務調査費を充当した場合には目的外使用に該当する
というべきである。もっとも,相手方A28は,50パーセントを超える
部分に政務調査費を充当していないから,目的外使用の存在は認められな
い。
なお,原告両名は,上記事務所の賃貸人であるN株式会社について,相
手方A28が実質的なオーナーであるなどと主張するが,証拠(甲2の7
の123,21)によっても,相手方A28がN株式会社の実質的なオー
ナーであるとは認めることができない。
ウ事務費(ガソリン代)について
原告両名は,相手方A28は平成23年度に議会用務として登庁したの
は33日であり,相手方A28の自宅から奈良県議会までは片道37.5
キロメートルであるのに,相手方A28が平成23年5月から平成24年
3月までに支出したガソリン代43万0996円(甲2の7の121)に
政務調査費を充当したことは過大であって,うち31万が0996円が目
的外使用に当たると主張する。
しかし,議会用務により奈良県議会に登庁するだけでなく,県内の実情
調査等の政務調査活動のために用いたガソリン代に政務調査費を充当する
ことは許容されるというべきであり,相手方A28が上記ガソリン代に係
るガソリンを政務調査活動以外の活動に用いていたことを認めるべき証拠
もないから,上記ガソリン代に政務調査費を充当したことが目的外使用に
該当するとはいうことができない。
相手方A29の事務所費及び人件費について
ア平成23年5月分から同年9月分の事務所費について
証拠(甲2の7の129)によれば,相手方A2229は,平成23年
5月から同年9月の事務所費(ただし,駐車場代を除く。)について,そ
の50パーセントに政務調査費を充当していたことが認められる。そして,
上記認定事実によれば,相手方A29は,上記事務所費に係る事務所が政
務調査活動以外の活動に使用されていたことを認めているものと解され
る。
そして,相手方A29が支出した上記事務所費について,政務調査活動
に用いられた割合等について的確な立証がなされたということはできない
から,前記で判示したとおり,上記事務所費について,その50パーセ
ントを超える部分に政務調査費を充当した場合には目的外使用に該当する
というべきである。もっとも,相手方A29は,50パーセントを超える
部分に政務調査費を充当していないから,目的外使用の存在は認められな
い。
イ平成23年4月分及び同年10月分から平成24年3月分までの事務所
費,平成23年9月から平成24年3月までの事務所費並びに平成23年
5月から平成24年3月までの人件費について
相手方A29が,平成23年4月及び平成23年10月から平成24年
3月までの事務所費(ただし,駐車場代を除く。),平成23年9月から
平成24年3月までの事務所費(駐車場代)並びに平成23年5月から平
成24年3月までの人件費(ただし,いずれも本件において原告両名が請
求の対象としているものに限る。)に政務調査費を充当したことについて,
上記事務所費ないし人件費に係る事務所ないし職員が,選挙活動ないし後
援会活動などの調査研究以外の活動に使用され又は従事していたことを認
めるべき具体的な証拠はない。
なお,甲第12号証の16,第17号証の27も,相手方A29につい
て後援会が存在することを窺わせるのみであり,上記認定を左右するもの
ではない。
そうすると,上記支出が目的外支出に該当するとはいうことができない。
相手方A30の人件費について
相手方A30が人件費に政務調査費を充当していた職員について,選挙活
動ないし後援会活動などの調査研究以外の活動に従事していたことを認める
べき具体的な証拠はない。
なお,甲第12号証の18,第17号証の28も,相手方A30について
後援会が存在することを窺わせるのみであり,上記認定を左右するものでは
ない。
そうすると,上記支出が目的外支出に該当するとはいうことができない。
相手方A31の人件費について
相手方A31が人件費に政務調査費を充当していた職員について,選挙活
動ないし後援会活動などの調査研究以外の活動に従事していたことを認める
べき具体的な証拠はない。
なお,甲第10号証,第13号証の12,第14号証の2,第17号証の
29も,相手方A31について後援会が存在することを窺わせるのみであり,
上記認定を左右するものではない。
そうすると,上記支出が目的外支出に該当するとはいうことができない。
相手方A32の人件費について
相手方A32が人件費(ただし,本件において原告両名が請求の対象とし
ているものに限る。)に政務調査費を充当していた職員について,選挙活動
ないし後援会活動などの調査研究以外の活動に従事していたことを認めるべ
き具体的な証拠はない。
なお,甲第12号証の19,第13号証の11,第17号証の30も,相
手方A32について後援会が存在することを窺わせるのみであり,上記認定
を左右するものではない。
そうすると,上記支出が目的外支出に該当するとはいうことができない。
以上によれば,相手方らのうち,奈良県に対して不当利得の返還義務を負
うのは以下の相手方及び金額のとおりであり,これ以外については返還義務
の存在は認めることができない。
ア相手方A17につき2万9450円(4月分政務調査費)
イ相手方A21につき18万5136円(5月以降分政務調査費)
ウ相手方A23につき4万1666円(4月分政務調査費)
なお,原告両名は,各相手方は奈良県に対し,不当利得金に対する遅延損
害金の支払義務を負うとも主張する。しかしながら,不当利得の返還義務は
期限の定めのない債務であり,請求権者が請求をしたときに遅滞となるが(民
法412条3項),請求権者である被告が返還義務を負う上記各相手方に対
して具体的な請求行為をした事実を認めるべき証拠はない。また,本件条例
12条は交付を受けた政務調査費の残余額を奈良県に返還すべき旨定めてい
るものの,上記不当利得返還義務について確定期限を定めたものとまでは解
されない。そうすると,上記各相手方が負う上記不当利得返還義務について,
遅延損害金の支払義務をも負うとはいうことができない。
第5結論
以上のとおりであって,原告両名が被告に対し,地方自治法242条の2第
1項4号本文に基づき,奈良県の相手方らに対する民法703条に基づく別表
1の「合計欄」記載の各金員並びに同表の「平成23.4月分」欄記載の各金
員に対する平成23年6月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合によ
る遅延損害金及び同表の「平成23,5月~24,3月」欄記載の各金員に対
する平成24年5月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延
損害金を相手方らに請求するよう求める本件請求は,相手方A17に対し2万
9450円,相手方A21に対し18万5136円及び相手方A23に対し4
万1666円を請求するよう求める限度で理由があるから,これを認容し,そ
の余はいずれも理由がないから,これを棄却することとし,訴訟費用の負担に
つき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,64条本文,65条1項本文を
適用して,主文のとおり判決する。
奈良地方裁判所民事部裁判長裁判官牧賢二
裁判官池上尚子
裁判官瀬戸信吉

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